タイトル: | 特許公報(B2)_メタクリル酸の抽出方法 |
出願番号: | 2007505296 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07C 51/48,C07C 57/07 |
遠藤 透 真武 和典 田中 茂穂 佐藤 晴基 JP 4995715 特許公報(B2) 20120518 2007505296 20061226 メタクリル酸の抽出方法 三菱レイヨン株式会社 000006035 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 青山 正和 100101465 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 遠藤 透 真武 和典 田中 茂穂 佐藤 晴基 JP 2005371337 20051226 20120808 C07C 51/48 20060101AFI20120719BHJP C07C 57/07 20060101ALI20120719BHJP JPC07C51/48C07C57/07 C07C 51/00-57/76 特開昭50−18412(JP,A) 特開昭63−135350(JP,A) 特開昭52−153909(JP,A) 特開昭62−120341(JP,A) 特開平7−118198(JP,A) 4 JP2006325926 20061226 WO2007074827 20070705 8 20091204 井上 千弥子 本発明は、メタクリル酸水溶液からメタクリル酸を抽出するメタクリル酸の抽出方法に関する。 本願は、2005年12月26日に出願された特願2005−371337号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。 メタクリル酸水溶液から水を分離してメタクリル酸を精製する際には、メタクリル酸水溶液からメタクリル酸を抽出溶剤により抽出し、抽出溶剤とメタクリル酸とを分離する方法が広く知られている。メタクリル酸の抽出で使用される抽出溶剤としては、例えば、特許文献1には、炭素原子を3〜4個有するアルカン、アルカノール、アルケン及びアルケナールのグループ及び第三ブタノールのメチルエーテル(MTBE)から選択され、(メト)アクリル酸に変換することができる少なくとも1種の抽出剤が開示されている。 特許文献2には、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルとn−ヘプタンの混合溶媒が開示されている。 特許文献3には、ベンゼン、トルエン、キシレンから選ばれた芳香族炭化水素と、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンから選ばれた脂肪族炭化水素とを含み、該芳香族炭化水素の含有量が20〜70質量%である混合溶媒が開示されている。特表2001−514643号公報特許第3246216号公報特開昭63−211249号公報 しかしながら、特許文献1に開示されている抽出溶剤は、メタクリル酸の抽出能力が不十分であるため、抽出の効率が低く、抽出溶剤を多量に使用する必要があった。また、特許文献1に開示されている抽出溶剤は、水への溶解度が高く、水層に移行する抽出溶剤量が多いため、水層からの抽出溶剤回収に手間を要し、あるいは、抽出溶剤が排水と共に排出され、排水処理の負荷が増大するため、不経済であった。 特許文献2に開示されているメタクリル酸メチルは、水との比重差が小さく分離性に問題があった。また、n−ヘプタンとメタクリル酸メチルの混合溶媒は、n−ヘプタンのメタクリル酸抽出能力が低く、抽出効率が低いため、抽出溶剤を多量に使用する必要があった。 特許文献3で開示されている混合溶媒もn−ヘプタンに代表される脂肪族炭化水素類を使用しているため、メタクリル酸抽出能力が低く、抽出溶剤を多量に使用する必要があった。 また、通常、抽出溶剤を使用してメタクリル酸を抽出した後には、メタクリル酸と抽出溶剤とを分離する。その分離方法としては、操作および設備の簡便さから、蒸留法が広く適用されている。 蒸留法では、メタクリル酸の重合を防止するために、蒸留温度を低く維持する必要があり、通常、減圧されている。しかし、特許文献1〜3に開示されている抽出溶剤は、沸点が低く、メタクリル酸との沸点差が大きいため、減圧下では凝縮温度が低くなることがあった。凝縮温度が低くなると、凝縮のために特殊な冷媒が必要になるため、不経済であった。 本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、メタクリル酸の抽出効率が高く、しかも経済的であるメタクリル酸の抽出方法を提供することを目的とする。 本発明者らは上記課題を解決するために、メタクリル酸抽出能力が高い抽出溶剤について検討して、以下のメタクリル酸の抽出方法を発明した。 すなわち、本発明のメタクリル酸の抽出方法は、メタクリル酸水溶液に抽出溶剤を添加してメタクリル酸を抽出溶剤中に移行させるメタクリル酸の抽出方法において、抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチルを含有する抽出溶剤を使用することを特徴とする。 本発明のメタクリル酸の抽出方法によれば、メタクリル酸の抽出効率が高く、しかも経済的である。 本発明の抽出方法については、所望量のメタクリル酸を回収することができれば特に限定されない。抽出操作としては、連続単抽出、連続多段抽出、回分単抽出、回分多回抽出のいずれの方法でも良く、これらの方法を組み合わせて実施しても良い。中でも、連続多段抽出が好ましい。連続抽出における液の流れ方向としては特に限定されず、向流及び並流で実施することができる。抽出効率の観点から、向流が好ましい。 本発明のメタクリル酸の抽出方法で使用されるメタクリル酸水溶液としては特に制限されず、例えば、イソブチレン、t−ブタノールまたはメタクロレインを分子状酸素により気相酸化あるいは液相酸化させてメタクリル酸を合成して得た水溶液などが挙げられる。 メタクリル酸水溶液中に含まれるメタクリル酸の含有量は10〜90質量%であることが好ましい。 メタクリル酸水溶液には、メタクリル酸および水以外の化合物が含まれていても構わない。例えば、メタクリル酸の合成に起因する不純物が含まれていても構わない。イソブチレン、t−ブタノールまたはメタクロレインの気相酸化あるいは液相酸化で生じる不純物としては、例えば、イソブチレン、t−ブタノール、アクロレイン、メタクロレイン、アセトン、酢酸、アクリル酸、無水メタクリル酸などが挙げられる。 本発明において抽出溶剤としてはメタクリル酸t−ブチルを含有する抽出溶剤を使用する。メタクリル酸t−ブチルは、例えば、イソブチレンとメタクリル酸の付加反応や、t−ブタノールとメタクリル酸とエステル化反応により得ることができる。 溶媒の製造に使用するメタクリル酸t−ブチルの純度としては特に限定されないが、予期しない不純物の影響を最小限とするため純度は高いほうが好ましい。 抽出溶剤は、メタクリル酸t−ブチル単独でもよいが、他の溶媒を含有するものでもよい。他の溶媒としては、例えば、炭化水素類、芳香族炭化水素類、エステル類、ケトン類、アルコール類などが挙げられ、入手しやすさやコスト等に応じて適宜選択すればよい。他の溶媒の中でも、メタクリル酸の抽出能力が高い上、水溶性が低く、しかも水との比重差が大きいことから、エステル類が好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。すなわち、抽出溶剤としては、メタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸メチルとの混合物が好ましい。 抽出溶剤がメタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸メチルとを含む混合物である場合において、それらの混合割合については特に限定されない。メタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸メチルとは相互溶解性が高いため、任意の割合で混合することができるが、メタクリル酸メチルの混合割合が高くなるほど、メタクリル酸抽出効率が向上する。ただし、メタクリル酸メチルの混合割合が高くなるほど、水層との分離性が低くなる傾向にある。これらのことから、混合割合としては、メタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸メチルの混合物100質量%に対するメタクリル酸メチルの質量分率が3〜90%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましい。 抽出溶剤が、メタクリル酸メチル以外の他の溶媒を含有する場合には、メタクリル酸t−ブチルと他の溶媒の混合物100質量%に対する他の溶媒の質量分率が3〜90%であることが好ましい。 メタクリル酸水溶液からのメタクリル酸抽出量は、抽出温度、抽出圧力、抽出装置等の抽出条件および抽出溶剤の使用量により制御できる。 抽出温度は、低温になるほど、メタクリル酸抽出効率が向上する。しかし、低温になるほど、冷却のためのエネルギー量が多くなることから、抽出温度としては0〜60℃の範囲が好ましい。 抽出圧力としては、大気圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、抽出装置および操作が簡便になることから大気圧が好ましい。 抽出装置としては、例えば、ミキサーセトラー型抽出装置、回転円盤抽出塔、多孔板抽出塔などを使用できる。 抽出溶剤の使用量は、メタクリル酸水溶液の全質量を1とした際の0.5〜15の割合であることが好ましい。抽出溶剤の使用量が、メタクリル酸水溶液の全質量を1とした際の0.5以上であれば、メタクリル酸抽出量を多くでき、15以下であれば、メタクリル酸と抽出溶剤との分離に要するエネルギー量を少なくできる。 メタクリル酸水溶液に抽出溶剤を添加した際に固体が析出する場合には、メタクリル酸水溶液と抽出溶剤とをあらかじめ接触させて固体を析出させ、析出した固体を濾過分離などの固液分離手段により分離した後に、液体成分のみを抽出装置に導入することが好ましい。 以上説明したメタクリル酸の抽出方法では、抽出溶剤にメタクリル酸t−ブチルが含まれるため、メタクリル酸抽出能力が高く、抽出効率に優れる。また、メタクリル酸t−ブチルは、水溶性が低く、かつ、水との比重差が大きく、水層との分離性に優れているため、水層からの抽出溶剤回収に手間やエネルギーを要さず、経済的である。 上記抽出方法によりメタクリル酸を抽出溶剤に移行させた後には、メタクリル酸と抽出溶剤とを分離し、精製して、高純度のメタクリル酸を得ることができる。メタクリル酸と抽出溶剤との分離方法としては特に限定されないが、経済的かつ簡便であることから、蒸留分離が好ましく、特に、重合防止の観点から、減圧蒸留分離がより好ましい。 蒸留分離を行う蒸留装置としては特に限定されず、棚段塔、充填塔等を使用することができる。 蒸留温度としては特に限定されないが、メタクリル酸およびメタクリル酸t−ブチルの重合を抑制する観点から、蒸留塔底部の温度として50〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。蒸留圧力は、上記好ましい温度が達成できるように適宜減圧制御することが好ましい。 本発明では、抽出溶剤として、沸点が高く、メタクリル酸との沸点差が小さいメタクリル酸t−ブチルを用いるため、メタクリル酸と抽出溶剤とを分離するために蒸留を行う場合に、減圧蒸留を適用しても、塔頂から得られる蒸気の凝縮温度が低くなりにくい。したがって、蒸気を冷水等により冷却できるため、凝縮のために特殊な冷媒を使用する必要がなく、経済的である。 なお、表1に示すように、沸点の高い溶剤としては、メタクリル酸t−ブチル以外にも、例えばキシレン類も挙げられるが、キシレン類はメタクリル酸との分離性が低く、完全に分離することが困難である。したがって、メタクリル酸の回収効率が低下する。キシレン類と分離できなかったメタクリル酸はキシレン類と共に抽出工程に送られることになる。これに対し、メタクリル酸t−ブチルは、メタクリル酸との分離性に優れるため、メタクリル酸の回収効率が高い。 キシレンをはじめとする揮発性有機溶剤は、人体への悪影響が報告されている。使用時の大気放散や、分離不十分による製品への混入の可能性があり、安全確保の観点から今後使用が制限される可能性もある。例えば、日本の厚生労働省では,キシレンの室内空気における濃度の指針値を0.2ppmと定めている。本発明の方法ではこれら物質を使用せず、高いメタクリル酸抽出率を得ることができる特徴がある。 以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。 なお、実施例及び比較例において、メタクリル酸および抽出溶剤の定量にはガスクロマトグラフィーを使用し、水の定量にはカールフィッシャー水分計を使用した。 また、メタクリル酸(MAA)抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度は下式により求められる。 MAA抽出効率[%]=上層中のMAA質量[g]/仕込みMAA質量[g]×100 水層中の抽出溶剤濃度[%]=水層中の抽出溶剤質量[g]/水層全質量[g]×100(実施例1) メタクリル酸水溶液(メタクリル酸:19.8質量%、水:80.2質量%)約70gに、メタクリル酸t−ブチル100質量%の抽出溶剤約30gを加え、室温にて1時間攪拌してメタクリル酸を抽出した。5時間静置後、上層である抽出溶剤の層と下層である水層とをそれぞれサンプリングし、MAA抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度を測定した。結果を表2に示す。 なお、表中のTBMAはメタクリル酸t−ブチルを示し、MMAはメタクリル酸メチルを示す。(実施例2) 抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチル100質量%の代わりに、メタクリル酸t−ブチル66.2質量%およびメタクリル酸メチル33.8質量%を含む抽出溶剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸を抽出した。そして、実施例1と同様にして、MAA抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度を測定した。その結果を表2に示す。(比較例1) 抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチル100質量%の代わりに、ヘプタン100質量%からなる抽出溶剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸を抽出した。そして、実施例1と同様にして、MAA抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度を測定した。その結果を表3に示す。(比較例2) 抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチル100質量%の代わりに、メタクロレイン100質量%からなる抽出溶剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸を抽出した。そして、実施例1と同様にして、MAA抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度を測定した。その結果を表3に示す。(比較例3) 抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチル100質量%の代わりに、ヘプタン66.6質量%およびメタクリル酸メチル33.4質量%からなる抽出溶剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてメタクリル酸を抽出した。そして、実施例1と同様にして、MAA抽出効率、水層中の抽出溶剤濃度を測定した。その結果を表3に示す。 なお、表中の、MMAはメタクリル酸メチルを示し、MALはメタクロレインを示す。 メタクリル酸t−ブチルを含む抽出溶剤を用いた実施例1,2では、メタクリル酸の抽出効率が高かった。また、メタクリル酸t−ブチルは水層に移行した量が少なかった。したがって、実施例1,2の方法によれば、メタクリル酸を高効率でかつ低コストで抽出できる。 これに対し、ヘプタンからなる抽出溶剤を用いた比較例1では、抽出効率が低かった。 メタクロレインからなる抽出溶剤を用いた比較例2では、水層に移行するメタクロレイン量が多いため、水層からメタクロレインを回収するのに手間を要し、不経済であった。 ヘプタンとメタクリル酸メチルを含む抽出溶剤を用いた比較例3では、抽出効率が低かった。 メタクリル酸水溶液に抽出溶剤を添加してメタクリル酸を抽出溶剤中に移行させるメタクリル酸の抽出方法において、 抽出溶剤としてメタクリル酸t−ブチルを含有する抽出溶剤を使用することを特徴とするメタクリル酸の抽出方法。 抽出溶剤がメタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸メチルの混合物である請求項1記載のメタクリル酸の抽出方法。 抽出溶剤の使用量が、メタクリル酸水溶液の全質量を1とした際の0.5〜15の割合である請求項1記載のメタクリル酸の抽出方法。 抽出溶剤中のメタクリル酸メチルの質量分率が3〜90%である請求項2記載のメタクリル酸の抽出方法。