生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_リポソーム製剤の製造方法
出願番号:2007308042
年次:2009
IPC分類:A61K 9/127,A61K 31/7068


特許情報キャッシュ

山下 恵子 磯崎 正史 JP 2009132629 公開特許公報(A) 20090618 2007308042 20071128 リポソーム製剤の製造方法 テルモ株式会社 000109543 山下 恵子 磯崎 正史 A61K 9/127 20060101AFI20090522BHJP A61K 31/7068 20060101ALI20090522BHJP JPA61K9/127A61K31/7068 3 OL 12 4C076 4C086 4C076AA19 4C076DD15 4C076DD63 4C076DD70 4C076GG21 4C086AA10 4C086EA17 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA24 4C086NA20 本発明は、薬物に対して貧溶媒である溶媒を外水相に用いることで、リポソームの内/外水相間において溶解度勾配を形成し、これを利用してリポソームを形成した後に薬物を導入する製造方法に関するものである。 近年、薬物の持続的な放出(徐放)、体内半減期の短い薬物の寿命の延長、種々の病巣部位での薬物の吸収促進あるいは薬物を目的とする標的組織や細胞にのみ送達することを目的としたドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System:DDS)が盛んに研究されている。DDS技術には、製剤から薬物を徐々に放出させることによって薬物の血中濃度を長期間一定に保ち、効果を持続するようにさせる徐放化技術と、炎症部位やがん細胞を標的として薬物を選択的に効率よく送達する標的化技術がある。このようなDDS技術を達成するための薬物運搬体(ドラッグキャリア)として、リポソーム、エマルジョン、リピッドマイクロスフェア、ナノパーテイクルなどの閉鎖小胞の利用が考えられる。しかしその実用化に際しては克服すべき様々な問題点があり、中でも生体側の異物認識機構からの回避や、体内動態の制御の困難さが問題となっている。特に閉鎖小胞は、血液中のオプソニン蛋白質や血しょう蛋白質との相互作用による凝集や、肝臓、脾臓等の細網内皮系組織(RES)での補足のため、標的とする組織や細胞への選択性の高い送達が困難な状況であった。この問題点を解決する手段として、これら閉鎖小胞をはじめとする高分子運搬体の表面をポリエチレングリコール(PEG)等の親水性高分子で被覆することにより、血しょう蛋白やオプソニン蛋白質などの吸着を防止して血中安定性を高め、RESでの補足を回避することが可能となってきた(「LIPOSOMES from Physics to Applications」、Elsevier、 D.D. Lasic著、1993)。リポソームのような閉鎖小胞は、高い血中滞留性を得られることにより、腫瘍組織や炎症部位などの血管透過性が亢進した組織に受動的に集積させられるようになった。 リポソームの調製方法として一般的に知られているのは水和法(Bangham法)である。いくつかの操作の違いによって超音波処理法、エクストルージョン法とも称されるが、基本操作は同じであり、該調製法が最も簡便な方法である。具体的には、薄膜状態のリン脂質を調製し、これに水系溶媒を加えて水和・膨潤させ、超音波処理、またはエクストルージョンを行うことによりリポソームを形成することができる。脂溶性薬物を封入させる場合は、脂質フィルムを調製する段階で一緒に薬物を溶解し、脂質フィルム中に薬物を組み込む。水溶性薬物を封入させる場合は、水和・膨潤させる水系溶媒に薬物を溶解し、超音波処理、またはエクストルージョンにより薬物をリポソーム内に内封させる。上記したように、これらの調製法は最も簡便は方法であるが、薬物の封入効率が低いことが問題とされている。具体的には、脂溶性薬物の場合、内水相に取り込まれるのではなく脂質膜に組み込まれるため、脂質モル以上に薬物を封入することは不可能である。水溶性薬物の場合は内水相に取り込まれるが、外水相に対する内水相の比率でしか内封できず、数十パーセントが限界である(Passive loading法(従来法))。このPassive loading法による製造法の特徴は、リポソーム形成の最初の工程である脂質均一化工程において、薬物を一緒に溶解させ、その後エクストルージョンにてリポソームを形成することである。そのため、製造の最初の工程から薬物の暴露が始まるため、終始、薬物の暴露に注意を払う必要があり、工程管理が容易ではない。 薬物を高い封入効率で安定に導入することができる方法として、リモートローディング(Remote loading)法がある(特許文献1)。このリモートローディング法は、適切な水性媒体に溶解された場合に、荷電状態で存在し得る慣用的薬物に用い得る。典型的には、リポソームの内側/外側に、イオン勾配を形成することで、薬物は形成された勾配に従いリポソーム膜を透過し、リポソーム内に封入し得る(特許文献2)。該導入法を適用できる薬物であれば100%近い封入効率で内封することができる。以下に、いくつかリモートローディング法の具体例を挙げる。特許第2659136号公報国際公開2005/092388号パンフレット リポソーム膜を隔てて形成されるイオン勾配を用いる方法がある。例えば、Na+/K+濃度勾配に対するリモートローディング法により予め形成されているリポソーム中に薬物を添加する技術がある。 イオン勾配の中でもプロトン濃度勾配が一般的に用いられ、例えば、リポソーム膜の内側(内水相)pHが、外側(外水相)pHよりも低いpH勾配をもつ態様が挙げられる。pH勾配は、具体的に、アンモニウムイオン濃度勾配および/またはプロトン化しうるアミノ基を有する有機化合物の濃度勾配などにより形成することができる。また、クエン酸を用いてpH勾配を形成することもできる。 さらに、リモートローディング法の特徴は、リポソームを形成した後に薬物を導入することであり、従来のPassive loading法と比べて薬物の暴露時間を減らすことができる。そのため、工程管理が容易であるといった観点からも有用な製造法である。また、リポソームを形成する工程(整粒化工程)において薬物が混在しないため、該工程での熱、圧力などの物理的ストレスを回避することができ、タンパク質など熱に弱い薬物に対しても有用な方法である。 上記したように、薬物導入法にリモートローディング法を用いる場合、薬物の暴露時間の観点、封入効率の観点から有用な方法である。しかし、該方法は、中性条件下にて電荷を持たない化合物が脂質膜を透過した後、弱酸性条件下の内水相においてプロトンが付加され、内水相に保持されるという原理に基づいているため、適用できる薬物は弱塩基性化合物に限られている。具体的には、ドキソルビシンやダウノルビシンなどのアントラサイクリン系化合物の他、ビンクリスチン、トポテカン、TOP-53、TAS-103などがあるが、適用できる薬物が少ないといった問題がある。 リポソーム製剤の製造法において、リモートローディング法は、リポソームを形成した後に薬物を導入する方法であり、従来のPassive loading法と比べて、薬物の高い封入効率を得られるばかりでなく、薬物の暴露時間を減らすことができ工程管理が容易であるといった観点からも有用な方法である。しかし、リモートローディング法を適用できる薬物は弱塩基性化合物に限られており、該導入法を使える薬物が少ないことが問題である。そのため、リモートローディング法と同じ操作で製造でき、リモートローディング法を適用できない薬物を導入できる新しい方法が求められる。リモートローディング法と同様に、リポソームを形成した後に薬物を導入する場合、薬物を外水相から内水相へ拡散させるドライビングフォースが必要である。例えば、リモートローディング法では、リポソームの内側/外側に形成されたイオン勾配あるいはpH勾配がドライビングフォースとなり、薬物は勾配に従いリポソーム膜を透過し、内水相に保持される。このように、リポソームを形成した後に薬物を導入する場合、薬物がリポソームの外から内側へ拡散できなければならず、これを達成するためのドライビングフォースが必要である。特に、水溶性が高くリポソーム膜に対する透過性が著しく低い薬物の場合は、容易にリポソーム膜を透過することができないため、リポソームを形成した後に導入することは極めて困難である。従って、該薬物をリポソーム形成後に導入するためには、内水相へ拡散させるためのドライビングフォースの形成が課題となる。 本発明の目的は、リモートローディング法と同じ操作で製造でき、リモートローディング法を適用できない薬物を導入することができる方法を構築することである。すなわち、水溶性が高くリポソーム膜に対して透過性が著しく低い薬物を、リポソームの内/外水相間における溶解度勾配を利用して導入する方法を構築することである。具体的には、導入する薬物を水より溶解度の低い溶媒に溶解させることで、リポソーム膜へ近づきやすくし、リポソーム膜へ移行しやすくする。すなわち、溶解度勾配を形成することで、リポソーム膜を透過しない薬物を内水相へ拡散させることができ、導入することが可能である。 上記知見に基づいて、以下のような本発明を提供する。(1)リポソームを形成した後に薬物をリポソーム懸濁液の内水相に導入する方法において、前記リポソーム懸濁液の外水相を前記薬物に対する溶解度が低い溶媒の水溶液に置換することにより内/外水相間の溶解度勾配を形成し、該溶解度勾配の形成と前後して該薬物を外水相へ添加し、薬物をリポソーム内へ導入するリポソーム製剤の製造方法。(2)前記溶解度勾配は、前記リポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ該外水相と混和性を有する溶媒に薬物を溶解した導入用薬物溶液を前記リポソーム懸濁液と混合することにより形成させるものである上記(1)に記載のリポソーム製剤の製造方法。(3)前記薬物はシダラビンであり、前記導入用薬物溶液に用いられるリポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ該外水相と混和性を有する溶媒は酢酸である上記(2)に記載のリポソーム製剤の製造方法。 本発明によれば、水溶性が高くリポソーム膜を透過しない薬物を、内/外水相間に形成させた溶解度勾配を利用することでリポソーム膜へ近づきやすくし、それに伴いリポソーム内部への拡散が促進され、導入することができる。従って、本発明を用いれば、リモートローディング法で導入できなかった薬物を、リモートローディング法と同じ操作で製造できるため、従来のPassive loading法と比べて薬物の暴露時間を減らすことが可能であり、工程管理を容易にできる観点からも十分満足することのできる導入法である。 以下、本発明をより詳細に説明する。 本発明は、リポソームを形成した後に薬物を内水相に導入する方法であって、リポソーム膜に対する透過性が著しく低い薬物を、内/外水相間で形成された溶解度勾配を利用して導入する方法である。<リポソーム> リポソームは、リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞であり、膜を隔てて、閉鎖空間内の内水相と外水相とが存在する懸濁液の状態で存在する。したがって、本明細書において、リポソームの語は、このリポソーム懸濁液を含む意味で使用されることがある。リポソームの膜構造は、脂質二重膜の1枚層からなるユニラメラ小胞(Unilamellar Vesicle)および多重ラメラ小胞(Multilamellar Vesicle,MLV)、またユニラメラ小胞としてSUV(Small Unilamellar Vesicle)、LUV(Large Unilamellar Vesicle)などが知られている。本発明では、膜構造は特に制限されない。 リン脂質は、一般的に、分子内に長鎖アルキル基より構成される疎水性基と、リン酸基より構成される親水性基とをもつ両親媒性物質である。リン脂質としては、ホスファチジルコリン(=レシチン)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどのグリセロリン酸;スフィンゴミエリン(SM)などのスフィンゴリン脂質;カルジオリピンなどの天然または合成のジホスファチジルリン脂質およびこれらの誘導体;これらの水素添加物たとえば水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)などを挙げることができる。リン脂質は単一種または複数種組合せであってもよい。 本発明において、リポソームを安定的に形成できるものであれば、リン脂質以外の膜成分を含むこともできるが、リン脂質は、主膜材としての観点から、封入された薬物が、保存時に、または血液などの生体中で容易に漏出しないようにするため、相転移点が生体内温度(35〜37℃)より高い主膜材を用いることが望ましい。主膜材の相転移点は、40℃以上であることが好ましい。このような相転移点をもつリン脂質として、上記のうちでも、HSPCなどの水素添加リン脂質、SMなどが好ましい。 上記他の膜成分としては、たとえばリン酸を含まない脂質(他の膜脂質)、膜安定化剤、酸化防止剤などを必要に応じて含むことができる。他の脂質としては、脂肪酸などが挙げられる。膜安定化剤としては、たとえば膜流動性を低下させるコレステロールなどのステロール、グリセロール、スクロースなどの糖類が挙げられる。酸化防止剤としては、たとえばアスコルビン酸、尿酸あるいはトコフェロール同族体すなわちビタミンEなどが挙げられる。トコフェロールには、α、β、γ、δの4個の異性体が存在するが、本発明ではいずれも使用できる。 なお、本発明では、リポソーム膜成分の脂質とは、主膜材のリン脂質、他の膜脂質および上記膜安定化剤であるステロールなどの脂質、さらには後述の膜修飾剤に含まれる脂質など、薬物以外の脂質をすべて含む意味で用いられる。 このような膜成分の脂質全量を100mol%とするとき、リン脂質は、通常20〜100mol%であり、好ましくは40〜100mol%であり、他の脂質は、通常0〜80mol%であり、好ましくは0〜60mol%である。 また本発明では、リポソームの膜構造を保持しうるものであって、リポソーム製剤に含むことができる他の膜修飾成分を、本発明の目的を損なわない範囲で含むことができる。 膜修飾成分としては、たとえば親水性高分子、および他の表面修飾剤が挙げられる。これら膜修飾成分の使用時期は、リポソーム調製工程であれば特に制限されないが、これらのうち、親水性高分子による膜修飾は、分布の効率ならびに親水性高分子が内水相に存在する薬物の影響を受けにくいなどの面から、親水性高分子をリポソーム膜の外表面、特に脂質二重膜の外膜から外液側に選択的に分布させることが好ましい。このため、本発明では、リポソームを生成させた後、特に整粒化工程後に添加することが望ましい。 親水性高分子は、その脂質誘導体として用いると、疎水性部分である脂質部分が膜中に保持されることで、親水性高分子鎖を安定に外表面に分布させることができる。 親水性高分子は、特に制限されないが、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ポリプロピレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。さらに、グルクロン酸、シアル酸、デキストラン、プルラン、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどの水溶性多糖類およびその誘導体、たとえば糖脂質が挙げられる。 これらの中でも、ポリエチレングリコール(PEG)は、血中滞留性を向上させる効果があり、好ましい。PEGの分子量は、特に限定されないが、通常、500〜10,000ダルトン、好ましくは1,000〜7,000ダルトン、より好ましくは2,000〜5,000である。 親水性高分子脂質誘導体の脂質(疎水性部分)としては、たとえばリン脂質、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的に、親水性高分子がPEGである場合には、PEGのリン脂質誘導体またはコレステロール誘導体が挙げられる。このリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミンが好ましく挙げられ、そのアシル鎖は通常、C14−C20程度の飽和脂肪酸、たとえばジパルミトイル、ジステアロイルあるいはパルミトイルステアロイルなどが挙げられる。たとえばPEGのジステアロイルホスファチジルエタノールアミン誘導体(PEG-DSPE)などは、入手容易な汎用化合物である。 親水性高分子によるリポソーム修飾率は、膜(総脂質)に対する親水性高分子量の割合として、通常0.1〜10mol%、好ましくは0.1〜5mol%、より好ましくは0.2〜3mol%である。 本発明において、上記のような外表面選択的な親水性高分子による表面修飾率は、リポソーム膜成分の脂質全量に対する比率で、通常0.1〜20mol%、好ましくは0.1〜5mol%、より好ましくは0.5〜5mol%である。(1)リポソーム懸濁液の調製工程 リポソーム懸濁液の調製方法としては、水和法(Bangham法)、超音波処理法、逆相蒸発法(Reverse phase evapolation vesicles)、加温法、脂質溶解法、DRV法(Dehydrated/Rehydrated Vesicles)、凍結融解法、エタノール注入法、薄膜法、エクストリュージョン法、高圧吐出型乳化機による高圧乳化法(「ライフサイエンスにおけるリポソーム」寺田、吉村ら編;シュプリンガー・フェアラーク東京(1992))などの各種の技術が知られている。これら手法についての文献中の記載は引用することにより本明細書に記載されているものとすることができる。 また近年開発された技術として、超高圧による圧縮からの速度変換を利用し、液相下でのジェット流により剪断乳化を行うジェット流乳化法、超臨界二酸化炭素を利用したリポソーム調製技術、後段の整粒工程を簡便化する改良型エタノール注入法などもある。 本発明において、リポソームの調製工程(1)は、典型的に、リポソームを生成させてリポソーム粗懸濁液を得る工程(i)、リポソーム粗懸濁液の整粒工程(ii)および外液置換してリポソーム懸濁液を得る工程(iv) を含み、好ましくは工程(ii)と(iv)の間にさらに親水性高分子による表面修飾工程(iii) を含む。 これら工程を行うにあたり、上記に示すような調製方法を必要に応じて適宜に採用することができる。また1方法だけでなく、2以上の方法を選択することもでき、同じまたは別の方法を重複ないし追加することもできる。 上記のうちでも、脂質溶解法は実用化指向の方法として有用である。たとえばエタノールを用いて脂質を加温溶解させる方法は広く用いられている。一般的にリポソームは相転移点をもつため、リポソームの調製のための外液置換工程(iii) の前段各工程を主膜材の相転移点以上の温度で実施することが好ましい。 なお、以下の各工程で、加温温度とは、通常、脂質、特に主膜材の相転移点以上であり、たとえば主膜材のリン脂質としてHSPCを用いる場合には、相転移温度が50℃付近であるため、50〜80℃、好ましくは60〜70℃である。しかし、HSPCに加えてコレステロールを含む処方を用いた場合、相転移温度は低下し不確かになる。例えば、HSPCとコレステロールを50mol%ずつ含む処方では、40℃付近に相転移温度を持つため、40〜70℃、より好ましくは40〜50℃である。この時、脂質膜の物理化学的安定性を考慮する必要があるため、加温温度は相転移温度の少し高め程度が望ましい。 また、リポソーム懸濁液の調製工程(1)のうちでも、リポソーム生成工程(i)における脂質均一化工程、整粒工程(ii)および表面修飾工程(iii) 、さらに後段の薬物導入工程(2)はリポソームの変形及び脂質膜の液晶化を利用して行われる工程であるため、上記加温温度が求められる。しかし、これらの工程以外では、リポソームの変形による粒子径変動を避けるため、外液置換工程(iv)、薬物導入工程(2)における未封入薬物除去工程、および最後段の無菌化工程は、主膜材の相転移点以下の低温で行うことが望ましい。 以下、この低温とは、たとえば、主膜材の相転移点が50℃付近である場合、0〜40℃程度が好ましく、典型的には、5〜25℃程度をいう。 以下に好ましい態様例に基づいて説明するが、特にこの例に限定されるものではない。 リポソーム生成工程(i)では、上記のような膜成分と水相とを混合してリポソームを生成させ、リポソーム粗懸濁液を得る。膜成分と混合する水相は、通常、浸透圧調整剤、pH調整剤などを必要に応じて注射用水に溶解した水性溶液が用いられる。 工程(i)において、膜安定化剤などとして他の脂質をリン脂質とともに用いてリポソームを生成させる場合には、膜成分と水相との混合に先立って、複数種の脂質による不均一化を避けるための均一化工程を行うことが望ましい。この均一化方法は、特に限定されないが、通常、膜成分の特に脂質を有機溶媒に完全溶解して脂質溶液を調製する。有機溶媒は、通常、たとえばクロロホルム、エタノールなどの揮発性のものが使用される。実用化の観点からは、エタノール、特に無水エタノールが好ましい。この溶解を上記した主膜材の相転移点以上の加温温度下で行えば、均質な脂質溶液が得られやすい。 次いで、リポソーム粗懸濁液の粒子径制御すなわち整粒化工程(ii)を行い、リポソーム整粒液を得る。リポソームを所望サイズにサイジングするために、膜乳化および剪断力の持続を含む様々な公知の技術が利用可能である。たとえば、先に例示した高圧乳化法、フィルターを複数回強制通過させる膜乳化法などがある。これらいずれの方法も、G.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2nd edition,Vol.I-III、CRC Pressに記載されており、この記載を引用して本明細書の記載されているものとすることができる。 整粒化工程をたとえば、上記膜乳化法により行う場合には、市販されているポリカーボネート製などのメンブランフィルターを用いて粒子径をコントロールすることができる。たとえば、粒子径100nmに整粒する場合には、通常、400nm、200nm、100nmなどのメンブレンフィルターを組み合わせて段階的に整粒することができる。 整粒工程において、リポソーム粗懸濁液が上記主膜材の相転移点以上であれば、粒子径制御が容易である。 整粒後のリポソームの大きさは特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとる場合には、粒子外径の直径が、通常、0.02〜2μmであり、好ましくは0.05〜0.25μmである。この粒子径は、Zetasizer(Malvern Instruments. 3000HS)を用いて動的光散乱法により全粒子の直径平均値として測定される。 上記で整粒されたリポソームは、好ましくは外液置換工程(iv)に先だって表面修飾される。上述したとおり、表面修飾工程(iii) は、リポソーム外表面に機能を付与することを目的として行うものであり、たとえば、ターゲテイングの機能を付与する抗体などのリガンド、または血中滞留性を向上させる機能を有する親水性高分子などをリポソーム外表面に修飾することにより行われる。親水性高分子などの表面修飾剤によって外表面が修飾されたリポソームは、製造工程中の物理化学的安定性を向上させ、製造中の加温、冷却などの条件においても安定に処理することができる。このため表面修飾工程(iii) は、外液置換工程(iv) 、さらには薬物導入工程(2)などの後段工程において、リポソーム粒子径などの物理化学的安定性を得る観点から、これら工程前、すなわちリポソーム整粒工程(ii)の直後に実施することが望ましい。 表面修飾は、具体的には、リポソーム整粒液と、表面修飾剤溶液とを混合し、上記加温温度で混合する。以下には、便宜上、表面修飾剤溶液を親水性高分子溶液と称して、表面修飾剤として典型的に親水性高分子の脂質誘導体を用いる例について説明するが、他の表面修飾を行う場合も同様である。リポソーム整粒液と親水性高分子溶液の混合は、整粒工程終了直後から可能であり、混合までの時間は、工程上、許容される限り短い時間であることが好ましい。好ましくは、前工程終了直後から遅くとも180分以内である。 親水性高分子は、必要に応じて水性溶液として用いることができる。親水性高分子およびリポソーム整粒は、混合するまで、通常、整粒化を実施した際の温度、すなわち主膜材の相転移点以上に加温状態で保持されていることが好ましい。 混合方法は、リポソーム整粒液に親水性高分子溶液を添加してもよく、その逆でもよい。混合は、撹拌しながら行うことが好ましい、撹拌は、通常、プロペラ式撹拌機などの撹拌装置を用いることができる。なお、結合されなかった表面修飾剤は、後段の未封入薬物除去工程において除去することができる。この点からも、未封入薬物除去工程は、表面修飾工程以降にあることが望ましい。 整粒および表面修飾されたリポソームは、以降の工程を安定的に実施することができ、通常知られている条件下で実施することができる。外液置換工程(iv)は、無用な熱をかけないように低温で行うことが好ましい。すなわちたとえば、主膜材の相転移点が50℃付近である場合には、0〜40℃程度が好ましく、典型的には5〜25℃程度である。この工程において、リポソーム生成工程(i)から持ち込まれるアルコール、表面修飾工程(iii) でリポソーム内に導入されなかった親水性高分子の除去を行うことができる。 外液置換工程(iv)は、リポソーム生成工程(i)で使用された水相からなるリポソームの内,外水相のうち、外水相を置換してリポソーム懸濁液を得る工程であり、外水相置換方法としては、透析法、超遠心分離法及びゲルろ過法などがある。いずれの方法も、G.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2nd edition,Vol.I-III、CRC Pressに記載されており、この記載を引用して本明細書の記載されているものとすることができる。 本発明における外液置換工程(iv)の主な目的は、生成工程(i)で持ち込まれた有機溶媒の除去と、前段として表面修飾工程(iii) を行った場合には、リポソームに結合されなかった表面修飾剤の除去である。なお、リポソームの内/外水相間における溶解度勾配の形成を本工程で行ってもよい。すなわち、用いる外水相は、導入する薬物に対して水より溶解度の低い溶媒と水を混和させた混合溶媒である。該混合溶媒を用いて外液置換を行うことで、リポソームの外側は、水より溶解度の低い溶液に置換され、それに伴いリポソームの内/外相間において溶解度勾配が形成される。この場合、薬物の添加は溶解度勾配が形成された後でも良いし、形成される前でもよい。あるいは導入する薬物に対して水より溶解度の低い溶媒に溶解した後、薬物溶液として外水相に添加しても、前記溶媒と別々に外水相に添加しても良い。本工程で溶解度勾配を形成しない場合は、薬物導入工程(2)において溶解度勾配を形成することができる。具体的には、リポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低い溶媒を用いて薬物溶液を調製し、該薬物溶液を前記溶媒と混和性を有する外水相に添加することで、外水相全体の溶解度が低くなり、リポソーム内/外水相間において溶解度勾配を形成することができる。 (2)薬物導入工程 本発明では、上記外液置換工程(iv)後のリポソーム懸濁液を用いて薬物導入を行う。薬物は、通常、薬物溶液で導入される。 なお、リポソームに薬物を封入するとは、内水相として、または内水相中に薬物を含ませることをいい、リポソーム製剤とは、この薬物が封入されたリポソームをいう。 本発明における薬物導入工程(2)は、リポソーム脂質膜の相転移点以上で行われる工程である。本発明の特徴は、薬物をリポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ外水相と混和性を有する溶媒に溶解させて導入用薬物溶液を調製し、その後、該薬物溶液を外水相に添加し混和することで、リポソーム内/外水相間において溶解度勾配を形成することである。溶解度勾配を形成することで、水溶性の高いリポソーム膜に対する透過性の低い薬物はリポソーム膜に近づきやすくなり、それに伴い、該薬物のリポソーム膜への移行が促進される。その結果、リポソーム膜を透過し、内水相へ導入される。なお、本発明において導入用薬物溶液に使用される溶媒は、薬物を溶解する能力はあるがリポソーム懸濁液の外水相より薬物に対する溶解度の低い溶媒であればよく、特に限定されないが、好ましくは水と混和できる有機溶媒である。本発明に適用できる貧溶媒としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メタノール、エタノール、プロパノール、テトタヒドロフラン、ジメチルスルフォキシドなどが挙げられる。 本発明は、治療用薬物、診断用薬物など種々の薬物に適用することができる。たとえば治療のための薬物としては、シダラビンなどがあげられる。 上記薬物導入工程後のリポソーム懸濁液は、未封入薬物除去工程、無菌化工程などは通常知られている工程が付される。 未封入薬物除去工程は、薬物導入工程後の未封入薬物の除去を目的とした工程であり、基本的には外液置換工程と同様の操作を行うが、外水相に残留する薬物を除去するという目的の点で異なっている。 無菌化工程は、リポソーム形成工程後に滅菌する工程である。滅菌の方法は特に限定されず、たとえば、ろ過滅菌、高圧蒸気滅菌法、乾式加熱滅菌法、エチレンオキサイドガス滅菌法、放射線(たとえば、電子線、x線、γ線など)滅菌法、オゾン水による滅菌法、過酸化水素水を用いる滅菌法を用いることができる、 本発明では、無菌化工程としては、ろ過滅菌が最も好ましい。ろ過滅菌法においては、リポソームは透過するが、指標菌として用いられるBrevundimonas diminuta(サイズ、約0.3×0.8μm)は濾過されないことが要求されるため、Brevundimonas diminutaに較べ充分に小さい粒子であることが必要である。粒径が100nm付近であることは、ろ過滅菌工程をより確実にする上でも重要である。 なお、製造方法によっては、この無菌化工程を設定しなくてもよい。 上記工程を経た最終製剤は、脂質の安定性および粒子径など物理化学的安定性などの観点から、室温(一般的に21℃〜25℃)、好ましくは0〜8℃での冷蔵で保存することができる。 次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるべきものではない。 (実施例1)シタラビン酢酸溶液を用いて、シタラビン封入リポソームを下記の通りに調製した。<リポソーム懸濁液の形成> 水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC,分子量790,リポイド(Lipoid)社製SPC3)0.7096gおよびコレステロール(Chol,分子量386.65,ソルベイ(Solvay)社製)0.2905gを秤量し、70℃で加温した無水エタノール1mLを添加し、加温溶解した。 得られた脂質のエタノール溶液1mLに、約70℃に加温した生理食塩水9mLを添加し、撹拌して粗リポソーム懸濁液を調製した。この粗リポソーム懸濁液を、約70℃に加温したエクストルーダー T.10(Lipex Biomembranes社製)に取り付けたフィルター(孔径0.2μm×3回、0.1μm×10回、ポリカーボネートメンブラン、Whatman社)に順次通し、リポソーム懸濁液を得た。<表面修飾> 得られたリポソーム懸濁液を加温状態で維持したまま、総脂質量の0.75mol%の表面修飾剤としてポリエチレングリコール5000−ホファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE,分子量6081,日本油脂社製)の37.65mg/mL水溶液を2mL直ちに加え、65℃で30分加温することによりリポソームの膜表面(外表面)をPEG修飾した。加温終了後のリポソーム懸濁液は、速やかに氷冷した。 なお、上記PEG導入率(mol%)=(PEG5000-DSPE/総脂質量)×100である。ここでの総脂質量は、PEG誘導体が結合した脂質(PEG5000-DSPE)を除くリポソーム膜を構成する脂質成分の総量(HSPC+Chol)のモル濃度(mM)である。<外液置換> 生理食塩水で置換したゲルカラム(Sepharose 4 Fast Flow,Amersham Biosciences)を用いて、上記PEGで修飾されたリポソーム懸濁液の外液置換を行った。リン脂質定量キットを用いて測定したHSPC濃度をもとに、総脂質濃度を算出した。<薬物導入工程> リン脂質定量キットを用いて算出した総脂質濃度をもとに、シタラビン(Cytarabine,分子量243.22)/総脂質(mol/mol)が0.45となるようにシタラビンの量を計算した。計算結果をもとに必要量のシタラビンを秤量し、酢酸を用いて15mg/mLのシタラビン溶液(薬物溶液)を調製した。外液置換後のリポソーム懸濁液5mLにシタラビン溶液1.74mLを加え約60℃で60分間加温することで薬物導入を行った。導入後のサンプルは氷冷した。<未封入薬物除去> 薬物導入後のリポソーム懸濁液を、生理食塩水で充分に置換したカラム(Sepharose 4 Fast Flow,Amersham Biosciences)を用いて未封入薬物除去を行い、リポソームに封入されていない薬物を除去した。結果を表1に示す。 なお、以下の表1〜3中、「薬物濃度」は、リポソーム分散液中のリポソームに内封されたシタラビン濃度である。「総脂質濃度」は、リポソーム分散液中の総脂質濃度である。ただし、「総脂質」には、PEG誘導体は含まれない。「薬物/脂質比」は、上記総脂質濃度と、リポソームに内封されたシタラビン濃度とのモル比である。「粒子径」とは、薬物封入リポソームを粒度分布系(Zetasizer3000HS、Malvern Instruments社)にて測定した平均粒子径を意味する。「封入効率(%)」は以下の式を用いて求めた。封入効率(%)=(最終薬物/脂質比(mol/mol))/(仕込み薬物/脂質比(mol/mol))*100 (比較例1)シタラビン水溶液を用いてシタラビン封入リポソームを下記の通りに調製した。<リポソーム懸濁液の形成> 水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC,分子量790,リポイド(Lipoid)社製SPC3)0.7106gおよびコレステロール(Chol,分子量386.65,ソルベイ(Solvay)社製)0.2913gを秤量し、70℃で加温した無水エタノール1mLを添加し、加温溶解した。 得られた脂質のエタノール溶液1mLに、約70℃に加温した生理食塩水9mLを添加し、撹拌して粗リポソーム懸濁液を調製した。この粗リポソーム懸濁液を、約70℃に加温したエクストルーダー T.10(Lipex Biomembranes社製)に取り付けたフィルター(孔径0.2μm×3回、0.1μm×10回、ポリカーボネートメンブラン、Whatman社)に順次通し、リポソーム懸濁液を得た。<表面修飾> 得られたリポソーム懸濁液を加温状態で維持したまま、総脂質量の0.75mol%の表面修飾剤としてポリエチレングリコール5000−ホファチジルエタノールアミン(PEG5000-DSPE,分子量6081,日本油脂社製)の37.65mg/mL水溶液を2mL直ちに加え、65℃で30分加温することによりリポソームの膜表面(外表面)をPEG修飾した。加温終了後のリポソーム懸濁液は、速やかに氷冷した。 なお、上記PEG導入率(mol%)=(PEG5000-DSPE/総脂質量)×100である。ここでの総脂質量は、PEG誘導体が結合した脂質(PEG5000-DSPE)を除くリポソーム膜を構成する脂質成分の総量(HSPC+Chol)のモル濃度(mM)である。<外液置換> 生理食塩水で置換したゲルカラム(Sepharose 4 Fast Flow,Amersham Biosciences)を用いて、上記PEGで修飾されたリポソーム懸濁液の外液置換を行った。リン脂質定量キットを用いて測定したHSPC濃度をもとに、総脂質濃度を算出した。<薬物導入工程> リン脂質定量キットを用いて算出した総脂質濃度をもとに、シタラビン(Cytarabine,分子量243.22)/総脂質(mol/mol)が0.45となるようにシタラビンの量を計算した。計算結果をもとに必要量のシタラビンを秤量し、RO水を用いて15mg/mLのシタラビン溶液(薬物溶液)を調製した。外液置換後のリポソーム懸濁液5mLにシタラビン溶液2mLを加え約60℃で60分間加温することで薬物導入を行った。導入後のサンプルは氷冷した。<未封入薬物除去> 薬物導入後のリポソーム懸濁液を、生理食塩水で充分に置換したカラム(Sepharose 4 Fast Flow,Amersham Biosciences)を用いて未封入薬物除去を行い、リポソームに封入されていない薬物を除去した。結果を表2に示す。 実施例1および比較例1においてシタラビンの封入効率を比較した結果、シタラビンを水に溶解させた場合(比較例1)、全く導入されないことが明らかとなった(封入効率0.17%)。一方、実施例1において、シタラビンを溶解させる溶媒として、水よりシタラビンの溶解性が低い酢酸を用いてシタラビン溶液を調製し、薬物導入を行った結果、封入効率は8.12%となり、リポソームへ導入されることが明らかとなった。これらの結果より、シタラビンは水溶性が高いため、水に溶解させると脂質膜へ移行しにくく、その結果、リポソーム膜を外から内側へ透過することができず、導入されなかったと考えられる。一方、シタラビンを溶解させる溶媒として酢酸を用いると、酢酸はシタラビンにとって水より溶解性の低い溶媒であるため、リポソームの内/外水相間において溶解度勾配が形成される。酢酸に溶解したシタラビンは、水に溶解している状態よりもリポソーム膜に近づきやすくなり、その結果、溶解度勾配に伴って内水相へ拡散し、導入されたと考えられる。なお、上記実施例1においては、未封入薬物除去後の薬物封入リポソーム懸濁液を4℃で3ヶ月間保存し、その後、封入効率を求めた結果、薬物は安定に保持されていることを確認している。以上のことから、本発明の溶解度勾配を用いることで、水溶性が高く、リポソーム膜を透過しない薬物を、リモートローディング法と同様に、リポソームを形成した後に導入することができることが明らかとなった。また、本発明を用いると、リポソームを形成した後に薬物を導入することができるため、従来のPassive loading法より薬物の暴露時間を抑えることができ、工程管理が容易である。 リポソームを形成した後に薬物をリポソーム懸濁液の内水相に導入する方法において、前記リポソーム懸濁液の外水相を前記薬物に対する溶解度が低い溶媒の水溶液に置換することにより内/外水相間の溶解度勾配を形成し、該溶解度勾配の形成と前後して該薬物を外水相へ添加し、薬物をリポソーム内へ導入するリポソーム製剤の製造方法。 前記溶解度勾配は、前記リポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ該外水相と混和性を有する溶媒に薬物を溶解した導入用薬物溶液を前記リポソーム懸濁液と混合することにより形成させるものである請求項1に記載のリポソーム製剤の製造方法。 前記薬物はシダラビンであり、前記導入用薬物溶液に用いられるリポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ該外水相と混和性を有する溶媒は酢酸である請求項2に記載のリポソーム製剤の製造方法。 【課題】水溶性が高くリポソーム膜に対して透過性が著しく低い薬物を、リポソームの内/外水相間における溶解度勾配を利用して導入する方法を構築すること。【解決手段】 リポソームを形成した後に薬物をリポソーム懸濁液の内水相に導入する方法において、前記リポソーム懸濁液の外水相よりも薬物に対する溶解度が低くかつ該外水相と混和性を有する溶媒に溶解した導入用薬物溶液を前記リポソーム懸濁液と混合することにより内/外水相間の溶解度勾配を形成し、該薬物をリポソーム内へ導入するリポソーム製剤の製造方法。【選択図】 なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る