タイトル: | 特許公報(B2)_固相ペプチド合成法 |
出願番号: | 2007536038 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07K 1/04,C07K 5/062 |
スクリプコ,タニヤ JP 4878031 特許公報(B2) 20111209 2007536038 20051004 固相ペプチド合成法 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 津国 肇 100078662 束田 幸四郎 100113653 齋藤 房幸 100116919 スクリプコ,タニヤ EP 04104994.1 20041012 20120215 C07K 1/04 20060101AFI20120126BHJP C07K 5/062 20060101ALI20120126BHJP JPC07K1/04C07K5/062 C07K 1/00-19/00 C12N 9/00- 9/99 C12N 15/00-15/90 CA/REGISTRY(STN) PubMed Science Direct WPI 特表昭61−501635(JP,A) 特開昭61−181400(JP,A) 特開昭63−275551(JP,A) 特開昭52−003494(JP,A) THIAGARAJAN, P. et al.,"Monoclonal antibody light chain with prothrombinase activity.",BIOCHEMISTRY,2000年 5月30日,Vol.39, No.21,P.6459-6465 15 EP2005010654 20051004 WO2006040037 20060420 2008515940 20080515 11 20081002 野村 英雄 本発明は、式I(式中、Tosはp−トルエンスルホニルを意味する)のペプチド誘導体の製造方法に関する。 本発明の方法は、固相合成に基づく。固相合成中に、出発物質は不活性固体担体に結合させながら、アミノ酸を目的配列のペプチドに構成する(すなわち、組み合わせる)。反応剤を溶液に加えると、出発物質が固体に結合するため、出発物質からのいかなる生成物も同様に結合したままとなる。目的配列が担体に連結すると、ペプチドを担体から分離する(すなわち、開裂する)。 本発明に従って製造されたペプチド誘導体は、分類EC 3.4.4(ECは、国際生化学連合の「Enzyme Committee」の略語である)の特定のタンパク質分解酵素、特にトロンビンの定量に適している。 これに関連するペプチドの合成方法は、例えば、米国特許第4,428,874号(1984)、第4,070,245号(1978)及び第4,629,695号(1986)に記載されている。これらの方法は、異なるアミノ酸誘導体を用いる液相合成に基づく。 しかし、従来技術に記載されている方法は、目的異性体の光学純度に関して満足のいくものではなく、それぞれのペプチドの精製作業を必要とする。 従って、本発明の目的は、良好な収率で高い光学純度の式Iのペプチド誘導体を製造するための、より経済的な方法を提供することである。 この目的は、請求項1記載の本発明の方法を用いて達成される。 この方法は、a)カップリング剤/添加剤系の存在下における固相担体上のアミノ酸であるアルギニン、プロリン及びグリシンの連続カップリング、b)グリシン部分のN−α−アミノ基のトシル化、c)トシル化したペプチド又はアミノ側鎖が保護されたその誘導体の、固相担体からの開裂、d)カップリング剤/添加剤系の存在下における、式III R−NH2 III(ここで、Rはp−アミノフェニルを意味し、1つのアミノ基はアミノ保護基で保護される)のアニリンとの、式IIのペプチド中間体又はアミノ側鎖が保護されたその誘導体の反応、を含む。 本明細書及び特許請求の範囲に使用される略語の意味を、下記の表に概説する。 更に、アミノ酸であるアルギニン及びプロリンを、そのL体又はD体のいずれをもラセミ化合物として、あるいはその異性体の種々の混合物で使用できることが理解される。好ましくは、アミノ酸はそのL体で使用される。 本発明の工程a)における連続カップリングは、第1工程として、好ましく保護されたアルギニンの固相担体への結合を含む。 アルギニンのα−アミノ基を、当業者に既知の一般的なアミノ保護基で保護できる。Fmocは、アルギニンの好ましいα−アミノ保護基である。 一般に、側鎖(例えば、アルギニン分子のグアニジン部分)を、当業者に既知のアルギニン側鎖保護基で保護する。好ましいアルギニン側鎖保護基は、Pmc又はPbfであり、更に好ましくはPbfである。 原則として、固相ペプチド合成に有用であることが知られている全ての固相担体を、Peptides: Chemistry and Biology, N. Sewald, H.-D. Jakubke, Wiley-VCH Verlag GmbH, Weinheim, 2002 及び Fmoc-Solid Phase Peptide Synthesis-A practical approach, W.C. Chan, P.D. White, Oxford University Press Inc. New York, 2000に記載の通り、本発明の合成に使用できる。 2−クロロトリチルクロリド−ポリスチレン樹脂(CTC樹脂)が、固相担体として本発明のペプチド合成に最も適していることが見出された。CTC樹脂は、例えばMerck Bioscienceから市販されている。 保護されたアルギニンを、好ましくは不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)に溶解する。 第3級アミンには、通常、Et3N、DIEA又はsym−コリジン、好ましくはDIEA又はsym−コリジンなどがある。 固相担体への結合は、一般に室温で行う。 有機溶媒での樹脂の洗浄、濾過、最後に穏和な温度での乾燥を含む、当業者に既知の技術に従って、担持した樹脂を処理する。 第1工程の好ましい態様において、Fmoc−Arg(Pbf)−OHを担持したCTC樹脂を製造する。 続く工程において、保護されたプロリンとのカップリング、続いて保護されたグリシンとのカップリングを行う。 カップリングを起こす前に、アルギニンのα−アミノ基を、適切な溶媒(例えば、DMF又はNMP、好ましくはNMP)との第2級アミン(例えば、モルホリン、DBU又はピペリジン、好ましくはピペリジン)の5〜20%溶液を用いて適切に脱保護する必要がある。 プロリン及びグリシン両方のα−アミノ基を、当業者に既知の一般的なアミノ保護基により保護できる。Fmocは、プロリン及びグリシン両方の好ましいα−アミノ基である。 プロリンを、PG−Pro−OPfp、PG−Pro−OSu及びPG−Pro−OBtより選択される活性化誘導体、又はPG−Pro−OHの非活性化誘導体(ここで、PGはアミノ保護基を意味する)の形態で適用してもよい。 好ましくは、プロリンをFmoc−(L)−Pro−OHの形態で適用する。 グリシンを、PG−Gly−OPfp及びPG−Gly−OSuの活性化誘導体、又はPG−Gly−OHの非活性化誘導体(ここで、PGはアミノ保護基を意味する)の形態で適用してもよい。 好ましくは、グリシンをFmoc−Gly−OHの形態で適用する。 本発明に従って、アミノ酸のカップリングを、DCC/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HATU/HOAt、DEPBT/HOOBt、PyBoP/Cl−HOBtより選択されるカップリング剤/添加剤系を用いて行う。 好ましいカップリング剤/添加剤系は、DEPBT/HOOBt又はHBTU/HOBtであり、ここで、HBTU/HOBtが最も好ましい。 各カップリングを、一般に、適切な溶媒(例えば、NMP)中の第3級アミン(例えば、Et3N、DIEA又はsym−コリジン、好ましくはDIEA又はsym−コリジン)の存在下で行う。 カップリング反応は、撹拌しながら0℃〜40℃の温度で行われるのが理想的である。 グリシンとのカップリング前のプロリンの脱保護及び最終的なグリシンの脱保護を、適切な溶媒(例えば、DMF又はNMP、好ましくはNMP)との第2級アミン(例えば、モルホリン、DBU又はピペリジン、好ましくはピペリジン)の5〜20%溶液を用いて適切に行うことができる。 本カップリング反応の好ましい態様において、H2N−Gly−(L)−Pro−(D/L)Arg−(Pbf)−OHを担持したCTC樹脂を製造する。 グリシン部分のN−α−アミノ基のトシル化を、本発明の方法の工程b)に従って、一般に第3級アミン(例えば、Et3N、DIEA又はsym−コリジン、好ましくはDIEA)の存在下で4−トルエンスルホニルクロリドにより実施する。 一般に、トシル化を不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)の存在下で0℃〜40℃の温度で行う。 固相担体からの開裂を、当業者に既知の方法で行うことができる。 好ましくは、目的ペプチドのTos−Gly−(L)−Pro−(L)−Arg(Pbf)−OHを、希釈酸性溶液、好ましくはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸の0.1〜5%溶液で処理してCTC樹脂から開裂させる。 こうして得られたペプチドを、当該技術において既知の方法、好ましくは液相クロマトグラフィー精製技術により、更に精製できる。 工程d)に従って、トシル化したペプチド誘導体を、カップリング剤/添加剤系の存在下において、式III R−NH2 III(ここで、Rはp−アミノフェニルを意味し、1つのアミノ基を、α−アミノ保護基で保護する)のアニリンとカップリングする。 カップリングを、第3級アミン(例えば、Et3N、DIEA又はsym−コリジン、好ましくはDIEA)の存在下、DCC/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HATU/HOAt、PyBOP/Cl−HOBt、DEPBT/HOOBt、好ましくはDEPBT/HOOBtから選択されるカップリング剤/添加剤系の存在下で行う。 反応を、好ましくは適切な溶媒(例えば、DMF)中で0℃〜40℃の温度範囲で撹拌しながら行う。 反応混合物を、当業者に周知の方法に従って処理し、希釈酸(例えば、希HCl)で抽出してもよい。 こうして得られたペプチドを、当該技術において既知の方法、好ましくは液相クロマトグラフィー精製技術により、更に精製してもよい。 本発明の方法において、目的のペプチド異性体を、85%以上の優れた収率で、96%以上の光学純度で得ることができた。実施例1Fmoc−(L)−Arg(Pbf)−OHのCTC樹脂への結合 Fmoc−(L)−Arg(Pbf)(Merck Biosciences Novobiochem)500g(0.77mol)を、ジクロロメタン5.5L及びDIEA 812ml(4.77mol)の撹拌溶液に溶解した。CTC樹脂(Merck Biosciences GmbH、100〜200mesh、1%DVB、担持:0.8〜1.6mmol/g樹脂)1kgを加え、溶液を約2分間撹拌した。混合物を室温で3時間放置したが、1時間後及び2時間後にそれぞれ混合物を2分間撹拌した。3時間後、混合物を5〜10℃まで冷却し、メタノール300mlを加えた。懸濁液をこの温度で1時間放置した。次に混合物を吸引フィルタ上で濾過した。 次に、樹脂をジクロロメタン/メタノール/DIEA(80:15:5)の溶液に懸濁し、5分間撹拌し、30分間放置した。濾過した後、樹脂をDMF 5Lで4回、イソプロパノール2.5Lで4回、イソヘキサン2.5Lで3回洗浄した。樹脂は濡れたままであったので、樹脂を濾過する必要があった。次に樹脂を真空乾燥キャビネット内で30℃で40時間乾燥した。HPLCでの担持分析:0.405mmol/g Fmoc−Arg(Pbf)−CTCHPLC法:カラム:Keystone Beta Basic C18;移動相A:H2O+0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.075%TFA、T=30℃、t=22分、Rt=12.2分実施例2Tos−Gly−(L)−Pro−(L)−Arg(Pbf)−OH ペプチド反応容器に、Fmoc−(L)−Arg(Pbf)−CTC樹脂(担持:0.405mmol/g;2.075mmol)5gを充填した。ジクロロメタン87.5mlを加えた。樹脂を少なくとも30分間ジクロロメタン中で膨張させ、溶媒をNMPに交換した。こうして、NMP 87.5ml(3回)で樹脂の洗浄を行った。NMP中の5%ピペリジン溶液中で30分以内に脱保護を行った。続いて、樹脂をNMP 62.5mlで6回洗浄した。 NMP 8.75ml中のFmoc−(L)−Pro−OH 1.05g(3.11mmol)、HOBt 0.477g(3.11mmol)及びDIEA 1.09ml(6.22mmol)の溶液を調製し、5分後にNMP 7.5ml中のHBTU 1.18g(3.11mmol)を加えてカップリング処理を行った。10分間の予備活性化の後、上記の溶液を樹脂に加え、懸濁液を30℃で2時間注意深く撹拌した。カップリングを、NMPで十分に洗浄して続けた。 アミノ基の脱保護を、NMP中の5%ピペリジン溶液中で30分以内に行った。続いて、樹脂をNMPで十分に洗浄した。カップリング処理を、Fmoc−Gly−OH 0.925g(3.11mmol)の溶液を調製して行った。 HOBt 0.477g(3.11mmol)及び1.09ml(6.22mmol)、NMP7.5mlを5分後に加えた。10分間の予備活性化の後、上記の溶液を樹脂に加え、懸濁液を30℃で2時間注意深く撹拌した。カップリングを、NMPで十分に洗浄して続けた。 アミノ基の最後の脱保護を、再度NMP中の5%ピペリジン溶液中で30分以内に行い、続いてNMP及びジクロロメタン(3回)で十分に洗浄した。次に、樹脂をジクロロメタン75ml及び4−トルエンスルホニルクロリド(Tos−Cl)0.475g(2.49mmol)に懸濁し、DIEA 0.43ml(2.49mmol)を加えた。ペプチドの最終開裂を、DCM中の1%TFA溶液で行った。濾液をトルエンで希釈し、真空下で蒸発した。 粗ペプチド(Tos−Gly−(L)−Pro−(L)−Arg(Pbf)−OH)1.7gを得た。HPLC:カラム:Keystone Beta Basic C18;移動相A:H2O+0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.1%TFA)、T=30℃、t=34分、Rt=13.9分、A%:89.6%NMR:1H、13C 合致ESI−MS:MH+735.3、MNa+757.3;[M−H]−733.3実施例3Tos−Gly−(L)−Pro−(L)−Arg(Pbf)−p−Boc−アミノアニリド 反応容器に、DMF 9ml中のTos−Gly−(L)−Pro−(L)−Arg(Pbf)−OH 0.61g(0.83mmol)を充填し、HOOBt 0.135g(0.83mmol)及びDIEA 0.29ml(1.66mmol)を加えた。予備活性化した混合物を、5分間撹拌し、次にDEPBT 0.248g(0.83mmol)及びN−Boc−p−フェニレンジアミン0.156g(0.75mmol)を加えた。室温で5時間撹拌した後、溶媒を真空下で留去した。残渣をHCl水溶液で抽出した。シリカのクロマトグラフィーによる精製の後、生成物0.39g(85%)を得た。 HPLC 方法1:カラム:Keystone Beta Basic C18;150×4.6mm;勾配法移動相A:H2O+0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル+0.1%TFA、T=30℃、t=34分、Rt=16.11分、A%:91.13%HPLC 方法2:カラム:Chirobiotic T;10m、250×4.6mm;アイソクラティック法移動相:((アセトニトリル:MeOH;1:4)+0.2%Et3N+0.2%AcOH)、T=30℃、t=30分、Rt=4.53分、A%:95.4%NMR:1H及び13C:合致ESI−MS:MH+925.2、MNa+947.2、[M−H]−923.2 式I(式中、Tosはp−トルエンスルホニルを意味する)のペプチド誘導体又はその塩の製造方法であって、a)カップリング剤/添加剤系の存在下における固相担体上のアミノ酸であるアルギニン、プロリン及びグリシンの連続カップリング、b)グリシン部分のN−α−アミノ基のトシル化、c)トシル化したペプチド又はアミノ側鎖が保護されたその誘導体の、固相担体からの開裂、d)カップリング剤/添加剤系の存在下における、式III R−NH2 III(ここで、Rはp−アミノフェニルを意味し、1つのアミノ基はアミノ保護基で保護される)のアニリンとの、式IIのペプチド中間体又はアミノ側鎖が保護されたその誘導体の反応を含む、方法。 固相担体が、2−クロロトリチルクロリド−ポリスチレン樹脂であることを特徴とする、請求項1記載の方法。 アルギニンが、Pbf又はPmc保護基で保護された側鎖であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。 プロリンを、PG−Pro−OPfp、PG−Pro−OSu及びPG−Pro−OBtより選択される活性化誘導体、又はPG−Pro−OH(ここで、PGはアミノ保護基を意味する)の非活性化誘導体の形態で適用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の方法。 プロリンを、Fmoc−(L)−Pro−OHの形態で適用することを特徴とする、請求項4記載の方法。 グリシンを、PG−Gly−OPfp、PG−Gly−OSu及びPG−Gly−OBtより選択される活性化誘導体、又はPG−Gly−OH(ここで、PGはアミノ保護基を意味する)の非活性化誘導体の形態で適用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の方法。 グリシンを、Fmoc−Gly−OHの形態で適用することを特徴とする、請求項6記載の方法。 Fmoc保護基を、ピペリジンでの処置により除去することを特徴とする、請求項5又は7記載の方法。 工程a)におけるアミノ酸の連続カップリングのためのカップリング剤/添加剤系が、DCC/HOBt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、HATU/HOAt、DEPBT/HOOBt、PyBoP/Cl−HOBtより選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか記載の方法。 カップリング剤/添加剤系が、HBTU/HOBtであることを特徴とする、請求項9記載の方法。 式IIIのアニリンを用いる、式IIのペプチド中間体の反応のためのカップリング剤/添加剤系が、DCC/HOBt、HATU/HOAt、HBTU/HOBt、TBTU/HOBt、PyBOP/Cl−HOBt及びDEPBT/HOOBtから選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか記載の方法。 カップリング剤/添加剤系が、DEPBT/HOOBtであることを特徴とする、請求項11記載の方法。 4−トルエンスルホニルクロリドによりトシル化が行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。 トリフルオロ酢酸を用いて固相担体からの開裂を行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。 工程d)における式IIIのアニリンとの反応を、式IIのペプチド中間体のアミノ側鎖が保護された誘導体としてTos−Gly−Pro−Arg(Pbf)−OHと行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。