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タイトル:公開特許公報(A)_オリゴdTプライマー、cDNAライブラリー作製キット、およびcDNAライブラリー作製方法
出願番号:2007303618
年次:2009
IPC分類:C12N 15/09,C40B 50/06


特許情報キャッシュ

倉田 哲也 西山 智明 JP 2009125001 公開特許公報(A) 20090611 2007303618 20071122 オリゴdTプライマー、cDNAライブラリー作製キット、およびcDNAライブラリー作製方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 特許業務法人原謙三国際特許事務所 110000338 倉田 哲也 西山 智明 C12N 15/09 20060101AFI20090515BHJP C40B 50/06 20060101ALI20090515BHJP JPC12N15/00 AC40B50/06 27 OL 18 4B024 4B024AA20 4B024BA80 4B024CA04 4B024CA09 本発明は、cDNAライブラリーの作製に用いるオリゴdTプライマー、このオリゴdTプライマーを備えているcDNAライブラリー作製キット、ならびにこのオリゴdTプライマーおよびcDNAライブラリー作製キットを用いてcDNAライブラリーを作製する方法に関するものである。 近年、ゲノムの網羅的な解析、および遺伝子発現の網羅的な解析がなされてきており、そのための新たな技術も開発されてきている。その技術の一つとして、短時間のうちに大規模なシーケンシングを行うことを可能とした技術が挙げられる。 新たに開発された大規模シーケンシングの技術として、非特許文献1に開示されたSequence−by−synthesis法が挙げられる。Sequence−by−synthesis法を利用した次世代型の高速シーケンサー(例えば、Roche社のGenome Sequencer 20)を用いた場合、一度のシーケンシングで、4000万塩基程度の配列を決定することができ、シーケンシングに要する時間も5時間程度である。また、煩雑なクローニング作業は不要である。そのため、配列決定に要する手間とコストを抑えることができる。 このような次世代型の高速シーケンサーを用いてシーケンシングを行う場合には、それに適したサンプルの調製が必要となる。これまでに、この高速シーケンサーを用いて組織の遺伝子発現を解析するためのcDNAライブラリーの作製方法が開発されている(例えば、非特許文献2〜4参照)。非特許文献2に記載された方法によれば、mRNAの不特定部位の塩基配列を決定することができる。また、非特許文献3に記載された方法によれば、mRNAの5’側の塩基配列を決定することができる。また、非特許文献4に記載された方法によれば、mRNAの5’側および3’側の塩基配列を決定することができる。M.Marguliesら、Nature,437:376−380(2005)A.P.Weberら、Plant Physiology,144:32−42(2007)M.Gowdaら、Nucleic Acids Research,34(19):e126(2006)P.Ngら、Nucleic Acids Research,34(12):e84(2006) しかしながら、mRNAの3’側の配列を決定する方法である非特許文献4記載の技術には種々の問題がある。例えば、非特許文献4に記載されたcDNAライブラリーの作製方法には、cDNAをクローニングする工程が含まれているため、煩雑な作業が増えてしまう。さらに、この作製方法により作製したライブラリーを用いて決定できるmRNAの3’側の配列の長さは、20塩基程度と短いものである。 そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、次世代型の高速シーケンサーに用いてmRNAの3’側の塩基配列を決定することができるcDNAライブラリーを作製する技術を提供することにある。 発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、Sequence−by−synthesis法においては、配列決定を行う領域に同一の塩基が8以上連続して存在すると、その後のシーケンシングの精度が著しく低下してしまうという問題点を見出した。mRNAの3’側の配列を決定する場合には、ポリT配列を有しているオリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行うのが一般的である。この場合、オリゴdTプライマーのポリT配列も、合成されたcDNA中に含まれてしまう。通常、このポリT配列は8塩基以上であるため、上述した問題から、mRNAの3’側の配列決定における精度を著しく低下させる。この問題を回避するために、オリゴdTプライマーを短くする方法も考えられる。しかし、この場合には、オリゴdTプライマーとmRNAのポリA配列との対合の効率が悪くなり、逆転写反応を十分に行うことができず、cDNAの合成効率が低下してしまう。これらの知見から、特定の配列を反復領域に有するオリゴdTプライマーを用いることにより、次世代型の高速シーケンサーに用いてmRNAの3’側の塩基配列を決定することができるcDNAライブラリーを作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明に係るオリゴdTプライマーは、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなる反復領域を含んでいることを特徴としている。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、上記の反復領域の5’側に隣接してTXまたはTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)をさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、上記の反復領域の3’側に隣接してTを1つさらに含んでいるか、または2〜7個連続してさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、配列番号1に示される塩基配列を含んでいることが好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、上記の反復領域の5’側にアダプター配列をさらに含んでおり、このアダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることが好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、上記のアダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、上記のオリゴdTプライマーを備えていることを特徴としている。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーをさらに備えていることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、上記のランダムプライマーが、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群であることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、上記のオリゴdTプライマーが上記の反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ上記のランダムプライマーが上記のランダム領域の5’側に第2アダプター配列をさらに含んでおり、第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることがこのましい。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、上記のオリゴdTプライマーが第1アダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行う逆転写工程を包含し、この反復領域は、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなることを特徴としている。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが、上記の反復領域の5’側に隣接してTXまたはTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)をさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが、上記の反復領域の3’側に隣接してTを1つ含んでいるか、または2〜7個連続して含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが、配列番号1に示される塩基配列を含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いて、上記の逆転写反応の反応産物を増幅する核酸増幅工程をさらに包含することが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記の核酸増幅工程が、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群を上記のランダムプライマーとして用いることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記の核酸増幅工程が、上記のオリゴdTプライマーおよび上記のランダムプライマーの対を用いて行われることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが上記の反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ上記のランダムプライマーが上記のランダム領域の5’側に第2アダプター配列をさらに含んでおり、第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーを用いて、組織由来RNAを逆転写する第1逆転写工程と、第1逆転写工程における反応産物と対合しているRNAを断片化する断片化工程と、断片化したRNAをプライマーとして用いて、第1逆転写工程における反応産物を増幅する第1核酸増幅工程と、第1核酸増幅工程における反応産物を転写する転写工程と、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いて、この転写反応の反応産物を逆転写する第2逆転写工程と、上記のオリゴdTプライマーを用いて、第2逆転写工程における反応産物を増幅する第2核酸増幅工程とを包含し、この反復領域は、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなることを特徴としている。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、第2核酸増幅工程が、上記のオリゴdTプライマーおよび上記のランダムプライマーの対を用いて行われることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、第2核酸増幅工程が、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群を上記のランダムプライマーとして用いることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが上記の反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ上記のランダムプライマーが上記のランダム領域の5’側に、第2アダプター配列をさらに含んでおり、第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、上記のオリゴdTプライマーが第1アダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることが好ましい。 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法は、第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることが好ましい。 特定の配列からなる反復領域を含んでいる本発明に係るオリゴdTプライマーを用いれば、Sequence−by−synthesis法によりmRNAの3’側の塩基配列を決定できるcDNAライブラリーを作製することができる。 本発明に係るオリゴdTプライマー、cDNAライブラリー作製キット、およびcDNAライブラリー作製方法について説明すると以下の通りである。 〔オリゴdTプライマー〕 本発明は、新たなオリゴdTプライマーを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「オリゴdTプライマー」は、逆転写反応のプライマーとして用い得る一本鎖DNAが意図され、具体的には、mRNAのポリA配列と対合し得る配列を有している一本鎖DNAが意図される。 本発明に係るオリゴdTプライマーを用いれば逆転写産物(一本鎖cDNA)の集合を合成することができる。すなわち、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いればcDNAライブラリーを作製することができる。一般に、「cDNAライブラリー」は二本鎖cDNAの集合を指すことが多いが、本明細書中で使用される場合、一本鎖cDNAの集合もまた「cDNAライブラリー」の範疇に含まれる。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、3〜7個連続するTからなる複数のポリT配列がT以外の任意の単一塩基によって連結されている反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーであることを特徴としている。本発明に係るオリゴdTプライマーは、この反復領域においてmRNAのポリA配列と対合し、この領域以外に、ポリA配列とは対合しない配列を含んでいてもよい。なお、本明細書中で使用される場合、用語「mRNA」はRNAの3’側にポリA配列を含んでいるRNA、すなわち真核生物由来のmRNAが意図される。 本発明に係るオリゴdTプライマーの反復領域の長さは、逆転写反応の際に、mRNAのポリA配列と対合することができる限り、限定されるものではない。反復領域の長さを18nt以上にすることにより、逆転写反応の際に、反復領域とポリA配列とを効率よく対合させることができる。また、反復領域の長さを50nt以下にすることにより、配列決定に含まれる反復領域の長さを減らすことができ、それにより、mRNAの3’UTRの塩基配列を多く決定することができる。このように、反復領域の長さは、18ヌクレオチド(nt)〜50ntが好ましく、18nt〜40ntがより好ましく、20nt〜25ntがさらに好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、反復領域の5’側に隣接してTXまたはTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)をさらに含んでいてもよい。 また、本発明に係るオリゴdTプライマーは、反復領域の3’側に隣接してTを1つ含んでいるか、または2〜7個連続して含んでいてもよい。反復領域の3’側に隣接して含まれるTの数は、3〜6個が好ましく、4または5個がより好ましい。 本発明に係るオリゴdTプライマーに含まれている塩基Xは、C(シトシン)であることが好ましい。CはTと同じくピリミジン誘導体である。一方、A(アデニン)およびG(グアニン)は、プリン誘導体である。したがって、XがTと類似した構造を有するCである場合には、XがAまたはGである場合と比較して、オリゴdTプライマーとポリA配列とが対合する際に、ひずみが生じ難く、安定して対合することができる。 本発明に係るオリゴdTプライマーは、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなる反復領域を含んでいればよいといえる。反復配列において連続するTの数が少なすぎると、逆転写反応の際にポリA配列との対合の効率が低下するので、反復配列としては、TTTTTX、TTTTTTXがより好ましく、TTTTTTXがさらに好ましい。一実施形態において、本発明に係るオリゴdTプライマーの塩基配列は、配列番号1に示す塩基配列であり得る。 上述したように、本発明に係るオリゴdTプライマーは、mRNAのポリA配列と対合する領域以外に、ポリA配列とは対合しない配列を含んでいてもよい。例えば、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いて合成した一本鎖cDNAから、後述するランダムプライマーを用いて二本鎖cDNAを生成することができる。この生成した二本鎖cDNAをさらに増幅する必要がある場合は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいる配列(本明細書中において、以下「アダプター配列」と称する。)を反復領域の5’側にさらに含んでいてもよい。なお、本明細書中で使用される場合、用語「アダプター配列」は、核酸増幅反応において核酸増幅用プライマーと良好に対合し得る配列である限り、任意の配列であり得るが、反復領域の配列および後述するランダムプライマーに含まれるランダム領域の配列と異なる配列が意図されている。 オリゴdTプライマーに含まれるアダプター配列(第1アダプター配列)の長さは、30nt〜55ntが好ましく、35nt〜50ntがより好ましく、40nt〜45ntがさらに好ましい。 また、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いることによって得られたcDNAの配列決定を行う必要がある場合は、シーケンシング用プライマーと対合し得る配列が、アダプター配列中に含まれていてもよい。 さらに、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いて二本鎖cDNAを合成した後に、転写を行う必要がある場合は、このオリゴdTプライマーにおいて、アダプター配列の5’側にプロモータ配列が含まれていてもよい。これにより、逆転写反応に供されたmRNAと相補的な配列を含むRNAを合成することができる。プロモータ配列としては、例えば、T7プロモータ配列、T3プロモータ配列、およびSP6プロモータ配列等を挙げることができ、T7プロモータ配列がより好ましい。 合成した二本鎖cDNAから転写によってRNAを合成すると、一つのcDNAから複数のRNAが合成される。この合成されたRNAを用いて再び逆転写反応を行えば、転写を行う前のcDNAライブラリーよりも多くの量のcDNAを含んでいるcDNAライブラリーを作製することができる。したがって、抽出した組織由来のRNAの量が少ないため合成されるcDNAの量が少ない場合に有効な手段である。 また、本発明に係るオリゴdTプライマーは、反復領域の3’側に隣接して、または、反復領域の3’側に隣接してTを1つ含んでいるかもしくは2〜7個連続して含んでいる場合にはその3’側に隣接して、VN(VはT以外の任意の塩基、Nは任意の塩基を示す。)を含んでいてもよい。それにより、逆転写反応におけるcDNAの伸長を、ポリA配列の5’側に隣接する3’UTRから開始することが可能となる。 当業者は、従来公知の方法、装置等を用いて(例えば化学合成により)本発明に係るオリゴdTプライマーを容易に作製することができる。本発明に係るオリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成した場合、8個以上連続する同一塩基からなる配列が、合成したcDNAの末端に含まれることを防ぐことができる。したがって、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いれば、同一の塩基が連続している配列が存在すると精度が低下するシーケンシング技術の精度を大いに向上し得る。 〔cDNAライブラリー作製キット〕 上述したように、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いればcDNAライブラリーを作製することができる。 このように、本発明はまた、cDNAライブラリー作製キットを提供する。本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、少なくとも上記オリゴdTプライマーを備えていればよいといえる。 本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーをさらに備えていてもよい。このようなランダムプライマーを用いれば、逆転写産物(一本鎖cDNA)から二本鎖cDNAを生成することができ、さらに生成した二本鎖cDNAを大量に増幅させることができる。なお、ランダム領域を構成する塩基数は5〜10個の範囲内であればよいが、6〜8個であることがより好ましい。なお、本発明に係るcDNAライブラリー作製キットに含まれ得るランダムプライマーは、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群であってもよい。このようなプライマー群であるランダムプライマーを用いれば、より多くの種類の一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成することができる。 本発明に用いられ得るランダムプライマーは、ランダム領域の5’側にアダプター配列(第2アダプター配列)をさらに含んでいてもよい。このようなランダムプライマーを用いて二本鎖cDNAを生成すれば、アダプター配列の領域に対合する核酸増幅用プライマーを用いて、生成した二本鎖cDNAをさらに増幅することができる。この場合に、上記オリゴdTプライマーのアダプター配列(第1アダプター配列)の領域とランダムプライマーのアダプター配列(第2アダプター配列)の領域とに対合するプライマーセット(対)を核酸増幅用プライマーとして用いて核酸増幅反応を行うことが可能である。このようなプライマーセットを用いて核酸増幅反応を効率よく行うためには、第1アダプター配列と第2アダプター配列とが互いに異なる配列であることが好ましい。また、上記オリゴdTプライマーとランダムプライマーとのプライマーセットを用いて、生成した二本鎖cDNAを核酸増幅反応によりさらに増幅することが可能である。この場合にも核酸増幅反応を効率よく行うためには、第1アダプター配列と第2アダプター配列とが互いに異なる配列であることが好ましい。ランダムプライマーに含まれるアダプター配列の長さは、30nt〜55ntが好ましく、35nt〜50ntがより好ましく、40nt〜45ntがさらに好ましい。 当業者は、従来公知の方法、装置等を用いて(例えば化学合成により)ランダムプライマーを容易に作製することができる。また、市販のランダムプライマーを用いることも可能である。 また、ランダムプライマーは、アダプター配列を含む領域の5’側にビオチンが結合していてもよい。ビオチンは、ヌクレオチド以外の物質、例えばTEG(tetra−ethyleneglycol)を介してヌクレオチドに結合していることが好ましい。ビオチンは糖タンパク質であるアビジンと特異的に結合することができる。そのため、ビオチンが結合しているランダムプライマーを用いて核酸増幅反応を行えば、ビオチンとアビジンの結合を利用することにより、核酸増幅反応の産物を容易に回収することができる。また、高速シーケンサーには、ビオチンとアビジンの結合を利用してDNAをアビジンビーズ上に固定して、一方の端部に第1アダプター配列を含みもう一方の端部に第2アダプター配列を含むcDNAを選択的に回収する処理を行った後に、シーケンシングを行うものもある。ビオチンが結合しているランダムプライマーを用いて作製したcDNAライブラリーは、このようなシーケンサーを用いてシーケンシングを行う際に有効である。 また、キットの構成としては上述したものに限定されるものではなく、他の試薬や器具を備えていてもよい。例えば、逆転写反応関連試薬(逆転写酵素、dNTP、DTT、逆転写反応用バッファー、および反応用チューブ等)、核酸増幅関連試薬(DNAポリメラーゼ、および核酸増幅用バッファー等)、転写関連試薬(RNAポリメラーゼ、転写用バッファー、およびNTP等)、リボヌクレアーゼ、DNAリガーゼ、DNAリガーゼ用バッファー、反応停止用試薬(EDTA)、およびDNAを安定的に保持するための試薬や緩衝液(Trisバッファー)を備えていてもよい。当業者であれば、上述した反応に用いるべき試薬を適宜選択し得る。 上記の何れの構成であっても、cDNAライブラリー作製に好ましい試薬等を備えている。そのため、本発明に係るcDNAライブラリー作製キットは、本発明に係るcDNAライブラリー作製方法に好適に用いることができる。したがって、本発明に係るcDNAライブラリー作製キットを用いれば、大規模シーケンシング技術を利用したシーケンサーを用いてmRNAの3’側の配列を決定することができるcDNAライブラリーを、容易に作製することができる。 〔cDNAライブラリー作製方法1〕 本発明はまた、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行う逆転写工程を包含することを特徴とするcDNAライブラリーの作製方法を提供する。 本発明に係る作製方法により作製されたcDNAライブラリーは、大規模シーケンシングに好適に用い得る。なお、大規模シーケンシングとしては、例えば、Sequence−by−synthesis法によるシーケンシングが挙げられる。 以下の各工程後における酵素の不活化、生成物の抽出等の操作は、当業者が適宜なし得るものである。その具体的な操作方法は、Molecular Cloning(Maniatisら、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press、1982)等に記載されている。また、市販のキットを用いて行うこともできる。また、例えば、ゲル電気泳動により、DNAまたはRNAを分離した後に、目的とする大きさのDNAまたはRNAをゲルから抽出してもよい。ゲルとしては、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、および低融点アガロースゲル等が挙げられる。ゲルからのDNAまたはRNAの抽出は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。 逆転写工程は、出発原料となるRNAから逆転写反応により一本鎖cDNAを合成する工程である。逆転写反応に用いるRNAとしては、生物組織由来のRNAを用いることができる。生物組織からのRNAの抽出は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。RNAは、総RNAでもmRNAでもよく、mRNAであることが好ましい。総RNAを用いる場合には、RNAの量は、25μg以上かつ50μg以下であることが好ましい。また、mRNAを用いる場合には、RNAの量は、150ng以上かつ250ng以下であることが好ましい。 逆転写反応に用いる本発明に係るオリゴdTプライマーの反応液中の濃度は、1.5μM〜4.0μMであることが好ましく、2.0μM〜3.5μMであることがより好ましく、2.0μM〜3.0μMであることがさらに好ましい。1.5μM〜4.0μMであれば、十分な量の一本鎖cDNAを合成することができ、かつ、ポリA配列以外の領域と対合してしまうオリゴdTプライマーを減らすことができる。 逆転写反応は、当業者に公知の試薬、方法および装置を用いて行われればよい。また、反応温度および反応時間などの反応条件も、用いる試料および試薬に応じて、当業者であれば容易に設定することができる。 本発明に係るcDNAライブラリー作製方法は、逆転写工程の他に、逆転写反応の反応産物を増幅する核酸増幅工程をさらに包含してもよい。核酸増幅工程を包含することにより、一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成することができ、さらに生成した二本鎖cDNAを大量に増幅させることができる。核酸増幅反応としては、PCR、ICAN法、UCAN法、およびLAMP法等を挙げることができ、中でもPCRが好ましい。 一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成する方法は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。DNAポリメラーゼとしては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、T4 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ等を挙げることができる。この中でもE.coli DNAポリメラーゼ Iがより好ましい。 一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成するためのプライマーとしては、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いることができる。例えば、上述したcDNAライブラリー作製キットのランダムプライマーを用いることができる。 二本鎖cDNAを生成した後に、本発明に係るオリゴdTプライマーと上記ランダムプライマーとのプライマーセットを用いて、核酸増幅反応により、二本鎖cDNAを増幅させてもよい。このとき、本発明に係るオリゴdTプライマーの代わりに、オリゴdTプライマーに含まれるアダプター配列と対合し得る配列を3’側に含むプライマーを用いることができる。また、上記ランダムプライマーの代わりに、上記ランダムプライマーに含まれるアダプター配列と対合し得る配列を3’側に含むプライマーを用いることができる。 〔cDNAライブラリー作製方法2〕 本発明に係るcDNAライブラリーの作製方法における別の実施形態は、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いて、組織由来RNAを逆転写する第1逆転写工程と、第1逆転写工程における反応産物と対合しているRNAを断片化する断片化工程と、断片化したRNAをプライマーとして用いて、第1逆転写工程における反応産物を増幅する第1核酸増幅工程と、第1核酸増幅工程における反応産物を転写する転写工程と、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いて、該転写反応の反応産物を逆転写する第2逆転写工程と、本発明に係るオリゴdTプライマーを用いて、第2逆転写工程における反応産物を増幅する第2核酸増幅工程とを包含することを特徴としている。 各工程後における酵素の不活化、生成物の抽出等の操作は、上記「cDNAライブラリー作製方法1」の項に示したものと同じであるため、説明を省略する。 以下、各工程について図1に基づいて具体的に説明する。図1は、本実施の形態に係るcDNAライブラリー作製方法の原理を模式的に表した図である。なお、図1では、核酸増幅反応としてPCRを用いた場合を示している。図1では、直線の線分をDNA、波線の線分をRNAとして表している。 第1逆転写工程は、出発原料となるRNAから逆転写反応により一本鎖cDNAを合成する工程である(図1(1))。第1逆転写工程に用い得るRNAは、上記「cDNAライブラリー作製方法1」の項に示したものと同じであるため、説明を省略する。逆転写工程に用いるオリゴdTプライマーの反応液中の濃度は、1.5μM〜4.0μMであることが好ましく、2.0μM〜3.5μMであることがより好ましく、2.0μM〜3.0μMであることがさらに好ましい。1.5μM〜4.0μMであれば、十分な量の一本鎖cDNAを合成することができ、かつ、ポリA配列以外の領域と対合してしまうオリゴdTプライマーを減らすことができる。逆転写反応は、当業者に公知の試薬、方法、および装置を用いて行えばよい。また、反応温度および反応時間などの反応条件も、用いる試料および試薬に応じて当業者であれば容易に設定することができる。 断片化工程は、断片化工程に引き続く第1核酸増幅工程において用いる核酸増幅用プライマーを、RNAを断片化することにより生成する工程である。RNAの断片化に用いる酵素は、DNAを断片化せずRNAを断片化する酵素(リボヌクレアーゼ)であれば制限はないが、リボヌクレアーゼH(RNase H)であることが好ましい。RNase Hは、RNAとDNAとの混成二本鎖のRNA鎖を特異的に切断することができる。RNAとDNAとの混成二本鎖のRNA鎖を特異的に切断した場合、切断されたRNAはcDNAと対合したままである。したがって、断片化工程に引き続く第1核酸増幅工程において、プライマーとcDNAとを対合させるステップを省略することができる。RNAの断片化の反応は、当業者に公知の試薬、方法、および装置を用いて行われればよい。また、反応温度および反応時間などの反応条件も、用いる試薬に応じて当業者であれば容易に設定することができる。 第1核酸増幅工程は、一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成する工程である(図1(2))。この工程は、断片化工程において断片化したRNAを核酸増幅用プライマーとして用いる核酸増幅反応を行う工程ともいえる。二本鎖cDNAは、DNAポリメラーゼ反応によって一本鎖cDNAから生成される。一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成する方法は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。DNAポリメラーゼとしては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、T4 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ等を挙げることができる。この中でもE.coli DNAポリメラーゼIがより好ましい。 上述したように、断片化工程においてRNase Hが用いられた場合には、プライマーとして用いるRNAがすでにcDNAと対合しているので、第1核酸増幅工程においてプライマーとcDNAとを対合させるステップを省略することができる。断片化工程においてRNase H以外の酵素を用いた場合には、第1核酸増幅工程は、プライマーとcDNAとを対合させるステップを含んでいることが好ましい。 第1核酸増幅工程における反応液は、DNAリガーゼを含んでいることが好ましい。第1核酸増幅工程においては、断片化工程において断片化した複数のRNAを核酸増幅用のプライマーとして用いており、増幅されるDNA鎖は不連続である。DNAリガーゼにより、これらの不連続なDNA鎖を互いに結合させることができ、一本の長いDNA鎖にすることができる。それにより、配列決定することのできる領域を長くすることができる。DNAリガーゼとしては、例えば、T4 DNAリガーゼ、およびE.coli DNAリガーゼ等を挙げることができ、T4 DNAリガーゼがより好ましい。 なお、断片化工程および第1核酸増幅工程を同一反応液中にて行うことも可能である。すなわち、リボヌクレアーゼおよびDNAポリメラーゼの両方を含む反応液を用いて、それぞれの反応を同時に行うことが可能である。この場合には、核酸増幅反応に適するように調製した反応液に、リボヌクレアーゼを添加することが好ましい。 転写工程は、第1核酸増幅工程において生成した二本鎖cDNAから、RNAを合成する工程である(図1(3))。転写工程において行われる転写反応は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。RNAポリメラーゼとしては、例えば、T3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、およびSP6 RNAポリメラーゼ等を挙げることができる。この中でもT7 RNAポリメラーゼがより好ましい。なお、転写反応を行うために、オリゴdTプライマーがプロモータ配列を含んでいることが好ましい。 第2逆転写工程は、転写工程において合成したRNAを鋳型として逆転写反応を行う工程である(図1(4))。第2逆転写工程にて行われる逆転写反応は、当業者に公知の試薬、方法、および装置を用いて行われればよい。また、反応温度および反応時間などの反応条件も、用いる試料および試薬に応じて当業者であれば容易に設定することができる。逆転写反応に用いるプライマーとしては、5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いることができる。例えば、上述したcDNAライブラリー作製キットのランダムプライマーを用いることができる。逆転写反応後のRNAを断片化するために、逆転写反応の後に反応液中にリボヌクレアーゼを添加してもよい。RNAの断片化に用いる酵素は、DNAを断片化せずRNAを断片化する酵素(リボヌクレアーゼ)であれば限定されないが、リボヌクレアーゼH(RNase H)であることが好ましい。RNase Hは、RNAとDNAとの混成二本鎖のRNA鎖を切断することができるので、合成した一本鎖cDNAの精製が容易となる。 第2核酸増幅工程は、第2逆転写工程において合成した一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成する工程である(図1(5))。第2核酸増幅工程においては、生成した二本鎖cDNAをさらに増幅させることも可能である。二本鎖cDNAは、DNAポリメラーゼ反応により一本鎖cDNAから生成される。一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成するためのプライマーとしては、本発明に係るオリゴdTプライマー、または、オリゴdTプライマーに含まれるアダプター配列と対合し得る配列を3’側に含むプライマーを用いることができる。二本鎖cDNAの生成に用いるオリゴdTプライマーの反応液中の濃度は、0.2μM〜1.4μMであることが好ましく、0.4μM〜1.2μMであることがより好ましく、0.6μM〜1.0μMであることがさらに好ましい。生成した二本鎖cDNAをさらに増幅させる反応としては、PCR、ICAN法、UCAN法、およびLAMP法等を挙げることができ、中でもPCRが好ましい。 一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを生成する方法は、当業者に公知の方法を用いて行うことができ、また、市販のキットを用いて行うこともできる。DNAポリメラーゼとしては、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、T4 DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ等を挙げることができる。この中でもE.coli DNAポリメラーゼIがより好ましい。 二本鎖cDNAを生成した後に、核酸増幅反応により二本鎖cDNAを増幅させる場合には、本発明に係るオリゴdTプライマーと上記ランダムプライマーとのプライマーセットを用いることができる。このとき、本発明に係るオリゴdTプライマーの代わりに、オリゴdTプライマーに含まれるアダプター配列と対合し得る配列を3’側に含むプライマーを用いることができる。また、上記ランダムプライマーの代わりに、上記ランダムプライマーに含まれるアダプター配列と対合し得る配列を3’側に含むプライマーを用いることができる。 本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるものではない。 〔RNAの調製〕 ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の原糸体、茎葉体、分化転換組織、胞子体、並びに、造精器および造卵器の各組織から、RNeasy plant mini−kit(QIAGEN社)を用いて、キットに付属するプロトコールに従い、各組織の総RNAを抽出した。 次いで、FastTrackMAG mRNA isolation kits(Invitrogen社)を用いて、キットに付属するプロトコールに従い、抽出した総RNAから各組織のmRNA(polyA RNA)を精製した。次いで、エタノール沈殿を行い、沈殿したmRNAを11μlのH2Oに溶解した。抽出されたmRNAの量は、150ng〜250ngである。 〔cDNAライブラリーの作製〕 調製したmRNA溶液を11μl、および50μM T7−adA−dTCx3を1μl混合し、この混合液を74℃で10分間インキュベートした後、氷上で冷却した。T7−adA−dTCx3は、配列番号2に示す配列の5’側に47ntからなるアダプター配列Aを含み、さらにその5’側にT7プロモータ配列を含む配列からなるプライマーである。アダプター配列Aは、最終的に得られるcDNAライブラリーに含まれるcDNAを、後述するGS emPCR kitI(Roche社)を用いて増幅できるように設計されている。次いで、この混合液に、4μlのFirst−Strand Buffer、1μlのDTT(Dithiothreitol)、1μlのdNTP、および1μlのSuperScript II(Invitrogen社)を添加し、42℃で1時間インキュベートすることにより一本鎖cDNAを合成した。 得られた一本鎖cDNAを用いて二本鎖cDNAを合成した。20μlの一本鎖cDNAの溶液に、ligase buffuerを15μl、dNTPを3μl、T4 DNA Ligase(Invitrogen社)を1μl、E.coli DNA polymerase Iを4μl、およびRNase Hを1μl混合し、H2Oを添加して全量150μlの反応液を調製した。この反応液を16℃で2時間インキュベートした。この反応液に、T4 DNA polymerase(Takara社)を2μl添加した後、16℃で5分間さらにインキュベートし、0.5M EDTAを10μl添加することにより、反応を停止した。この反応液を、フェノール/クロロホルム抽出、引き続くクロロホルム抽出に供した。抽出液に、酢酸アンモニウムを添加した後に、エタノール沈殿を行い、沈殿した二本鎖cDNAを8μlのH2Oに溶解した。 合成した二本鎖cDNAを鋳型にして、MEGAscript−T7 kit(Ambion社)を用いて、キットに付属するプロトコールに従い、転写反応を行った。得られた二本鎖cDNAの溶液を8μl、ATP、CTP、GTPおよびUTPをそれぞれ2μl、キットに付属の10× Reaction Bufferを2μl、ならびにEnzyme Mix−T7を2μl混合して転写反応液を調製した。この転写反応液を37℃で一晩インキュベートした。続いて、キットに付属するLiCl Precipitation Solution30μlを添加した後、−30℃で30分間以上保持した後、15分間の冷却遠心によってRNAを沈殿させた。沈殿したRNAをH2Oに溶解した。RNAの溶液の吸光度を測定し、合成したRNA量を定量した。 合成したRNAを1〜2μg、および1μlの100μM B−randomを混合し、H2Oを添加して全量11μlの混合液を調製した。B−randomは、NNNNNNC(Nは任意の塩基)からなる配列の5’側に44ntからなるアダプター配列Bを含む配列からなるプライマーである。アダプター配列Bは、最終的に得られるcDNAライブラリーに含まれるcDNAを、後述するGS emPCR kitI(Roche社)を用いて増幅できるように設計されている。この混合液を74℃で10分間インキュベートした後、氷上で冷却した。次いで、この混合液に、4μlのFirst−Strand Buffer、1μlのDTT、1μlのdNTP、および2μlのSuperScript IIを添加し、42℃で1時間インキュベートすることにより一本鎖cDNAを合成した。この一本鎖cDNAの溶液に、1μlのRNase Hを添加し、37℃で20分間インキュベートした後、95℃で5分間さらにインキュベートした。QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社)を用いて、キットに付属するプロトコールを改変し、プライマーダイマーの混入を防ぐためにカラムを35%塩酸グアニジン水溶液で洗浄するステップを追加して、一本鎖cDNAを回収した。 回収した一本鎖cDNAを用いて、二本鎖cDNAを生成した。回収した一本鎖cDNAの溶液47μlに、100μM adA−dTCx3(T7−adA−dTCx3からT7プロモータ配列を除いた配列からなるプライマー)を1μl、およびH2Oを2μl混合して反応液を調製した。この反応液を、72℃で6分間インキュベートした後、氷上で冷却した。次いで、この反応液に、dNTPを3μl、E.coli polymeraseIを4μl、ligase bufferを15μl、およびH2Oを78μl添加し、16℃で2時間インキュベートした。この反応液に、T4 DNA polymeraseを2μl添加し、16℃で5分間さらにインキュベートし、0.5M EDTAを10μl添加することにより、反応を停止した。この反応液を、フェノール/クロロホルム抽出、引き続くクロロホルム抽出に供した。抽出液に対してエタノール沈殿を行い、沈殿した二本鎖cDNAを8μlのH2Oに溶解した。 次いで、アガロースゲルを用いて、二本鎖cDNAを抽出した。2%アガロースゲルを用いた電気泳動により、二本鎖cDNAを分離した。DNAサイズマーカーに基づき、200bp〜850bpのサイズのcDNAを含むアガロースゲルを切り出した。MinElute Gel Extraction Kit(Qiagen社)を用いて、キットに付属するプロトコールを改変し、プライマーダイマーの混入を防ぐためにカラムを35%塩酸グアニジン水溶液で洗浄するステップを追加して、アガロースゲルから二本鎖cDNAを抽出した。 抽出した二本鎖cDNAを鋳型としてPCRを行った。抽出した二本鎖cDNAの溶液を2〜4μl、25mM MgSO4を1μl、dNTPを1μl、100μM BioTEG/B−random(B−randomの5’末端にTEG(tetra−ethyleneglycol)をスペーサーにして、Biotinが付加されているプライマー)(Integrated DNA Technologies社)を0.1μl、100μM adA−dTCx3を0.1μl、10× KOD plus bufferを2μl、およびKOD plus(TOYOBO社)を0.4μl混合し、H2Oを添加して全量20μlのPCR反応液を調製した。 94℃で2分間の後に、94℃で15秒間、57℃で30秒間および68℃で40秒間を24サイクルの条件でPCRを行った。その後、PCR反応液を4℃で保持した。 次いで、アガロースゲルを用いて、PCR産物を抽出した。2%アガロースゲルを用いた電気泳動により、PCR産物を分離した。DNAサイズマーカーに基づき、200bp〜850bpのサイズのPCR産物を含むアガロースゲルを切り出した。MinElute Gel Extraction Kitを用いて、キットに付属するプロトコールを改変し、プライマーダイマーの混入を防ぐためにカラムを35%塩酸グアニジン水溶液で洗浄するステップを追加して、アガロースゲルからPCR産物を抽出した。 抽出したPCR産物を、キットに含まれているEB buffer10μlに溶解してcDNAライブラリーを得た。 〔遺伝子発現解析〕 GS emPCR kitI(Roche社)、GS Pico TiterPlate Kit(Roche社)、およびGS 20 Sequencing Kit(Roche社)を用いて、それぞれのキットに付属するプロトコールに従い、各組織のcDNAライブラリーのcDNAを150ng〜300ng用いてシーケンシング用のサンプルを調製した。サンプルを調製した後、Genome Sequencer 20(Roche社)を用いて、cDNAの塩基配列を決定した。配列決定した塩基の総数を表1に示す。 表1に示すように、各組織のcDNAライブラリーに含まれるcDNAの塩基配列を決定したところ、何れのcDNAライブラリーについても、30万以上の数のcDNAについて配列の一部を決定することができた。各cDNAライブラリーについて配列の一部を決定したcDNAの総数は、1,907,073である。 配列決定したcDNAの塩基配列の一例を、配列番号3〜10の配列に示す。各配列が示すように、オリゴdTプライマーの反復領域の配列を超えて、塩基配列を決定することができている。 BLAT(BLAST Like Alignment Tool)を用いて、JGI(Joint Genome Institute)から提供されているヒメツリガネゴケ概要ゲノム塩基配列assembly v1.1を対象配列とし、配列決定した各cDNAの配列を参照(Query)配列として類似性検索を行った。次いで、概要ゲノム塩基配列に対して、50nt以上一致したcDNA配列について、ゲノム上の推定遺伝子領域へのマッピングを行った。マッピングにはUT Genome Browser(http://www.utgenome.org)、およびJGIから提供されているヒメツリガネゴケゲノム情報を使用した。その結果、図2に示すように、多くの配列が推定遺伝子の3’末端付近にマッピングされていた。 本発明によれば、組織または生物個体全体の遺伝子発現の情報を、質および量をともに向上させて取得することができる。したがって、本発明は、遺伝子の発現解析が必要とされるあらゆる産業において利用可能であり、特に、医学、製薬産業において、非常に有用性が高い。本発明の一実施形態に係るcDNAライブラリー作製方法の原理を模式的に表した図である。本発明の一実施形態を用いて取得した配列の一部をゲノム上にマッピングさせた結果を示す図である。 TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなる反復領域を含んでいることを特徴とするオリゴdTプライマー。 前記反復領域の5’側に隣接してTXまたはTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)をさらに含んでいることを特徴とする請求項1に記載のオリゴdTプライマー。 前記反復領域の3’側に隣接してTを1つ含んでいるか、または2〜7個連続して含んでいることを特徴とする請求項1に記載のオリゴdTプライマー。 配列番号1に示される塩基配列を含んでいることを特徴とするオリゴdTプライマー。 前記反復領域の5’側にアダプター配列をさらに含んでおり、該アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のオリゴdTプライマー。 前記アダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることを特徴とする請求項5に記載のオリゴdTプライマー。 請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴdTプライマーを備えていることを特徴とするcDNAライブラリー作製キット。 5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーをさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載のキット。 前記ランダムプライマーが、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群であることを特徴とする請求項8に記載のキット。 前記オリゴdTプライマーが前記反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ前記ランダムプライマーが前記ランダム領域の5’側に第2アダプター配列をさらに含んでおり、 第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることを特徴とする請求項8に記載のキット。 前記オリゴdTプライマーが第1アダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることを特徴とする請求項10に記載のキット。 第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることを特徴とする請求項10に記載のキット。 cDNAライブラリーを作製する方法であって、 反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーを用いて逆転写反応を行う逆転写工程を包含し、 該反復領域は、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなることを特徴とする作製方法。 前記オリゴdTプライマーが、前記反復領域の5’側に隣接してTXまたはTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)をさらに含んでいることを特徴とする請求項13に記載の作製方法。 前記オリゴdTプライマーが、前記反復領域の3’側に隣接してTを1つ含んでいるか、または2〜7個連続して含んでいることを特徴とする請求項13に記載の作製方法。 前記オリゴdTプライマーが、配列番号1に示される塩基配列を含んでいることを特徴とする請求項13に記載の作製方法。 5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いて、前記逆転写反応の反応産物を増幅する核酸増幅工程をさらに包含することを特徴とする請求項13に記載の作製方法。 前記核酸増幅工程が、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群を前記ランダムプライマーとして用いることを特徴とする請求項17に記載の作製方法。 前記核酸増幅工程が、前記オリゴdTプライマーおよび前記ランダムプライマーの対を用いて行われることを特徴とする請求項17に記載の作製方法。 前記オリゴdTプライマーが前記反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ前記ランダムプライマーが前記ランダム領域の5’側に第2アダプター配列をさらに含んでおり、 第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることを特徴とする請求項17に記載の作製方法。 第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることを特徴とする請求項20に記載の作製方法。 cDNAライブラリーを作製する方法であって、 反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーを用いて、組織由来RNAを逆転写する第1逆転写工程; 第1逆転写工程における反応産物と対合しているRNAを断片化する断片化工程; 断片化したRNAをプライマーとして用いて、第1逆転写工程における反応産物を増幅する第1核酸増幅工程; 第1核酸増幅工程における反応産物を転写する転写工程; 5〜10個の任意の塩基からなるランダム領域を含んでいるランダムプライマーを用いて、該転写反応の反応産物を逆転写する第2逆転写工程; 前記オリゴdTプライマーを用いて、第2逆転写工程における反応産物を増幅する第2核酸増幅工程を包含し、 該反復領域は、TTTX、TTTTX、TTTTTX、TTTTTTXおよびTTTTTTTX(XはT以外の任意の塩基を示す。)からなる群より選択される1または複数の塩基配列を連続的かつ任意に組み合わせてなることを特徴とする作製方法。 第2核酸増幅工程が、前記オリゴdTプライマーおよび前記ランダムプライマーの対を用いて行われることを特徴とする請求項22に記載の作製方法。 第2核酸増幅工程が、互いに異なる複数のプライマーからなるプライマー群を前記ランダムプライマーとして用いることを特徴とする請求項23に記載の作製方法。 前記オリゴdTプライマーが前記反復領域の5’側に第1アダプター配列をさらに含んでおり、かつ前記ランダムプライマーが前記ランダム領域の5’側に、第2アダプター配列をさらに含んでおり、 第1アダプター配列および第2アダプター配列は、核酸増幅用プライマーと対合し得る配列を含んでいることを特徴とする請求項22に記載の作製方法。 前記オリゴdTプライマーが第1アダプター配列の5’側にT7プロモータ配列をさらに含んでいることを特徴とする請求項25に記載の作製方法。 第2アダプター配列の5’側にビオチンが結合していることを特徴とする請求項25に記載の作製方法。 【課題】次世代型の高速シーケンサーに用いてmRNAの3’側の塩基配列を決定することができるcDNAライブラリーを作製する技術を提供する。【解決手段】特定の配列からなる反復領域を含んでいるオリゴdTプライマーを提供する。また、このオリゴdTプライマーを用いてcDNAライブラリーを作製する方法を提供する。【選択図】なし配列表


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