タイトル: | 特許公報(B2)_脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3 |
出願番号: | 2007535139 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07K 14/47,A61K 38/00,A61K 45/00,A61K 31/7048,A61K 39/39,A61P 1/04,A61P 1/16,A61P 3/10,A61P 5/14,A61P 7/04,A61P 7/06,A61P 9/10,A61P 13/12,A61P 15/00,A61P 17/00,A61P 19/00,A61P 19/02,A61P 21/00,A61P 21/04,A61P 25/00,A61P 31/04,A61P 31/10,A61P 27/02,A61P 29/00,A61P 31/12,A61P 33/02,A61P 35/00,A61P 37/00,A61P 43/00,C12P 21/02,C12N 15/09,C07K 1/16 |
リタ・デ・サンティス ジョヴァンニ・サルヴァトーリ パオロ・カルミナーティ アントニオ・インフォルツァート JP 5014999 特許公報(B2) 20120615 2007535139 20050928 脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3 シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ 591043248 SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 冨田 憲史 100122301 志賀 美苗 100127638 リタ・デ・サンティス ジョヴァンニ・サルヴァトーリ パオロ・カルミナーティ アントニオ・インフォルツァート IT RM2004A000489 20041008 20120829 C07K 14/47 20060101AFI20120809BHJP A61K 38/00 20060101ALI20120809BHJP A61K 45/00 20060101ALI20120809BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20120809BHJP A61K 39/39 20060101ALI20120809BHJP A61P 1/04 20060101ALI20120809BHJP A61P 1/16 20060101ALI20120809BHJP A61P 3/10 20060101ALI20120809BHJP A61P 5/14 20060101ALI20120809BHJP A61P 7/04 20060101ALI20120809BHJP A61P 7/06 20060101ALI20120809BHJP A61P 9/10 20060101ALI20120809BHJP A61P 13/12 20060101ALI20120809BHJP A61P 15/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 17/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 19/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 19/02 20060101ALI20120809BHJP A61P 21/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 21/04 20060101ALI20120809BHJP A61P 25/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 31/04 20060101ALI20120809BHJP A61P 31/10 20060101ALI20120809BHJP A61P 27/02 20060101ALI20120809BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 31/12 20060101ALI20120809BHJP A61P 33/02 20060101ALI20120809BHJP A61P 35/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 37/00 20060101ALI20120809BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120809BHJP C12P 21/02 20060101ALI20120809BHJP C12N 15/09 20060101ALI20120809BHJP C07K 1/16 20060101ALN20120809BHJP JPC07K14/47A61K37/02A61K45/00A61K31/7048A61K39/39A61P1/04A61P1/16A61P3/10A61P5/14A61P7/04A61P7/06A61P9/10A61P13/12A61P15/00A61P17/00A61P19/00A61P19/02A61P21/00A61P21/04A61P25/00A61P31/04A61P31/10A61P27/02A61P29/00A61P31/12A61P33/02A61P35/00A61P37/00A61P43/00 105A61P43/00 111A61P43/00 121C12P21/02 CC12N15/00 AC07K1/16 CA/BIOSIS/WPIDS(STN) PubMed SwissProt/PIR/GeneSeq 特表2002−503642(JP,A) 特表2004−512372(JP,A) 国際公開第03/011326(WO,A1) 国際公開第03/072603(WO,A1) J.Biol.Chem.,Vol.272,No.52(1997)p.32817-32823 J.Immunol.,Vol.150,No.5(1993)p.1804-1812 J.Immunol.,Vol.153,No.8(1994)p.3700-3707 Eur.J.Immunol.,Vol.33,No.2(2003)p.465-473 Vaccine,Vol.21,Suppl.2(2003)p.S2/43-S2/47 36 EP2005054860 20050928 WO2006037744 20060413 2008515846 20080515 14 20080925 高堀 栄二 本発明は、部分的または完全に脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3に関する。 特に、本発明は、脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3、それらのアナログまたは誘導体、それらの製造方法、それら物質を含む医薬組成物、および長いペントラキシンPTX3の使用が示唆される疾患を処置するための、特に感染性疾患、自己免疫疾患を含む炎症性疾患および組織梗塞により起こる疾患、骨および軟骨疾患を処置するための、ならびに女性の生殖能障害の処置するための医薬、および腫瘍の処置用の自家ワクチンである医薬の製造のためのそれらの使用、に関する。 長いペントラキシンPTX3は、IL1βを処置されたヒト内皮細胞 (HUVEC)からつくられたcDNAファージライブラリーからディファレンシャルスクリーニングにより同定された (Breviario, et al., 1992, J. Biol. Chem., 267: 22190-22197)。そのヌクレオチド配列はNCBIデータベースにアクセス番号 X63613で開示されている。PTX3のcDNAは、分泌用のシグナルペプチド(残基1-17)、N末ドメイン (残基18-178)、およびC末ドメイン (残基179-381)を特徴とする381アミノ酸残基のタンパク質をコードする。ヒトの長いペントラキシンPTX3の遺伝子は、第3染色体上のq25.2領域に位置し、6.72 kbのゲノムDNAの上に存在する3つのエクソンを特徴とする。 ヒトPTX3のcDNAを含むpSG5h-PTX3プラスミドベクターが安定に感染したCHO細胞の上清から精製され、還元条件下でSDS−PAGEにより分析された組換えPTX3は、推定分子量45 kDaを示した (Bottazzi, et al., J. Biol. Chem., 1997; 272: 32817-32823)。そのアミノ酸配列は、残基220がグリコシル化部位の可能性があることを示す。PTX3をN-グリコシダーゼFで処置するとその分子量が約42 kDaに減少し (SDS-PAGEにより評価) 、これはアミノ酸配列のみに基づき計算した値と一致する。 この結果から、PTX3はN-グリコシル化されており、糖の寄与は分子量の約12%に達することが確認される。非還元条件下のSDS-PAGEによるタンパク質の分析では、分子量約450 kDaとなる (Bottazzi, et al., J. Biol. Chem., 1997; 272: 32817-32823)。これらの結果から、PTX3は主に個々のモノマーのシステイン残基間の分子間ジスルフィド架橋の形成を介して十量体構造をとることが明確に示唆される。 しかしながら、脱グリコシル化にはタンパク質のジスルフィド架橋の変性と還元の両方が必要であることからみて、上記文献に提案される脱グリコシル化プロトコールでは機能的に活性なPTX3を調製することができない。 Bottazzi et al.の方法で得られるタンパク質は、その機能的特性を喪失しており医薬として使用することができない。しかしながら、脱グリコシル化されたペントラキシンの使用は示唆されていない。 本発明は、機能的に活性な脱グリコシル化されたペントラキシンPTX3を提供することによってこの問題を解決する。 ペントラキシンの総説としては、H. Gewurz, et al., Current Opinion in Immunology, 1995, 7:54-64を参照のこと。 従来のPTX3の用途はよく知られている。 本出願人らの名において出願された国際特許出願WO 99/32516は、長いペントラキシンPTX3、および感染性もしくは炎症性疾患または腫瘍の治療のためのその使用を開示する。 WO 02/38169は、成長因子FGF-2の異常な活性化が関連する疾患の処置に有用な医薬の製造のための長いペントラキシンPTX3の使用を開示する。 長いペントラキシンPTX3の使用による自己免疫疾患の処置は、WO 02/36151に開示される。 WO 03/011326は、女性の不妊の処置のための長いペントラキシンPTX3の使用を開示する。 WO 03/084561は、成長因子FGF-8の異常な活性化が関連する腫瘍の処置のための医薬の製造のための長いペントラキシンPTX3の使用を開示する。 WO 03/072603は、腫瘍の処置用の自家ワクチンの製造のための長いペントラキシンPTX3の使用を開示する。 PTX3は、補体系の成分であるC1qに結合する能力を、短いペントラキシンCRPおよびSAPと共有する。PTX3のC1qへの結合は、Kd 7.4 x 10-8 Mで飽和する。BIAcoreを用いたPTX3とC1qとの間の二分子相互作用の速度研究により、Kon 2.4 x 105 M-1s-1 およびKoff 4 x 10-4 s-1 が測定できた(Bottazzi, et al., J. Biol. Chem., 1997; 272: 32817-32823)。 PTX3と短いペントラキシンの間の配列相同性の比較分析により、PTX3のC末ドメインとCRPおよびSAPの全配列との間にかなりの相同性が明らかとなった (Breviario, et al., 1992, J. Biol. Chem., 267: 22190-22197)。CRPおよびSAPはいずれもC1qのPTX3への結合に競合し、このことはこれらペントラキシンがC1qの同じ領域を認識すること、およびPTX3のC末ドメインがC1qに対する結合部位であることを示唆する。インビトロ研究により、PTX3は古典的補体経路を活性化することが示されている。 実験的および臨床的証拠により、補体の機能異常は病原体に感染しやすいことと関連し、これは自然免疫系の本質的機能が感染に対する保護にあることを示す(Roos, et al., 2002, Immunobiol., 205: 595-609)。それゆえ、医学分野では、補体が仲介する微生物感染に対する免疫応答を促進および増幅可能な薬物の必要性が強く認識されている。 さらに、当分野の専門家は、より活性があり、他の薬物との相乗効果を発揮できる薬物を探索している。 この度、驚くべきことに、PTX3のグリコシド鎖末端からシアル酸を除去すると、あるいはPTX3のグリコシド基を完全に除去すると、このタンパク質が古典的補体経路を活性化する能力が高度に増加することが明らかとなった。 また、シアル酸を欠く(脱シアル酸化された)PTX3 および脱グリコシル化されたPTX3は、非改変PTX3よりも低い投与量において、感染性疾患、特に真菌、細菌またはウイルス感染の予防または処置に有用な物質であることが明らかとなった。また、シアル酸を欠く(脱シアル酸化された)PTX3 および脱グリコシル化されたPTX3は、既に天然PTX3で処置されている疾患、特に自己免疫疾患を含む炎症性疾患、腫瘍、成長因子FGF-2の異常な活性化による疾患、女性の生殖能障害、骨および軟骨疾患の予防または処置に、ならびに腫瘍の処置用の自家ワクチンの製造に、有用であることが明らかとなった。 また、脱グリコシル化されたPTX3および脱シアル酸化されたPTX3はいずれも、適応免疫応答に有利に働く傾向を示し、病原体に対する予防的ワクチン接種に有益であるよう使用することができる。 それゆえ、本発明のある目的は、脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3またはその機能的に活性なアナログまたは誘導体の1つである。 本発明の別の目的は、脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3またはその機能的に活性なアナログまたは誘導体の1つである。 本発明の別の目的は、上記タンパク質の製造方法を包含する。 本発明の別の目的は、脱グリコシル化されたペントラキシンPTX3もしくは脱シアル酸化されたペントラキシンPTX3またはそれらの機能的アナログもしくは誘導体を活性成分として含み、また少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤および/または媒体を含む医薬組成物、を包含する。 本発明のさらなる目的は、脱グリコシル化された長いPTX3もしくは脱シアル酸化された長いPTX3またはそれらの機能的アナログもしくは誘導体の、補体に結合しうる医薬、特に細菌、真菌、原虫またはウイルス起源の感染性疾患の処置用の医薬の製造のための使用である。 本発明のさらなる目的は、脱グリコシル化された長いPTX3または脱シアル酸化された長いPTX3の、病原体および抗原に対する予防的ワクチン接種のためのアジュバントとしての使用である。 ここに、本発明を実施例および図面を用いて詳細に開示する。 図1は、エンドグリコシダーゼF3で脱グリコシル化されたペントラキシンの電気泳動移動度を示す。 図2は、シアリダーゼAで脱シアル酸化されたペントラキシンの電気泳動移動度を示す。 図3Aおよび3Bは、それぞれ、脱グリコシル化された長いペントラキシンおよび脱シアル酸化された長いペントラキシンのC1qに対する結合アッセイを示す。 図4は、補体活性化アッセイを示す。 「脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3」は、その天然(ヒトまたは非ヒト) または組換え起源に関わらず、いずれのPTX3をも意味する。これらペントラキシンPTX3は、文献に記載されている:例えば、本願の引用特許文献およびそれらに引用される文献を参照。 「脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3」の誘導体またはアナログは、少なくとも1つの変異を有し、かつC1qに結合してC1qを活性化する能力を保持する前記ペントラキシンの機能的アナログ、あるいはPTX3の直線的または立体構造的ドメインを模倣することができ、かつC1qに結合してC1qを活性化する機能的能力を保持するペプチド誘導体またはペプチド模倣誘導体、のいずれかを意味する。 機能的に活性な脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3とは、天然のペントラキシンの生物学的能力、特にその補体結合能力を保持する産物を意味する。 誘導体またはアナログの説明については、WO 03/38151を参照。 好ましい脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3は、配列がWO 99/32516に開示されるヒトのものである。 脱グリコシル化されたペントラキシンの製造方法は、長いペントラキシンPTX3の脱グリコシル化を含む。 出発物質の長いペントラキシンPTX3は既知のタンパク質であり、それを得る方法もまた既知である。 本目的には、ペントラキシン活性の消失または実質的変化を何ら誘導しないことを条件として、いずれのタンパク質脱グリコシル化法も好適である。 本発明の好ましい態様において、本発明の方法は、長いペントラキシンPTX3をエンドグリコシダーゼEndoF3で処理することを含む。 あるいは、本発明はまた、長いペントラキシンPTX3を発現する細胞をグリコシル化阻害薬の存在下で培養することを含む、脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3の製造方法を提供する。好ましい阻害薬の1つはツニカマイシンである。ペントラキシンを発現する細胞は当該分野で知られており、当業界の専門家の一般的知識に基づき容易に得ることができる。かかる細胞の例は、ヒトPTX3のcDNAをトランスフェクトした細胞、例えばCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞である。 同様に、本目的には、ペントラキシン活性の消失または実質的変化を何ら誘導しないことを条件として、いずれのタンパク質脱シアル酸化法も好適である。可能性ある例はデシアリダーゼAの使用である。 同様に、ペントラキシン活性の消失または実質的変化を何ら誘導しないことを条件として、本目的に好適ないずれのタンパク質工学法も使用可能であり、それは例えばグリコシル化部位の崩壊により変異誘発された組換えPTX3の産生である。 本発明は、脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3またはそれらの機能的アナログもしくは誘導体の医薬としての使用を提供する。 感染性疾患とは、細菌、真菌、原虫またはウイルス感染により起こる疾患を意味する。 自己免疫疾患の例は、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、関節炎、糖尿病、甲状腺炎、溶血性貧血症、萎縮性睾丸炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少症、重症筋無力症、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、潰瘍性大腸炎、皮膚炎、慢性糸球体腎炎、シェーグレン症候群、ライター症候群、筋肉炎、全身性硬化症または多発性関節炎である。 組織梗塞とは、心筋梗塞または脳梗塞を意味する。 女性の不妊の処置とは、かかる処置の必要な女性の生殖能を改善するための脱グリコシル化または脱シアル酸化されたPTX3のいずれの使用も意味する。 特に、本発明は、補体に結合可能な医薬の製造のための、脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3の使用を提供する。 好ましい適用の1つは、感染性疾患の予防または処置のための医薬に関する。 特に、前記疾患における感染性物質は、細菌、真菌、原虫またはウイルスである。 本発明のある好ましい態様は、真菌アスペルギルス(Aspergillus)、特にアスペルギルス・フミガーツフ(Aspergillus fumigatus)に関する。 本発明の別の局面は、脱グリコシル化または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3と抗真菌薬との組合せを含む真菌感染の処置のための医薬であり、抗真菌薬は好ましくはアンホテリシン類、例えばアンホテリシンBであり、特にデオキシコール酸塩であるか、またはリポソーム製剤中にあるものである。この製剤は本発明のさらなる目的である。 また、脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および/または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3は選択した病原体または抗原に対する予防的ワクチン接種のためのアジュバントとして有用であることが明らかとなり、これは本発明のさらなる目的を構成する。 脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および/または脱シアル酸化されたタンパク質をアジュバントとして含むワクチンは、病原性物質、例えば細菌、真菌、原虫もしくはウイルスまたはそれら抗原のいずれかに対して有利に働くよう使用することができる。 本発明のある好ましい態様において、病原性物質は、真菌、特にアスペルギルス、さらに特にアスペルギルス・フミガーツフ、およびその抗原のいずれかである。 脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および/または脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3をアジュバントとして含むことに加えて、本発明のワクチンは当該分野の当業者に知られる完全に常套的な方法によって製造され、それゆえさらなる説明は必要でない。 本発明の説明のため、以下にいくつかの実施例を示す。 実施例1 脱グリコシル化されたPTX3の製造 ヒトPTX3のcDNA (Bottazzi, et al., J. Biol. Chem. 1997; 272: 32817-32823に開示) を含むプラスミドベクターpSG5hPTX3を安定にトランスフェクトしたCHO細胞の上清から精製したPTX3を、アスパラギン220に結合するN-アセチルグルコサミン残基を除く全グリコシド鎖を除去するためエンドグリコシダーゼEndoF3で処理した。 特に、N結合二分岐または三分岐複合体型のオリゴ糖の核に存在する2つのGlcNac残基間のグリコシドβ結合 (1→4)の選択的加水分解について知られるエンドグリコシダーゼ F3と、PTX3をインキュベートした。エンドグリコシダーゼ F3は、酸性pH値において最大の触媒活性を示した。PTX3に特徴的な溶解度に基づくと、pH 5.5におけるリン酸緩衝液の使用が最適であった。本実施例に使用したエンドグリコシダーゼ F3は、大腸菌で組換えタンパク質として発現させたChryseobacterium (Flavobacterium) meningosepticum (Sigma Aldrich code E2264)のcDNAに由来する。精製PTX3の糖の酵素的加水分解は、SDS-PAGEにおけるその電気泳動度の変化により評価した (図1参照)。約10μgのPTX3(滅菌水7μl中)に2μlのリン酸緩衝液(pH 5.5) (5x) (NaH2PO4 250 mM ) および1μlのエンドグリコシダーゼ F3 (母溶液 (Sigma Aldrich) より取得) を添加した。この混合物を37℃で12時間インキュベートした。この反応は1 mgのPTX3までスケールアップできる。 このようにして得られた脱グリコシル化されたPTX3を、グリコシド酵素と糖を除去するため、ゲルろ過クロマトグラフィ (Superose 6 PHARMACIA) で精製した。SDS-PAGE ゲルろ過は、Bottazzi et al., J. Biol. Chem. 1997; 272: 32817-32823に開示されるように行った。 実施例2 脱グリコシル化されたPTX3の製造 実施例1に記載のPTX3産生CHO細胞を、タンパク質のグリコシル化阻害薬、例えばツニカマイシン (Sigma Aldrich)で処理した。 このようにして得られた脱グリコシル化されたPTX3をBottazzi et al. J. Biol Chem 1997; 272: 32817-32823に開示されるように精製した。 他の既知の、機能的能力を変化させないタンパク質の脱グリコシル化方法または脱グリコシル化されたタンパク質の産生方法はいずれも、本発明の目的に好適である。 実施例3 脱シアル酸化されたPTX3の製造 ヒトPTX3のcDNAを含むプラスミドベクターpSG5h-PTX3を安定にトランスフェクトしたCHO細胞の上清から精製したPTX3を使用した。 PTX3をシアリダーゼAで処置した。使用したシアリダーゼA [α(2->3,6,8,9) ノイラミニダーゼ] は、大腸菌において組換えタンパク質として発現させたArthrobacter ureafaciens のcDNA (SIGMA Aldrich code N8271)に由来する。PTX3の脱シアル酸化もまた、SDS-PAGEによる電気泳動度の変化の分析によって評価した (図2参照)。 このようにして得られた脱シアル酸化されたPTX3を、グリコシド酵素と糖を除去するため、ゲルろ過クロマトグラフィ (Superose 6 PHARMACIA) で精製した。 他の既知の、機能的能力を変化させないタンパク質の脱シアル酸化方法または脱シアル酸化されたタンパク質の産生方法はいずれも、本発明の目的に好適である。 実施例4 C1qに結合している脱グリコシル化されたPTX3のアッセイ Maxisorp (NUNC) プレートを、そのウェルの内表面上にタンパク質を吸収させる目的で、0.5μg/mlのC1q (CALBIOCHEM) で処理した。続いてリン酸緩衝液 (GIBCO) で洗浄した後、ウェルを図3に示す用量の脱グリコシル化されたPTX3とリン酸緩衝液中において1時間インキュベートした。 C1qに結合したPTX3の相対量を、ビオチン化抗PTX3ポリクローナル抗体、ストレプトアビジン-HRP (PHARMACIA) およびTMB染色により測定した。 脱グリコシル化されたPTX3は、グリコシダーゼ処理していないPTX3よりも約4倍多くC1qと結合した (図3A)。 実施例5 C1qに結合している脱シアル酸化されたPTX3のアッセイ C1qに結合している脱シアル酸化されたPTX3のアッセイを、先の実施例に記載した実験条件と同じ条件で、図3Bに示す用量にて行った。 この場合も、脱シアル酸化されたPTX3は、デシアリダーゼを処理していないPTX3よりも約2倍多くC1qと結合した(図3B)。 実施例6 脱シアル酸化されたPTX3が古典的補体経路を活性化する能力の評価 脱シアル酸化されたPTX3を96-ウェル Maxisorp プレート上に濃度5 μg/ml (炭酸緩衝液 0.1 M pH 9.6)にて吸収させた。次いで、ウェルを補体源としてのヒト血清 (NHS) (各種希釈割合)にて処理した。補体活性化の結果プレート上に沈着したC4量を、抗C4抗体 (C4-4°) を用いてNauta et al. in Eur. J. Immunology, 2003, 33: 465-473に開示されるように測定した。 脱シアル酸化されたPTX3を吸収させたプレート上に沈着したC4量は、コントロールPTX3を吸収させたプレートより約8倍多かった (図4)。この結果は、脱シアル酸化されたPTX3は補体活性化能において非改変PTX3よりも高活性であることを示す。 実施例7 脱グリコシル化されたPTX3が古典的補体経路を活性化する能力の評価 実施例6に記載の脱シアル酸化されたPTX3に使用した実験条件と同じ条件にて、脱グリコシル化されたPTX3を試験した。 得られた結果は、脱シアル酸化されたPTX3により得られた結果に匹敵するものであった。 産業上の利用可能性に関連する局面に関して、脱グリコシル化もしくは脱シアル酸化されたPTX3またはそれらのペプチドもしくはペプチド模倣誘導体は、活性成分が医薬上許容される賦形剤および/または媒体、例えば滅菌水、カルボキシメチルセルロース、または当業界に知られる他の賦形剤、により可溶化および/または成形された医薬組成物の形態である。 脱グリコシル化または脱シアル酸化されたPTX3に使用可能な医薬組成物の例は、長いペントラキシンPTX3について (WO 99/32516に)開示されるものと同じである。 医薬組成物のさらなる例は、経口投与または静脈内、筋肉内、皮下、経皮、直腸または経膣経路を介する非経口投与が可能なものである。本目的に好適な医薬組成物は、錠剤、硬または軟カプセル、座剤、オブール剤(ovule)、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、または用時調製液剤(extempore liquid)の調製のための固体形態である。非経口投与のための組成物は、例えば、溶液、懸濁液またはエマルジョンの形態の、あらゆる筋肉内、静脈内および皮下注射可能形態である。リポソーム形態もまた挙げられる。さらに、活性成分の制御放出のための形態が含まれ、経口投与用形態、適当な層でコートされた錠剤、マイクロカプセル化された散剤、シクロデキストリン複合体、デポー形態、例えば皮下デポー形態であっても、あるいはデポー注射またはインプラントであってもよい。エアロゾル投与のための組成物は、好ましい投与形態を構成しうる。 1日投与量は、患者の体重、年齢および全身状態に基づく臨床医の判断に依存する。 留意すべきは、徐放形態を含む医薬組成物の製造は、薬剤師および製薬技術の専門家に周知の一般的技術および装置を用いて行うことができることである。参考として、当該分野の専門家は通常の文献を参照することができ、それは例えばRemington's Pharmaceutical Sciences Handbook, Mack Pub. N.Y.の最新版である。ワクチンに関しては、特定の文献、例えば国際特許出願WO 03/011903 および PCT/IT03/00162を参照できる。図1は、エンドグリコシダーゼF3で脱グリコシル化されたペントラキシンの電気泳動移動度を示す。図2は、シアリダーゼAで脱シアル酸化されたペントラキシンの電気泳動移動度を示す。図3Aは、脱グリコシル化された長いペントラキシンのC1qに対する結合アッセイを示す。図3Bは、脱シアル酸化された長いペントラキシンのC1qに対する結合アッセイを示す。図4は、補体活性化アッセイを示す。 単離された機能的に活性な脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3。 単離された機能的に活性な脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3。 天然ヒトもしくは非ヒト起源または組換え起源である、請求項1または2記載の長いペントラキシンPTX3。 長いペントラキシンPTX3を脱グリコシル化することを含む、請求項1記載の脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3の製造方法。 脱グリコシル化をエンドグリコシダーゼEndoF3により行う、請求項4記載の方法。 グリコシル化阻害薬の存在下で長いペントラキシンPTX3を発現する細胞を培養することを含む、請求項1記載の脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3の製造方法。 阻害薬がツニカマイシンである、請求項6記載の方法。 脱グリコシル化がPTX3のグリコシル化部位を変異させることにより得られる、請求項4記載の方法。 長いペントラキシンPTX3を脱シアル酸化することを含む、請求項2記載の脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3の製造方法。 脱シアル酸化をシアリダーゼAにより行う、請求項9記載の方法。 脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3を精製する、請求項4-8のいずれかに記載の方法。 脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3を精製する、請求項9-10のいずれかに記載の方法。 精製をゲルろ過クロマトグラフィにより行う、請求項11または12記載の方法。 請求項1または3記載の脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3を、少なくとも1つの医薬上許容される媒体または賦形剤との混合物にて含む、医薬組成物。 請求項2または3記載の脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3を、少なくとも1つの医薬上許容される媒体または賦形剤との混合物にて含む、医薬組成物。 補体に結合可能である請求項14または15の医薬組成物。 長いペントラキシンPTX3の使用が示唆される疾患の予防または処置用の請求項14または15の医薬組成物。 感染性疾患の予防または処置用の請求項14または15の医薬組成物。 自己免疫疾患を含む炎症性疾患、腫瘍、成長因子FGF-2の異常な活性化による疾患、女性の生殖能障害、組織梗塞、または骨または軟骨疾患の予防または処置用の請求項14または15の医薬組成物。 自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、関節炎、糖尿病、甲状腺炎、溶血性貧血症、萎縮性睾丸炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫性網膜症、自己免疫性血小板減少症、重症筋無力症、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、潰瘍性大腸炎、皮膚炎、慢性糸球体腎炎、シェーグレン症候群、ライター症候群、筋肉炎、全身性硬化症および多発性関節炎からなる群より選択される、請求項19記載の医薬組成物。 組織梗塞が、心筋梗塞および脳梗塞からなる群より選択される、請求項19記載の医薬組成物。 該疾患における感染性物質が、細菌、真菌、原虫またはウイルスである、請求項18記載の医薬組成物。 真菌がアスペルギルスである、請求項22記載の医薬組成物。 真菌がアスペルギルス・フミガーツフである、請求項23記載の医薬組成物。 単離された機能的に活性な脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および/または単離された機能的に活性な脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3と抗真菌物質とを含む組成物。 抗真菌物質がアンホテリシン類に属する、請求項25記載の組成物。 アンホテリシンが、アンホテリシンBである、請求項26記載の組成物。 アンホテリシンBが、デオキシコール酸塩の、またはリポソーム製剤中のアンホテリシンBである、請求項27記載の組成物。 請求項25-28のいずれかに記載の組成物を医薬上許容される媒体または賦形剤との混合物にて含む医薬組成物。 真菌感染の予防または処置用の請求項29の医薬組成物。 該感染における真菌がアスペルギルスである、請求項30記載の医薬組成物。 真菌がアスペルギルス・フミガーツフである、請求項31記載の医薬組成物。 病原体または抗原に対する予防的ワクチン接種のためのアジュバントである、請求項1または3記載の脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3もしくは請求項2または3記載の脱シアル酸化された長いペントラキシンを含む医薬組成物。 病原体が細菌、真菌、原虫またはウイルスである、あるいは抗原が細菌、真菌、原虫またはウイルスに由来する、請求項33記載の医薬組成物。 真菌がアスペルギルス・フミガーツフである、あるいは抗原がアスペルギルス・フミガーツフに由来する、請求項34記載の医薬組成物。 単離された機能的に活性な脱グリコシル化された長いペントラキシンPTX3および/または単離された機能的に活性な脱シアル酸化された長いペントラキシンPTX3をアジュバントとして含むワクチン。