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タイトル:特許公報(B2)_抗生物質フリーのColE1プラスミドを増殖するための宿主ベクター系
出願番号:2007531743
年次:2013
IPC分類:C12N 15/09,C12P 21/02,C12N 1/21,C12R 1/19


特許情報キャッシュ

グラプヘル ラインガルト プファッフェンツェラー イレーネ JP 5301832 特許公報(B2) 20130628 2007531743 20050908 抗生物質フリーのColE1プラスミドを増殖するための宿主ベクター系 ベーリンガー インゲルハイム エルツェーファウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト 504135837 熊倉 禎男 100082005 小川 信夫 100084009 箱田 篤 100084663 浅井 賢治 100093300 平山 孝二 100114007 グラプヘル ラインガルト プファッフェンツェラー イレーネ EP 04022201.0 20040917 20130925 C12N 15/09 20060101AFI20130905BHJP C12P 21/02 20060101ALI20130905BHJP C12N 1/21 20060101ALI20130905BHJP C12R 1/19 20060101ALN20130905BHJP JPC12N15/00 AC12P21/02 CC12N1/21C12N1/21C12R1:19 C12N 15/00−15/90 C12N 1/21 C12P 21/00 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq UniProt/GeneSeq PubMed Science Direct WPI 国際公開第2005/052167(WO,A1) 特表平11−513562(JP,A) 特表2007−511236(JP,A) Plasmid, 1998年, 第40巻, 150−157ページ SUTCLIFFE JG et al., Database GenBank[online], Accession No.J01749, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/208958?sat=0&satkey=2446490>, 07-JUN-1996 uploaded, [retrieved on 09-MAR-2012], Title: Cloning vector pBR322, complete sequence Plasmid, 2002年, 第48巻, 165−173ページ 24 EP2005054450 20050908 WO2006029985 20060323 2008512998 20080501 42 20080908 北田 祐介 本発明は特に、プラスミドDNAおよび組替えタンパク質を製造するための、プラスミドの増殖の分野に関する。 遺伝子導入担体としてのプラスミドDNAの使用は、遺伝子療法において広く一般に普及するに至っている。 遺伝子療法の適用においては、問題の治療用遺伝子を担持するプラスミドが患者に導入される;標的細胞中での一過性の発現が望ましい治療効果を導く。 興味ある治療遺伝子を担持する組換えプラスミドは、バクテリアの培養によって得られる。バクテリアの形質転換体を選別するために、またバクテリア宿主細胞内にプラスミドが維持されていることを確認するために、従来から、抗生物質耐性遺伝子がプラスミド骨格の中に含められている。プラスミドの選別は、該プラスミドを持った細胞だけが増殖できる対応の抗生物質を含有する培地中で、前記細胞を増殖させることにより達成される。 遺伝子療法に応用するためのプラスミドを選別するために抗生物質耐性遺伝子を使用することには、深刻な欠点が伴う。 遺伝子療法では全体のプラスミドが送達されるので、抗生物質耐性遺伝子が治療された患者の中に導入される。これらの遺伝子は原核細胞プロモータによって駆動されるので、哺乳類の細胞および組織においては活性でないはずであるが、送達された遺伝子が細胞ゲノムの中に組み込まれるチャンスが存在し、それが哺乳類プロモータの近傍であれば、転写および発現されるに至る。 抗生物質耐性遺伝子をもったプラスミドの第二の欠点は、残留抗生物質による最終製品の潜在的な汚染である。これは、可能な免疫感作を考慮すると、特にβ−ラクタム抗生物質の場合問題である。 これらのリスクを回避するために、治療用プラスミドの製造において抗生物質耐性遺伝子を禁止し、代替の選別法を開発するための努力が行われてきた。 抗生物質フリーの選別を達成する試みにおいては、宿主の栄養要求性を補償できるプラスミドが使用されてきた。しかし、このアプローチおよび全ての関連アプローチの主要な欠点は、プラスミド上に追加の遺伝子が必要とされることである(例えば、Hagg etal., 2004)。 もう一つのアプローチは、「リプレッサ滴定」と呼ばれる概念である(Wiliams et al., 1998)。この概念によれば、修飾されたE.coli宿主株は、lacオペレータ/プロモータの制御下にあるkan遺伝子(カナマイシン耐性遺伝子)を含んでいる。この株は、インデューサ(IPTGまたはアロラクトース)の不存在下では、カナマイシン含有培地上で増殖できない。lacオペレータを含むコピー数の高いプラスミドを用いた形質転換は、オペレータからlacIを滴定することによって、kanの発現を導く。コピー数の高いプラスミドを含んだ細胞のみが、カナマイシンの添加後にも生存することができる。この場合にも、この概念の主要な欠点は、抗生物質の使用が不可欠であるという事実である。 本発明の目的は、抗生物質がなくて済む新規なプラスミド選別システムを提供することである。 本発明の根底にある問題を解決するために、ColE1の複製開始点を備えたプラスミドによって使用される複製機構が開発された(以下では、ColE1の複製開始点を備えたプラスミドを「ColE1型プラスミド」と称する)。 多数の天然に存在するプラスミド、並びに最も普通に使用されるクローニング担体の多くは、ColE1型プラスミドである。これらのプラスミドは共通の機構を使用することによってそれらのDNAを複製し、該機構には二つのRNA分子の合成が含まれ、また一方ではこれら分子相互間での相互作用、他方ではこれら分子の鋳型プラスミドDNAとの相互作用がまれる(Helinski, 1996; Kues and Stahl, 1989)。 ColE1型プラスミドの代表は、天然に存在するColE1プラスミドであるpMB1、p15A、pJHCMW1、並びに普通に使用され且つ商業的に入手可能なクローニング担体、例えばpBR322および関連ベクター、pUCプラスミド、pETプラスミドおよびpBluescriptベクターである(例えば、Bhagwat and Person, 1981; Balbas et al., 1988; Bolivar, 1979; Vieira and Messing, 1982)。 これらのプラスミドについては、ColE1による複製の開始および複製の調節が詳細に亘って記載されてきた(例えば、Tomizawa, 1981, 1984, 1986, 1989, 1990; Chan et al., 1985; Eguchi et al., 1991a; Cesareni et al., 1991)。このColE1領域は、複製の調節に関与する二つのRNAのための、二つのプロモータを含んでいる。ColE1型プラスミドからの複製は、宿主のRNAポリメラーゼによるプレプライマーRNAII(複製開始点の555bp上流)の転写で開始される。伸長の際に、RNAIIは特定のヘアピン構造に折畳まれ、また約550ヌクレオチドの重合後に、テンプレートDNAとのハイブリッド形成を開始する。その後、RNAIIプレプライマーはRNaseHによって開裂され、DNAポリメラーゼIがアクセス可能な遊離の3’OH末端を備えた活性プライマーを形成する(Lin-Chao and Cohen, 1991; Merlin and Polisky, 1995)。 ColE1型起源の鎖の反対側において、RNAI、即ち、RNAIIの5’末端に対して相補的な108ヌクレオチドのアンチセンスRNAが転写される。RNAIの転写は、複製開始点の445bp上流で、ほぼRNAIIの転写が開始される場所まで開始される。RNAIはプライマー形成を阻害し、従って、RNA/DNAハイブリッドが形成される前に、伸長するRNAII分子に結合することによって複製を阻害する。 これら二つのRNAの相互作用は、RNAIおよびRNAIIが幾つかのステムループを形成する段階的なプロセスである。それらは最初に、それらの相補的ループ間で塩基対を形成することにより相互作用し、所謂「キス複合体」を形成する。その後、RNAIがRNAIIに沿ってハイブリダイズし、安定な二本鎖が形成される。このキス複合体の形成は、複製の阻害にとって決定的に重要である。それは律速段階なので、綿密に研究されてきた(Gregorian and Crothers, 1995)。 RNAI/RNAIIの相互作用とは別に、ColE1のrom/rop転写が、RNAIIおよびRNAI間での複合体形成の速度を増大させることによって、プラスミドコピー数の制御に寄与する。コピー数を増大させるために、pBR322の幾つかの誘導体、例えばpUC19において、rom/ropをコードする遺伝子が欠失されてきた。 本発明は、第一の側面において、 i)発現が調節されるべきタンパク質をコードし、且つ動作可能にこれに結合されたDNA配列と、 ii)RNAII配列またはその一部を模倣し、且つColE1複製開始点を備えたプラスミドから転写可能なRNAI配列に対して相補的なRNA配列をコードするDNA配列とを含んだ天然に存在しないバクテリア細胞に関する。 更なる側面において、本発明は、ColE1複製開始点を備えたプラスミドと、細胞内で該プラスミドを複製できるバクテリア宿主細胞とを含んでなる宿主ベクター系に関し:該宿主ベクター系は、 a)ColE1複製開始点を備えたプラスミドと; b)その中で前記プラスミドを複製することができるバクテリア宿主細胞とを含んでなり、 該宿主細胞は i)その発現が調節されるべきタンパク質をコードし、且つ動作可能にこれに結合されたDNA配列;および ii)RNAII配列またはその一部を模倣し、且つ前記プラスミドa)から転写可能なRNAI配列に対して相補的なRNA配列をコードするDNA配列を含み、 前記ii)に定義されたRNA配列は、プラスミドa)の不存在下で前記タンパク質の発現を可能にし、 また前記プラスミドa)が前記宿主細胞b)の中に存在するときに、前記プラスミドから転写された前記RNAI分子は、ii)で定義されたRNA配列とハイブリダイズし、それによって前記タンパク質の発現が抑制される。 好ましい実施形態において、DNA配列i)は、外来DNA配列である。 好ましい実施形態において、前記外来DNAi)によってコードされるタンパク質は、前記宿主細胞に対して毒性または致死的である。 更なる側面において、本発明は、ColE1複製開始点を備えたプラスミドと、細胞内で該プラスミドを複製できるバクテリア宿主細胞とを含んでなる宿主ベクター系に関し:該宿主ベクター系は、 a)ColE1複製開始点を備えたプラスミドと; b)下記i)およびii)をゲノムの中に組み込んだ状態で含む、天然に存在しないバクテリア宿主細胞 i)前記宿主細胞に対して致死的または毒性のタンパク質をコードし、且つ動作可能にこれに結合された外来DNA配列; ii)RNAII配列またはその一部を模倣し、且つ前記プラスミドa)から転写可能なRNAI配列に対して相補的なRNA配列をコードするDNA配列;とを含んでなり、 前記ii)に定義されたRNA配列は、前記宿主細胞の増殖が完全にまたは部分的に阻害されるように、プラスミドa)の不存在下で前記致死的または毒性のタンパク質の発現を可能にし、 また前記プラスミドa)が前記宿主細胞b)の中に存在するときに、前記プラスミドから転写された前記RNAI分子はii)で定義されたRNA配列とハイブリダイズし、それによって前記致死的または毒性の発現が抑制される結果、前記プラスミドを有する細胞における前記完全なまたは部分的な増殖阻害が抑制される。 本発明は、バクテリア宿主細胞中に存在し、好ましくはバクテリアゲノムの中に挿入され且つ選別マーカーとして働く1以上の遺伝子の発現を制御するために、ColE1型プラスミドのRNAに基づくコピー数制御機構を使用する。 以下において、i)のDNA配列(または斯かるDNAから転写されたRNA)は、「マーカー遺伝子」(または「マーカーRNA」)と称される。 上記で述べたように、本発明の一実施形態において、マーカー遺伝子は、それ自身が致死的または毒性であるタンパク質をコードする。この実施形態では、本発明の意味において、「マーカー遺伝子」の用語はまた、その発現によって、該発現生成物に直接起因するものでなく、他の機構(例えば該マーカー遺伝子が発現する際の毒性物質の発生)に基づいて毒性効果を生じる遺伝子をも包含する。簡潔さのために、以下においては、マーカー遺伝子によりコードされるタンパク質を「マーカータンパク質」と称し、該マーカータンパク質が致死的または有毒なタンパク質である場合には、これを「毒性タンパク質」と称する。 好ましい実施形態において、該マーカータンパク質は、それ自身は致死的または有毒ではなく、またはその発現の際の毒性効果に起因するものではなく、前記バクテリア細胞の増殖に必須な遺伝子の転写を抑制することによるものである。このようなマーカータンパク質、またはそれをコードするDNAは、それぞれ、「リプレッサ」または「リプレッサ遺伝子」と称され、また該バクテリア細胞の増殖に必須の遺伝子は、「必須遺伝子」と称される。 以下において、RNAII配列またはその一部を模倣するRNA配列は、「RNAII様配列」と称される。 本発明の意味において、「動作可能に結合された」とは、DNA配列i)およびDNA配列ii)が、前記DNA配列i)によりコードされるマーカータンパク質の発現が前記RNA配列ii)(RNAII様配列)によって調節されるように、相互に対して配置されることを意味する。 本発明の原理、即ち、RNAIに媒介されたマーカー遺伝子のダウンレギュレーションまたはサイレンシングが、図1に示されている。 RNAII様配列は、シャイン・ダルガノ配列と共に宿主の転写物上に存在する。プラスミドから転写されたRNAI配列は、前記RNAII様配列に対するアンチセンスRNAとして機能して、マーカーmRNAの翻訳を阻害する。 マーカー遺伝子発現の誘導の後、該マーカー遺伝子が毒性タンパク質質をコードする場合には、当該宿主は該プラスミドの存在下でのみ生存することができるに過ぎない。何故なら、該プラスミドは、RNAII様配列に対して相補的で、従って該マーカー遺伝子転写物にハイブリダイズするRNAI配列を与え、それによって毒性タンパク質の翻訳を妨げるからである。説明したように、当該システムの調節は、プラスミドのRNAIと、これに対して相補的な、通常は宿主のmRNA内において、当該マーカー遺伝子配列のリボゾーム結合部位の上流または下流に位置する定義された長さのRNAII様配列との間での、RNA−RNA相互作用に基づいている。 このRNAII様配列の長さ、並びに該マーカー遺伝子のリボゾーム結合部位および開始コドンに対するその距離および位置は、該プラスミドフリーの宿主が該mRNAを翻訳できるようなものでなければならない;このことは、RNAII様配列がリボゾーム結合および翻訳を妨害しないように注意しなければならないことを意味する。 また、挿入されたRNAII様配列は、それが相補的配列の十分なRNA−RNA相互作用を保証して、前記プラスミドが存在するときには、それから転写されたRNAIが前記マーカー遺伝子の翻訳を阻害するのに充分な程度に、宿主のmRNAに結合するように設計および配置されなければならない。該マーカー遺伝子の阻害は、プラスミド(従ってRNAI)が存在しない細胞に比較して、増殖における利点が提供されるような程度でなければならない。 従って、バクテリア宿主は、ColE1型プラスミドの不存在下では該マーカーmRNAがマーカータンパク質に翻訳され、またColE1型プラスミドの存在下では該タンパク質の翻訳が完全にまたは部分的に抑制されるように、遺伝子操作される。前記mRNAが部分的に又は完全に細胞増殖を阻害する毒性タンパク質をコードする場合、プラスミドを含む宿主は、毒性にも耐えて生き残り、プラスミドを含まない宿主よりも早く増殖する。 本発明の目的にとって、毒性タンパク質は、少なくともマーカー遺伝子を持たない細胞が増殖速度に関する利点を有する範囲で、それが細胞の増殖を部分的または完全に阻害する意味において毒性である。二つの細胞ポピュレーション、即ち、一方ではマーカー遺伝子を含むポピュレーション、他方ではマーカー遺伝子を含まないか、またはマーカー遺伝子が阻害されたポピュレーションが等モルの分布で存在するならば、10世代未満で、マーカー遺伝子を含まないか、またはマーカー遺伝子が阻害されたポピュレーションが当該ポピュレーションの99%にまで増大するであろう。 本発明の一実施形態において、マーカー遺伝子の発現は、追加の機構、例えば誘導によって調節される。マーカー遺伝子が毒性タンパク質をコードする場合、該マーカー遺伝子は細胞増殖の間は停止することが必要とされるから、転写制御のために、誘導剤を添加したときにのみmRNA転写を促進する誘導性プロモータが有利に使用される。その例は、T7ポリメラーゼがIPTG、ラクトース誘導性Lacプロモータ、またはアラビノース誘導性プロモータの制御下にあるとすれば、T7ポリメラーゼを産生する宿主におけるT7プロモータである。 或いは、前記マーカー遺伝子は、それ自身は毒性ではないタンパク質をコードするが、該タンパク質は、間接的な機構、例えば基質を添加した後に該基質を毒性物質へと修飾する酵素を介して作用する。その一例は、枯草菌由来のSabBであり、sabBはレバン・スクラーゼ(levan sucrase)と称されるタンパク質をコードする。このタンパク質は、蔗糖を、バクテリアに対して毒性の物質であるレバンに変化させる。 ColE1型プラスミドのRNAI配列は、当該システムの利点に寄与する必須の特徴を表している。それは、該プラスミドに追加の選別マーカー(例えば抗生物質耐性遺伝子)を使用することなく、プラスミドを保持する宿主のための選別基準を提供する。従って、本発明は、ColE1型プラスミドを抗生物質フリーで選別のための革新的なシステムを提供する。 本発明の実施形態においては、以下の成分が有用である。 1.宿主細胞 それらの複製は該宿主の機構に依存するので、ColE1型プラスミドは、宿主範囲の狭いプラスミドである。複製はE.coliおよび関連バクテリア、例えばサルモネラおよびクレブシエラに制限される(Kues and Stahl, 1989)。従って、宿主の唯一の必須の性質は、それがColE1プラスミドを複製する能力を有することである。適切な宿主は、広範に使用される大腸菌株K12もしくはB株、または関連の商業的に入手可能な株、例えばJM108、TG1、DH5アルファ、Nova Blue、XL1Blue、HMS174もしくはLl21である(レビューについては、Casali, 2003参照)。 宿主細胞の好ましい遺伝子的特徴は、プラスミドの安定性および質または組換えタンパク質の無傷の回収を改善する突然変異である。望ましい遺伝子形質の例は、recA(相同組換えの不存在)、endA(エンドヌクレアーゼI活性の不存在、これはプラスミドミニプレップの質を改善する)、またはompT(外膜プロテアーゼの不存在)、hsdr(一定の配列の制限は無効にされたが、メチル化は無効にされない)、hsdS(一定の配列の制限およびメチル化が無効にされた)である。 本発明の実験では、宿主株HMS174(DE3)(ノバジェン社)が使用されたが、これはそのゲノムの中にIPTG誘導性のT7ポリメラーゼを備えたDE3ファージを含んでいる(Studier and Moffatt, 1986)。適切な宿主のもう一つの例はHMS174(DE)pLysSであり、これは更に、非誘導状態においてT7プロモータの転写活性を減少させるために、T7リゾチームの遺伝子を担持したpACYC184プラスミド(CmR)を含んでいる。 特に致死的マーカータンパク質の場合には、その誘導なしでの発現を回避するのが望ましい。 2.宿主細胞を操作するための構築物 宿主細胞を操作するのに適した構築物の原理が、図2に示されている。 全ての成分、即ち、二つの相同性アーム[H]、プロモータ+オペレータ[P+O]、RNAIマーカー配列(RNAII様配列)、転写ターミネータおよびKanカセット(FRT、+/−FLPリコンビナーゼ認識マーカー配列を含むカナマイシン耐性カセット;或いは他の慣用的な選別マーカーを使用してもよい)を備えたマーカー遺伝子[gene](実施例では、GFPが初期実験で使用された)を、適切なベクター、例えばpBluescript KS+のマルチクローニング部位にクローニングする。ゲノム挿入のための線型断片を制限酵素で切出し、PCRにより増幅する。 カナマイシン耐性カセットは、例えば、pUC4Kベクター(インビトロゲン社)から得ることができる。それは、二つの異なる部位、即ち、マーカー遺伝子の前または後で断片にクローニングすることができる。マーカー遺伝子は、それが送達時に駆動される前に、意図に反して早期に転写されるのを回避するために、好ましくは染色体遺伝子とは反対の向きに挿入される。 好ましくは、当該マーカー構築物はバクテリアゲノムの中に組み込まれる。これは、慣用的な方法、例えば、染色体上の中立部位、例えばattTN7部位(Rogers et al., 1986; Waddel and Craig, 1988; Craig, 1989)またはrecAに対して相同性の隣接配列を含む線型断片を使用することによって達成することができる。断片は、宿主、例えばプラスミドpKD46含む大腸菌株MG1655またはHMS174(Datsenko and Wanner; 2000)の中に形質転換される。このプラスミドは、インビボでの組換えを促進するλRed機能(γ,β、exo)を含んでいる。或いは、DY378(Yu et al.,2000)、即ち,欠陥のあるλプロファージを担持した大腸菌K12株を使用することができる。MG1655またはDY378の場合、該発現断片を含む染色体部位は、P1ファージによる形質導入を介して、HMS174(DE3)ゲノムの中に持ち込むことができる。例えば、カナマイシンまたはクロラムフェニコールのためのKanカセットを使用する場合は、抗生物質耐性について陽性のクローンが選別される。耐性遺伝子は、酵母2ミクロンプラスミドFLPリコンビナーゼ、およびその組換え標的部位FRTsの部位特異的組換え系に基づくFLPリコンピナーゼ機能を使用して、その後に除去することができる(Datsenko and Wanner, 2000)。 宿主のゲノム中に組み込まれた当該構築物を有することに対する代替として、該構築物はColE1プ型ラスミドとは異なり、且つそれがマーカー遺伝子(および興味ある遺伝子)の発現に影響しない意味で本発明のシステムと適合するファージまたはプラスミド上に存在してもよい。適切なプラスミドまたはファージの例は、本発明の実験において使用されたpACYC184(ミニプラスミドp15Aの誘導体である;Chang and Cohen, 1978参照)、R1−ミニプラスミド(Diaz and Staudenbauer, 1982)、F1に基づくプラスミドもしくは繊維状ファージ(Lin, 1984)、またはプラスミドpMMB67EH(Furste et al., 1986)である。 より詳細に言えば、適切な構築物の要素は以下のように定義することができる。 2.1.相同性アーム 本発明の初期の実験において、当該構築物の両側にある30bpの相同性が、λRedシステムによる組換えのためには十分であることが見出された(Yu,2000)。しかし、より長い相同性を用いたときには更に良好な結果が得られるので、該アームは50〜400bpの範囲であるのが好ましい。実施例では、250〜350bpの相同性アームを使用した。 2.2.プロモータ 外来マーカー遺伝子の産物が、それ自身で細胞に対して毒性または致死的であるか、或いはそれがリプレッサであるならば、その発現は調節されなければならない。該プロモータ領域は、遺伝子発現の制御を可能にする適切なオペレータ配列(例えばLacオペレータ)を含まなければならない。 本発明の一定の実施形態によれば、T7プロモータ、tacもしくはtrcプロモータ、lacもしくはlacUV5プロモータ、pBADプロモータ(Guzman et al., 1995)、trpプロモータ(トリプトファンによって阻害される)、Plプロモータ(ciリプレッサを伴う)、またはgalプロモータが使用される。 lacオペレータを使用するときには、マーカー遺伝子を活性化させるために、追加のIPTG(イソプロピルチオガラクトシド、Lacオペロンの人工インデューサ)またはラクトースが使用される。誘導システムが使用されるときは、バクテリアは誘導なしで生存できるが、インデューサを添加すると死滅する。 特に、マーカータンパク質がそれ自身で細胞に対して毒性である場合には、毒性遺伝子発現の緻密な調節を達成するために、アラビノースで誘導可能なPBADプロモータ(Guzman et al., 1995)のように、緻密に調節可能なプロモータが好ましく使用される。 マーカー遺伝子の発現を制御するもう一つの方法は、非毒性であるか(例えばレポータ遺伝子)、または定義された条件下でのみ毒性である遺伝子、例えば枯草菌sacB遺伝子と組み合せて、構成的プロモータを使用することによるものである。SacBは、蔗糖が存在するときにのみE.coliに対して毒性である。 該プロモータは、マーカー遺伝子産物の効果と、必要とされるRNAIのダウンレギュレーション効率もしくはサイレンシング効率との関係において選択される。例えば、非毒性または低毒性のマーカー遺伝子を含む構築物のためには、より強いプロモータが望ましい。 2.3.RNAII様配列 RNAIは部分的または完全な阻害剤として作用しなければならないので、RNAI(10〜555nt)に対して相補的なRNAII様配列は、該RNAII様配列の上流もしくは下流またはその中に埋め込まれているリボゾーム結合部位(シャイン・ダルガノ配列)と共に、マーカー遺伝子の上流に提示されなければならない。シャイン・ダルガノ配列(SD)とは、原核mRNA分子上における翻訳開始部位の上流にある長さの短いヌクレオチドを意味し、リボゾームRNAに結合することにより、リボゾームをmRNAの開始コドンに結合させるように働く。RNAII様配列の上流に位置するとき、好ましくは7ヌクレオチド(GAAGGAG)からなるSD配列は、当該マーカー遺伝子のATG開始コドンの約4〜15bp、例えば7bpだけ上流に位置するべきである。リボゾーム結合部位がマーカー遺伝子に対して相補的なRNAI配列の中に埋め込まれる場合、RNAIとのアンチセンスRNA相互作用およびキス複合体の形成を可能にするために、この配列は、ステム領域のみが変化し、ループ構造および好ましくは全ての二次構造が完全なままであるように挿入されるべきである。 開始コドンをRNAII様配列の前方に提供する実施形態においては、該構築物は、マーカー配列およびRNAII様配列を含んでなる融合生成物をもたらす。 もう一つの実施形態において、RNAII様配列は、リボゾーム結合部位と開始コドンの間に挿入される;このアプローチは、翻訳を可能にするための可能な最大ギャップ、例えば15〜20bpに制限される(リボゾーム結合部位と開始コドンとの間の距離が増大すれば、翻訳効率は低下する)。 RNAII様配列およびマーカー遺伝子を直接融合させることに対する代替として、RNAII様配列を、マーカー遺伝子と翻訳によって結合させることができる。これを達成するためには、一例として、開始ATGで開始し、その後にRNAII様配列、更にリボゾーム結合部位、停止コドンと開始コドンの間の重なりに対応する配列(例えばTGATG)、およびマーカー配列が続く構築物を使用してよい。この場合には、RNAII様配列がマーカー遺伝子の前に別途翻訳されてしまったときにのみ、マーカー遺伝子が翻訳される。この設定の利点は、マーカー遺伝子に対するタンパク質融合が必要とされないことである。このアプローチは別々の翻訳のオプションを提供し、該オプションは幾つかのマーカータンパク質のために、例えばTetリプレッサのような幾つかのリプレッサの場合に有益である。 一つのRNAI/RNAIIでさえもキス複合体からループを形成するので(Eguchi 1991b; Gregorian, 1995)、少なくとも一つのループが形成されることが保証されなければならない。何れの場合にも、一方では挿入されたループ構造にもかかわらずマーカーmRNAが翻訳され、他方では挿入されたループ構造のRNAII様配列とプラスミド上の相補的RNAIとの間の効率的なRNA−RNAアンチセンス反応が生じるという、両方の要件が満たされる。 RNAIと、RNAII様配列を含むマーカーmRNAとの間の反応は、リボゾームの結合を阻害し、それによって翻訳を無効にする目的を有している。前記mRNAは誘導性プロモータ(例えばlac、アラビノース、またはT7プロモータ)の制御下にあり、誘導(例えばIPTG、ラクトース、アラビノースによる)の後、前記プラスミドの複製開始点から充分なRNAIが産生されるときは常に、前記マーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる。好ましくは、該マーカー遺伝子は、細胞増殖を少なくとも一定程度(上記で定義した通り)阻害する致死性タンパク質または毒性タンパク質をコードする;この場合、その発現は細胞死または減少した細胞増殖(プラスミドフリーの細胞で)をもたらすのに対して、ダウンレギュレーションは細胞増殖(プラスミドを持った細胞で)をもたらす。 致死性または毒性のタンパク質をコードするマーカー遺伝子の代替として、該マーカー遺伝子は、如何なる目的であってもその発現がバクテリア細胞の増殖の際に調節される、何れかのタンパク質をコードしてよい。特に、該マーカー遺伝子は、下記(2.4)に記載するようなレポータ遺伝子であってよい。 本発明のシステムにおいては、通常はプラスミド複製のダウンレギュレーションの原因であるRNAIが「遺伝子サイレンサー」として作用する一方、複製の阻害が減少される。従って、本発明のシステムの使用はプラスミド複製の増大をもたらし、これはバクテリア宿主細胞の生存にとって有益である。 2.4.マーカー遺伝子 本発明の重要な特徴であるRNAIに媒介されたマーカー遺伝子のダウンレギュレーションは、如何なる目的であっても、その発現が調節されるべき如何なる遺伝子にも適用することができる。 第一の側面に従えば、RNAIに媒介されたダウンレギュレーションは、宿主に対して条件的に致死的であるマーカー遺伝子について有用である(例えば、レビューのためにDavison, 2002参照)。 それ自身が毒性で且つ本発明において適切であるマーカー遺伝子の例は、制限ヌクレアーゼをコードする遺伝子(例えば、CviAII、クロレラウイルスPBCV−1由来の制限エンドヌクレアーゼ; Zhang et al., 1992)、EcoRI(Torres et al., 2000)、タンパク質と相互作用する毒素、例えばストレプトアビジンまたはStv13(Szafransky et al., 1997; Kaplan et al., 1999; Sano et al., 1995に記載された、細胞増殖に必須のタンパク質であるビオチンを奪うことにより作用する、短縮された易溶解性のストレプトアビジン変種)をコードする遺伝子;膜を損傷するタンパク質をコードする遺伝子(E遺伝子タンパク質のΦX174(Ronchel et al., 1998; Haidinger et al., 2002)、gef(Jensen et al., 1993; Klemm et al., 1995)、relF(Knudsen et al., 1995));他のバクテリア毒素をコードする遺伝子、例えばDNAジャイレースをトラップするFプラスミド由来の強力な細胞死傷タンパク質をコードするccdb遺伝子(Bernard and Couturier, 1992)、または枯草菌由来のsacB(Gay et al., 1983);またはバクテリア宿主に対して有毒な真核細胞毒素をコードする遺伝子(例えば、FUS; Crozat et al., 1993))である。有毒遺伝子を使用するときは、それらの発現が誘導プロモータによって調節できることが不可欠である。このプロモータは、インデューサなしで活性であってはならないが、誘導時には、細胞増殖を阻害するのに充分な発現を与えなければならない。 バクテリアにおいて毒性で、且つ本発明において有用な遺伝子の更なる例は、Rawlings, 1999によって与えられる。 一定の実施形態において、マーカー遺伝子は、制限ヌクレアーゼ、ストレプトアビジンをコードする遺伝子、または間接的な毒作用を有する遺伝子(例えば上記で述べたSacB)から選択される。 好ましい実施形態において、毒性のマーカータンパク質は、それ自身またはその発現の際の毒性効果に起因して致死的または有毒ではなく、前記バクテリア細胞の増殖に不可欠な必須遺伝子の転写を抑制することによって作用するリプレッサタンパク質である。 本発明のこの実施形態において、当該プラスミドの存在下におけるRNAIに媒介されたダウンレギュレーションは、リプレッサに影響する。これは、RNAIの存在およびそのリプレッサmRNA(RNAII様配列)との相互作用がリプレッサの阻害を導き、従って、必須遺伝子の活性化またはアップレギュレーションを導き、細胞の増殖は複製するプラスミドの存在下でのみ生じるという効果を伴うことを意味する。この実施形態においては、必須遺伝子プロモータが結合性DNA配列(「オペレータ」)を提供することによって修飾され、好ましくは、発現されたリプレッサタンパク質(例えばTetリプレッサ)が該オペレータに結合することによって必須遺伝子の転写を阻害し、(Tetリプレッサの発現によって)必須遺伝子、例えばmurAの発現を調節することができるように、中性プロモータが完全な誘導性プロモータ(オペレータ配列を含む)により置換えられる。 オペレータは、その特定のリプレッサおよびエンハンサがこれに結合し、それによって隣接遺伝子の転写が調節されるDNA配列であり、例えば、配列TGGAATTGTGAGCGGATAACAATT(配列番号53;Gilbert and Maxam, 1973)をもった、lacプロモータの中に位置するlacオペレータ、またはその誘導体である(Bahl et al., 1977)。野生型宿主には存在しないはずの該リプレッサ遺伝子は、誘導性プロモータ、例えばT7、lacまたはtacプロモータの制御下に、ゲノムの中に遺伝子操作される。正常な増殖条件の下では該リプレッサは発現されない。例えばIPTGによる誘導の後に該リプレッサが発現され、必須遺伝子のプロモータ領域内に人工的に導入されたオペレータ、または人工的に挿入されたプロモータに結合して、それぞれの必須遺伝子の発現を阻害する。複製するColE1プラスミドが宿主の中に存在するときは常に、リプレッサmRNAに結合できるRNAIが産生され、従って該mRNAは修飾されていた。このRNA−RNA相互作用によって、リプレッサの翻訳は(他の何れかの毒性マーカータンパク質に類似して)阻害される。その結果、必須遺伝子産物が産生され、該細胞は生存および増殖を維持することができる。 本質的には、この実施形態において、バクテリア宿主は、RNAII様配列以外に、その必須遺伝子の一つ(該バクテリアゲノムに天然に埋め込まれたもの)を、誘導性プロモータ(該必須遺伝子の天然に存在するプロモータを修飾するため、または好ましくはこれを完全に置換えるためにゲノムの中に遺伝子操作されたもの)の制御下に含んでいる。該必須遺伝子を制御するプロモータ領域はまた、前記リプレッサタンパク質によって認識され且つ特異的に結合されるDNA配列(オペレータ)をも含んでいる。バクテリアの染色体中に遺伝子操作された該リプレッサ遺伝子もまた、必須遺伝子を制御するプロモータとは異なる誘導性プロモータの制御下にあり、従って独立して誘導可能である。 必須のバクテリア遺伝子は、文献(例えば、Gerdes et al., 2002 and 2003)およびPEC(Profiling the E. coli Chromosome)データベース(http://www.shigen.nig.ac.jp/ecoli/pec/genes.jsp)から既知であり、例えばイソロイシル−tRNAシンセターゼ(ileS)、細胞分裂タンパク質ftsQ、ftsA、ftsZ、DNAポリメラーゼIIIアルファサブユニット(dnaE)、murA、map、rpsA(30sリボゾームタンパク質S1)、rpsB(リボゾームタンパク質S2)、lytB(全体的レギュレータ)等である。 リプレッサは、オペロンのプロモータ内に位置するオペレータに結合し、それによって前記オペロン内に位置する遺伝子の転写をダウンレギュレートするタンパク質である。本発明において適切なリプレッサの例は次の通りである:グラム陰性菌におけるテトラサイクリン耐性決定因子ファミリーの転写を調節し、テトラサイクリンに結合するテトラサイクリンリプレッサ(tet)タンパク質TetR(Beck, et al., 1982; Postle et al., 1984);トリプトファン生合成遺伝子を含むtrpオペロンのオペレータに結合するトリプトファンリプレッサ(trp)。 誘導性プロモータの例は、転写が物質の添加で開始され、従って環境によって調節可能であるプロモータ、例えばIPTGにより誘導可能なlacプロモータ(Jacob and Monod, 1961)、アラビノースにより誘導可能なアラビノースプロモータ(pBAD)(Guzman et al., 1995)、および銅誘導性プロモータ(Rouch and Brown, 1997)である。 本発明の実験では、tetリプレッサ(tetR)がリプレッサ遺伝子であるように選択されたが、これは、インデューサIPTGを添加したときに必須バクテリア遺伝子を停止させることによって「毒性」マーカー遺伝子として働く。 リプレッサ遺伝子アプローチを実施するために、本発明の実験では二つのタイプのカセットが設計され、バクテリア染色体の中に挿入される(実施例4)。第一の組の構築物は、ゲノム上で特定の必須遺伝子のプロモータを置換(または修飾)するように働くカセットを具備する。第二のタイプのカセットは、試験構築物として働くものであり、概念の証拠を与えるために必須遺伝子の代用物としてGFPを用いる。GFP試験構築物を使用する実験の目的は、調節カスケード、プロモータ強度、および当該システムの全ての相互作用成分の調節を評価することである。 従って、もう一つの実施形態において、マーカー遺伝子はレポータ遺伝子であり、例えばGFP(緑色蛍光タンパク質)、hSOD(ヒトスーパーオキシドジスムターゼ)、CAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)またはルシフェラーゼをコードする。 レポータ遺伝子は、宿主細胞中のColE1型プラスミドの存在または不存在に関する情報、またはプラスミドコピー数に関する情報が必要とされるときは常に、培養プロセスにおいて有用である。このような情報は、プラスミドコピー数の制御に関して発酵プロセスを最適化すべきときに特に有用である。 レポータ遺伝子はまた、毒性マーカー遺伝子の代用物として働くことができ、従って、遺伝子調節またはサイレンシングのために用いられる構築物の機能を立証し、毒性マーカー遺伝子に対するその効果を決定することを目的とした実験設定において使用することができる。 バクテリア宿主を操作して、毒性マーカー遺伝子の発現がColE1型プラスミドによって調節され得るようにするために設計された構築物の機能を評価するために、レポータ遺伝子「緑色蛍光タンパク質」(GFP)が、本発明の初期実験におけるモデルとして役立てられた。その自己蛍光性(Tsien, 1998)のために、GFPは、初期実験においてマーカー遺伝子または必須遺伝子をそれぞれ置換するために適しているとみなされた。 本発明の一定の実施形態において、該マーカー遺伝子は内因性宿主遺伝子であってよく、これは調節されることを意図した如何なる興味ある遺伝子であってもよい。この場合、宿主細胞は、2.3において説明したように、RNAII様配列をコードする配列が関連の宿主遺伝子に動作可能に結合されるように操作される。 3.ColE1型プラスミド 本発明においては、それらの本来のRNAI/RNAII対ならびに修飾されたRNAI及び/又はRNAII配列を備えた、例えばWO02/29067に記載された全てのColE1型プラスミドを使用してよい。 上記で述べたように、有用なColE1型プラスミドの代表例は、天然に存在するColE1プラスミドpMB1、p15A、pJHCMW1、ならびに通常使用され且つ商業的に入手可能なクローニング担体、例えばpBR322および関連ベクター、pUCプラスミド、pETプラスミド、並びにpBluescriptベクターである。 抗生物質耐性遺伝子を、該プラスミド配列に含める必要はない。必須要素として、該プラスミドは、基本的にはColE1の複製開始点、および興味ある遺伝子を担持する遺伝子発現カセットを含んでいるに過ぎない。 該プラスミド上の興味ある遺伝子およびそのプロモータは、適用のタイプに依存する;本発明は興味ある遺伝子、例えば治療的遺伝子に関して、如何なる意味でも限定されない。遺伝子治療の適用のために、該遺伝子は真核細胞プロモータ、例えばCMVプロモータに動作可能に結合されてよい。 <本発明の適用> 本発明は、プラスミドDNAの製造のため、および組換えタンパク質を製造するために、最新の発酵技術において広範に使用することができる。 本発明を適用するために有用な、pDNAの発酵のための幾つかのアプローチが既に記載されている。プラスミドDNA製造のためのこれら方法は、細胞に課される制御のレベル、および発酵に影響する多くの因子に関して異なっている。 実験室スケールでpDNAを製造するために、プラスミドを有する細胞の震盪フラスコ内での培養は最も簡単な方法である(O'Kennedy et al., 2003; Reinikainen et al., 1988; O'Kennedy et al., 2000; US 6,255,099)。 より多量のプラスミドを得るために、開始時に全ての栄養素が与えられ且つ培養中には栄養素が添加されない所謂「回分発酵法」においては、制御された発酵槽の中で細胞を培養することができる。このタイプの培養は、炭素源および窒素源として所謂「複合成分」を含有する培地を用いて行われる(O´Kennedy et al., 2003; Lahijani et al., 1996; WO 96/40905; US 5,487,986; およびWO02/064752)。或いは、pDNA製造のための合成培地、例えばpDNA製造のために特別に設計された定義された培地を使用してもよい(Wang et al., 2001; WO 02/064752)。 本発明はまた、大腸菌の半回分発酵(fed batch fermentation)において使用されてよく、この場合、典型的には、定義された設定点でのプロセスパラメータを制御するために栄養素を供給することによるフィードバック制御アルゴリズムを使用することによって、1以上の栄養素が培養槽に供給される。従って、フィードバック制御は、発酵の全体を通しての細胞活性に直接関係している。発酵のフィードバック制御のために使用し得る制御パラメータには、pH値、オンラインで測定される細胞密度または溶解酸素圧(DOT)が含まれる。供給速度によって定義された設定点における溶解酸素圧を制御するためのフィードバックアルゴリズムは、WO99/61633に記載されている。 もう一つの更に複雑なアルゴリズムは、フィードバック培養法のための制御パラメータとして、DOTおよびpH値の両方を使用する(US 5,955,323; Chen et al., 1997)。 もう一つの栄養素供給モードは、指数関数に従って追加培地を供給することに基づいている。この栄養素供給速度は、望ましい比増殖速度μに基づいて制御される。WO96/40905およびO'Kennedy et al., 2003は、プラスミドDNA製造のために、指数関数的な半回分法を使用する方法を記載している。Lahijani et al., 1996は、指数関数的な栄養素供給を温度制御可能なプラスミド複製向上と組み合せることを記載している。 或いは、最初にE.coli細胞が予備培養で増殖され、続いて主培養において発酵され、該主培養はバッチ段階と栄養素供給段階を含む半回分法である、プラスミドDNAを製造するプロセスに対して、本発明を適用してもよい。バッチ段階の培地および栄養素供給段階の際に添加される培地は化学的に定義されており、また栄養素供給段階の培地は増殖律速基質を含有していて、予め定められた指数関数的に流れる供給速度で添加されることにより、前記比増殖速度を予め定められた値に制御する。 マーカー遺伝子が誘導性プロモータの制御下にあるときは、インデューサは開始時にバッチに添加されてよく、および/またはパルス状で(バッチ培地および栄養供給されるバッチ培地の中に)添加されてもよい。栄養供給段階の間、インデューサはパルス状でまたは連続的に添加されてよい。 発酵プロセスの終了時に細胞を回収し、当該技術で既知のプロセスに従って、例えば米国特許第5,981,735号に記載の陰イオン交換ゲル浸透クロマトグラフィーに基づく方法により、または米国特許第6,197,553号に記載の二段階クロマトグラフィー工程、即ち、第一の工程としての陰イオン交換クロマトグラフィーおよび第二の工程としての逆相クロマトグラフィーを使用することにより、プラスミドDNAを単離および精製する。プラスミドDNAを製造するためのもう一つの適切な方法がWO03/051483に記載されており、これはモノリシックな支持体と組み合せた二つの異なるクロマトグラフィー段階を使用する。 本発明は、プラスミド製造、例えば遺伝子治療用プラスミド製造のための適用に加えて、組換えタンパク質の製造のためにも有用である。 組換えタンパク質の製造に関して、原理的には、E.coli中で、特にColE1型プラスミドから興味ある遺伝子を発現するために有用であることが証明されている如何なる方法を使用してもよい(レビューのためには、例えば、Jonasson et al., 2002; Balbas, 2001参照)。該タンパク質は、複合、合成または半合成の培地を使用した回分発酵、または好ましくは半回分培養から細胞内に得てもよく(完全にまたは部分的に可溶性の、または包接体として)、または(細胞培地または細胞膜周辺腔への)分泌によって得てもよい。 プラスミドDNA、通常は遺伝子治療用途のためのプラスミドDNAの製造において、興味ある遺伝子はバクテリア宿主細胞中において発現されない。それが最終的に発現される哺乳類、好ましくはヒトにおけるその応用の観点から、問題の遺伝子は、通常は真核細胞プロモータと動作可能に結合される。対照的に、E.coliにおけるタンパク質の組換え製造の場合、問題の遺伝子は宿主細胞中で、従って原核細胞プロモータの制御下で発現される。 組換えタンパク質の製造のためには、二つのプロモータ、即ち、マーカー遺伝子を制御するプロモータ、および興味ある遺伝子を制御するプロモータは、何れか一方の発現を妨害する干渉が生じない限り、異なるものでも同じものでもよい。 有利なことに、それらの活性は、転写の時点およびレベルに関して相互に独立であるから、これらプロモータは別々に調節される。好ましくは、マーカー遺伝子を制御するプロモータは発酵プロセスの開始時点で活性であり、中程度の量のmRNAを産生するのに対して、興味ある遺伝子のプロモータはむしろ強力であり、且つ発酵の際の選択された時点で活性化される。興味ある遺伝子およびマーカー遺伝子の両方について誘導性プロモータが使用されるならば、それらは通常、異なるインデューサによってオンされるように選択される。或いは、マーカー遺伝子が誘導性プロモータの制御下にあり、且つ興味ある遺伝子は構成的プロモータの制御下にあってよく、または逆であってもよい。これは、上記のように、マーカー遺伝子構築物がバクテリア宿主ゲノムの中に組み込まれる方法、およびマーカー遺伝子構築物がプラスミドもしくはファージの中に含められる方法の両方について適用される。 発酵の種々の段階におけるプロモータの誘導に関しては、プラスミドDNAの製造について上記で述べた原理が適用される。 本発明は、全ての複製されたプラスミドが抗生物質耐性遺伝子を欠失しており、従って、遺伝子療法の用途に加えて、抗生物質耐性遺伝子の不存在が必要とされ、または望まれる全ての用途、例えばヒトおよび動物の食料の製造を目的とした組換え酵母株の作製、または組換え植物の作製のために適している。 実施例1および実施例2では、表1に示したオリゴヌクレオチドが使用される。 T7プロモータおよびリボゾーム結合部位に関するRNA−I相補的配列およびGFP cDNAの最初の60ヌクレオチドを含む、配列番号1および2のオリゴヌクレオチドを、配列番号7および8のオリゴヌクレオチドを使用して増幅させて、T7ポリメラーゼによるインビトロ転写のために使用する(実施例1参照)。配列番号1のオリゴヌクレオチドは、RNAIのループ1およびループ2(図4のIIIと均等)を含んでおり、配列番号2のオリゴヌクレオチドは、RNAIのループ2(図4のIIと均等)を含んでいる。 配列番号3および4のオリゴヌクレオチドは、ColE1プラスミドからRNAI(110bp)を増幅し、インビトロ転写用のT7プロモータを組み込むために使用される。配列番号5および6のオリゴヌクレオチドは、ColE1プラスミドからRNAII180ntを増幅して、インビトロ転写用のT7プロモータを組み込むために使用される。配列番号7および8のオリゴヌクレオチドもまた、テンプレートとしてのpet11aGFPから、陰性対照用のDNA(図4のIと均等)を製造するために使用される。陰性対照は、T7プロモータおよびリボゾーム結合部位に関して、緑色蛍光タンパク質mRNAの断片である。 実施例1 インビボ転写された構築物を用いたハイブリダイゼーション実験 その翻訳がハイブリダイゼーションによって阻害されるべきmRNA分子内での、RNAIに対して相補的な配列(RNAII様配列)の望ましい長さおよび位置を選択するために、インビトロでのアンチセンス実験が行われる。異なる合成RNAおよびRNAIIに対するRNAIのRNAハイブリッドを、ゲル移動アッセイにかける。 この目的のために、RNAII様配列を含んでなる人工的に設計されたGFP構築物をインビトロで転写し、インビトロで転写されたRNAIと共にインキュベートする。本来のRNAポリアクリルアミドゲル上で、ハイブリダイゼーションが検出される。 合成RNA(それらの5’末端にRNAIIヘアピン構造を持った、RNAIおよび合成構築物)を、インビトロ転写によって得る(Ampliscribe、T7-フラッシュ転写キット; Epicentre)(図2)。各々がMetabionから入手したpBR322oriおよびオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド配列番号1および2)に由来する110bpのRNAIおよびRNAIIを、PCRにより増幅し、インビトロ転写のための線型DNAテンプレートとして用いる。 RNAIおよびRNAII−標的の相互作用を確認するために、ゲル移動実験を行う。ループ/ループ複合体は、それらが遅延して現れるときに可視化される。 ハイブリダイゼーションの前に、RNAは別々に加熱される。ゲルは厚さ75mm、5%(w/v)のポリアクリルアミド(60:1)であり、氷冷した水で冷却されたミニタンパク質ゲル装置(ファルマシア社)において実施される。ランニング緩衝液は、5mMのMgCl2を含有する1×Tris−ホウ酸塩(89mMのTris(pH8.3)、89mMホウ酸)である。バンドを臭化エチジウムで染色し、UV透視装置を使用して可視化する。 RBSおよび開始コドンを含んだ60ntのGFP mRNAであって、転写物の始点にRNAII配列を備えたもの、および備えないものを、RNAIと共にインキュベートすると図3に示す結果が得られる。 図3のゲル1は、陽性対照(完全なRNAI配列に対応するRNAII108nt)および陰性対照を示している。二つのRNAの間に反応が生じると、(マークされた)RNAIバンドは遅延されるので弱く現れる。 ゲル1: 1.陰性対照RNA 2.RNAI+陰性対照RNA 3.RNAII108nt 4.RNAI+RNAII108nt(インキュベーションの前に90℃で3分の加熱) 5.RNAI+RNAII108nt 6.RNAI(インキュベーションの前に90℃で3分の加熱) 7.RNAI 図3のゲル2上のレーン8、9および10には、RNAIバンドだけが示されている。一つのRNAIIループを担持する転写物と共にインキュベートしたときには、非常に弱い反応が見られるのに対して、二つのループをもった転写物は強い反応を与えた。 ゲル2: 8. RNAI 9. RNAI(+RNAII ループ2) 10.RNAI(+RNAII ループ1および2) ループ2GEP(レーン9)は、陰性対照に比較して僅かに弱くなったRNAIバンドを示す一方、ループ1+2GFP(レーン10)は、RNAIバンドにおける劇的な減少を示し、キス複合体の形成を示している。このデータは、一つのループしか存在しないRNA−RNA相互作用が効率的であることを示している。 ゲル上でのキス複合体の形成を示すループ構築物は、たとえ弱いものであっても、pMMB67EHおよびpBluescriptII・KS+の中にクローン化され、GFP発現について試験される。二つのヘアピンループを含むマーカーとRNAIとの相互作用は更に強いので、該構築物はインビボ発現のための好ましい候補とみなされる。 実施例2 遺伝子発現および遺伝子サイレンシングを試験するためのインビボアッセイ 試験すべき構築物において、一つまたは二つのRNAIIステムループが発現ベクターの中にクローニングされる。転写物の二次構造および適正な折畳みが、コンピュータプログラムRNAフォールド(Gene Quest, Vienna RNA folding procedure; Zuker, 1999参照)によって確認される。この実験について、非ColE1起点を備えた発現ベクター、例えばpMMB67EH(Furste et al., 1986)は、該プラスミド内においてRNAI−標的の相互作用を回避し、またリボゾーム結合部位の近傍における追加の配列の存在によってGFP発現が妨害されるかどうかを決定するために有用と考えられる。リボゾームトラック上またはその近傍における追加の配列および二次構造は、通常は遺伝子発現を減少させ、または完全に阻害するので(Malmgren, 1996; Ringquist, 1993)、これは重要な点と考えられる。 本来のRNAゲルを用いて得られた結果に基づいて(実施例1参照)、GFPとRNAII様配列との二つの融合物が構築される(図4)。二つの異なるRNAII様配列は、T7プロモータおよびlacオペレータの制御下に、GFPコーディング配列の上流に挿入される。 gfp遺伝子は、プライマーであるNheI−GFP−backおよびBamHI−GFP−forを使用することにより(プライマー配列に付いては表2参照)、pGFPmut3.1から増幅される。T7/lacOプロモータ(RNAIIループ/RBSの組合せを伴うもの、および伴わないもの)は、プライマー(HindIII−T7GFP−back)上で、gfpを増幅するために使用したBamHI−GFP−forと一緒に完全に合成され、またはオリゴ(T7al3−oligo、およびT7L12ras−oligo)上で合成され、NheI制限部位によって、増幅されたgfpに融合される。全部の断片が、BamHIおよびHindIII制限によって、pMMB67EHの中にクローニングされる(プライマーおよびオリゴについては表2参照)。 これらの構築物は、リボゾーム結合部位の近傍における追加の配列にかかわらず、GFPが発現することを確認するために、pMMB67EHベクターの中にクローニングされる。両方の構築物は共にGFPを産生するが、その発現は、ヘアピンループのない構築物に比較して顕著に低い。これら二つの構築物を、全体のカセットを染色体の中に組み込む能力をもった宿主を選別するために働く、Tn7相同体およびカナマイシン耐性遺伝子を含むベクターpBluescriptの中にクローニングする。このGFPカセットは、先に記載したようにして、バクテリア染色体に挿入される。 図4は、pMMB67EHの中に挿入され、またHMS174(DE3)のゲノムに挿入される構築物を示している。下記のためのカセット:I)HMS174(DE3)T7GFP=IS5、II)HMS174(DE3)T7al3GFP=IS11、およびIII)HMS174(DE3)T7l12rasGFP=IS13。 T7aL3GFPおよびT7l12rasGFPは、pMMB67EHの中にクローニングされたときにGFP発現を示すので、これらの発現カセット(および陰性対照としてのT7GFP)は、アンチセンスRNAIの標的として働くそれらの能力を試験するために、バクテリア染色体に挿入される。該構築物は、BamHIおよびHindIII制限部位によって、ベクターpBluescript KSII+の中にクローニングされる。Tn7相同体は、相同体1についてはプライマーNotI−Tn7/1−backおよびEcoRI−Tn7−forを用いて、相同体2についてはプライマーXhoI−Tn7/2−backおよびKpnI−Tn7−forを用いて、E.coli・HMS174(DE3)コロニーから増幅される(プライマー配列については表3参照)。染色体中に組み込まれた全カセットを有する宿主を選別するために役立つカナマイシン耐性カセットについては、pUC4K由来のEcoRI断片を用いる。T7ターミネータは、プライマーXhoI−T7term−forおよびEcoRI−T7term−for(表2)によって、発現ベクターpET11aから増幅される。全体のプラスミドは、該カセットのためにNotIおよびKpnIによって消化され、またプラスミド骨格の消化のためにAlw44Iによって消化される。ゲル精製された線型カセットは、RedヘルパープラスミドpKD46を有するMG1655のバクテリア染色体に挿入される。挿入された断片を有する染色体区画は、P1形質導入によって、HMS174(DE3)に移送される。発現カセットの正しい挿入は、PCR(外部プライマー(表3)および内部プライマー)によって確認される。 染色体挿入部位としてはattTn7(deBoy and Craig, 2000)が選択されるが、これはglmSの転写ターミネータ内における、遺伝子glmSとphoSの間の非コード領域に位置する。特定のTn7プライマーのみにより、この転写ターミネータは該カセットによって置換えられる(Yuおよび彼の共同研究者は、線型断片の染色体への組み込みのために40bpの相同性が充分であることを示した(Yu et al., 2000))。より長い相同性ではより良好な結果が得られるので、それらは一方の側で300bpまで延長され、他方の側では240bp延長される。HMS174(DE3)は、Redヘルパープラスミドによる線型DNAの直接の組み込みに適しているようには思えないので、MG1655が初期組み込みのために使用され、P1遺伝子導入によって、組換え体染色体区画がHMS174(DE3)の中に導入される。得られた株HMS174(DE3)T7al3GFP=IS5、HMS174(DE3)T7GFP=IS11、およびHMS174(DE3)T7l12rasGFP=IS13は、それぞれRNAIIループ構造を伴って、または伴わずに、T7プロモータの制御下のGFPを含んでいる。発現カセットの正しい挿入は、PCRによって確認される。得られた株は、I)IS5、II)IS11、およびIII)IS13と命名され、震盪フラスコ実験において、GFPの発現およびRNAIに媒介された遺伝子サイレンシングの効果について試験される。震盪フラスコ実験のために、一晩の培養物が1:100に希釈され、OD600〜0.5まで増殖される。次いで、誘導のためにIPTGが添加される。マイクロプレート読取り器SPECTRAmax GeminiXSおよびソフトウエアSOFTmax Pro(モレキュラーデバイス社)により、515nmカットオフのフィルターを用いて、励起波長488nmおよび発光波長530nmで蛍光が測定される。 IPTGでの誘導を用いたGFPの検出、およびこれを用いないGFPの検出は、pBR322が存在するときの明瞭な遺伝子サイレンシング効果を示している(図5)。IS13はより低いGFP発現を示し、IS11およびGFP発現の阻害は僅かしかないのに対して、IS11はより高いGFPの発現および顕著な遺伝子サイレンシング効果を示し、我々の概念が作用していることの証拠を提供する。 GFP遺伝子の上流にRNAII様配列が存在しないとき(IS5)、遺伝子サイレンシングは検出されない(図6)。 IS5を、pET11a、pET3d、pMMB67EHおよびpBR322を含む異なるプラスミドで形質転換して、プラスミドとゲノム遺伝子発現との間の望ましくない相互作用をチェックする(図6)。GFP mRNAがRNAII様配列を含み、且つゲノム上のカセット(例えばT7プロモータまたはlacオペレータ)に対して相同性の配列を含まないColE1プラスミドが用いられるときにのみ、定義された遺伝子サイレンシング効果が観察され得ることがわかる。典型的には遺伝子療法に使用されるpBR322関連プラスミドを使用するときに、宿主とプラスミドとの間の干渉は、アンチセンス反応を妨害しない。 図5は、IS11およびIS13株であって、pBR322を含むものと、これを含まないものとの比較を示している。Rfu/ODは、光学密度に関連した蛍光単位である。GFP蛍光の増大は、1.5時間の間隔での誘導後に観察される。 図6は、種々のプラスミドを含むIS5を用いた震盪フラスコ実験の結果を示している。pBR322および関連プラスミド(遺伝子療法用途に使用される)は、宿主とプラスミドとの間の干渉を示さない。 実施例3 発酵の際のマーカー遺伝子の発現/抑制 プラスミドpBR322の存在を伴った、およびこれを伴わない半回分発酵法の際に、E.coli株IS11およびIS5が分析される。表4は、四つの半回分発酵の実験設定を要約している。各株は、pBR322の存在下または不存在下で増殖される。 四つの全ての培養は、CO2、O2、基底消費またはキャパシティー等のオンライン信号について非常に類似した傾向を示し、また図7aおよび図7bに示すように、全BDMのコースは計算された平均から±10%未満の非常に小さい範囲で変動する。図7aは、pBR322の維持を伴った、または伴わないIS11のバクテリア乾燥重量(BDM)およびGFP発現を示している。全BDMは四つの発酵全部について同一であるが、GFP濃度は、pBR322が存在するときに劇的に減少する(50%)。GFP測定の曲線経過は、当該プラスミドの存在、従ってその複製によるGFPの翻訳の阻害を強く示し、RNAIおよびGFPの修飾されたmRNAが相互作用することにより、翻訳を妨害するとの予測が確認される(図7a)。pBR322が組換えタンパク質発現自体に対する影響を有することを除外するために、ここでもプラスミド繁殖を伴った、または伴わないIS5を使用して、更なる半回分実験が行われる。図7bに示す様に、GFP発現または細胞増殖に差はない:宿主中にpBR322が存在しても存在しなくても、GFPの転写または翻訳に対する影響は検出できない。これらの実験において、全体のGFP発現は、本来のmRNAの効率的な翻訳に起因して、株IS11を使用するときよりも遥かに高い。タンパク質発現は、IS11におけるリボゾーム結合部位の近傍での安定なRNAループ構造の存在によって減少するが、pBR322が存在するときには発現が阻害される。従って、毒性マーカーの代用物としてGFPを使用することによって、マーカー遺伝子の発現を抑制するためにColE1の複製調節システムを使用できることを立証することができる。 実施例4 必須遺伝子の発現を調節するためのリプレッサの使用 a)必須遺伝子のための構築物の作製 試験すべき第一の必須遺伝子は、map(Li et al., 2004)、即ち、E.coli染色体のmin4に位置するメチオニンアミノペプチダーゼの遺伝子、rpsB−tsfオペロンからの357塩基対、およびT44−RNA遺伝子からの201bpである。 これら二つの遺伝子は多岐に転写され、プロモータは重ならない。該必須遺伝子のプロモータは全体的に除去されて、選択されたリプレッサに特異的な誘導性プロモータによって置換えられるから、これは不可欠の事項である。Chang et al, 1989は、lacプロモータにより制御されるmap遺伝子をもった、条件的に致死性の突然変異体株を記載した。該mapカセットによって、67bpの染色体区画が、mapプロモータを含むように置換される(Chang et al, 1989)。ゲノムからの可能な転写を回避するために、rrnBオペロン(Brosius et al, 1981)由来の二つの強い転写ターミネータT1およびT2が、組み込みカセットに加えられる。 試験される第二の遺伝子はmurA(Brown et al, 1995)であり、これは必須のE.coli遺伝子として記載されている。該遺伝子murAは、バクテリア細胞壁生合成の第一の拘束されたステップのための酵素UDP−N−アセチルグルコサミン・エノールピルビルトランスフェラーゼをコードし、69.3minにおけるE.coli染色体上に位置している。Herringおよび Blattnerは、彼等の刊行物(Herring and Blattner, 2004)において、幾つかの条件的な致死性アンバー変異体の死亡曲線、なかでも特にmapおよびmurA変異体の死亡曲線を比較した。しかし、全ての変異体のうちでmurAは最も殺菌性であり、非許容性培地において最良かつ最速の致死速度を示す。 図8は、必須遺伝子プロモータの置換を含む、必須遺伝子に基づく構築物の原理を示している。 該ゲノム組み込みのための構築物は、ベクターpBluescript KSII+の中に再度クローニングされる。各〜300bpの必須遺伝子相同体が、下記のプライマー対を用いてMG1655コロニーから増幅される:map相同体のためのプライマー対であるSacI−map1−for/NotI−map1−back、およびXhoI−map2−back/KpnI−map2−for 、並びにmurA相同体のためのプライマー対であるSacI−murA1−for/NotI−murA1−back、およびXhoI−murA2−back/KpnI−murA2−for(プライマー配列については表5参照)。ラクトースプロモータおよびオペレータ(plac)を含む断片は、プライマーのBamHI−placO−backおよびNotI−placO−forにより、pBluescriptKSII+から増幅される。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)の遺伝子は、プライマーであるHindIII−SalI−Cat−backおよびXhoI−Cat−forを用いて、pLys(pACYC184)から増幅される。rrnBT12ターミネータは、プライマーであるBamHI−T12−forおよびHindIII−T12−backにより、pBADから増幅される。この組立てられたベクターpBSKmap<plac−T12−Cat>およびpBSKmurA<plac−T12−Cat>は、SacIおよびKpnIによって消化され、線形化されたカセットは、先に記載したようにしてMG1655のゲノムに挿入される。該カセットの正しい組み込みは、外部プライマー(map1 extern、map2 extern、murA1 extern、murA2 extern;表5)および内部プライマーを組み合せることにより、PCRによって確認される。 必須遺伝子および試験遺伝子の構築物のためのプライマーを、下記の表5に示す。 相同性プライマーが正しく選択されれば、IPTGの存在下でのみ、ゲノム組み込みの後にコロニーが期待される。プライマーであるNotI−map/murA−forにはリボゾーム結合部位(RBS)が設けられないが、これは、可能な限り正常な遺伝子発現パターンを維持するために、本来のRBSを該カセットで置換しないことを意図しているからである。従って、その目的は、必須遺伝子の正面にある何れかのプロモータを置換するが、本来のRBSを完全なまま維持することである。 map変異体およびmurA変異体は何れも、形質転換後にはLA−CMプレート上で増殖しなかったが、それらは0.1mmolのIPTG/Lを含有するLB−CMプレートおよび液体培地上では適正に増殖し、プライマーの選択が正しかったこと、並びにplacおよびターミネータが適正に機能していることを示した。しかし、更なる培養において、map変異体は、IPTGが存在しないプレート上および液体培地上で僅かな増殖を示す。murA変異体は非許容性培地上において如何なる増殖も示さないので、選別システムのための基礎としてmurA構築物が選択される。 b)必須遺伝子の代用物としてのGFPを抑制するための試験構築物の作製 pBluescriptKSII+によって例示される構築物の原理が、図9に示されている。 プラスミドpBSKTn7<pLtetOgfp−T7aL3tetR−Cat>は、幾つかの連続するクローニング工程において、出発ベクターとしてのpBSKTn7<T7al3GFP>、および個々の断片(プライマー配列については表5および表6参照)を含む中間体プラスミドから構築される。Tn7相同体1は、プライマーであるSacI−Tn7/1−backおよびEcoRI−Tn7/1−forを使用してバクテリア鋳型から増幅され、またTn7相同体2は、プライマーであるXhoI−Tn7/2−backおよびKpnI−Tn7/2−forを使用して増幅され、rrnBT12ターミネータは、プライマーであるEcoRI−T12−backおよびHindIII−SalI−T12−forを使用して増幅され、またcat遺伝子は、プライマーであるHindIII−SalI−Cat−backおよびXhoI−Cat−forを使用して増幅される(表5)。テトラサイクリンリプレッサ遺伝子(tetR)は、Tn10を含有するテトラサイクリン耐性株IS1(HMS174(DE3) ilv500::Tn10)から、プライマーであるNheI−tetR−backおよびBamHI−tetR−forを使用して増幅される。tet誘導性のpLtetOプロモータは、プライマー(HindIII−PLtetO−NotI−RBS−GFP−back)上で、gfpを増幅するために使用したプライマーであるEcoRI−GFP−forと共に完全に合成される。ゲノム組み込みのために、組立てられたベクターpBSKTn7<pLtetOgfp−T7al3tetR−Cat>を、再度SacIおよびNotIで消化して、望ましい発現カセットを放出させる。 c)HMS174(DE3)(=K12)ゲノム中に挿入した試験構築物を用いた、震盪フラスコ実験 HMS174(DE3)Tn7::pLtetOgfpT7aL3tetRCat(HMS−GTC)であってpBR322を用いたもの、および用いないものの一晩培養物を、半合成培地中に1:100で希釈し、インデューサであるIPTGを伴った、および伴わない二つの並列な震盪フラスコ培養に分割する。これらの培養物を、37℃で震盪することによって増殖させる。震盪フラスコが0.7を越えるOD600nmに達したときに、gfp−ELISAのためのサンプリングを開始する。 HMS−GTCを用いた震盪フラスコ実験は、合成プロモータpLtetOが働いているかどうか、またそのN末端に小さい融合ペプチド(ループ3)を備えたtetRが、オペレータ結合において未だ効率的であるかどうかを試験するために行われる。 誘導された培地は0.1mmolのIPTGを含有しており、また0.5の0Dにおいて0.5mmolのIPTGまで増大される。この高用量のIPTGは、誘導されたフラスコの増殖阻害の理由である(図10)。IPTGの添加は、gfp遺伝子の転写を停止させ、反応カスケードが適正に機能することを示す。誘導されたフラスコ内における低い(且つ一定の)基底GFPレベルは、明らかに、IPTGなしの一晩培養から残留GFPによって生じるものである。 HMS−GTC震盪フラスコの結果を、同じ宿主で且つプラスミドpBR322を含むMG1655−GTCの震盪フラスコ実験と比較する。MG1655は、DE3プロファージ、従ってT7ポリメラーゼを欠失しており、陰性対照として働く。 pBR322の存在は、常に増大したGFPの発現を示す。表7においては、震盪フラスコ内のng GFP/ODの平均比率(プラスミド/プラスミドなし)が計算され、当該カセットの染色体コピーを含有する両方の宿主、並びに異なる誘導戦略が比較された。 培養の開始時にプラスミドを含んだHMS−GTCが誘導されると、プラスミドのないフラスコに比較してGFP発現の僅かな増大(1.44倍)が測定される。しかし、この僅かな増大(1.43倍)はMG1655−GTCにおいても測定され、このGFP蓄積がRNAI−アンチセンス反応によってではなく、おそらくはプラスミドによって生じることを示している。 0.5のOD600nmに達したときにIPTGを添加すると、完全に異なる結果が得られる。基底GFPレベルは高くても、細胞内にpBR322が存在するときには、GFPの発現には限定的な上昇が存在する。ここで、RNAIIのループ3との、RNAIおよびそのアンチセンスの反応は、インデューサIPTGのアンタゴニストである。しかし、IPTGは強いインデューサであり、RNAI−ループ3アンチセンス反応は比較的弱い。 また、GFPの二倍を越える増大(2.29倍)が、誘導なしのHMS−GTC pBR322において観察される(表7)。これは、T7系の漏れ易さによって説明でき(Studier and Mofatt, 1986)、またアンチセンス反応の間接的な証明でもある。T7ポリメラーゼの基底レベルに起因して、小量のTetRが細胞内に存在する。また、TetRは強力で且つ効率的なリプレッサ分子なので、小量でも、GFP発現を2.29倍に抑制するのに充分である。pBR322由来のRNAIが存在すると、それはこの僅かなtetR mRNA分子を「扱う」ことができ、GFPレベルは上昇する。 文献図1は、RNAIに媒介されたマーカー遺伝子のダウンレギュレーションまたはサイレンシングの原理を示している。図2は、宿主細胞を操作するための構築物を示している。図3は、インビボで転写された構築物を用いたハイブリダイゼーションの結果を示している。図4は、マーカー遺伝子およびRNAII様配列を含んだ構築物を示している。図5は、pBR322の存在下における遺伝子ダウンレギュレーション効果を示している。図6は、種々のプラスミドの遺伝子ダウンレギュレーション効果を示している。図7aは、発酵の際の、マーカー遺伝子の発現/抑制を示している。図7bは、発酵の際の、マーカー遺伝子の発現/抑制を示している。図8は、必須遺伝子プロモータの置換を含んだ必須遺伝子に基づく構築物の原理を示している。図9は、必須遺伝子の代用物としてGRPを発現する試験構築物を示している。図10は、HMS174(DE3)ゲノムの中に挿入された試験構築物を用いた震盪フラスコ実験からの結果を示している。 i)発現が調節されるべきタンパク質をコードするDNA配列と、 ii)RNAII配列の1つ又は2つのループ構造をコードし、且つ、 a)ColE1複製開始点を備えたプラスミドから転写可能なRNAI配列に対して相補的であり、且つ、 b)配列i)に動作可能に結合されたRNA配列をコードするDNA配列とをゲノム中に含んだ、天然に存在しないバクテリア細胞であって、 前記RNAII配列は、前記相補的な配列の十分なRNA−RNA相互作用を保証して、前記プラスミドが存在するときには、それから転写されたRNAIがi)のDNA配列から転写されるmRNAの翻訳を阻害するのに充分な程度に、前記mRNAに結合するように設計および配置されている、バクテリア細胞。 請求項1に記載のバクテリア細胞であって、前記DNA配列i)は、前記細胞に対して外来のDNA配列であるバクテリア細胞。 請求項2に記載のバクテリア細胞であって、前記外来DNA配列i)が、前記細胞に対して致死的または毒性であるタンパク質をコードするバクテリア細胞。 請求項3に記載のバクテリア細胞であって、前記外来DNA配列i)が、誘導性プロモータの制御下にあるバクテリア細胞。 請求項3に記載のバクテリア細胞であって、前記外来DNA配列i)は、それ自身が、または毒性物質を発生させることによって、前記細胞に対して致死的または毒性であるタンパク質をコードするバクテリア細胞。 請求項3に記載のバクテリア細胞であって、前記外来DNA配列i)は、前記細胞の増殖に不可欠な必須遺伝子の転写を抑制することによって、前記バクテリア細胞に対して致死的または毒性であるリプレッサタンパク質をコードするバクテリア細胞。 請求項6に記載のバクテリア細胞であって、前記必須遺伝子がプロモータに対して動作可能に連結されるように操作され、該プロモータは、前記リプレッサタンパク質によって認識され且つ特異的に結合されるDNA配列を含んだバクテリア細胞。 請求項7に記載のバクテリア細胞であって、前記必須遺伝子に連結された前記プロモータが誘導性であるバクテリア細胞。 請求項8に記載のバクテリア細胞であって、前記誘導性プロモータは、請求項4の誘導性プロモータとは独立に誘導可能であるバクテリア細胞。 請求項1に記載のバクテリア細胞であって、前記DNA配列ii)が、前記DNA配列i)のリボゾーム結合部位と開始コドンの間に挿入されるバクテリア細胞。 請求項1に記載のバクテリア細胞であって、前記DNA配列i)および前記DNA配列ii)は、それらが融合タンパク質をコードするように連結されるバクテリア細胞。 請求項1に記載のバクテリア細胞であって、前記DNA配列i)と前記DNA配列ii)との間に重複する停止コドン及び開始コドンを有する配列をさらに含む、バクテリア細胞。 請求項1〜12の何れか1項に記載のバクテリア細胞であって、ColE1複製開始点を備えたプラスミドを複製する能力を有するバクテリア細胞。 請求項13に記載のバクテリア細胞であって、それが大腸菌細胞であるバクテリア細胞。 a)ColE1複製開始点を備えたプラスミドと; b)その中で前記プラスミドa)を複製することができるバクテリア宿主細胞とを含んでなり、 該宿主細胞は、 i)その発現が調節されるべきタンパク質をコードするDNA配列;および ii)RNAII配列の1つ又は2つのループ構造をコードし、且つ、 a)前記プラスミドa)から転写可能なRNAI配列に対して相補的であり、且つ、 b)配列i)に動作可能に結合されたRNA配列をコードするDNA配列をゲノム中に含む、宿主ベクター系であって、 前記ii)に定義されたRNA配列は、前記プラスミドa)の不存在下で前記タンパク質の発現を可能にし、 また前記プラスミドa)が前記宿主細胞b)の中に存在するときに、前記プラスミドから転写された前記RNAI分子は、ii)で定義されたRNA配列とハイブリダイズし、それによって前記タンパク質の発現が抑制される宿主ベクター系。 請求項15に記載の宿主ベクター系であって、前記バクテリア宿主細胞b)は、請求項1〜12および請求項14の何れか1項に定義したバクテリア細胞である宿主ベクター系。 請求項15または16に記載の宿主ベクター系であって、前記外来DNA配列i)は、前記バクテリア細胞に対して致死的または毒性であるタンパク質をコードし、またii)に定義された前記RNA配列は、前記プラスミドa)の不存在下において、前記宿主細胞の増殖が完全にまたは部分的に阻害されるように前記致死的または毒性のタンパク質の発現を可能にし、また前記プラスミドa)が前記宿主細胞の内部に存在するときは、前記プラスミドから転写されたRNAI分子が、ii)で定義した前記RNA配列とハイブリダイズし、それにより前記致死的または毒性のタンパク質の発現が抑制されて、前記プラスミドを有する細胞において前記完全なまたは部分的な増殖阻害が抑制される宿主ベクター系。 請求項15に記載の宿主ベクター系であって、前記プラスミドa)が、更に興味ある遺伝子を含んでいる宿主ベクター系。 請求項18に記載の宿主ベクター系であって、前記興味ある遺伝子が治療用遺伝子である宿主ベクター系。 請求項15〜19のいずれか1項に記載の宿主ベクター系であって、前記プラスミドがpUCプラスミドである宿主ベクター系。 プラスミドDNAを製造する方法であって: i)請求項3のバクテリア宿主細胞の集団を、ColE1複製開始点を有し、且つ前記バクテリア宿主細胞内で前記プラスミドから発現されない興味ある遺伝子を含んだプラスミドを用いて形質転換する工程と、 ii)前記バクテリア宿主細胞ポピュレーションを、前記致死的または毒性のタンパク質が前記細胞内で発現される条件下において増殖させ、それによって前記タンパク質の発現は、前記プラスミドを含む細胞が前記プラスミドフリーの細胞よりも速く増殖するように、前記プラスミドフリーの細胞の増殖を完全にまたは部分的に阻害する工程と、 iii)プラスミドを含む細胞を回収する工程と、 iv)前記プラスミドDNAを単離および精製する工程とを含んでなる方法。 請求項21に記載の方法であって、前記興味ある遺伝子が、哺乳類における発現を可能にする真核細胞プロモーターに動作可能に結合された治療用遺伝子である方法。 興味あるタンパク質を製造する方法であって: i)請求項3のバクテリア宿主細胞の集団を、ColE1複製開始点を有し、且つ前記バクテリア宿主内で前記タンパク質の発現を可能にする原核性プロモータの制御下にある興味あるタンパク質をコードするDNA配列を含んだプラスミドを用いて形質転換する工程と、 ii)前記バクテリア宿主細胞ポピュレーションを、前記致死的または毒性のタンパク質が前記細胞内で発現される条件下において増殖させ、それによって前記タンパク質の発現は、前記プラスミドを含む細胞が前記プラスミドフリーの細胞よりも速く増殖するように、前記プラスミドフリーの細胞の増殖を完全にまたは部分的に阻害する工程と、 iii)前記興味あるタンパク質を回収する工程と、 iv)それを単離および精製する工程とを含んでなる方法。 請求項21または23に記載の方法であって、前記プラスミドがpUCプラスミドである方法。配列表


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