タイトル: | 特許公報(B2)_新規ビフィドバクテリウム属細菌及びその利用 |
出願番号: | 2007526045 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C12N 1/20,A23L 1/28,A23L 2/52,A61K 35/74,A61P 31/04,A61P 1/04,A61P 1/06,C12N 15/09 |
野瀬 淳史 野崎 大輔 石川 文保 水澤 進 赤星 良一 JP 4881304 特許公報(B2) 20111209 2007526045 20060720 新規ビフィドバクテリウム属細菌及びその利用 株式会社ヤクルト本社 000006884 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 野瀬 淳史 野崎 大輔 石川 文保 水澤 進 赤星 良一 JP 2005211670 20050721 20120222 C12N 1/20 20060101AFI20120202BHJP A23L 1/28 20060101ALI20120202BHJP A23L 2/52 20060101ALI20120202BHJP A61K 35/74 20060101ALI20120202BHJP A61P 31/04 20060101ALI20120202BHJP A61P 1/04 20060101ALI20120202BHJP A61P 1/06 20060101ALI20120202BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120202BHJP JPC12N1/20 AA23L1/28 ZA23L2/00 FA61K35/74 AA61P31/04A61P1/04A61P1/06C12N15/00 A C12N 1/20 A23L 1/28 A23L 2/52 C12N 15/09 国際公開第2003/040350(WO,A1) 薬理と治療,1994,Vol.22,No.11,p.253-256 機能性食品と薬理栄養,Mar 2005,Vol.2,No.3,p.203-213 10 IPOD FERM BP-10613 JP2006314369 20060720 WO2007010977 20070125 30 20080527 山本 匡子 本発明は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の除菌作用を有し、かつ、発酵乳飲食品中での生残性に優れた新規なビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)及びその利用に関する。 ビフィドバクテリウム属細菌(以下、「ビフィズス菌」という)は、ヒトの腸内菌叢における主要細菌であり、便秘や下痢の改善等の整腸作用、血清コレステロール上昇抑制作用、免疫賦活作用等、ヒトの健康に対して有益な作用を有することが知られている。このため、ビフィズス菌は各種発酵乳飲食品や生菌製剤等の形態で多数の市販品が販売されており、現在では確固たる市場を形成している。特に、ビフィズス菌を含む発酵乳飲食品は、優れた嗜好性を有していることから、ビフィズス菌の継続的な摂取に適している。 近年のビフィズス菌の有効性に関する研究の進展により、ビフィズス菌に抗潰瘍作用のあることが明らかになり、例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 4014、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 4043およびビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007(FERM BP−791)の3菌株は、ラット酢酸潰瘍誘発モデルラットにおいて抗潰瘍作用を奏することが報告されている(非特許文献1)。また、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007は、その乾燥粉末を投与することにより、胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者の症状の改善や、胃部粘膜からのヘリコバクター・ピロリの消失について報告されていることから(非特許文献2)、ヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤や、胃炎、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍の予防治療剤としての利用が期待されている。そして、上記のビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007は、投与する生菌数が多いほど、その効果が増大することが報告されており(非特許文献3)、その薬理作用を有効に活用するためには、できるだけ多くの生菌を胃や腸管内に到達させる必要がある。 しかしながら、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007を含むビフィズス菌は偏性嫌気性菌であるため、酸素に弱く、特に好気的な条件下で保存した場合、急速に生菌数が減少していくという問題があり、十分な数のビフィズス菌を投与することが難しかった。 かかる問題を解決するため、保存時の生残性を改善するための様々な成分、例えば、カボチャやキュウリ等の野菜搾汁物、ピルビン酸、還元型グルタチオン等(特許文献1)、グリセロール、キシリトール等(特許文献2)、ラクチトール(特許文献3)等の使用が検討されているが、これら成分の添加は製造コストの上昇、嗜好性の低下等の問題を引き起こすため、容易には使用できない。また、製造直後のビフィズス菌含有発酵物を酸素不透過性の包剤で構成された容器に充填し、酸素との接触を完全に断つ方法も検討されている。しかし、未だ完全な酸素不透過性容器は提供されておらず、しかも酸素透過性の低い材料は成型の自由度も乏しいという問題がある。更に、酸素透過性の低い容器として複合素材を用いた場合は、その廃棄物処理が複雑で、容器自体も高価である等の問題があり、その利用に当たっては多くの制約がある。 従って、発酵乳飲食品等でのビフィズス菌の生残性を改善する根本的な解決法は、好気的条件下でも高い生残性を有するビフィズス菌株を作出することにあると考えられ、このような菌株の例として、既にビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT 10001(FERM BP−8205)(特許文献4)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ SBR 3212(FERM P−11915)(特許文献5)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4002(FERM BP−1038)(特許文献6)等が報告されている。 しかしながら、これらの好気的条件下で高い生残性を示すビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007等に比べ、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用や抗潰瘍作用が極めて弱いものであった。このように好気的条件下でも高い生残性を有しながら、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用等を有する菌株の作出はこれまでになされておらず、抗潰瘍作用を発現するのに十分な数の生菌を胃や腸管内に到達させることは困難な状況にあった。特開2003‐250528号公報特開平11‐137172号公報特許第3261571号WO03/040350号国際公開パンフレット特許第2922013号特公昭61‐19220号公報日本糖質学会第16回糖質シンポジウム講演要旨集、24-25 (1994)薬理と治療、Vol.22、No.11、253-256 (1994)機能性食品と薬理栄養、Vol.2、No.3、203-213(2005) 従って、本発明はヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有し、かつ、発酵乳飲食品中で好気条件下で保存された場合でも高い生残性を有する新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムを提供することを課題とする。 本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有するビフィドバクテリウム・ビフィダムを特殊な条件下で育種改良することで、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有すると共に、好気条件下で保存された場合でも高い生残性を有するビフィドバクテリウム・ビフィダムが得られることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、次の性質を有するビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)を提供するものである。(1)ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の除菌作用を有する。(2)発酵乳飲食品中で10℃、14日間、好気条件下で保存された場合の生残率が 10%以上である。 また、本発明は、上記ビフィドバクテリウム・ビフィダムを有効成分として含有することを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤を提供するものである。 更に、本発明は、前記ビフィドバクテリウム・ビフィダムを含有することを特徴とする飲食品、特に発酵乳飲食品を提供するものである。 本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、発酵乳飲食品中で好気条件下で保存された場合でも生残性に優れているため、ビフィドバクテリウム・ビフィダムが有するヘリコバクター・ピロリの除菌作用の有効性も長期に渡って維持される優れたものである。 従って、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムはヘリコバクター・ピロリの感染予防治療、胃炎、潰瘍の予防治療、胃不定愁訴の予防治療、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療に好適に利用することができる。また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは前記予防治療作用を有する飲食品、特に発酵乳飲食品の製造にも好適に利用することができ、しかも、前記飲食品は酸素不透過性の包材で構成された容器に詰める必要がないため、容器の選択の幅も広いものである。 本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有し、かつ、発酵乳飲食品中で10℃、14日間、好気条件下で保存された場合の生残率が10%以上のものである。ここで、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用とは、ヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害作用、ヘリコバクター・ピロリへの直接的な増殖抑制作用等により、ヘリコバクター・ピロリの菌数が低下することを指す。ここでいうヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害作用とは、具体的に、レイボビッツL―15培地でヒト胃由来細胞に本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを108〜109CFU/ml添加して37℃で2時間プレインキュベートし、ここにヘリコバクター・ピロリを107CFU/ml添加して37℃で90分インキュベート後、4℃で一晩放置した場合に、ヒト胃由来細胞へのヘリコバクター・ピロリの接着が5%以上、好ましくは5〜20%阻害されること、あるいは、レイボビッツL―15培地で107CFU/mlのヘリコバクター・ピロリと108〜109CFU/mlの本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを37℃で2時間プレインキュベートし、このプレインキュベート液をヒト胃由来細胞に添加して37℃で90分インキュベート後、4℃で一晩放置した場合に、ヒト胃由来細胞へのヘリコバクター・ピロリの接着が5%以上、好ましくは5〜20%阻害されることをいう。また、ヘリコバクター・ピロリへの増殖抑制作用とは、具体的に、ブルセラ培地に105CFU/mlのヘリコバクター・ピロリと107CFU/mlの本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを添加し、これを37℃で48時間培養した場合にヘリコバクター・ピロリの生菌数が103CFU/ml以下、好ましくは10〜103CFU/mlに減少することをいう。更に、ヘリコバクター・ピロリの菌数の低下とは、具体的には、胃細胞、胃ムチンや胃組織に接着するヘリコバクター・ピロリの菌数が低下すること、口腔、鼻腔、喉、食道、胃、十二指腸、小腸、盲腸、大腸、直腸等の腸管内のヘリコバクター・ピロリの菌数が低下すること、ヘリコバクター・ピロリとの共培養(混合培養)によりヘリコバクター・ピロリの菌数が低下すること、尿素呼気試験においてΔ13C値が低下すること、血清中のヘリコバクター・ピロリ抗体価が低下すること、糞便中のヘリコバクター・ピロリ抗原量が低下すること等が挙げられる。ここで、ヘリコバクター・ピロリの菌数とは、ヘリコバクター・ピロリの生菌数(CFU)、菌量(抗ヘリコバクター・ピロリ抗体との反応性)、遺伝子量(ヘリコバクター・ピロリを特異的に認識できるDNA量、RNA量)、ヘリコバクター・ピロリに特異的な病原因子の量または活性(ウレアーゼ活性、空胞化毒素VacA、CagPAI(pathogenecity island)、LPS−Lewis抗原量)を含む。また、生残率とは、好気条件下保存に用いた培養液や発酵乳飲食品の保存前の生菌数に対する、好気条件下保存(10℃、14日)後の生菌数の割合である。なお、生菌数は常法に従い求めることができる。例えば、好気条件下保存に用いた培養液や後述の発酵乳飲食品を適宜希釈し、TOSプロピオン酸寒天培地に塗抹あるいは混釈して、37℃で72時間嫌気的に培養した後のコロニーを測定することによって求めることができる。 具体的に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有するビフィドバクテリウム・ビフィダムを親株とし、それを育種改良することにより得ることができる。親株として利用できるビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM BP−791として昭和56年2月4日に国際寄託済)を挙げることができる。 育種改良の方法としては、特に制限されず、例えば、濃縮法、紫外線、ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホン酸(EMS)等の突然変異誘導剤による変異方法を挙げることができる。 育種改良の具体的な例を濃縮法を挙げて説明する。まず、親株となるヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有するビフィドバクテリウム・ビフィダムを乳培地で培養して培養液を得、得られた培養液を好気条件下で保存し、生き残った菌の中から酸素耐性の高いものを選抜する。より具体的には、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007(FERM BP−791)を乳培地で培養して培養液を得、次いで、この培養液にシロップ液を加えて発酵乳飲食品を調製し、その後この発酵乳飲食品を21日間好気条件下で保存して生残した菌を選抜する。前記のようにして選抜された菌を用いて、かかる工程を繰り返し行うことで、酸素耐性の高い菌が濃縮され、その結果、発酵乳飲食品中で10℃、14日間、好気条件下で保存された場合の生残率が10%以上、好ましくは10〜40%程度である本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを得ることができる。好気条件下での保存の一例としては、保存系に大気を通気する等した好気的な状態で攪拌子や攪拌羽根を用い、攪拌を継続して保存する通気攪拌保存が挙げられる。 上記濃縮法で用いられる乳培地とは、乳を主成分とする培地を指し、乳としては牛乳(全脂乳)及びその加工品である脱脂乳、乳由来ペプチド等が挙げられる。このような乳培地で、ビフィドバクテリウム・ビフィダムを培養する際の培養条件は特に限定されず、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの生育条件に合わせて適宜設定すればよいが、概ね30〜40℃、好ましくは33〜37℃で嫌気的に培養するのが好ましい。また、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの中には、乳のみを栄養源とすると生育困難な株もあるが、そのような場合は各種糖質やイーストエキストラクト、ペプチド類等の増殖促進物質を乳培地に添加してもよい。 また、上記濃縮法で培養液を好気条件下で保存する際には、培養液にシロップ等の甘味料、乳化剤、増粘(安定)剤、ビタミン、ミネラル、酸味料、乳脂肪、フレーバー、エキス等の任意成分を添加したり、必要により別途ビフィドバクテリウム・ビフィダム以外の微生物を併用して、常法に従い、発酵乳飲食品の形態とした上で行うことが好ましい。こうすると培養液のみの場合と比較して、その環境が最終形態の製品に近く、最終形態の製品中で高い生残性を示す菌をより効率的に濃縮することができる。 培養液に添加される任意成分のうち、シロップとしては、グルコース、ショ糖、フルクトース、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、麦芽糖、蜂蜜、糖蜜等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料等を含むものが挙げられる。乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。増粘(安定)剤としては、寒天、ゼラチン、カラギーナン、グァーガム、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類、アルギン酸プロピレングリコール等が挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンE類等が挙げられる。ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等が挙げられる。乳脂肪としては、クリーム、バター、サワークリーム等が挙げられる。フレーバーとしては、ヨーグルト系、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シソ系、シトラス系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、ペア、カスタードクリーム、ピーチ、メロン、バナナ、トロピカル、ハーブ系、紅茶、コーヒー系等が挙げられる。エキスとしては、ハーブエキス、黒糖エキス等が挙げられる。 また、ビフィドバクテリウム・ビフィダム以外の微生物としては例えば、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B. longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B. infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(B. adolescentis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラータム(B. catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B. pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(B. animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクチス(B. lactis)、ビフィドバクテリウム・グロボサム(B. globosum)等のビフィドバクテリウム属細菌、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ブヒネリ(L. buchneri)、ラクトバチルス・ガリナラム(L. gallinarum)、ラクトバチルス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス・ラムノーザス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス・ケフィア(L. kefir)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチルス・クリスパタス(L. crispatus)、ラクトバチルス・ゼアエ(L. zeae)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)、ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivalius)、ラクトバチルス・ガセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・クリスパータス(L. crispatus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.ブルガリカス(L. delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ.デルブルッキィ(L. delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(L. johnsonii)、ラクトバチルス・ペントサス(L. pentosus)、ラクトバチルス・マリ(L. mali)等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)等のエンテロコッカス属細菌、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyses cerevisiae)、トルラスポラ・デルブルッキィ(Torulaspora delbrueckii)、キャンジダ・ケフィア(Candida kefyr)等のサッカロマイセス属、トルラスポラ属、キャンジダ属等に属する酵母が挙げられる。 上記濃縮法により得られた、好気条件下で保存後の生残率が特に高いと認められた菌株の1つを、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347(FERM BP−10613)として、平成17年6月23日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に国際寄託した(FERM BP−10613は上記寄託機関に平成17年6月23日に寄託されたFERM P−20569より移管)。 このビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347(以下、「YIT 10347」ということもある)の菌学的性質を、親株であるビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007(以下、「YIT 4007」ということもある)と比較して示せば、以下の通りである。<コロニー性状及び菌形態> 寒天添加MILS培地(Iwata & Morishita, Letter in Applied Microbiology, vol 9, 165-168, 1989)に各菌株を接種し、37℃の嫌気培養で単一コロニーの分離を繰り返すことにより、純化された菌株のコロニー性状及び菌形態を観察した。<API 50CHによる糖発酵性状試験結果> API 50CH(bioMerieux Japan製)を用いて、キットに付属のマニュアル記載の方法にしたがって、1晩培養後の菌液を各基質に接種した。これを37℃で嫌気グローボックス中で培養し、培養7日目に各基質の糖発酵性状を判定した。 また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用、特に、ヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害作用、ヘリコバクター・ピロリの増殖抑制作用を有する。更に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、その親株の一例であるビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007と同様に、胃粘膜の保護作用、血清ペプシノーゲン(PG)値の改善作用、インターロイキン(IL)−8の産生抑制作用を有する。 更に、通常、ビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌を使用した発酵乳飲食品は、保存中に酸度の上昇等の経時変化が見られ、これにより風味が劣化するが、この経時変化はショ糖等の2糖類を使用するとより大きくなり、特に無脂乳固形分(SNF)濃度が高いほど顕著であることが知られている。しかしながら、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、その機序は不明であるものの、発酵乳飲食品にショ糖等の2糖類を配合した場合であっても保存中の酸度の上昇が抑制され、風味の劣化を抑制することができる。具体的に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを使用し、ショ糖を3質量%以上、好ましくは3〜6質量%程度、無脂乳固形分を8質量%以上、好ましくは8〜12質量%程度含む発酵乳飲食品において、20℃、4日間、好気条件下で保存した場合の酸度と保存前(製造直後)の酸度との差は2以下、好ましくは1以下である。ここで、酸度とは、9gの試料を中和するのに必要な1/10規定水酸化ナトリウム水溶液の量(ml)を指す。 上記のような性質を有する本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用等を有することから、ヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤として利用できる。また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムの除菌作用は投与する生菌数が多いほどその薬理作用が増大することから、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは生菌の状態で使用することが望ましい。更に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは高い酸素耐性を有することから、多数の生菌を胃や腸管内に到達させることが可能となり、ヘリコバクター・ピロリの感染予防治療、胃炎、潰瘍の予防治療、胃不定愁訴の予防治療、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療等に好適に使用することができる。 また、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは胃粘膜の保護作用、血清ペプシノーゲン(PG)値の改善作用を有するので、このものは、ストレス性潰瘍、アルコール等による壊死性潰瘍、活動性胃炎、前庭部優勢胃炎、胃体部優勢胃炎、パンガストリティス(pangastritis)、胃腺腫、過形成性ポリープ、胃底腺ポリープ、萎縮性胃炎、胃食道逆流症(逆流性食道炎)、胃不定愁訴(NUDを含む)及びヘリコバクター・ピロリ感染と密接に関連している胃がん等の疾病の治療や改善、或いはその予防等の目的にも利用できる。 なお、ヘリコバクター・ピロリに感染した胃粘膜では、好中球と多量の単核細胞の浸潤を特徴とする組織学的胃炎である活動性胃炎(表層性胃炎)が引き起こされる。更にこれらの胃炎が進むと、細胞の増殖が抑えられ、細胞機能も低下して、粘膜が脆弱になり、活動性炎症像が見られない萎縮性胃炎に変化する。萎縮性胃炎が進むと腸上皮化生が引き起こされ、胃がんの危険性が高くなる。一方、活動性胃炎の状態で、胃酸やペプシンなどの攻撃因子やNSAIDsなどの薬剤の影響で更に胃粘膜の組織的な破綻が起こると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの消化性潰瘍に至る。従って、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用等を有する本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリを起炎菌とする胃炎や潰瘍、特に胃・十二指腸潰瘍の予防治療剤として利用することができる。更に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、胃酸の分泌と強く相関する血清ペプシノーゲンI値を低下させることから、胃酸過多の予防治療剤や、抗生物質等でヘリコバクター・ピロリの除菌治療後に発生する胃食道逆流症(逆流性食道炎)の予防治療剤として利用することができる。 また、ヘリコバクター・ピロリの感染により、IL−8やIL−1β、TNF−αなどの炎症性サイトカインが誘導される。IL−8は好中球を胃粘膜に遊走させ、局所での炎症反応を引き起こす原因となる。IL−1βやTNF−αはIL−8の産生を誘導するほかに、胃酸分泌を低下させる作用があり、胃粘膜萎縮に関連すると言われており、これらのサイトカイン誘導能が高いヘリコバクター・ピロリの感染により、胃粘膜は慢性的な炎症状態となり、胃粘膜機能が損なわれる。本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの感染やTNF−αによって誘導されるIL−8の産生を抑制することができる。しかも、その抑制効果は、親株の一例であるビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007よりも高く、また、生菌数が多いほど増大する。 本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを、上記したヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤や胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療等に使用する場合には、有効成分であるビフィドバクテリウム・ビフィダムの形態には特に制限されず、生菌の状態であれば、凍結乾燥したものであってもよく、あるいは細菌を含む培養物を利用することもできる。 また、上記ヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤や胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤には、有効成分であるビフィドバクテリウム・ビフィダムと固体または液体の医薬用無毒性担体と混合して、あるいは併用して慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。有効成分であるビフィドバクテリウム・ビフィダムは単剤で投与するほか、消化性潰瘍や逆流性食道炎、胃食道逆流症、ファンクショナルデスペプシア(functional dyspepsia)に対して使用される胃酸分泌抑制剤であるシメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ニザチジン、ラフチジン、ラニチジン等のH2−受容体拮抗剤、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール等のプロトンポンプ阻害剤、エカベトナトリウム、オルノプロスチル、エンプロスチル、ミソプロストール、セトラキサート、スクラルファート、ソファルコン、ドロキシピド、プラウノトール、テプレノン、ポラプレジンク、塩酸ベネキサートベータデクス、レパミピド、スルピリド、セレクチン、マレイン酸イルソグラジン等の胃粘膜保護剤等とビフィドバクテリウム・ビフィダムとの合剤を製造して、各有効成分を同時に投与してもよい。ここでいう胃粘膜保護剤とは、防御因子増強作用、シクロオキシゲナーゼ発現増強作用、プロスタグランジン産生増強作用、粘液分泌増強作用、サイトプロテクション作用、粘膜血流量増加作用、胃酸分泌抑制作用、重炭酸イオン分泌増強作用、抗ガストリン作用、抗酸化作用、内因性セレクチン生成促進作用等の作用をもつ薬剤あるいは成分をいう。更に、ビフィドバクテリウム・ビフィダムと同時に投与する有効成分として、塩酸ピレンゼピン、硫酸アトロピン等の抗ムスカリン剤、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム配合液、ケイ酸アルミニウム等の制酸剤、アスコルビン酸、尿酸、アルブミン結合ビリルビン、βカロチン、ビタミンE、コエンザイムQ、グルタチオン、システイン、シスチン、ピルビン酸、フィチン、フィチン酸、リグニン、サポニン、フェルラ酸、γアミノ酪酸、γオリザノール等の天然素材、イソフラボン、アントシアニン、カテキン、フラボン、フラボノール、フラバノン、カルコン、キサントン、プロアントシアニン、果実ポリフェノール、茶葉ポリフェノール、カカオポリフェノール、コーヒーポリフェノール、緑茶ポリフェノール等のポリフェノール等も使用することができる。 なお、本発明のヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤の有効成分であるビフィドバクテリウム・ビフィダムは、従来より食品として利用され、その安全性も確認されているものである。従って、これをヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤として使用する場合の投与量に厳格な制限はないが、その好適な投与量は生菌数として1日当たり105CFU〜1013CFUであり、特に109CFU〜1013CFUが好ましい。 また、本発明のヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤は、上記のような製剤とするだけでなく、飲食品に配合して使用することもできる。飲食品に配合する場合は、そのまま、または種々の栄養成分と共に含有せしめればよい。この飲食品は、ヘリコバクター・ピロリ感染の予防や改善・治療、胃炎、潰瘍、胃不定愁訴、胃酸過多、胃食道逆流症の予防や改善・治療に有用な保健用食品または食品素材として利用できる。具体的に本発明のヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤を飲食品に配合する場合は、飲食品として使用可能な添加剤を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料に添加して使用してもよい。本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは高い酸素耐性を有することから、厳密な嫌気状態を必要としないため、あらゆる形態の飲食品に適用することができる。なお、飲食品には、動物の飼料も含まれる。 上記の飲食品には、種々の食品素材を添加することができる。例えば、グルコース、ショ糖、マルトース、フラクトース、タガトース、ラクトース、ブドウ糖果糖液糖、トレハロース、トレハルロース、アガロオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース、スタキオース、ラクチュロース、マルトトリオース、イソマルトオリゴ糖、シクロデキストリン、蜂蜜、メープルシロップ、黒砂糖、甘藷黒蜜等の各種糖質、肉エキス、酵母エキス、魚肉エキス、心臓エキス、肝臓エキス、ペプチド等の各種栄養素、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、フコイダン、サルガッサン、フルセラン、フノラン、ポルフィラン、ラミナラン、プルラン、タラガム、コンニャクマンナン、イヌリン、β‐グルカン、キチン、キトサン、ポリデキストロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、硫酸多糖類、ガングリオシド、スルファチド、シアル酸、ポリシアル酸、マンナン、ガラクタン、フルクタン、キシラン、アラビナン、アラビノガラクタン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ビートファイバー、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、大豆ファイバー、米ファイバー、大麦ファイバー、キサンタンガム、コーンファイバー、リンゴファイバー、シトラスファイバー、サイリュームファイバー、パインファイバー、プルーンファイバー、バナナファイバー、酢酸菌バクテリアセルロース、乳酸菌菌体細胞壁、ビフィドバクテリウム属細菌菌体細胞壁、酵母菌体細胞壁、納豆フラクタン、コラーゲン、納豆ポリグルタミン酸等の各種食物繊維あるいはそれら食物繊維の各種加水分解物あるいはそれらの抽出成分、小麦フスマ、大麦フスマ、米フスマ、カラス麦フスマ、オーツ麦フスマ、ライ麦フスマ、サイリュウム、米糠、玄米、チッコリー、大豆おから、アップルパルプ、レジスタントスターチ、大麦麦芽、トウモロコシ種子外皮、乳酸菌菌体、ビフィドバクテリウム属細菌菌体、ビール酵母菌体、ワイン酵母菌体、パン酵母菌体、ワイン粕、酒粕、しょうゆ粕、ビール粕、米麹、麦麹、豆麹、紅麹、黄麹、納豆粘質物、ブドウ種子抽出物、蜂蜜、ローヤルゼリー、プロポリス、クロレラ、スピルリナ、ユーグレナ、アロエ、ワカメ、エゴノリ、イワノリ、オゴノリ、カワノリ、テングサ、コンブ、ホンダワラ、アラメ、カジメ、アサクサノリ、アオノリ、ヒジキ、アオサ、モズク等の難消化性の食物繊維を多く含む各種素材あるいはそれらの抽出成分等を添加してもよい。 また、上記の飲食品には、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ドロマイト等の各種ミネラル類あるいはそれらミネラル類の各種塩類、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、リン酸、アミノ酸等の各種酸類あるいはそれら酸類の各種塩類、グルタチオン、フィチン、フィチン酸、リグニン、サポニン、フェルラ酸、γ‐アミノ酪酸、γ‐オリザノール、カルコン、フラバノン、フラボン、フラボノール、イソフラボン、アントシアン、カテキン、プロアントシアニジン、茶葉ポリフェノール、クルクミド、カプサイシノイド、セサミノール、ゴマリグナン、テアフラビン、βジケトン類、カロチノイド類、アリルイオウ化合物、イソチオシアナート類、テルペン類、クロロフィル類、飽和脂肪酸類、n−3多価不飽和脂肪酸類、n−6多価不飽和脂肪酸類、共役リノール酸類、リン脂質類、植物ステロール類、卵タンパク、乳タンパク、米タンパク、大麦タンパク、小麦タンパク、魚肉タンパク、コラーゲン等の各種天然物成分、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD類、ビタミンE、ビタミンK類、βカロチン、レチノイン酸、葉酸等の各種ビタミン類、ブラックコホッシュ、セイヨウカボチャ種子、ザクロ種子、セイヨウオトギリソウ、パッションフラワー、バレリアン、プエラリア・ミリフィカ、ローズマリー、ペパーミント、パセリ、マリーゴールド、レモンバーム、ヨモギ、サフラワー、ダイコン種子、コーヒーノキ、ウコギ、ユウガオ果実、ミカン科果皮、イチョウ葉、ドクダミ、ナツメ、クコシ、甘草、霊芝、高麗ニンジン、ガラナ、マクティス樹液等の各種エキス類あるいはそれらの抽出成分、緑茶、紅茶、ウーロン茶、甜茶、ギムネマ茶、グァバ葉等の各種植物あるいはそれらの抽出成分、コショウ、サンショウ、ウコン、シナモン、カラシ、パプリカ、ターメリック、セイジ、タイム、バジル、トウガラシ、ナツメグ等の各種香辛料あるいはそれらの抽出成分等を添加してもよい。 更に、上記の飲食品には、米、玄米、大麦、小麦、オーツ麦、ライ麦、カラス麦、トウモロコシ、アマランサス、アワ、キビ、ソバ、ハトムギ、ヒエ、モロコシ、クズ、キャッサバ等の各種穀物(葉、茎、種子、根、花、芽、皮、樹液、果実等の各部分)あるいはそれら穀物の種子の発芽物成分あるいはそれらの抽出成分、カボチャ、キュウリ、ヘチマ、ミョウガ、セロリ、ナス、タマネギ、ニンニク、アボガド、アズキ、シロアズキ、キントキマメ、インゲンマメ、エンドウマメ、ムラサキハナマメ、チャナマメ、シロ大豆、クロ大豆、アオ大豆、枝豆、リョクトウ、ソラマメ、ダイフクマメ、レンズマメ、レッドレンティルマメ、ムラサキサツマイモ、アシタバ、ケール、ウコン、タンポポ、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、コンニャク、ヤマイモ、ナス、トマト、ニガウリ、ピーマン、ゴマ、キャベツ、トウガン、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、ショウガ、ゴボウ、ズイキ、ウリ、タラノメ、ダイコン、ワサビ、唐辛子、ニンジン、ホウレンソウ、ユリ、ラッキョウ、シソ、ネギ、ニラ、パースニップ、ツワブキ、ノビル、ハクサイ、パセリ、バジル、ワラビ、ツクシ、ゼンマイ、タケノコ等の各種野菜(葉、茎、種子、根、花、芽、皮、樹液、果実等の各部分)あるいはそれら野菜の種子の発芽物あるいはそれらの抽出成分、シイタケ、マッシュルーム、マイタケ、エノキタケ、キクラゲ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ナメコ、ヒラタケ、エリンギ、マツタケ等のきのこ類あるいはそれらきのこ類の抽出成分、ブドウ、カキ、レモン、リンゴ、サクランボ、スモモ、イチゴ、オレンジ、グァバ、バナナ、ブルーベリー、ブラックベリー、クランベリー、キイチゴ、コケモモ、ヤマモモ、フェイジョア、タマリロ、アセロラ、オリーブ、ココナッツ、ライム、シークワ―サー、メロン、モモ、ヤマモモ、ライチ、マンゴー、ユズ、パパイア、パインアップル、ナシ、プラム、グレープフルーツ、カリン、アンズ、ウメ、ナツミカン、ビワ、ミカン、ザクロ、ターミナリア・ベベリカ、スイカ、スモモ、プルーン、キウイ等の果物(葉、茎、種子、根、花、芽、皮、樹液、果実等の各部分)あるいはそれらの抽出成分、アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツ、マツノミ、マカデミアナッツ、クリ、ギンナン、クルミ、カカオ、コーヒー等の各種ナッツ(葉、茎、種子、根、花、芽、皮、樹液、果実等の各部分)あるいはそれらの抽出成分等を添加してもよい。 また更に、上記の飲食品には、カゼイン、ホエータンパク等の乳タンパクあるいはその加水分解物、乳ペプチド、アミノ酸、ホエー、バターミルク、乳脂肪、乳脂肪球膜、ラクトフェリン、シアル酸含有オリゴ糖等の乳成分等を添加してよい。 更にまた、上記の飲食品には、メイラード反応物、メラノイジン、抗ピロリ菌鶏卵抗体を含むニワトリ卵黄タンパク、ココア、チョコレート、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶、麦茶、ワイン、ビール、紹興酒、清酒、エタノール等の抗ピロリ菌作用を有する食品素材を添加してもよい。 上記の飲食品の中でも、有効成分であるビフィドバクテリウム・ビフィダムを生菌の状態で含有する発酵乳、乳酸菌飲料、発酵豆乳、発酵果汁、発酵植物液等の発酵乳飲食品が好ましい。これら発酵乳飲食品の製造は常法に従えばよく、例えば発酵乳は、殺菌した乳培地に本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムを単独または他の微生物と同時に接種培養し、これを均質化処理して発酵乳ベースを得る。次に別途調製したシロップ溶液を添加混合し、ホモゲナイザー等で均質化し、更にフレーバーや食品素材を添加して最終製品とすることができる。このようにして得られる発酵乳は、プレーンタイプ、ソフトタイプ、フルーツフレーバータイプ、固形状、液状等のいずれの形態の製品とすることもできる。 また、上記発酵乳飲食品にはビフィドバクテリウム・ビフィダムと共にラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス属細菌およびラクトコッカス属細菌から選ばれる乳酸菌の1種以上を併用して発酵乳飲食品を製造すると高い嗜好性が得られ、継続的な飲用が可能となるため好ましい。 更に、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、2糖類等の甘味料、特にショ糖を使用した場合でも保存中の酸度上昇を抑制し、風味の劣化を抑制することから、これを添加した発酵乳飲食品に好適に利用することができる。 これまでビフィズス菌を含有する飲食品は、保存時の生残性を高める目的で、ガラスやアルミコーティング紙等の酸素不透過性の包材で構成された容器が主に用いられてきた。しかしながら、本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、高い酸素耐性を有し、厳密な嫌気状態を必要としないため、これを含有する飲食品は単に容器に詰められていれば良く、容器の包材は酸素不透過性または酸素透過性のどちらでも良いが、酸素透過性の包材の方が酸素不透過性の包材で構成された容器と比較して、コストが低く、成型の自由度が高いため酸素透過性の包材で構成された容器を用いることが好ましい。このような酸素透過性の包材で構成された容器としては、容器当たりの酸素透過量が0.05ml以上/24h・atm、25℃である酸素透過性を有する容器(例えば、ポリスチレン容器(ポリスチレン表面積125.6cm2、アルミキャップ部表面積5cm2(アルミキャップ部の酸素透過量は0ml)):2.1ml/24h・atm、25℃、低密度ポリエチレン容器(低密度ポリエチレン表面積125.6cm2、アルミキャップ部表面積5cm2(アルミキャップ部の酸素透過量は0ml)):1.4ml/24h・atm、25℃、高密度ポリエチレン容器(高密度ポリエチレン表面積125.6cm2、アルミキャップ部表面積5cm2(アルミキャップ部の酸素透過量は0ml)):0.63ml/24h・atm、25℃、ポリエチレンテレフタレート容器(ポリエチレンテレフタレート表面積125.6cm2、低密度ポリエチレンキャップ部表面積5cm2):0.08ml/24h・atm、25℃、エチレンビニルアルコール−低密度ポリエチレン複合容器(エチレンビニルアルコール表面積125.6cm2、低密度ポリエチレンリッド部表面積20.9cm2):0.23ml/24h・atm、25℃、エチレンビニルアルコール−高密度ポリエチレン複合容器(エチレンビニルアルコール表面積125.6cm2、高密度ポリエチレンリッド部表面積20.9cm2):0.10ml/24h・atm、25℃等)が挙げられる(これらの酸素透過量はいずれも内容量100mlの容器当たりの数値である)。 以下、実施例、試験例によって本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。実 施 例 1 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007の育種改良: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007(FERM BP−791)を親株とし、これを無脂乳固形分14質量%の脱脂乳に接種し、37℃でpH4.8まで培養して、菌液を調製した。この菌液に、別途、ストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021を無脂乳固形分14質量%の脱脂乳に接種し、37℃でpH4.3まで培養して得た菌液を加え(混合比20:1)、最後に終濃度3質量%となるよう、ブドウ糖果糖液糖を含むシロップ液を加えて発酵乳飲食品を調製した。 この発酵乳飲食品を以下のように好気条件下で保存し、生き残った菌の中から酸素耐性の高いものを選抜した。まず、10Lのタンクに上記で調製した発酵乳飲食品を10L入れ、溶存酸素濃度が12mg/L以上となるように空気を7L/分の割合で送り込み、60rpmで攪拌しながら2℃で保存した。21日間保存後の生残菌を採取し、これを親株として、上記と同様に菌液を調製し、更に発酵乳飲食品の調製を行った。この発酵乳飲食品を2℃で21日間通気攪拌保存した。この操作を3回繰り返して生残性の高い菌株を濃縮し、3回目の生残菌をTOSプロピオン酸寒天培地(ヤクルト薬品工業製)上に塗抹し、単一のコロニーを24株分離した。 上記で分離した株の一つと親株であるYIT 4007とを用いて、上記と同様に発酵乳飲食品を調製した。これらを酸素透過性のポリスチレンで構成された内容量100mlの容器(ポリスチレン表面積125.6cm2;酸素透過量(容器当たり)2.1ml/24h・atm、25℃)に100ml入れて、10℃で保存した(好気条件下保存)。製造直後及び保存後の菌数を測定し、生残性を比較したところ、YIT 4007と比較し、優れた生残性を示す微生物として、YIT 10347を得た。表3に示すように、保存14日後の生残率は、YIT 4007が2%であるのに対し、YIT 10347は30%であった。実 施 例 2 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347の性状試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347が、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 4007を親株とする育種改良株であることを、前記した両菌株のコロニー性状、菌形態、糖発酵性状の比較並びに以下の実験により確認した。(1)菌種特異的なプライマーによる菌種同定 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347及びYIT 4007の菌液1mlからガラスビーズを用いた塩化ベンジル法(Nuc. Acid. Res 21, 5279-5280 (1993))によってDNAを抽出した。このDNAを鋳型とし、ビフィドバクテリウム・ビフィダムに特異的なプライマー(FEMS Microbiol. Letts. 167, 113-121 (1998))を用いたPCR法によって菌種の確認を行った。その結果、両菌株においてビフィドバクテリウム・ビフィダムに特異的な増幅が認められ、両菌株はビフィドバクテリウム・ビフィダムであると同定された(図1)。 BiBIF−1(配列番号1): 5’−CCACATGATCGCATGTGATTG−3’ BiBIF−2(配列番号2): 5’−CCGAAGGCTTGCTCCCAAA−3’(2)ランダム増幅多型DNA(RAPD:Random amplified polymorphic DNA) による菌株識別 上記と同様に抽出したDNAを鋳型として、6種類のプライマー(Nuc. Acid. Res20, 5137-5142 (1992))を用いたRAPDにより比較した。YIT 4007とYIT 10347は、全てのプライマーで同一のバンドパターンを示したことから、両菌株は遺伝学的に極めて近縁な菌株であることが示唆された。なお、バンドパターンが多種類見られるprimer A及びEのバンドパターンを図2に示した。 primer A(配列番号3):CCGCAGCCAA primer B(配列番号4):AACGCGCAAC primer C(配列番号5):GCGGAAATAG primer D(配列番号6):GAGGACAAAG primer E(配列番号7):CGAACTAGAC primer F(配列番号8):GTAGACAAGC(3)制限酵素によるDNA多型解析(RFLP:Restriction fragment length polymorphisms)による菌株識別 両菌株の培養菌液を用い、低融点アガロース(LMPアガロース:BIO−RAD製)と混和して作製したアガロースブロックについて、リゾチームで溶菌後、タンパク分解液(プロティナーゼK)を用いて除タンパクし、洗浄用バッファー(20mM Tris、50mM EDTA)で洗浄した。次に、Xba I(認識配列:T↓CTAGA)、Hind III(認識配列:AA↓GCTT)及びVsp I(認識配列:AT↓TAAT)の各制限酵素(いずれもTakara製)をアガロースブロックに60unitsずつ添加し、4℃で一晩放置した後、37℃で24時間反応させ酵素処理を行った。酵素処理終了後、シェフマッパー(CHEF MAPPER:BIO−RAD製)を用いて1質量%アガロースゲル(PFC Agarose:BIO−RAD製)でパルスフィールド電気泳動を行った。泳動後、0.5mg/Lのエチレンブロマイド溶液で30分染色し、蒸留水で30分脱色後、紫外線下で写真撮影し、肉眼によりDNA多型を解析した。いずれの制限酵素についても、両菌株のRFLP解析結果は完全に一致した(図3)。実 施 例 3 生残性確認試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347及びYIT 4007のそれぞれを用いて次のようにして発酵乳飲食品を調製した。すなわち、無脂乳固形分14質量%の脱脂乳に、上記ビフィドバクテリウム・ビフィダムをそれぞれ2質量%接種し、37℃でpH4.8まで培養し、15MPaで均質化して菌液Aを調製した。他方、無脂乳固形分14質量%の脱脂乳にストレプトコッカス・サーモフィルスを0.1質量%接種し、37℃でpH4.3まで培養し、15MPaで均質化して菌液Bを調製した。次に、混合後の終濃度が4質量%となるようにショ糖を含むシロップ液を調製した。菌液A、菌液B及びシロップ液を55:3:42の割合で混合し、無脂乳固形分8.1質量%の発酵乳を調製した。 上記で調製した発酵乳を、内容量100mlの酸素不透過性の紙−アルミニウム複合容器(表面積143cm2;酸素透過量(容器当たり)0ml/24h・atm、25℃)と酸素透過性のポリスチレン容器(ポリスチレン表面積125.6cm2;酸素透過量(容器当たり)2.1ml/24h・atm、25℃)にそれぞれ100mlずつ入れて10℃で14日間保存した。製造直後及び保存後の菌数を測定し、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの生残性を比較した。なお、紙−アルミニウム複合容器は嫌気条件下保存、ポリスチレン容器は好気条件下保存に相当する。 その結果、YIT 4007では酸素透過性のポリスチレン容器での生残率は2%であったが、YIT 10347では酸素透過性のポリスチレン容器での生残率は34%であり、YIT 4007と比べて高い生残性を維持していた(表4)。実 施 例 4 性状変化確認試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347及びYIT 4007のそれぞれを用いて次のようにして発酵乳飲食品を調製した。すなわち、無脂乳固形分14質量%の脱脂乳に、上記YIT 10347またはYIT 4007をそれぞれ2質量%接種し、37℃でpH4.8まで培養し、15MPaで均質化して菌液Aを調製した。他方、無脂乳固形分14質量%の脱脂乳にストレプトコッカス・サーモフィルスを0.1質量%接種し、37℃でpH4.3まで培養し、15MPaで均質化して菌液Bを調製した。次に、甘味料としてショ糖(終濃度4.2質量%)またはブドウ糖果糖液糖(終濃度5.6質量%)を含むシロップ液を調製した。菌液A、菌液Bおよびシロップ液を55:3:42の割合で混合し、無脂乳固形分8.1質量%の発酵乳飲食品を調製した。 上記で調製した発酵乳飲食品を実施例1と同様のポリスチレン容器に100ml入れて、20℃で4日間、保存した(好気条件下保存)。製造直後及び保存後について、酸度及びpHの測定ならびにパネラー10名により風味評価を行った。なお、風味評価の評価基準を以下に示した。 その結果、甘味料としてショ糖を使用した場合、YIT 4007よりもYIT 10347の方が、20℃で4日間保存後も酸度変化が小さく、また、風味についても酢酸臭、発酵臭が少なく良好であった。一方、甘味料としてブドウ糖果糖液糖を使用した場合には、20℃で4日間保存後も酸度と風味の変化について、YIT 4007とYIT 10347間で違いはみられなかった(表5及び表6)。<風味評価基準>(評点) (内容) +2 : 風味がたいへん良い +1 : 風味が良い ±0 : どちらでもない −1 : 風味が悪い −2 : 風味がたいへん悪い実 施 例 5 乳酸菌飲料の製造: 全粉乳70g、乳ペプチド0.1gを水290gに溶解し、135℃で3秒間殺菌した後、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347を2質量%接種し、37℃でpH4.8まで培養し、15MPaで均質化して、菌液Aを360g得た。他方、脱脂粉乳6gを水24gに溶解し、120℃で3秒間殺菌した後、ストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021を0.1質量%接種し、37℃でpH4.3になるまで培養し、15MPaで均質化して菌液Bを30g得た。また、ショ糖50g、カルボキシメチルセルロース5g、ジェランガム1g、スクラロース0.1g、DLリンゴ酸0.5g、香料1gを水に溶解し、水を加えて全量を610gとし、それを120℃で3秒間殺菌してシロップ液を得た。菌液A、菌液B及びシロップ液を混合し、内容量100mlのエチレンビニルアルコール−低密度ポリエチレン複合容器(エチレンビニルアルコール表面積125.6cm2、低密度ポリエチレンリッド部表面積20.9cm2;酸素透過量(容器当たり)0.23ml/24h・atm、25℃)に充填して、無脂乳固形分5.5質量%の乳酸菌飲料を得た。なお、この乳酸菌飲料中のYIT 10347の初発菌数は1.3×109CFU/mlであった。 この乳酸菌飲料を10℃で14日間保存したところ、YIT 10347の生残率は14%であり、風味も良好であった。また20℃で4日間保存しても酸度変化は0.6と小さく、風味の劣化はみられなかった。実 施 例 6 発酵乳の製造: 脱脂粉乳80gを水470gに溶解し、135℃で3秒間殺菌した後、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347を2質量%接種し、37℃でpH4.8まで培養し、15MPaで均質化して、菌液Aを550g得た。他方、脱脂粉乳5gを水25gに溶解し、120℃で3秒間殺菌した後、ストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021を0.1質量%接種し、37℃でpH4.3になるまで培養し、15MPaで均質化して菌液Bを30g得た。また、ブドウ糖果糖液糖60g、カルボキシメチルセルロース5gを水に溶解し、香料1gを加え、更に水を加えて全量を420gとし、それを120℃で3秒間殺菌してシロップ液を得た。菌液A、菌液B及びシロップ液を混合し、実施例1と同様のポリスチレン容器に充填して、無脂乳固形分8.1質量%の発酵乳を得た。なお、この発酵乳中のYIT 10347の初発菌数は2.6×109CFU/mlであった。 この発酵乳を10℃で14日間保存した結果、YIT 10347の生残率は35%であり、風味も良好であった。また20℃で4日間保存しても酸度変化は0.7と小さく、風味の劣化はみられなかった。試 験 例 1 ヒト胃細胞への接着性試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347またはYIT 4007をGAMブイヨン培地(日水製薬製)に接種し、37℃で20時間嫌気培養した。培養液を3,000rpmで10分遠心して菌を沈殿させ、リン酸バッファー生理食塩水(PBS)で2回洗浄後、RPMI 1640(Gibco製:ウシ胎児血清(FBS)なし、抗生物質なし)で懸濁することにより、菌株の懸濁液を調製した。また、ネガティブコントロールとして用いるストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021(FERM BP−7537)についてはMRS培地(Difco製)に接種し、同様に培養、懸濁させ、菌株の懸濁液を調製した。更に、ポジティブコントロールとして用いるラクトバチルス・ガセリ(市販品分離株)についても、市販のヨーグルト(明治プロビオヨーグルトLG21:明治乳業製)から分離し、これをMILS培地(Iwata & Morishita, Letter in Applied Microbiology, vol 9, 165-168, 1989)に接種し、同様に培養、懸濁させ、菌株の懸濁液を調製した。なお、このラクトバチルス・ガセリはヒト胃細胞への接着性やヘリコバクター・ピロリの除菌作用が報告されている。 ヒト胃由来細胞株(GCIY株:理化学研究所バイオリソースセンターより入手)を、15容量%FBS添加イーグル(eagle’s)MEM培地(抗生物質なし)を用い、37℃に設定した二酸化炭素インキュベータ中、24穴コラーゲンコートプレート(住友ベークライト製)上でセミコンフルエントとなるまで培養した。1ウェルあたりのGCIY株細胞数は平均6.53×104個/ウェルであった。上記RPMI 1640で各ウェルを洗浄後、上記で調製した各菌株の懸濁液を添加し、90分間インキュベートし、更に上記RPMI1640で2回洗浄して未接着菌を除去した。処理後のGCIY株細胞を0.25W/V%トリプシン−1mMのEDTA溶液で遊離させ、0.1W/V%酵母エキス溶液で適宜希釈して、各菌株に対する選択培地(ビフィドバクテリウム・ビフィダム;TOSプロピオン酸寒天培地(ヤクルト薬品工業株式会社製)、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ガセリ;寒天添加MRS培地(Difco製))に塗抹し、生じたコロニー数からGCIY株への接着菌数を算出した(図4)。 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347及びYIT 4007のGCIY株への接着性は、ネガティブコントロールであるストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021と比較すると、接着菌数は10倍でほぼ一致しており、両菌株の接着性は同等であると判断された。また、両菌株はポジティブコントロールであるラクトバチルス・ガセリ市販品分離株よりも若干接着菌数が多いことも分かった。試 験 例 2 ヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害試験:<実験A:ビフィズス菌とヒト胃由来細胞株GCIY株のプレインキュベート系> ヒト胃由来細胞株(GCIY株)を、15容量%FBS添加レイボビッツ(Leibovitz’s)L−15培地を用い、37℃に設定した二酸化炭素インキュベータ中、96穴コラーゲンコートプレート上でセミコンフルエントとなるまで2〜5日遮光培養した。試験例1と同様に培養した各試験菌株をリン酸緩衝液(PBS)に懸濁し(終濃度108〜109CFU/ml)、各ウェルに添加して37℃で2時間プレインキュべートした。一方、20mMのHEPESを添加したレイボビッツL−15培地(FBSは未添加)で一回洗浄し、10容量%ウマ血清を添加したブルセラ培地(Becton Dickinson製)上、37℃、40時間、微好気培養(5%酸素、10%二酸化炭素、85%窒素)の条件でヘリコバクター・ピロリを培養した。得られたヘリコバクター・ピロリ溶液(終濃度107CFU/ml)を各ウェルに添加し、37℃、90分インキュベート後、PBSで洗浄し、更に8W/V%パラホルムアルデヒド溶液を添加し、4℃で一晩放置した。更にPBSで2回洗浄後、1W/V%の過酸化水素を含むメタノール溶液を添加して室温で10分静置し、洗浄後、0.25W/V%BSA(ウシ血清アルブミン)添加PBSにて200倍希釈した抗ヘリコバクター・ピロリ抗体(Anti H.p.(Murine IgG1);Cat.#2007;SYNBIO製)を100μl添加し、37℃で2時間インキュベートした。その後、洗浄し、0.25W/V%牛血清アルブミン(BSA)添加PBSにて1,000倍希釈した抗マウスIgG抗体(peroxidase−conjugated:Cappel製)100μlを添加して37℃で1時間インキュベートし、洗浄後ABTS発色試薬にて発色させ、1W/V%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)にて反応停止し、405nmの吸光値を測定した。GCIY株に対するヘリコバクター・ピロリの接着阻害率(%)は、下記式により算出した(図5)。 阻害率(%)=(1−A/B)×100 A:各試験菌株懸濁液添加時の吸光度 B:各試験菌株懸濁液非添加時の吸光度 その結果、YIT 10347及びYIT 4007を予めGCIY株に作用させることで、後から添加したヘリコバクター・ピロリの接着を阻害することが分かった。特にYIT 10347の阻害活性は、ネガティブコントロールであるストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021の約6倍強く、また、ポジティブコントロールであるラクトバチルス・ガセリ(市販品分離株)よりも阻害活性が強かった。これらのことは、YIT 10347は、親株であるYIT 4007と同様に、ヘリコバクター・ピロリの感染予防作用や再感染に対する予防作用を持つことを示唆している。<実験B:ビフィズス菌とヘリコバクター・ピロリのプレインキュベート系> 実験Aと同様に調製したヘリコバクター・ピロリ溶液(107CFU/ml)と各試験菌株のPBS懸濁液(終濃度108〜109CFU/ml)を、20mMのHEPESを添加したレイボビッツL−15培地(FBSは未添加)中で37℃、2時間プレインキュベートした。また、ヒト胃由来細胞株GCIY株を実験Aと同様にセミコンフルエントとなるまで培養し、上記レイボビッツL−15培地で一回洗浄後、ウェルに上記プレインキュベート液を添加し、37℃、90分インキュベート後、PBSで洗浄し、8W/V%パラホルムアルデヒド溶液を添加し、4℃で一晩放置した。以降の操作は実験Aと同様に行ない、GCIY株に対するヘリコバクター・ピロリの接着阻害率(%)を算出した(図6)。 その結果、YIT 10347及びYIT 4007をヘリコバクター・ピロリと予め共存させることで、ヘリコバクター・ピロリのGCIY株への接着を阻害することが分かった。これはYIT 10347及びYIT 4007がヘリコバクター・ピロリに直接作用して、その感染力を抑制することを示している。また、YIT 10347はネガティブコントロールであるストレプトコッカス・サーモフィルス YIT 2021の約3倍阻害活性が強く、ポジティブコントロールであるL.ガセリ市販品分離株はネガティブコントロールであるYIT 2021と同程度の阻害率であった。これらのことは、YIT 10347は、親株であるYIT 4007と同様に、抗ヘリコバクター・ピロリ作用、すなわち、ヘリコバクター・ピロリ感染状態におけるヘリコバクター・ピロリの活性や作用を抑える作用を持つことを示唆している。試 験 例 3 ヘリコバクター・ピロリ感染によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するビフィ ドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347の抑制効果試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347をMILS培地に接種し、37℃で20時間嫌気培養した。培養液を5,000rpmで5分間遠心し、菌体を集め、15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)で3回洗浄後、少量の15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)に懸濁した。他方、ヒト胃由来細胞株(GCIY株)を15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)を用い、37℃の二酸化炭素インキュベータ中、96ウエルのコラーゲンコートマイクロプレート上でコンフルエント(1〜2×105個/cm2)まで培養した。ウエルの培地を除き、新しい培地に交換後、先のYIT 10347の懸濁液を終濃度107CFU/mlまたは108CFU/mlとなるようにGCIY細胞上に添加し、更に6時間培養した(前培養)。また、培地のみで前培養したものを対照とした。ウエルの培地を除き、PBSでウエルを3回洗浄してYIT 10347を除いた後、新しい培地とともにヘリコバクター・ピロリを終濃度で107CFU/ml添加、あるいは添加せずにGCIY細胞を24時間培養した。培養終了後、ウエルから培養上清を採取し、ELISA法により培養上清中のIL−8の量を測定した(図7)。 その結果、図7に示すように、YIT 10347を加えて前培養した細胞では、その後のヘリコバクター・ピロリ感染において誘導されるIL−8量が、培地のみで前培養した対照に比べて低下した。また、IL−8量の低下率は、107CFU/ml添加で前培養したものでは17%、108CFU/ml添加したものでは38%であった。このことから、YIT 10347には、ヘリコバクター・ピロリ感染により胃上皮細胞から誘導される白血球遊走因子IL−8の産生を抑制する作用があり、ヘリコバクター・ピロリ感染が原因となる胃の炎症を改善することが示唆された。また、生菌数が多い方がその抑制効果は高いことが示された。試 験 例 4 TNF−α添加によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するビフィドバクテ リウム・ビフィダム YIT 10347の抑制効果試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347をMILS培地に接種し、37℃で20時間嫌気培養した。培養液を5,000rpmで5分間遠心し、菌体を集め、15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)で3回洗浄後、少量の15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)に懸濁した。他方、ヒト胃由来細胞株(GCIY株)を15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)を用い、37℃の二酸化炭素インキュベータ中、96ウエルのコラーゲンコートマイクロプレート上でコンフルエント(1〜2×105個/cm2)まで培養した。ウエルの培地を除き、新しい培地に交換後、先のYIT 10347の懸濁液を終濃度107CFU/mlまたは108CFU/mlとなるようにGCIY細胞上に添加し、更に6時間培養した(前培養)。また、培地のみで前培養したものを対照とした。ウエルの培地を除き、PBSでウエルを3回洗浄してYIT 10347を除いた後、新しい培地とともにTNF−αを終濃度10ng/mlとなるように添加してGCIY細胞を24時間培養した。培養終了後、ウエルから培養上清を採取し、ELISA法により培養上清中のIL−8の量を測定した(図8)。 その結果、図8に示すように、GCIY細胞をYIT 10347を加えて前培養したものについては、その後のTNF−α処理で誘導されるIL−8量が、培地のみで前培養した対照に比べて低下した。IL−8量の低下率は107CFU/ml添加で前培養したものでは36%、108CFU/ml添加で前培養したものでは40%であった。このことから、YIT 10347には、炎症反応のメディエーターであるTNF−αによって誘導される白血球遊走因子IL−8の産生を抑制することがわかった。すなわちYIT 10347はTNF−αが関与する種々の炎症を改善する可能性が示唆された。試 験 例 5 培養液中におけるビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347によへリコバ クター・ピロリの抑制効果試験: 塩酸にてpH5.8に調整したウマ血清10容量%添加ブルセラブロスに1×105CFU/mlのヘリコバクター・ピロリと1×107CFU/mlのビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347の両方を接種し、37℃の微好気下で振とう培養した。経時的にこの混合培養の培養液から一部を取り、ヘリコバクター寒天培地(日水製薬製)およびTOSプロピオン酸寒天培地(ヤクルト薬品工業製)の平板に塗布した。前者は37℃・微好気・5日間、後者は37℃・嫌気・3日間の培養でコロニーを生育させ、両菌の生菌数を測定した。また、対照としてヘリコバクター・ピロリのみを接種したもので経時的に生菌数を測定した(図9)。 その結果、図9に示すように、ヘリコバクター・ピロリ単独の対照では48時間後にヘリコバクター・ピロリは1×107CFU/mlまで増殖していたが、YIT 10347を共存させた場合は、ヘリコバクター・ピロリの生菌数は培養時間とともに低下し、48時間後には1×103CFU/ml以下まで減少した。また、このときYIT 10347の生菌数は接種時の10倍以上に増加していた。このことから、YIT 10347の生菌が共存する条件下では、ヘリコバクター・ピロリの増殖はYIT 10347によって抑制されることがわかった。すなわち、生菌のYIT 10347をヒトが摂取した場合にも、胃内のヘリコバクター・ピロリの増殖が抑制されると考えられる。試 験 例 6 ヘリコバクター・ピロリ感染によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するビフィド バクテリウム・ビフィダム YIT 10347とYIT 4007の抑制効果比較試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347またはYIT 4007をMILS培地に接種し、37℃で20時間嫌気培養した。培養液を5,000rpmで5分間遠心し、菌体を集め、15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)で3回洗浄後、少量の15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)に懸濁した。他方、ヒト胃由来細胞株(GCIY株)を15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)を用い、37℃の二酸化炭素インキュベータ中、96ウエルのコラーゲンコートマイクロプレート上でコンフルエント(1〜2×105個/cm2)まで培養した。ウエルの培地を除き、新しい培地に交換後、先のYIT 10347またはYIT 4007の懸濁液を終濃度106CFU/mlとなるようにGCIY細胞上に添加し、更に6時間培養した(前培養)。また、培地のみで前培養したものを対照とした。ウエルの培地を除き、PBSでウエルを3回洗浄してビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体を除いた後、新しい培地とともにヘリコバクター・ピロリを終濃度で107CFU/ml添加、あるいは添加せずにGCIY細胞を24時間培養した。培養終了後、ウエルから培養上清を採取し、ELISA法により培養上清中のIL−8の量を測定した(図10)。 その結果、図10に示すように、YIT 4007またはYIT 10347を加えて前培養した細胞では、その後のヘリコバクター・ピロリ感染において誘導されるIL−8量が、培地のみで前培養した対照に比べて低下した。IL−8量の低下率は、YIT 4007を添加して前培養したものは7%であったが、YIT 10347を添加して前培養したものは28%と大きかった。このことから、YIT 10347ならびにYIT 4007には、ヘリコバクター・ピロリ感染により胃上皮細胞から誘導される白血球遊走因子IL−8の産生を抑制する作用があり、その抑制効果はYIT 10347の方がYIT 4007よりも高いことが示された。試 験 例 7 TNF−α添加によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347とYIT 4007の抑制効果比較試験: ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347またはYIT 4007をMILS培地に接種し、37℃で20時間嫌気培養した。培養液を5,000rpmで5分間遠心し、菌体を集め、15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)で3回洗浄後、少量の15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)に懸濁した。他方、ヒト胃由来細胞株(GCIY株)を15容量%FBS添加イーグルMEM培地(抗生物質なし)を用い、37℃の二酸化炭素インキュベータ中、96ウエルのコラーゲンコートマイクロプレート上でコンフルエント(1〜2×105個/cm2)まで培養した。ウエルの培地を除き、新しい培地に交換後、先のYIT 10347またはYIT 4007の懸濁液を終濃度106CFU/mlとなるようにGCIY細胞上に添加し、更に6時間培養した(前培養)。また、培地のみで前培養したものを対照とした。ウエルの培地を除き、PBSでウエルを3回洗浄してビフィドバクテリウム・ビフィダムの菌体を除いた後、新しい培地とともにTNF−αを終濃度10ng/mlとなるように添加してGCIY細胞を24時間培養した。培養終了後、ウエルから培養上清を採取し、ELISA法により培養上清中のIL−8の量を測定した(図11)。 その結果、図11に示すように、GCIY細胞をYIT 10347またはYIT 4007を加えて前培養したものについては、その後のTNF−α処理で誘導されるIL−8量が、培地のみで前培養した対照に比べて低下した。IL−8量の低下はYIT 4007は1%であったが、YIT 10347を添加して前培養したものは15%であった。このことから、YIT 10347ならびにYIT 4007には、炎症反応のメディエーターであるTNF−αによって誘導される白血球遊走因子IL−8の産生を抑制する作用があり、その抑制効果はYIT 10347の方がYIT 4007よりも高いことが示された。試 験 例 8 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347を含有する乳酸菌飲料の ヒト投与試験: 胃が気になる健常成人79名を対象とし、二重盲検化無作為化プラセボ対照2群並行群間比較試験を以下の対象者について実施した。これら対象者には予めインフォームドコンセントを取得した。<対象者> (1)胃が気になる健常成人(妊娠中の女子を除く) (2)尿素呼気試験値(ユービット投与20分後のΔ13CO2値、ユービット;大塚 製薬株式会社製の13C尿素製剤、検査マニュアルに従って実施)が5‰以上あ るいはペプシノーゲンI/II比が6.5未満の者 (3)胃症状に影響を及ぼす可能性のある医薬品及び食品を摂取していない者 (4)牛乳アレルギー又は乳糖不耐症を有しない者 (5)慢性疾患を有していない者 試験は、被験食品(実施例5で製造したビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347を含有する乳酸菌飲料)あるいはプラセボ食品(未発酵乳)を、100mL/個、1日1回起床空腹時に1個を12週間摂取、摂取終了観察期8週間で実施した。摂取前、摂取4週後、摂取8週後、摂取12週後、摂取終了8週後(試験開始20週目)において、医師問診による自覚症状の変化と共に、以下の項目について測定を行った。<測定項目> (1)尿素呼気試験による呼気Δ13CO2値 (2)血清ペプシノーゲン値 (3)便中のヘリコバクター・ピロリの抗原量上記(1)〜(3)の測定は株式会社ビー・エム・エルにて行った。 上記試験結果の解析は、被験者全体、ヘリコバクター・ピロリ陽性者、吉原らのグルーピング(ペプシノーゲン値による胃粘膜の状態の推定、出典:吉原ら、Medical Practice、21巻、77−81、2004年)による活動性胃炎階層や萎縮性胃炎境界域階層について行い、各測定値に対する群間比較(Mann−Whitney検定)、ベースラインからの変化量に対する前後比較(Wilcoxon検定)、自覚症状の改善割合の比較を行った。(試験結果)1.胃の状態への影響(胃酸分泌、胃粘膜炎症) 被験者全体あるいは活動性胃炎階層の被験者において、被験食品群のペプシノーゲンI値がプラセボ群より有意に低値を示した(図12および図13)。ペプシノーゲンI値は胃酸分泌と相関することから、これらの結果はYIT 10347を含有する乳酸菌飲料が胃酸の増加を抑える効果を有し、更にヘリコバクター・ピロリの攻撃等により炎症反応が繰り返される活動性胃炎の胃酸の増加を抑える効果、胃酸過多や逆流性食道炎の予防治療効果を有することを示している。 また、萎縮性胃炎境界階層の被験者において、被験食品群のペプシノーゲンII値がプラセボ群より有意に低値を示した(図14)。ペプシノーゲンII値は胃粘膜の炎症を反映していることから、これらの結果はYIT 10347を含有する乳酸菌飲料が萎縮性胃炎を含む胃粘膜の炎症を緩和する効果を有することを示している。なお、被験食品に含まれているストレプトコッカス・サーモフィルスは、ペプシノーゲン値に影響を及ぼさないことが確認されているため、被験食品で見られた効果は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347によるものと考えられる。2.ヘリコバクター・ピロリへの影響(生物活性・菌数、菌体量) ヘリコバクター・ピロリ陽性者全体あるいはヘリコバクター・ピロリ陽性で活動性胃炎階層の被験者において、被験食品群の呼気Δ13CO2値はベースラインよりも低下し、変化量もプラセボ群よりも低値を示した(図15、図16)。呼気Δ13CO2値はヘリコバクター・ピロリが胃内で生育・活動するために必須なウレアーゼ活性を反映することから、これらの結果はYIT 10347を含有する乳酸菌飲料がヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ活性の阻害(アンモニア量の低下)を介した抗ヘリコバクター・ピロリ作用(ヘリコバクター・ピロリの菌数の低下、ヘリコバクター・ピロリによるアンモニア生成の阻害、ヘリコバクター・ピロリによる胃粘膜傷害の緩和・予防・治療、ヘリコバクター・ピロリによる炎症反応の改善等)を持つことを示している。また、ヘリコバクター・ピロリ陽性で萎縮性胃炎境界域階層の被験者において、被験食品群の便中ヘリコバクター・ピロリ抗原量はベースラインより低下した(図17)。便中ヘリコバクター・ピロリ抗原量はヘリコバクター・ピロリの菌体量を反映することから、これらの結果はYIT 10347含有乳酸菌飲料がヘリコバクター・ピロリの菌数を低下する効果を持つことを示している。なお、被験食品に含まれているストレプトコッカス・サーモフィルスは、ヘリコバクター・ピロリに影響を及ぼさないことが確認されているため、被験食品で見られた効果は、YIT 10347によるものと考えられる。3.胃症状への影響 被験者全体の問診による自覚症状の変化について、被験食品群の胃不定愁訴(胃痛、胃もたれ、胃重、むかつき、不快感、むねやけ、上腹部痛、ゲップ)の改善率はプラセボ群よりも高かった(図18)。その内訳は、胃痛については被験食品群で改善9名、非改善1名(改善率90%)、プラセボ群で改善4名、非改善2名(改善率67%)、胃もたれについては被験食品群で改善4名、非改善1名(改善率80%)、プラセボ群で改善1名、非改善2名(改善率33%)、その他の症状(胃重、むかつき、不快感、むねやけ、上腹部痛、ゲップ)については被験食品群で改善3名、非改善0名(改善率100%)、プラセボ群で改善5名、非改善3名(改善率63%)であった。これらの結果はYIT 10347を含有する乳酸菌飲料が胃不定愁訴を効率的に改善する効果を有することを示している。なお、被験食品に含まれているストレプトコッカス・サーモフィルスは、胃症状に影響を及ぼさないことが確認されているため、被験食品で見られた効果は、YIT 10347によるものと考えられる。 本発明のビフィドバクテリウム・ビフィダムは、ヘリコバクター・ピロリの除菌作用を有し、かつ、発酵乳飲食品中で好気条件下で保存された場合でも生残性に優れている。そのため、前記除菌作用や生残性が長期に渡って維持され、多数の生菌を胃や腸管内に到達させることができることから、ヘリコバクター・ピロリの感染予防治療剤、胃炎、潰瘍の予防治療剤、胃不定愁訴の予防治療剤、胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤として利用することができる。また、これらの作用を有する飲食品、特に発酵乳飲食品の製造に好適に利用することができる。更に、ショ糖を使用した発酵乳飲食品の保存中の酸度上昇を抑制し、風味の劣化を抑制することから、甘味料を含有する発酵乳飲食品に好適に利用することができる。BiBIFプライマーを用いたYIT 4007及びYIT 10347の菌種同定結果を示す図面である。YIT 4007及びYIT 10347のRAPDバンドパターンを示す図面である。YIT 4007及びYIT 10347の染色体DNAのパルスフィールド電気泳動パターンを示す図面である。ヒト胃細胞への接着性試験の結果を示す図面である。ヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害試験の結果を示す図面である。ヘリコバクター・ピロリのヒト胃細胞への接着阻害試験の結果を示す図面である。ヘリコバクター・ピロリ感染によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するYIT 10347の抑制効果試験の結果を示す図面である。TNF−α添加によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するYIT 10347の抑制効果試験の結果を示す図面である。培養液中におけるYIT 10347によるヘリコバクター・ピロリの抑制効果試験の結果を示す図面である(実験A:単菌培養、実験B:混合培養)。ヘリコバクター・ピロリ感染によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するYIT 10347とYIT 4007の抑制効果比較試験の結果を示す図面である。TNF−α添加によりヒト胃細胞から誘導されるIL−8に対するYIT 10347とYIT 4007の抑制効果比較試験の結果を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(被験者全体のペプシノーゲンI値)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(活動性胃炎被験者のペプシノーゲンI値)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(萎縮性胃炎境界域被験者のペプシノーゲンII値)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(ヘリコバクター・ピロリ陽性者全体の呼気Δ13CO2値)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(ヘリコバクター・ピロリ陽性で活動性胃炎の被験者の呼気Δ13CO2値)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(ヘリコバクター・ピロリ陽性で萎縮性胃炎境界域の被験者の便中ヘリコバクター・ピロリ抗原量)を示す図面である。YIT 10347含有乳酸菌飲料のヒト投与試験の結果(被験者全体の胃不定愁訴の改善率)を示す図面である。 ビフィドバクテリウム・ビフィダム YIT 10347(FERM BP−10613)。 請求項1記載のビフィドバクテリウム・ビフィダムを有効成分として含有することを特徴とするヘリコバクター・ピロリ感染予防治療剤。 請求項1記載のビフィドバクテリウム・ビフィダムを有効成分として含有することを特徴とする胃炎、潰瘍の予防治療剤。 請求項1記載のビフィドバクテリウム・ビフィダムを有効成分として含有することを特徴とする胃不定愁訴の予防治療剤。 請求項1記載のビフィドバクテリウム・ビフィダムを有効成分として含有することを特徴とする胃酸過多、胃食道逆流症の予防治療剤。 請求項1記載のビフィドバクテリウム・ビフィダムを含有することを特徴とする飲食品。 発酵乳飲食品である請求項6記載の飲食品。 更に、甘味料を含有するものである請求項6または7記載の飲食品。 容器詰されたものである請求項6ないし8のいずれか1項記載の飲食品。 容器が、酸素透過性の包材で構成されたものである請求項9記載の飲食品。配列表