生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ガストリン放出ペプチド前駆体に対する抗体およびその使用
出願番号:2007514561
年次:2012
IPC分類:G01N 33/53,G01N 33/543,C07K 16/26,C12N 5/10,C12P 21/08,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

青柳 克己 JP 4950880 特許公報(B2) 20120316 2007514561 20060413 ガストリン放出ペプチド前駆体に対する抗体およびその使用 株式会社先端生命科学研究所 399115851 佐伯 憲生 100102668 一入 章夫 100113332 青柳 克己 JP 2005115782 20050413 20120613 G01N 33/53 20060101AFI20120524BHJP G01N 33/543 20060101ALI20120524BHJP C07K 16/26 20060101ALI20120524BHJP C12N 5/10 20060101ALI20120524BHJP C12P 21/08 20060101ALN20120524BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120524BHJP JPG01N33/53 DG01N33/543 501AC07K16/26C12N5/00 102C12P21/08C12N15/00 A G01N 33/53 C07K 16/26 C12N 5/10 G01N 33/543 C12N 15/09 C12P 21/08 Yoshio Miyake, Tetsuro Kodama, and Ken Yamaguchi,Pro-Gastrin-Releasing Peptide(31-98) Is a Specific Tumor Marker in Patients with Small Cell Lung Carcinoma,Cancer Res,1994年,54,2136-2140 11 JP2006307808 20060413 WO2006117994 20061109 17 20090121 竹中 靖典 本発明は、ガストリン放出ペプチド前駆体に対する抗体およびその使用に関するものであり、肺小細胞がんを含む各疾病の早期発見や治療のモニタリング、再発のモニタリング等に広く利用されるものである。 わが国における死因の第1位は悪性新生物であり、その中でも肺癌の死亡率は、男性では胃癌を抜いて第1位、女性でも第3位となっており、年々上昇する傾向にある。肺癌は病理組織学的に以下の主に4つの組織型に分類されている。すなわち、肺門部に発生する肺扁平上皮癌(squamous-cell carcinoma)と肺小細胞癌(small-cell lung carcinoma: SCLC)、肺野部に発生する肺腺癌(adenocarcinoma)と肺大細胞癌(large-cell lung carcinoma)である。 特に肺小細胞癌は、増殖が速く早期に遠隔転移を起こすため、初診時ではすでに全身性に転移した進行癌で発見されることが多い。この型の癌の治癒率については、病変が一側の肺野に限局している肺小細胞癌の限局型(limited disease:LD)患者の治癒率は約20%であるが、両肺や他の臓器に転移した進展型(extensive disease:ED)の患者では、事実上治癒は難しいと言われている。 また、肺小細胞癌は抗癌剤に感受性が高いため、化学療法が治療法の第一選択とされるのに対して、肺非小細胞癌(non-small-cell lung carcinoma:non−SCLC)は、化学療法の奏功率が低いために外科療法が治療法の第一選択とされている。 そのため、肺小細胞癌は肺癌の中でも特に早期発見・治療が必要な癌であり、そのためにも肺小細胞癌と肺非小細胞癌を鑑別診断することは、治療方針を決定する上で極めて重要である。 肺癌を発見する方法のひとつに喀痰検査がある。しかし、喀痰検査は主に肺扁平上皮癌の検査には好適であるが、肺小細胞癌に対する陽性率は低いという問題がある。また、X線撮影法も肺癌の発見に広く用いられている方法であるが、肺門部に生じる肺扁平上皮癌や肺小細胞癌に対しては、肺門部が心臓の影となるので癌組織の陰影が非常に撮影され難いという問題がある。また、肺小細胞癌については、肺野の異常陰影を呈する患者に対して喀痰細胞診、胸部X線単純撮影、CTスキャン、気管支内視鏡等を用いても、この型の肺癌の早期発見は容易ではないとされている。 また、癌を診断するための検査方法の幾つか、例えば放射線照射やバイオプシー、気管支内視鏡などは、患者に対して苦痛を与え、また高価な機器や熟練した技術などを必要とする。 そのため、より簡便な血液検査によって治癒可能な時期に癌を高率に診断することを可能とする、腫瘍マーカーの研究が行われている。今日では、癌疾患の発見、診断、病状経過のモニタリングの指標、再発診断等に30以上の腫瘍マーカーが利用されている。 肺癌は組織型が多彩であるため、全ての型の肺癌の発見あるいは診断に有効な腫瘍マーカーはいまだ報告されていない。そのため今日では、肺癌の組織型ごとに有効なマーカーが選択され、使用されている。 例えば、肺腺癌に対しては癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)やシアリルLex-i抗原が、肺扁平上皮癌に対しては扁平上皮癌関連抗原(squamous-cell carcinoma related antigen:SCC)が、肺小細胞癌に対しては神経特異エノラーゼ(neuron-specific enolase:NSE)などが、主に選択、使用されている。 しかしNSEは、(1)治癒可能な早期癌に対する陽性率が低いこと、(2)治療による一過性の測定値の上昇が認められること、(3)採血時の溶血により測定値が上昇すること、(4)肺小細胞癌患者と健常人との測定値差が小さいこと、などの欠点があり、肺小細胞癌に対する有効な腫瘍マーカーであるとは必ずしも言えなかった。 ガストリン放出ペプチド(gastrin-releasing peptide:GRP)は、McDonaldらが1978年にブタ胃組織から単離した、ガストリン分泌促進作用を有する27個のアミノ酸よりなる脳腸ペプチドである。ヒトにおいてもGRPの存在は確認されており、ヒトGRPをコードする遺伝子も1984年にクローニングされている。 国立がんセンターの山口らは、神経内分泌細胞に由来すると考えられている肺小細胞癌の生物学的特性の研究過程で、ACTH(adrenocorticotropic hormone)やカルシトニンなどを含む15種類以上の脳腸ホルモンを測定し、GRPが最も高頻度にかつ高濃度に培養肺小細胞癌株で積極的に分泌されることを明らかにした(非特許文献1)。さらに、血中GRPの濃縮法を組み合わせたラジオイムノアッセイ (RIA) を構築し、肺小細胞癌患者は健康な人に較べ高い血中GRP濃度を呈することを明らかにした。しかし、GRPは血中で速やかに分解されるため血中濃度が低く、また上記アッセイは煩雑な濃縮操作を必要としたため、臨床応用が困難であった。 その後の研究により、各種の細胞においてalternative RNA splicingによって3種のGRP前駆体(ProGRP)が産生されることが明らかにされた(非特許文献2)。これら3種のProGRPは、その1−98番目においてアミノ酸配列が共通している一方、99番目以降はalternative RNA splicing によって、互いに異なるアミノ酸配列となっている。この共通する1〜98番目のアミノ酸配列を配列番号1に示す。以後、特に断らない限り、本発明におけるProGRP、その部分配列、分解物等のアミノ酸残基の番号表示は、配列番号1のアミノ酸配列のそれをもって表すこととする。 3種の ProGRPの1−27番目のアミノ酸配列は、ガストリン分泌促進活性をもつ成熟GRPのそれと同一である。これら3種の前駆体は、いずれもホルモン前駆体切断酵素によって、1−27番目のアミノ酸配列からなる成熟型GRPと、31番目以降のアミノ酸配列からなるガストリン分泌促進活性をもたないProGRPの分解物であるC末端側フラグメント(ProGRP-Cfrag)とに分解される。 Holstら(非特許文献3)は、ProGRPの42−53番目のアミノ酸配列からなるペプチド(以下、ProGRP (42-53)とする)に対する抗血清を用いたラジオイムノアッセイ(RIA)法によって、肺小細胞癌患者の血漿中のProGRPまたはProGRP-Cfragの レベルが高いことを報告した。しかし、この方法では沈殿抽出操作が必要であり、感度も十分ではなかった。また、この様な11アミノ酸残基からなる短鎖のペプチドで免疫した場合には、ProGRPの立体構造エピトープを認識する抗体は誘導されないと考えられる。 三宅らは、ProGRPがGRPよりも血中で安定性が高いこと、ならびに3種のProGRPの共通部分である 31−98番目のアミノ酸配列が他の蛋白質のアミノ酸配列に対して相同性を示さないことに着目し、同アミノ酸配列からなる組換え体ペプチド(以下、ProGRP (31-98)とする)を抗原として得た高力価の抗血清を用いて、沈殿抽出操作が不要の高感度RIA法を構築した(非特許文献1)。この方法により、ProGRPはGRPと同様に優れた腫瘍マーカーになることが示された。 しかし、この方法は抽出操作を必要としない点で有利であるが、測定に4日間を必要とすることや感度が10pM(77.3pg抗原/mL)と十分でないため、健常人血清中のProGRP値を測定することはできず、臨床応用には至っていない。 また、前述したHolstら及び三宅らのRIA法はインヒビション法であるため、ProGRPの断片の一部でも抗原性を有していれば測定可能であるが、その感度はサンドイッチ法に比べて低く、高感度化が必要なProGRP測定法の臨床応用は困難である。すなわち、ProGRPの検出を臨床的に行うためには、検出の感度を高めることは必須であり、特にサンドイッチ法で利用可能な抗体が必要となる。 山口、青柳らは、ProGRPの肺小細胞癌用腫瘍マーカーとしての 臨床応用を目的として、enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を原理とする、サンドイッチ法を用いた簡便で高感度な ProGRP測定試薬を開発した(特許文献1)。この方法は約2時間で結果を与え、また高い感度(2pg/mL)を有していることから、現在幅広く臨床応用されており、肺小細胞癌においてNSEよりも高い感度、特異性を有していることが明らかとなっている。 また、この測定法を用いて、肺小細胞癌以外にも、神経内分泌腫瘍(甲状腺髄様癌など)、神経内分泌腫瘍的性格を示す癌(食道小細胞癌、膵小細胞癌、前立腺小細胞癌など)でも血清 ProGRP値が上昇することが明らかとなり、今後これらの腫瘍の早期発見や治療のモニタリングなどにも応用されていくと思われる。 しかしながら、ProGRPの血中での安定性は、GRPのそれと比較した場合には高いが、一般的な他の腫瘍マーカーに比べて、測定値のばらつきが認められる。そのため、ProGRPを検出対象とした方法では、測定用検体は、採血後すみやかに測定時まで凍結保存されなければならないという制約がある(非特許文献4)。特許第3210994号公報特開平6-98794号Cancer Research, 1994年、第54巻、第2136−2140頁Eliotら、Mol. Endo., 1987年、第1巻、第224−232頁Holst J.Clin.Oncol., 第7巻、第1831−1838頁、1989年臨床検査. 39巻; 981-986, 1995 本発明は、ProGRPを測定対象としながらも、従来法における測定値のばらつきや検体の凍結保存という作業上の制約などの問題を持たない、新しいProGRPの測定法を提供するものである。 本発明は、ProGRPの分解物の中に血液検体において安定に保たれているものがあることを見出したことに基づき、かかる安定な分解物に存するエピトープを測定対象とすることで、上記の課題を解決するものである。具体的には、以下の各発明が提供される。(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する2種以上の異なる抗体を用いて、ガストリン放出ペプチド前駆体及び/又はその分解物を測定する方法。(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−79番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する2種以上の異なる抗体を用いて、ガストリン放出ペプチド前駆体及び/又はその分解物を測定する方法。(3)サンドイッチ免疫測定法である、(1)又は(2)に記載の方法。(4)配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−60番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合し、かつ配列番号1に示されるアミノ酸配列上の任意の8連続アミノ酸配列からなるペプチドには結合しない抗体。(5)配列番号1で表されるアミノ酸配列の40−60番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合し、31−53番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合しない抗体。(6)寄託番号FERM BP−08669で寄託されたハイブリドーマ3D6−2が産生する、(4)または(5)に記載の抗体。(7)寄託番号FERM BP−08669で寄託されたハイブリドーマ3D6−2。(8)2種以上の異なる抗体の少なくとも一方が(4)〜(6)のいずれかに記載の抗体である、(1)又は(2)に記載の方法。(9)2種以上の異なる抗体の少なくとも一方が(4)〜(6)のいずれかに記載の抗体であり、他方が配列番号1のアミノ酸配列71−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体である、(1)又は(2)に記載の方法。(10)(4)〜(6)のいずれかに記載の抗体を含む、ガストリン放出ペプチド前駆体もしくはその分解物を測定するためのキット。(11)癌の診断を行うためのキットである、(10)に記載のキット。 本発明の方法は、新たに確認された、検体中でも安定に保存されているProGRPのある種の分解物上のエピトープを測定対象とすることによって、従来の測定法と同等の検出感度が得られることに加え、採取後の検体の取扱い方に影響を受けにくくなり、再現性の高い測定値が得られる、などの効果を奏する。図1は、マルチピンペプチドで合成した8連続アミノ酸配列からなるペプチドに対するモノクローナル抗体の反応性を示す。横軸はProGRP(31-98)の8連続アミノ酸配列を、縦軸は吸光度を示す。(A)はGRP−3D6−2、(B)はGRP−3G2、(C)はGRP−2B10の反応性を示す。アミノ酸番号40−75番目の部分ペプチドに結合する抗体である3D6−2と2B10を用いた、測定法の標準曲線を示す。横軸はProGRPの濃度を、縦軸は吸光度を示す。 本発明は、検体中に存在する、ProGRPあるいはProGRP-Cfragよりも血中での保存安定性が高いProGRPの分解物(ProGRP-Cdel)に残存するエピトープを、免疫学的測定法の対象とするものである。 このProGRP-Cdelは、従来法の測定対象であるProGRP-CfragのC末端側の幾つかのアミノ酸残基が失われた、より鎖長の短いペプチドであり、ProGRPの40−75番目のアミノ酸残基上に残存するエピトープを含むペプチドである。おそらくは、血液中に存在するプロテアーゼによってProGRP-Cfragの75〜83番目のアミノ酸残基のいずれかの残基のC末端側が切断されることで、ProGRP-Cdelが生じるものと推察される。 このProGRP-Cdelについてその構造を質量分析装置を用いて確認を行ったところ、79番目のLysのC末端側で切断されていることが確認された。従って、ProGRP-Cdelは配列番号1の40−79番目のアミノ酸残基上に残存するエピトープを含むペプチドでもあり、従ってこれらのエピトープを認識する抗体もまた、本発明で利用することができる。 ProGRP-CdelとProGRP-Cfragの間の構造上の相違は、C末端側の20前後のアミノ酸残基の有無に過ぎないが、ProGRPもしくはその分解物を免疫学的に測定するための対象蛋白質としての意義は大きく異なる。従来法の方法では、前記C末端側の20数残基の部分を認識する抗体が使用されている。そのため、この抗体は、かかる部分を失ったProGRP-Cdelをもはや認識し、捕捉することができない。このC末端側の部分切断の進行は、検体自体あるいは検体採取後の保存状態やその期間によって影響を受け、このことが、従来法における検出シグナルが検体の保存状態やその期間によって影響を受けることの原因であると推察される。 一方、本発明では、ProGRP-Cdel上に存在するエピトープを認識する抗体を使用するものであり、検体中にProGRPやProGRP-Cfragが存在していても、またその部分切断が生じても、安定してProGRPもしくはその分解物を認識することができるので、検体の保存状態やその期間によって検出シグナルは影響を受けることが少なく、再現性の高い測定が可能となるのである。 本発明は、ProGRP-Cdel上のエピトープを測定対象とするために、ProGRPの40−75番目のアミノ酸配列からなるペプチド(ProGRP(40-75))上に存在するエピトープを認識することができる抗体から選択された、ProGRP(40-75)上に存在する2種以上の異なるエピトープをそれぞれ別個に認識する異なる抗体を使用し、サンドイッチ免疫測定法によってProGRPもしくはその分解物を検出する方法である。また本発明は、ProGRPの40−79番目のアミノ酸配列からなるペプチド(ProGRP(40-79))上に存在するエピトープを認識することができる抗体から選択された、ProGRP(40-79)上に存在する2種以上の異なるエピトープをそれぞれ別個に認識する異なる抗体を使用し、サンドイッチ免疫測定法によってProGRPもしくはその分解物を検出する方法である。 特に、本発明では、ProGRP-Cfragから切断除去されるC末端側の部分配列上のエピトープを認識する抗体を含まず、ProGRP-Cdel上のエピトープを認識する抗体のみを使用したサンドイッチ免疫測定法の利用が好ましい。 サンドイッチELISA法の基本操作は、「超高感度免疫測定法」(石川栄治、1993年、学会出版センター)あるいはその他種々の実験手法の解説書に記載されている方法に準じて行えばよく、本発明の実施に特有の操作は特に必要とはされないが、次のような工程で行うことができる。 すなわち、ProGRPもしくはその分解物は、(1)ProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)と結合する第一の抗体及び検体中のProGRPもしくはその分解物とを反応させる工程、(2)該抗体により捕捉されたProGRPもしくはその分解物を、(1)の抗体とは異なるがProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)と結合する第二の抗体と反応させる工程、及び(3)(2)により生ずる免疫複合体を検出する工程を含む測定法によって検出することができる。 ProGRPもしくはその分解物と結合する抗体は、ProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)と結合する抗体のみを選択して使用することが好ましいが、再現性の高い測定値を再現することができる範囲内で、かかる抗体以外の抗体が測定系に含まれていてもよい。 本発明で特に好ましい抗体の組み合わせは、ProGRPの40−60番目のアミノ酸配列を認識するモノクローナル抗体GRP−3D6−2と71−75番目のアミノ酸配列を認識するモノクローナル抗体GRP−2B10の組み合わせである。モノクローナル抗体GRP−3D6−2は、ProGRPの40−60番目のアミノ酸配列を認識するが、同時に同アミノ酸配列中の任意の8連続アミノ酸配列からなるペプチドは認識しない。このことから、モノクローナル抗体GRP−3D6−2は、ProGRPの40−60番目のアミノ酸配列からなる構造エピトープを認識するものと考えられる。モノクローナル抗体GRP−2B10は、71−75アミノ酸残基から構成される配列エピトープを認識していると推察される。 上記の2種類のモノクローナル抗体を用いた本発明の方法の検出感度は4.5pg/mlである。これは従来のモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を用いたProGRP(31-98)を測定する方法とほぼ同等の感度であり、健常人の血中ProGRPの測定に十分に使用することのできる感度である。 本発明で使用する抗体は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ウシなどの実験動物を免疫して得ることができる。免疫に用いる抗原は、ProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)の利用が好ましいが、ProGRP(31−98)のペプチドを用いることもでき、免疫後にProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)を使って所望の抗体を選択することで得ることができる。 マウスを例に取って、動物を免疫する方法を説明する。ProGRP(31-98)などのペプチドをフロインド完全アジュバント、TiterMax Gold(CytRx社)等のアジュバンドと1:1に混ぜ、交流ジョイントで結合した二本の注射筒で繰り返しジョイントを通過させる、あるいは超音波処理する等の方法によりエマルジョンを作製する。作製した抗原含有エマルジョンを、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内のいずれか、または複数部位に注入する。一回目の免疫終了の後、1〜4週間の間隔を開け、二回目の免疫を同様に実施する。以後同様に、血中のProGRP(31-98)に対する抗体の抗体価が上昇するまで、免疫を続ける。 抗体価の測定は以下の様に行うことができる。ProGRP (31-98) を1μg/mLの濃度にPBSに溶解し、ウエルあたり50μLの容量で96穴マイクロタイタープレートの各ウエルに添加し、4℃で一晩吸着する。0.05%Tween20入りPBS(PBS−T)で各ウエルを洗浄後アッセイに用いる。アッセイの前に、1%BSA入りPBS等でブロッキングを行っても良い。眼窩静脈叢、尾静脈または尾動脈等から採血し、PBS−Tで30倍に希釈した後遠心を行う。得られた上清をPBS−Tで希釈系列を作成し、ProGRP(31-98)をコートしマイクロタイタープレートの各ウエルに50μLずつ添加する。室温で30分反応後、PBS−Tで洗浄し、PBS−Tなどで適切に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG溶液を各ウエルに50μLずつ添加する。更に室温で30分反応後、過酸化水素、オルトフェニレンジアミン基質液を添加して30分間反応させ、2N H2SO4を50μl添加して反応を停止させ、各ウェルの吸光度を測定する。 免疫したマウスで、十分にProGRPに対する抗体価が上昇していることを確認した後、脾臓を取り出し、脾臓細胞を単離する。別に培養しておいたマウスミエローマ(例えばSP2/0-Ag14等)と、ポリエチレングリコール等を用いることにより融合する。融合に成功した細胞をHAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)培地で選択培養する。7〜14日程度、数日おきに培地を半量交換しながら培養を継続した後、培養上清の抗体価を測定する。ポジティブ・ウェルの細胞を限界希釈法にてクローニングし、目的の抗体産生ハイブリドーマを得る。上記方法により得られたハイブリドーマクローンとして3D6−2(寄託番号FERM BP-8669)、ProGRP-2B10(寄託番号FERM BP-4110)を挙げることができる。 上記方法で得られた抗体のエピトープを解析することによって、ProGRP(40-75)上及び/又はProGRP(40-79)上に存在するエピトープを認識し結合する抗体を、取得することができる。エピトープ解析はProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)に対する抗体の反応を調べることによって可能である。組換え体で発現させたProGRP(31-98)やProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)あるいはFmoc法やBoc法で化学合成させたProGRP(40-75)及び/又はProGRP(40-79)をマイクロタイタープレートにコートし、上述した免疫測定法で各ペプチドに対する反応を調べることにより決定される。また、ProGRPの連続する8−12アミノ酸程度の連続するペプチドに存在するエピトープは、マルチピンペプチド法により合成したペプチドを用いて決定することができる。 本発明では、使用される抗体を固相化したり、ラベリングしたりすることも可能である。各操作は種々の実験手法の解説書に記載されている方法に準じて行えばよく、本発明の実施に特有の操作は特に必要とはされない。 本発明は、上述の方法に加え、検体中のProGRPもしくはその分解物を測定するためのキット、特にProGRPもしくはその分解物を測定することによって肺小細胞癌の診断や化学療法のモニタリングを行うための診断薬キットも提供する。かかるキットは、上述したProGRP(40-75)上及び/又はProGRP(40-79)上に存在するエピトープを認識する抗体を少なくとも2種含み、その他任意に反応緩衝液や2次抗体の希釈液、ProGRPの標準物質、説明書その他の構成物を含んでいてもよい。キットに含まれる抗体の好ましい例としては、ProGRP(40-75)上及び/又はProGRP(40-79)上に存在するエピトープを認識し、同ペプチド上の8個連続アミノ酸残基からなるペプチドは認識しない抗体あるいはPrpGRPの71−75番目のアミノ酸配列を認識する抗体であり、代表例としてはモノクローナル抗体GRP−3D6−2やモノクローナル抗体GRP−2B10である。以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ハイブリドーマの作製 特許第3210994号の実施例1に記載した方法により組換え体を作成し、大腸菌で発現させた配列番号4に示されたペプチドを精製した。特許第3210994号の実施例1では、この組換え体はGRP(31-98)と記載されているが、正しくはGRP前駆体(ProGRP)の(31−98)部分であるので、ProGRP(31-98)とここでは記載する。次に、同特許第3210994号の実施例6に記載した方法により、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得た。 得られたハイブリドーマ3D6−2(FERM BP-8669)は、2004年3月23日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センターに、ProGRP-2B10(FERM BP-4110)およびProGRP-3G2(FERM BP-4109)は1992年12月9日付で工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター)に、それぞれ寄託している。 得られたハイブリドーマをプリスタン等で処理したマウス腹腔に移植し、腹水を回収し、プロテインAを結合させたセファロースカラムを用いて、各モノクローナル抗体を腹水中から精製した。ハイブリドーマ3D6−2(FERM BP-8669)から得られたモノクローナル抗体をGRP−3D6−2と命名した。モノクローナル抗体のエピトープ解析(1)ペプチドの合成とエピトープの決定 配列番号3にProGRP(31-98)の核酸配列とアミノ酸配列を示す。このアミノ酸配列に従い、ProGRP (31-98) の部分ペプチドをFmoc法にて合成した。Pep1は ProGRPの31−52番目のペプチド、Pep70は40−60番目のペプチド、Pep3は54−78番目のペプチド、Epi2は82−96番目のペプチド、Pep5は82−96番目のペプチドである。合成したペプチドは逆相クロマトグラフィーあるいは逆相クロマトグラフィーとゲルろ過を組み合わせて精製した。精製純度は80%以上であった。 それぞれのペプチドを1μg/mLの濃度にPBSで希釈し、96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに100μLずつ添加し、4℃で一晩吸着させた。PBSで各ウェルを2回洗浄後、1%BSAを含むPBSを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベーションを行い、吸引除去した。1μg/mLの濃度に希釈したモノクローナル抗体GRP−3D6−2を100μLずつ各ウエルに添加し、室温で60分間反応させた後、0.05%Tween20を含むPBS(PBS-T)で5回洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG抗体溶液を100μLずつ各ウエルに添加し、室温で30分間反応させた。PBS−Tで5回洗浄後、基質溶液(2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を100μLずつ各ウェルに添加し、室温で30分間反応させた後、2N硫酸を100μLずつ各ウェルに添加して反応を停止させた。ただちに、492nmにおける吸光度を測定し、その結果を表1に示す。 モノクローナル抗体GRP−3D6−2は、陽性対照である組換え体ProGRP(31-98)とProGRPの40−60番目のアミノ酸配列であるPep70に反応した。このことより、GRP−3D6−2はProGRPの40−60番のアミノ酸配列を認識していることがわかった。また同様の方法で、GRP−2B10はPep3とEpi2のペプチドに反応し、GRP−3G2はEpi2とPep5のペプチドに反応することがわかった。(2)マルチピンペプチドの合成とエピトープの決定 ProGRP(31-98)のアミノ酸配列に基づき、1アミノ酸ずつオーバーラップさせた連続した8個のアミノ酸ずつの61個のペプチドを、マルチピンペプチド法で合成した。各ペプチドは末端にビオチンを結合させたものであり、合成は和光純薬株式会社(大阪)に依頼した。 マルチピンペプチド法で合成した各ビオチン化ペプチドをジメチルホルムアミドに溶解し、1μg/mL の濃度にPBSで希釈した。その希釈された各ビオチン化ペプチド溶液を、アビジン固相された96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに100μL ずつ添加し、4℃で一晩結合させた。0.05%Tween20を含むPBS(PBS-T)で各ウェルを洗浄後、各モノクローナル抗体GRP−3D6−2、GRP−3G2、GRP−2B10を1μg/mLに希釈した溶液を、各ウェルに100μL ずつ添加した。室温で30分間反応後、PBS−Tで5回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG抗体溶液を各ウエルに100μL ずつ添加した。更に室温で30分間反応後、PBS−Tで5回洗浄し、基質溶液(2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を各ウェルに100μL ずつ添加し、室温で30分間反応後、2N硫酸を100μL ずつ添加し、ただちに492nmにおける吸光度を測定した。各モノクローナル抗体GRP−3D6−2、GRP−3G2、GRP−2B10のProGRP(31-98)内部の各ペプチドに対する反応を図1(A)、(B)、(C)に示す。 図1の(A)に示すように、モノクローナル抗体GRP−3D6−2はProGRP(31-98) の内部の8個ずつの連続するペプチドには結合しなかった。これは、GRP−3D6−2はProGRPの8個の連続するペプチドを認識することができず、8個より長いペプチドで作られる構造エピトープを認識するためと考えられる。一方、モノクローナル抗体GRP−3G2は81−88、82−89、83−90、84−91の4つの8個の連続するペプチドに結合した。モノクローナル抗体GRP−3G2の抗体はこの4つのペプチドに存在している配列である、84−88のペプチドを認識しているものと考えられる (図1(B))。またモノクローナル抗体GRP−2B10の抗体は68−75、69−76、70−77、71−78の4つの8個の連続するペプチドに結合した。このため、モノクローナル抗体GRP−2B10は、この4つのペプチドに存在している配列である、71−75のペプチドを認識していると考えられる(図1(C))。 これらのペプチドを用いたエピトープの決定の結果より、モノクローナル抗体GRP−3G2やモノクローナル抗体GRP−2B10に認識されるエピトープは、5残基のアミノ酸から形成される連続エピトープである。 また、モノクローナル抗体GRP−3D6−2はProGRP(31-98)の少なくとも40−60部分のペプチドを認識し、かつProGRP(31-98)の内部の8個の連続するペプチドに反応しない抗体である。言い換えると、GRP−3D6−2に認識されるエピトープは、ProGRP(31-98)の少なくとも40−60のアミノ酸配列で形成されるが、8個ずつの連続するペプチドでは形成できない構造エピトープであると考えられる。 以上のモノクローナル抗体が認識するエピトープの関係をまとめると表2のようになる。モノクローナル抗体の組み合わせによる検体保存安定性の検討 96ウエルマイクロプレートの各ウエルに、1種又は2種のモノクローナル抗体(2種類の場合は等量混合)を4μg/mLの濃度で100μL 加え、4℃で一晩インキュベートし固相化した。0.15M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で2回洗浄後、ブロッキング液(0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液、pH7.1)を350μL 加え2時間静置しブロッキングする。ブロッキング液を除去後、反応液100μL と測定検体50μL を各ウェルに加え、37℃で1時間反応させた。洗浄液(0.05% Tween20を含む10mMリン酸緩衝液、pH7.3)で5回洗浄し、HRP標識をした1種又は2種のモノクローナル抗体(2種類の場合は等量混合)溶液100μL を添加して室温で30分間反応させた。洗浄液で5回洗浄し、基質溶液(2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を100μL を加え、30分間インキュベートし、2N硫酸を100μL を加えて酵素反応を停止させた。マイクロプレートリーダーで、492nm (リファレンス波長630nm) の吸光度を測定した。 この測定法を用いて、3検体を、各々−20℃で凍結保存しておいたものと、室温で17時間保存したものに分けて測定した。凍結保存しておいたもののProGRP値を100%として、室温で17時間保存した場合の測定値をパーセントで表した(表3)。固相化抗体と標識抗体の組み合わせが、それぞれGRP−3G2とGRP−2B10、GRP−3G2とGRP−3D6−2、GRP−3G2とGRP−2B10/GRP−3D6−2の場合、17時間保存検体中のProGRP免疫活性は、平均69.6%、70.6%、69.2%にそれぞれ低下していた。また、従来法である固相化抗体と標識抗体の組み合わせである、GRP−3G2/GRP−2B10とポリクローナル抗体の場合も71.8%に減少していた。一方、固相化抗体にGRP−3D6−2、標識抗体にGRP−2B10を用いた場合は、17時間室温で保存しても測定値は平均で89.3%であり、他の抗体の組合せよりも、約20%のProGRPの免疫活性が維持されていた(表3)。なお、ポリクローナル抗体は、特許第3210994号の実施例8に記載の方法で取得したものを用いた。ProGRP(40-75)に結合する抗体を用いた測定法 96ウエルマイクロプレートの各ウエルに、GRP−3D6−2を4μg/mLの濃度で200μL 加え、4℃で一晩インキュベートし固相化した。0.15M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で2回洗浄後、ブロッキング液(0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液、pH7.1)を350μL 加え2時間静置しブロッキングする。ブロッキング液を除去後、反応液100μLと測定検体100μL を各ウェルに加え、37℃で1時間反応させた。洗浄液(0.05% Tween20を含む10mMリン酸緩衝液、pH7.3)で5回洗浄し、HRP標識したGRP−2B10溶液200μL を添加して室温で30分間反応させた。洗浄液で5回洗浄し、基質溶液(2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を200μLを加え、30分間インキュベートし、5N硫酸を50μLを加えて酵素反応を停止させた。マイクロプレートリーダーで、492nm (リファレンス波長630nm) の吸光度を測定した。その標準曲線を図2に示した。 この標準曲線から、約4.5pg/mLのProGRPを検出できると考えられた。この感度は、健常人検体中のProGRP量を検出するうえで十分な感度である。<試験例1> 従来法と本発明の実施例4の測定法を用いて、5検体を4℃で1、3、7日間保存した後、検体中ProGRP免疫活性を測定し、保存前の測定値と比較した。従来法は次のようにして実施した。96ウエルマイクロプレートの各ウェルに、GRP−3G2およびGRP−2B10(等量混合)を10μg/mLの濃度で100μL 加え、4℃で一晩インキュベートし固相化した。0.15M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で2回洗浄後、ブロッキング液(0.5%カゼインナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液、pH 7.1)を350μL 加え2時間静置しブロッキングする。ブロッキング液を除去後、反応液100μL と 測定検体50μL を各ウェルに加え、37℃で1時間反応させた。洗浄液(0.05% Tween20を含む10mMリン酸緩衝液、pH7.3)で5回洗浄し、HRP標識をしたポリクローナル抗体溶液100μL を添加して室温で30分間反応させた。洗浄液で5回洗浄し、基質溶液(2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を100μL を加え、30分間インキュベートし、2N硫酸を100μLを加えて酵素反応を停止させた。マイクロプレートリーダーで、492nm (リファレンス波長630nm) の吸光度を測定した。 4℃で保存する前のProGRPの値を100%として、各々の保存期間後の測定値をパーセントで表した。結果を表4に示す。 従来法の場合、検体中のProGRP測定値は、4℃で1日間保存では平均94.5%、3日間保存では平均85.8%、7日間保存では平均67.8%であり、1日間平均で約4.93%ずつ低下する傾向であった。一方、本発明の測定法では、検体中の ProGRP測定値は、4℃で1日間保存では平均96.9%、3日間保存では平均94.3%、7日間保存では平均86.9%であり、1日間平均で約2.29%ずつ低下する傾向であった。すなわち、本発明の測定法では、従来法よりも2.15倍高い保存安定性を示し、特に7日間保存では、従来法よりも、約19%のProGRPの免疫活性が維持されていた。<試験例2> 本発明で利用可能な モノクローナル抗体GRP−3G2、GRP−2B10、GRP−3D6−2がそれぞれ認識するエピトープの解析を行った。 ProGRPの31−53番目のペプチドをFmoc法にて合成した。合成したペプチドは逆相クロマトグラフィーあるいは逆相クロマトグラフィーとゲルろ過を組み合わせて精製した。実施例2で用いたペプチドを含めそれぞれのペプチドを0.1%TFAに溶解し、10μg/mLの濃度にPBSで希釈した。96穴マイクロタイタープレートの各ウエルに1ウェルあたり100μLずつの容量で96穴ELISAプレートの各ウエルに添加し、4℃で一晩吸着させた。PBSで各ウエルを2回洗浄後、1%BSAを含むPBSを各ウエルに添加し、室温で2時間インキュベーションを行い、吸引除去した。5μg/mLの濃度に希釈したモノクローナル抗体GRP−3G2、GRP−2B10、GRP−3D6−2を100μLずつ各ウエルに添加し、室温で85分間反応させた後、0.05%Tween20を含むPBS (PBS−T) で5回洗浄した。PBS−Tで適切に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG抗体溶液を100μLずつ各ウエルに添加し、更に室温で30分間反応させた。PBS−Tで5回洗浄後、基質溶液 (2mg/mLのオルトフェニレンジアミン、30%過酸化水素水0.9μL/mLを含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液、pH5.0)を100μLずつ各ウエルに添加し、室温で20分間反応させた後、2N硫酸を100μLずつ各ウエルに添加して反応を停止させ、ただちに492nmにおける吸光度を測定した。その結果を表5に示す。 表5より、GRP−3G2、GRP−2B10、GRP−3D6−2の反応するエピトープは実施例2で示したものとほぼ同じ結果を示し、GRP−3D6−2は31−53に全く反応しないことから、42−53のペプチドにも反応しないことが確認された。<試験例3> ProGRP-Cdelの同定を質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて行った。ProGRP (31-98)領域の各種ペプチドに反応性を示したウサギポリクローナル抗体をPBS(pH7.35) に12.7mg/mlになるように溶解し、3mlのNHS-Sepharose (Amersham社) にユーザーマニュアルに従い結合させた。 2例の1.5mlのヒト血清検体に、20μgの組換えProGRP (31-98)を添加して室温で24時間保存した。その後、前述したウサギポリクローナル抗体結合Sepharoseを0.4ml添加し、室温で60分間攪拌した。このウサギポリクローナル抗体結合Sepharoseを洗浄液(0.05%Tween20を含む10mMリン酸緩衝液pH7.3)で洗浄し、9.5M尿素液0.5mlを添加し、ウサギポリクローナル抗体結合Sepharoseに結合したものを溶出した。 溶出液を回収してその一部をとり、LC-MS/MSを用いてヒト血清検体中で保存後の ProGRP (31-98) 領域の保存されたペプチドを検討した。 溶出液100μlに250mMのMethyl-PEO4-NHSエステル(Pierce)溶液/DMSOを1μl添加し、室温で1時間インキュベートした。1M Tris-HCl、pH8を5μl添加し、室温で30分インキュベートして反応を止めた後、800μlのアセトンを添加してタンパク質を沈澱させた。遠心後、ペレットを乾燥させ、そこにPromega社のmodified trypsin溶液(20ng/μl/50mM炭酸水素アンモニウム)を15μl添加し、30℃で一晩消化した。消化後のサンプルに0.1%ギ酸15μlを添加し、15000rpm で5分間遠心した上清5μlについて、LC-MS/MS 分析{(LC部)Agilent 1100 series capillary LC system、(カラム)Agilent Zorbax SB-C18, 5μm, 150 x 0.5 mm、(MS/MS)BrukerDaltonics HCT-plus}を行った。分離は0.1%ギ酸存在下で行い、流量は15μl/分、アセトニトリル勾配は0-35% linear/0-120 min、35-95% linear/120-125 minとした。カラム溶出液はESI部に導入し、MS/MSデータを取得し、DataAnalysisソフトウェアでピークリストを作成し、Matrix Science社のMASCOT serverで解析を行った。 Methyl-PEO4-NHSは、蛋白質分子内のN末アミノ基及びリジンの側鎖アミノ基を修飾する性質を有する。従って、見出されたペプチド断片の内でN末が標識されたものがあれば、それは消化前にN末フリーの状態であったものである。また、側鎖アミノ基が修飾されたリジンの部位ではトリプシンによる消化が起こらないので、C末リジンの側鎖が修飾されていれば、それは消化前に既にこの部分で切断されていたものである。両血清検体でC末リジンが標識された断片としては、NHQPPQPK(72-79)が見出された。従って、少なくとも Lys-79 のC末側で切断された断片が血清処理により生じたものと考えられる。更に、N末側が標識されていないが、両血清検体でSVSER(37-41)という断片が観察され、Ser-36 のC末側で切断される可能性が示唆された。 本発明の方法は、新たに確認された、検体中でも安定に保存されているProGRPのある種の分解物上のエピトープを測定対象とすることによって、従来の測定法と同等の検出感度が得られることに加え、採取後の検体の取扱い方に影響を受けにくくなり、再現性の高い測定値が得られるなど、血中ProGRPの検出に有効である。 配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する2種以上の異なる抗体を用いて、ガストリン放出ペプチド前駆体及び/又はその分解物を測定する方法。 配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−79番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する2種以上の異なる抗体を用いて、ガストリン放出ペプチド前駆体及び/又はその分解物を測定する方法。 サンドイッチ免疫測定法である、請求項1又は2に記載の方法。 配列番号1に示されるアミノ酸配列の40−60番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合し、かつ配列番号1に示されるアミノ酸配列上の任意の8連続アミノ酸配列からなるペプチドには結合しない抗体。 配列番号1で表されるアミノ酸配列の40−60番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合し、31−53番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドには結合しない抗体。 寄託番号FERM BP−08669で寄託されたハイブリドーマ3D6−2が産生する、請求項4又は5に記載の抗体。 寄託番号FERM BP−08669で寄託されたハイブリドーマ3D6−2。 2種以上の異なる抗体の少なくとも一方が請求項4〜6のいずれかに記載の抗体である、請求項1または2に記載の方法。 2種以上の異なる抗体の少なくとも一方が請求項4〜6のいずれかに記載の抗体であり、他方が配列番号1のアミノ酸配列71−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体である、請求項1又は2に記載の方法。 請求項4〜6のいずれかに記載の抗体を含む、ガストリン放出ペプチド前駆体もしくはその分解物を測定するためのキット。 癌の診断を行うためのキットである、請求項10に記載のキット。配列表


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