生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ホウ素の分析方法
出願番号:2007330664
年次:2009
IPC分類:G01N 27/48


特許情報キャッシュ

吉村 和久 竹原 公 秋本 裕 松岡 史郎 宮崎 義信 川嶋 建史 JP 2009150836 公開特許公報(A) 20090709 2007330664 20071221 ホウ素の分析方法 国立大学法人九州大学 504145342 国立大学法人 新潟大学 304027279 国立大学法人福岡教育大学 504193929 タカオカ化成工業株式会社 000108580 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 吉村 和久 竹原 公 秋本 裕 松岡 史郎 宮崎 義信 川嶋 建史 G01N 27/48 20060101AFI20090612BHJP JPG01N27/48 311 5 3 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 2007年7月7日 高分子学会九州支部発行の「第44回 化学関連支部合同九州大会 外国人研究者交流国際シンポジウム 講演予稿集」に発表 特許法第30条第1項適用申請有り 2007年7月26日、27日 九州分析化学若手の会 日本分析化学会九州支部発行の「第25回九州分析化学若手の会 夏季セミナー 講演要旨集」に発表 特許法第30条第1項適用申請有り 2007年9月5日 社団法人 日本分析化学会発行の「日本分析化学会第56年会講演要旨集」に発表 本発明は、ホウ素の分析方法に関し、更に詳細には、ホウ酸の錯体を利用するホウ素の分析方法に関する。 近年、海水の淡水化の研究が進み、例えば逆浸透膜を利用した淡水化プラントも実用化されている。この逆浸透膜を利用する逆浸透膜法(以下、「RO法」という)は、逆浸透膜に対して浸透圧以上の圧力で海水を通過させることでイオンを除去するものであるが、海水中に4.8mg/dm3含まれているホウ素は除去しにくいものであった。 すなわち、ホウ素は、ホウ酸−ホウ酸イオンの平衡状態で存在しているが、ホウ酸のpKaは9.02であり、海水中(pH8.2)ではそのほとんどがイオン化していないため、分子径の小さなホウ酸は逆浸透膜を通過してしまっていた。また、逆浸透膜はカルボキシル基を細孔内に突出させることで、水素結合により水分子をより選択的に通過しやすくしているが、ホウ酸も水分子と同様にヒドロキシル基を持っているため、構造的にもホウ素の除去が困難となっていた。これらの大きな二つの要因によりホウ素はRO法により得られた水の中に漏出していた(非特許文献1)。 ホウ素は動植物にとって必須微量元素であるが、動物体内に過剰に摂取されると生殖阻害毒性を引き起こすことが知られている。また、ヒトに対する急性毒性として、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの障害を生じることも知られている。このためホウ素は、水道法の水質基準により1.0mg/dm3以下であることが定められている。そして、上記のようにRO法による海水淡水化では、ホウ素の除去が困難であるため、RO法処理施設におけるホウ素のモニタリングの必要性はその需要の増大とともに大きくなっていくことが予想される。 従来、水道水中の微量無機成分に関する水質監視には、誘導結合プラズマ−原子発光法(ICP−AES)あるいは誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)が主に用いられている。しかし、淡水化プラント毎にそのような装置を用意することはコストパフォーマンスの上からも困難であり、より簡便なホウ素の測定装置が求められている。Desalination, 140, 145-152 (2001), M. R. Pastor, A. F. Ruiz, M. F. Chillon, D. P. Rico.Anal. Sci., 17(Supplement), i1475-i1478 (2001), C. Shao, S. Matsuoka, Y. Miyazaki and K. Yoshimura. 本発明は、上記実情の元になされたものであり、RO法により得られる水等に含まれる微量ホウ素を簡易に分析でき、しかも自動化も可能な方法の開発をその課題とするものである。 本発明者は、上記課題を解決しうる方法として、装置やランニングコストが安価で、また測定が容易で小型化も可能な電気化学測定法のひとつであり、微量元素に関して非常に高感度な分析法として知られているボルタンメトリーに着目した。 しかしながら、ホウ素は天然のサンプル中では電気化学的に不活性であり、上記分析法は微量ホウ素の定量には適さないものであるため、このものがポリヒドロキシル化合物(ポリオール)と脱水縮合的に結合し、形成する錯体を電気化学的に応用することを試みた。 そしてその結果、タイロンを配位子するホウ酸−タイロン錯体は電気化学的に活性であり、このものを利用すれば、ボルタンメトリーにより間接的にサンプル中のホウ酸の濃度を測定することができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、検体中のホウ素を、ホウ酸−タイロン錯体に変換した後、当該錯体の濃度をボルタンメトリーにより測定することを特徴とするホウ素の測定方法である。 本発明により、簡単かつ安価な方法でホウ素の測定が可能となり、例えば、RO法処理施設におけるホウ素のモニタリングなどにおいて、自動化が可能となる。 本発明の分析方法を実施するには、まず、検体中のホウ素を、ホウ酸−タイロン錯体とすることが必要である。 ここで使用するタイロンは、その一般名が、1,2−ジヒドロ−3,5−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム塩・1水和物(1,2-Dihydroxy-3,5-benzenedisulfonic acid, disodium salt, monohydrate)である化合物であり、ホウ素や他の金属の比色分析用として市販されている試薬である。 タイロンの酸解離反応およびホウ酸−タイロン錯体形成反応の反応機構を、下式(I)に示すが、タイロンは酸性配位子であり、pKa1が7.31でプロトンを着脱する(1)。また、タイロンの脱プロトン基がホウ酸を求核攻撃することでホウ酸−タイロン1:1錯体を形成する(2)。さらに1:1錯体に対しタイロンが脱水縮合反応によりホウ酸−タイロン1:2錯体を形成する(2)(非特許文献2)。 上記ホウ酸−タイロン錯形成反応において、1:1錯体形成反応は非常に速いのに対し、1:2錯体形成反応の反応速度は、kf2が13.2[H+](mol2/dm6sec)と非常に小さい。 本発明者が行った実験条件から1:2錯体の生成量を算出すると、1:2錯体と1:1錯体の濃度比は毎秒13.2×10−6しか変化せず、1:2錯体が10%生成するまでに3ヶ月以上必要であることがわかった。よって通常の測定条件(錯体形成後すぐに測定する条件)では、ほぼ1:1錯体のみ形成しているとみなすことができる。またホウ酸およびタイロンの酸解離反応が反応に関与しているため、1:1錯体の形成反応はpHに大きく依存するが、pH最適化実験の結果、pH7.0がボルタンメトリーによる最適pHであることが分かっている。 検体中において、上記のようなホウ酸−タイロン錯体を形成せしめるには、検体中に5〜10mmol/dm3程度となる量のタイロンを添加すれば良い。また、検体のpHは、前記のようにpH7.0が最適であるから、例えば、pH6ないし8の範囲、好ましくは、pH6.5ないし7.5の範囲として測定すれば良い。 次いで、ボルタンメトリーを用いて、ホウ酸−タイロン錯体の濃度を測定する。このボルタンメトリーとしては、通常のサイクリックボルタンメトリー(CV)を用いても良いが、微量のホウ素を測定するためには、微分パルスボルタンメトリー(DPV)を用いることが好ましい。 上記サイクリックボルタンメトリーあるいは微分パルスボルタンメトリーを行うには、作用電極としてグラッシーカーボン電極、白金電極、金電極等、対極としては白金電極等の金属電極、または炭素電極等、参照電極として銀−塩化銀電極、カルメロ電極、水素電極等を利用すればよい。 これらのサイクリックボルタンメトリー(CV)や、微分パルスボルタンメトリーの条件には、特別の制約はなく、実験的に最適な条件を見出し、利用すればよいが、その好ましい条件の一例を示せば次の通りである。 <サイクリックボルタンメトリー> 走査範囲: −1300mV〜1300mV 走査速度: 100mV/sec程度 <微分パルスボルタンメトリー> 走査範囲: 700mV〜1100mV 走査速度: 20mV/sec程度 パルス振幅: 75mV程度 パルス幅: 20msec程度 パルス間隔: 150msec程度 上記のようにして得られるボルタンメトリーの結果から、検体中のホウ素濃度を求めるには、いくつかの濃度既知のホウ素溶液を同様にボルタンメトリーに付し、得られた結果から作製した検量線との対比しても良いし、あるいは検体に更に所定量のホウ素を加えて同様にボルタンメトリーを行い、検体単独と、ホウ酸添加検体との結果の対比から、検体中のホウ素量を求めても良い。 以上説明した本発明方法は、電気化学的活性なホウ酸−タイロン錯体を生成させ、ボルタンメトリーにより間接的にサンプル中のホウ酸の濃度を測定する方法である。なお、クロモトロープ酸、アゾメチンHによっても錯体形成は行われるが、タイロンのように安定した分析結果は得ることはできず、電気化学的に活性なポリオールであるタイロンを配位子として用いることで、はじめてホウ素の分析が可能となったのである。 次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。実 施 例 1 サイクリックボルタンメトリー法によるホウ素の測定: 下記方法により、ホウ素の測定を行った。まず、試薬として1000mg/dm3のホウ酸水溶液および0.1mol/dm3のタイロン水溶液を、それぞれ市販のホウ酸およびタイロン(同仁化学製)を水に溶解して調整した。実験に用いた水は高純度水(Milli Q水、Millipore)を用いた。また、実験は0.5mol/dm3リン酸水素ナトリウム−0.5mol/dm3リン酸二ナトリウム緩衝液を用いてpHを7.0±0.1の条件に保って行った。検体としては、タイロンを10mmol/dm3含有し、ホウ素濃度を、それぞれ0、5、10、15および20mg/dm3に調整した溶液を用いた。 ボルタンメトリー法による測定は、電気化学測定装置(CV−100W;BAS社製)を用いて、室温25±1℃の一定条件下で行った。作用電極、対極、参照電極にはそれぞれグラッシーカーボン、白金線、銀−塩化銀電極を用いた。pH測定にはデジタルpHメーター(F−8AT;HORIBA社製)を用いた。溶液のpHはリン酸緩衝溶液によって7.0±0.1に維持した。測定前に溶液に窒素ガスを15分間通気することで溶存酸素を除去し、測定中は窒素雰囲気下で測定を行った。 サイクリックボルタンメトリー(CV)測定は、走査速度100mV/sec、感度100μA/Vの条件で、前記各検体について、それぞれ10回ずつ測定を行った。 図1にタイロン−ホウ酸系のCV曲線を示す。ホウ酸は電気化学的不活性分子であり、実際広いポテンシャル範囲においてホウ酸のピークは観測されなかった。一方、タイロンは電気化学的活性分子であり、約500mVに大きなピークが観測された。図1に示したように、ホウ酸をタイロン溶液に加えたとき、タイロンのピークに加えて約900mVに新たなピークが現れた。ホウ酸濃度を増加するにつれて、遊離のタイロンのピークが減少し、新たなピークは増加した。測定は溶液調製後、数時間内に行われているため、新たなピークがホウ酸−タイロン1:1錯体に帰属されるピークであることが示された。実 施 例 2 微分パルスボルタンメトリー法によるホウ素の測定: 微量ホウ素濃度の定量に用いるため、ホウ酸−タイロン1:1錯体のピークが現れた800〜1200mVの範囲において、より高感度な手法である微分パルスボルタンメトリーを用いて測定を行った。検体としては、実施例1と同様にして調整した0〜5.0mg/dm3濃度のホウ酸水溶液を用いた(タイロン濃度は、いずれも5mmol/dm3、pHは7.0である)。 微分パルスボルタンメトリー(DPV)測定は、走査速度25mV/sec、サンプル幅15msec、パルス振幅50mV、パルス幅100msec、パルス間隔100msec、感度10μA/Vの条件で、実施例1の各検体について、それぞれ10回ずつ測定を行った。 図2にタイロン−ホウ酸系のDPV曲線を示す。この図から明らかなように、より低ホウ素濃度溶液においても、ホウ酸濃度の増加に伴い、ピーク電流値の増加が得られた。また、図3にDPV曲線における0〜5.0mg/dm3のホウ素濃度に対するピーク電流のプロット、つまり検量線に示した。繰り返し測定の平均値を用いると、相関係数は、0.975であった。 本発明方法では、0.1mg/dm3のホウ素まで検出が可能となり、海水中のホウ酸濃度(約4.5mg/dm3)から上水の基準値である1.0mg/dm3以下まで測定可能であるため、海水淡水化全過程に渡る微量ホウ素濃度の監視に充分に利用できると判断された。 本発明により、電気化学的に不活性なホウ素の電気化学的定量法が可能となった。そして、この方法は、例えば、RO法により得られる水の中のホウ素濃度定量法としての実用的なものであり、RO法を利用する淡水化プラントなどにおいて、広く利用可能なものである。0から20mg/dm3濃度のホウ酸−タイロン錯体についてのCV曲線を示す図面である。0から5.0mg/dm3濃度のホウ酸−タイロン錯体についてのDPV曲線を示す図面である。DPVピークから、0から5.0mg/dm3濃度のホウ酸−タイロン錯体について作成した検量線を示す図面である。 検体中のホウ素を、ホウ酸−タイロン錯体に変換した後、当該錯体の濃度をボルタンメトリーにより測定することを特徴とするホウ素の分析方法。 ホウ酸−タイロン錯体が、ホウ酸とタイロンの1:1錯体である請求項1記載のホウ素の分析方法。 検体中に5〜10mmol/dm3となる量のタイロンを添加する請求項1または2記載のホウ素の分析方法。 検体のpHを6ないし8に調整する請求項1ないし3のいずれかに記載のホウ素の分析方法。 ボルタンメトリーが、サイクリックボルタンメトリー(CV)または微分パルスボルタンメトリー(DPV)である請求項1ないし4の何れかの項記載のホウ素の分析方法。 【課題】 RO法により得られる水等に含まれる微量ホウ素を簡易に分析でき、しかも自動化も可能な方法を開発すること。【解決手段】 検体中のホウ素を、ホウ酸−タイロン錯体に変換した後、当該錯体の濃度をボルタンメトリーにより測定することを特徴とするホウ素の分析方法。【選択図】 図3


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