タイトル: | 公開特許公報(A)_リチウムの分析方法 |
出願番号: | 2007303940 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 23/225 |
吉川 秀之 松沢 秀樹 大村 和世 西 康尚 JP 2009128203 公開特許公報(A) 20090611 2007303940 20071126 リチウムの分析方法 NECトーキン株式会社 000134257 吉川 秀之 松沢 秀樹 大村 和世 西 康尚 G01N 23/225 20060101AFI20090515BHJP JPG01N23/225 3 1 OL 7 2G001 2G001AA03 2G001BA05 2G001CA01 2G001EA01 2G001EA03 2G001GA01 2G001LA02 2G001NA03 2G001NA15 2G001PA01 2G001PA06 2G001PA07 2G001QA02 2G001RA02 2G001RA20 本発明は、リチウムイオン2次電池内に存在するリチウムの分析方法に関するものである。 現在、リチウムイオン2次電池は、他のエネルギーデバイス、例えば電気二重層キャパシタやニッケル水素蓄電池などと比較して本質的にエネルギー密度が高く、また様々な改善によりパワー密度の向上も進んできている。従来に比べ、小型化に有利であることから、現在電子機器により多様に採用されており、特に自動車への適用も大いに期待されている製品である。 このようなリチウムイオン2次電池は、ケース内に充填された電解液の中に2種類の正負の極板(両面が電極活物質からなる集電体)を浸漬した構造を有している。従って、その充放電時には化学反応を伴うため、充放電を繰り返すごとに容量劣化、内部抵抗増大を生じる。例えば、電気自動車やハイブリッド自動車にバッテリユニットとして用いた場合、所定の容量劣化が生じた時点で、電池あるいはバッテリユニットを交換する必要があった。 このような劣化の要因としては、極板を構成する電極活物質層表面に電解液との反応生成物が付着し、反応サイトを塞いでしまう欠点が挙げられる。この場合、リチウムが含まれた反応生成物が当初とは違った状態で生成していることが問題視されており、そのためにはリチウムがどの様に分布しているか、その状態の解明が必要とされてきている。 従来、この様な試料分析では、微小領域分析や表面の元素分析を行なう技術として、電子線を試料に照射し、照射された微小領域や表面から励起される特性X線をX線検出器により検出するエネルギー分散型X線分析装置(以下、EDXと表記)や電子線プローブマイクロX線分析装置(以下、EPMAと表記)が知られている。EDX或いはEPMAは、電子線を試料に照射すると、その照射領域に存在する各元素がそれぞれ固有のエネルギーを有する特性X線を放出することを利用して分析を行う。電子線により励起された特性X線のエネルギースペクトル、あるいは波長スペクトルを分析することにより、照射領域に存在する元素の組成、分布状態を知ることができる方法である。 しかしながら、試料から発生する特性X線はエネルギーが非常に小さく、理論上は電子殻軌道にK殻とL殻を持つリチウム以上の元素番号を有する元素から特性X線が発生するはずであるが、元素番号が小さいリチウムでは、特性X線エネルギーが非常に小さく、波長も長いために、電子線照射により試料表面で発生した特性X線が検出器に到達する以前に減衰してしまい、EDX或いはEPMAによって検出された例はいまだ報告されていない。実際に検出できる元素はBe或いはB(Boron)以上の元素である。 現在、リチウムの分析を行う方法としては、X線光電子分光分析法(以下、XPSと表記)や、誘導結合プラズマ質量分析(以下、ICP−MSと表記)法、電子エネルギー損失分光(以下、TEM−EELSと表記)を用いて分析することが一般的である。しかしながら、XPSでは最新の装置でも分析領域が最小でも10μm程度の広い範囲になってしまい、装置も非常に高価であるため汎用性に劣る。またICP−MSでは測定する試料を溶解しなければならないといった問題があり、TEM−EELSでは、試料が50nm以下に薄くする必要があり、試料作製に時間がかかり、分析装置も非常に高価である。 昨今のリチウムイオン電池の普及により、リチウム元素の分析に対する需要が多くなっているがにもかかわらず、上述の様に、分析手法はいずれも、試料作成に時間がかかり、また非常に高価な分析装置に頼らなくてはならないのが現状である。 特許文献1には、リチウム二次電池において、リチウムと合金を形成する金属元素を、EPMAを用いて分析した例が示されている。 また、特許文献2には、リチウム二次電池において、リチウム金属複合酸化物の金属元素を、EDXを用いて分析した例が示されている。特開2000−021404号公報特開2005−259703号公報 特許文献1、2とも、金属元素の分析から、リチウム元素の存在を推定するものであり、信頼性に乏しく、十分とは言えないという問題があった。 本分析方法では、これら欠点を補い、従来汎用的に用いられているEDX或いはEPMAによってリチウムを分析できる手法を提供するものである。 リチウム元素は室温において窒素と反応し窒化リチウム(Li3N)化合物を生成する。 6Li+3N2→2Li3Nしかし、窒化リチウムは水分と反応するとさらに水酸化リチウム(LiOH)とアンモニア(NH3)に分解する。 Li3N +3H2O→ 3LiOH+NH3 そこで本発明は、リチウムが存在する試料を高純度の窒素雰囲気中にさらし、窒素と常温で反応させることによって窒化リチウムを生成させ、その後、水分と反応させることなく、即ち大気に曝すことなく窒素雰囲気のまま各々の分析装置に導入し、EDX或いはEPMAにより分析を行うことで、窒化リチウムの窒素の成分ピークの分析により、定性的にリチウムの存在を確認できることが可能な分析方法である。 すなわち、本発明は、金属リチウムを窒素雰囲気中で処理することで窒化物を生成し、窒化物の窒素の成分ピークの存在を検出することにより、リチウムの存在を確認することを特徴とするリチウムの分析方法である。 また、前記窒素雰囲気中で、処理する際において、露点温度−20℃以下の窒素であればいずれでも良く、窒素濃度99.9%以上100%未満の雰囲気中にて窒化処理することを特徴とするリチウムの分析方法である。 さらに、エネルギー分散型X線分析装置、あるいは電子線プローブマイクロX線分析装置を用いて、成分ピークの存在を検出することを特徴とするリチウムの分析方法である。 従って、本発明によれば、リチウムの分布を間接的に窒素により知ることが出来ることより、従来XPS或いはTEM−EELS等の高価な装置でしか行えなかった、リチウムの分析が、EDX及びEPMA分析装置により、汎用的に分析が行うことができる様になる。 また、リチウムの分析、解析を行うことで、小型・高容量化への開発 および、リチウムイオン2次電池の用途も、ハイブリッド自動車或いは電気自動車等、様々な分野へと広がるようになる。 図1は、本発明の実施の形態に係わるグローブボックスの説明図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、正面図である。図1のグローブボックス1内に、十分な置換可能な様に、チャンバー2の容量の4倍以上の乾燥空気(Dry Air)を、乾燥空気導入口5を通して流し込み置換する。この際、可能であればチャンバー2内を真空ポンプにて排気処理した後に乾燥空気(Dry Air)を導入するとさらに望ましい。その後、連続してチャンバー2内を露点温度−20度以下の純度99.9%以上の窒素を、チャンバー2の容量の4倍以上、窒素ガス導入口6を通して流し込み置換する。露点温度を低くすることにより、常温との温度差が大きくなるので、窒素ガス中の水分を減少させることができ、より乾燥した窒素ガスの供給が可能となる。 グローブボックス1は、チャンバー2内の前面に取り付けた柔軟性を有するグローブ上の操作手袋3が取り付けられ、他の箇所は密閉構造を有しており、ガスをチャンバー内に流すことで、浮き子式の逆止弁4が働き内部のガスを外部に放出する構造となっている。これによりチャンバー2内を窒素によって置換された状態に保つことが出来る。 窒素によって置換されたグローブボックス1内において、リチウムイオン2次電池の負極材料を用いて分析する場合を例として示す。あらかじめ試料導入口7に入れておいたリチウムイオン2次電池を、開閉仕切り板8を開け、チャンバー2内に移し、開封し、正極材料、セパレータ、負極材料を各々取り出す。その際、試料を高純度の窒素雰囲気中にさらし、窒素と常温で反応させることによって窒化リチウムを生成させる。その後、取り出した試料をチャンバー2内で窒素封入されたケースに封入し一度取り出す。 図2は、本発明の実施の形態に係わるEDX装置の説明図である。一度取り出された試料が封入されたケースをEDX分析装置試料導入部10に取り付けた窒素により置換されたチャンバー2内で、グローブ上の操作手袋3を用いて開封し、EDX分析装置用の分析試料台に取り付ける。その後連続して、EDX分析装置9内の試料室へ試料を導入し、10-3Pa以上の真空度に置換し装置内で試料に電子線を照射し分析を行う。EDX分析装置の代わりにEPMA分析装置で分析を行うことも可能である。 リチウムイオン2次電池の負極材料では、一般的に負極材としてカーボンが用いられており、負極材料の粒子間の結着に有機系バインダ、電解液としては六フッ化リチウムが用いられている。これらの中で常温で窒素と反応する物質はリチウムのみであり、他の材料ではわずかに試料極表面に窒素が吸着するのみである。試料極表面に吸着した窒素はEDX或いはEPMAの分析ではほとんど検出されず、窒化リチウムの窒素とは明らかに濃度が異なるので、容易に区別することができる。 次に、実施例に基づき、本発明のリチウムの分析方法について、さらに詳しく説明する。 図3は、本発明の実施例に係わるEDX分析スペクトルの説明図である。図3(a)は、窒化リチウムを分析した場合のEDXスペクトル、図3(b)は、窒化リチウムが存在しない箇所を分析した場合のEDXスペクトルである。図3(a)より、明らかに窒化リチウムを分析した場合のEDXスペクトルでは、0.4keV付近に窒素元素の特性X線のピークが見られた。しかし、図3(b)より、窒化リチウムが存在しない箇所を分析した場合のEDXスペクトルでは、窒素元素の特性X線のピークが見られなかった。本発明の実施の形態に係わるグローブボックスの説明図。図1(a)は、平面図、図1(b)は、正面図。本発明の実施の形態に係わるEDX装置の説明図。本発明の実施例に係わるEDX分析スペクトルの説明図。図3(a)は、窒化リチウムを分析した場合のEDXスペクトルを示す、図3(b)は、窒化リチウムが存在しない箇所を分析した場合のEDXスペクトルを示す。符号の説明1 グローブボックス2 チャンバー3 操作手袋4 浮き子式逆止弁5 乾燥空気導入口6 窒素ガス導入口7 試料導入口8 開閉仕切り板9 EDX分析装置10 EDX分析装置試料導入口 金属リチウムを窒素雰囲気中で処理することで窒化物を生成し、前記窒化物の窒素の成分ピークの存在を検出することにより、リチウムの存在を確認することを特徴とするリチウムの分析方法。 前記窒素雰囲気中で、処理する際において、露点温度−20℃以下の窒素を用い、窒素濃度99.9%以上の雰囲気中にて処理することを特徴とする請求項1記載のリチウムの分析方法。 エネルギー分散型X線分析装置、あるいは電子線プローブマイクロX線分析装置を用いて、前記成分ピークの存在を検出することを特徴とする請求項1あるいは2記載のリチウムの分析方法。 【課題】 リチウムが存在する試料を高純度の窒素雰囲気中にさらし、窒素と常温で反応させることによって窒化リチウムを生成させ、その後、大気に曝すことなく窒素雰囲気のままEDX或いはEPMA分析装置に導入し、窒化リチウムの窒素の分析により、定性的にリチウムの存在を確認可能な分析方法を提供することにある。【解決手段】 グローブボックス1内に、十分な置換可能な量の乾燥空気を、乾燥空気導入口5を通して流し込み置換し、その後、連続してグローブボックス1内に、露点温度−20度以下の純度99.9%以上の窒素を、窒素ガス導入口6を通して流し込み置換する。試料をグローブボックス1内で、高純度の窒素雰囲気中にさらし、窒素と常温で反応させることによって窒化リチウムを生成させる。EDX分析装置9内の試料室へ試料を導入し、試料に電子線を照射しEDXスペクトルより、窒素元素の特性X線のピークを分析することにより、リチウムの存在が可能となる。【選択図】 図1