生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アセロラ果実由来ペクチンおよびその用途
出願番号:2007504861
年次:2011
IPC分類:C08B 37/06,C07H 17/07,C07D 493/14,A61K 36/18,A61K 31/732,A61K 31/357,A61K 31/375,A61P 39/06,A61P 17/18,A61P 43/00,A61K 8/73,A61Q 19/02,A61Q 19/08,A61Q 90/00,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

川口 将和 佐々木 晶子 永峰 賢一 上東 純 JP 4782104 特許公報(B2) 20110715 2007504861 20060228 アセロラ果実由来ペクチンおよびその用途 株式会社ニチレイフーズ 505126610 株式会社ニチレイバイオサイエンス 505145149 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 石井 貞次 100096183 島村 直己 100101904 遠藤 真治 100130443 川口 将和 佐々木 晶子 永峰 賢一 上東 純 JP 2005053479 20050228 JP 2005088860 20050325 20110928 C08B 37/06 20060101AFI20110908BHJP C07H 17/07 20060101ALI20110908BHJP C07D 493/14 20060101ALI20110908BHJP A61K 36/18 20060101ALI20110908BHJP A61K 31/732 20060101ALI20110908BHJP A61K 31/357 20060101ALI20110908BHJP A61K 31/375 20060101ALI20110908BHJP A61P 39/06 20060101ALI20110908BHJP A61P 17/18 20060101ALI20110908BHJP A61P 43/00 20060101ALI20110908BHJP A61K 8/73 20060101ALN20110908BHJP A61Q 19/02 20060101ALN20110908BHJP A61Q 19/08 20060101ALN20110908BHJP A61Q 90/00 20090101ALN20110908BHJP A23L 1/30 20060101ALN20110908BHJP JPC08B37/06C07H17/07C07D493/14A61K35/78 CA61K31/732A61K31/357A61K31/375A61P39/06A61P17/18A61P43/00 111A61P43/00 121A61K8/73A61Q19/02A61Q19/08A61Q99/00A23L1/30 B C08B 37/ CA/REGISTRY(STN) 特開平09−276382(JP,A) 特表2003−524427(JP,A) 特開2001−187724(JP,A) 特開2000−212026(JP,A) 特開2001−224299(JP,A) 特開平10−109927(JP,A) 特開2005−343842(JP,A) 特開2005−185188(JP,A) 特許第4532257(JP,B2) 特開平09−067229(JP,A) 特開2005−253463(JP,A) 特開2005−154432(JP,A) 特開2005−104841(JP,A) 特開2005−006540(JP,A) 特開平07−046971(JP,A) 14 JP2006304413 20060228 WO2006090935 20060831 66 20070524 井上 典之 本発明は抗酸化剤または経口投与用美白剤として有用なアセロラ果実由来ペクチンに関する。 油脂類、これを含む物品、食品、化粧品、さらには医薬品などの貯蔵、保存、加工の過程において最も問題になるのは、空気中の酸素による油脂成分などの酸化ないし過酸化である。とりわけ、油脂中に含まれるリノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸は、酸素により容易に過酸化されて過酸化脂質やフリーラジカルを生成し、さらには発癌性物質をも生成することが知られている(非特許文献1)。酸化ないし過酸化が起こると、着色、変色、変性、異臭あるいは栄養価の有効性の低下ばかりか、毒物の生成などが起こり、製品の品質の劣化を招く。 不飽和脂肪酸の酸化を抑制して製品の品質の劣化を防ぐために、従来から種々の抗酸化剤が用いられている。これらの抗酸化剤は、酸化の際に生ずるペルオキシドラジカルに作用し、酸化の連鎖反応を停止させるか、あるいはフリーラジカルに作用して酸化反応を停止させる等の作用を有する。抗酸化剤としては、例えば、従来からブチルヒドロキシアニソール(BHA)やブチルヒドロキシトルエン(BHT)などの合成抗酸化剤が一般に用いられている。ところが、こうした合成抗酸化剤の使用が増えるにつれその安全性が問題にされ、消費者の拒否反応が強くなってきたと共に、その使用量が減ってきている。また、これらの油溶性抗酸化剤は、水溶液への溶解度に欠けるという点もある。 かくして、安全性の高い天然物由来の抗酸化剤への期待が非常に大きなものとなってきている。 これまで知られている天然抗酸化剤としてはビタミンE(α−トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)などが挙げられる。しかしながらビタミンEは脂溶性が高くビタミンCは水溶性が高いため、いずれも食品工業における脂質酸化の抑制には適当でない。なぜなら、脂質酸化の抑制が求められる魚肉・畜肉類及び穀物類などの加工製品、塩蔵食品、油脂含有調味料などは通常は油脂類と水系成分との混合系であるため極端な脂溶性又は水溶性を有するこれらの抗酸化剤は用途が限定されるからである。また、ビタミンEはそれ自体が食品として好ましくない風味を有するため添加量及び用途が限定されるという問題もある。またビタミンE又はビタミンCは抗酸化活性が長時間安定に持続しないという問題もある。 種々の方法で植物から分離されたペクチンが、ある条件下で脂質に対する抗酸加性を示すことは知られていたが、その抗酸加性は微弱であると考えられ一般的な抗酸化剤としては用いられていない。例えば、おから(大豆)から単離されたペクチン及びその酵素処理物は脂質酸化防止効果を有することが知られているが(非特許文献2)、抗酸化活性は充分ではない。なおペクチンは種々の植物に存在する、ガラクツロン酸、そのメチルエステル、その他の中性糖等を構成成分とする多糖類である。中性糖としてはラムノース、アラビノース、ガラクトース等が挙げられるが、その種類及び組成比は植物により顕著に相違することが知られている(非特許文献3)。 一方、美白剤は、従来から化粧品・医薬部外品を中心に開発が進められおり、アルブチンやアスコルビン酸誘導体など多くの有効成分が見いだされている。しかし、それらのほとんどは、皮膚外用剤として用いられている。現在、経口摂取により、しみ・日焼けなどによる色素沈着を抑制する医薬品としては、アスコルビン酸(ビタミンC)を有効主成分として含み、それと、アミノ酸であるシステインやビタミンB類を配合させて相乗効果を期待した製品などがある。すなわち経口摂取により、安全に色素沈着抑制作用を期待できる成分としては、アスコルビン酸が、最も適した成分であると考えられる。 アスコルビン酸を多く含有している果実としては、アセロラ(Acerola、学名:Malpighia emarginata DC.)がよく知られている。このアセロラを美白剤の有効成分とすることは特許文献1に記載されているが、その用途が化粧料などの皮膚外用剤に限定されている。また特許文献2にはアセロラを発酵させて得られる、実質的にアスコルビン酸を含有しない組成物を美白剤として使用することが記載されている。アセロラを利用した、アスコルビン酸とその他の成分から構成される経口投与で有効な美白剤については見出されていない。 果実のパルプ質中に含まれるペクチンに由来する成分と美白作用との関連性についても報告がある。特許文献3ではオリゴガラクツロン酸(オリゴガラクチュロン酸も同じ)が動物細胞試験においてメラニン産生抑制作用を示すことが報告されている。ここでオリゴガラクツロン酸とはガラクツロン酸が2個から10個程度結合したものである。また非特許文献1では、トマト搾汁液由来のペクチン分解物にメラニン色素生成抑制作用があることが示され、その中でガラクツロン酸及びポリガラクツロン酸にはメラニン色素抑制作用は認められなかった、と記載されている。特許文献3と非特許文献1の結果は相反するように思われるが、これは、ペクチンの構造及び性質が起源植物により大きく異なることが原因であると考えられる。特許文献3及び非特許文献4ではいずれも、動物細胞に対しての作用が検討されているのみである。ペクチンに由来する成分と他の成分とを組み合わせた場合の美白作用については報告がない。特許第3513871号公報特許第3076787号公報特許第3596953号公報食品の包装、17巻、106頁(1986年)食品と科学,VOL.36,NO.11,p.93−102(1994年)真部孝明著、第1版、「ペクチン その科学と食品のテクスチャー」、幸書房、p.8−22、(2001年)成英次ら、フレグランスジャーナル、Vol.32,No.8,pp.24−30(2004) 本発明は天然界から単離された水溶性の抗酸化剤およびその製造方法を提供することを目的とする。 本発明はまた天然界から単離された経口投与用美白剤およびその製造方法を提供することを目的とする。 本出願は以下の発明を包含する。(1)ペクチン骨格と、式:で表されるポリフェノール化合物とが複合体を形成してなる、アセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物。(2)アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程を含む、(1)記載のペクチンの製造方法。(3)アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程と、ペクチンを加水分解する工程とを含む、(1)記載のペクチン加水分解物の製造方法。(4)アセロラ果実から調製されたピューレをペクチナーゼで処理して前記ピューレ中のペクチンを加水分解する工程と、前記工程からの処理物の上清から、加水分解されたペクチンを単離または濃縮する工程とを含む、(3)記載の方法。(5)ペクチンを単離または濃縮する工程が、エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程である、(2)〜(4)のいずれか1項記載の方法。(6)ペクチンを単離または濃縮する工程が、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程である、(2)〜(4)のいずれか1項記載の方法。(7)分離膜が限外ろ過膜である(6)記載の方法。(8)限外ろ過膜の分画分子量が10,000〜100,000である(7)記載の方法。(9)アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程を含む方法により製造される、アセロラ果実に由来するペクチンを含有する材料。(10)アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程と、ペクチンを加水分解する工程とを含む方法により製造される、アセロラ果実に由来するペクチンの加水分解物を含有する材料。(11)アセロラ果実から調製されたピューレをペクチナーゼで処理して前記ピューレ中のペクチンを加水分解する工程と、前記工程からの処理物の上清から、加水分解されたペクチンを単離または濃縮する工程とを含む方法により製造される、(10)記載の材料。(12)ペクチンを単離または濃縮する工程が、エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程である、(9)〜(11)のいずれか1項記載の材料。(13)ペクチンを単離または濃縮する工程が、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程である、(9)〜(11)のいずれか1項記載の材料。(14)分離膜が限外ろ過膜である(13)記載の材料。(15)限外ろ過膜の分画分子量が10,000〜100,000である(14)記載の材料。(16)(1)記載のペクチンまたはその加水分解物を有効成分として含有する抗酸化剤。(17)(9)〜(15)のいずれか1項記載の材料を有効成分として含有する抗酸化剤。(18)アセロラ果実処理物(ただしアセロラ種子の処理物を除く)を有効成分として含有する脂質に対する抗酸化剤。(19)アセロラ果実処理物がポリフェノールおよび/またはアスコルビン酸を含有する(18)に記載の抗酸化剤。(20)(16)〜(19)のいずれか1項に記載の抗酸化剤が添加された、抗酸化作用を有する食品。(21)(16)〜(19)のいずれか1項に記載の抗酸化剤を用いて食品の酸化安定性を高める工程を含む食品の製造方法。(22)(1)記載のペクチンまたはその加水分解物を有効成分として含有する経口投与用美白剤。(23)(9)〜(15)のいずれか1項記載の材料を有効成分として含有する経口投与用美白剤。(24)アスコルビン酸を更に含む(22)または(23)記載の経口投与用美白剤。(25)(22)〜(24)のいずれか1項記載の経口投与用美白剤が添加された、美白作用を有する食品。(26)アセロラ果実、又はアスコルビン酸とパルプ質とを含むアセロラ果実処理物に、ガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して5重量%以上となるようにパルプ質中のペクチンの加水分解処理を施す工程を含む経口投与用美白剤の製造方法。(27)グルコースおよびフルクトースを実質的に除去する工程を更に含む(26)に記載の方法。 本発明における「所定の成分を有効成分として含有する(脂質に対する)抗酸化剤」という用語は、所定の成分が天然の状態で含まれた、(脂質に対する)抗酸化性を有する組成物と、所定の成分が人為的に添加された、(脂質に対する)抗酸化性を有する組成物の両方を包含する。 本発明における「所定の成分を有効成分として含有する経口投与用美白剤」という用語は、所定の成分が天然の状態で含まれた、美白作用を有する組成物と、所定の成分が人為的に添加された、美白作用を有する組成物の両方を包含する。 上記(20)における、「抗酸化剤が添加された、抗酸化作用を有する食品」という用語は、所定の抗酸化剤が人為的に添加された、抗酸化作用を有する食品を意味する。 上記(25)における、「抗経口投与用美白剤が添加された、美白作用を有する食品」という用語は、所定の抗経口投与用美白剤が人為的に添加された、美白作用を有する食品を意味する。 本発明に係る、ポリフェノールと複合体を形成してなるアセロラ果実由来ペクチンは、抗酸化剤として有用であるとともに経口投与用美白剤としても有用である。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005−53479号および日本国特許出願2005−88860号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。 図1は、アセロラ果実由来ペクチンから抽出されたサンプルの分析用HPLCによるクロマトグラムを示す図である。 図2は、アセロラ果実由来ペクチンから抽出されたサンプルの分取用HPLCによるクロマトグラムを示す図である。 図3は、分取用HPLCにより分取された成分の分析用HPLCによるクロマトグラムを示す図である。 図4Aは、図3のクロマトグラムに示される22.4分のピークのスペクトルデータを示す図である。 図4Bは、アセロニジンのスペクトルデータを示す図である。 図5は、アセロニジン(上段)とアセロラ果実由来ペクチンから分離されたポリフェノール(下段)の1H NMRスペクトルを比較する図である。 図6Aは、アセロニジンのトータルイオンクロマトグラムを示す図である。 図6Bは、アセロニジンの高分解能ESIマススペクトルを示す図である。 図7は、アセロニジンの1H NMRスペクトルを示す図である。 図8は、アセロニジンの13C NMRスペクトルを示す図である。 図9は、アセロニジンのDEPTスペクトルを示す図である。 図10は、アセロニジンのDQF−COSYスペクトルを示す図である。 図11は、アセロニジンのHSQCスペクトルを示す図である。 図12は、アセロニジンのHMBCスペクトルを示す図である。 図13は、アセロニジンのNOESYスペクトルを示す図である。 図14は、BHA、アセロラ濃縮果汁及びアセロラパウダーのリノール酸自動酸化抑制能の測定結果を示す図である。 図15は、ビタミンCのリノール酸自動酸化抑制能の測定結果を示す図である。 図16は、アセロラ由来C18カラム吸着成分、C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー及びアセロラパウダーのリノール酸自動酸化抑制能の測定結果を示す図である。 図17は、C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー及びC18カラム吸着成分・ビタミンC除去アセロラパウダーのリノール酸自動酸化抑制能の測定結果を示す図である。 図18は、アセロラ由来の酸処理ペクチン(分子量200万)及び酵素処理ペクチン(分子量2万以下)のリノール酸自動酸化抑制能の測定結果を示す図である。 図19は、蛍光灯照射条件下での貯蔵後のアセロラ添加試験区及びコントロール試験区の塩蔵鮭サンプルの写真である。 図20は、アセロラパウダー含有浸漬液で処理した塩蔵鮭の蛍光灯照射条件下での貯蔵におけるa値の推移を示す図である。 図21は、褐色モルモットを用いた色素沈着抑制試験の結果を示す図である。1.アセロラ果実由来ペクチン 本発明で用いるアセロラ(Acerola,学名:Malpighia emarginata DC.)の果実の生産地や品種は特に限定されない。生産地としては、例えば沖縄、ブラジル、ベトナムが挙げられる。 本発明においてアセロラ果実とは種部を含んだ果実全体であっても、アセロラ果実から種部の除去、剥皮等の通常の処理を施したものであってもよい。 アセロラ果実としては成熟果または緑果を使用することができ、緑果がより好ましい。緑果とは、果実としては十分に成長し搾汁可能な果実であるが、果実の色が緑色〜黄色で、熟度が進行して赤くなる前の果実(未熟果)である。 本発明にはアセロラ果実自体のほか、ペクチンを含む限り、種々のアセロラ果実の処理物を使用することができる。例えば、アセロラ果実から調製されるピューレ、果汁、またはパルプや、アセロラ果実を破砕、粉砕等したアセロラ果実破砕物や、アセロラ果実の抽出物等を使用することができる。本発明に係るペクチンの製造のための出発原料としては、アセロラ果実から調製されるピューレ、果汁、またはパルプが好ましく、なかでもピューレが好ましい。 果汁は、アセロラの果実を常法に従って搾汁することにより得ることができる。搾汁して果汁を採取した後の残留物を「パルプ」と称する。 アセロラ果実破砕物は、アセロラ果実の可食部と種部、又は種部を取り除いた可食部を、ミキサー等で破砕することにより得ることができる。また、破砕物に抽出処理、凍結乾燥等の処理を施したものを使用することもできる。 アセロラ果実の抽出物は、アセロラ果実を、水、有機溶媒等により抽出することにより得ることができる。抽出条件はペクチンが失われない条件である限り特に限定されない。 アセロラ果実に由来するペクチンに限らず「ペクチン」とは一般に、ガラクツロン酸がα−(1→4)結合したポリガラクツロン酸からなるホモガラクツロナンと、ガラクツロン酸とラムノースが繰り返し結合したラムノガラクツロナンを主鎖とし、ラムノースからガラクタンやアラビナン等の側鎖が分岐した構造を有している。ガラクツロン酸のカルボキシル基は各々の割合でメチルエステル化またはアセチルエステル化している。また、ペクチンはカルシウムやマグネシウムのような多価カチオンと結合し架橋構造をとると考えられている。 本発明においては、ホモガラクツロナンとラムノガラクツロナンからなる主鎖および主鎖より分岐した側鎖から構成されるペクチンの糖鎖構造を「ペクチン骨格」と称する。 本発明者らは驚くべきことに、アセロラ果実中に含まれるペクチンが、ペクチン骨格と、式:で表されるポリフェノール化合物とから形成される複合体であることを見出した。当該ポリフェノール化合物は本発明者らにより初めて単離された化合物であり、アセロニジンと命名されている。当該化合物に関しては2004年12月22日付けで日本国特許出願2004−372266号として特許出願がされている。 本発明において「複合体を形成してなる」とは、アセロニジンとペクチン骨格とが、エタノール沈殿や膜ろ過(例えば限外ろ過)等のペクチンの一般的な単離または濃縮方法によっては分離できない様式で共存していることを意味する。アセロニジン−ペクチン骨格複合体の具体的な構造は明らかでないが、アセロニジンの一部分とペクチン骨格の一部分とがエステル結合やグリコシド結合などの共有結合により結合している構造や、水素結合を介して結合している構造、疎水結合を介して結合している構造などが考えられる。またアセロニジン−ペクチン骨格複合体における、アセロニジンとペクチン骨格との量的な比は特に限定されない。本発明において、「アセロラ果実に由来するペクチン」とは、特に限定しない限り、ペクチン骨格とアセロニジンとから形成される複合体を意味する。そして、「ペクチンを単離または濃縮する」とは、ペクチン骨格とアセロニジンとの複合体であるペクチンを単離または濃縮することを意味する。また、本発明に係るペクチンを、「抗酸化力を有するペクチン」という意味で「抗酸化ペクチン」と表現する場合がある。 本発明において「アセロラ果実に由来するペクチンの加水分解物」とは、アセロラ果実由来ペクチンの主鎖および側鎖からなるペクチン骨格における構成糖間の結合、特に主鎖における構成糖間の結合を化学的または酵素的に加水分解して得られるものを指す。本発明者らの検討によれば、ペクチナーゼ(主鎖を加水分解する)によるペクチン骨格の加水分解後もなお、アセロニジンと、ペクチン骨格の加水分解物(主として側鎖からなると考えられる)とは、エタノール沈殿または限外ろ過などのペクチンを単離または濃縮するための処理によっては分離できない。すなわち、「アセロラ果実に由来するペクチンの加水分解物」もまた、ペクチン骨格の加水分解物とアセロニジンとが複合体を形成してなるものである。また本発明者らの検討により、分子量200万程度のアセロラ果実由来ペクチンも、分子量2万以下のアセロラ果実由来ペクチン加水分解物も抗酸化性を有することが明らかとなった。すなわち、本発明に用いられるアセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物の分子量は特に限定されない。 本発明に係るアセロラ果実由来ペクチンは、アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮することにより製造される。ペクチンを単離または濃縮する方法としては、ペクチン含有試料にエタノールを添加することによりペクチンを沈殿する方法や、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する方法が挙げられる。これらの方法のうち同種または異種の複数の方法を組み合わせてもよい。エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程は繰り返し行うことにより、水溶性のアスコルビン酸や有機酸またアルコールに溶解しやすいポリフェノール類を除去することが可能である。分離膜としては限外ろ過膜が好ましい。限外ろ過膜は一般に0.1μm〜2nm(分子量数百〜数百万)の範囲の粒子や高分子を阻止する膜である。限外ろ過膜は、公称されている分画分子量が1,000以上のものであることが好ましく、10,000〜100,000のものであることがより好ましい。 またアセロラ果実や、アセロラパルプ、アセロラピューレ等のパルプ質を含む果実処理物からペクチンを単離または濃縮する場合には、前段落で言及した操作の前に、パルプ質含有試料に塩酸や硝酸などの強酸を加えて酸溶解性成分を溶解させてもよい。 膜ろ過により得られたペクチンの濃縮液はそれ自体を抗酸化剤または美白剤の有効成分として用いることもできるし、粉末化して用いることもできる。濃縮液の粉末化はフリーズドライ法やスプレードライ法により行うことができる。膜ろ過における濃縮側の濃縮度は、任意に選択可能であるが、濃縮液中のペクチンの固形分含量が10%(W/W)以上、好ましくは20%(W/W)以上となるような濃縮度であることが好ましい。濃縮液を粉末化するには、濃縮液中のグルコース及びフルクトースを酵母などによる脱糖処理によって除去することが必要である場合があるが、濃縮度が前記範囲である場合には脱糖処理を容易に行うことができる。また、限外ろ過膜の分画分子量と濃縮条件を適宜選択することにより、膜ろ過においてグルコースおよびフルクトースを濃縮側から除去すれば、濃縮液を粉末化する際の脱糖処理が不要になる。 本発明に係るアセロラ果実由来ペクチンの加水分解物は、上述のペクチンの単離または濃縮工程と、当該工程の前後の少なくとも一方において、ペクチンを加水分解する工程を含む方法により製造される。ペクチンの加水分解は、アセロラ果実由来ペクチンの骨格における構成糖間の結合、特に主鎖における構成糖間の結合を化学的または酵素的に加水分解することを意味する。加水分解はペクチナーゼを用いて行われることが好ましい。ペクチナーゼを使用する場合、その種類は特に限定されないが、例えばエンド型のポリガラクツラナーゼ活性を有するペクチナーゼを使用することができる。ペクチナーゼの起源は特に限定されないが、アスペルギルス属菌、例えばA.Pulverulentus又はA.niger、に由来するものを一例として挙げることができる。アセロラ果実由来ペクチンのペクチナーゼによる加水分解物は、主鎖の分解物である遊離のガラクツロン酸を含んでいる。加水分解物のうち、アセロニジンと複合体を形成してなる成分のみを分離するためには、疎水性カラム(例えばC18カラム)を用いて前記成分をカラムに吸着させ、吸着された前記成分を溶出により回収することができる。こうして回収される前記成分もまた、本発明に係るペクチンの加水分解物の一実施形態である。 最も好ましい実施形態においては、本発明に係るアセロラ果実由来ペクチンの加水分解物の製造方法は、アセロラ果実から調製されたピューレをペクチナーゼで処理して前記ピューレ中のペクチンを加水分解する工程と、前記工程からの処理物の上清から、加水分解されたペクチンを単離または濃縮する工程とを含む。この実施形態では、加水分解されたペクチンを単離または濃縮する前に、前記上清を好ましくは0.2μmのフィルターを通すことが好ましい。この実施形態ではまた、加水分解されたペクチンの濃縮が限外ろ過膜を用いて行われることが好ましい。限外ろ過により得られる濃縮液はさらに粉末化することが好ましい。こうして得られた粉末は微粉砕が容易であり、流動性が高く、吸湿性が低い。2.アセロラ果実由来ペクチンの用途 本発明に係るアセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物は、脂質の自動酸化を抑制する作用と、フリーラジカル消去作用を有することから、抗酸化剤の有効成分として用いることができる。 本発明に係るアセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物はまた、経口投与により美白作用を有することから、美白剤の有効成分として用いることができる。3.アセロラ果実処理物を有効成分とする脂質に対する抗酸化剤 本発明者らはまた、驚くべきことに、アセロラ果実に含まれる、疎水性カラムに吸着する成分(ポリフェノール化合物を含有する)や、アスコルビン酸もまた脂質に対する抗酸化剤として有用であることを見出した。すなわち、本発明はさらに、アセロラ果実処理物を有効成分として含有する脂質に対する抗酸化剤に関する。 アセロラ果実処理物は水溶性のものであることが好ましい。食品工業において特に汎用され得るからである。 本発明のこの実施形態においては、アセロラ果実由来のポリフェノール化合物、およびアスコルビン酸の少なくとも一方、好ましくは両方を含むアセロラ果実処理物であるかぎり、脂質に対する抗酸化剤の有効成分として用いることができる。ただし本発明のこの形態において、アセロラ処理物はアセロラの種子以外の部分、例えばアセロラの果肉、果皮等に由来するものである。 アセロラ果実由来のポリフェノール化合物としては具体的には、アセロニジン、シアニジン−3−ラムノシドとペラルゴニジン−3−ラムノシド等のアントシアニン系色素、クエルシトリン(ケルセチン−3−ラムノシド)、イソクエルシトリン(ケルセチン−3−グルコシド)、ハイペロサイド(ケルセチン−3−ガラクトシド)等のケルセチン配糖体、アスチルビンが挙げられる。これらのポリフェノール類は複数のポリフェノール化合物からなる混合物として、又は個々の化合物単独で使用することができる。これらのポリフェノール化合物は単離または高濃度化して使用することができる。ポリフェノール化合物を単離又は高濃度化する方法は特に限定されないが、例えばHPLC、合成吸着剤クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等があり、特に合成吸着剤クロマトグラフィーが好ましい。 アセロラ果実由来のポリフェノール化合物を含有するアセロラ果実処理物としては、アセロラ果汁等から上述の各種クロマトグラフィーにより分取されたポリフェノール化合物を含有する画分を本発明に好適に使用することができる。なかでも、アセロラ果汁等から得られたC18カラム(疎水性カラム)吸着画分が、本発明に特に好適に使用される。C18カラム吸着画分などのアセロラ由来ポリフェノール含有画分には、溶出液、その濃縮物及びその乾燥物等が包含される。 一般にポリフェノール化合物は水に難溶性であるといわれているが、本発明に使用されるアセロラ処理物にはポリフェノールが水に溶解し易い状態で含まれている。 通常、アスコルビン酸は単独では水溶性が高いため脂質に対する抗酸化剤としては作用しない(実施例2実験2.7参照)。しかしながらアセロラ処理物中においてはアスコルビン酸が脂質に対する抗酸化剤として機能しているものと考えられる(実施例2実験2.9参照)。4.本発明に係る抗酸化剤の使用形態 上記のとおり、アセロラ果実に由来する、(a)ペクチンまたはその加水分解物、(b)C18カラム吸着成分、および(c)アスコルビン酸、が抗酸化剤の有効成分として有用である。 本発明の抗酸化剤はこれらの成分(a)、(b)、(c)のうち少なくとも1種、より好ましくは2種、最も好ましくは全部を含有していることが好ましい。 実施例2実験2.1で調製されているような、アセロラの果汁からグルコースとフルクトースを除去し粉末化した材料には成分(a)、(b)および(c)が含有されており、優れた抗酸化性を有する。当該材料は本発明の抗酸化剤(特に脂質に対する抗酸化剤)の好ましい実施形態である。 本発明の抗酸化剤は水溶性であるから、油脂類と水系成分との混合系であるこの多い魚肉・畜肉類及び穀物類などの加工製品、塩蔵食品、油脂含有調味料などの製造において、脂質に対する抗酸化剤として好適に使用することができる。なお、実施例2実験2.1で調製されているアセロラパウダーは、脂溶性抗酸化剤として周知のα−トコフェロール(ビタミンE)と同一条件下で比較しても優れた脂質抗酸化性を有する(実施例2実験2.6参照)。 本発明はまた、以上に説明した抗酸化剤を用いた、酸化安定性の高められた食品及びその製造方法に関する。本発明の抗酸化剤は脂質、特に酸化され易い脂質を含有する食品、例えば魚肉・畜肉類及び穀物類などの加工製品、塩蔵食品、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸を含有する調味料(例えばドレッシング)などの食品の製造において添加剤として使用できる。添加方法は特に限定されないが、例えば加工食品の製造時にピックル液や調味料中に添加したり、食品材料に添加することにより行うことができる。 本発明の抗酸化剤は食品添加物としてだけでなく、生体内で作用する抗酸化剤として食品又は医薬品の形態で使用することができる。そして、必要に応じて適当な担体、賦形剤等を利用して適当な食品形態又は製剤形態に常法に従って調製することができる。 食品形態としては、飲料、固形食品、半固形食品等であってよい。飲料としては、具体的には、果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料等が挙げられる。また、摂取時に水等を用いて希釈して摂取する形態であってもよい。固形又は半固形食品としては、錠剤(タブレット)、糖衣錠、顆粒、粉末飲料、粉末スープ等の粉末状食品、ビスケット等のブロック菓子類、カプセル、ゼリー等の形態を挙げることができる。また必要に応じて、食品の調製に慣用されている各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤としては、例えば、安定化剤、pH調整剤、糖類、甘味料、香料、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、賦形剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、着色料、保存剤等を例示することができる。 製剤形態への調製は、常法に従って行うことができ、その際に利用できる担体や賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、希釈剤も、慣用されている各種のものから適宜選択することができる。形態には、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、経鼻剤、経腸剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として製剤化される。5.本発明に係る経口投与用美白剤の使用形態 上記2に記載のとおり、アセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物は経口投与用美白剤の有効成分として有用である。 一方、アセロラ果実に多く含有されるアスコルビン酸もまた経口投与用美白剤の有効成分として使用できることが知られている。 本発明の経口投与用美白剤は、アセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物に加えて、アスコルビン酸を含有するものであることがより好ましい。 アセロラ果実由来ペクチンの加水分解物とアスコルビン酸とを含有する経口投与用美白剤は、それぞれ独立に調製されたアセロラ果実由来ペクチンの加水分解物とアスコルビン酸とを用いて製造することができるが、次の方法で製造してもよい。すなわち、アセロラ果実、又はアスコルビン酸とパルプ質とを含むアセロラ果実処理物に、ガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して5重量%以上となるようにパルプ質中のペクチンの加水分解処理を施す工程を含む方法である。ここで「パルプ質」とは果実に含まれる繊維質の成分を指し、通常はペクチン、セルロース等の繊維質の骨格を主成分とし、その他の成分がこの骨格にいろいろな様式により結合した構造を有する。ペクチンの加水分解が進むに連れて遊離のガラクツロン酸量が増加することから、ガラクツロン酸の生成量がペクチンの加水分解の進行の指標となる。本発明のこの実施形態では、ガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して5重量%以上、より好ましくは10重量%となるようにペクチンの加水分解処理を行うことが好ましい。加水分解処理の程度に特に上限はないが、典型的にはガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して20重量%以下となる程度である。なおアスコルビン酸は、0.02%の2,6−ジクロロインドフェノール水溶液の青色を、アスコルビン酸の還元作用により無色にする滴定試験により定量することができる。ガラクツロン酸は実施例3に示した通り3,5ジメチルフェノール(3,5−dimetyl phenol)法により定量することができる。 本発明に係る経口投与用美白剤は、グルコースおよびフルクトースが実質的に除去されたものであることが好ましい。これらの糖類が実質的に除去されている場合、処理物を粉末化した場合の吸湿性が低くなるため、賦形剤等の添加量を少なくして活性成分の割合を高めることが可能になるという点で有利である。また本発明に係る美白剤は経口摂取されるものであるから、糖類を除去することで製品が低カロリー化されるという点でも好適である。グルコースおよびフルクトースが「実質的に除去」されているとは、処理物を粉末化した場合の吸湿性が十分に低くなる程度にグルコースおよびフルクトースが除去されていることを意味する。 グルコースおよびフルクトースの除去は例えば酵母による発酵処理により行うことができる。発酵処理では、グルコースおよびフルクトースが炭酸ガスとエチルアルコールに変換されて除去される。発酵処理による糖類の除去工程においては、アスコルビン酸等の美白剤の有用成分が損失しないため好都合である。パルプ質分解処理工程と、糖類の除去工程とはどちらを先に行ってもよく、また同時に行ってもよい。 本発明の経口投与用美白剤は、単独又は他の成分との組み合わせにより、飲食品組成物又は医薬組成物の形態で使用することができる。皮膚美白に資することができるだけでなく、皮膚老化防止、皮膚癌の予防又は治療などの効果を奏するものと期待される。 飲食品組成物の形態としては、飲料、固形食品、半固形食品等が挙げられ、栄養補助食品、特定保健用食品にもなり得る。飲料としては、具体的には、果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料等が挙げられる。また、摂取時に水等を用いて希釈して摂取される形態であってもよい。固形食品としては、例えば、飴、トローチ等を含む錠剤(タブレット)や糖衣錠の形態、顆粒の形態、粉末飲料、粉末スープ等の粉末の形態、ビスケット等のブロック菓子類の形態、カプセル、ゼリー等の形態等、種々の形態の食品が挙げられる。半固形食品としては、例えばジャムのようなペーストの形態、チューイングガムのようなガムの形態が挙げられる。これらの飲食品組成物には本発明の美白剤のほかに、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で、通常、食品原料として用いられる種々の成分を配合することができる。他の成分としては例えば水、アルコール類、甘味料、酸味料、着色料、保存剤、香料、賦形剤等が挙げられる。これらの成分は単独で、または組み合わされて使用され得る。 医薬組成物の形態である場合、経口投与用製剤であればその形態は特に制限されない。例えば散剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、内用液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等の形態とすることができる。これらの製剤形態は症状に応じて単独で、または組み合わされて使用することができる。各種製剤形態への調製は、常法により行われる。その際使用される担体、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、希釈剤等も慣用されているものから適宜選択される。例えば粉末化を行なう場合、貝カルシウムを用いて流動性を高めることができる。 本発明に係る経口投与用美白剤の適用量は、症状、目的に応じて適宜選択し得るが、しみ・日焼けによる色素沈着を抑制するための医薬品として使用する場合は、アスコルビン酸の摂取量が1日に300〜600mgとなるように本発明に係る経口投与用美白剤を摂取することが好ましい。実験1.1.果汁からの抗酸化ペクチンの回収実験1.1.1.もも果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ぶどう果汁からのペクチン回収 検体となる果実をナイフを用いて皮及び核を除去し、可食部のみにした。次に、ジューサーを用いて、可食部を粉砕した。この粉砕物を4950rpm、60分、20℃の条件で遠心分離し、その上清を0.2μmのフィルターでろ過し、清明な果汁溶液を回収した。この果汁溶液に3倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、4950rpm、20分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。この沈殿は検体果汁由来ペクチンである。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を10倍量以上の精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4950rpm、20分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、検体果汁由来ペクチンを回収した。各実験での使用検体量及び回収量を表1に示す。実験1.1.2.緑果アセロラ果汁からのペクチン回収 赤色に熟する前の緑色〜黄色の緑果(未熟果)であるアセロラ果実から、パルプフィニシャー装置を用いて、種子を除去したピューレを調製した。このピューレ18337gを4200rpm、45分、20℃の遠心分離処理を行い上清を回収し、0.2μmフィルターろ過し、清明な果汁溶液13632gを回収した。溶液量が多いため、減圧蒸留機により濃縮し、4258gを回収した。この果汁溶液に3倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、ステンレスメッシュを用いて固形分を回収した。ペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の3倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。合計3回のエタノール沈殿を行った。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、緑果アセロラ果汁由来ペクチン19.7gを回収した。実験1.1.3.抗酸化力の評価 果汁由来のペクチン5種類を試験法1に記載したβ−カロチン退色抑制試験と試験法2に記載したDPPHラジカル消去活性試験により評価を行った。その結果を表2に記載する。その結果、どのペクチンも抗酸化作用のひとつであるβ−カロチン退色抑制作用を示したが、DPPHラジカル消去活性は、アセロラ果汁由来ペクチンのみに強く認められた。アセロラ果汁由来のペクチンはDPPHラジカル消去作用を有することから、多くの対象物に対して抗酸化力を有するものと期待できる。以上の通り、抗酸化性ペクチンはアセロラ果汁からエタノール沈殿法により行うことにより、抗酸化活性を損なうことなく生産すること可能であることが判明した。実験1.2.パルプからの抗酸化性ペクチンの回収実験1.2.1.ももパルプ、グレープフルーツパルプ、レモンパルプ、ぶどうパルプからのペクチン回収 検体となる果実をナイフを用いて皮及び核を除去し、可食部のみにした。次に、ジューサーを用いて、可食部を粉砕した。この粉砕物を4950rpm、60分、20℃の条件で遠心分離し、沈殿物を回収した。この沈殿物は果実由来のパルプである。このパルプに攪拌が可能となるように3.5倍量から8倍量の精製水を加え攪拌し、濃塩酸を添加してpH2.0に調整した。これを攪拌しながら80℃で2時間加温し、一晩室温で攪拌した。この溶液を4950rpm、60分、20℃の条件で遠心分離し、上清を回収し、0.2μmのフィルターろ過を行い清明なペクチン抽出液を回収した。この抽出液に2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、4950rpm、20分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。この沈殿は検体パルプ由来ペクチンである。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を10倍量以上の精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4950rpm、20分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、検体パルプ由来ペクチンを回収した。各実験での使用検体量及び回収量を以下の表3に示す。実験1.2.2.緑果アセロラパルプからのペクチン回収 赤色に熟する前の緑色から黄色の緑果(未熟果)であるアセロラ果実をパルプフィニシャー装置により種子を除去したピューレを調製した。このピューレ18337gを4200rpm、45分、20℃の遠心分離処理を行い沈殿物3386gを回収した。この沈殿物はアセロラパルプである。このパルプに攪拌が可能となるように5倍量の精製水を加え攪拌し、濃塩酸を添加してpH2.0に調整した。これを攪拌しながら80℃で2時間加温し、一晩室温で攪拌した。この溶液を4200rpm、30分、20℃の条件で遠心分離し、上清を回収し、0.2μmのフィルターろ過を行い清明なペクチン抽出液を回収した。この溶液に2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、ステンレスメッシュを用いて固形分を回収した。ペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。合計3回のエタノール沈殿を行った。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、緑果アセロラパルプ由来ペクチン38.63gを回収した。実験1.2.3.抗酸化力の評価 パルプ由来のペクチン5種類の抗酸化力を、試験法1に記載したβ−カロチン退色抑制試験と試験法2に記載したDPPHラジカル消去活性試験により評価した。その結果を表4に記載する。その結果、どのペクチンも抗酸化作用のひとつであるβ−カロチン退色抑制作用を示したが、DPPHラジカル消去活性は、アセロラパルプ由来ペクチンのみに強く認められた。アセロラパルプ由来ペクチンはDPPHラジカル消去作用を有することから、多くの対象物に対して抗酸化力を有するものと期待できる。以上の通り、抗酸化性ペクチンはアセロラパルプから酸加熱処理を行いエタノール沈殿法により行うことにより、抗酸化活性を損なうことなく生産すること可能であることが判明した。実験1.3.熟度の異なるアセロラ果実に由来する抗酸化性ペクチンの評価 上記1.1と1.2.で調製した緑果アセロラ果実から得られた緑果果汁由来ペクチン及び緑果パルプ由来ペクチンの抗酸化性と、赤く熟した熟果アセロラ果実から以下の方法で調製したペクチンの抗酸化性をDPPHラジカル50%消去活性試験(試験法2参照)により評価した。実験1.3.1.熟果アセロラ果汁からのペクチン回収 赤色に熟した熟果アセロラ果実をパルプフィニシャー装置により種子を除去したピューレを調製した。このピューレ21861gを4200rpm、45分、20℃の遠心分離処理を行い上清を回収し、0.2μmフィルターろ過し、清明な果汁溶液15324gを回収した。溶液量が多いため、減圧蒸留機により濃縮し、5618gを回収した。この果汁溶液に3倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、ステンレスメッシュを用いて固形分を回収した。ペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の3倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。合計3回のエタノール沈殿を行った。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、熟果アセロラ果汁由来ペクチン39gを回収した。実験1.3.2.熟果アセロラパルプからのペクチン回収 赤色に熟した熟果アセロラ果実をパルプフィニシャー装置により種子を除去したピューレを調製した。このピューレ21861gを4200rpm、45分、20℃の遠心分離処理を行い沈殿物5022gを回収した。この沈殿物はアセロラパルプである。このパルプに攪拌が可能となるように5倍量の精製水を加え攪拌し、濃塩酸を添加してpH2.0に調整した。これを攪拌しながら80℃で2時間加温し、一晩室温で攪拌した。この溶液を4200rpm、30分、20℃の条件で遠心分離し、上清を回収し、0.2μmのフィルターろ過を行い清明なペクチン抽出液を回収した。溶液量が多いため減圧蒸留濃縮を行い、9159gの溶液を回収した。この溶液に2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、一晩、室温に放置した後に、ステンレスメッシュを用いて固形分を回収した。ペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。さらにペクチンの精製度を上げるために、この沈殿物を精製水に溶解させ、総重量の2倍重量のエタノールを添加・攪拌し、30分室温に放置した後に、4200rpm、30分、20℃で遠心分離処理し、沈殿物を回収した。合計3回のエタノール沈殿を行った。この沈殿物を凍結乾燥処理により乾燥させ、熟果アセロラパルプ由来ペクチン26gを回収した。実験1.3.3.抗酸化力の評価 4種類のアセロラ由来ペクチンの抗酸化性をDPPHラジカル50%消去活性試験により評価した。その結果を表5に示す。この試験結果は、DPPHラジカルを50%消去するサンプルの濃度で示している為、濃度が低いほどそのペクチンの抗酸化力が強いことを示している。その結果、どのペクチンにも十分な抗酸化力が認められるが、熟果より緑果のペクチンの方がより強いことから、抗酸化性ペクチンの抽出原料としては緑果アセロラ果実がより適していると考えられる。実験1.4.ペクチナーゼ処理を用いた抗酸化性ペクチンの生産方法 緑果アセロラからパルプフィニシャー(果汁及びパルプ分と種子を分離する装置)により、アセロラピューレを調製し、凍結保存した。このアセロラピューレを解凍し、19899gを室温に戻し、0.1%(W/W)分のペクチナーゼ(ペクチナーゼA「アマノ」、アマノエンザイム社製)を添加し、50℃で2時間攪拌処理を行った。翌日まで室温で攪拌処理を行い、酵素処理ピューレを遠心分離処理(4950rpm、30分)を行い、上清を回収した。不溶性の成分を除去するために、この上清を複数のフィルターろ過を行い最終的に0.2μmのフィルターろ過した果汁を17420g回収した。これを、減圧蒸留濃縮装置により濃縮し、濃縮液2981gを回収した。この濃縮液に4倍重量のエタノールを添加し、1日以上室温で放置した後、遠心分離処理(4950rpm、5分)によりエタノール沈殿物600g(水分を含む)を回収した(1回目)。このエタノール沈殿物に20倍重量の精製水を添加し、沈殿物を溶解させ、さらに2倍重量のエタノールを加え、1日以上冷蔵保存した。この溶液をガラス繊維フィルターでろ過し、ろ紙上に残った、2回目のエタノール沈殿物544g(水分を含む)を回収した。これに精製水を加え溶解し、同重量のエタノールを加え1日以上冷蔵保存した。この溶液をガラス繊維フィルターでろ過し、ろ紙上に残った、3回目のエタノール沈殿物434g(水分を含む)を回収した。これを−80℃で凍結し、完全に凍結した後、凍結乾燥処理を行い、アセロラ由来ペクチン粉末78gを回収した。 こうして得られたアセロラ由来ペクチンの抗酸化力と、実験1.1および1.2.で調製した緑果アセロラ果実から得られた緑果果汁由来ペクチン及び緑果パルプ由来ペクチンの抗酸化性とを比較した。 各ペクチンの抗酸化力をDPPHラジカル50%消去活性試験(試験法2)により評価した。その結果を表6に示す。 ピューレを果汁とパルプとに分離し、それぞれからペクチンを回収した場合の総ペクチン回収率は0.32%(=0.11%+0.21%)である。一方、本実験におけるペクチナーゼ処理ペクチンの回収率は0.39%であり、回収率がより高いことが示された。また本実験で得られたペクチナーゼ処理ペクチンも十分な抗酸化性を有する。実験1.5.限外ろ過法を用いた抗酸化性ペクチン溶液の生産方法 緑果アセロラからパルプフィニシャー(果汁及びパルプ分と種子を分離する装置)により、アセロラピューレを調製し、凍結保存した。このアセロラピューレを解凍し、55000gを室温に戻し、0.1%(W/W)分のペクチナーゼ(ペクチナーゼA「アマノ」、アマノエンザイム社製)を添加し、50℃で2時間攪拌処理を行った。翌日まで室温で攪拌処理を行い、酵素処理ピューレを遠心分離処理(4950rpm、30分)を行い、上清を回収した。不溶性の成分を除去するために、この上清を複数のフィルターろ過を行い最終的に0.2μmのフィルターろ過した果汁を47130g回収した。これを、分画分子量1万の限外ろ過膜(ハイドロザルト10K、ザルトリウス社製)で限外ろ過を行った。濃縮液8730gを回収した。 この濃縮液の蒸発残留物濃度としての固形分濃度は、11.77%であり、この濃縮液からエタノール沈殿として抗酸化ペクチンを回収したところ濃縮液500gから16.87gの抗酸化ペクチンが回収されたことから、この濃縮液中の抗酸化ペクチン含量は、3.374%であることが確認された。これらの濃度から、濃縮液中のペクチン重量は、294.2gと計算され、これをピューレ重量からの回収率として計算すると0.53%回収となることから、実験1.4の生産方法による回収率よりも良好であることが判明した。また今回の抗酸化ペクチン溶液の全固形分の中で抗酸化ペクチンの含有量は28.7%であるが、限外ろ過法では、原液量と最終濃縮液量の比率を変えることによりその含有量を調節することも可能である。実験1.6.実験1.5で調製した溶液からのアセロラパウダーの製造法 実験1.5で調製したアセロラ由来抗酸化性ペクチン濃縮液600gを凍結し、フリーズドライ法により、凍結乾燥処理を行った。その結果、粉末63gを回収した。濃縮液の固形分濃度は11.77%であるので理論的には固形分は70.62gであり、回収率は89.2%であった。この粉末の、アスコルビン酸濃度をインドフェノール法により測定したところ、21.06%であった。また濃縮液中の抗酸化性ペクチンの含量から、この粉末中の抗酸化性ペクチン濃度は28.7%と計算された。得られた粉末は、凍結乾燥後、良好な状態で微粉砕することが可能であり、顕著な吸湿性も無く流動性も優れていることから抗酸化性ペクチンが賦形剤として作用していると考えられる。実験1.7.アセロラ由来抗酸化性ペクチン中のポリフェノールの検討(1) 実験1.4で調製したアセロラ由来抗酸化性ペクチン粉末10gを2Nの水酸化ナトリウム水溶液500mLに溶解し、40℃で恒温しんとう器により16時間加水分解処理を行った。さらに酸性ポリフェノールの溶解性を高める為に、濃塩酸を加えpH2.0に調整した。この溶液に遊離したペクチン由来の糖分を除去するために4倍重量のエタノール加え、冷蔵室にて1日以上放置し、エタノール沈殿を行った。ペクチン回収時と同じ条件で行うことにより、アルカリによる加水分解されたものだけが沈殿せず、遊離し上清中に存在することになる。このエタノール添加溶液を遠心分離処理(4200rpm、30分)により固形分を沈殿させ、上清を回収した。この上清を0.45μmフィルターろ過し、固形分を完全に除去した。このろ過液を減圧蒸留により濃縮し、濃縮液250mLを回収した。この濃縮液をポリフェノールが吸着するC18カラム(Sep−Pak Vac 35cc(10g)C18 Cartridges,ウォーターズ社製)2本に半量ずつ負荷し、精製水で未吸着成分を洗浄した後、25%メタノール水溶液で吸着成分を溶出させた。この溶出液は、減圧蒸留機により乾固させ、100%メタノール5mLに溶解し、ペクチン抽出サンプルとした。このサンプルを分析用HPLCカラム(4.6mmx250mm、ODS−3、ジーエルサイエンス社)により、0.01N塩酸水溶液とメタノールのリニアグラジエントを用いて成分の分析を行った。この結果を図1に示す。 この分析により、22.4分に主成分が存在することが確認できたため、次に分取用カラムによりペクチン抽出サンプル4.5mLを用いて分取した。分取用カラムにはODS−3(20mmx250mm、ジーエルサイエンス社製)を用い、流速は12mL/分で0.01N塩酸水溶液とメタノールのグラジエントで行った。分取結果を図2に示す。 図2の33.46分のピークを回収し、減圧蒸留機により乾固させ、精製水で溶解させ、冷蔵室にて一晩放置すると、析出物が生じたので遠心分離によりこの析出物28mgを回収した。さらにこの析出物をメタノールに溶解し、このサンプルをフォトダイオードアレイ検出器を備えたHPLCシステムにより分析用HPLCカラム(4.6mmx250mm、ODS−3、ジーエルサイエンス社)により、0.05%TFA水溶液と0.05%TFA添加メタノールのリニアグラジエントを用いて成分の分析を行った。結果を図3に示す。この結果、上記析出物がペクチン抽出サンプルの主成分であることが確認された。 さらに図3に示される22.4分のピークのスペクトルデータ(図4A)を確認したところ、アセロニジン(参考例1)のスペクトルデータ(図4B)とほぼ一致することが判明した。なお、図4AおよびBに示すスペクトルデータは、HPLC装置(使用装置LC−2010CHT(島津製作所製))にフォトダイオードアレイ検出器(PDA,使用装置SPD−M20A(島津製作所製))を付属させたシステムを用いて収集したものである。 以上のHPLC溶出時間とスペクトルデータよりアセロラ由来抗酸化性ペクチンに含まれているポリフェノールはアセロニジンである可能性が非常に高いことが判明した。実験1.8.アセロラ由来抗酸化性ペクチン中のポリフェノールの検討(2) アセロラ由来抗酸化性ペクチン抽出ポリフェノールの構造に関してさらにESI−MS測定及びNMR測定によって分析した。分子量をLCT質量分析計(Micromass)装置により分析したところ、アセロニジンと同様にm/z473(ナトリウム付加イオン(M+Na)+)が観察されたことから、分子量450のアセロニジンと同一であることが確認された。さらに1H NMR測定の結果、3.3ppm付近及び4.8ppm付近に溶媒に由来するピーク(図5下段)が観察された。このピークはアセロニジンのピーク(図5上段)とよく一致することが判明した。 以上のことからアセロラ由来抗酸化性ペクチン抽出ポリフェノールはアセロニジンであることが確認された。実験1.9.アセロラ由来C18カラム結合ペクチンの調製 実験1.4で調製したアセロラ由来ペクチン50gを5000mLの1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に溶解した。これを0.2μmのフィルターでろ過した後、ろ過液をC18カラム(Sep−Pak Vac 35cc(10g)C18 Cartridges,ウォーターズ社製)20本に負荷し、精製水で未吸着成分を洗浄した後、50%メタノール水溶液で吸着成分を溶出させた。溶出液を減圧蒸留機により乾固させ、精製水に溶解し、不溶物を0.2μmフィルターで除去した後、凍結し、凍結乾燥処理を行い、凍結乾燥粉末6.24gを得た。 実験1.4で調製したアセロラ由来ペクチン(サンプル1)と、本実験で調製したアセロラ由来C18カラム結合ペクチン(サンプル2)についてポリフェノール濃度、DPPHラジカル消去活性、チロシナーゼ阻害活性、糖組成をそれぞれ分析した。ポリフェノール濃度はカテキンを標準物質として用い、フォーリンデニス法により測定した。DPPHラジカル消去活性は試験法2、チロシナーゼ阻害活性試験は試験法3、糖組成分析は試験法4で分析を行った。 表7および表8の結果から、アセロラ由来の抗酸化性ペクチンは、主にポリガラクツロン酸から成る主鎖と中性糖から成る側鎖で構成されていると考えられるC18樹脂結合成分の分析結果からポリフェノールは主に側鎖に存在すると考えられる。ポリフェノール含量が高いサンプル2は抗酸化性及び美白作用も強いことから、抗酸化性及び美白作用はアセロニジンの作用によるものとも考えられたが、美白作用(チロシナーゼ阻害作用)は、アセロニジンにはほとんど認められない。従って、美白作用はアセロラ由来抗酸化性ペクチン特有の活性であることが判明した。試験法1.1.β−カロチン退色抑制試験 この方法は、リノール酸の過酸化物がβ−カロチンを退色させる作用を被検物質がどの程度抑制するか測定する方法である。実験は、10%(W/V)リノール酸/クロロホルム溶液0.48mLと0.01%(W/V)β−カロチン/クロロホルム溶液1.2mLと20%(W/V)tween40/クロロホルム溶液2.4mLに200mL三角フラスコに入れ混合し、窒素ガスを吹き付けることによりクロロホルムを除去した後、精製水108mLと0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)12mLを混合する。これをリノール酸溶液とする。このリノール酸溶液4.9mLに適切な濃度に希釈した検体0.1mLを添加混合し、470nmの吸光度を測定する。これを0分値とする。測定後、直ちに50℃の恒温槽で加温し、120分後に470nmの吸光度を測定する。これを120分値とする。ブランクとしては検体希釈液である精製水を検体の代わりに用いて測定する。このβ−カロチン退色抑制率は以下の計算式により算出する。β−カロチン退色抑制率(%)=100−(1−(検体0値−検体120分値)/(ブランク0分値−ブランク120分値))×100試験法1.2.DPPHラジカル消去活性試験 安定なラジカルであるDiphenyl−p−picrylhydradil(DPPH)のエタノール液を用いて、抗酸化性を評価した。250mM酢酸緩衝液(pH=5.5)1600μlにエタノール1200μl、検体400μl(任意の濃度に調整)を混合し、30℃、5分間プレインキュベートする。この液に500μM DPPH/エタノール溶液を800μl添加混合し30℃、30分間放置後、517nmの吸光度を測定する。α−トコフェロールについても同様の操作を行い、これを正の対照とした。コントロールには、試料溶液の代わりにその溶媒を用いて同様の操作を行ったものを用いた。測定された吸光度から、次式によりラジカル消去率を算出した。消去率(%)=(1−[試料の吸光度]/[コントロールの吸光度])×100 さらに試料溶液の試料濃度を段階的に変更して上記消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料溶液の濃度を求め、DPPHラジカル50%消去濃度とした。よって、この数値が低いほど、ラジカル消去能が高いといえる。試験法1.3.チロシナーゼ阻害作用(美白活性) メラニン色素生成酵素であるチロシナーゼ阻害活性試験について以下の手順で実施した。(1)L−DOPA水溶液*4mLと各濃度に希釈したサンプル**4mLと0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)2mLを混合し、37℃恒温槽で加温する。これをサンプル混合液とする。*L−DOPA水溶液:L−β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン(和光純薬社製)を0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)で3mMの濃度に溶解したもの**サンプルは全て0.2Mリン酸緩衝液で希釈溶解する(2)吸光度計のセルにサンプル混合液2.5mLと37℃に加温したチロシナーゼ溶液*0.5mLを入れ、475nmを測定する。測定はカイネティクスソフトを用い、0.1秒単位で開始から20秒間の吸光度変化を自動測定後、4秒〜10秒区間の吸光度上昇速度を算出する。*チロシナーゼ溶液:マッシュルーム由来のチロシナーゼ(シグマ社製)を0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)で300unit/mLの濃度で溶解させ、0.2μmフィルターろ過した溶液(3)ブランクとしてサンプルの代わりに0.2Mリン酸緩衝液を用いて測定し、以下の計算方法でチロシナーゼ阻害活性を算出した。またリン酸緩衝液で溶解できない物質は、まずジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解した後、リン酸緩衝液で希釈して測定し、同じ濃度のDMSOを含むブランクの測定結果から算出した。チロシナーゼ活性阻害率(%)=100−((サンプルの吸光度上昇速度)/(ブランクの吸光度上昇速度))x100試験法1.4.糖組成分析 分析は、それぞれのサンプルを2Nのトリフルオロ酢酸を添加し、100℃で6時間加水分解した後に、分解された中性糖及びウロン酸を精製水で回収し、HPLC法で行った。分析条件は以下の通りである。 中性糖分析条件 検出器:分光蛍光光度計 カラム:TSK−gel Suger AXG 4.6mmx150mm(東ソー製) 移動相:0.5Mホウ酸カリウム緩衝液pH8.7 移動相流速:0.4mL/min ポストカラム標識:反応試薬 1%アルギニン/3%ホウ酸 反応試薬流速:0.5mL/min 反応温度:150℃ 検出波長:EX.320nm,EM.430nm ウロン酸分析条件 検出器:分光蛍光光度計 カラム:Shimpack ISA07 4.6mmx250mm(島津製作所製) 移動相:1.0Mホウ酸カリウム緩衝液pH8.7 移動相流速:0.8mL/min ポストカラム標識:反応試薬 1%アルギニン/3%ホウ酸 反応試薬流速:0.8mL/min 反応温度:150℃ 検出波長:EX.320nm,EM.430nm 測定は中性糖及びウロン酸の検量線を作成し、それに基づいて試料の糖含量の測定を行った。この分析では、全ての糖鎖が分解することがないことと一部の糖が分解して検出されない可能性はある。参考例:アセロニジンの単離と同定(1)アセロニジンの単離 アセロニジンを調製する原料として、アセロラ濃縮果汁を酵母により発酵させ、ぶどう糖と果糖を除去し、賦形剤として食物繊維及び酸化カルシウムを溶解させて粉末化したアセロラパウダー(株式会社ニチレイ製、ニチレイ・アセロラパウダーVC30)を使用した。 このアセロラパウダー400gを精製水で溶解させ、20%(W/W)水溶液、2000gを調製した。この水溶液に半量(容積基準)の酢酸エチルを添加して攪拌し、分液ロートを用いて液−液分画を行い、水層画分を回収した。この水層画分に半量(容積基準)のブタノールを添加して攪拌し、分液ロートを用いて液−液分画を行い、ブタノール層画分を回収した。このブタノール層画分に精製水を適量加え減圧蒸留処理を行い、乾固させ、24gの固形分を回収した。 上記の固形分を50mLの精製水に溶解させ、C18カラム(Sep−Pak Vac 35cc(10g)C18 cartridges,Waters社製)により部分精製を行った。これは、サンプルを負荷し、精製水及び10%メタノール水溶液でカラム洗浄を行った後、20%メタノール水溶液で溶出させた画分を回収した。これを減圧蒸留器により蒸発乾固させ、0.8gの固形分を回収した。 この固形分を10mLの20%メタノール水溶液で溶解させ、この検体を高速液体クロマトグラフィーにより、高純度精製を行った。分取用カラムには、Inertsil ODS−3 5μm 4.6x250mm(GL−science社製)を用いた。分取操作は1回に0.5mLの検体をカラムに負荷させ、10%メタノール水溶液でカラムを洗浄した後、10%〜50%メタノール濃度になるグラジエントにより溶出させ、ポリフェノール配糖体を含むピークを回収した。この分取操作を20回繰り返した。 上記の方法により精製したポリフェノール配糖体を含有するメタノール水溶液を減圧蒸留器により乾固させ、精製水に懸濁し、不溶物を遠心分離により上清と分離して回収した。この不溶物を再度メタノールで溶解させ、減圧蒸留器により蒸発乾固させ、再度精製水で懸濁し、不溶物を回収した。この不溶物を回収し、凍結乾燥機により水分を除去し、ポリフェノール配糖体10mgを得た。(2)アセロニジンの同定 上記の手順で単離されたポリフェノール配糖体の構造を、各種スペクトル測定を用いて決定した。 各測定条件を表9に示す。高分解能ESI−MS トータルイオンクロマトグラムを図6Aに、高分解能ESIマススペクトルを図6Bに示す。この測定では、m/z473のナトリウム付加イオン(M+Na)+が強く観測され、その精密質量(実測値)であるm/z 473.1064を用いて組成演算を行った。組成演算には、C,H,O,Naの各元素を使用した。この結果、組成式はC21H22O11Naと決定された。理論値の精密質量は、m/z 473.1060であり、誤差は0.4mDaであった。この測定ではナトリウム付加イオンがあるため、アセロニジンの組成式は、C21H22O11で分子量は450である。NMR測定 高磁場側(右側)から1H NMRシグナルに記号a〜o、13C NMRシグナルに記号A〜Uを付けて解析を進めた。1H NMR 1H NMRスペクトルを図7に、シグナルの一覧を表10に示す。 1H NMRスペクトルより1,2,4−置換ベンゼン(o,n,mシグナル)及び1,2,4,5−置換ベンゼン(l又はkシグナル)の部分構造が存在することが示された。またa〜jシグナルは化学シフト値よりCHn−O(n=1又は2)に帰属された。13C NMR 13C NMRスペクトルを図8に、シグナルの一覧を表11に示す。 13C NMRスペクトルでは21本のシグナルが観測され、MS測定結果に一致した。ケトンカルボニルのシグナルは観測されなかった。DEPT DEPTスペクトルを図9に示す。スペクトルから各シグナルの帰属する炭素が決定された(表12参照)。DQF−COSY DQF−COSYスペクトルを図10に示す。スペクトルから次の部分構造が導かれた。(1)j(5.31ppm)−g(4.25ppm)−I(4.87ppm)−CH(j)−CH(g)−CH(i)−(2)h(4.63ppm)−a(3.27ppm)−d(3.58ppm)−b(3.35ppm)又はc f(3.81ppm)−e(3.62ppm)−c(3.36ppm)又はbHSQC HSQCスペクトルを図11に示す。1J(1H、13C)で結合する1Hと13CをHSQCスペクトルから決定した。結果を表12にまとめた。HMBC HMBCスペクトルを図12に示す。HMBCスペクトルで観測されたロングレンジの主要な相関シグナルを表13に示す。 この結果から本発明の化合物の平面構造が導かれた。NOESY測定 NOESYスペクトルを図13に示す。NOESYスペクトルでは、次のプロトン間の相関シグナルが観測された。Jh,a=7.9Hz、Ja,d=9.5Hz、Jd,b=8.4Hzは糖類に特徴的なaxial−axial型プロトンのスピン結合定数である。 hとcプロトン間にNOEが観察されたことからcプロトンもaxial位にあり、したがって糖成分はβ−グルコースと決定された。 gプロトンとI炭素、iプロトンとH炭素及びaプロトンとB炭素間のHMBC相関シグナルからグルコースの1位と2位のOHが上記のように結合した構造が考えられた。 Aとi、hとj、gとiプロトン間のNOEからj、g、iプロトンの相対配置は上記のように推定された。 Ji,g=11.0Hz、Jg,i=3.4Hzは上記の相対配置であることを指示した。 原子に番号を付けた帰属表を表14にまとめた。 以上から新規ポリフェノール配糖体が構造式:で表される構造を有することが決定された。 本発明者らは当該新規ポリフェノール配糖体をアセロニジンと命名した。実験2.1.アセロラパウダーの調製 ブラジル産のアセロラ濃縮果汁1400Kgを精製水で希釈しBrix値を31%に調製し、これに1%重量分の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、30℃にて20時間発酵させることによりぶどう糖と果糖を除去した。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、ぶどう糖と果糖が除去されたアセロラ加工濃縮果汁2297Kgを得た。このアセロラ加工濃縮果汁に、固形分重量比で賦形剤及び加工用剤として4.0%(W/W)の食物繊維と1.5%(W/W)の貝殻焼成カルシウムを溶解させた。この溶解液をスプレードライ法により粉末化し、806Kgのアセロラパウダーを得た。このアセロラパウダーには35.3%(W/W)のビタミンCと1.5%(W/W)のポリフェノールが含まれていた。 アセロラパウダー中のポリフェノール含量は以下の手順で測定した。アセロラパウダーを20%(W/W)濃度になるように精製水に溶解し、この溶液50gをC18カラム(Sep−Pak Vac 35cc(10g)C18 cartridges,Waters社製)に負荷し、精製水でカラム洗浄を行った後、メタノールで溶出させた画分を回収した。このメタノール溶出画分中のポリフェノール量をフォーリン・デニス法により、カテキン((+)−Catechin hydrate,シグマアルドリッチ社製)を標準物質として測定した。このカラムに負荷したアセロラパウダー重量、回収されたメタノール溶出液量及び測定されたポリフェノール量から、アセロラパウダー中のポリフェノール含量を算出した。なおこの測定法では、ペクチン骨格と複合体を形成してなるアセロニジンは「ポリフェノール」として測定されない可能性がある。 C18カラム吸着成分はポリフェノールを含有するものと考えられる。そこで本実施例では、C18カラム吸着成分の量の目安として、ポリフェノールの量を測定した。実験2.2.C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液の調製 実験2.1で調製したアセロラパウダーを20%(W/W)になるように精製水で溶解し、50mLの水溶液を調製した。これをC18カラム(Sep−Pak Vac 35cc C18 Cartridge Waters社製)に負荷し、遊離ポリフェノールなどを含有するC18カラム吸着成分をカラムに吸着させ、カラム通過画分を回収し、これをC18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液とした。この溶液の固形分濃度は15.3%(W/W)であった。この水溶液中のポリフェノール量を高速液体クロマトグラフィー(C18カラム:ODS−3 4.6mmx250mm ジーエルサイエンス社製)により測定した。こうして得られた本検体のポリフェノールのピーク面積を、C18カラム吸着成分除去前のアセロラパウダー水溶液(ポリフェノール濃度:0.3%(W/W))の分析により得られたポリフェノールのピーク面積と比較して比例計算したところ、本検体のポリフェノール濃度は比較品の1%以下(すなわちポリフェノール濃度:0.003%(W/W)以下)であることが確認された。すなわち、C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー中のポリフェノール含量は固形分基準で0.02%(W/W)以下であった。 こうして得られた水溶液を以下の実験で使用した。この水溶液を本明細書では「C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液」と称する。また、この水溶液に含まれる固形分を「C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー」或いは「C18カラム吸着成分が除去されたアセロラパウダー」と称することがある。実験2.3.C18カラム吸着成分及びビタミンCが除去されたアセロラパウダー水溶液の調製 実験2.2で調製したC18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液を固形分濃度として0.1%(W/W)になるように精製水で希釈した。この水溶液5mLにアスコルビン酸オキシダーゼ(TOYOBO社製)溶液を酵素活性が30Uになるように100μl添加し、さらに10mMのリン酸水素二ナトリウム水溶液400μlを添加し、30℃の恒温槽中で一晩反応させた。反応終了後、120℃にて10分間加熱処理を行い、酵素を失活させた。ビタミンCの残存量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した結果、酵素処理前の1%以下であることが確認された。なお酵素処理前はビタミンC含量は固形分基準で35.3%(W/W)であった。従ってビタミンC除去処理後のアセロラパウダー中のビタミンC含量は固形分基準で0.35%(W/W)以下である。 こうして得られた水溶液を以下の実験で使用した。この水溶液を本明細書では「C18カラム吸着成分・ビタミンC除去アセロラパウダー水溶液」と称する。また、この水溶液に含まれる固形分を「C18カラム吸着成分・ビタミンC除去アセロラパウダー」或いは「C18カラム吸着成分及びビタミンCが除去されたアセロラパウダー」と称することがある。実験2.4.アセロラ由来C18カラム吸着成分の調製 実験2.1で調製したアセロラパウダーを20%(W/W)になるように精製水で溶解し、40mLの水溶液を調製した。これをC18カラム(Sep−Pak Vac 35cc C18 Cartridge Waters社製)に負荷し、遊離ポリフェノールなどを含有するC18カラム吸着成分をカラムに吸着させ、カラムを精製水で洗浄し、メタノールに溶出させ、溶出液を減圧蒸留器により乾固させ、C18カラム吸着成分として0.17gを回収した。抗酸化性試験方法実験背景: リノール酸はヒトの体内にも多く存在する不飽和脂肪酸である。この不飽和脂肪酸は、放置すると自動的に酸化し、過酸化脂質となる性質がある。この実験は、リノール酸とサンプルを混合し、40℃で放置し、リノール酸から精製される脂質酸化物の量の増加により抗酸化性を評価するものである。試験法2.1リノール酸を用いた抗酸化活性測定(ロダン鉄法) 2.5%(w/v)リノール酸(99.5%エタノール溶液)2ml及び0.05Mりん酸緩衝液(pH7.0)4mlの混液に、99.5%エタノール2ml及び蒸留水2mlを混合したもの(99.5%エタノール又は蒸留水の一方に予め検体が溶解されている)を添加し、この混液を褐色ネジ口瓶に入れ10mlの反応液を調整した。検体が水不可溶性成分である場合は、上記99.5%エタノール中に検体を溶解させて反応液を調製した。検体が水可溶性成分である場合は上記蒸留水中に検体を溶解させて反応液を調製した。なお本試験法において検体濃度とは99.5%エタノール2ml又は蒸留水2ml中での検体の濃度を指す。従って、上記反応液中における各検体の終濃度は所定の濃度の5分の1である。 また、抗酸化性の陽性検体としてBHAについても、反応液中に適量含まれるように同様の操作を行い、これらを正の対照とした。コントロールには、99.5%エタノール2ml及び蒸留水2mlのみを反応液に添加したものを用いた。この反応液を暗所にて40℃で保存したものを本検、4℃で保存したものを盲検として、経時的に被検物を取り出し以下の様に測定した。試験は2週間以上行った。 被検物0.1ml、75%エタノール9.7ml、30%ロダン酸アンモニウム水溶液0.1mlの混液に2×10−2Mの塩化第一鉄(3.5%塩酸溶液)0.1mlを加えてから正確に3分後500nmにおける吸光度を測定した。盲検についても同様に測定し、Δ吸光度=[本検の吸光度]−[盲検の吸光度]とした。吸光度が高いほど酸化された脂質量が多く、検体による抗酸化性が弱いことを示している。また、試料の酸化が始まると吸光度は上昇し、最高点に達した後、酸化されるべき試料が少なくなるにつれて吸光度は減少することから、吸光度のピークが早くできはじめるほど抗酸化活性は弱いといえる。 また、酸化率を用いて各試料の抗酸化活性を比較した。酸化率は、コントロールの酸化(吸光度)を100%として、以下の式で求めた。 酸化率が高いほど抗酸化活性は低いといえる。実験2.5.アセロラ濃縮果汁及びアセロラパウダー水溶液の脂質に対する抗酸化性 検体としてアセロラ濃縮果汁(Brix52.2.ビタミンC濃度:18.4%(W/W)固形分基準)及び実験2.1で調製したアセロラパウダーの抗酸化性を、固形分重量として0.02%(W/W)の検体濃度で試験法2.1を用いて測定した。その結果を図14に示す。図14のY軸は吸光度を示し、この数値が高いほどリノール酸の酸化が進んでいることを示す。アセロラ濃縮果汁及びアセロラパウダーは、28日後でも十分な抗酸化性を示し、特にアセロラパウダーは同濃度の合成抗酸化剤であるBHAと同等な抗酸化性を示す。実験2.6.アセロラパウダー及びα−トコフェロールの抗酸化性の比較 試験法2.1を用いてα−トコフェロール(ビタミンE)とアセロラパウダーのリノール酸の自動酸化抑制作用を比較した。α−トコフェロールは天然由来の脂溶性抗酸化剤として周知のものである。 実験には、α−トコフェロール((±)−α−Tocopherol:和光純薬工業製、試薬1級)、合成抗酸化剤であるBHA(3(2)−t−Butyl−4−hydroxyanisole:和光純薬工業製、試薬特級)及び実験2.1で調製したアセロラパウダーを用いた。全ての検体濃度は、固形分濃度が0.02%(W/W)となる条件下で実施した。その実験結果を表15に示す。 実験1でα−トコフェロールとBHA(陽性対照)とを比較したところ、BHAの方が優れた抗酸化性を示すことが判明した。一方、実験2でBHAとアセロラパウダーを比較したところ、アセロラパウダーはBHAと同等かそれ以上の抗酸化性を示した。この2つの実験結果から、アセロラパウダーはα−トコフェロール(ビタミンE)より、リノール酸の自動酸化を強く抑制することが判明した。実験2.7.ビタミンC(アスコルビン酸)の脂質に対する抗酸化性 検体としてビタミンC(アスコルビン酸 試薬特級 和光純薬社製)の抗酸化性を、固形分重量として0.02%(W/W)及び0.04%(W/W)の検体濃度で試験法1を用いて測定した。その結果を図15に示す。図15のY軸は吸光度を示し、この数値が高いほどリノール酸の酸化が進んでいることを示す。0.02%(W/W)及び0.04%(W/W)のビタミンCは、全く抗酸化性を示さず、むしろ0.02%(W/W)検体濃度では実験開始から7日後まではコントロールより早くリノール酸を酸化させている。実験2.8.アセロラパウダー、C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー及びアセロラ由来C18カラム吸着成分の抗酸化力の比較 実験2.1で調製したアセロラパウダー及び実験2.4で調製したアセロラ由来C18カラム吸着成分の各濃度(W/W)の検体、並びに実験2.2で調製したC18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液(固形分濃度:15.3%(W/W))の固形分を各濃度(W/W)に希釈した検体について40℃で28日間保存し、リノール酸に対する抗酸化作用を試験法2.1に従って測定した。結果を図16に示す。測定値をリノール酸の酸化率(上記数1参照)として表した。酸化率が高いほど検体の抗酸化力が弱いことを示している。 酸化率が100%のとき、リノール酸の酸化物の量がコントロールと同じであったことを意味する。横軸は試験に用いたサンプル濃度を示す。これまでに行われた抗酸化剤の評価試験の経験から本条件下でコントロール対比の酸化率が20%以下の場合は、有意に酸化を抑制していると判断できる。従って図16から、各検体の有効濃度は、アセロラ由来C18カラム吸着成分は固形分濃度で0.005%(W/W)以上、アセロラパウダーは、0.015%(W/W)以上、C18カラム吸着成分除去アセロラパウダーは、0.0175%(W/W)以上であることが判断できる。 単離されたアセロラ由来C18カラム吸着成分の抗酸化性が最も高いことがわかる。またC18カラム吸着成分が除去されたアセロラパウダーについても十分な抗酸化性を有していることから、C18カラム吸着成分以外の成分もまた抗酸化性に寄与しているものと推測される。アセロラパウダーの有効濃度(固形分濃度0.015%(W/W))の溶液中のポリフェノール含量は溶液基準で0.000225%(W/W)と非常に微量であるが、アセロラパウダーはC18カラム吸着成分除去アセロラパウダーと比較して若干高い抗酸化性を有していることから、微量のC18カラム吸着成分が抗酸化性に寄与しているものと思われる。すなわちアセロラパウダーによるリノール酸自動酸化抑制作用は、C18カラム吸着成分とその他の成分との総合的な作用によるものと判断される。実験2.9.C18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液及びC18カラム吸着成分・ビタミンC除去アセロラパウダー水溶液の脂質に対する抗酸化試験 検体として実験2.2で調製したC18カラム吸着成分除去アセロラパウダー水溶液と実験2.3で調製したC18カラム吸着成分・ビタミンC除去アセロラパウダー水溶液の抗酸化性を、固形分重量として0.02%(W/W)の検体濃度で試験法1を用いて測定した。その結果を図17に示す。C18カラム吸着成分及びビタミンCが除去されたアセロラパウダー水溶液は脂質に対して十分な抗酸化を有することが確認された。同じ濃度のC18カラム吸着成分除去アセロラパウダーより抗酸化性が低下しているのは、ビタミンCを除去したことが原因であると考えられる。一方、実験2.7に示す通りビタミンC単独では脂質に対する抗酸化剤として作用しない(図15)。すなわち本実験の結果は、アセロラ中のビタミンCがC18カラム吸着成分以外のアセロラ成分と協働して脂質に対する抗酸化性を発揮することを示している。実験2.10.アセロラ酸可溶性ペクチンの調製 アセロラ果実3Kgに精製水3Kgを加えながら、ワーリングブレンダーにより果実を粉砕しアセロラ粉砕物を調製した。これに重量比で30%となるようにエタノールを加え、室温で一晩、攪拌し、水及びエタノール可溶成分を抽出した。この抽出物を4200回転、30分の遠心分離処理に供して固形分を分離した。この固形分は1500g回収できた。 この1500gの固形分に精製水5200gを加え懸濁液とし、これに濃塩酸を加えてpHを2.2に調製し、さらにプレートヒーターにより攪拌しながら80〜90℃で2時間加熱処理を行った。これを放置し室温まで温度を下げた後に、4200回転30分の遠心分離により、固形分と上清に分離させ、上清を回収した。この上清を0.2μmのフィルターろ過により不溶性の成分を除去し、清明な抽出液を得た。 この抽出液に3倍重量のエタノールを添加し、エタノール不溶性のペクチン成分を析出させた。析出したペクチン成分は、ステンレス製メッシュで回収し、さらにエタノール及び水に溶解する成分を除去するために90%エタノール水溶液で2回洗浄した後、回収し、凍結乾燥機により乾燥させアセロラ酸可溶性ペクチンとして6.24gを回収した。実験2.11.アセロラペクチナーゼ分解ペクチンの調製 アセロラ果実2Kgに精製水2Kgを加えながら、ワーリングブレンダーにより果実を粉砕しアセロラ粉砕物を調製した。これに重量比で40%となるようにエタノールを加え、室温で一晩、攪拌し、水及びエタノール可溶成分を抽出した。この抽出物を4200回転、30分の遠心分離処理に供して固形分を分離した。この固形分は1000g回収できた。 この1000gの固形分に精製水3000gを混合し、さらに4gのペクチナーゼ粉末(ペクチナーゼ「アマノA」、天野エンザイム製)を混合し、45℃で一晩静置した。この混合物を4200回転30分の遠心分離により固形分と上清に分離し、上清を回収した。この上清から、0.2μmのフィルターろ過により不溶性の成分を除去し、清明な抽出液を得た。 この抽出液に3倍重量のエタノールを添加し、エタノール不溶性のペクチン成分を析出させた。析出したペクチン成分は、4200回転、30分の遠心分離により固形分として回収し、さらに、90%エタノール水溶液で洗浄した後、凍結乾燥機により乾燥させた。乾燥固形分として12.6g回収した。これをペクチナーゼ処理ペクチンとした。このペクチン成分は、ペクチン水溶液の特徴である粘性が少ないことからペクチン加水分解物であると考えられる。実験2.12.アセロラ由来ペクチンの分子量の測定 実験2.10で調製した酸処理ペクチンと酸処理ペクチンのペクチナーゼ分解物の分子量を、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した。 酸処理ペクチンは0.5%(W/W)になるように精製水で溶解し、20mLの水溶液を調製して、0.2μmのフィルターでろ過して使用した。酸処理ペクチンのペクチナーゼ分解物は以下のように調製した。実験2.10で調製した酸処理ペクチンを0.3%(W/Wになるように精製水で溶解し、20mLの水溶液を調製した。これに6mgのペクチナーゼ粉末(ペクチナーゼ「アマノA」、天野エンザイム製)を添加し、50℃で一晩反応させた。反応終了後、120℃にて15分間加熱処理を行い、酵素を失活させ、0.2μmのフィルターでろ過した。これを減圧蒸留器で2mLに濃縮し、0.2μmのフィルターでろ過した。ゲルろ過の担体としては、Sephacryl S−300 High Resolution(Amersham Biosciences社製)を用い、これをカラムに充填し、ゲルろ過測定を実施した。緩衝液はPBS(Dulbecco’s phospahate buffered saline)を用いた。分子量の測定には、分子量マーカーとしてHMW Gel Filtration Calibration Kit(Amersham Biosciences社製)とLMW Gel Filtration Calibration Kit(Amersham Biosciences社製)の中から、今回の測定に適していると思われるBlue Dextran 2000、Catalase、 Alubmin及びChymotrypsinogen Aを用いた。 測定の結果、実験2.10で調製した酸処理ペクチンは、ほぼBlue Dextran 2000と同じ結果が得られたため分子量が約200万の分子であることが判明した。また、酸処理ペクチンのペクチナーゼ分解物は、分解物として複数のピークが観察されたが、その全てが分子量20.4kDaのChymotrypsinogen Aよりも小さい分子量であることが確認された。従って酵素処理ペクチンは分子量が2万以下の分子の混合物であることが推測される。実験2.13.アセロラ由来の各ペクチン検体の抗酸化力の比較 実験2.10で調製したアセロラ由来の酸処理ペクチンと実験2.11で調製したアセロラ由来のペクチナーゼ処理ペクチンの抗酸化性を、固形分重量として0.1%(W/W)の検体濃度で試験法2.1を用いて測定した。その結果を図18に示す。両方の検体とも脂質に対して十分な抗酸化性を示すことから脂質に対する抗酸化剤として有効であることが判明した。実験2.12に示す通り、アセロラ酸処理ペクチンと酵素処理ペクチンとは分子量が全く異なるにもかかわらず同等の脂質抗酸化性を示した。他の酵素などにより加水分解されたアセロラ由来ペクチンもまた脂質に対して同等の抗酸化性を有するものと推測される。実験2.14 アセロラ由来ペクチンの抗酸化性をDPPHラジカル消去活性試験により評価した。 安定なラジカルであるDiphenyl−p−picrylhydradil(DPPH)のエタノール液を用いて、抗酸化活性を評価した。250mM酢酸緩衝液(pH=5.5)1600μlにエタノール1200μl、検体400μl(所定の濃度に調整)を混合し、30℃にて5分間プレインキュベートした。この液に500μM DPPH/エタノール溶液を800μl添加混合し30℃にて30分間放置後、517nmの吸光度を測定した。コントロ−ルには、試料溶液の代わりに精製水を用いて同様の操作を行ったものを用いた。検体としては実験2.10で調製されたアセロラ由来の酸処理ペクチン、実験2.11で調製されたアセロラ由来の酵素処理ペクチン、比較検体としてりんご由来ペクチン(和光純薬工業製、試薬)及びかんきつ類由来ペクチン(和光純薬工業製、試薬)を用い、0.3%(W/W)及び0.1%(W/W)になるように精製水で溶解させた溶液を用いた。測定された吸光度から、次式によりラジカル消去率を算出した。 結果を表16に示す。この結果から、アセロラ由来の酸処理ペクチン又は酵素処理ペクチンは他のペクチンと異なり、ラジカル消去活性を有する抗酸化性物質であることが明らかとなった。またこの抗酸化性は、ペクチナーゼ酵素処理を行うことで約2倍強くなることも判明した。実験2.15 サケの半身をアセロラパウダーを含む食塩水に浸漬して塩蔵サケを調製し、蛍光灯照射条件下での貯蔵の前後での外観、官能、色(ハンターLab)、酸価及び過酸化物価の変化を測定し、これらの変化に基づきアセロラパウダーの脂質抗酸化効果を確認した。 アセロラパウダーは以下の通り調製した。ブラジル産のアセロラ濃縮果汁1400Kgを精製水で希釈し、Brix値を31%に調整し、これに1%重量分の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、30℃にて20時間発酵させることによりぶどう糖と果糖を除去した。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、ぶどう糖と果糖が除去されたアセロラ加工濃縮果汁2297Kgを得た。次に、400gのアセロラ由来固形分を含むアセロラ加工濃縮果汁に賦形剤として400gのデキストリン、150gの食物繊維及び50gの加工デンプンを溶解させた。この溶解液をスプレードライ法により粉末化し、780gの食品加工用アセロラパウダーを得た。本アセロラパウダーはポリフェノール0.5〜1.0%を含む。本アセロラパウダーは、実験2.1により得られるアセロラパウダーと異なり、苦味成分となる貝カルシウムを含まないことから、広く食品加工に用いることができる。 アセロラ添加試験用の浸漬液として上記アセロラパウダー5重量%、食塩20重量%、重曹5重量%を含む水溶液を調製した。またコントロール試験用の浸漬液として食塩20重量%を含む水溶液を調製した。 冷凍の原料魚(銀鮭ドレス)を解凍し、ぬめり落しのために塩水洗浄し、3枚におろし、腹骨を漉いて本実験のための試料とした。半身の一方をアセロラパウダーを含む浸漬液に漬け、半身のもう一方をコントロール試験用の浸漬液に漬けた。一晩浸漬後、水切りを行い、真空包装して下記の蛍光灯照射実験に供するまで冷凍保存した。 蛍光灯照射実験は次の手順で行った。まず上記塩蔵鮭サンプルを解凍し、適当な大きさにカットし、発泡スチロールのトレイに入れ、トレイ全体をラップ(信越ポリマー株式会社製「ポリマラップ」)で包装し、ショーケースに入れて、10℃において1500ルクスの蛍光灯を48時間照射した。 蛍光灯照射前後での外観の変化を観察した。照射前ではアセロラ添加試験区のサンプルがコントロール試験区のサンプルと比較してわずかにくすんだ色を示していたものの大差はなかった。蛍光灯照射試験後はアセロラ添加試験区のサンプルでは照射前と比較して若干くすんだ暗い色になったものの赤色は保持されていたのに対して、コントロール試験区のサンプルでは明らかに赤色の退色が見られた。すなわち、アセロラパウダーは貯蔵中での鮭肉の退色を防止することができることが示された。また蛍光灯照射前後での官能面での変化を観察した。照射前ではアセロラ添加試験区、コントロール試験区ともに脂質の酸化臭は感じられなかった。照射後ではコントロール試験区の方がアセロラ添加試験区よりも脂質の酸化劣化の風味が強く感じられた。以上の評価結果を下表に示す。各試験区でサンプルは20個用意した。表中の数は各項目に該当するサンプルの個数である。また図19として、蛍光灯照射条件下での貯蔵後のサンプルの写真を示す。 色を示すハンターLabの測定を、浸漬前、浸漬後照射前(表18では単に「照射前」)、照射後の3つの時点で行った。Lab測定はMINOLTA社製CHROMA METER CR−200を使用して行った。浸漬前、照射後は5つのサンプルについて測定を行い、浸漬後照射前は2つのサンプルについて測定を行った。各平均値を表18にまとめた。 表18から照射前後でのa値(赤色を示す)の推移のみを抜粋して図20に図示する。図20から明らかなようにアセロラ添加試験区ではa値の低下はほとんど見られなかったのに対して、コントロール試験区ではa値が低下した。 また蛍光灯照射後の各サンプルの酸価(AV)、過酸化物価(POV)を測定した。測定は第二版食品分析ハンドブック(建帛社)に記載の方法に従って行った。結果を表19に示す。 アセロラ添加試験区のほうがコントロール試験区よりも蛍光灯照射貯蔵後の酸価及び過酸化物価は小さい値であった。すなわちアセロラパウダーの添加により脂質酸化が抑制されたことが示された。実験2.16 すじこをアセロラパウダーを含む調味液に浸漬して味付けすじこを調製し、蛍光灯照射条件下での貯蔵の前後での外観、風味、酸化及び過酸化物価の変化を測定し、これらの変化に基づきアセロラパウダーの脂質抗酸化効果を確認した。 アセロラパウダーは実験2.15で調製したものを用いた。 アセロラ添加試験用の調味液として上記アセロラパウダー:5重量%、酒:35重量%、白醤油:35重量%、味醂:20重量%、重曹:4.995重量%、亜硝酸ナトリウム:0.005重量%を含有する水溶液を調製した。またコントロール試験用の調味液としてアセロラパウダー及び重曹を含まない以外は同一の組成の水溶液を調製した。 冷凍すじこ(生すじこを凍結処理したもの)を解凍し、塩水で洗浄し、上記調味液に1時間浸漬し、冷蔵で一晩熟成させ、3特及び黒子に選別した。選別後、下記の蛍光灯照射実験に供するまで冷凍保存した。 蛍光灯照射実験は次の手順で行った。まず3特又は黒子に選別されたすじこを解凍し、発泡スチロールのトレイに入れ、トレイ全体をラップ(信越ポリマー株式会社製「ポリマラップ」)で包装し、チルド庫に入れて、10℃において1500ルクスの蛍光灯を144時間照射した。 蛍光灯照射前後での外観及び風味の変化を観察した。アセロラ添加試験区ではコントロール試験区と比較して、照射前と後での外観の変化及び風味の劣化(脂質酸化風味の発生)は抑制されていた。以上の評価結果を下表に示す。各試験区でサンプルは20個用意した。表中の数は各項目に該当するサンプルの個数である。 また蛍光灯照射後の各サンプルの酸価(AV)、過酸化物価(POV)を測定した(ただし黒子サンプルについては酸価のみ測定)。測定は第二版食品分析ハンドブック(建帛社)に記載の方法に従って行った。結果を表21に示す。 3特及び黒子のいずれについても、アセロラ添加試験区のほうがコントロール試験区よりも蛍光灯照射貯蔵後の酸価及び過酸化物価が顕著に小さい値であった。すなわちアセロラパウダーの添加により脂質酸化が抑制されたことが示された。ペクチナーゼ製剤について 以下の実験においてパルプ質の分解はペクチナーゼ製剤(ペクチナーゼA「アマノ」、天野エンザイム(株)製)を用いて行った。本酵素製剤は、ペクチナーゼ45%、β−アミラーゼ25%、珪藻土30%を含有している。従って本酵素製剤により、アセロラパルプのペクチン成分と澱粉成分が分解される。このペクチナーゼは、カビであるAspergillius pulverulentusとAspergillius nigerの培養物から精製された酵素である。このペクチナーゼは、複数種類のペクチナーゼの混合物と推測されるが、酸及び加熱により抽出されたアセロラ由来ペクチンの粘性を急速に低下させることから、ペクチン分子内部を無作為に切断し速やかに低分子化させるエンド型のポリガラクツロナーゼを含んでいると考えられる。実験3.1.アセロラパウダー VC30(比較品)の調製方法 ブラジル産のアセロラ果実から種子部分を除去し、流動性を上げる為、イオン交換水と混合した。該混合物中の大きな固形分をステンレスメッシュフィルターにより除去し、ペクチナーゼ処理用タンクに投入した。このタンクを40〜50℃に加温しながら、糖度計で7Brixあたり0.01%(W/W)のペクチナーゼ製剤(ペクチナーゼA「アマノ」、天野エンザイム(株)製)を投入し、1〜2時間、酵素処理を行った。酵素処理後のアセロラ処理物を、加熱処理により酵素を失活させ、殺菌し、珪藻土ろ過に供して、清明なアセロラ果汁を得た。このアセロラ果汁を減圧蒸留濃縮法により濃縮してアセロラ濃縮果汁を調製した。 このアセロラ濃縮果汁1400Kgを精製水で希釈しBrix値を31%に調整し、これに1%重量分の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、30℃、20時間発酵させた。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、ぶどう糖と果糖を除去したアセロラ加工濃縮果汁2297Kgを得た。このアセロラ加工濃縮果汁に、固形分重量比で賦形剤及び加工用剤として4.0%(W/W)の食物繊維と1.5%(W/W)の貝殻焼成カルシウムを溶解させた。この溶解液をスプレードライ法に供して、806Kgのアセロラパウダーを得た(以下、「アセロラパウダー VC30」と称することがある)。このアセロラパウダーには35.0%(W/W)のアスコルビン酸と1.07%(W/W)のガラクツロン酸が含まれる。すなわちアセロラパウダー VC30には、アスコルビン酸に対して3.1重量%のガラクツロン酸が含まれる。ガラクツロン酸の定量方法は下記を参照されたい。3.2.アセロラパウダーA(本発明品)の調製方法 ブラジル産のアセロラ果実から種子を除去し、アセロラピューレを調製した。このアセロラピューレについては固形分を除去する操作を行わなかったため、このアセロラピューレは多くのパルプ質を含有するものであった。このアセロラピューレ10.8Kg(Brix値は8%)にペクチナーゼ製剤(ペクチナーゼA「アマノ」、天野エンザイム(株)製)を1%(W/W)混合し、50℃に加温して4時間処理を行った。この処理物を加熱することにより、酵素を失活させ、殺菌を行った。これを遠心分離により固形分と果汁に分け、この果汁を減圧蒸留により濃縮し、濃縮液3.6Kg(Brix値は25.2%)を回収した。この濃縮液に、1%重量分の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を加え、30℃、20時間発酵させた。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、ぶどう糖と果糖を除去したアセロラ加工濃縮果汁3.3Kg(Brix値は21.5%)を得た。このアセロラ加工濃縮果汁2.8Kgに、固形分重量比で賦形剤及び加工用剤として4.0%(W/W)の食物繊維と1.5%(W/W)の貝殻焼成カルシウムを溶解させた。この溶解液をスプレードライ法に供して、約0.5Kgのアセロラパウダーを得た(以下、「アセロラパウダーA」と称することがある)。このアセロラパウダーには、29.3%(W/W)のアスコルビン酸と3.47%(W/W)のガラクツロン酸が含まれる。すなわちアセロラパウダーAには、アスコルビン酸に対して11.8重量%のガラクツロン酸が含まれる。ガラクツロン酸の定量方法は下記を参照されたい。3.3.ガラクツロン酸測定方法 ガラクツロン酸は以下の方法で定量した。 ガラクツロン酸を含む20gの検体を80gの精製水を加えて溶解させた。十分に溶解させた後に、この溶解液10gを50ml遠心管に計りとり、これに40mlのエチルアルコール(特級、和光純薬製)を加え十分に混和させた(エタノール沈殿)。30分以上静置した後、3000rpm,20分(20℃)で遠心分離処理を行った後、沈殿物を全て回収し、凍結乾燥機にて乾固させた。この乾燥品を精製水で0.02、0.05、0.1、0.2%(W/W)になるように溶解し、測定液とした。ガラクツロン酸量の測定は3,5ジメチルフェノール法(3,5−dimetyl phenol)で行った。まず測定液を試験管に125μlづつ入れ、続いて2%塩化ナトリウム水溶液125μlと濃硫酸(特級、和光純薬社製)2mlを加え、70℃で10分間反応させた。水中で20〜30秒間冷却し、発色試薬(3.5−ジメチルフェノール0.1gを氷酢酸100mlに溶解した試薬)0.1mlを加え、10分後に450nmと400nmの吸光度を測定し、その差を求めた。標準物質としてはガラクツロン酸一水和物(試薬特級、和光純薬社製)を用いた。標準物質の検量線(12.5μg/g〜50μg/g)より、乾燥品中のガラクツロン酸量を算出し、その数値と検体2gから得られたエタノール沈殿乾燥品重量値より検体中のガラクツロン酸含量を算出した。表22に測定結果を示す。尚、この測定で得られているエタノール沈殿の中には賦形剤として用いている食物繊維も含まれている。3.4.美白試験 ヒトと同様に、紫外線照射により色素沈着が生じる動物種であり、その系統維持が明らかである褐色モルモット(SPF)を用いて、紫外線照射後の色素沈着抑制作用について検討を実施した。試験は1群につき6匹使用した。色素沈着を促す為に、紫外線照射装置(Y−798−II、オリオン電機株式会社)に取り付けたSEランプ(波長250〜350nm、FL20S・E、東芝製)5本を用いて40cmの距離から紫外線(UVB)を照射した。予備試験において皮膚上に紫外線による紅斑が生じる最も短い時間を測定したところ12分30秒であったので、この時間を本試験の紫外線の照射時間とした。照射部位は、電気バリカンで剪毛し、さらに電気シェーバーで剃毛したモルモット背部正中線をはさんで左右どちらかの2cm×2cmの正方形の1箇所とした。紫外線照射は、初回投与日(この日を0日とする)と、以降は初回投与後2日および4日の計3回行った。被検物質の投与は、アスコルビン酸量として300mg/動物重量Kg/日になるように調製された各被検物質の溶液を、カテーテルを用いて経口投与することにより行った。すなわちアスコルビン酸量を揃えて実験を行った。ブランクとしては注射用水(大塚製薬製)を投与した。被検物質としては、比較品アセロラパウダーVC30(831mg/5mL)、本発明品アセロラパウダーA(1024mg/5mL)及びアスコルビン酸(試薬特級、和光純薬社製)(300mg/5mL)を用いた。経口投与は42日間行った。色素沈着の測定は、投与開始日の初回投与前(照射前)、初回投与後7日、14日、21日、28日、35日、42日に、照射部位を色彩色差計(CR−300、ミノルタ株式会社)を用いてL値(明度)を測定し、ΔL値(観察日のL値−照射前のL値)を求めた。測定部位は照射部位の中心と、対角線上の角4ヵ所の計5ヵ所とし平均値を各個体のL値とした。このΔL値が高いほど色素沈着が強いことを示す。試験結果を図21に示す。縦軸はΔL値であり、横軸に試験開始日数を示しており、測定値は、一群6匹のΔL値の平均値である。 その結果、比較品アセロラパウダーVC30の群では、各観察時点で注射用水群と比較して、ΔL値の低下を有意に抑制した。すなわち色素沈着抑制効果を示した。比較品アセロラパウダーVC30の群と陽性コントロールでもあるアスコルビン酸の群は、ほぼ同じ測定値を示したことから、アセロラパウダー VC30の色素沈着抑制作用は含有されるアスコルビン酸によるものと推定される。 一方、本発明品であるアセロラパウダーAの群のΔL値は、いずれの観察日においてもアスコルビン酸の群のΔL値より小さかった。このことから、本発明品であるアセロラパウダーAには、比較品(アセロラパウダーVC30)には含有されていない、アスコルビン酸の色素沈着抑制作用を促す成分があることが示唆された。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 分子量2万以下のアセロラ果実由来ペクチン加水分解物から分離された、ペクチン骨格と、式:で表されるポリフェノール化合物とが複合体を形成してなる、アセロラ果実由来複合体化ペクチン加水分解物。 アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程と、ペクチンを加水分解して分子量2万以下のペクチン加水分解物とする工程と、ペクチン加水分解物のうち請求項1記載の複合体化ペクチン加水分解物を疎水性カラムに吸着させ、吸着された複合体化ペクチン加水分解物を回収する工程とを含み、 ペクチンを単離または濃縮する工程が、エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程、又は、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程であり、 前記処理物が、アセロラ果実から調製されたピューレ、果汁、またはパルプ、アセロラ果実破砕物、或いはアセロラ果実の抽出物である、請求項1記載の複合体化ペクチン加水分解物の製造方法。 アセロラ果実から調製されたピューレをペクチナーゼで処理して前記ピューレ中のペクチンを加水分解して分子量2万以下のペクチン加水分解物とする加水分解工程と、加水分解工程からの処理物の上清から、ペクチン加水分解物を単離または濃縮する工程と、ペクチン加水分解物のうち複合体化ペクチンの加水分解物を疎水性カラムに吸着させ、吸着された複合体化ペクチンの加水分解物を回収する工程とを含む、請求項2記載の方法。 ペクチンを単離または濃縮する工程が、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程であって、分離膜が限外ろ過膜である、請求項2又は3に記載の方法。 限外ろ過膜の分画分子量が10,000〜100,000である請求項4記載の方法。 請求項1記載の複合体化ペクチン加水分解物が有効成分として人為的に添加された抗酸化剤。 アセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物が有効成分として人為的に添加された抗酸化剤であって、 アセロラ果実由来ペクチンが、アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程を含む方法により製造されたアセロラ果実由来ペクチンであり、 アセロラ果実由来ペクチンの加水分解物が、アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程と、ペクチンを加水分解する工程とを含む方法により製造された、加水分解されたアセロラ果実由来ペクチンであり、 ペクチンを単離または濃縮する工程が、エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程、又は、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程であり、 前記処理物が、アセロラ果実から調製されたピューレ、果汁、またはパルプ、アセロラ果実破砕物、或いはアセロラ果実の抽出物である、前記抗酸化剤。 脂質に対する抗酸化剤である、請求項6又は7記載の抗酸化剤。 請求項1記載の複合体化ペクチン加水分解物が有効成分として人為的に添加された経口投与用美白剤。 アセロラ果実由来ペクチンまたはその加水分解物が有効成分として人為的に添加された経口投与用美白剤であって、 アセロラ果実由来ペクチンが、アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程を含む方法により製造されたアセロラ果実由来ペクチンであり、 アセロラ果実由来ペクチンの加水分解物が、アセロラ果実またはその処理物からペクチンを単離または濃縮する工程と、ペクチンを加水分解する工程とを含む方法により製造された、加水分解されたアセロラ果実由来ペクチンであり、 ペクチンを単離または濃縮する工程が、エタノールを用いてペクチンを沈殿させる工程、又は、分離膜を用いてペクチンを単離または濃縮する工程であり、 前記処理物が、アセロラ果実から調製されたピューレ、果汁、またはパルプ、アセロラ果実破砕物、或いはアセロラ果実の抽出物である、前記経口投与用美白剤。 アスコルビン酸を更に含む、請求項9又は10記載の経口投与用美白剤。 アセロラ果実、又はアスコルビン酸とパルプ質とを含む、アセロラパルプ又はアセロラピューレであるアセロラ果実処理物に、ガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して5重量%以上となるようにパルプ質中のペクチンの加水分解処理を施す工程を含む経口投与用美白剤の製造方法。 グルコースおよびフルクトースを実質的に除去する工程を更に含む請求項12に記載の方法。 請求項12又は13に記載の方法により製造された、アスコルビン酸と、ガラクツロン酸を含むアセロラパルプ質分解物とを含有し、ガラクツロン酸の量がアスコルビン酸に対して5重量%以上である経口投与用美白剤。


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