タイトル: | 公開特許公報(A)_テトラフルオロエチレンの重合禁止剤 |
出願番号: | 2007301870 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 17/386,C08F 2/40,C08F 14/26,C07C 17/383,C07C 21/185 |
田口 麻衣 乙井 健治 高瀬 義行 斎藤 秀哉 平賀 義之 JP 2008308480 公開特許公報(A) 20081225 2007301870 20071121 テトラフルオロエチレンの重合禁止剤 ダイキン工業株式会社 000002853 鮫島 睦 100100158 田村 恭生 100068526 玄番 佐奈恵 100107180 田口 麻衣 乙井 健治 高瀬 義行 斎藤 秀哉 平賀 義之 JP 2007129135 20070515 C07C 17/386 20060101AFI20081128BHJP C08F 2/40 20060101ALI20081128BHJP C08F 14/26 20060101ALI20081128BHJP C07C 17/383 20060101ALI20081128BHJP C07C 21/185 20060101ALI20081128BHJP JPC07C17/386C08F2/40C08F14/26C07C17/383C07C21/185 6 OL 8 4H006 4J011 4J100 4H006AA01 4H006AA02 4H006AD11 4H006AD41 4H006EA03 4H006EB12 4J011AC05 4J011NA12 4J011NB01 4J100AC26P 4J100FA06 本発明は、テトラフルオロエチレンの蒸留工程、特に精留工程における、テトラフルオロエチレンの自己重合および重合禁止剤の高分子変性体による詰まりを防止する方法に関する。 一般に高純度のテトラフルオロエチレン(以下「TFE」という)は極めて重合しやすく、特に微量の酸素を含んでいる場合には顕著であり、時には爆発的に重合することが知られている。このため、TFEを貯蔵する際は、テルペノイドに代表される重合禁止剤を100〜10000ppm程度添加することが行われている(米国特許第2737533号公報)。さらに、TFEを精留する際は、精留塔内でのTFEの自己重合を防止すると同時に、TFE中の酸素を吸収して酸素濃度を下げるために、α-ピネン、カンフェン、α-テルピネン、D-リモネン、γ-テルピネン、p-シメン、テルピノーレンなどのテルペン混合物を添加すること、およびその精留方法が開示されている(米国特許第3834996号明細書)。 しかしながら、このテルペン混合物の重合防止効果は、精留塔頂部においては十分ではない。塔頂のトレイにTFEの自己重合によって生成したポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEという)が堆積し、このPTFEがトレイに詰まって精留塔の運転トラブルに至ることがある。さらに、テルペン混合物は、酸素や酸と反応して粘ちょうなオリゴマー化合物を生成することがわかっており、このような粘ちょうな物質が精留塔のトレイに蓄積した場合には、PTFEが蓄積することと同様に、差圧上昇によりフラッディングが生じることがある。フラッディングが生じると、分離不良のために品質面に影響を及ぼすだけでなく、処理量を減らさざるを得ないため、生産性に影響を及ぼす恐れを有している。 粘ちょう物に変性しない重合禁止剤として、α-メチルビニルベンゼンおよびα-メチルビニルメチルベンゼンを添加する方法が開示されている(米国特許第2737533号明細書)。しかしながら、ここでは、貯蔵および移送工程において、TFEの重合防止に有効とされており、精留工程での重合防止に対しては十分な性能を有していない。米国特許第2737533号明細書米国特許第3834996号明細書 以上の観点から、TFEの蒸留工程(特に、精留工程)において、TFEの自己重合を防止し、かつ、酸素によって高分子量体に変性しない重合禁止剤が強く求められていた。 TFEの精留工程において、酸素除去と重合防止を両立し、さらに、高分子量体に変性しないシクロヘキサジエン化合物を重合防止剤として用いることで、PTFEによる詰まりおよびテルペン粘ちょう物の詰まりを抑制することができる。 本発明の要旨は、式:R1−A−R2[式中、R1は、炭素数1〜5の炭化水素基、R2は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基、Aは、シクロヘキサジエン環である。]で示されるシクロヘキサジエン化合物からなる重合禁止剤の存在下にテトラフルオロエチレンを蒸留する方法に存する。 本発明によれば、TFEの精留工程におけるPTFEの詰まりや、重合禁止剤の変性体による詰まりを抑制できるため、TFEを安定に精製することができる。 本発明において、重合禁止剤として、式:R1−A−R2 (I)[式中、R1は、炭素数1〜5の炭化水素基、R2は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基、Aは、シクロヘキサジエン環である。]で示されるシクロヘキサジエン化合物を使用する。 式(I)において、R1とR2はA(シクロヘキサジエン環)のいずれの位置に結合していてもよい。 シクロヘキサジエン化合物の例として以下が挙げられる。一般に、R1とR2は炭素数1〜5のアルキル基である。 R1−A−R2がまたはであることが好ましい。 R1とR2の具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基である。R1がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基またはペンチル基であり、R2がプロピル基、ブチル基またはペンチル基であることが好ましい。R1とR2の少なくとも一方は、三級炭素原子を有することが好ましい。プロピル基がイソプロピル基であることが好ましく、ブチル基がイソブチル基であることが好ましく、ペンチル基がイソペンチル基であることが好ましい。 シクロヘキサジエン化合物がα−テルピネン、すなわち、またはγ−テルピネン、すなわち、であることが特に好ましい。 シクロヘキサジエン化合物は、酸素濃度が高い精留塔頂部でも重合防止効果を示すほどの蒸気圧をもつものであることが好ましい。シクロヘキサジエン化合物の蒸気圧は、25℃で100Pa以上、例えば100〜600Paであることが好ましい。シクロヘキサジエン化合物は、酸素と反応しやすく、かつ、酸化反応により強粘液に変性しない。 シクロヘキサジエン化合物の量は、ガス相のTFE1モルに対して、0.1〜400マイクロモル、特に0.1〜50マイクロモルであることが好ましい。シクロヘキサジエン化合物は、単一の化合物であっても、あるいは複数の化合物の混合物であってもよい。 蒸留は、TFEを蒸留するどのような工程であってもよいが、精留であることが好ましい。蒸留において、圧力は、例えば0.34〜3.7MPa、温度は−50〜30℃であってよい。より好ましくは、圧力は1.2〜2.0MPa、温度は−15〜5℃である。 蒸留により、TFEが液相から気相になり次いで液相になることによって、TFEがより純粋になる。 本発明のTFE自己重合防止効果の定量測定方法として、所定の濃度の禁止剤を含むTFEのガスを、シリカゲルに吸着させ、シリカゲルの重量増加量を実測することにより求めることができる。シリカゲルの重量増加量は、TFEがシリカゲルに吸着することにより発生する吸着熱によってシリカゲルの表面でTFEが重合して生成したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の付着量である。 以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。試験例1 50cm3のガラス瓶にα-ピネン、α-テルピネン、1,4-シネオール、D-リモネン、1,8-シネオール、γ-テルピネン、p-シメンおよびテルピノーレン(日本テルペン社製)を20cm3ずつ小分けし、ドラフト内にて放置した。一ヶ月の放置酸化後、比重変化を測定し、ガスクロマトグラフ[GC]及び核磁気共鳴[NMR]による分析を行った。実験結果を表1に示す。 α−ピネン、シネオール、p−シメンは、酸素と反応しない、すなわち酸素を除去しないので、不都合である。 空気酸化で比重変化が著しいのはα-テルピネンとテルピノーレンである。γ-テルピネンは比重変化は少ないが組成は大きく変動している。α-テルピネンとテルピノーレンとγ-テルピネンが、酸素と反応し易い。NMR測定の結果、α-テルピネンおよびγ-テルピネンの酸化後はp-シメンが生成することがわかる。 一方、D-リモネンは酸化反応によりオリゴマーを生成する。テルピノーレンは最も組成変化が大きく、酸化反応後はp-シメンとは異なる芳香族化合物が生成し、著しく粘度が増加しており、不都合である。比較例1 150℃で20時間加熱処理したシリカゲル(ヒシビードN、洞海化学社製)3.81g、3.66gおよび3.71gを入れた3本の6.9cm3の耐圧容器を減圧し、酸素濃度が1.4ppmになるまで酸素を除去した。続いて室温にて禁止剤を含まないTFEと窒素の混合ガス(TFE/N2=73.2/26.8)を容器内圧力が0.51MPaになるまで入れ、24時間後に容器を開放し、シリカゲルの重量増加量を測定した。結果を表2に示す。使用したシリカゲルは白く変色していた。実施例1 150℃で20時間加熱処理したシリカゲル(ヒシビードN、洞海化学社製)3.88g、3.78gおよび3.85gを入れた3本の6.9cm3の耐圧容器を減圧し、酸素濃度が0.8ppmになるまで酸素を除去した。続いて室温にて5.84molppm、9.02molppmおよび14.91molppmのα-テルピネン(東京化成工業社製)を含むTFEと窒素の混合ガス(TFE/N2=73.2/26.8)を容器内圧力が0.51MPaになるまで入れた。24時間後に容器を開放し、シリカゲルの重量増加量を測定した。結果を表2に示す。比較例2 150℃で20時間加熱処理したシリカゲル(ヒシビードN、洞海化学社製)3.67g、3.77gおよび3.76gを入れた3本の6.9cm3の耐圧容器を減圧し、酸素濃度が1.8ppmになるまで酸素を除去した。続いて室温にて5.79molppm、8.16molppmおよび11.10molppmのα-ピネン(東京化成工業社製)を含むTFEと窒素の混合ガス(TFE/N2=73.2/26.8)を容器内圧力が0.51MPaになるまで入れた。24時間後に容器を開放し、シリカゲルの重量増加量を測定した。結果を表2に示す。比較例3 150℃で20時間加熱処理したシリカゲル(ヒシビードN、洞海化学社製)3.81g、3.72gおよび3.74gを入れた3本の6.9cm3の耐圧容器を減圧し、酸素濃度が1.8ppmになるまで酸素を除去した。続いて室温にて5.40molppm、7.01molppmおよび17.24molppmのD-リモネン(東京化成工業社製)を含むTFEと窒素の混合ガス(TFE/N2=73.2/26.8)を容器内圧力が0.51MPaになるまで入れた。24時間後に容器を開放し、シリカゲルの重量増加量を測定した。結果を表2に示す。 表2から、酸素濃度が1.8molppm以下の酸素希薄条件下では、α-テルピネンが、α-ピネンおよびD-リモネンに比較して、より高度に、TFEの自己重合を防止することがわかる。式:R1−A−R2[式中、R1は、炭素数1〜5の炭化水素基、R2は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基、Aは、シクロヘキサジエン環である。]で示されるシクロヘキサジエン化合物からなる重合禁止剤の存在下にテトラフルオロエチレンを蒸留する方法。R1とR2が炭素数1〜5のアルキル基である請求項1に記載の方法。シクロヘキサジエン化合物が、または[式中、R1およびR2は、前記と同意義である。]である請求項1または2に記載の方法。シクロヘキサジエン化合物がα−テルピネンまたはγ−テルピネンである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。テトラフルオロエチレンの自己重合と重合禁止剤の変性体による詰まりが抑制されている請求項1〜4のいずれかに記載の方法。式:R1−A−R2[式中、R1は、炭素数1〜5の炭化水素基、R2は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基、Aは、シクロヘキサジエン環である。]で示されるシクロヘキサジエン化合物からなる、テトラフルオロエチレン用の重合禁止剤。 【課題】TFEの蒸留工程(特に、精留工程)において、TFEの自己重合を防止し、かつ、酸素によって高分子量体に変性しない重合禁止剤を提供する。【解決手段】式:R1−A−R2[式中、R1は、炭素数1〜5の炭化水素基、R2は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基、Aは、シクロヘキサジエン環である。]で示されるシクロヘキサジエン化合物からなる重合禁止剤の存在下にテトラフルオロエチレンを蒸留する方法。シクロヘキサジエン化合物がα−テルピネンまたはγ−テルピネンであることが好ましい。【選択図】なし