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タイトル:特許公報(B2)_鉄濃度測定法
出願番号:2007528276
年次:2012
IPC分類:G01N 31/00,G01N 21/77,G01N 33/90


特許情報キャッシュ

赤羽 和 井尻 晴久 花田 寿郎 JP 5082850 特許公報(B2) 20120914 2007528276 20060509 鉄濃度測定法 和光純薬工業株式会社 000252300 赤羽 和 井尻 晴久 花田 寿郎 JP 2005139465 20050512 20121128 G01N 31/00 20060101AFI20121108BHJP G01N 21/77 20060101ALI20121108BHJP G01N 33/90 20060101ALN20121108BHJP JPG01N31/00 TG01N21/77 BG01N33/90 G01N 31/00 G01N 21/77 G01N 33/90 CA/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特公平03−056425(JP,B2) 特開平05−010956(JP,A) 米国特許第04324758(US,A) 国際公開第01/081930(WO,A1) 特公平03−031391(JP,B2) 8 JP2006309283 20060509 WO2006121027 20061116 14 20090422 三木 隆 本発明は、鉄キレート発色剤を用いた直接法による試料中の鉄濃度測定法であって、リチウムイオンの共存下に測定を行う方法に関する。 血清及び血漿中の鉄濃度測定は、貧血、鉄欠乏性貧血,肝硬変等の診断に利用されており、臨床検査の分野においては重要な測定項目の1つである。 鉄濃度の測定方法としては、例えばジピリジル、o−フェナントロリン等の各種金属キレート発色剤を用いた比色分析法が一般的である。感度、特異性、溶解性等を考慮すると、バソフェナントロリン、2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノール(ニトロソPSAP)、3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン・二ナトリウム塩、トリピリジルトリアジン、フェロジン等の鉄キレート発色剤がよく使われている。 これらの発色剤は、全て二価の鉄の発色剤なので、使用に当たっては三価の鉄を還元するための還元剤の併用を必要とする。三価の鉄の還元剤としては、L−アスコルビン酸、チオグリコール酸、塩酸ヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、ハイドロサルファイト、亜硫酸ナトリウム、硫酸ヒドラジン、メタ重亜硫酸塩(ピロ亜硫酸塩)等が知られている。 血清中の鉄は、全て血清グロブリンの1つであるトランスフェリンと結合した形で存在するので、血清鉄の総量を測定する場合には、このトランスフェリンと鉄との結合を外し、遊離の鉄としてから鉄濃度の測定を行う必要がある。トランスフェリンと結合した鉄を遊離させる方法としては、除蛋白法を適用する例えば国際標準法(臨床検査法提要、改訂第32版第1刷、579頁、金井正光編著、平成17年2月20日発行、金原出版株式会社)、及び国際標準法が確立される過程において、その基礎データとして重要視された松原変法(臨床検査法提要、改訂第32版第1刷、580−581頁、金井正光編著、平成17年2月20日発行、金原出版株式会社)が知られている。これらの方法に従って、鉄濃度を測定すべき試料を除蛋白処理した後、鉄キレート発色剤を加えて吸光度を測定することで、試料中の鉄の総量を測定する。 ところで近年、自動分析装置の発達に伴い、臨床検査は自動分析装置により行われるのが一般的となりつつある。この自動分析装置は検体や測定用試液の採取量が少ないため経済的であり、また一度に多数の検体を処理できるという利点がある。そのため、血清鉄等の濃度の測定も自動分析装置を用いて行うことが望まれるが、国際標準法及び松原変法は、測定の前に試料を除蛋白処理するため、自動分析装置を用いる測定に適用することが難しいという問題がある。 これに対し、試料に直接還元剤と発色剤とを加えて比色測定する「直接比色法(以下、「直接法」と記載する。)」という鉄濃度測定方法がある(例えば非特許文献1:臨床検査法提要、改訂第32版第1刷、579頁、金井正光編著、平成17年2月20日発行、金原出版株式会社)。この方法は、前記した国際標準法等に比較して、除蛋白操作を行わない方法であり、自動分析装置に適用することができる。そのため臨床検査分野では、自動分析装置を用いた直接法による鉄濃度測定方法が普及している。 しかしながら、自動分析装置を用いた直接法による測定で得られる測定値と、国際標準法による測定で得られる測定値とを比較すると、直接法の測定値が国際標準法の測定値に比べて低値であるという問題がある。国際標準法では試料を除蛋白処理するので、試料中の鉄をトランスフェリンから完全に(100%)遊離させることができるが、自動分析装置を用いた直接法では、トランスフェリンから鉄を完全に遊離させることができず、遊離する鉄の割合(遊離度)は約93〜95%程度であるという報告があり(第51回日本臨床検査医学会総会、演題番号0−76,2004)、これが上記したような問題を引き起こす原因の一つと考えられる。 そのため、国際標準法と同程度の測定値が得られ、かつ自動分析装置を用いた測定を行える、鉄濃度測定法の確立が望まれている現状にあった。金井正光編著、臨床検査法提要、改訂第32版第1刷、金原出版株式会社、平成17年2月20日発行、579頁 本発明は上記した如き状況に鑑みなされたもので、国際標準法と同等の測定値が得られる、直接法による鉄濃度測定法、及びこれに用いられる試薬並びにキットを提供することを課題とする。 本発明は、上記課題を解決する目的でなされたものであり、以下の構成よりなる。(1)0.05〜100mMのリチウムイオンの共存下、試料中の鉄と鉄キレート発色剤とを接触させ、生じる発色の程度に基づいて測定を行うことを特徴とする、試料中の鉄濃度測定法。(2)還元剤を含んでなる第一試液と、鉄キレート発色剤を含んでなる第二試液とからなり、0.1〜100mMのリチウムイオンが前記第一試液と第二試液の少なくとも一方に含まれている、鉄濃度測定用キット。 すなわち本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、直接法による鉄濃度の測定を、リチウムイオンの共存下に行うと、トランスフェリンからの鉄の遊離が促進され、鉄キレート発色剤との反応が化学量論的に進行することを見出し、本発明を完成するに至った。 従来から、鉄キレート発色剤としてバソフェナントロリンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン・二ナトリウム塩等のナトリウム塩がよく用いられてきたが、このようなナトリウム塩では、本発明のような効果は認められない。また、これら鉄キレート発色剤の塩としてリチウム塩が実際に用いられた例も見つかっていない。そのため、ナトリウムと同様にアルカリ金属に属するリチウムに由来するイオンを共存させると、上記した如き効果が得られるとは全く意外なことであった。 本発明の鉄濃度測定法を行うことにより、従来問題となっていた国際標準法に比べて得られる測定値が低いという問題を解決し、また除蛋白等の煩雑な操作を必要とせず、自動分析装置による鉄濃度測定を可能とし、更にその測定値は国際標準法の標準添加法での測定値に近似しているので、より正確な測定が可能となった。 本発明に係る鉄濃度測定法は、「0.05〜100mMのリチウムイオンの共存下、試料中の鉄と鉄キレート発色剤とを接触させ、生じる発色の程度に基づいて測定を行うことを特徴とする、試料中の鉄濃度測定法。」である。 本発明の測定法に於いて用いられる鉄キレート発色剤としては、鉄と結合して特異的な吸収を有する、二価の鉄の発色剤であればよく、例えば自体公知の直接法による鉄濃度の測定において用いられている鉄キレート発色剤が使用できる。 鉄キレート発色剤の具体例としては、例えばバソフェナントロリンスルホン酸又はその塩、2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノール、3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン又はその塩等が挙げられる。 バソフェナントロリンスルホン酸又は3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジンの塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属との塩が挙げられる。 本発明に係る鉄キレート発色剤の使用量は、その鉄キレート発色剤の特性に合わせて決定すれば良く、特に制限はない。 例えば、バソフェナントロリンスルホン酸又はその塩を用いる場合は、試液中の濃度としては0.5〜5mM程度、好ましくは1〜2mM程度であり、最終の反応液中の濃度として、0.1〜1mM程度、好ましくは0.2〜0.5mM程度である。 2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノールを用いる場合は、試液中の濃度としては0.2〜1mM程度、好ましくは0.3〜0.6mM程度であり、最終の反応液中の濃度として、0.06〜0.4mM程度、好ましくは0.1〜0.2mM程度である。 3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン又はその塩を用いる場合は、試液中の濃度としては1〜5mg/mL程度、好ましくは1〜3mg/mL程度であり、最終の反応液中の濃度として、0.2〜1mg/mL程度、好ましくは0.3〜0.7mg/mL程度である。 本発明に係るリチウムイオンの反応液中の濃度としては、特に制限はなく、使用量も同じ測定系に用いる鉄キレート発色剤の種類に合わせて使用量を決定すれば良いが、試液中の濃度としては、リチウムイオンとして0.1mM〜100mM、好ましくは1〜100mM程度であり、最終の反応液中の濃度として、0.05〜100mM、好ましくは0.5〜100mM程度である。 本発明に係る測定法では二価の鉄の発色剤を用いるため、試料中のトランスフェリンに結合している三価の鉄をトランスフェリンから遊離させて、二価の鉄に還元する必要がある。そのために用いられる三価の鉄の還元剤としては、アスコルビン酸、グルタチオン、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸、塩酸ヒドロキシルアミン、チオール化合物等,通常この分野で使用している還元剤が全て使用可能である。中でもアスコルビン酸が一般によく用いられる。 還元剤の使用量としては、用いられる還元剤の種類、使用する鉄キレート発色剤、使用時のpHによって異なり、pHの上昇に伴ってその必要量も増加するため一概には言えないが、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよい。試液中の濃度としては0.0006〜400mM、好ましくは10〜150mM程度であり、最終の反応液中の濃度として0.0005〜300mM、好ましくは10〜100mMの範囲の使用が望ましい。 本発明の鉄濃度測定法を実施するには、鉄キレート発色剤を用い、リチウムイオンの共存下に自体公知の直接法による測定法を行う以外は、通常の臨床検査の分野で行われている自体公知の直接法の測定条件(例えば反応時間、測定波長等)や、測定操作法に準じて実施すればよい。 直接法による鉄濃度測定法を実施する際に、リチウムイオンを共存させる方法としては、最終的に、試料、還元剤、リチウムイオン、鉄キレート発色剤を含有する溶液が得られる方法であればよい。但し、リチウムイオンは、試料を還元剤で処理した後に加えるか、又は還元剤と同時に試料に加えることが好ましい。また、鉄キレート発色剤は、リチウムイオンを加えた後又はリチウムイオンと同時に試料に加えた方が好ましいが、これらに限定されるものではない。但し、リチウムイオンを加える前に、鉄キレート発色剤を試料に加えるのは望ましくない。 また、リチウムイオンを直接測定の測定系に共存させる方法としては、通常これの塩の形で用いる方法が最も簡便であるが、特にこの方法に限定されるものではない。この際に使用する塩の種類は、該溶液中に共存する試薬等の安定性を阻害したり、鉄キレート発色剤の発色を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば硫酸、硝酸等の無機酸との塩、例えば塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子との塩(ハロゲン化物)、例えば酢酸、クエン酸、グルコン酸、プロピオン酸、パントテン酸等の有機酸との塩、上記した如き鉄キレート発色剤との塩等が挙げられる。 直接法による鉄濃度測定法を実施する際に、リチウムイオンを共存させる具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。(1)還元剤溶液、リチウムイオンを含有する溶液、鉄キレート発色剤溶液を調製しておき、試料に還元剤溶液、リチウムイオンを含有する溶液、鉄キレート発色剤溶液の順に加える方法、(2)還元剤とリチウムイオンを含有する溶液と、鉄キレート発色剤溶液を調製し、試料に還元剤とリチウムイオンを含有する溶液、鉄キレート発色剤溶液の順に加える方法、(3)還元剤溶液、及びリチウムイオンと鉄キレート発色剤を含有する溶液を調製し、試料に還元剤溶液、リチウムイオンと鉄キレート発色剤を含有する溶液の順に加える方法。(4)還元剤、リチウムイオン及び鉄キレート発色剤を含有する溶液を調製し、試料に該溶液を加えて、これらの成分を一度に作用させる方法。 以上の中でも、作業効率等を考慮すると、(2)の方法が一般的であり、好ましい。 また、通常臨床検査の分野で用いられる鉄濃度測定用の、鉄キレート発色剤を用いる市販品を用い、その市販品を構成する試薬類の何れかに、上記の状態となるように、リチウムイオンを存在させて用いてもよい。 鉄キレート発色剤、リチウムイオン及び還元剤を溶解する溶液としては、鉄濃度の測定を鉄キレート発色剤の至適pH範囲内で行うことが望ましいため、緩衝液が好ましい。 本発明の測定法における測定時の好ましいpHは、pH1〜7、更に好ましくはpH2〜6である。pHを上記した如き範囲とするために用いられる緩衝液を構成する緩衝剤としては、通常この分野で用いられるものは全て使用可能である。具体的には、例えばグリシン、酢酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。 更に、これらの試薬の他に、界面活性剤、各種防腐剤、安定化剤、賦活剤、共存物質の影響回避剤及び通常臨床検査薬に使用している物質を共存させてもかまわないことは言うまでもない。これら試薬類等の濃度範囲等も、自体公知の該測定方法に於て通常用いられる濃度範囲等を適宜選択して用いることで足りるが、本発明の鉄濃度測定法に於いて用いられる鉄キレート発色剤の至適pH範囲内で、安定性が高く、また鉄キレート発色剤の発色を阻害しないものを選択することが望ましい。 本発明に係る測定法に用いられる界面活性剤としては、使用する鉄キレート発色剤の発色を阻害するものでなければ、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の何れもが使用可能で、使用する鉄キレート発色剤の特性に合わせて適宜選択して使用すれば良い。 例えば、上記した如き界面活性剤の使用濃度は通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよい。試液中の濃度としては通常0.0001〜10%(W/V)程度、好ましくは0.001〜5%(W/V)程度であり、最終の反応液中の濃度として、通常0.001〜10%(W/V)程度、好ましくは0.01〜5%(W/V)程度である。 試料に鉄キレート発色剤及びリチウムイオンを作用させた後は、自体公知の直接法に従い、鉄キレート発色剤の作用による発色を測定すればよく、測定時に使用するその他の試薬や自動分析装置、分光光度計等は、通常この分野で使用されているものは何れも例外なく使用し得る。また、吸光度変化は、主波長と副波長を使用する2波長測光により求めてもよいことは言うまでもない。 尚、吸光度測定のための測定波長は、使用する鉄キレート発色剤の種類によって適宜選択すればよいが、鉄キレート発色剤としてバソフェナントロリンスルホン酸又はその塩を使用し、2波長で測定する場合には、主波長546nm付近、副波長600nm付近で測定することが好ましい。 本発明の方法に用いられる試料としては、例えば血清、血漿等の血液成分が挙げられる。 本発明の鉄濃度測定法を、前記(2)の方法(還元剤とリチウムイオンを含有する溶液と、鉄キレート発色剤溶液を調製し、試料に還元剤とリチウムイオンを含有する溶液、鉄キレート発色剤溶液の順に加える方法。)を例にとって具体的に示すと、例えば以下の如くなる。 先ず、例えば血液、血清、血漿等の鉄濃度を測定すべき試料と、還元剤とリチウムイオンと緩衝剤、要すれば界面活性剤等を含む第一試液(pH2〜6)とを混合し、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃で、通常2〜10分間、好ましくは5分間程度反応させる。次いで、該反応液と、鉄キレート発色剤と緩衝剤、要すれば緩衝剤、防腐剤、界面活性剤等を含む第2試液(pH2〜10)とを混合し、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃で、通常2〜15分間、好ましくは10分間程度反応させる。鉄キレート発色剤の作用により得られる発色を吸光度として測定する。得られた測定値を、例えば予め濃度既知の鉄標準液を試料として用いて同様に測定を行い、作成された鉄濃度と吸光度との関係を示す検量線に当てはめることにより、試料中の鉄濃度が求められる。 上記鉄濃度の測定は、用手法によって行っても良いことはもちろんであるが、本発明の方法は、自動分析装置を用いた測定系に適用できるので、自動分析装置を用いて行っても良いことは云うまでもない。尚、用手法又は自動分析装置を用いて測定を行う場合の試薬類の組み合わせについては、特に限定はされず、適用する自動分析装置の環境、その他の要因等に合わせて適宜行えば良い。 本発明に係る鉄濃度測定用試薬は、鉄キレート発色剤とリチウムイオンを含んでなるものであり、その好ましい態様、具体例及び濃度等は先に述べた通りである。 本発明の鉄濃度測定用キットは、鉄キレート発色剤と、リチウムイオンとを含む試薬を構成試薬として含んでなるものであればよい。夫々の構成要素の好ましい態様、具体例及び使用濃度等については先に述べた通りである。 また、当該キットの各試薬中には、この分野で通常用いられる、例えば緩衝剤、防腐剤、界面活性剤、安定化剤等を通常この分野で使用される範囲含有していてもよい。更に、当該キットには、必要に応じて、鉄標準品が組み合わされていてもよい。 また、当該キットが複数の試液で構成される場合、各試液中には、測定対象成分を測定する為に必要な試薬類も含有させるが、これら試薬類は、各試液を混合した時点で目的の成分測定の反応が開始されるように各試液の何れかに適宜分散させて含有させればよい。これら試液を構成する試薬類の使用濃度は、通常この分野で用いられる範囲から適宜選択すればよい。 本発明のキットの具体的な実施態様としては、例えば以下の如き構成が挙げられる (1)還元剤を含んでなる第一試液と、鉄キレート発色剤を含んでなる第二試液とからなるものであって、リチウムイオンが前記第一試液と第二試液の少なくとも一方に含まれているもの。 (2)還元剤とリチウムイオンと鉄キレート発色剤を含んでなる試液を構成試薬とするもの。 以下に、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。参考例1 国際標準法、国際標準法の標準添加法(国際標準法は除蛋白により液量が少なくなるので、その補正の目的で3濃度の鉄を試料に添加して測定し、その回帰式のX軸との交点より試料中の鉄濃度を求める方法)及び自動分析装置を用いた従来の直接法により、同じ血清試料1〜5中の血清中鉄濃度を測定し、夫々の測定値を比較した。(1)国際標準法 臨床検査法提要、改訂第32版第1刷、580頁、金井正光編著、平成17年2月20日発行、金原出版株式会社に記載された方法に従い、下記の通り行った。[試薬の調製] ・除蛋白試薬:トリクロル酢酸(特級)98gを水約600mLに溶解させ、チオグリコール酸30mLと塩酸(特級)83mLを加えて混和し、水で1000mLとした。褐色瓶にて保存した。 ・発色試薬:1.5M酢酸ナトリウム(特級)1000mLにバソフェナントロリンスルホン酸(ドータイト試薬)250mgを加えて溶解した。 ・鉄標準液(200μg/dL):鉄標準液(Fe1000)(和光純薬工業(株)製)1mLを水で薄めて100mLとし(1mg/dL)、これを更に水で5倍に希釈したものを用いた。[血清鉄濃度の測定]1)血清試料1〜5を容器に2.0mLずつ取り、それぞれ除蛋白試薬2.0mLを加え、ミキサーで十分に混和後、56℃で15分間加温後、再び混和してから遠心処理した。2)上清2.0mLを取り、発色試薬2.0mLを加えて良く混和し、10分間放置した。3)水(盲検用)および鉄標準液について、血清試料を用いた場合と同様に上記1)及び2)の操作を行った(但し、遠心処理は行わなかった)。4)検体、標準液、盲検の各発色液を、水を対照として535nmで吸光度を測定し、それぞれEA、ES、EBとし、下記式に当てはめて各試料中の血清鉄濃度を測定した。 血清鉄濃度=200×(EA−EB)/(ES−EB)μg/dL 結果を表1に示す。(2)国際標準法の標準添加法 国際標準法は除蛋白により液量が少なくなるので、その補正の目的で3濃度の鉄を試料に添加して測定し、その回帰式のX軸との交点より試料中の鉄濃度を求める方法である。[試薬及び試験溶液の調製] 国際標準法で用いたと同じ血清試料1〜5夫々を4個の容器に2.0mLずつ取り、そのうちの3個に鉄標準液をそれぞれ50μg/dL、100μg/dL、150μg/dLとなるように加えたものを調製し、これと鉄標準液を加えていないものを試験溶液として用いた。 試薬は、前記(1)の国際標準法と同じものを用いた。[血清鉄濃度の測定] 上記で調製した試験溶液について前記(1)の国際標準法と同じ手順で吸光度の測定を行った。 得られた吸光度と濃度との関係を示すグラフを作成し、その回帰式のx軸との交点と原点との距離から、試料中の鉄濃度を求めた。 結果を表1に併せて示す。(3)自動分析装置を用いた従来の直接法による測定方法 市販の、それぞれ以下の組成の直接法による鉄濃度測定用キット(A社製、B社製、C社製。夫々キットA、キットB、キットCとする。)を用い、夫々のキットの現品説明書に記載の標準操作法に従い、それぞれ測定パラメーターを以下のように設定して、血清試料1〜5の鉄濃度を測定した。 結果を表1に併せて示す。 尚、測定は日立7170S形自動分析装置を用いて行い、得られた吸光度値を、予め血清試料の代わりに鉄濃度既知の試料を用いて同様に測定を行って得られた、鉄濃度と吸光度の関係を示す検量線に当てはめることにより、鉄濃度を決定した。[キットA] (R−1)緩衝液:40mM アスコルビン酸、及び界面活性剤を含有する400mM グリシン緩衝液(pH3.5) (R−2)発色試液:1.86mM バソフェナントロリンスルホン酸ナトリウム、及び界面活性剤を含有する40mM グリシン緩衝液(pH3.0) 測定方法 ;2ポイント エンド[16]−[34] 試料量 ;12μL R−1 ;160μL R−2 ; 40μL 測定波長 ;600/546nm 測定温度 ;37℃ 標準品濃度;200μg/dL[キットB] (R−1)還元剤溶液:L−アスコルビン酸を含有する溶液。 (R−2)呈色液:0.45mM 2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノールを含有する溶液 測定方法 ;2ポイント エンド[16]−[34] 試料量 ;15μL R−1 ;150μL R−2 ; 60μL 測定波長 ;750/600nm 測定温度 ;37℃ 標準品濃度;200μg/dL[キットC] (R−1)緩衝液:組成不明 (R−2)発色液:2.47mg/mL 3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン・二ナトリウム塩 他を含む溶液 測定方法 ;2ポイント エンド[16]−[34] 試料量 ;12μL R−1 ;180μL R−2 ; 45μL 測定波長 ;700/600nm 測定温度 ;37℃ 標準品濃度;200μg/dL(4)結果 結果を、下記表1に示す。 表1に於いて、国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値を100とした場合の、国際標準法、又はキットA、B又はCを用いた直接法による測定を行って得られた測定値の割合を、各平均値の下、( )内に夫々示す。 表1から明らかな如く、従来の直接法に基づいて測定して得られた測定値は、いずれも国際標準法及び標準添加法で得られた測定値に比べて低値となることが判る。実施例1[試液の調製](R−1)緩衝液 10mMの塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム又は塩化セシウム(アルカリ金属イオンとして10mM)、40mM アスコルビン酸、及び界面活性剤を含有する400mM グリシン緩衝液(pH3.5)(R−2)発色試液 1.86mM バソフェナントロリンスルホン酸ナトリウム、及び界面活性剤を含有する40mM グリシン緩衝液(pH3.0)[血清鉄濃度の測定] 血清試料6〜10について、上記した試液を用い、日立7170S形自動分析装置を用いて測定を行った。〔測定条件〕 測定パラメータを以下のように設定して、各試料中の血清鉄濃度を測定した。 測定方法 ;2ポイント エンド[16]−[34] 試料量 ;12μL R−1 ;160μL R−2 ; 40μL 測定波長 ;600/546nm 測定温度 ;37℃ 標準品濃度;200μg/dL 鉄濃度は、得られた吸光度値を、予め血清試料の代わりに鉄濃度既知の試料を用いて同様に測定を行って得られた、鉄濃度と吸光度の関係を示す検量線に当てはめることにより決定した。 尚、測定時のアルカリ金属イオン濃度は、約7.5mMである。[結果] 結果を表2に示す。 対照として、同じ血清試料を用いて、参考例1の国際標準法の標準添加法による測定を行った。結果を表2に併せて示す。 表2に於いて、国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値を100とした場合の、各アルカリ金属イオンの共存下に直接法による測定を行って得られた測定値の割合を、各平均値の下、( )内に夫々示す。 また、上記で得られた「国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値を100とした場合の、各アルカリ金属イオンの共存下に直接法による測定を行って得られた測定値の割合(%)」の、国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値(100%)との差を、「国際標準法の標準添加法との差」として、表2に併せて示す。 表2から明らかな如く、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属イオンの共存下に直接法による測定を行った場合、得られた測定値は国際標準法の標準添加法で得られた測定値よりも低くなってしまった。これに対し、リチウムイオンの共存下に、同様に直接法による測定を行った場合のみ、得られた測定値は国際標準法の標準添加法での測定値に近似し、本発明の目的を達成することができることが判った。これは、リチウムイオンを共存下でのみ、トランスフェリンからの鉄が遊離した際に、遊離した全ての鉄がキレート発色剤と結合し、発色したためと推測される。実施例2 「(R−1)緩衝液」に、0.1mM、1mM、10mM又は100mMの濃度となるように塩化リチウムを添加した(測定時のリチウムイオン濃度は、夫々0.075mM、0.75mM、7.5mM、75mM)以外は、実施例1と同様に調製した試薬を用い、実施例1と同様の方法で血清試料11〜15の鉄濃度の測定を行った。 結果を表3に示す。 対照として、同じ血清試料を用いて、参考例1の国際標準法の標準添加法による測定を行った。結果を表3に併せて示す。 表3に於いて、国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値を100とした場合の、各濃度の塩化リチウム存在下で直接法による測定を行って得られた測定値の割合を、各平均値の下、( )内に夫々示す。 表3から明らかな如く、リチウムイオンを共存させることにより、より高精度に鉄濃度の測定が行い得ることが判るが、特に測定時のリチウムイオン共存量が0.075mM以上、より好ましくは0.075〜75mMの範囲であれば、測定値に差はなく、また、国際標準法の標準添加法の測定値と一致した。実施例3 参考例1の「(3)自動分析装置を用いた従来の直接法による測定方法」に於いて、各キットの緩衝液又は還元剤溶液に、塩化リチウムを10mM(測定時のリチウムイオン濃度は、キットAとキットCを用いた場合は7.5mM、キットBを用いた場合は6.7mM)となるように添加したものを(R−1)緩衝液として用いた以外は、参考例1と同様の方法で、血清試料16〜20中の血清鉄濃度の測定を行った結果を「添加」の場合として表4に示す。 また、参考例1の「(3)自動分析装置を用いた従来の直接法による測定方法」で、同じ血清試料中の血清鉄濃度の測定を行った。結果を「無添加」の場合として表4に併せて示す。 更に、対照として、同じ血清試料を用いて、参考例1の国際標準法の標準添加法による測定を行った。結果を表4に併せて示す。 尚、表4に於いて、国際標準法の標準添加法による測定を行って得られた測定値を100とした場合の、塩化リチウム(リチウムイオン)の存在下又は非存在下に測定を行って得られた測定値の割合を、各平均値の下、( )内に夫々示す。また、塩化リチウム非存在下に測定を行って得られた測定値を100とした場合の、塩化リチウム存在下に同じキットを用いて測定を行って得られた測定値の割合も、「対無添加」として、表4に併せて示す。 表4から明らかな如く、鉄キレート発色剤の種類によって効果の程度は異なるが、何れのキットを用いた場合でも、塩化リチウム(リチウムイオン)の共存下に、直接法による鉄濃度測定用キットを用いて測定を行うことにより、得られた測定値は、塩化リチウム非存在下に測定を行った場合より高くなり、しかも国際標準法の標準添加法の測定値に近づくことが判る。 本発明は国際標準法と同等の測定値が得られる、直接法による鉄濃度測定法、及びこれに用いられる試薬並びにキットを提供する。 本発明の鉄濃度測定法を行うことにより、従来問題となっていた国際標準法に比べて得られる測定値が低いという問題を解決し、また除蛋白等の煩雑な操作を必要とせず、自動分析装置による鉄濃度測定を可能とし、更にその測定値は国際標準法の標準添加法での測定値に近似しているので、より正確な測定が可能となる。 0.05〜100mMのリチウムイオンの共存下、試料中の鉄と鉄キレート発色剤とを接触させ、生じる発色の程度に基づいて測定を行うことを特徴とする、試料中の鉄濃度測定法。 鉄キレート発色剤が、バソフェナントロリンスルホン酸又はその塩、2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノール、3−(2−ピリジル)−5,6−ビス[2−(5−フリルスルホン酸)]1,2,4−トリアジン又はその塩である、請求項1に記載の測定法 リチウムイオンが、リチウム塩に由来するものである、請求項1に記載の測定法。 鉄キレート発色剤がバソフェナントロリンスルホン酸又はその塩である、請求項1に記載の測定法。 還元剤を共存させて、試料中の鉄を二価に還元させる、請求項1〜4の何れかに記載の測定法。 還元剤を含んでなる第一試液と、鉄キレート発色剤を含んでなる第二試液とからなり、0.1〜100nmのリチウムイオンが前記第一試液と第二試液の少なくとも一方に含まれている、鉄濃度測定用キット。 還元剤とリチウムイオンを含んでなる第一試液と、鉄キレート発色剤を含んでなる第二試液とを含んでなる、請求項6に記載のキット。 鉄キレート発色剤がバソフェナントロリンスルホン酸又はその塩である、請求項6に記載のキット。


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