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タイトル:特許公報(B2)_グリコール酸の製造方法
出願番号:2007517888
年次:2012
IPC分類:C07C 51/08,C07C 59/06,C12P 7/42


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日名子 英範 永原 肇 青木 肇也 JP 5032309 特許公報(B2) 20120706 2007517888 20060525 グリコール酸の製造方法 旭化成ケミカルズ株式会社 303046314 稲葉 良幸 100079108 大賀 眞司 100093861 大貫 敏史 100109346 日名子 英範 永原 肇 青木 肇也 JP 2005154939 20050527 20120926 C07C 51/08 20060101AFI20120906BHJP C07C 59/06 20060101ALI20120906BHJP C12P 7/42 20060101ALI20120906BHJP JPC07C51/08C07C59/06C12P7/42 C07C 51/08、59/06 C12P 7/42 CA/REGISTRY(STN) 特公昭28−001074(JP,B1) 特開昭53−068725(JP,A) 特開昭59−139341(JP,A) K. YAMAMOTO et al.,Agricultural and Biological Chemistry,1991年,55(6),pp.1459-1466 5 JP2006310426 20060525 WO2006126626 20061130 13 20090518 神野 将志 本発明は、重合用の原料、化粧品、医薬品、清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤等として有用なグリコール酸、及びその製造方法に関する。 従来、グリコール酸は、清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤等として主に使用されている。近年は、化粧品、医薬品の皮膚外用剤にも使用されるようになってきた。皮膚外用剤として使用されるものは不純物として有害なものが少ないことが望ましい。最近は、生分解性、ガスバリア性機能を有するポリグリコール酸の原料としても期待されている。 従来、グリコール酸の製法としては、主に、(1)一酸化炭素とホルムアルデヒドと水とを強酸性触媒の存在下、高温高圧条件下において反応させる方法、(2)クロロ酢酸と水酸化ナトリウムとを反応させる方法、(3)エチレングリコールの酸化によって得られるグリオキザールを強アルカリとカニッツァロ反応させてグリコール酸塩を形成した後、酸を加えてグリコール酸を遊離させる方法、(4)エチレングリコールの酸化によって得られるグリオキザールと水とを無機触媒の存在下で液相反応させる方法、(5)エチレングリコールを貴金属触媒及び酸素の存在下で接触酸化する方法、(6)エチレングリコールをメタノールと酸素によって酸化エステル化してグリコール酸メチルにしたのち加水分解してグリコール酸を製造する方法、等が知られている。 (1)の一酸化炭素とホルムアルデヒドと水とを強酸性触媒の存在下、高温高圧条件下において反応させる方法は、例えば、含水有機溶媒中フッ化水素触媒存在下でホルムアルデヒドと一酸化炭素とを反応させて製造する方法(例えば特許文献1参照)や水媒体中硫酸触媒存在下でホルムアルデヒドと一酸化炭素とを反応させて製造する方法(例えば特許文献2、3参照)等がある。 この方法は高温、高圧下の特殊な反応装置と反応条件のもとで製造されるという問題点がある。また、この方法はギ酸等の有機酸や変異原性を示すメトキシ酢酸の副生も避けられない。高温、高圧下という条件ゆえ、副反応によるメタノールをはじめとして多種多量の不純物や、触媒として使用した硫酸が含まれている。これら不純物の除去、精製に多大な労力とエネルギーを要し非効率的である。しかもこの方法では陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂の両方を必要とする。即ち、硫酸を除去するために陰イオン交換樹脂を、低沸点不純物を除去するために生蒸気ストリッピングを、さらに金属不純物を除去するために陽イオン交換樹脂を用いることを必須とし、工程が極めて繁雑である。 (2)のモノクロル酢酸を水酸化ナトリウムとを反応させる方法(例えば特許文献4、5参照)は、化学量論量付近の水酸化ナトリウムを用いる必要がある。そのため有機物で汚染された塩化ナトリウムが廃棄物として化学両論的に発生するという問題がある。さらには、この化学量論的に副生する塩化ナトリウムのため濃縮後のスラリー濃度が高くなり操作性が悪くロスも大きいという問題がある。また生成物中には塩が除去しきれず残存するという問題がある。 (3)〜(6)に共通の課題としては、エチレングリコールがエチレンオキサイドを原料として製造されるため、製造工程が長いうえ、爆発性のエチレンオキサイドを製造プロセス中に包含するという問題がある。 (3)はエチレングリコール酸化によって得られるグリオキザールを強アルカリとカニッツァロ反応させてグリコール酸塩を形成した後、酸を加えてグリコール酸を遊離させる方法(例えば非特許文献1、2参照)であるが、カニッツァーロ反応が不均化反応であるので、副生成物が多量に生成され、生産性が低く不純物が多い。 (4)はエチレングリコール酸化によって得られるグリオキザールと水とを無機触媒の存在下で液相反応させる方法(例えば特許文献6参照)であるが、この方法では触媒として用いた金属塩の成分が反応生成液中に混入してしまうので、これを除去する必要がある。反応生成液から金属塩成分を除去する精製工程は、工業的製法としては複雑でかつ困難であり、この方法の大きな欠点となっている。 (5)はエチレングリコールを貴金属触媒及び酸素の存在下で接触酸化する方法(例えば特許文献7参照)であるが、白金等の資源的に高価で希少な貴金属を用いなければならないという問題点、反応時間が長く生産性が悪いという問題点、さらに酸化反応であるためにグリコール酸の選択率が低く、多くの種類の副生物を生じるという問題点がある。 (6)はエチレングリコールをメタノールと酸素によって酸化エステル化してグリコール酸メチルにしたのち加水分解してグリコール酸を製造する方法(例えば特許文献8参照)であるが、金等の資源的に高価で希少な貴金属を用いなければならないという問題点、酸化エステル化反応でのグリコール酸メチルの選択率が低く、多くの種類の副生物を生じるという問題点がある。 従来の製法には上述したような問題点がある。また特に、これらの製法によって得られたグリコール酸は、ポリグリコール酸の重合用モノマーとしては不十分である。 一方、グリコロニトリルの製造法としては、ホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを製造する方法(例えば特許文献9〜13参照)、アセトニトリルの酸化による方法(例えば特許文献14、15参照)等が知られている。これらの公知文献によれば、ホルムアルデヒドと青酸から得られたグリコロニトリルの用途としては、グリシンやヒダントインの原料が考えられている。 一方、グリコロニトリルを水溶媒の存在下に微生物による加水分解を行いグリコール酸アンモニウムを製造する方法も知られている(例えば特許文献16〜18等参照)。しかし、グリコロニトリルをいかに製造するかについては記載がない。 すなわち、グリコール酸の製造方法として、青酸を出発原料に用いる方法は知られていない。特開昭59―139341号公報米国特許第2,153,064号明細書特表平6−501268号公報特開昭62−77349号公報特開平9−67300号公報Chem.Ber.54,1395(1921)Acta Chem.Scand.10,311(1956).)特公平6−35420号公報特公昭60−10016号公報特開2004−43386号公報特開昭62−267257号公報特開昭53−68725号公報特開平6−135923号公報特公昭53−18015号公報特開昭51−100027号公報米国特許第4,634,789号明細書米国特許第4,515,732号明細書特表2005−504506号公報特開平9−28390号公報特開昭61−56086号公報 本発明の目的は、エネルギー消費量が少なく、製造工程も精製工程も簡易であるようなプロセスを提供すること、及び、グリコール酸の収率、グリコール酸生成の活性、グリコール酸の蓄積濃度が高く、しかも重合用の原料、化粧品、医薬品、清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤に適した優れた品質のグリコール酸の製造方法を提供することにある。またこのような製造方法で得られたグリコール酸を提供することにある。 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、第一工程としてホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを得、第二工程として該グリコロニトリルを加水分解して、直接グリコール酸を製造するか、又は、グリコール酸塩を経てグリコール酸を製造することにより、エネルギー消費量が少なく、製造工程や精製工程が簡易なグリコール酸製造プロセスを提供できることを見出した。 そして、このような第一工程、第二工程を含む製造方法において、第一工程から第二工程までを連続した工程として行うか、又は、第一工程で得られたグリコロニトリルを、pH4以下で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行うことにより、グリコール酸の収率、グリコール酸生成の活性、グリコール酸の蓄積濃度が向上し、得られるグリコール酸の純度や重合用原料としての品質が向上することを見出し、本発明をなすに至った。 すなわち、本発明の第一の態様は、 グリコール酸の製造方法であって、第一工程としてホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを製造し、第二工程として、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いて、前記グリコロニトリルを加水分解することによりグリコール酸塩を製造し、次いで、第三工程として、グリコール酸塩からグリコール酸を製造し、第一工程から第二工程までを連続した工程として行うグリコール酸の製造方法である。 また、本発明の第二の態様は、 グリコール酸の製造方法であって、第一工程としてホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを製造し、第二工程として、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いて、前記グリコロニトリルを加水分解することによりグリコール酸塩を製造し、次いで、第三工程として、グリコール酸塩からグリコール酸を製造し、第一工程で得られたグリコロニトリルをpH3〜4で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行うグリコール酸の製造方法である。 本発明の方法によれば、エネルギー消費量が少なく、簡易な製造工程、精製工程によって、グリコール酸を製造方法することができる。 また、本発明の方法は、グリコール酸生成の活性、グリコール酸の収率、グリコール酸の蓄積濃度が高く、しかも、純度が高く優れた品質のグリコール酸を製造することができる。本発明の方法を用いてグリコール酸を製造するための製造装置の一例の概略図 以下、本願発明について具体的に説明する。 第一工程を説明する。 第一工程においては、例えば、攪拌槽流通方式の青酸吸収槽にて、ホルムアルデヒド水溶液に青酸を吸収させてもよいし、青酸吸収槽で純水に青酸を吸収させ青酸水溶液としたのち、ホルムアルデヒド水溶液と混合させてもよい。 青酸とホルムアルデヒドの供給モル比は、青酸(シアン化水素酸)に対してホルムアルデヒドが0.5〜2の範囲が好ましい。より好ましくは、0.8〜1.2であり、さらに好ましくは0.95〜1.05、特に好ましくは0.98〜1.0である。 第一工程の反応に触媒を用いてもよい。触媒として、アルカリ金属の水溶性塩を例示できる。この水溶性塩としては、アルカリ金属の水酸化物、ハロゲン化物、亜硫酸塩、酸性亜硫酸塩、硫酸塩、蟻酸塩等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、亜硫酸塩及び蟻酸塩であり、より好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。これらの触媒は予め水溶液としておき、青酸吸収槽内で青酸吸収水やホルムアルデヒド水溶液に加えてもよい。 触媒添加量は、金属として青酸供給量に対する重量比として50〜5000ppmの範囲が好ましく、より好ましくは100〜600ppmの範囲であり、さらに好ましくは、200〜300ppmの範囲である。 第一工程であるグリコロニトリル合成反応での反応器型式は、攪拌槽流通方式、流通方式管型反応方式、及びこれらを組み合わせた方法を例示することができる。好ましくは、第一段の反応器として攪拌槽流通方式、第二段の反応器として流通方式管型反応器を設けた型式である。 反応時間は、添加する触媒量と反応温度との兼ね合いであるが、撹拌槽流通方式では、好ましくは10〜300分、より好ましくは10〜50分、さらに好ましくは15〜40分の範囲である。流通方式管型反応器では、好ましくは10〜300分、より好ましくは、10〜50分、さらに好ましくは15〜40分の範囲である。 反応温度は、上記の触媒添加量及び反応時間との兼ね合いであるが、30〜80℃の範囲が好ましく、より好ましくは、40〜70℃の範囲であり、さらに好ましくは45〜60℃の範囲である。 操作圧力は、好ましくは0〜1.0MPa/G、より好ましくは0.1〜0.8MPa/Gの範囲である(/Gはゲージ圧を意味する)。 次に、第二工程について説明する。 第二工程である加水分解の方法としては、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いる方法、酸性水溶液を用いる方法、アルカリ金属水溶液を用いる方法などを例示できる。好ましくはニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いる方法である。 ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いる方法としては、微生物又は微生物処理物(微生物の破砕物、微生物破砕物より分離した酵素、固定化した微生物又は微生物から分離抽出された酵素を固定化した処理物)の懸濁水溶液に、第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液を添加する方法、微生物又は微生物処理物の懸濁水溶液を該グリコロニトリル水溶液に添加する方法、又は、微生物又は微生物処理物を公知の方法で固定化してこれにグリコロニトリル水溶液を流通する方法等が挙げられ、これにより、速やかにグリコロニトリルの加水分解反応を行いグリコール酸を得ることができる。 前記微生物又は微生物処理物を、例えば、乾燥微生物換算で0.01〜5重量%、グリコロニトリルを1〜40重量%程度になるように反応装置に仕込み、温度として例えば0〜60℃、好ましくは10〜50℃にて、反応時間を、例えば、1〜100時間、好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは4〜15時間反応させればよい。 グリコロニトリルを低濃度で仕込み、経時的に追加添加したり、反応温度を経時的に変化させてもよい。pHコントロールのために反応前に緩衝液を添加したり、反応中に酸又はアルカリを添加することもできる。 ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を産生する微生物としては、例えば、アシネトバクター(Acinetobacter)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、アルカリゲネ(Alcaligenes)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、キャンディダ(Candida)属に属する微生物が適しているが、これらに限定されるものではない。 好ましくは、アシネトバクター(Acinetobacter)属であり、アシネトバクター属によって産生された微生物酵素は著しく高い加水分解活性を有している。 具体的には、旭化成ケミカルズ株式会社(日本国東京都千代田区有楽町1丁目1番2号)により寄託された以下の菌株が挙げられる。(1)日本国、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に2004年1月7日(原寄託日)に寄託した受託番号FERM BP−08590のアシネトバクター sp.AK226株、(2)日本国、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に2004年1月7日(原寄託日)に寄託した受託番号FERM BP−08591のアシネトバクター sp.AK227株、 アシネトバクター属の微生物から産生された微生物酵素は、グリコール酸生成の平均活性(=(グリコール酸及びグリコール酸塩の生成重量)/(菌体の乾燥重量×反応時間))やグリコール酸の蓄積濃度(=反応器中のグリコール酸濃度)が高く、これを用いて得られるグリコール酸の純度が高いため、優れた微生物酵素である。 得られたグリコール酸塩と微生物の混合物から微生物や微生物由来のタンパク質等の高分子不純物を除去しグリコール酸塩水溶液を製造する方法としては、例えば、遠心濾過、精密濾過膜(MF)分離や限外濾過膜(UF)分離を単独、又は組み合わせて実施することができる。また、分離した微生物を再利用することもできる。 酸性水溶液を用いる方法としては、硫酸水溶液、塩酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、有機酸水溶液などを用いることができる。好ましくは、硫酸水溶液である。 酸とグリコロニトリルのモル比は、グリコロニトリルに対して、酸は、好ましくは、0.5〜4、より好ましくは1〜2の範囲であり、さらに好ましくは、1.05〜1.5の範囲である。 反応時間は、反応温度との兼ね合いであるが、好ましくは、0.1〜200時間、より好ましくは、1〜50時間、さらに好ましくは、3〜30時間の範囲である。反応温度は、好ましくは35〜100℃、より好ましくは、40〜90℃の範囲、さらに好ましくは、50〜80℃の範囲である。操作圧力は、好ましくは0〜1.0MPa/G、より好ましくは0.1〜0.8MPa/Gの範囲である。 アルカリ金属水溶液を用いる方法としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などを用いることができる。好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液である。 アルカリとグリコロニトリルのモル比は、グリコロニトリルに対して、アルカリ金属は、好ましくは、0.5〜4、より好ましくは1〜1.3の範囲であり、さらに好ましくは、1.05〜1.5の範囲である。 反応時間は、反応温度との兼ね合いであるが、好ましくは、0.1〜50時間、より好ましくは、0.3〜10時間、さらに好ましくは、0.5〜5時間の範囲である。反応温度は、好ましくは35〜100℃、より好ましくは、40〜90℃の範囲、さらに好ましくは、50〜80℃の範囲である。操作圧力は、好ましくは0〜1.0MPa/G、より好ましくは0.1〜0.8MPa/Gの範囲である。 加水分解反応での反応器型式は、攪拌槽流通方式、流通方式管型反応方式、及びこれらを組み合わせた方法を例示することができる。好ましくは、第一段の反応器として攪拌槽流通方式、第二段の反応器として流通方式管型反応器を設けた型式である。 次に、「第一工程から第二工程までを連続した工程として行う」ことについて説明する。 本発明のひとつの態様においては、第一工程から第二工程までを連続した工程として行う。ここで、第一工程から第二工程までを連続した工程として行うとは、グリコロニトリル合成反応の終了後、合成したグリコロニトリルを第二工程の加水分解に供するまでの期間が10日以内であることをいう。 連続した工程で行うための具体的な方法としては、第一工程から第二工程を連続プロセスとする方法、第一工程で得られたグリコロニトリルを一時的にタンク等に保管したのち第二工程に供する方法、及びこれらを併用する方法等が例示できる。 好ましくは第一工程から第二工程を連続プロセスとする方法である。 グリコロニトリル合成反応の終了後、合成したグリコロニトリルを第二工程の加水分解に供するまでの期間は、好ましくは5日以内、より好ましくは1日以内である。 この期間が10日を越えると、第二工程、第三工程でのグリコール酸の収率が低下し、さらにグリコール酸の品質に大きく影響する。とりわけ着色性物質の生成や重合成の低下に関連する品質の低下につながる。 グリコロニトリル合成反応の終了後、合成したグリコロニトリルを第二工程の加水分解に供するまでの期間のグリコロニトリルの保管温度は、30℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。 次に、「第一工程で得られたグリコロにトリルをpH4以下で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行う」ことについて説明する。 本発明の別の態様においては、第一工程で得られたグリコロニトリルをpH4以下で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行う。第二工程の加水分解反応は、pH6〜8で行うことが好ましい。 第一工程で得られたグリコロニトリルを長期間保管した後、第二工程、第三工程を行うと、グリコール酸の収率が低下し、さらに得られるグリコール酸の品質が低下するが、第一工程で得られたグリコロニトリルをpH4以下で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行うことによって、グリコール酸生成の活性、グリコール酸の収率、グリコール酸の蓄積濃度が高く、さらに品質の高いグリコール酸を得ることができる。 第一工程で得られたグリコロニトリルをpH4以下で保管し、第二工程の加水分解反応をpH4以下のまま行うと、グリコール酸生成の活性が低い。 また、第一工程で得られたグリコロニトリルをpH4以上で10日間以上保管し、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行うと、グリコール酸の収率が低下し、さらに得られるグリコール酸の品質が大きく低下する。 次に、第三工程について説明する。 第三工程は、第二工程での生成物がグリコール酸塩として得られる場合に必要となる工程であり、具体的には、加水分解の方法として、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いる方法、アルカリ金属水溶液を用いる方法を採用した場合等に必要となることが多い。 第三工程であるグリコール酸塩からグリコール酸を製造する方法としては、水素イオン型の陽イオン交換樹脂にグリコール酸塩の水溶液を接触させる方法、グリコール酸塩を一度エステルに変換させてからエステルを分離後、加水分解によりグリコール酸を得る方法、電気透析法等を用いることができる。電気透析法が塩等の廃棄物量が少ないので好ましい。 水素イオン型の陽イオン交換樹脂を用いる方法においては、陽イオン交換樹脂としては、弱酸性陽イオン交換樹脂や強酸性陽イオン交換樹脂を用いることができる。陽イオン交換樹脂の再生には硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができるが、硫酸を用いるのが好ましい。なお、これらの樹脂を初めて使用する場合には、樹脂の前処理と水洗を充分に行っておくことが好ましい。樹脂の前処理は酸と塩基で交互に洗浄すること等によって行われる。 陽イオン交換樹脂処理の時間は、バッチ式の場合、好ましくは3〜60分間、より好ましくは6〜30分である。連続式で処理する場合、樹脂塔への通液速度は液空間速度((L/Hr)/L−樹脂)で好ましくは0.1〜100の範囲、より好ましくは1〜10の範囲である。 温度は、好ましくは5〜70℃、より好ましくは20〜50℃の範囲である。 陽イオン交換樹脂の再生は、硫酸等の酸を陽イオン交換樹脂に通液し、液中に残る酸を純水で押し出すこと等によって行うことができる。 グリコール酸塩を一度エステルに変換させてからエステルを分離後、加水分解によりグリコール酸を得る方法は公知の方法を用いることができる。 電気透析法としては、バイポーラ膜と陰イオン交換膜又は陽イオン交換膜を使用する二室式電気透析法、バイポーラ膜と陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を使用する三室式電気透析法等が挙げられる。 電気透析装置の電極は、公知のものが何ら制限なく使用できる。即ち、陽極としては、白金、チタン/白金、カーボン、ニッケル、ルテニウム/チタン、イリジウム/チタン等、陰極としては、鉄、ニッケル、白金、チタン/白金、カーボン、ステンレス鋼等を例示できる。 バイポーラ膜も特に限定されず、従来より公知のバイポーラ膜、即ち、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が貼合わさった構造をした公知のバイポーラ膜等を使用できる。バイポーラ膜を構成する陽イオン交換膜の陽イオン交換基は特に限定されず、スルホン酸基、カルボン酸基等を使用できるが、好ましくはスルホン酸基である。陰イオン交換膜の陰イオン交換基も特に限定されず、アンモニウム塩基、ピリジニウム塩基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基等のイオン交換基が使用できるが、好ましくはアンモニウム塩基である。 陽イオン交換膜も特に限定されず、公知の陽イオン交換膜を用いることができる。例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、さらにこれらのイオン交換基が複数混在した陽イオン交換膜等を使用できる。 陰イオン交換膜も特に限定されず、公知の陰イオン交換膜を用いることができる。例えば、アンモニウム塩基、ピリジニウム塩基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基等のイオン交換基、さらにこれらのイオン交換基が複数混在した陽イオン交換膜等を使用できる。 電気透析時の温度は、好ましくは5〜70℃、より好ましくは20〜50℃の範囲である。また、電流密度は、特に制限を受けないが、好ましくは0.1〜100A/dm2、より好ましくは、2〜20A/dm2である。イオン交換膜の膜間隔は、一般的に適用されている間隔でよく、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.05〜1.50mmの範囲である。 次に、本発明に用いる原料について説明する。 まず、本発明における反応原料であるホルムアルデヒドは、通常、ホルマリンとして供給し得る。 本発明における反応原料である青酸は、気体、液体、水溶液等任意な形態で供給し得る。工業的に製造される青酸は、一般的に安定剤として、二酸化硫黄、酢酸等が添加されている。また不純物としてアクリロニトリルが含まれている。 本発明のグリコール酸の製造方法においては、副生成物の低減、製造するグリコール酸の着色の防止及び製造するグリコール酸を重合用原料とする場合の品質向上の観点から、これらの添加物や不純物の含有量がそれぞれ5000ppm以下である青酸を用いることが好ましい。より好ましくは2000ppm以下である。 アクリロニトリルは、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。 酢酸は好ましくは2000ppm以下であり、もっと好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。また酢酸は50ppm以上が好ましい。 二酸化硫黄は、好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下である。また二酸化硫黄は50ppm以上が好ましい。 二酸化硫黄、酢酸、アクリロニトリルの合計の含有量が5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは2000ppm以下であり、さらに好ましくは1000ppm以下であり、特に好ましくは500ppm以下である。 以上の原料と方法によって得られたグリコール酸は、そのまま製品としても用いることができるが、精密濾過膜(MF)分離や限外濾過膜(UF)、活性炭等の吸着剤、又は陰イオン交換樹脂を単独又はこれらを組み合わせて精製することができる。さらに水を蒸発させ濃縮しグリコール酸を製造することができる。 このようにして得られたグリコール酸(又はグリコール酸水溶液)は、重合用の原料、化粧品、医薬品、清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤等に、特には重合用の原料として用いることができる。重合用の原料とは、そのまま重合させるための原料、グリコリドを製造するための原料、オリゴマーを経由してグリコリドを製造するための原料等、最終的に重合物として使用される、ということを意味する。重合は単独重合であっても、乳酸等分子内に水酸基とカルボキシル基を含有する化合物との共重合であってもよい。 実施例、比較例の第二工程であるグリコロニトリルの加水分解には、アシネトバクターsp.AK226株を用いた(以下AK226と略称する)。AK226は平成16年1月7日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号)に寄託され受託番号FERM BP−08590を付与されている。 AK226株の培養条件は下記のとおりである。培地は、フマル酸を1.0重量%、肉エキスを1.0重量%、ペプトンを1.0重量%、食塩を0.1重量%、ε−カプロラクタムを0.3重量%、リン酸第一カリウムを0.2重量%、硫酸マグネシウム・7水塩を0.02重量%、塩化アンモニウムを0.1重量%、硫酸第二鉄・7水塩を0.003重量%、塩化マンガン・4水塩を0.002重量%、塩化コバルト・6水塩を0.002重量%になるように蒸留水に溶解させた。pHを7.5であった。培養は30℃で1日行った。[実施例1]<第一工程> 図1に示す反応装置を用いて、グリコール酸合成反応を行った。 第一工程は反応器1〜2においてグリコロニトリルを合成する工程である。反応器1において青酸を青酸水溶液とし、反応器2においてシアンヒドリン化反応によって、グリコロニトリルが生成する。 反応器1は、攪拌器を備えた内容積200mLのジャケット式ステンレス製オートクレーブである。ポンプP−1により純水3を56.2(g/hr)の供給速度で、ポンプP−2により青酸4を44.4(g/hr)の供給速度で反応器1に供給し、青酸水溶液とした。ここで用いた青酸の純度は99.5重量%であり、不純物としては酢酸を600ppm、二酸化硫黄を300ppm、アクリロニトリル2000ppmを含んでいた。反応器1の温度は17℃に設定した。 反応器2は内容積120mLのジャケット式蛇管型反応器であり、反応器2のジャケットには47℃の温水を循環させた。反応器1で得られた青酸水溶液は、ポンプP−3によって反応器2へ送液された。ポンプP−3は液面計の作動によりホールドアップ60mLに保つように作動する。 一方、ポンプP−4により37.1wt%ホルムアルデヒド水溶液5(和光純薬試薬特級)を132.4(g/hr)の供給速度で、ポンプP−5により0.05wt%水酸化ナトリウム水溶液6を44.4(g/hr)の供給速度で反応器2に供給し、反応器2の入り口で青酸水溶液、ホルムアルデヒド水溶液5、水酸化ナトリウム水溶液5を混合した。反応器2の出口には背圧弁7が設置され、系内圧を0.5MPa/Gに保持した。反応器2での滞留時間は26分であった。1時間通液させ、後半の30分の液をサンプリングし、138gのグリコロニトル水溶液8を得た。ガスクロマトグラフィーで分析したところ水溶液中のグリコロニトル含有量は33.5重量%であり、グリコロニトリルの収率は99.5%であった。<第二工程> 予めAK226を培養液から遠心分離により集菌し、蒸留水で3回洗浄しておき、洗浄した微生物に蒸留水を加え、乾燥微生物重量換算で18.0重量%の微生物の懸濁液を準備しておいた。窒素ガスで置換した400mlの硝子オートクレーブに、微生物の懸濁液6gを加え、第一工程で得られた33.5重量%グリコロニトリル水溶液100gと蒸留水100gの混合液を5時間かけてフィードした。反応はpH=7、反応温度40℃にて行った。第一工程で得られたグリコロニトル水溶液を得てから第二工程用にフィード開始するまでの時間は約30分であった。反応を12時間(フィード時間5時間、フィード終了後7時間)行ったのち、10,000rpmで15分間冷却遠心分離に付して微生物を分離し、上澄みを回収した。回収した上澄みを加圧下で限外濾過フィルターに通し、残存する微生物やタンパク質を取り除いて反応液を得た。<第三工程> 弱酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIRC−76(H型)(オルガノ(株))1000mlを充填した樹脂塔に純水を通液し、続いて第二工程で得られた反応液100gを純水100gで希釈した水溶液を通液し、続いて2000gの純水を通液してグリコール酸水溶液を回収した。操作温度は25℃、通液の体積速度は2.5(L/Hr)で行った。液空間速度は2.5((L/Hr)/L−樹脂)と計算される。 高速液体クロマトグラフィー(島津LC−10、カラムShodex RSPak KC−811、UV検出器(波長210nm)、溶離液0.75%リン酸水溶液、溶離液供給速度1ml/min、分析時間90分)による分析の結果、得られたグリコール酸の収率は、グリコロニトリルを基準として99%であり、また、品質指標(=(グリコール酸以外のピーク面積合計)/(グリコール酸ピーク面積))は0.007であり、無着色であった。[実施例2] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液を、その製造から1日後に第二工程に仕込んだ以外は、実施例1と同様に操作を行った。グリコール酸の収率はグリコロニトリルを基準として99%であり、また、品質指標は0.008であり、無着色であった。[実施例3] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液を、その製造から3日後に第二工程に仕込んだ以外は、実施例1と同様に操作を行った。グリコール酸の収率はグリコロニトリルを基準として98%であり、また、品質指標は0.013であり、無着色であった。[実施例4] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液を、−10℃まで冷却して7日間保存した後、第二工程に仕込んだ以外は、実施例1と同様に操作を行った。グリコール酸の収率はグリコロニトリルを基準として99%であり、また、品質指標は0.010であり、無着色であった。[実施例5] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液に硫酸を加えてpHを3にし、3ヶ月保存した後、保存したグリコロニトリル水溶液に水酸化ナトリウムを添加してpH7にした以外は、実施例1と同様に操作を行った。グリコール酸の収率はグリコロニトリルを基準として99%であり、また、品質指標は0.007であり、無着色であった。[比較例1] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液、その製造から3ヶ月後に第二工程に仕込んだ以外は、実施例1と同様に操作を行った。 グリコール酸の収率はグリコロニトリルを基準として10%であり著しく着色していた。[比較例2] 第一工程で得られたグリコロニトリル水溶液に硫酸を加えてpHを3にし、3ヶ月保存した後、保存したグリコロニトリル水溶液をそのまま使用した以外は、実施例1と同様に操作を行った。グリコロニトリルの転化率は5%であり、グリコロニトリルの加水分解はほとんど進行しなかった。 本発明は、エネルギー消費量が少なく、製造工程も精製工程も簡易であるグリコール酸の製造方法であり、本発明の製造方法によれば、グリコール酸の収率、グリコール酸生成の活性、グリコール酸の蓄積濃度が高く、かつ優れた品質のグリコール酸を製造できる。本発明の製造方法で得られたグリコール酸は、重合用の原料、化粧品、医薬品、清缶剤、洗浄剤、皮革なめし剤、金属イオンのキレート剤等として有用である。 グリコール酸の製造方法であって、 第一工程としてホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを製造し、 第二工程として、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いて、前記グリコロニトリルを加水分解することによりグリコール酸塩を製造し、次いで、 第三工程として、グリコール酸塩からグリコール酸を製造し、 第一工程から第二工程までを連続した工程として行うグリコール酸の製造方法。 グリコール酸の製造方法であって、 第一工程としてホルムアルデヒドと青酸からグリコロニトリルを製造し、 第二工程として、ニトリル基の加水分解活性を有する微生物酵素を用いて、前記グリコロニトリルを加水分解することによりグリコール酸塩を製造し、次いで、 第三工程として、グリコール酸塩からグリコール酸を製造し、 第一工程で得られたグリコロニトリルをpH3〜4で保管し、かつ、第二工程の加水分解反応をpH5〜9で行うグリコール酸の製造方法。 前記微生物酵素が、アシネトバクター(Acinetobacter)属によって産出された微生物酵素である請求項1または2に記載のグリコール酸の製造方法。 アクリロニトリル、酢酸、二酸化硫黄の含有量がそれぞれ5000ppm以下である青酸を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリコール酸の製造方法。 前記第三工程が、水素イオン型の陽イオン交換樹脂に接触させる方法、又は電気透析法によって行われる、請求項1〜4いずれか1項に記載のグリコール酸の製造方法。


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