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タイトル:特許公報(B2)_液体クロマトグラフィー用担体、該担体を充填したクロマトグラフィー用カラム、及び該カラムを用いた有機物の分離方法
出願番号:2007516261
年次:2011
IPC分類:G01N 30/88


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沼田 雅彦 青柳 嘉枝 津田 葉子 JP 4677623 特許公報(B2) 20110210 2007516261 20060512 液体クロマトグラフィー用担体、該担体を充填したクロマトグラフィー用カラム、及び該カラムを用いた有機物の分離方法 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 沼田 雅彦 青柳 嘉枝 津田 葉子 JP 2005142950 20050516 JP 2006039786 20060216 20110427 G01N 30/88 20060101AFI20110407BHJP JPG01N30/88 201XG01N30/88 CG01N30/88 101MG01N30/88 101PG01N30/88 101EG01N30/88 101KG01N30/88 201GG01N30/88 XG01N30/88 M G01N 30/88 B01J 20/281 CAplus(STN) JSTPlus(JDreamII) JST7580(JDreamII) 特開平07−291922(JP,A) 特開昭63−010604(JP,A) 特開2003−114222(JP,A) Sabine Werlich, and Jan T.Andersson,Characterization of some functionalized RP-HPLC phases by the use of linear solvation energy relationships,Fresenius' Journal of Analytical Chemistry,1999年 5月,Vol.364, No.1/2,P.3-14 Jan T.Andersson, and Gunyer Kaiser,How To Freely Change the Polarity of the Stationary Phase in a Liquid Chromatographic Column,Analytical Chemistry,1997年 2月15日,Vol.69, No.4,P.636-642 10 JP2006309533 20060512 WO2006123576 20061123 12 20071010 河野 隆一朗 本発明は、芳香族化合物をはじめとする有機化合物の分離に好適に用いられる液体クロマトグラフィー用担体、該担体を充填したクロマトグラフィー用カラム、及び該カラムを使用する有機化合物の分離方法に関する。 芳香族環を持つ有機化合物には、発ガン性を示すベンゾピレンなどの多環芳香族炭化水素(PAH)や揮発性で大気汚染物質として知られるベンゼン・トルエン類など様々な環境汚染物質が知られており、それらについて環境中の濃度を適宜監視する必要があるが、その精確な分析は一般に容易ではない。 重要な汚染物質であり、やはり芳香族化合物であるポリクロロビフェニル(PCB)を例にして説明すると、排水・廃油・食品など様々な媒質に含まれるPCBを物理・化学的性質の類似した鉱物油などの油分などと分離することは一般に困難であって、しばしばそれら妨害物質の混入が定量操作に用いるガスクロマトグラフィー装置の汚損やPCB分析精度の低下の原因となる。そこで通常はPCBを試料マトリックスからある程度分離してからガスクロマトグラフィーにかける必要がある。 例えば絶縁油中のPCBの公定分析法である「特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」(平成4年厚生省告示第192号、改正平成10年8月第222号)や工業廃水などの公定分析法であるJIS K0093などでは、極性溶媒であるジメチルスルホキシドによってPCBを大部分の油分より抽出分離する、強酸である濃硫酸や発煙硫酸、あるいは強アルカリである水酸化カリウムによって妨害物質を分解除去する、シリカゲル・アルミナなどの充填剤を用いたクロマトグラフィーにより各成分を相互に分離するなどといった方法が規定されているほか、近年はゲル浸透クロマトグラフィーを用いた分離操作も開発されている(非特許文献1参照)。環境化学、2003、[13]、P1033 しかし、極性溶媒・強酸・アルカリなどを用いた液−液抽出法は、その操作が煩雑な上に、有害性の高い試薬を比較的大量に扱う必要のあることが問題であった。 一方、クロマトグラフィーは物質を相互に分離する手段として信頼性が高く、操作法も比較的簡便であり、PCB等分離の目的では上述のシリカゲル・アルミナなどの他、シリカゲル表面をアミノプロピル基・シアノ基等で修飾したものなど、表面が親水性の担体を用いたいわゆる順相カラムを用い、ヘキサン等の非〜微極性溶媒を移動相とする方法が広く行われている(例えば、非特許文献2、特許文献1参照)。Fresenius Journal of Analytical Chemistry, 1993, [346], P766特開2003−114222号公報 しかしこれら順相クロマトグラフィー、あるいは前述したゲル浸透クロマトグラフィー、いずれの方法においても十分な分離を行うためには一般に長大なカラムを用いて大量の有機溶媒による溶出を行わねばならず、作業の効率やコスト、作業者の安全や環境面で改善の余地があるといえる。 したがって、本発明は上記のような従来技術の問題点を解消して、少量の担体および有機溶媒でPCB等の芳香族化合物を他の物質から特異的かつ迅速に回収できるクロマトグラフィー担体、該担体を充填したクロマトグラフィー用カラム、及び該カラムを使用した効率的なPCB等の有機化合物の分離法を提供することを目的とする。 本発明者等は鋭意検討した結果、スルホキシド基を含有する有機基を、有機溶媒に不溶性の支持体に共有結合又はイオン結合により直接固定して、クロマトグラフィー担体を構成することによって上記課題が解決されることを発見し、本発明を構成したものである。 すなわち、本発明は次の1〜11の構成を採用するものである。1.次の一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、有機溶媒に不溶性の支持体に共有結合又はイオン結合により直接固定したことを特徴とするクロマトグラフィー用担体: R1−SO−R2− (1)(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す。)2.クロマトグラフィー用担体が、芳香族化合物用のクロマトグラフィー用担体であることを特徴とする1に記載のクロマトグラフィー用担体。3.上記一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、イミン結合、アミド結合又はエステル結合、又はシロキサン結合を介して支持体に固定したことを特徴とする1又は2に記載のクロマトグラフィー用担体。4.支持体が、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、チタニア及びシリカゲルからなる群から選択された多孔質粒子であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のクロマトグラフィー用担体。5.支持体である多孔質粒子の粒径が5〜200μmで、比表面積が100〜700m2/gであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のクロマトグラフィー用担体。6.上記一般式(1)で表されるスルホキシド基の含有量が、0.2〜2.5mmol/g−支持体であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載のクロマトグラフィー用担体。7.カラムに1〜6のいずれかに記載されたクロマトグラフィー用担体を充填したことを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。8.7に記載されたクロマトグラフィー用カラムに、芳香族化合物を含有する試料を添加し、非極性溶媒により芳香族化合物以外の成分を溶出した後に、引き続き非極性溶媒により、或いは極性溶媒を含む溶媒により芳香族化合物を溶出させることを特徴とする芳香族化合物の分離方法。9.芳香族化合物がハロゲン化芳香族化合物であることを特徴とする8に記載の芳香族化合物の分離方法。10.ハロゲン化芳香族化合物がポリクロロビフェニルであることを特徴とする9に記載の芳香族化合物の分離方法。11.芳香族化合物が多環芳香族炭化水素であることを特徴とする8に記載の芳香族化合物の分離方法。 本発明によれば、長大なカラムや大量の有機溶媒による溶出を必要とせずに、少量の担体及び有機溶媒でPCBやPAH等の芳香族化合物を他の物質から特異的かつ迅速に回収できるクロマトグラフィー用担体を得ることができる。また、このクロマトグラフィー用担体を充填したカラムを使用することにより、PCBやPAHなどの芳香族化合物を効率良く分離することができる。実施例2における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。実施例4における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。比較例1における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。実施例10における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。実施例12における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPAHの回収率を示すグラフである。実施例13における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。実施例14における分離カラムからの溶出に用いた溶媒の量と溶出した油分およびPCBの回収率を示すグラフである。 本発明では、次の一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、有機溶媒に不溶性の支持体に共有結合又はイオン結合により直接固定することによりクロマトグラフィー用担体を構成する。 R1−SO−R2− (1)(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表す。) 上記一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、有機溶媒に不溶性の支持体に固定するには、例えば下記の一般式(2)で表される、SOに炭素数1〜3程度のアルキル基(R1)と脂肪族ないし芳香族の炭化水素骨格(R2)が結合し、さらにR2には水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ホルミル基、クロロシリル基、アルコキシシリル基など、支持体に結合する際に必要な官能基Xを1つ以上有する、スルホキシド化合物を使用することができる。 R1−SO−R2−X (2)(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、そしてXは水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ホルミル基、クロロシリル基又はアルコキシシリル基を表す。) なお、上記式中のR2としては、炭素数が1〜10の脂肪族又は芳香族炭化水素基を用いることが好ましい。特に好ましいR2としては、炭素数が1〜4の脂肪族炭化水素又はベンジル基が挙げあられる。R2の炭素数が大きすぎる場合には、疎水性相互作用により脂肪族炭化水素などもまた本担体に保持されることになり、分離効率の低下をもたらす。 スルホキシド基をもつこれらの化合物を入手しがたい場合には、相当するスルフィド化合物を1.0〜1.2倍程度のモル数の過酸化水素あるいは過ヨウ素酸塩など適当な酸化剤によって支持体に結合する前あるいは後に酸化することにより、スルホキシドに変換するようにしてもよい。 本発明における溶媒に不溶な支持体としては、上記の官能基と結合可能な官能基を有するものであれば特に制限はないが、スルホキシド基を支持体に高密度に結合させて分離すべき物質とスルホキシド基を十分に相互作用させると同時に、移動相の流れの乱れを抑えて物質間の分離をより良好なものとするためには、多孔質の球状粒子を使用するのが最も望ましい。たとえばこの目的に、ポリスチレン、ポリビニルアルコールなどの有機高分子や、シリカゲルなどの無機物質など、さらにそれらの表面を化学的に修飾して必要な官能基を導入したものなどを用いることができる。 本発明では、上記のスルホキシド化合物を、適宜に公知の反応を適用することにより共有結合あるいはイオン結合を介して、支持体に直接固定することで、クロマトグラフィー用担体を調製することができる。 このような反応を例示すれば、例えばアミノ基とホルミル基は直接反応し、脱水縮合によってイミンとして相互に結合する。また、カルボキシル基は塩化チオニル、カルボジイミドなどにより活性化され、アミノ基、水酸基とアミド結合またはエステル結合を形成する。その他にクロロシリルまたはアルキルシリル基と支持体であるシリカゲル表面の水酸基との縮合、あるいは1〜4級アミンとカルボキシル基またはスルホン基との間のイオン結合などを利用して固定を行うことができる。 本発明によって得られる、側鎖にスルホキシド基を有するクロマトグラフィー用担体は、通常のオープンカラムを利用した液体クロマトグラフィー、耐圧性のカラムに充填してポンプにより移動相を高圧で送液することで迅速な分離を可能とする高速液体クロマトグラフィー、また小型のカートリッジ等に充填して取り扱いを簡便にしたいわゆる固相抽出などに適用することができ、それぞれPCB等の分離操作に用いることができる。 本発明の分離方法は、上記の本発明により得られる担体を充填したカラムに、例えばPCB等の芳香族化合物を含む試料を添加した後に、ヘキサン等の非極性溶媒を加えることで鉱物油などのおもに脂肪族化合物からなる成分を溶出させ、しかる後に溶媒による溶出を継続して芳香族化合物を回収し、相互の分離を行うという過程からなる。 その際、芳香族化合物の溶出には引き続き非極性溶媒を用いてもかまわないが、アセトンなどの極性溶媒、あるいは極性溶媒と非極性溶媒の適当な混合物により溶出を行えばより迅速な回収が可能である。 従来のシリカゲルやアミノ基修飾シリカゲル等は、芳香族化合物に対する特異性があまり大きくないために、PCB等と他の物質との十分な分離を行うためには長大なカラムを用いて、大量の有機溶媒による溶出を行わなければならなかった。これに対して、スルホキシド基はベンゼン環と特異的な相互作用をするために、PCB等の芳香族化合物はスルホキシド基を持つ本発明の担体に保持されやすく、従って大部分の夾雑物に比べて遅く溶出されるので、より効率のよい分離を実施することが可能となる。さらに分離条件を選べば、該クロマトグラフィー担体は化合物群のおおまかな分画だけではなく、個別の有機化合物の相互分離にも利用することが可能である。 なお、本発明の担体を用いたクロマトグラフィーの前に、シリカゲル等を充填した短いカラムないしカートリッジに試料を通過させることで、これらの担体に非可逆的に吸着する成分をあらかじめ除くことができる。そのような前処理を施した試料を用いれば、本発明の担体は分離操作後にアセトンなどの極性溶媒およびヘキサンなどの非極性溶媒によって洗浄再生し反復使用することが可能となり、コストの低減を図ることができる。 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。(実施例1) 3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(CH3-S-(CH2)2-CHO)25gをアミノプロピル化シリカゲル(粒径約0.02〜0.1mm、細孔径54Å、比表面積521m2/g、アミノ基密度3.1μmol/m2)25gに加え、0℃で3時間反応させてイミンとして結合させた。これをメタノールで十分洗浄した後に、真空乾燥して得られた担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して1.4mmol固定化されていることが確かめられた。そこで、この担体10gに対し0.05Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液29mLを加え、0℃で24時間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これを純水及びアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルホキシドで修飾された担体を得た。この担体2.5gを内径10mmのガラスカラム(フッ素樹脂コック付き)にアセトンを用いて湿式充填し、PCB分離用カラムとした。(実施例2) 約4ppmのPCB混合物(カネカ社製、カネクロール300,400,500,600の1:1:1:1混合物)を含む鉱物油(変圧器用絶縁油)0.25mLを、0.3gのシリカゲルを充填した小型カラム(内径8.5mm)に加え、シリカゲルに非可逆的に吸着する成分を吸着させた後に、8mLのヘキサンで溶出した。つぎに、溶出液を0.2mLにまで窒素気流で濃縮し、これを上記実施例1で得られたPCB分離用カラムに加えて、ヘキサン6mL、引き続いてヘキサン/アセトン混合液(体積比4:1)によって溶出させ、鉱物油とPCBの分離を行った。 溶出液を適当量に分けて回収し、蒸発残留成分の重量から鉱物油の回収率を、各溶出液を一定量に濃縮しガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC/MS)に注入して得られた各PCB同族体のピーク面積からPCBの回収率をそれぞれ求めて溶出パターンを作成し、図1に示した。図1から明らかなように、PCBと鉱物油との分離は良好であり、クロマトグラム上でも油分によるPCB同族体ピークへの妨害は確認できなかった。(実施例3) 実施例1で使用したアミノプロピル化シリカゲル15gを冷却管の付いた4つ口フラスコに入れ、150mLの無水テトラヒドロフランと5gのトリエチルアミンを加えた。窒素雰囲気下、内容物を撹拌しつつ、3−(メチルチオ)プロピオン酸クロリド(CH3-S-(CH2)2-COCl)5gを滴下漏斗から徐々に加え、全量を加え終わった後に80℃の湯浴上で還流しつつ2時間反応させ、スルフィドがアミド結合をした支持体を得た。これをメタノールで十分洗浄した後に、真空乾燥して得られた担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して0.84mmol固定化されていることが確かめられた。 この乾燥担体5gを取り、15mLのアセトン中で30%過酸化水素水0.6mLと室温で7日間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これをアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルホキシドで修飾された担体を得た。この担体2.5gを実施例1と同様にガラスカラムに充填し、PCB分離用カラムとした。(実施例4) 約4ppmのPCB混合物(カネカ社製、カネクロール300,400,500,600の1:1:1:1混合物)を含む鉱物油(変圧器用絶縁油)0.25mLを、実施例2と同様にシリカゲル充填小型カラムで処理した後に、同様にヘキサンで溶出し濃縮した溶出液を実施例3で得られたPCB分離用カラムに加えて、ヘキサンによって溶出させ、鉱物油とPCBの分離を行った。実施例2と同様の方法で鉱物油とPCBの溶出パターンを求め、図2に示した。そして、実施例と同様に鉱物油成分とPCBは良好に分離したことが確認された。(比較例1) 実施例1で使用したアミノプロピル化シリカゲル2.5gを、実施例1と同様にしてガラスカラムに充填し、PCB分離用カラムとした。 約4ppmのPCB混合物(カネカ社製、カネクロール300,400,500,600の1:1:1:1混合物)を含む鉱物油(変圧器用絶縁油)0.25mLを実施例2と同様にシリカゲル充填小型カラムで処理した後に、同様にヘキサンで溶出し濃縮した溶出液をこのPCB分離用カラムに加えて、ヘキサンによって溶出させ、鉱物油とPCBの分離を行った。そして実施例2と同様の方法で鉱物油とPCBの溶出パターンを求め、図3に示した。 実施例2、4と異なり、鉱物油成分とPCBは十分には分離できず、実施例2、4と同等の分離能を得るためには、少なくとも5倍量の担体と溶出のための溶媒が必要であったことから、本発明によるクロマトグラフィー担体の高い分離効率が確認された。(実施例5) プロピルカルボン酸修飾シリカゲル4g(粒径約0.02〜0.1mm、細孔径54Å、比表面積521m2/g、カルボキシル基密度0.8mmol/g)を三角フラスコに入れ、25mLのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)、1.9gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩、0.92gのN−ヒドロキシサクシンイミドを加え、室温で振とうして2.5時間反応させた。 カルボジイミドによってカルボキシル基が活性化された支持体をリン酸ナトリウム緩衝液で洗浄した後、リン酸ナトリウム緩衝液25mLとDL−メチオニンスルホキシド1.7gを加え、室温で振とうして2時間反応させた。これを純水およびアセトンで十分洗浄した後に真空乾燥を行って、支持体表面のカルボキシル基とメチオニンスルホキシド中のアミノ基がアミド結合した担体を得た。この担体中のイオウの重量分析結果より、スルホキシドが担体の乾燥重量1gに対して0.7mmol固定化されていることが確かめられた。この担体2.5gを内径10mmのガラスカラム(フッ素樹脂コック付き)にアセトンを用いて湿式充填し、PCB分離用カラムとした。このカラムは、良好なPCB分離性能を有する。(実施例6) シリカゲル15g(粒径約0.02〜0.1mm、細孔径54Å、比表面積521m2/g)を冷却管の付いたナスフラスコに入れ、25mLの無水トルエンを加えた。窒素雰囲気下、塩化チオニル(SOCl2)12.8mLを滴下ろうとから徐々に加え、全量を加え終わった後に80℃の湯浴上で還流しつつ2時間反応させた。これをロータリーエバポレーターにより80℃で減圧乾燥し、シリカゲル表面の水酸基が塩素に置換された支持体を得た。 この乾燥担体に、3−(メチルチオ)プロパノール(CH3-S-(CH2)3-OH)5g、ピリジン20mL、テトラヒドロフラン30mLの混合液を加え、80℃の湯浴上で還流しつつ2時間反応させ、これをメタノール及びアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルフィドで修飾された担体を得た。担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して0.84mmol固定化されていることが確かめられた。この乾燥担体5gを取り、15mLのアセトン中で30%過酸化水素水0.6mLと室温で7日間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これをアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルホキシドで修飾された担体を得た。この担体2.5gを内径10mmのガラスカラム(フッ素樹脂コック付き)にアセトンを用いて湿式充填し、PCB分離用カラムとした。このカラムは、良好なPCB分離性能を有する。(実施例7) 3−(メチルチオ)プロピオン酸(CH3-S-(CH2)2-COOH)0.7gに、アセトン10mL、30%過酸化水素水0.7mLを加えて室温で7日間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。一方、5gの四級アミン修飾シリカゲル(シリカゲル表面に-(CH2)3N(CH3)3+Cl−を結合したもの、粒径約0.02〜0.1mm、細孔径54Å、比表面積521m2/g、四級アミン密度0.9mmol/g)を十分量の炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄して塩化物イオンを炭酸水素イオンに置換し、その後十分量の純水・アセトンで洗浄した。このものに先の反応液を直接加え、ロータリーエバポレーターにより35℃で減圧乾燥し、シリカゲル表面の四級アミノ基にスルホキシド中のカルボキシル基がイオン結合をした担体を得た。この担体中のイオウの重量分析結果より、スルホキシドが担体の乾燥重量1gに対して0.9mmol固定化されていることが確かめられた。この担体2.5gを内径10mmのガラスカラム(フッ素樹脂コック付き)にアセトンを用いて湿式充填し、PCB分離用カラムとした。このカラムは、良好なPCB分離性能を有する。(実施例8) 3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(CH3-S-(CH2)2-CHO)5gを、実施例1で使用したアミノプロピル化シリカゲル5gに加え、0℃で3時間反応させてイミンとして結合させた。これを純水で十分洗浄した後に、純水50mLと水素化ホウ素ナトリウム0.15gを加え、室温で24時間反応させて、イミンを二級アミンに還元した。この担体を純水とアセトンで洗浄した後に真空乾燥して得られた担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して1.4mmol固定化されていることが確かめられた。そこでさらにこの担体に対し0.05Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液15mLを加え、0℃で24時間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これを純水及びアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルホキシドで修飾された担体を得た。この担体2.5gを内径10mmのガラスカラム(フッ素樹脂コック付き)にアセトンを用いて湿式充填し、PCB分離用カラムとした。このカラムは、良好なPCB分離性能を有する。(実施例9) 実施例1のアミノプロピル化シリカゲル5gを冷却管の付いたナス型フラスコに入れ、50mLの無水テトラヒドロフランと1.7gのトリエチルアミンを加えた。内容物を撹拌しつつ、4−(メチルチオ)ベンゾイルクロリド(CH3-S-(C6H4)-COCl)3.2gを徐々に加え、全量を加え終わった後に80℃の湯浴上で還流しつつ2時間反応させ、スルフィドがアミド結合をした担体を得た。これをメタノールで十分洗浄した後に真空乾燥して得られた担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して0.68mmol固定化されていることが確かめられた。 この乾燥担体5gを取り、15mLのアセトン中で30%過酸化水素水0.38mLと室温で7日間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これをアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行ってスルホキシドで修飾された担体を得た。この固定相2.5gを実施例1と同様にガラスカラムに充填し、PCB分離用カラムとした。(実施例10) 約4ppmのPCBを含む鉱物油(変圧器用絶縁油)0.25mLを実施例1と同様にシリカゲル充填小型カラムで処理し、これを上記実施例9で得られたPCB分離用カラムに加えて、ヘキサンによって溶出させ、鉱物油とPCBの分離を行った。実施例2と同様の方法で鉱物油とPCBの溶出パターンを求めたところ、図4に示すように鉱物油成分とPCBは良好に分離したことが確認された。(実施例11) アミノ基と水酸基を表面に持つアクリル樹脂粒子(粒径約0.04〜0.09mm、アミノ基密度0.6mmol/g、水酸基密度0.6mmol/g)1.6gを共栓付きの三角フラスコに入れ、25mLの無水テトラヒドロフランと1gのトリエチルアミンを加えた。内容物を撹拌しつつ、3−(メチルチオ)プロピオン酸クロリド(CH3-S-(CH2)2-COCl)1gを滴下ろうとから徐々に加え、全量を加え終わった後に室温で穏やかに振とうしつつ2時間反応させ、スルフィドがアミド結合およびエステル結合で固定化された担体を得た。これをメタノールで十分洗浄した後に真空乾燥して得られた担体中のイオウの重量分析結果より、スルフィドが担体の乾燥重量1gに対して1.0mmol固定化されていることが確かめられた。その乾燥担体1.8gを取り、12mLのアセトン中で30%過酸化水素水0.2mLと室温で7日間反応させてスルフィドをスルホキシドに酸化した。これをアセトンで十分洗浄した後、真空乾燥を行って、スルホキシドで修飾された担体を得た。この担体1.2gを実施例1と同様にガラスカラムに充填し、PCB分離用カラムとした。このカラムは、良好なPCB分離性能を有する。(実施例12) 実施例8のスルホキシド基が固定化された担体1.5gを内径4.4mm×長さ150mmの高速液体クロマトグラフィー用ステンレスカラムに充填した。 各種PAH(ナフタレン、フェナントレン、フルオランテン、ベンゾ[a]アントラセン、ペリレン、ベンゾ[ghi]ペリレン、各50ppm)を含む鉱物油(変圧器用絶縁油)0.2mLをヘキサン0.8mLで希釈し、このうち20μLを上記実施例11で得られたカラムに負荷し、有機溶媒を毎分1mL流すことによって溶出させ(0〜10分:ヘキサン100%、10〜60分:0〜20%ジクロロメタン/ヘキサンの直線グラジエント)、鉱物油とPAH相互の分離を行った。溶出液を適当量に分けて回収し、それぞれをガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC/MS)に注入して得られた各PAHのピーク面積からPAHの回収率を、紫外吸収(254nm)から鉱物油の回収率(相対値)をそれぞれ求めて溶出パターンを作成し、図5に示した。図5から明らかなように、芳香族環数が3以上のPAHと鉱物油は明確に分離することができる。また、PAH相互の分離については、芳香族環数が2以上であればそれぞれ分離が良好であり、PAHの分離用としても本担体が有効であることが確認された。(実施例13)約4ppmのPCB混合物(カネカ社製、カネクロール300,400,500,600の1:1:1:1混合物)を含む鉱物油(芳香族化合物[アルキルジフェニルアルカン]を主成分とする絶縁油)0.25mLを、実施例2と同様にシリカゲル充填小型カラムで処理した後に同様にヘキサンで溶出し濃縮した溶出液を、実施例3で得られたPCB分離用カラムに加えて、ヘキサンによって溶出させ、鉱物油とPCBの分離を行った。実施例2と同様の方法で鉱物油とPCBの溶出パターンを求め、図6に示した。その結果、実施例2で用いた脂肪族炭化水素を主成分とする鉱物油よりはやや分離効率が劣るものの、鉱物油とPCBの分離が確認された。(実施例14) 約4ppmのPCB混合物(カネカ社製、カネクロール300,400,500,600の1:1:1:1混合物)を含む植物油(コーン油)0.25mLを、実施例2と同様にシリカゲル充填小型カラムで処理した後に同様にヘキサンで溶出し濃縮した溶出液を、実施例3で得られたPCB分離用カラムに加えて、ヘキサンとアセトンによって溶出させ、植物油とPCBの分離を行った。実施例2と同様の方法で植物油とPCBの溶出パターンを求め、図7に示した。その結果、植物油成分の大部分がシリカゲルおよび実施例3の担体に非可逆的に吸着して除去されるとともに、残りの大部分もPCBより遅れて溶出することで、植物油成分とPCBが良好に分離できることが確認された。 次の一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、有機溶媒に不溶性の支持体に共有結合又はイオン結合により直接固定したことを特徴とする、芳香族化合物を芳香族化合物以外の成分から分離するためのクロマトグラフィー用担体: R1−SO−R2− (1)(式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。) 上記一般式(1)で表されるスルホキシド基を含有する有機基を、イミン結合、アミド結合又はエステル結合、又はシロキサン結合を介して支持体に固定したことを特徴とする請求項1に記載のクロマトグラフィー用担体。 支持体が、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、チタニア及びシリカゲルからなる群から選択された多孔質粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のクロマトグラフィー用担体。 支持体である多孔質粒子の粒径が5〜200μmで、比表面積が100〜700m2/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクロマトグラフィー用担体。 上記一般式(1)で表されるスルホキシド基の含有量が、担体の乾燥重量1gに対して0.2〜2.5mmolであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクロマトグラフィー用担体。 カラムに請求項1〜5のいずれかに記載されたクロマトグラフィー用担体を充填したことを特徴とするクロマトグラフィー用カラム。 請求項6に記載されたクロマトグラフィー用カラムに、芳香族化合物を含有する試料を添加し、非極性溶媒により芳香族化合物以外の成分を溶出した後に、引き続き非極性溶媒により、或いは極性溶媒を含む溶媒により芳香族化合物を溶出させることを特徴とする芳香族化合物の分離方法。 芳香族化合物がハロゲン化芳香族化合物であることを特徴とする請求項7に記載の芳香族化合物の分離方法。 ハロゲン化芳香族化合物がポリクロロビフェニルであることを特徴とする請求項8に記載の芳香族化合物の分離方法。 芳香族化合物が多環芳香族炭化水素であることを特徴とする請求項7に記載の芳香族化合物の分離方法。


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