タイトル: | 特許公報(B2)_shRNA発現のための有効な新規ループ配列 |
出願番号: | 2007535531 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 15/113,C12Q 1/68 |
峰野 純一 上野 高嗣 岡本 幸子 蝶野 英人 安藤 達哉 伊豆 博幸 加藤 郁之進 JP 5139067 特許公報(B2) 20121122 2007535531 20060914 shRNA発現のための有効な新規ループ配列 タカラバイオ株式会社 302019245 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 峰野 純一 上野 高嗣 岡本 幸子 蝶野 英人 安藤 達哉 伊豆 博幸 加藤 郁之進 JP 2005267673 20050914 20130206 C12N 15/09 20060101AFI20130117BHJP C12N 15/113 20100101ALI20130117BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20130117BHJP JPC12N15/00 AC12N15/00 GC12Q1/68 A C12N 15/00 C12Q 1/68 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed REGISTRY(STN) AMBROS, V. et al.,MicroRNAs and other tiny endogenous RNAs in C. elegans.,Current Biology,2003年,Vol. 13,p. 807-818 BODEN, D. et al.,Enhanced gene silencing of HIV-1 specific siRNA using microRNA designed hairpins.,Nucleic Acids Res.,2004年,Vol. 32, No. 3,p. 1154-1158 MIYAGISHI, M. et al.,Optimization of an siRNA-expression system with an improved hairpin and its significantsuppressive effects in mammalian cells.,J. Gene. Med.,2004年,Vol. 6,p. 715-723 BEREZIKOV, E. et al.,Phylogenetic shadowing and computational identification of human microRNA genes.,Cell,2005年 1月,Vol. 120, ,p. 21-24 Chen,W.J. et al.,Pseudochaenichthys georgianus cytochrome b gene, mitochondrial gene encoding mitochondrial protein, partial cds.,GenBank: AF037119.1,1998年 3月 2日,VERSION: AF037119.1 GI:2921474,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AF037119 4 JP2006318247 20060914 WO2007032428 20070322 16 20090910 濱田 光浩 本発明は、医学、細胞工学、遺伝子工学、発生工学などの分野において有用な、RNAによる遺伝子抑制の効果を向上させることを可能にする方法、およびそれに関連する一連の技術に関する。 近年、小さなRNAによる遺伝子発現抑制が次々と発見されている。siRNA(short interfering RNA)と呼ばれる21mer〜23merの二本鎖RNAは配列特異的に遺伝子発現を抑制する。1998年にFireら(非特許文献1)が線虫にて二本鎖RNAが配列特異的に遺伝子のサイレングを引き起こすことを発見して以来、21〜23merにプロセッシングされたRNAがmRNAを切断する機構(非特許文献2)やRISC(RNA−induced silencing complex)の存在(非特許文献3)、Dicerのクローニング(非特許文献4)を経て、2001年にElbashirら(非特許文献5)により哺乳類細胞でもsiRNAによる配列特異的な発現抑制が可能であることが証明され、siRNAを用いた研究は一気に盛んになった。 一方、発生など多くのステージでの発現制御に大きな役割を果たしているmiRNA(microRNA)は、short hairpin構造(pre−miRNA)で細胞質に移行し、Dicerにより切断され成熟miRNAになる。miRNAは、一般に3’非翻訳領域に相補的に結合することにより、発現を翻訳段階で抑制するといわれている。 哺乳類細胞において、siRNAやmiRNAを人為的に細胞内で発現させる場合、発現ベクターからshRNA(short hairpin RNA)を発現させることが一般的である。このとき、センス配列とアンチセンス配列の間のループ配列が、細胞質への移行や、Dicerによる認識に重要であると言われており、最近の報告ではshRNAのループ配列にmiRNA由来の配列がよく使用されている。しかしながら、shRNAにおけるループ配列の重要性を示唆する報告があるにも拘らず、効果的なループ配列の検索はMiyagishiらの研究(非特許文献6)を除けばほとんど行われていない。Fire A、他5名、Nature、1998年、Vol.391、p.806−811Zamore PO、他3名、Cell、2000年、Vol,101、p.25−33Hammond SM、他3名、Nature、2000年、Vol.404、p.293−296Bernstein E、他3名、Nature、2001年、Vol.409、p.363−366Elbashir SM、他5名、Nature、2001年、Vol.411、p.494−498Miyagishi M、他4名、J.Gene Med.、2004年、Vol.6、p.715−723 本発明の目的は、上記従来技術を鑑みて行われたものであり、shRNAを利用した遺伝子抑制における効果の高いループ(loop)配列を提供することにある。本発明のループ配列を用いて、より強い抑制効果が得られれば、例えば遺伝子の機能解析実験などに大きな影響を及ぼすと考えられる。また、shRNAを利用した遺伝子抑制を利用した治療においては、その治療効果を左右する可能性がある。 本発明者らは鋭意研究の結果、次のような網羅的なループ配列検索を実施し、効果的なループ配列を見出した。これらの新規ループ配列は、従来使用されている配列と比べて高い遺伝子抑制効果を示すことを確認し、発明を完成した。すなわち、ヒト細胞で発現している短いRNAを精製し、マイクロビーズを用いた網羅的遺伝子発現解析技術(MPSS)を利用してスクリーニングし、その配列を解析した。また、配列情報を元にデータベースでの解析を行い、ヒトゲノムに100%マッチする配列の中から、既知のmiRNA、rRNA、tRNAにヒットしない配列を抽出し、二次構造予測から新規microRNAの候補を得た。得られた新規microRNA候補より無作為に9種類の配列を選択し、ステムループ配列よりループ配列を得た。こうして選択したループ配列を含むshRNA発現ベクターを構築し、本発明を完成させた。 すなわち、本発明の第1の発明は、標的遺伝子の遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列のスクリーニング方法であって、以下の工程を包含する方法に関する。(1)生体試料から低分子のRNAを抽出する工程、(2)(1)で得られた低分子RNAの塩基配列を決定する工程、(3)前記生体のゲノム情報を基に、(2)で得られた塩基配列の前後のゲノム配列を取得し、(2)で得られた塩基配列およびその前後のゲノム配列からなる一連の配列から、以下の(A)かつ(B)に該当する配列を選択する工程、 (A)一定の長さ当たりの自由エネルギーが最も低い領域の配列であって、ステムループ構造を形成する配列、 (B)(2)で得られた塩基配列がステムループ構造のステム領域に存在する配列、(4)(3)で得られたゲノム配列から、ループ配列を決定し、当該ループ配列の両端に標的遺伝子配列およびその逆方向の相補配列がステム領域を形成するように連結されたshRNAを構築する工程、(5)(4)で得られたshRNAを用いて標的遺伝子の遺伝子抑制効果を確認する工程。 本発明の第2の発明は、本発明の第1の発明の方法により得られる、遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列を含有する核酸に関する。 本発明の第2の発明において、ループ配列が以下から選択される塩基配列から選択される配列であってもよい:(1)配列表の配列番号12〜20のいずれか1つに記載の塩基配列;または(2)配列表の配列番号12〜20のいずれか1つに記載の塩基配列において1個以上の塩基の欠失、付加、挿入もしくは置換の少なくとも1つを有する塩基配列。 本発明の第3の発明は、本発明の第2の発明の核酸を含有するshRNAを発現するためのベクターに関する。 本発明の第4の発明は、本発明の第2の発明の核酸、もしくは本発明の第3の発明のベクターを含むキットに関する。 本発明の配列を含むshRNA発現ベクターは、従来良く使用されているループ配列と比較して高い遺伝子抑制効果を提供することが可能となる。本発明のスクリーニング方法および核酸の遺伝子抑制の効果を示す図である。本発明のスクリーニング方法および核酸の遺伝子抑制の効果を示す図である。本発明のスクリーニング方法および核酸の遺伝子抑制の効果を示す図である。本発明のスクリーニング方法および核酸の遺伝子抑制の効果を示す図である。本発明のスクリーニング方法および核酸の遺伝子抑制の効果を示す図である。 本明細書において「ステムループ(ヘアピンループ)構造」とは、一本鎖RNA又はDNA上に存在する逆方向反復配列間で水素結合によって生じる二本鎖の部分(ステム)とそれに挟まれたループの部分からなる構造を示す。つまりステム領域は、2つの領域の塩基配列が互いに相補的であり、かつ逆方向に存在している。水素結合する逆方向反復配列は完全に相補的であっても良く、部分的に相補的であってもよい。ループ部分の構造は一部にステム領域があっても良く、ステム領域にバルジが挿入されていても良い。ステムループ構造は、核酸の二次構造予測アルゴリズムにより予測、確認することができる。このアルゴリズムは、例えば、Vienna RNA Package(Hofacker Iら、Nucleic Acids Research,Vol.31(13),p.3429−31(2003))、MFOLD(Zuker Mら、Nucleic Acids Research,Vol.31(13),p.3406−15(2003))が挙げられる。 本明細書において「shRNA」とは、ステムループ構造を有するRNAを示す。shRNAは一本鎖RNAであり、一本鎖RNA上に存在する逆方向反復配列がそれぞれアニーリングし、ステム領域と呼ばれる二本鎖RNA(double stranded RNA:dsRNA)部分を形成する。前記逆方向反復配列に挟まれる部分をループ領域という。ループ領域の配列をループ配列という。 本明細書において「遺伝子抑制に有用」とは、遺伝子の発現抑制を行う際に使用することが可能であることを示し、特に遺伝子抑制を強く誘導すること、つまり遺伝子の発現を強く抑制することをいう。遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列とは、遺伝子抑制を行うときに利用可能であるshRNAのループ配列であり、特に限定はされないが例えば、一般にshRNA発現ベクターのループ構造に利用されていた、配列番号21に示す配列のループ領域(Brummelkamp et al. Science. 2002 296:550−553.)と比較して、遺伝子抑制の効果が高いループ配列が遺伝子抑制に特に有用である。 本明細書において「自由エネルギー」とは、Zuker法(Zuker Mら、RNA biochemistry and biotechnology,(Kluwer Academic Publishers),p.11−43(1999))により与えられる値であり、RNAの高次構造を予測するために使用される。1.遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列のスクリーニング方法 本発明の遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列のスクリーニング方法は以下の工程を包含する。(1)生体試料から低分子のRNAを抽出する工程、(2)(1)で得られた低分子RNAの塩基配列を決定する工程、(3)前記生体のゲノム情報を基に、(2)で得られた塩基配列の前後のゲノム配列を取得し、(2)で得られた塩基配列およびその前後のゲノム配列からなる一連の配列から、以下の(A)かつ(B)に該当する配列を選択する工程、 (A)一定の長さ当たりの自由エネルギーが最も低い領域の配列であって、ステムループ構造を形成する配列、 (B)(2)で得られた塩基配列がステムループ構造のステム領域に存在する配列、(4)(3)で得られたゲノム配列から、ループ配列を決定し、当該ループ配列の両端に標的遺伝子配列およびその逆方向の相補配列がステム領域を形成するように連結されたshRNAを構築する工程、(5)(4)で得られたshRNAを用いて標的遺伝子の遺伝子抑制効果を確認する工程。 本発明のスクリーニング方法において、生体試料はRNAを含有すると考えられる試料であれば特に限定は無く、培養細胞、組織、器官、体液などいずれの由来であっても良い。さらに、遺伝子抑制を行う生体由来の生体試料であることが好ましいが、遺伝子抑制に有用であれば遺伝子抑制を行う生体以外の生物由来の生体試料であっても良い。これらの生体試料よりRNAを抽出する方法は、当業者に公知の方法を使用すればよく、生体試料に最適化されたキットが数多く市販されている。 本発明のスクリーニング方法において、低分子のRNAは一般的なmRNA、tRNA、rRNAよりも低分子量のRNAを意味し、miRNA程度の長さのRNAが特に好適である。特に限定はされないが例えば、10〜100塩基、好ましくは15〜50塩基、より好ましくは17〜30塩基、特に好ましくは21〜27塩基の長さのRNAである。低分子のRNAを抽出する方法は、RNAを分子量により分画できる方法であれば特に限定されないが、例えばゲル電気泳動法による切り出し、カラム分画法による分取、フィルターによるろ過法などが挙げられる。 前記低分子RNAの塩基配列を決定する方法は、一般のRNA配列決定方法を使用することがきる。特に限定はされないが、例えばRNAよりcDNAを合成し、チェーンターミネーション法、MPSS法(日本特許公開第2000−515006号公報およびBrenner S.他23名 Nature Biotechnology 2000年 vol.18、p630−634)等により配列を決定すればよい。配列が決定された低分子RNAの塩基配列は、由来する生体のゲノムデータベースなどを用いてゲノム配列に一致する配列を選択することが好ましい。つまり、ゲノム塩基配列に一致しない低分子RNA配列は、除外することが好ましい。さらに、mRNA、tRNA、rRNAである配列をデータベースと比較して除外することが好ましい。前記検討を行うことによりノイズを除去することができるため、後に行う選択の効率を向上させることができる。前記データベースは、特に限定はされないが例えば、UCSCゲノムデータベース、NCBI Refseqデータベース、the European ribosomal RNAデータベース、the Genomic tRNAデータベースが利用できる。 次に、決定した低分子RNA塩基配列を基に、由来する生体のゲノム情報から低分子RNA塩基配列の前後のゲノム配列を取得する。この低分子RNA塩基配列およびその前後の配列にステムループ構造のループ領域の配列が含まれることが考えられる。ループ配列を選択する低分子RNA塩基配列およびその前後の配列の長さは、特に限定はされないが例えば、20〜500塩基、40〜300塩基、60〜260塩基、80〜220塩基、110〜200塩基が好適である。この低分子RNA塩基配列を含む前後のゲノム配列から、(A)Zuker法により自由エネルギーを計算し、自由エネルギーが低くなる領域、好ましくは自由エネルギーが最も低くなる領域の配列を選択する。つまり、前記低分子RNA塩基配列を含む前後のゲノム配列の中で、一定の長さの領域(例えば110塩基の領域)を、端より1塩基ずつずらした領域についてそれぞれ自由エネルギーを算出し、例えば最も自由エネルギーが低い領域を選択する。最も低い自由エネルギーは、−25.0kcal/mol以下、好ましくは−30.0kcal/mol以下、より好ましくは−85.0〜−30.0kcal/mol以下であることが望ましい。さらに、最も自由エネルギーが低い領域であって、ステムループ構造を形成すると予想される配列を選択する。また、(B)低分子RNAの塩基配列がステムループ構造のステム領域に存在する配列を選択する。これらの選択は、例えば、Vienna RNA PackageのRNA fold、mfoldを利用することができる。すなわち、特定の配列と、その逆方向の相補配列を含むゲノム配列はステムループ構造を形成すると予想され、前記2つの配列にはさまれた配列がループ配列である。 次に、ゲノム配列から選択したループ配列と、遺伝子抑制を行う標的遺伝子またはその一部の配列およびその逆方向の相補配列を含有するステム領域とからなるshRNAを構築する。このshRNAは化学的に合成してもよく、RNAポリメラーゼにより転写されるようなDNAを作製し、RNA転写システムにより生成してもよい。 前記で構築したshRNAの遺伝子抑制における効果を確認することにより、ループ領域の遺伝子抑制に与える影響を評価することができる。強い遺伝子抑制を起こすshRNAのループ配列は、遺伝子抑制に有用なループ配列である。遺伝子抑制の効果を確認する方法は、特に限定はされないが例えば、shRNAを直接細胞に導入する方法、shRNAが細胞内で転写されるDNA構築物を細胞内に導入する方法があり、細胞内の標的遺伝子の転写、翻訳を検出することにより確認することができる。遺伝子抑制を確認するためのベクター、宿主、およびそれらのキットが数多く市販されている。本発明のスクリーニング方法において、これらのキットを好適に使用することができる。特に限定はされないが、例えば、蛍光タンパク質を発現している細胞に、本発明のスクリーニング方法により得られたループ配列と、蛍光タンパク質をコードする核酸の一部をステム領域とする配列を含むshRNAを導入し、細胞の蛍光タンパク質を定量することによりループ領域の遺伝子抑制に与える影響を評価することができる。 本発明のスクリーニング方法により選択されたループ配列を含むshRNAは、siRNAやmiRNAの機構により、効果的に遺伝子発現を抑制することができ、遺伝子機能解析、遺伝子治療などに有用である。2.遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列を含有する核酸、ベクター、キット 本発明の遺伝子抑制に有用なshRNAのループ配列を含有する核酸は、前記1.記載のスクリーニング方法により得られたループ配列を含有する核酸である。本発明のshRNAのループ配列の長さは、2〜200塩基、好ましくは4〜50塩基、特に好ましくは8〜20塩基である。このような塩基配列は例えば、配列表の配列番号12〜20に記載のループ配列が挙げられる。また、配列表の配列番号12〜20のいずれかに記載の配列において1個以上、好ましくは1個又は複数個、特に好ましくは1個又は数個、さらに好ましくは1〜10個の塩基の欠失、付加、挿入もしくは置換の少なくとも1つを有する配列で示され、かつ遺伝子抑制に有用なものが挙げられる。ここで、配列表の配列番号12〜20のいずれかに記載の配列において1個以上の塩基の欠失、付加、挿入もしくは置換の少なくとも1つを有する配列としては、例えば配列番号12〜20のいずれかに記載のヌクレオチドに50%以上のホモロジーを有する核酸配列、好ましくは前記のヌクレオチドに70%以上のホモロジーを有する核酸配列、特に好ましくは前記のヌクレオチドに90%以上のホモロジーを有する核酸配列が例示される。当業者は、本発明の核酸配列を基に、容易にループ配列を含有するshRNAを作製、発注することができ、用意したshRNAを標的遺伝子を発現する細胞などに導入して容易に遺伝子抑制の効果が確認できるため、本発明の核酸を基に1個以上の塩基の欠失、付加、挿入もしくは置換の少なくとも1つを行った核酸も本発明に含まれると解釈されるべきである。 さらに、本発明の核酸は、前記の核酸にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能であり、遺伝子抑制に有用な核酸を包含する。前記のストリンジェントな条件としては、1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行、J.サムブルック(J. Sambrook)ら編集、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版(Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed.)等に記載された条件が例示される。具体的には、例えば0.5% SDS、5×デンハルツ溶液、0.01% 変性サケ精子DNAを含む6×SSC中、プローブとともに65℃にて12〜20時間インキュベートする条件が挙げられる。プローブにハイブリダイズした核酸は、例えば0.5% SDSを含む0.1×SSC中、37℃で洗浄して非特異的に結合したプローブを除去した後に検出することができる。 本発明の核酸を挟んで標的遺伝子の塩基配列またはその一部の塩基配列と、その相補的な配列が互いに逆方向に配置されたRNAは、前記標的遺伝子を効果的に抑制することができるため、dsRNAを利用する遺伝子抑制に有用である。ステム領域の長さは、遺伝子抑制において利用できるdsRNAを生成する長さであれば特に限定はないが、例えば、10〜200塩基、好ましくは14〜30塩基、特に好ましくは19〜24塩基である。 また、本発明の核酸を適切な発現ベクターに挿入した、遺伝子抑制に有用なベクターも本発明に含まれる。本発明のベクターは、本発明のループ配列を含有するshRNAが転写されるものであれば、つまり、遺伝子抑制を行う生物で機能するプロモーター、3’UTR、5’UTRなどの転写調節配列、ターミネーター、ポリAシグナルなど転写終結配列を有するベクターであれば何でもよい。例えばpSINsi−hU6などのpSINsiベクターシリーズ(タカラバイオ社製)、pBAsiベクターシリーズ(タカラバイオ社製)、piGENEベクター(iGENE社製)、pSIRENベクター(クローンテック)のプロモーター下流に本発明のループ配列を挿入したベクターは、標的とする遺伝子またはその一部の配列を組み込めば直ちにshRNA発現ベクターとなるため、有用である。その場合、標的遺伝子またはその一部の配列は、shRNAのステム領域を形成するように逆方向反復配列となり、かつループ配列を挟むようにベクターを構築すればよい。 さらに、本発明のshRNAのループ配列を含有する核酸、または本発明のベクターを少なくとも1つ含むキットも本発明に含まれる。本発明のキットは、さらに宿主となる生物、細胞、組織、器官を含んでいてもよく、これらの宿主で標的遺伝子が転写、発現するためのベクター、核酸構築物を含んでいてもよい。また、宿主へ核酸を導入するための形質転換用試薬を含んでいてもよい。 以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。 また、本明細書に記載の操作のうち、基本的な操作については2001年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法によった。 さらに、以下に示す大腸菌を用いたプラスミドの構築には、特に記載のない限り大腸菌TOP10(Invitrogen社製)を宿主として使用した。また、形質転換された大腸菌は30μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地(トリプトン 1%、酵母エキス 0.5%、NaCl 0.5%、pH7.0)、あるいは上記培地に1.5%の寒天を加え固化させたLB−クロラムフェニコールプレートを用いて37℃で好気的に培養した。実施例1 試料の調製(1)RNAの抽出 ヒト胎児腎臓由来293T/17細胞(ATCC CRL−11268)を、10% ウシ胎児血清(FBS;ギブコ社製)含有DMEM培地中で5%CO2存在下、37℃で7日間培養した。細胞を回収し、トリゾル試薬(ギブコ社製)により全RNAを抽出した。(2)低分子RNAの分離 293T/17細胞由来全RNA 1mgをMicrocon 30(ミリポア社製)にて低分子RNAの濃縮を行った。濃縮した低分子RNAを15% TBE−ウレアゲル(Invtrogen社製)にて電気泳動を行った。電気泳動後、21塩基から27塩基付近を切り出し、低分子RNAをゲルより分離した。(3)低分子RNA タグライブラリー作製 米国公開公報第2004/0002104号記載のタグベクターpMBS1をBamHIおよびBbsI(いずれもニュー イングランド バイオラブ(NEB)社製)により消化したあと、ウシ小腸アルカリホスファターゼ(CIAP、タカラバイオ社製)により脱リン酸化処理を行った。 293T/17細胞由来、低分子RNA 30ngに大腸菌C75アルカリホスファターゼ(BAP C75、タカラバイオ社製)を作用させ、脱リン酸化を行った。続いて、この低分子RNAの3’末端に5’側の6塩基分がRNA、その他がDNAとなっている配列表の配列番号1に示される合成RNA/DNAキメラオリゴをT4 RNA Ligase(タカラバイオ社製)で連結した。その後15% TBE−ウレアゲル(Invtrogen社製)で電気泳動を行った。電気泳動後、目的産物の切り出しを行いゲルより分離した。 この合成オリゴ連結低分子RNAを T4 polynucleotide kinase(タカラバイオ社製)を作用させることにより、5’末端のリン酸化を行った。その後5’末端に3’側の6塩基分がRNA、その他がDNAとなっている配列表の配列番号2に示される合成DNA/RNA キメラオリゴをT4 RNA Ligase(タカラバイオ社製)で連結した。さらに、15% TBE−ウレアゲル (Invtrogen社製)で電気泳動を行った。電気泳動後、目的産物のゲル抜きを行いゲルより分離した。 この両末端へ合成オリゴを連結させた低分子RNAを鋳型とし、配列表の配列番号3で示されるプライマーを用いてdCTP、dATP、dGTP、dTTPを基質としてM−MLV RTase(タカラバイオ社製)で逆転写反応を行った。このDNAを鋳型とし、配列表の配列番号4で示されるFAM標識オリゴヌクレオチドと、配列表の配列番号5で示されるFAM標識オリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、PCRを行った。PCR反応は、Pyrobest DNA polymerase(タカラバイオ社製)を使用し、5’−メチル化−dCTP、dATP、dGTP、dTTPを基質として行った。このPCR産物をフェノール処理、クロロホルム処理、エタノール沈殿によってDNAを精製した。 精製したPCR産物をSfaNI(NEB社製)にて消化を行い、DNAを精製した。このDNAについて15% アクリルアミドゲルによる電気泳動を行い、目的のDNA断片のバンドを切り出し、ゲルよりDNA断片の抽出を行った。 前記の方法により得られたcDNA断片と前述の直鎖化したpMBS1とを、T4 DNA Ligase(タカラバイオ社製)にて連結し、得られた組換えプラスミドを用いたエレクトロポレーションにより大腸菌TOP10を形質転換した。形質転換体の一部をLB−クロラムフェニコールプレートに接種し、生じたコロニー数から独立したクローン数を算出するとともに、残りの形質転換体をLB−クロラムフェニコール含有LB培地に接種し、クローン数64万相当の培養物からQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドDNAを精製し、タグライブラリーを得た。実施例2 マイクロビーズの調製 上記のタグライブラリーを鋳型にしてPCRを行った。PCRは5’−メチル化−dCTP、dATP、dGTP、dTTPを基質とし、プライマーには配列表の配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドと、配列番号7で示されるFAM標識オリゴヌクレオチドと配列表の配列番号7で示されるビオチン化オリゴヌクレオチドを9:1の比率で混合したものを用い、Ex Taq Hot Start Version (タカラバイオ社製)にて反応した。PCR産物を精製した後、制限酵素PacI(NEB社製)による消化を行い、さらに、dGTP存在下でT4 DNAポリメラーゼ(NEB社製)を作用させ、タグ部分の1本鎖化を行った後、DNAを精製した。 1本鎖タグつき標的DNA断片30μgと、アンチタグが結合したマイクロビーズ(Solexa社製)7.2×107個を混合し、100μlの500mM NaCl、11.6 mM リン酸ナトリウム、0.01% Tween20、3.5% デキストラン硫酸中で69℃、3日間ハイブリダイズさせた。反応は2本分行った。マイクロビーズを10mM Tris−HCl(pH8)、1mM EDTA、0.01% Tween 20で洗浄し、2本分のマイクロビーズを1本にまとめた。 洗浄後のマイクロビーズにT4 DNAリガーゼを作用させることによって標的DNA断片とアンチタグの間に共有結合を形成させた。その後、600μgダイナビーズM−280ストレプトアビジン(磁性ストレプトアビジンビーズ、ダイナル社製)に25℃で30分間結合させ、MPC(ダイナル社製)に1分間静置した後、上清を除去した。10mM Tris−HCl(pH8)、1mM EDTA、0.01% Tween 20 1mlにて再懸濁し、MPC(ダイナル社製)に静置した後、上清を除去するという洗浄操作を繰り返し、1本鎖タグつき標的DNA断片の載ったマイクロビーズのみを分離した。 分離したマイクロビーズをMboI(タカラバイオ社製)にて消化し、ダイナビーズM−280ストレプトアビジンより切り出した。さらにdGTP存在下Klenow Fragmentをマイクロビーズに作用させた後、2等分し、2種類のアダプターDNAをT4 DNAリガーゼを用いて連結した。なお、アダプターDNAは、配列表の配列番号8で示されるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号9で示されるオリゴヌクレオチドをアニールさせたもの、および配列表の配列番号10で示されるオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号11で示されるオリゴヌクレオチドをアニールさせたものである。実施例3.MPSS解析によるmicroRNA候補配列の抽出(1)MPSS解析 上記のマイクロビーズを、日本特許公開第2000−515006号公報およびBrenner S.他23名 Nature Biotechnology 2000年 vol.18、p630−634に開示された技術を用いて、マイクロビーズ上に固定化された標的DNAの配列22塩基分を読み取り、同じ配列をまとめて個数を算出した。次に、算出した個数を合計し、個々の配列の個数を合計個数で割り算して100万を掛け、100万個あたりの個々の配列の個数を算出した。(2)MPSSデータよりの新規microRNA候補配列の抽出 上記のMPSS解析により得られた4737の配列を、UCSCゲノムデータベース(http://genome.ucsc.edu)にホモロジー検索を行い、ゲノム配列にマッチした906の配列を抽出した。その後、SangerマイクロRNAデータベース(http://microrna.sanger.ac.uk/)、NCBI Refseqデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/)、the European ribosomal RNAデータベース(http://www.psb.ugent.be/rRNA/)、the Genomic tRNAデータベース(http://lowelab.ucsc.edu/GtRNAdb/)にホモロジー検索を行い、どのデータベースにもマッチしない243の配列を抽出した。その後、抽出した配列がマッチしたゲノム配列情報よりその配列の両末端を88塩基分延ばし、198塩基の配列を取得し、この配列の端から110塩基の配列を1塩基ずつずらして、88の互いに1塩基異なる110塩基の配列を作成した。この110塩基の配列の2次構造予測をVienna RNA Package(http://www.tbi.univie.ac.at/~ivo/RNA/)のRNA foldを用いて行い、自由エネルギーが最小で、かつ、ステムループを形成し、かつ、ステム部分にあるMPSS解析により得られた22塩基の配列中16塩基以上が相補鎖側と相補的であるものを抽出し、42の新規microRNAの候補を得た。得られた新規microRNA候補より無作為に9種類の配列を選択し、ステムループ配列よりループ配列を得た(配列表の配列番号12〜20に示す)。選択した9種類の自由エネルギーは、−84.1〜−32.7kcal/molであった。実施例4 各種ループ配列を有するshRNA発現ベクターの作製 緑色蛍光タンパク質rsGFPの標的配列A(GGAGTTGTCCCAATTCTTG)(配列番号27)および標的配列B(GACACGTGCTGAAGTCAAG)(配列番号28)に対するshRNA発現ベクターを以下の手順で作製した。標的配列について配列番号12から20のループ配列を有するステムループ構造のshRNA(すなわち、いずれかのループ配列の両端に配列番号27または28の配列およびその逆方向の相補配列が連結したRNA)を発現するための合成オリゴDNAを発現ベクターpSINsi−hU6(タカラバイオ社製)のhU6プロモーターの下流に、製品説明書の手順に従って挿入しプラスミドベクターを構築した。対照として、これまでshRNA発現ベクターのループ構造に利用されていた、配列番号21に示す配列のループ(Brummelkamp et al. Science. 2002 296:550−553.)を発現するベクターを作製した。ネガティブコントロールとして、何も挿入しないベクターを作製した。得られた各種ベクターは大腸菌JM109に形質転換し、プラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、トランスフェクション用DNAとして供した。実施例5 各種ループ配列を有するshRNA発現レトロウイルスベクターの作製 実施例4で調製したプラスミドベクターを293T/17細胞に、Retorovirus Packaging Kit Ampho(タカラバイオ社製)を用いて製品プロトコールに従いトランスフェクションし、各種アンフォトロピックウイルス上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過し、使用するまで−80℃超低温フリーザーで保存した。実施例6 レトロウイルスベクターによる遺伝子抑制効果の確認 標的遺伝子rsGFPを安定に発現しているHT1080細胞(ATCC CCL−121)およびK562細胞(ATCC CCL−243)は以下の手順で作製した。 rsGFP発現ベクターpQBI25(Qbiogene社製)を制限酵素NheI及びNotIで切断し、775bpのGFP遺伝子断片を得た。次にpQBI polII(Qbiogene社製)を制限酵素NheI及びNotIで切断してrsGFP−NeoR融合遺伝子を除去し、先に得た775bpのrsGFP遺伝子断片を挿入し、polIIプロモーター制御下でrsGFP遺伝子が発現するベクターpQBI polII(neo−)を得た。pQBI polII(neo−)を制限酵素XhoIで消化し、polIIプロモーター制御下、GFP発現ユニットを含むDNA断片を得、その末端をDNA blunting kit(タカラバイオ社製)を用いて平滑化した。レトロウイルスベクタープラスミドpDON−AI(タカラバイオ社製)を制限酵素XhoIとSphIで消化して得られたベクター断片4.58kbpの末端をDNA blunting kit(タカラバイオ社製)を用いて平滑化したのち、アルカリフォスファターゼ(タカラバイオ社製)を用いて脱リン酸化した。この平滑化したベクターに先の平滑化したpolIIプロモーター制御下rsGFP発現ユニットを含むDNA断片をDNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いて挿入し、rsGFP発現組換えレトロウイルスベクターpDOG−polIIを得た。また、平滑化したベクターに平滑化したGFP遺伝子を挿入してrsGFP発現組換えレトロウイルスベクターpDOGを得た。 これらプラスミドベクターをレトロウイルス調製用細胞G3T−hi(タカラバイオ社製)に、Retorovirus Packaging Kit Amphoを用いて製品プロトコールに従いトランスフェクションし、各種アンフォトロピックウイルス上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過し、使用するまで−80℃超低温フリーザーで保存した。 HT1080細胞を6穴組織培養用プレート(岩城硝子社製)に、1ウェルあたり5×104個播種し、10% ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM培地中で5%CO2存在下、37℃で24時間培養した。 アンフォトロピックDOGウイルス液を段階希釈し、ポリブレン(臭化ヘキサジメトリン;シグマ社製)8μg/ml存在下で感染を行った。感染後3日間培養し、GFP発現をフローサイトメーター(FACS Vantage,Becton Dickinson社製)で分析し、導入効率20%以下のサンプルからGFP陽性細胞をソーティングにより回収し、培養を行い、GFP安定発現細胞HT1080−GFPとした。 K562細胞は10% ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI1640培地中で5%CO2存在下、37℃で培養した。 アンフォトロピックDOG−polIIウイルス液を段階希釈し、レトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)を用いた標準的な方法で感染を行った。感染後3日間培養し、GFP発現をフローサイトメーターで分析し、導入効率20%以下のサンプルからGFP陽性細胞をソーティングにより回収し、培養を行い、GFP安定発現細胞K562−GFPとした。 このようにして調製したHT1080−GFPおよびK562−GFPに実施例5で調製したレトロウイルスベクターを感染した。HT1080−GFPにはウイルスベクターを10倍および100倍希釈し、ポリブレン8μg/ml存在下で感染を行った。K562−GFPにはウイルスベクターを原液および10倍希釈し、レトロネクチンを用いた標準的な方法で感染を行った。感染から24時間経過した後、HT1080−GFPはG418(ジェネティシン;インビトロジェン社製)を500μg/ml含有する増殖培地に、K562−GFPはG418を1000μg/ml含有する増殖培地に交換し、2週間選択培養を行った。 2週間選択培養し、siRNAを安定に発現している細胞を獲得後、フローサイトメーターで分析し、GFPの蛍光強度を算出した。対照実験群の蛍光強度に対する各実験群での蛍光強度の割合を算出することによって遺伝子抑制効果を評価した。標的配列AでのHT1080−GFPの結果を図1に、標的配列AでのK562−GFPの結果を図2に示す。標的配列BでのHT1080−GFPの結果を図3に、標的配列BでのK562−GFPの結果を図4に示す。図中、縦軸はGFPの蛍光強度についてネガティブコントロール(Negative control)を100としたときの相対値で示す(Relative GFP mean (%))。横軸の数字は配列番号を示す。図に示されるように、配列番号21に示されるループ配列と比較して、配列番号12、13、14、15、16、18、19、20に示されるループ配列の遺伝子抑制効果が高いことが示された。実施例7 各種ループ配列を有するshRNA発現ベクターの作製 ヒトインテグリンα4 の標的配列(GAGTGTTTGTGTACATCAA)(配列番号29)に対するshRNA発現ベクターを以下の手順で作製した。標的配列について実施例4にて使用した配列番号13、19、及び近年siRNA効果が高いとされよく使用されているmicroRNA−30のステムループ配列(Boden et al. Nucleic Acids Research 2004 32(3):1154−1158)である配列番号22のループ配列を有するshRNA(すなわち、いずれかのループ配列の両端に配列番号29およびその逆方向の相補配列が連結したRNA)を発現するための合成オリゴDNAを発現ベクターpSINsi−hU6(タカラバイオ社製)のhU6プロモーターの下流に、製品説明書の手順に従って挿入しプラスミドベクターを構築した。対照として、これまでshRNA発現ベクターのループ構造に利用されていた、配列番号21に示す配列のループ(Brummelkamp et al. Science. 2002 296:550−553.)を発現するベクターを作製した。ネガティブコントロールとして、実施例4で作製した配列番号27に示すrsGFPの標的配列Aと配列番号21に示す配列のループを有するプラスミドベクターを使用した。得られた各種ベクターにて大腸菌JM109を形質転換し、プラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、トランスフェクション用DNAとして供した。実施例8 各種ループ配列を有するshRNA発現レトロウイルスベクターの作製 実施例7で調製したプラスミドベクターをレトロウイルス調製用細胞G3T−hi(タカラバイオ社製)に、Retorovirus Packaging Kit Ampho(タカラバイオ社製)を用いて製品プロトコールに従いトランスフェクションし、各種アンフォトロピックウイルス上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過し、使用するまで−80℃超低温フリーザーで保存した。各ウイルス作製は2例ずつ行った。実施例9 レトロウイルスベクターのタイター測定 実施例8で調製したレトロウイルスベクターを段階希釈し、HT1080細胞(ATCC CCL−121)へポリブレン8μg/ml存在下で感染させ、感染から24時間経過した後、G418(ジェネティシン;インビトロジェン社製)を500μg/ml含有する増殖培地に交換し、2週間選択培養を行った。形成されたコロニー数よりレトロウイルスベクターのタイターを算出した。実施例10 レトロウイルスベクターによる遺伝子抑制効果の確認 HL60(ATCC CCL−240)細胞に実施例8で調製し、実施例9にてタイター測定を行ったレトロウイルスベクターをMOI2にてレトロネクチンを用いた標準的な方法で感染を行った。感染から24時間経過した後、G418を1000μg/ml含有する増殖培地に交換し、2週間選択培養を行った。 2週間選択培養し、siRNAを安定に発現している細胞を回収し、QIAGEN RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)にて全RNAの抽出及びDNAseI処理を行った。抽出した全RNAをランダムプライマー(6mer)を用いて、Reverse Transcriptase M−MLV(タカラバイオ社製)にて逆転写反応を行い、SYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ社製)及び 配列番号23、24のインテグリンα4増幅用プライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、インテグリンα4の遺伝子発現量の相対値を算出した。全RNA量の補正は配列番号25、26のGAPDH遺伝子増幅用プライマーを用いて行った。 対照実験群のインテグリンα4発現相対値に対する各実験群での発現相対値の割合を算出することによって遺伝子抑制効果を評価した。結果を図5に示す。図中、縦軸はインテグリンα4発現量についてネガティブコントロール(Negative control)を100としたときの相対値で示す(Relative integrin α4 mean (%))。横軸の数字は配列番号を示す。図5に示されるように、配列番号21に示されるループ配列、配列番号22に示されるmicroRNA−30のループ配列と比較して、配列番号13、19、に示されるループ配列の遺伝子抑制効果が高いことが示された。さらに今回比較したループ配列の遺伝子抑制効果の高さの順番は、実施例4、5、6にて行ったGFPに対する遺伝子抑制効果の結果と一致した。 本発明により、遺伝子抑制に有用なshRNAのループ領域をコードする核酸を簡便にスクリーニングすることが可能となる。さらに、遺伝子抑制に有用で、従来使用されているshRNAのループ配列よりも遺伝子抑制作用の大きいshRNAのループ領域をコードする核酸、該核酸を含有するベクター、前記核酸またはベクターを含有するキットを提供することが可能となる。 SEQ ID NO:1: Synthetic chimera oligonucleotide. "nucleotide 1 to 6 are ribonucleotide-other nucleotides are deoxyribonucleotides SEQ ID NO:2: Synthetic chimera oligonucleotide. "nucleotide 17 to 22 are ribonucleotide-other nucleotides are deoxyribonucleotides SEQ ID NO:3: Synthetic primer for revearse transcription. SEQ ID NO:4: Synthetic primer. SEQ ID NO:5: Synthetic primer. SEQ ID NO:6: Synthetic primer. SEQ ID NO:7: Synthetic primer. SEQ ID NO:8: Synthetic oligonucleotide for adaptor DNA. SEQ ID NO:9: Synthetic oligonucleotide for adaptor DNA. SEQ ID NO:10: Synthetic oligonucleotide for adaptor DNA. SEQ ID NO:11: Synthetic oligonucleotide for adaptor DNA. SEQ ID NO:12: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:13: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:14: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:15: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:16: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:17: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:18: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:19: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:20: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:21: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:22: Nucleotide sequence for loop region of shRNA. SEQ ID NO:23: Synthetic primer for amplification of integrin alpha 4 gene SEQ ID NO:24: Synthetic primer for amplification of integrin alpha 4 gene SEQ ID NO:25: Synthetic primer for amplification of GAPDH gene SEQ ID NO:26: Synthetic primer for amplification of GAPDH gene SEQ ID NO:27: Green fluorescence protein rsGFP target sequence A SEQ ID NO:28: Green fluorescence protein rsGFP target sequence B SEQ ID NO:29: Human integrin alpha 4 target sequence shRNAのためのループ配列である、配列表の配列番号19に記載の塩基配列からなる核酸。 請求項1記載の核酸を含有するshRNAを発現するためのベクター。 請求項1記載の核酸、もしくは請求項2記載のベクターを含むキット。 ループ配列が配列表の配列番号19に記載の塩基配列からなる核酸を含むshRNA。配列表