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タイトル:特許公報(B2)_フロログルシノールの生合成およびそれからの1,3−ジヒドロキシベンゼンの製造
出願番号:2007536764
年次:2015
IPC分類:C12N 15/09,C12N 1/21,C12N 9/00,C12P 7/22


特許情報キャッシュ

ジョン、ダブリュ.フロスト JP 5762666 特許公報(B2) 20150619 2007536764 20051011 フロログルシノールの生合成およびそれからの1,3−ジヒドロキシベンゼンの製造 ボード、オブ、トラスティーズ、オブ、ミシガン、ステイト、ユニバーシティ 506410523 BOARD OF TRUSTEES OF MICHIGAN STATE UNIVERSITY 勝沼 宏仁 100117787 中村 行孝 100091487 横田 修孝 100107342 ジョン、ダブリュ.フロスト US 60/617,959 20041012 US 60/618,024 20041012 20150812 C12N 15/09 20060101AFI20150723BHJP C12N 1/21 20060101ALI20150723BHJP C12N 9/00 20060101ALI20150723BHJP C12P 7/22 20060101ALI20150723BHJP JPC12N15/00 AC12N1/21C12N9/00C12P7/22 C12N 15/00-90 C12P 7/00-66 C12N 9/00-99 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq PubMed WPI BIOSIS/CA/MEDLINE(STN) JSTPlus(JDreamII) 米国特許第5955298(US,A) J. Histochem. Cytochem.,2001,Vol. 49, No. 2,p. 247−258 Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,1968,Vol. 59,p. 561−568 J Biochem Mol Biol., 2002,Vol. 35, No.5, p.443−51 生化学辞典(第3版), 1984, p.1362−1363, マロニルCoAの項 An,J.H. et al, GenBank Accession no. AAC83455, (08−DEC−1998), [retrieved on 2014−11−13], Retrieved from the Internet: <URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/3982573?sat=8&satkey=537858> J Biol Chem., 1992, Vol.267, No.2, p.855−63 J Biol Chem.,1992, Vol.267, No.24, p.16841−7 J. Bacteriol., 1999,Vol. 181, No. 10, p. 3155−3163 Phytopathology, 2001, Vol. 91, No. 1, p. 44−54 23 US2005036291 20051011 WO2006044290 20060427 2008517588 20080529 26 20081014 2012019696 20121005 鈴木 恵理子 小堀 麻子 高堀 栄二発明の詳細な説明政府所有権に関する陳述 本発明は、海軍研究事務所(Office of Naval Research)により与えられる認可番号N00014−02−1−0725を受けた国庫補助に一部よるものである。政府は、本発明における一定の権利を有し得る。関連出願の相互参照 本願は、ともに2004年10月12日に出願された、フロログルシノールの生合成およびそれからの1,3−ジヒドロキシベンゼンの製造についての米国仮出願番号60/617,959および米国仮出願番号60/618,024の一部継続である。背景 フロログルシノール(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)およびその誘導体は、商業目的のために広く使用されている。フロログルシノールおよびその誘導体、例えば、トリメチルフロログルシノールは、医薬品として、例えば、鎮痙薬として使用される。フロログルシノールは、医薬、殺菌剤、および他の有機合成における出発物質または中間体として使用される。フロログルシノールは、リグニンを含む顕微鏡検査サンプル(例えば、木材サンプル)の染色剤として使用され、染料(皮革染料、織物染料、および毛髪染料を含む)の製造においても使用される。フロログルシノールは、接着剤の製造においても、エポキシ樹脂硬化剤としても使用され、爆発物、例えば、熱および衝撃に安定な高爆発性の、1,3,4−トリアミノ−2,4,6−トリニトロベンゼン(TATB)の製造においても使用される。フロログルシノールは、抗酸化薬、安定剤、および防食剤としても機能し、複写感光紙のカップリング剤としても、人工降雨におけるヨウ化銀の代替物としても、骨サンプル脱灰剤としても、切花保存剤としても利用される。フロログルシノールは、接触水素化によってレソルシノールへも変換することができる。 レソルシノール(1,3−ジヒドロキシベンゼン)は、特に有用なフロログルシノール誘導体であるが、現在レソルシノールはその経路では製造されていない。レソルシノールは、フロログルシノールと同様に、染料および接着剤の製造においても、エポキシ樹脂硬化剤としても使用され;医薬および他の有機合成における出発物質または中間体としても使用される。レソルシノールおよびその誘導体は、単独または硫黄などの他の有効成分とともに、化粧料においても、座瘡、ふけ症、湿疹、および乾癬などの状態の治療のための局所皮膚医薬においてもさらに一般的に使用され、一部、防腐薬および鎮痒薬として機能する。レソルシノールは、ネオプレンの架橋剤としても、ゴム組成物における増粘剤としても、有機ポリマー(例えば、メラミンおよびゴム)の結合剤においても、繊維性材料および他の複合材料の製造においても使用される。レソルシノールは、樹脂および樹脂接着剤の製造においても(例えば、モノマーおよびUV吸収剤の両方として);爆発物(例えば、スチフニン酸(2,4,6−トリニトロベンゼン−1,3−ジオール)および重金属スチフニン酸塩などのエネルギー化合物)の製造においても;ジアゾ色素、可塑剤、ヘキシルレソルシノール、およびp−アミノサリチル酸の合成においても使用される。 レソルシノール系樹脂の最も一般的なものは、レソルシノール−アルデヒド樹脂およびレソルシノール−フェノール−アルデヒド樹脂である。これらのタイプのレソルシノール系樹脂は、例えば、樹脂接着剤、複合材料マトリックスとしても、レーヨンおよびナイロン製造のための出発物質としても使用される。複合材料の例としては、例えば、金属および有機金属触媒のマトリックス材料として有用であるレソルシノール−ホルムアルデヒド炭素(または他の有機)粒子ヒドロゲル、エアロゲル、およびキセロゲルが挙げられる。レソルシノール−ホルムアルデヒド樹脂およびそれと合成した粒子は、歯根管充填材として歯科においても使用される。 レソルシノール−アルデヒド樹脂接着剤は、接着強度を必要とする用途(例えば:木トラス、梁、樽、および船、ならびに航空機を含む)においてとりわけ有用である。改質レソルシノール−アルデヒド樹脂接着剤は、局部創傷だけでなく、内部創傷または手術による切傷(例えば、血管切断)における生体創傷封止剤組成物としても使用される。これは、戦地医療において、例えば、環境暴露を最小限に抑え、出血や体液喪失を少なくし、治癒過程を加速するために行われることが多い。そのような改質樹脂接着剤としては、例えば、ゼラチン−レソルシノール−ホルムアルデヒド組成物およびゼラチン−レソルシノール−グルタルアルデヒド組成物(この場合、そのアルデヒドは、そのレソルシノール−ゼラチン組成物とは別に維持してよく、必要に応じて、後にそのレソルシノール−ゼラチン組成物と混合して、封止剤を生成してよい)が挙げられる。 現在、フロログルシノールおよびレソルシノールは両方とも、腐食剤および高温度を用い、石油系の出発物質から出発し、非常に環境上問題のある廃棄物を作出する化学有機合成により商業的に製造されている。 結果として、これらの有益な化合物の生産のためのより効率的かつよりクリーンな工程を提供することが当技術分野における改善となるであろう。1つの可能な解決策が、フロログルシノールの生産のための生合成経路(生合成フロログルシノールのレソルシノールへの任意の水素化を含む)を提供することである。フロログルシノールに関連する化合物の生合成生産については、植物、藻類、および微生物において報告されている、例えば:シュードモナス属(Pseudomonas)種由来のアセチルフロログルシノール;オトギリソウ属(Hypericum)種由来のハイパーフォリン、ハイパーフォリアチン(hyperfoliatins)、ハイパージョビノール(hyperjovinols)、およびハイパーアトマリン(hyperatomarins);アカメガシワ属(Mallotus)種由来のパリドゥソール(pallidusol)、デヒドロパリドゥソール(dehydropallidusol)、パリドール(pallidol)、マロパリドール(mallopallidol)、およびホモマロパリドール(homomallopallidol);フクギ属(Garcinia)種由来のガルシニエリプトン(garcinielliptones);オシダ属(Dryopteris)種由来のフラバスピド酸(flavaspidic acids);ユーカリノキ属(Eucalyptus)種由来のマクロカルパル(macrocarpals)およびシデロキシロナル(sideroxylonals);バラ属(Rosa)種由来の1,3,5−トリメトキシベンゼン、ならびにフロログルシノール含有グリコシドおよびフロロタンニン。 しかしながら、フロログルシノール産生は、そのような植物および微生物において、より複雑であるがために、不十分でありかつ/またはより高価である出発物質の分解によるにすぎないということが報告されている。例えば、L. Schoefer et al., Appl. Environ. Microbiol. 70(10):6131-37 (2004);D. Baas & J. Retey, Eur. J. Biochem. 265:896-901 (1999)参照。さらに、ジアセチルフロログルシノールの微生物生合成生産は、植物病原体に対する生物防除剤として農業環境に放たれる組換え細菌の抗真菌活性を向上させるための手段として提案されている。Thomashow et al.の米国特許第6,051,383号;およびM.G. Bangera & L.S. Thomashow, J Bact. 181(10):3155-63 (1999)参照。しかし、例えば、グルコースのような安価な出発物質からの,フロログルシノールの同化生合成生産経路についてはまだ示されていない。 最近、フロログルシノール(1a)への別経路(図2を参照)が明らかになり、その経路はグルコースからの微生物触媒による三酢酸ラクトン(3a)の合成を必要とする;しかしながら、三酢酸ラクトン(3a)をフロログルシノール(1a)へと変換するには複数の化学的ステップが必要であるということがわかっている。W. Zha et al., J. Am. Chem. Soc. 126(14):4534-35 (2004);およびC.A. Hansen & J.W. Frost, J. Am. Chem. Soc. 124(21):5926-27 (2002)参照。よって、この経路は、せいぜい部分的に生合成により、部分的に化学合成による経路である。 このように、現在までフロログルシノールそれ自体(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)の商業生産に有用な完全に生合成による経路は報告されていない。フロログルシノールそれ自体の生成を触媒する酵素またはコードする遺伝子は確認されていない。概要 本発明は、マロニル−CoAからの、最終的にはグルコースのような単純な出発物質からのフロログルシノールの生合成生産のための方法、酵素、および細胞を提供する。具体的に言えば、本発明は、4種類総てのphlABCDオペロン酵素を必要とせず、phlD酵素単独または他のフロログルシノールシンターゼを用いてフロログルシノールの商業生産が可能である、最初の、フロログルシノール合成のための完全に生合成による同化経路を提供する。生合成フロログルシノールの誘導体(例えば、レソルシノールを含む)を調製するための方法もまた提供される。フロログルシノールの生産のための酵素系、組換え細胞、および方法の使用;それによって生産されるフロログルシノール。フロログルシノール誘導体、例えば、レソルシノールの製造のための酵素系、組換え細胞、および方法の使用;それによって生産されるフロログルシノールおよび誘導体、例えば、レソルシノール。化合物または組成物、例えば、爆発性または噴射剤化合物および組成物の生産のための酵素系、組換え細胞、方法、フロログルシノール、または誘導体の使用;非爆発性、非噴射剤化合物および組成物(医薬、化粧料、染料、ポリマー樹脂、ゴム、接着剤、封止剤、被覆剤、複合材料、または積層もしくは結合材料など)の生産のための酵素系、組換え細胞、方法、フロログルシノール、または誘導体の使用。それによって生産される爆発性または噴射剤化合物および組成物;それによって生産される非爆発性、非噴射剤化合物および組成物。本発明は、以下をさらに提供する: マロニル−CoAをフロログルシノールへと変換することができる、PhlA−、PhlB−、もしくはPhlC−の少なくとも1つである単離もしくは組換えPhlD+酵素系;PhlA−、PhlB−、もしくはPhlC−の少なくとも1つであるPhlD+組換え細胞;およびその細胞でのPhlDの発現を増強させるように遺伝子操作されているPhlD+組換え細胞;PhlA−、PhlB−、およびPhlC−である上述の酵素系および細胞;少なくとも1つのマロニル−CoA合成酵素をさらに含んでなる上述の酵素系および細胞; 同化フロログルシノールの生産のための工程であって、上述の酵素系もしくは組換え細胞、およびマロニル−CoA、またはその酵素系もしくは組換え細胞がマロニル−CoAへと変換することができる別の炭素源を提供すること、そのマロニル−CoAとその酵素系もしくは組換え細胞とを、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させること、または他の炭素源とその酵素系もしくは組換え細胞とを、その炭素源をマロニル−CoAへと変換することができ、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させることを含む工程;炭素源が糖類、脂肪族ポリオール、またはそれらの組合せのような単純な炭素源である上述の工程;上述の細胞を炭素源を含む培地において培養する上述の工程、すなわち培養を抽出発酵として実施し、かつ/または多重温度プロフィール(二重温度プロフィールなど)を用いる上述の工程;上述の工程によって製造されたフロログルシノール; マロニル−CoAをフロログルシノールへと変換することができる単離もしくは組換えフロログルシノールシンターゼ酵素;配列番号:2のアミノ酸配列または配列番号:2と少なくとも70%相同であるアミノ酸配列(配列番号:2のアミノ酸配列の保存的置換変異体など)を含んでなる上述の酵素; PhlA−、PhlB−、もしくはPhlC−の少なくとも1つであり、PhlD酵素をコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含んでなる単離もしくは組換え核酸;マロニル−CoA合成酵素をコードする少なくとも1つのオープンリーディングフレームをさらに含んでなる上述の核酸;PhlDをコードするORFが配列番号1の塩基配列、もしくは配列番号1と少なくとも80%相同である塩基配列、それに対応するRNA塩基配列、またはそれと重複するコドン配列を含んでなる上述の核酸; 上述の核酸で形質転換されており、それによりフロログルシノールシンターゼを発現することができるphlD+組換え細胞;PhlA−、PhlB−、もしくはPhlC−の少なくとも1つである上述の細胞;PhlA−、PhlB−、およびPhlC−である上述の細胞;さらにPhlE−もしくはPhlFの少なくとも1つである上述の細胞; レソルシノールの調製のための工程であって、上述の単離もしくは組換え酵素系または組換え細胞によって生合成される上述の同化フロログルシノールを、水素およびロジウム触媒とともに提供すること、およびそのフロログルシノールとその水素およびそのロジウム触媒とを、そのフロログルシノールが水素化されてレソルシノールを生成する条件下で接触させることを含む工程;上述の同化フロログルシノールから調製されたレソルシノール; 上述の同化フロログルシノール、またはそれから調製されるレソルシノールの、医薬、化粧料、染料、ポリマー樹脂、ゴム、接着剤、封止剤、被覆剤、複合材料、または積層もしくは結合材料の製造における使用;上述の同化フロログルシノール、またはそれから製造されるレソルシノールを、含むまたはその化学修飾によってもたらされる医薬、化粧料、染料、ポリマー樹脂、ゴム、接着剤、封止剤、被覆剤、複合材料、または積層もしくは結合材料組成物; マロニル−CoAからフロログルシノールを生合成することができる組換え細胞の調製のための工程であって、細胞を、その細胞による発現が可能な上述のPhlDをコードする核酸で形質転換することを含む工程、またはphlA+、phlB+、phlC+の少なくとも1つであるphlD+細胞を提供すること、およびその細胞におけるPhlA、PhlB、もしくはPhlC遺伝子の少なくとも1つを不活化することによりphlD+細胞における遺伝子を不活化することを含む工程;細菌のような微生物である(その例としては、大腸菌(Escherichia coli)およびシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)が挙げられる)上述の組換え細胞;酵素系もしくは組換え細胞がマロニル−CoA合成酵素を含んでなる上述の工程;phlABCD+細胞を提供すること、およびその少なくとも1つのphlA、phlB、もしくはphlC遺伝子を不活化すること、または少なくとも1つのphlD+核酸を、PhlA−、PhlB−、もしくはPhlC−の少なくとも1つであるその細胞に挿入することのいずれかまたはその両方を含む上述の工程;phlD+組換え細胞がPhlA−、PhlB−、およびPhlC−である上述の工程;phlABCD+細胞を提供すること、およびその総てのphlA、phlB、およびphlC遺伝子を不活化することを含む上述の工程;phlABCD−細胞を提供すること、およびphlD遺伝子をその細胞に挿入することを含む上述の工程;phlD+核酸がその細胞のゲノムDNAに位置する上述の工程;それがその細胞のゲノム外DNAに位置する上述の工程。 噴射剤化合物または爆発性化合物を生産するための方法であって、上述の単離もしくは組換え酵素系または組換え細胞によって生合成される同化フロログルシノールを提供すること、およびその同化フロログルシノールを化学修飾すること、またはそれから調製されるレソルシノールを化学修飾すること含む方法; 上述の同化フロログルシノール、またはそれから調製されるレソルシノールの、爆発物または噴射剤の製造における使用;ならびに上述の同化フロログルシノール、またはそれから調製されるレソルシノールを、含むまたはその化学修飾によってもたらされる爆発性組成物または噴射剤組成物。詳細な説明 本発明は、フロログルシノールおよびその誘導体を生産するための方法、材料および生物を提供する。本発明は、微生物のアセチルフロログルシノール経路に関連する複数の遺伝子、例えば、phlABCDEFを発現させる代わりに、単一遺伝子を発現させることによりフロログルシノール自体を十分な濃度で生産させることができるという驚くべき発見をした研究に基づく。刊行物(米国特許第6,051,383号など)では、上述の遺伝子を使用することによりフロログルシノールが生産されるならば、そのようにする最良または唯一の経路が、その経路に少なくとももう1つの酵素を加えて、アセチルフロログルシノールを脱アセチル化することであるという可能性が極めて高いという結論に達している。 それどころか、現今では、本明細書において「フロログルシノールシンターゼ」と称し、phlD遺伝子から発現される単一酵素の発現によって、直接、すなわち、アセチル化またはジアセチル化中間体を経ないフロログルシノールの形成が起こるということが思いがけなく見つかっている。結果として、この1つの酵素は、他のいずれのphlオペロン遺伝子とも別にして単独で発現されて、高水準のフロログルシノール合成を得ることができる。さらに、フロログルシノール合成のこの経路は、3,5,7−トリケトオクタノアートチオエステルを経ずに、3,5−ジケトヘキサノアートチオエステル中間体を経て進行する。現今では、他のいずれのphlオペロン遺伝子とも別にした、フロログルシノールシンターゼそれ自体の発現によって、今までに提示された他のいずれの生合成経路または半生合成経路よりも著しく多いフロログルシノールを生産することができることが証明されていること;およびそれによってフロログルシノールがこれまでに提示されている他のいずれの生合成経路または半生合成経路よりも簡単に、効率的かつ経済的に生産されることがさらに発見されている。 本明細書において用いる見出し(「序論」および「概要」など)および小見出しは、本発明の開示内容内でテーマを一般的に構成することのみを目的としており、本発明の開示内容またはそのいずれの態様も限定するものではない。特に、「序論」において開示される対象には、本発明の範囲内で技術の側面が含まれるが、先行技術の引用ではない。「概要」において開示される対象は、本発明の全範囲またはその総ての実施形態の網羅的または完全開示ではない。 本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術であること、または本明細書に開示される本発明の特許性と何らかの関連性があることを承認するものではない。序論において引用される参考文献の内容のいずれの考察も、単にその参考文献の著者らによって主張された全体概要を提供することを目的としているに過ぎず、そのような参考文献の内容の正確さについて承認するものではない。本明細書の説明節において引用される総ての参考文献は、それら総て、引用することにより本明細書の一部とされる。 説明および具体的な実施例により本発明の実施形態を示すが、それらは例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定するものではない。さらに、記載した特徴を有する複数の実施形態の引用は、さらなる特徴を有する他の実施形態、または記載した特徴の様々な組合せを組み込んだ他の実施形態を排除することを目的とするものではない。 本明細書において、「好ましい」および「好ましくは」とは、特定の状況下で一定の利益を与える本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態も同じまたは他の状況下で好ましい可能性もある。さらに、1以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないということを意味するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを目的とするものではない。 本明細書において、「含む」およびその変形は、リストでの項目の引用により、本発明の材料、組成物、装置、および方法において同様に有用であり得る他の同様の項目が排除されないように非限定的である。 「組換え」とは、核酸操作を使用したということを示すために本明細書において用いられる。結果として、少なくとも部分的に、核酸操作により生産された存在物に対しては、「組換え」核酸、「組換え」ポリペプチド、および「組換え」細胞のように表現する。「in vivo」とは、その細胞が生細胞である場合には「in cyto」を含むということを示すために本明細書において用いられる。配列相同性 好ましい実施形態において、本発明による変異ポリペプチドは、その変異体と同じ機能を果たす天然ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも50%相同であるアミノ酸配列を有する。一例として、本発明によるフロログルシノールシンターゼは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも50%相同であるアミノ酸配列を有し;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも60%相同であり;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも70%相同であり;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも80%相同であり;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも90%相同である。 一実施形態において、所望のポリペプチドをコードする本発明による組換えポリヌクレオチドは、上記のように、同じ機能の天然ポリペプチドと相同性を有するポリペプチドをコードするいずれかのものある。一実施形態において、所望のポリペプチドをコードする本発明による組換えポリヌクレオチドは、その変異体と同じ機能を果たすポリペプチドをコードする天然ポリヌクレオチドのアミノ酸配列と80%を超える相同性を有するアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態において、、そのポリヌクレオチドはそれと少なくとも85%相同であり;好ましい実施形態において、そのポリヌクレオチドはそれと少なくとも90%相同であり;好ましい実施形態において、そのポリヌクレオチドはそれと少なくとも95%相同である。 配列相同性とは、アミノ酸残基の2配列間、または核酸塩基の2配列間の同一性(identicality)の程度を意味する。この配列相同性は、2配列の目視比較によるか、または比較のために配列をアラインメントさせる生物情報アルゴリズムもしくは比較する配列間の相同率を決定する生物情報アルゴリズムを用いて決定することができる。有用な自動アルゴリズムは、Wisconsin Genetics ソフトウェアパッケージ(Genetics Computer Group, Madison, WI, USAから入手可能)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAコンピューターソフトウェアモジュールとして入手可能である。それらのモジュールで自動化されるアラインメントアルゴリズムとしては、Needleman & Wunsch配列アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman配列アラインメントアルゴリズム、およびSmith & Waterman 配列アラインメントアルゴリズムが挙げられる。配列アラインメントおよび相同性の決定に有用な他のアルゴリズムは、FASTP、BLAST、BLAST2、PSIBLAST、およびCLUSTAL Vなどのソフトウェアで自動化される;例えば、N.P. Brown et al., Bioinformatics: Applications Note, 1998, 74:380-81;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Tools/index.htmlのthe U.S. National Center for Biotechnology Information;および本明細書における相同性の決定に有用なソフトウェアパラメーター設定を規定する米国特許第6,790,639号参照。 核酸塩基ポリマー(核酸および核酸類似体など)によって示される配列相同性は、第1の配列と第2の配列の相補体との間でのハイブリダイゼーションアッセイによって決定することができる。この目的に、いずれの周知のハイブリダイゼーションアッセイを用いてもよく、これらの例としては、米国特許第6,767,744号および同第6,783,758号に記載されているものが挙げられ、「高ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件とは、そこに定義されたとおりである。保存的置換 さらに、本発明によるポリペプチドには、保存的アミノ酸置換が存在することがある。「保存的アミノ酸置換」とは、特定のアミノ酸残基についての任意のアミノ酸置換を示し、その置換では、置換残基がその特定の残基と化学的に極めて類似しているため、ポリペプチド機能(例えば、酵素活性)の大幅な低下は起こらない。保存的アミノ酸置換は当技術分野では周知であり、その例は、例えば、米国特許第6,790,639号、同第6,774,107号、同第6,194,167号、または同第5,350,576号に記載されている。好ましい実施形態において、保存的アミノ酸置換は以下の6つの群のうちの1群内で起こるいずれか1つのものとなる1.小型の実質的に非極性の脂肪族残基:Ala、Gly、Pro、Ser、およびThr;2.大型の非極性脂肪族残基:Ile、Leu、およびVal;Met;3.極性負電荷残基およびそれらのアミド:AspおよびGlu;4.極性負電荷残基のアミド:AsnおよびGln;His;5.極性正電荷残基:ArgおよびLys;His;ならびに6.大型の芳香族残基:TrpおよびTyr;Phe。 好ましい実施形態において、保存的アミノ酸置換は、天然残基(保存的置換)対として記載した以下のうちのいずれか1つのものとなる:Ala(Ser);Arg(Lys);Asn(Gln;His);Asp(Glu);Gln(Asn);Glu(Asp);Gly(Pro);His(Asn;Gln);Ile(Leu;Val);Leu(Ile;Val);Lys(Arg;Gln;Glu);Met(Leu;Ile);Phe(Met;Leu;Tyr);Ser(Thr);Thr(Ser);Trp(Tyr);Tyr(Trp;Phe);およびVal(Ile;Leu)。 ポリペプチドが保存的アミノ酸置換を含み得るように、本明細書におけるポリヌクレオチドは保存的コドン置換を含み得る。発現時に、コドン置換によって上記のように保存的アミノ酸置換がもたらされるならば、そのコドン置換は保存的であると考えられる。アミノ酸置換が起こらない縮重コドン置換もまた、本発明によるポリヌクレオチドにおいて有用である。よって、例えば、本発明の実施形態において有用な選択ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、それで形質転換される発現宿主細胞によって示されるコドン使用頻度を近づけるため、そうでなければその発現を向上させるために、縮重コドン置換によって突然変異させてもよい。 さらに、核酸塩基配列含有ポリマー(核酸など)は、本発明による一酵素または酵素群をコードするものを含むことが好ましい。加えて、これらには、例えば、酵素をコードする特定の核酸と少なくとも80%配列相同性を共有する核酸が含まれる。一例として、本発明によるフロログルシノールシンターゼコード配列は、配列番号:1の塩基配列と少なくとも80%相同である塩基配列を有し;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも85%相同であり;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも90%相同であり;好ましい実施形態において、その配列はそれと少なくとも95%相同である。フロログルシノールおよびその誘導体の生産 図3で説明するように、フロログルシノールシンターゼは、現今では同定され、特徴付けられており、この酵素がフロログルシノール合成を触媒する機構は、以下の一連のステップに従って、または図で示したチオエステル(−SR)結合を形成するために転移される基を提供する第1のマロニル−CoAが、そのためにアセチル基ではなくマロニル基を提供するという別の機構によって、進行することが思いがけなく見つかっている。・アセチル活性化−第1のステップはアセチル基の活性化を必要とする。これはアセチル基をマロニル−CoAから酵素へと転移するマロニル−CoAの脱炭酸により起こり、それによって酵素活性化アセチルチオエステルが生成される(図3の「R」は酵素またはそれと結合している部分を表す);別の実施形態では、その第1のステップは、酵素活性化マロニルチオエステルを生成するために、全マロニル基の活性化を必要とする;・鎖伸長−次の段階は、酵素活性化3−ケトブタノアートチオエステルを生成し、その後、酵素活性化3,5−ジケトヘキサノアートチオエステルを生成するために、アセチル基を追加的に転移させる2回の連続したマロニル−CoAの脱炭酸を必要とする;別の実施形態では、連続転移により酵素活性化3−ケトグルタラートチオエステルおよび3,5−ジケトピメラートチオエステルを生成する;・環化−最終ステップは、フロログルシノールを生成するために、3,5−ジケトヘキサノアートチオエステル中間体の環化を必要とする;別の実施形態では、3,5−ジケトピメラートエステルの脱炭酸を行って、フロログルシノールへと環化する。3つのステップ総てがフロログルシノールシンターゼによって触媒される。 本発明による酵素系は、少なくとも1つのフロログルシノールシンターゼを含むことができる。好ましい実施形態において、フロログルシノールシンターゼはシュードモナス(Pseudomonad)から得られ;好ましい実施形態において、フロログルシノールシンターゼはシュードモナス属のメンバーから得られ;好ましい実施形態において、フロログルシノールシンターゼはP.フルオレセンス(P. fluorescens)種のメンバーから得られるであろう。好ましい実施形態において、フロログルシノールシンターゼはP.フルオレセンス Pf−5から得られる。本研究において同定したP.フルオレセンス Pf−5フロログルシノールシンターゼのアミノ酸配列を配列番号:2で示され、その天然コード配列を配列番号:1に示す。 好ましい実施形態において、本発明による酵素系は、単独でまたは他の酵素と共同で、マロニル−CoAの生成を触媒することができる少なくとも1つの酵素をさらに含むことができる。マロニル−CoAは、例えば、マロニル−CoA合成酵素(例えば、マロナートをマロニル−CoAへと変換する、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)由来のマロニル−CoAシンセターゼ(MatB)(GenBank受託 AAC83455[gi:3982573]参照);マロン酸セミアルデヒドをマロニル−CoAへと変換する、リゾビウム・レグミノサルム由来のマロニル−CoAデカルボキシラーゼ(MatA)(GenBank受託 AAC83456[gi:3982574]参照);またはアセチル−CoAをカルボキシル化して、マロニル−CoAを生成する、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC 6.4.1.2)のトランスカルボキシラーゼ活性)により、アセチル−CoAから生合成により生成され得る。そのマロン酸、マロン酸セミアルデヒド、またはアセチル−CoA出発物質は、生合成されたものでよく、好ましくは、生合成されたものである;例えば、アセチル−CoAは、種々の供給源(例えば、グルコース、光合成3−ホスホグリセラートなど)のうちのいずれか1つから生合成により得たものであってよい。 本発明による酵素系はin vitroであってもin vivoであってもよい。マロニル−CoA合成酵素が不足している場合、マロニル−CoAは、それらの細胞および/または酵素と接触するようにその培地に供給される。一実施形態において、フロログルシノールシンターゼをコードする核酸を、マロニルCoAを合成することができる生物の細胞に形質転換することができ、そのようにした場合にはフロログルシノールがその細胞で生成される。マロニルCoAを合成する生物の例としては、植物、藻類、動物、およびヒトが挙げられる。in vitro系としては、例えば、バッチ酵素懸濁液または(吸着もしくは共有結合)固定化酵素バイオリアクターが挙げられる。in vivo系としては、例えば、固定化細胞バイオリアクター、連続発酵、およびバッチ発酵が挙げられる。本明細書において「発酵」とは、例えば、好気条件または嫌気代謝の必要条件ではなく、単に本明細書における別の実施形態として認められる任意の有効な条件下での培養細胞増殖を示す。任意の実施形態において、マロニル−CoAの供給源は、その供給源が添加された(例えば、外因性)マロニル−CoAであるか、またはin situで生合成された(例えば、内因性)マロニル−CoAであるかには関わらず、フロログルシノールシンターゼに提供されるであろう。 本発明による組換え細胞は、少なくとも1つのフロログルシノールシンターゼと、所望により、少なくとも1つのマロニル−CoA合成酵素を発現することができるが、全phlABCDオペロンも3つのphlA、phlB、およびphlC遺伝子総ても発現することができない。好ましい実施形態において、組換え細胞は、その細胞で組換えフロログルシノールシンターゼを発現することができるものである。好ましい実施形態において、フロログルシノールシンターゼを発現することができ、所望により、マロニル−CoA合成酵素も発現することができる組換え細胞は、有壁細胞(walled cell)である。有壁細胞の例としては、植物細胞、酵母/真菌細胞、細菌細胞、古細菌細胞、および一部の原生生物が挙げられる。一実施形態において、その組換え細胞は、無維管束植物(例えば、苔)細胞、原生生物(例えば、藻類)細胞、酵母細胞、真菌細胞、細菌細胞、または古細菌細胞である。一実施形態において、その組換え細胞は組換え微生物である。一実施形態において、その組換え細胞は酵母細胞、真菌細胞、細菌細胞、または古細菌細胞であり、より好ましくは、酵母細胞、真菌細胞、または細菌細胞である。好ましい実施形態において、組換え細胞は細菌細胞である。好ましい実施形態において、組換え細胞はプロテオバクテリア細胞である。好ましくは、組換え細胞は、phlABC、phlE、およびphlF遺伝子の機能酵素を発現する能力を欠いている。好ましい実施形態において、その細胞はphlABC−、phlE−、およびphlF−細胞である。組換え宿主細胞は本発明のフロログルシノールシンターゼをコードする少なくとも1つの核酸を含むである。好ましい実施形態において、その核酸はベクター形態(例えば、プラスミドまたはトランスポゾン)であろう。 本明細書において有用なphlD+組換え細胞を生成するための一実施形態において、phlD+と、phlA+、phlB+、および/またはphlC+の両方である細胞を、任意の遺伝子ノックアウト技術(すなわち、プレノックアウト遺伝子によってコードされる機能性発現産物を作る細胞の能力をなくしてしまう任意の遺伝子切り出しまたは突然変異技術)などによりphlA−、phlB−、および/またはphlC−にする。好ましくは、その細胞に存在するphlA、phlB、およびphlC遺伝子の総てをノックアウトする。得られた細胞はそのphlD+表現型を保有する。所望により、その細胞に存在するphlEおよび/またはphlF遺伝子をノックアウトしてもよい。1つの好ましい実施形態において、phlABCD+細胞はphlABC−となるであろう。一実施形態において、phlD−と、phlA−,phlB−、および/またはphlC−の両方である細胞を、発現可能な、PhlDをコードする核酸をその細胞に挿入すること(そのゲノムDNA内に挿入するか、またはプラスミドなどの染色体外ユニットの一部として挿入するか、あるいはその両方において挿入するかは問わない)によりphlD+にする。1つの好ましい実施形態において、phlABCD−細胞はphlD+となる。 いくつかの実施形態において、PhlD+である天然または組換え細胞(phlD+細胞など)に、フロログルシノールシンターゼをコードする1以上の発現可能なオープンリーディングフレームを含んでなる核酸での形質転換などによりさらなるphlD遺伝子を、さらに追加することができる。そのPhlD+細胞はPhlA−、PhlB−、および/またはPhlC−細胞(phlA−、phlB−、および/またはphlC−など)であってもよいし、そのPhlD+細胞はPhlA+、PhlB+、および/またはPhlC+細胞(phlA+、phlB+、および/またはphlC+細胞(例えば、phlABCD+細胞)など)であってもよい。得られた、追加のphlD遺伝子を発現することができる組換え細胞は増強されたフロログルシノール合成能力を示すことができる。 組換え細胞と同様に、本発明による単離もしくは組換え酵素系は、少なくとも1つのフロログルシノールシンターゼと、所望により、少なくとも1つのマロニル−CoA合成酵素もしくは酵素セットを含むが、3つのPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の総てを含むわけではなく、好ましくは、PhlA、PhlB、およびPhlC酵素のいずれも含まない。よって、少なくとも1つのフロログルシノールシンターゼと、所望により、少なくとも1つのマロニル−CoA合成酵素を含んでなるが、3つのPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の総てを含むことがない、本発明による組換え細胞および酵素系は、PhlA−、PhlB−、およびPhlC−の少なくとも1つであるPhlD+存在物とも、好ましくは、PhlABC−であるPhlD+存在物ともいえる。 フロログルシノールの生産のための工程は、フロログルシノールシンターゼをマロニル−CoAと接触させることを必要とする。レソルシノールの生産のための工程は、生合成フロログルシノールにおいて、例えば、水素およびロジウム触媒を用いて水素化反応を行うことを必要とする。本発明による工程によって生産されるフロログルシノールおよびレソルシノールは、医薬、化粧料、染料、ポリマー樹脂、ゴム、接着剤、封止剤、被覆剤、噴射剤、爆発物、複合材料、および積層もしくは結合材料などの組成物において、またはそれらとして、あるいはそれらを調製するために使用することができる。全細胞発酵様式 本明細書における組換え細胞の全細胞発酵は、任意の培養様式で、好ましくは、バッチ、フェドバッチ、または連続(もしくは半連続、すなわち、再播種)様式で行うことができる。本明細書におけるいくつかの実施形態においては、本発明による組換え細胞の培養によって生産されるフロログルシノールを含有する使用済み培地を処理して、フロログルシノールを抽出する。しかしながら、場合によっては、フロログルシノールが増殖培地において閾値濃度に達すると、それ自体が最終生成物阻害と呼ばれる工程によりその培養細胞に対して毒性を与え得る。これが起こった場合、この阻害によりフロログルシノールの細胞産生が減少し、細胞生存力の低下が起こり得る。よって、いくつかの実施形態においては、その他の点ではなお有用である増殖培地からのフロログルシノールと、所望により、フロログルシノール誘導体(存在する場合)の抽出を、好ましくは、細胞がフロログルシノールを活発に産生している期間中に行う。そのような実施形態を「抽出発酵」と呼んでいる。 抽出発酵は、本明細書において、当技術分野において有用な公知の様式のいずれのものでも行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では分散抽出発酵様式を採用し、この分散抽出発酵様式では、フロログルシノールを取り込むことができる抽出吸収剤または吸着剤液体もしくは粒子相を、組換え細胞を増殖させる培地に導入し、そこでその抽出粒子もしくは液体領域がフロログルシノールと接触し、フロログルシノールを取り込む。いずれの抽出工程でも同様であるが、吸収または吸着材料によるこの生成物の取込みは、フロログルシノールに対して非特異的、選好的、または特異的であり得るが、好ましくは、選好的、または特異的である。 フロログルシノールでいっぱいになったら、その「いっぱいになった」抽出相を培養培地から、例えば、遠心分離、濾過、磁性もしくは磁化粒子の磁気回収により、および/または相分離(例えば、その場合、抽出相は培養培地の大部分より上に上昇するか、またはそれより下に沈む)により取り出す。いくつかの実施形態においては、培養培地からフロログルシノールを抽出するために、向流または逆流抽出技術を利用してもよい(例えば、その場合、培養培地の流れに対して向流または逆流である流れはそのような抽出液体もしくは粒子相を含んでなる)。 いくつかの実施形態においては、培養培地を抽出膜(イオン交換膜など)に通すことにより膜抽出発酵を行う。いくつかの実施形態においては、培養培地を抽出カラム(中空繊維膜抽出器または繊維性もしくはビーズ樹脂カラムなど)に通すことによりカラム抽出発酵を行う。培地で培養中の細胞をカラムに通してもよいし、培地をカラムに通す前に、例えば、濾過により細胞の一部または総てを除去してよい。いずれの抽出発酵工程においても、抽出発酵は、1回、複数回、または発酵工程中連続して行うことができる。向流、逆流、膜、およびカラム抽出発酵様式では、フロログルシノールの一部または総て(好ましくは、大部分または総て)を取り出した培地は、その後、発酵容器に戻す。 好ましい実施形態において、生合成中の培養培地からフロログルシノールを取り出すために、カラム抽出発酵技術を採用する。この目的に有用な媒体としては、陰イオン交換媒体(陰イオン交換ビーズ、繊維、および中空繊維など)が挙げられる。陰イオン交換膜および陰イオン交換媒体粒子は、膜抽出発酵様式および分散抽出発酵様式それぞれにおいてもまた有用である。粒子陰イオン交換媒体を使用する場合には、流動床抽出発酵様式で用いることが好ましいが、代わりに固定床様式を用いてもよい。 有用な陰イオン交換媒体は、有機、無機に関係なく、陰イオン交換基を有するかまたは陰イオン交換基と共有結合により結合している任意の担体を含んでいてよい。いくつかの実施形態においては、陰イオン交換基を有するかまたは陰イオン交換基と結合している、スチレン−ジビニルベンゼン、ポリスチレン、ポリビニル、アクリル、フェノール−ホルムアルデヒド、有機ケイ素、またはセルロースポリマー主鎖などの有機担体を用いることができる。 有用な陰イオン交換基は、いずれもの陽性基、好ましくは、非金属陽性基(有機アンモニウム基、スルホニウム基、およびホスホニウム基など)であってもよい。好ましい陽性基としては、有機:第三級アンモニウム(例えば、ジエチルアミノエチルセルロース)基、第四級アンモニウム基、ピリジニウム基、第三級スルホニウム基、および第四級ホスホニウム基が挙げられる。一実施形態において、陰イオン交換媒体の陰イオン交換基は、第四級アンモニウム基またはピリジニウム基である。第四級アンモニウム型樹脂の例としては、AG−1 X8樹脂(Bio-Rad Laboratories Inc.製, Hercules, CA, USA)およびDOWEX 1樹脂(The Dow Chemical Co.製, Midland, MI, USA)が挙げられ;ピリジニウム型樹脂の例としては、REILLEX HP(Reilly Industries, Inc.製, Indianapolis, IN, USA)などのポリビニル−ピリジン樹脂のハロゲン化アルキル処理によって得られるポリビニル−アルキル−ピリジニウム樹脂、または商業的供給源から直接得られるポリ(4−ビニル N−メチルピリジニウムヨージド)(Polymer Source Inc.製, Montreal, QC, CA)などのポリビニル−アルキル−ピリジニウム樹脂が挙げられる。 1つの好ましい実施形態においては、使用前に陰イオン交換媒体を処理して、その媒体の陽性基とのリン酸複合体を調製する。陰イオン交換媒体を(それからのフロログルシノールの取り出しを行わずに)再利用するかまたは特定の発酵と連続して接触させる場合には、陰イオン交換媒体を十分に頻繁に新品または再生済みの陰イオン交換媒体と取り替えて、培養培地のフロログルシノール濃度がかなりの程度の最終生成物阻害が起こるレベルまで上昇しないようにすることが好ましいであろう;フロログルシノールが約2g/Lを超えない、または約1.5g/Lを超えないことが好ましい。 抽出発酵または発酵後抽出工程のいずれかによってフロログルシノールで既にいっぱいになっている陰イオン交換媒体には、それを水、酸性水、酸性アルコール(例えば、酸性エタノール)またはそれらの組合せで洗浄することにより処理して、フロログルシノールを取り出すことが好ましい。水洗後に、酸性アルコールでも洗浄することは1つの好ましい技術である。陰イオン交換媒体からフロログルシノールの(好ましくは)大部分または総てを取り出した後、その媒体は、フロログルシノール抽出に再利用するために、例えば、再利用の前にそれをリン酸溶液で平衡化して、陽性基−リン酸複合体を形成することにより調製することができる。洗浄液中に存在するフロログルシノールは、当技術分野で公知の任意の技術、例えば、相分離、溶媒蒸発などによりさらに単離および/または精製してよい。全細胞発酵条件 本発明によるフロログルシノールを生産するための方法に使用する全細胞の培養では、細胞増殖させる条件および培養細胞に同化フロログルシノールを産生させる条件を用いる。場合によっては、フロログルシノールシンターゼを細胞培養期間を通じて、例えば、構成的に、発現させるが、多くの場合では、指数増殖期(EGP)の終わり近くになって初めてフロログルシノールシンターゼの発現を開始することが望ましい。後者の発現が望まれる場合、調節プロモーターの制御下にあるフロログルシノールシンターゼコード配列は、EGPの約70〜100%、好ましくは、約70〜約90%、より好ましくは、約70〜約80%が経過したときに、一般に活性化または抑制解除される。この目的に有用なプロモーターの例としては、tac、T5、およびT7プロモーターが挙げられ;これらのうちではPT7が好ましく;ラクトースまたはIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)のような無償性誘導物質を用いて誘導することができる。 本明細書におけるいくつかの好ましい実施形態においては、組換え微生物細胞(組換え細菌宿主細胞など)を、本明細書における全細胞生体触媒として使用する。この目的に好ましい細菌としては、プロテオバクテリアが挙げられ;プロテオバクテリアの好ましい例としては、腸内細菌およびシュードモナスのようなγプロテオバクテリアが挙げられ;これらのうちではエシェリキア属(Escherichia)種(大腸菌(E. coli)など)およびシュードモナス属種(P.フルオレセンスなど)が好ましい。好ましい微生物は、本発明によるフロログルシノールシンターゼおよび/またはマロニル−CoA合成酵素を分解し得るプロテアーゼ活性がないか、またはそのプロテアーゼ活性を低下もしくは消失させるように処理されているものである。細菌では、好ましくは、存在しない、そうでなければ、例えば、突然変異によって、低下もしくは消失させた2つのプロテアーゼはLonおよびOmpTである。phlD遺伝子の挿入に好ましいphlABCD−細胞の例が大腸菌株BL21およびW3110であり;さらなるphlD遺伝子の挿入を行うまたは行わないphlA、phlB、および/またはphlCの不活性化、あるいはさらなるphlD遺伝子の挿入を行う、phlABCDの不活性化、あるいはさらなるphlD遺伝子の追加に好ましい、phlABCD+細胞の例がP.フルオレセンス株Pf−5である。大腸菌株BL21は:BL21 STAR(DΕ3) ONE SHOT(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA, USA);またはULTRA BL21(DE3)(Edge BioSystems, Gaithersburg, MD, USA)として入手してよい。大腸菌株W3110はATCC番号27325(American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)として入手してよく;P.フルオレセンス株Pf−5はATCC番号BAA−477として入手してよい。 大腸菌の場合、好ましい発酵温度は、約20〜約37℃、好ましくは、約25〜約37℃、より好ましくは、約30〜約37℃である。同化フロログルシノール合成の場合、EGPの期間中、または少なくともEGPの前誘導部分の期間での高温と、残存培養期間の少なくとも一部の期間での(例えば、誘導後の総てもしくは一部または維持期の総てもしくは一部の期間にわたる)低温の組合せは、優れたフロログルシノール生産プロトコールの重要な特徴であるということが判明した。よって、1つの好ましい実施形態においては、組換え大腸菌細胞を、EGPの期間中、またはEGP前誘導期間中、約35〜37℃にて、好ましくは、約36〜37℃にて、より好ましくは、約36℃にて増殖させ;維持期の期間中、または誘導後の期間中、約30〜34℃にて、好ましくは、約30〜約33℃にて、より好ましくは、約33℃または約30℃にて増殖させる。いくつかの実施形態においては、維持期に入ってから、例えば、EGPが終了した後約15時間までに低温への切替を行ってよい。よって、EGRが培養開始から約15時間の時点で終了する細胞(例えば、大腸菌)培養の場合、二温度発酵プロフィールでの高温から低温への切替は、例えば、培養開始から約11時間もしくは約12時間の時点(例えば、70%もしくは80%EGR誘導時とほぼ同時点)で、または約15時間、場合によっては約30時間までの時点で行ってよい。あるいは、例えば、そのような二重温度の実施形態でのEGRに有用な高温は、培養期間全体においても有用な温度である。P.フルオレセンスの場合、好ましい温度は、約20〜約30℃であり、好ましい高温は約27〜約30℃であり、好ましい低温は約24〜約27℃である。炭素源 本発明の実施形態によるフロログルシノールを生産するための細胞、酵素系、および方法は炭素源を利用する。マロニル−CoA以外の炭素源を細胞もしくは酵素系と接触させる場合、実施する実施形態の酵素系もしくは組換え細胞がその炭素源を、本明細書に記載するようにフロログルシノールを同化合成するのに使用することができる物質へと代謝させることができるならば、本発明による酵素系もしくは組換え細胞は他のいずれの炭素源も利用することができる。反応混合物に存在する、フロログルシノールシンターゼを除く他の酵素の性質と、任意でマロニル−CoA合成活性により、使用し得る炭素源の種類が決定される。図4では、炭素源からのフロログルシノールの同化合成のための代表的な多くの経路を例示している。 このように、大部分の炭素源の場合では、細胞がアセチル−CoAを生成するための単純な有機分子を提供するために、細胞もしくは酵素系が、まず、炭素源を異化するかまたはそれを固定する。あるいは、その炭素源は直接アセチル−CoAへと変換される。例えば、アセテート炭素源の場合には、アセテートが直接アセチル−CoAへと変換され得るか、または、そのアセテートがまず、アセチルリン酸へと変換される可能性がある。アセチル−CoAはそれ自体が炭素源として使用されてもよい。一度得られたかまたは提供されたら、アセチル−CoAはアセチル−CoAカルボキシラーゼの作用などによりマロニル−CoAの合成に使用され得る。炭素源の分解により異化マロナートもしくは異化マロン酸セミアルデヒドが生じる場合、またはマロナートもしくはマロン酸セミアルデヒドが炭素源に存在する場合には、これらは細胞もしくは酵素系の酵素プールに存在するマロニル−CoAシンセターゼもしくはマロニル−CoAデカルボキシラーゼそれぞれにより、マロニル−CoAへと変換されるか、またはそれらはアセチル−CoA合成用に異化され、続いてマロニル−CoAへと変換される。一度得られたかまたは提供されたら、マロニル−CoAはフロログルシノールシンターゼにより基質として使用され、フロログルシノールを生成する。 炭素源が生体分子型炭素化合物を含んでなる場合、その炭素化合物が一次代謝産物型化合物であることが好ましい。一次代謝産物型化合物の例としては、好ましくは、C1−C18であるものはいずれも:脂肪酸、ワックス、モノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド;ポリオール;脂肪族ヒドロキシ酸;リン脂質;ホスホアシッド(phosphoacid);単糖類(例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトースなど);アミノ酸;およびヌクレオチド;ならびに上述の化合物から生成される加水分解性ホモ−およびヘテロ−オリゴマー(すなわち、−ダイマーを含む)および−ポリマー;ならびに生物学的に活性化された型の上述の化合物(例えば、アセチル−CoA)が挙げられる。生体分子型化合物は、生体起源であるか合成起源であるかには関わらず、いずれの起源のものでもよい。他の好ましい化合物としては、小型または非複雑有機化合物はいずれも、すなわち、一般に、あらゆる起源の、18個の炭素原子当たりの炭素−炭素分岐点が4つ以下の好ましいモノマー複雑性を有する、C1−C18化合物、脂肪族脂環式化合物、および芳香族化合物など、例えば:C1−C18脂肪族炭化水素およびそれらのモノ−およびポリ−酸、−アルコール、−アミン、−カルボニル;ならびにそれから生成される加水分解性ホモ−およびヘテロ−オリゴマーおよび−ポリマーが挙げられる。 上述の小型/非複雑有機化合物および/または一次代謝産物型化合物を含んでなり、二次代謝産物または大型モノマー型もしくは複雑有機化合物を実質的に含まない(好ましくは、炭素について10重量%未満の)炭素源も本明細書においては「単純な」炭素源と呼ぶ。本明細書において、二次代謝産物としては、例えば:アルカロイド;クマリン;ポリケチド;テルペノイド、イソプレノイド、ステロール、ステロイド、およびプロスタグランジン;カテコールアミン;ポルフィリン;キサントン;フラボノイド;フェニルプロパノイドおよびフェノール類(例えば、ベンゼン化合物およびポリフェノール類を含む);などが挙げられる。大型または複雑有機化合物には、C18を上回るモノマー化合物サイズおよび/または18個の炭素原子当たりの炭素−炭素分岐点が4つを上回るモノマー化合物複雑性を有する、脂肪族化合物、脂環式化合物、および芳香族化合物などがある。 好ましい実施形態において、炭素源は単純な炭素源である。好ましい単純な炭素源は、二次代謝産物および大型もしくは複雑有機物を0重量%〜約5重量%、より好ましくは、0重量%〜約2重量%、または0重量%〜約1重量%、または0重量%〜約0.5重量%、または好ましくは、約0重量%含む;すなわち、好ましくは、二次代謝産物および大型/複雑有機物を含まないまたは少なくとも実質的に含まない。いくつかの実施形態において、単純な炭素源は一次代謝産物型化合物を含んでなる。本明細書における使用に好ましい一次代謝産物型化合物の例としては:糖類、好ましくは、単糖類および/または二糖類;ならびにポリオールが挙げられる。本明細書における炭素源用に好ましい単糖類の例がグルコース、キシロース、およびアラビノースであり;ゆえにポリオールの1つの好ましい例がグリセロールである。本明細書における一実施形態においては、グルコース、キシロース、および/またはアラビノースを、炭素源として、好ましくは、細胞培養の指数増殖期および維持期の両方の期間を通じての炭素源として使用する。一実施形態においては、単糖類(好ましくは、グルコース、キシロース、および/またはアラビノース)とグリセロールの組合せ(例えば、1:1または2:1重量比)を使用する;好ましくは、そのような組合せを維持期の期間中のみ使用し、指数増殖期の期間中には単糖類(グリセロールなし)を使用する。 フロログルシノール(1a、スキーム1、すなわち、図1)は様々な天然物の代用品として見出されている。しかしながら、独立した分子としてのフロログルシノール1aの生合成は明確に示されていない。そのような生合成活性の研究の一環として、シュードモナス・フルオレセンス Pf−5におけるアセチル化フロログルシノールの生成(6および7、スキーム1)について調べる。B. Novak-Thompson et al., Can. J. Microbiol. 40:1064 (1994)。フロログルシノール生合成を検出する。P.フルオレセンス phlDの事後異種発現により大腸菌培養物においてフロログルシノール1aの蓄積が起こる。これらの発見は、アセチルフロログルシノールの生合成と関連した意味合いのほか、新しく、環境に優しい、フロログルシノールおよびレソルシノールの合成の基礎を完成させるものである。 活性化3,5−ジケトヘキサノアート2(すなわち、活性化3,5−ジケトカプロアート)は、構造的に最も単純な2つのポリケチド天然物であるフロログルシノール1aと三酢酸ラクトン3aの有望な前駆体である(スキーム1)。例えば、ガーベラ(Gerbera hybrida)由来の2−ピロンシンターゼは、マロニル−CoAの三酢酸ラクトンへの変換を触媒する。S. Eckermann et al., Nature 396:387 (1998);J. Jez et al., Chem. Bio. 7:919 (2000)。活性部位チロシンのフェニルアラニンへの変化により、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)脂肪酸シンターゼによる排他的生合成産物として三酢酸ラクトンが生成される。B. W. Zha et al., J. Am. Chem. Soc. 126:4534 (2004)。これらの天然または変異酵素のいずれによってもフロログルシノールの生成は認められない。フロログルシノール1aのもう1つの別の可能性ある前駆体は活性化3,5−ジケト−n−ヘプタンジオアート12(すなわち、活性化3,5−ジケトピメラート)である。 フロログルシノール1aの生合成調査の結果として、P.フルオレセンス Pf−5と2,4−ジアセチルフロログルシノール7の生合成(スキーム1)が導かれる。B. Novak-Thompson et al., Can. J. Microbiol. 40:1064 (1994)。アセチルフロログルシノール生合成は、phlACBDからなる遺伝子群、phlEによってコードされる産物輸送用のタンパク質、および分岐転写されたphlFによってコードされるレギュレーター、によってコードされる。PhlDは、活性化3,5,7−トリケトオクタノアート5の生成および環化と関連していることが示唆されている(スキーム2)。生じた中間体2−アセチルフロログルシノール6は、その後、推定上アセチル化されて、2,4−ジアセチルフロログルシノール7が生成される(スキーム2)。M.G. Bangera & L.S. Thomashow, J. Bacteriol. 181:3155 (1999)参照。フロログルシノール1aの生合成はPhlDが担当している作用ではない。 P.フルオレセンス Pf−5/pME6031を、その培養上清に蓄積する産物について調べる。2,4−ジアセチルフロログルシノール7および2−アセチルフロログルシノール6の蓄積に加えて、フロログルシノールの生成も認められる(エントリー1、表1)。生合成されるフロログルシノールの濃度を高めるために、P.フルオレセンス Pf−5をpJA2.232(phlABCDE遺伝子群をpME6031に挿入することにより得たプラスミド)で形質転換する。目的は、生合成遺伝子群の複数のコピーを提示することによりゲノム的にコードされるPhlFによる調節を回避することである。このアプローチの結果、P.フルオレセンス Pf−5/pME6031(エントリー1、表1)と比べて、P.フルオレセンス Pf−5/pJA2.232(エントリー2、表1)によって合成されるフロログルシノール1a、6、7の濃度に大幅な上昇が生じる。 大腸菌におけるphlACBDE遺伝子のT7プロモーターからの異種発現からさらなる解析が得られる(エントリー3〜8、表1)。総ての大腸菌構築物は、T7 RNAポリメラーゼをコードする染色体性遺伝子l挿入物も有している。PhlACBDEプラスミド挿入物を有する大腸菌 BL21(DE3)/pJA3.085は、フロログルシノールおよび2−アセチルフロログルシノールを合成するが、2,4−ジアセチルフロログルシノールは合成しない(エントリー3、表1)。大腸菌 BL21(DΕ3)/pJA3.156にはphlEによってコードされる産物のエクスポーターが存在しないため、生合成されるフロログルシノール1aおよび2−アセチルフロログルシノール2の濃度に悪い影響は及ぼさない(エントリー4、表1)。さらに、phlD単独の異種発現に伴う産物生成を大腸菌 BL21(DE3)/pJA2.042を用いて評価する(エントリー5、表1)。フロログルシノール1aの生成だけが観察される。大腸菌 BL21(DE3)/pJA3.156と比べての、大腸菌 BL21(DE3)/pJA2.042によって生合成されるフロログルシノール1aの濃度における違い(エントリー4対エントリー5、表1)は、恐らくphlDとT7プロモーターとの近接性を反映している。発酵装置制御条件下、最少塩培地におけるグルコースからのフロログルシノールの合成を大腸菌 JWFl(DE3)/pJA3.131Aを用いて調べる(エントリー6、表1)。 フロログルシノール生合成におけるその役割をさらに調査するために、PhlDを均一に精製し、そのin vitro酵素学を調べる。アセチル−CoA単独を基質として使用する場合には活性は認められない(表1)。マロニル−CoAおよびアセチル−CoAをPhlDとともにインキュベートした場合、PhlDとマロニル−CoA単独とのインキュベーションと比べると、ほぼ等しい特異活性が認められる。PhlDについては、マロニル−CoAに対してKm=37μM、kcat=4.7分−1と決定される。比較のため、PhlDと同様に活性化3,5−ジケトヘキサノアート2(スキーム1)を使用する2−ピロンシンターゼを均一に精製する。2−ピロンシンターゼは、アセチル−CoAを基質として使用できない。しかしながら、2−ピロンシンターゼをマロニル−CoAおよびアセチル−CoAとともにインキュベートすると、アセチル−CoAの不在下でマロニル−CoAとともにインキュベートするよりも2倍高い特異活性を得る。2−ピロンシンターゼについての速度パラメーターは、マロニル−CoAに対してXXμM、アセチル−CoAに対してKm=2.2μM、kcat=3.3分−1である。 PhlACBDEおよびPhlDの異種発現において生成する産物により、活性化3,5−ジケトヘキサノアート2の環化(スキーム1)、続いて起こる、フロログルシノール1aの段階的アセチル化が、2−アセチルフロログルシノール6および2,4−ジアセチルフロログルシノール7の生合成の基礎であるという可能性が高まる。この可能性をさらに調査するために、プラスミド局在phlACBを用いて大腸菌 BL21(DE3)/pJA3.169を構築する。M.G. Bangera & L.S. Thomashow, J. Bacterial. 181:3155 (1999)。この構築物はプラスミド局在phlDを欠いているため、この構築物の培養ではフロログルシノールは合成されない(エントリー7、表8)。しかしながら、大腸菌 BL21(DE3)/pJA3.169の培養培地にフロログルシノール1aを添加することで、2−アセチルフロログルシノール6と少量の2,4−ジアセチルフロログルシノール7の生成が起こる(エントリー8、表1)。 PhlDは、現在、Na2Cr2O7を利用した酸化を必要とする経路によって2,4,6−トリニトロトルエン8から合成されている(スキーム2、すなわち、図2)フロログルシノールの新規合成の概要の確立においてもとりわけ重要である。G. Leston, In Kirk-Othmer Encyclopedia of chemical Technology, Vol. 19, p 778 (J.I. Kroschwitz & M. Howe-Grant, eds.) (4th ed., 1996) (Wiley: New York)。2,4,6−トリニトロトルエン8からのフロログルシノール1aの合成中は、爆発の危険はないが、環境上問題のあるクロマートが廃棄物の流れとして生成される。最近になって、三酢酸ラクトン3aの微生物触媒による合成を含むフロログルシノール1aへの別の経路(スキーム2)が明らかになった。W. Zha et al., J. Am. Chem. Soc. 126:4534 (2004)。三酢酸ラクトン3aをフロログルシノール1aへと変換するには複数の化学的ステップが必要である。C.A. Hansen & J.W. Frost, J. Am. Chem. Soc. 124:5926 (2002)。フロログルシノールへのこれらの化学的経路および化学酵素的経路に対し、大腸菌におけるPhlDの異種発現では、フロログルシノール1aをグルコースから微生物触媒による単一ステップで作製することができる(スキーム2)。 現今では、レソルシノール9の代替合成も可能である。レソルシノールは、現在、1,3−ベンゼンジスルホン酸10のアルカリ融解または1,3−ジイソプロピルベンゼン11のヒドロペルオキシデーションにより製造される(スキーム2)。アルカリ融解では高温を必要とし、多量の廃塩流が生じる。ヒドロペルオキシデーション中に生成するアセトンヒドロペルオキシドは爆発の危険がある。L. Krumenacker et al., In Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, Vol. 13, p 996 (J.I. Kroschwitz & M. Howe-Grant, eds.) (4th ed., 1995) (Wiley: New York)参照。さらに、1,3−ベンゼンジスルホン酸10および1,3−ジイソプロピルベンゼン11は両方とも石油系発癌性ベンゼンから製造される(スキーム2)。レソルシノール9への新規経路は、フロログルシノール1aの微生物による合成と、続いて行うこの中間体のRh触媒による水素化に基づいている(スキーム2)。C.A. Hansen & J.W. Frost, J. Am. Chem. Soc. 124:5926 (2002)。フロログルシノール1aは、現今ではグルコースから合成することができるため、レソルシノールは非毒性の植物由来グルコースから合成することができるジヒドロキシ芳香族化合物としてカテコールおよびヒドロキノンと仲間である(スキーム2)。それぞれ:K.D. Draths & J.W. Frost, J. Am. Chem. Soc. 117:2395 (1995);およびN. Ran et al., J. Am. Chem. Soc. 123:10927 (2001)参照。実施例2 大腸菌株におけるPhlDの発現およびその結果起こるフロログルシノール合成 プラスミド pJA3.131A(KanR、lacIQ、PT7−phlD、serA)をserA−大腸菌株BL21(DE3)、W3110(DE3)、およびJWF1(DE3)[すなわち、RB791serA−(DE3)]、ならびに株KL3(DE3)[すなわち、AB2834(serA::aroB)](大腸菌株RB791およびAB2834はthe E. coli Genetic Stock Center, New Haven, CT, USAから入手可能である)に染色体的にトランスフェクトする。総てのDE3株は、λDE3プロファージの細胞染色体への組込みによって得られる。細胞はフェドバッチ条件により無機塩および制限グルコース下で培養する。総ての形質転換株はフロログルシノールをかなりのレベルで発現するが、BL21株およびW3110株は、それぞれ、3.0g/Lおよび3.1g/L フロログルシノールという優れた力価を示し;培養物に補給されたグルコースの量に対して、これらの株は、グルコース100モル当たりフロログルシノール4.4および3.1モル(%mol/mol)という優れたフロログルシノール収率を与える。 これらの試験ではphlDがPtacまたはPT5の制御下にあるプラスミドで同様に形質転換したBL21株におけるフロログルシノールの発現レベルも比較する;PT7については優れた結果を与えることが分かっている(データでは示していない)。これらの試験において、総ての株についてのフロログルシノールの蓄積は、定常(または維持)期の期間中増加は止まる。BL21およびW3110では、それぞれ、誘導開始、すなわち、最初のIPTG添加の約6時間後および約12時間後に最も高いフロログルシノール濃度に達する。最終生成物阻害も認められる。さらなる試験では、フロログルシノールが約2g/L以上の濃度の場合にその阻害に関与するということが立証されている(データでは示していない)。実施例3 抽出フロログルシノール発酵 発酵中のフロログルシノールの細胞毒性およびフロログルシノール合成抑制を減少させるまたは排除するために、陰イオン交換樹脂カラムに基づく抽出発酵を用いて、フロログルシノールを取り出す。攪拌槽型反応器には陰イオン交換カラムを貫通し、その槽へと戻る管系があり;その管系は培地をカラム中で循環させるために蠕動ポンプを装備している。AG1−X8樹脂80mL(ベット容量)を充填したBio−Rad Econo カラム(25×200mm)は、in situ抽出の前に15ベッド容量のKH2PO4(0.8M)で洗い流して、第三級アンモニウム塩をリン酸塩形態に変える。培養培地のフロログルシノール濃度を約1.5g/L未満に維持するために、各発酵につき合計3〜5本のカラムを使用し;各カラムを約6〜12時間使用した後、別のカラムと取り替える。総てのカラムを流動床様式で操作し、循環流速は約8〜12mL/分とする。 AG1−X8樹脂に吸着したフロログルシノールを回収するために、カラムを流動床様式で10ベッド容量の蒸留脱イオン水で洗浄して、残留細胞を除去する;これにより樹脂からフロログルシノールの約15%も水溶液中に回収される。次いで、そのカラムを固定床様式で15ベッド容量の酸性エタノール(酢酸、10%(v/v);エタノール、75%(v/v);H2O、15%(v/v))で洗い流して、樹脂から残りのフロログルシノールを酸性エタノール溶液中に回収する。フロログルシノールを回収した後、そのカラムは、15ベッド容量のKH2PO4(0.8M)、2ベッド容量のエタノール(70%)、および5ベッド容量の滅菌蒸留脱イオン水それぞれでさらに洗い流すことにより再生させることができる。 回収したフロログルシノールを精製するために、得た水溶液中の細胞を遠心分離により除去し;その溶液をさらに、最初の容量の約1/10まで濃縮する。別に、酸性エタノール溶液を濃縮乾固する。この残渣を濃縮した水溶液で再溶解する。得られた水相をさらに、同量の酢酸エチルで3回抽出する。その有機相を合わせ、MgSO4で乾燥させ、シリコーンゲルと混合し、濃縮乾固し、フラッシュカラムにかける。ヘキサン:アセテート(1:1)で洗い流すことによりフロログルシノールを他の褐色の不純物から分離し、TCLにより同定する。次いで、フロログルシノールを含む画分を濃縮乾固し、高真空条件下で乾燥させ、青白色の結晶としてフロログルシノールを得る。実施例4 フロログルシノール発酵の最適化 上述の形質転換W3110株の抽出発酵および非抽出発酵において様々な二重温度発酵プロフィールを用いる。グルコースはpO2カスケード制御によりを着実に供給し、排出CO2レベルは発酵が終了するまで定常レベルで維持する。両タイプの発酵において、開始時36℃の温度を発酵中に低下させるとフロログルシノールの力価および収率が大幅に高まり、抽出発酵での結果でより顕著であることが分かる。独立した発酵において12時間の時点(IPTGによる最初の誘導時)、15時間の時点(維持期開始時)、または30時間の時点で30℃へと温度を変化させる。15時間の時点で温度変化を起こした場合に優れた結果が得られ、抽出発酵は合計60時間行うことができる。これらの条件下で、W3110serA−(DE3)/pJA3.131Aは収率11%(mol/mol)において15g/Lフロログルシノールを合成する。非抽出発酵と比べると、抽出発酵では発酵中ずっとフロログルシノール産生が衰えず、PhlD特異活性が安定し、細胞生存力が維持され、最大発酵時間がより長いことが分かる。 同一抽出発酵条件で同一発酵プロフィールを用いて、上述のBL21serA−(DE3)/pJA3.131A株によるフロログルシノール産生も試験する。W3110発酵の結果と同等の結果が得られる。開始時36℃の温度を15時間の時点で33℃へと変化させる1つのさらなる二重温度プロフィールは、BL21からのフロログルシノールの回収をいっそうさらに増加させ、力価17.3g/Lおよび収率12.3%(mol/mol)を与えることが分かる。 さらに、酵母、S.セレビシエ(S. cerevisiae)においても組換えphlDの発現には成功するが、試験条件下での収率は0.5〜約1.5mg/Lである(データでは示していない)。 本明細書において記載する実施例および他の実施形態は例示であり、本発明の組成物および方法の全範囲を記載することにより限定するものではない。本発明の範囲内で、実質的に同様の結果をもたらす、具体的な実施形態、材料、組成物および方法の等価な変更、修飾および変形は行ってよい。(a)中間体としてのフロログルシノールが存在しないアセチルフロログルシノール生合成について(M.G. Bangera & L.S. Thomashow, J Bact. 181(10):3155-63 (1999)参照);および(c)三酢酸ラクトン生合成について(S. Eckermann et al., Nature 396:387 (1998)、J.M. Jez et al., Chem. Bio. 7:919 (2000);W. Zha et al., J. Am. Chem. Soc. 126:4534 (2004)参照)の文献で報告された経路を説明するスキーム1を示す。フロログルシノールが中間体として存在するアセチルフロログルシノール生合成についての本研究において仮定され、確認された経路(b)および(b’)も示している。フロログルシノール合成についての共通する商業的化学合成経路(a、b、c);グルコースからのフロログルシノールの合成についてこれまでに提示された多段階経路(d、e、f、g);レソルシノール合成についての第1の共通の商業的化学合成経路(i、j);およびレソルシノール合成についての第2の共通の商業的化学合成経路(k、l)を説明するスキーム2である。丸で囲んだ矢印で、(1)フロログルシノールの生産についての本研究において報告された完全に生合成による経路(丸で囲んだアスタリスクで示してある);および(2)フロログルシノールのレソルシノールへの化学水素化(h)も示している。示した具体的な反応または反応段階は:(a)Na2Cr2O7,H2SO4;(B)Fe,HCl;(c)H2SO4、108℃;(d)W. Zha et al., J. Am. Chem. Soc. 126:4534 (2004)参照;(e)Dowex 50 H+,MeOH;(f)Na,MeOH、185℃;(g)12N HCl;(h)i)H2,Al2O3上のRh、ii)0.5M H2SO4,還流;(i)SO3,H2SO4;(j)NaOH,350℃;(k)HZSM−12 ゼオライト,プロペン;および(1)i)O2,ii)H2O2,iii)H+である。本発明による推定反応経路を示す図である。この経路では、フロログルシノールシンターゼによって、酵素活性化3,5−ジケトピメラート(3,5−ジケトヘプタンジオアート)を経るか、または酵素活性化3,5−ジケトヘキサノアート(3,5−ジケトカプロアート)を経て、マロニル−CoAが生合成によりフロログルシノールへと変換される。同化フロログルシノール合成のための工程での異なる炭素源の利用についての様々な例示的経路を示す図である。破線の矢印で、考えられる代替的炭素源利用経路を示し;一部の経路には存在しない可能性のある中間体を角括弧で囲っている。 本明細書に示した図が、本明細書における上述の実施形態を説明するために、本発明のものの中で装置、材料および方法の一般的な特徴を例示することを目的としていることには留意すべきである。これらの図は任意の実施形態の特徴を正確に示していないかもしれず、必ずしも本発明の範囲内で具体的な実施形態を定義または限定することを目的としているものではない。 フロログルシノールを生産する方法であって、(A) (1) (a)PhlD酵素を含んでなり、かつ、機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを含まない、単離もしくは組換え酵素系、 (b)機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを発現しない、組換えPhlD発現細胞、または (c)その細胞でのPhlDの発現をさらに増強させるように遺伝子操作されている組換えPhlD過剰発現細胞、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、マロニル−CoAをフロログルシノールへと変換することができる;および (2)マロニル−CoA、または該酵素系、組換えPhlD発現細胞もしくは組換えPhlD過剰発現細胞がマロニル−CoAへと変換することができる別の炭素源の少なくとも1つを提供するステップ;および(B) (1)該マロニル−CoAと該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞とを、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させるステップ、または (2)該別の炭素源と該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞とを、該炭素源をマロニル−CoAへと変換することができ、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させるステップ、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、マロニル−CoA合成酵素をさらに含んでなる、を含んでなり、それによりフロログルシノールを得る、方法。 酵素系または組換えPhlD発現細胞が、機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素のいずれも有さない、請求項1に記載の方法。 酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、マロニル−CoAシンセターゼ、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ、またはアセチル−CoAカルボキシラーゼのうちのいずれかであるマロニル−CoA合成酵素を含んでなる、請求項1に記載の方法。 噴射剤化合物または爆発性化合物を生産するための方法であって、(A)(1)PhlD酵素を含んでなり、かつ、機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを含まない、単離もしくは組換え酵素系、または(2)機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを発現しない、組換えPhlD発現細胞、または(3)その細胞でのPhlDの発現をさらに増強させるように遺伝子操作されている組換えPhlD過剰発現細胞の作用によりフロログルシノールを生合成すること、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、マロニル−CoAをフロログルシノールへと変換することができる;および(B)それによって生合成されたフロログルシノールを化学修飾して、またはそれから製造されるレソルシノールを化学修飾して、噴射剤化合物または爆発性化合物を生産することを含んでなる、方法。 フロログルシノールが(A)(1)(a)前記酵素系(A)(1)、または(b)前記組換えPhlD発現細胞(A)(2)、または(c)前記組換えPhlD過剰発現細胞(A)(3)、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、炭素源をフロログルシノールへと変換することができる;および (2)マロニル−CoA、または該酵素系、組換えPhlD発現細胞もしくは組換えPhlD過剰発現細胞がマロニル−CoAへと変換することができる別の炭素源の少なくとも1つを提供するステップ;および(B)(1)該マロニル−CoAと該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞とを、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させるステップ、または(2)該別の炭素源と該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞とを、その炭素源をマロニル−CoAへと変換することができ、そこからフロログルシノールを合成することができる条件下で接触させるステップ、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、マロニル−CoA合成酵素をさらに含んでなる、を含み、それによってフロログルシノールを得る工程によって生合成される、請求項4に記載の方法。 酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、マロニル−CoAシンセターゼ、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ、またはアセチル−CoAカルボキシラーゼのうちのいずれかであるマロニル−CoA合成酵素をさらに含んでなる、請求項5に記載の方法。 酵素系または組換えPhlD発現細胞が、機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素のいずれも有さない、請求項5に記載の方法。 別の炭素源が提供され、該別の炭素源と酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞とを接触させる、請求項1または5に記載の方法。 炭素源が、糖類、脂肪族ポリオール、またはそれらの組合せを含む単純な炭素源である、請求項8に記載の方法。 炭素源がグルコース、キシロース、アラビノース、グリセロール、またはそれらの組合せを含んでなる、請求項9に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が提供され、前記接触(B)ステップが、該細胞を炭素源を含む増殖培地において培養することを含む、請求項8に記載の方法。 培養が抽出発酵として実施される、請求項11に記載の方法。 培養が二温度発酵プロフィールでの高温から低温への切替を含んでなる、請求項11に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が提供される、請求項1または5に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、機能的なphlD遺伝子を含んでなり、かつ、phlA、phlB、およびphlC遺伝子の少なくとも1つを含まない、請求項14に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、機能的なphlA、phlB、およびphlC遺伝子のいずれも含まない、請求項15に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、機能的なphlA、phlB、phlCおよびphlD遺伝子を有する細胞を提供すること、並びにその総てのphlA、phlB、およびphlC遺伝子を不活化すること、を含む工程によって生産される、請求項16に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、機能的なphlA、phlB、phlCおよびphlD遺伝子のいずれも有さない細胞を提供すること、およびphlD遺伝子をその細胞に挿入すること、を含む工程によって生産される、請求項16に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、マロニル−CoAシンセターゼ、マロニル−CoAデカルボキシラーゼ、またはアセチル−CoAカルボキシラーゼのうちのいずれかであるマロニル−CoA合成酵素をコードする遺伝子を該細胞に挿入することをさらに含む工程によって生産される、請求項16に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、酵母、真菌、または細菌である、請求項14に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、細菌である、請求項20に記載の方法。 組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞が、エシェリキア属(Escherichia)またはシュードモナス属(Pseudomonas)のうちのいずれかのメンバーである、請求項21に記載の方法。 レソルシノールの調製のための工程であって、(A)(1)(a)PhlD酵素を含んでなり、かつ、機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを含まない、単離もしくは組換え酵素系、または(b)機能的なPhlA、PhlB、およびPhlC酵素の少なくとも1つを発現しない、組換えPhlD発現細胞、または(c)その細胞でのPhlDの発現をさらに増強させるように遺伝子操作されている組換えPhlD過剰発現細胞の作用によりフロログルシノールを生合成すること、ここで、該酵素系、組換えPhlD発現細胞または組換えPhlD過剰発現細胞は、マロニル−CoAをフロログルシノールへと変換することができる;および (2)水素およびロジウム触媒を提供すること;および(B)それによって生合成されたフロログルシノールと該水素およびそのロジウム触媒とを、該フロログルシノールが水素化されてレソルシノールが生成される条件下で接触させることを含み、それによってレソルシノールを調製する、工程。配列表


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