タイトル: | 公開特許公報(A)_プラスチック片の混入時期推定方法 |
出願番号: | 2007299674 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 25/20,G01N 33/02 |
大方 康英 野口 憲太郎 粕谷 宣彦 喜多村 誠 JP 2009128010 公開特許公報(A) 20090611 2007299674 20071119 プラスチック片の混入時期推定方法 ハウス食品株式会社 000111487 平井 正司 100098187 神津 堯子 100085707 大方 康英 野口 憲太郎 粕谷 宣彦 喜多村 誠 G01N 25/20 20060101AFI20090515BHJP G01N 33/02 20060101ALI20090515BHJP JPG01N25/20 BG01N33/02 4 1 OL 21 2G040 2G040AA00 2G040AB01 2G040AB12 2G040BA02 2G040BA25 2G040CA02 2G040EB02 2G040EB03 2G040EB05 2G040EC07 2G040EC08 2G040GA01 2G040GC01 2G040HA05 2G040HA11 本発明はプラスチック片の混入時期推定方法に関する。 食品に異物が混入する事故は食品メーカの信用に関わる問題であることからその対策の徹底が求められている。異物混入対策において、異物混入時期、つまり異物がどの段階で混入したかを知ることは重要である。 特許文献1は、毛髪などを含む様々な物質に関する混入時期推定方法を開示している。特許文献1は、この中で混入物がプラスチック片の場合に関して、一例として、ポリ塩化ビニリデンからなる食品用ラップ片をレトルト殺菌の前及び後にカレーの中に混入し、次いでカレーから食品用ラップ片を取り出して、表面に付着しているカレーを水で洗浄した後に白色光の下で外観観察すると共に、薄層クロマトグラフ用紫外線照射装置を使って波長254nmの紫外線を当該食品用ラップ片の表面に照射してカレー原料に含まれる黄色色素(クルクミノイド)による黄緑色の蛍光を外観観察したところ、レトルト殺菌処理前に混入してレトルト殺菌加熱を受けているラップ片は、レトルト殺菌処理を受けていないラップ片に比べて黄色に染色されており、黄色色素による黄緑色の蛍光が強く認められたことから、色の染まり具合及び蛍光の程度によって、食品用ラップ片がレトルト殺菌処理の前又は後に混入したことを判断できる、と教示している。 食品に混入する異物は、日常的に目にする身の回りの物質であることが多いことから、プラスチック片が食品に混入する可能性は大きいが、カレーのように着色性の食品成分を含んでいない食品に関しては上記特許文献1に開示の方法を採用することはできない。 ところで、熱分析の典型的な測定方法として示差走査熱量測定計(DSC)が知られている。このDSCが様々な分野で活用されており、例えば特許文献2、3にはポリエチレンの熱履歴推定方法が開示されている。これら特許文献2及び3に開示の発明は、ケーブルの絶縁性能を向上させることを目的として、DSCを使ってケーブルの製造工程や使用時に受けた熱履歴及びそれに伴う結晶構造の変化を検証することを提案している。特開2005−83804号公報特開昭61−117441号公報特開平5−10900号公報 製造工程に加熱処理を含む食品の場合、この加熱処理を挟んでその前にプラスチック片(食品用ラップ片などのプラスチックシートを含む)が混入した場合、当該プラスチック片に加熱処理を受けたか否かを知ることができれば、間接的に、プラスチック片がどの段階で混入したかの推定が可能となる。 しかし、食品に混入する異物の量は僅かであり、また、発見した異物が仮にプラスチック片であったとしても、これがどのような樹脂材料であるか定かでなく、また、どのような可塑剤を添加した樹脂材料であるか定かでなく、また、プラスチック片がどのような製造工程を経て作られたものかも定かではない。 したがって、食品に混入していたプラスチック片の加熱履歴をDSCで測定したとしても、得られたDSC曲線に現れるピークが何を意味するか推定することは事実上困難である。 本発明の目的は、示差走査熱量測定計(DSC)という広く普及している測定器具を使用して、異物としてのプラスチック片(食品用ラップなどのプラスチックシートを含む)が加熱処理の前又は後に混入したかを推定することのできるプラスチック片の混入時期推定方法を提供することにある。上記の加熱処理には、食品の製造工程での加熱処理の他に、消費者が食品を食べるときのレンジ加熱や湯煎も含まれる。 本発明の更なる目的は、DSCを使用して、製造工程に加熱工程を含む食品に関して、この加熱工程の前又は後にプラスチック片が混入したかを推定することのできるプラスチック片の混入時期推定方法を提供することにある。 本発明の更なる目的は、DSCを使用して、消費者が喫食するために湯煎やレンジ加熱する一連の過程で、どの段階でプラスチック片が混入したかを推定することのできるプラスチック片の混入時期推定方法を提供することにある。 本願発明者らは、次の点に着目して本発明を案出するに至ったものである。すなわち、油で揚げる(フライ)食品を除く一般的な食品においてその製造過程での加熱処理の中で加熱温度として一番厳しいのは殺菌のための加熱であり、例えばレトルト食品では、一般的には120℃、セミレトルトの場合には約105〜115℃、ハイレトルトの場合には約130℃でレトルト殺菌処理が行われる。そして、カレーなどのレトルト食品は消費者が湯煎又はレンジ加熱して喫食する。 このようなレトルト食品にプラスチック片が混入していた場合、仮にレトルト殺菌処理の前に混入したのであれば、食品と一緒にプラスチック片もレトルト殺菌処理で加熱されており、この熱履歴はプラスチック片の構造変化として残存している。そして、その後のレトルト殺菌処理より低温である湯煎(100℃)やレンジ加熱(105〜110℃)の熱履歴もプラスチック片の構造変化として残存する。 プラスチックは、一般的に、相対的に高温の熱処理の次に低温の熱処理を行った場合には、高温の熱処理及び低温の熱処理の履歴が残存し、この熱履歴はDSCで測定可能である場合が多い。しかし、相対的に低温の熱処理の次に高温の熱処理を行った場合には、低温の熱処理の履歴が消失し高温の熱処理の熱履歴だけが残存する。 最も典型的な例として、レトルト食品にプラスチック片が混入していた場合を例に、このプラスチック片がレトルト殺菌処理の「前」に混入したのか、それとも「後」に混入したのかを推定する本発明の原理を図1〜図6に基づいて説明する。DSCを使って異物混入段階を推定する方法は、図1に示すように、(1)準備工程;(2)推定に必要とされる基礎データを作成する工程;(3)混入がレトルト殺菌処理工程の「前」であるか又は「後」であるかを推定する工程とを含む。 準備工程(図1、図2): 上記(1)の準備工程は、食品中の異物であるプラスチック片を取り出し(図2のS10)、食品中から取り出したプラスチック片の表面を水で洗浄する(図2のS11)。次いで、プラスチック片に熱が加わらないように注意しながら例えばナイフを使ってプラスチック片を2分割して第1、第2の試料を作る(図2のS12)。 次に、レトルト食品の製造工程に含まれる殺菌工程つまりレトルト殺菌処理(例えば120℃で15分)と同じ加熱温度及び加熱時間で第1試料を加熱処理する(図2のS13)。好ましくは、第1試料をレトルト食品の中に混入させてレトルト殺菌処理と同じ加熱条件で第1試料を加熱処理するのがよい。他方、第2試料は加熱処理することなく、S11で洗浄した状態のままである。以後の説明において、加熱処理した第1試料を「加熱処理済み第1試料」と呼び、加熱処理しない第2試料を「加熱処理無し第2試料」と呼ぶ。 基礎データ作成工程(図1、図3): 加熱処理済み第1試料を使って、混入時期の推定に必要とされる基礎データが作成される。この基礎データは、加熱処理済み第1試料に対してDSC測定を2回行うことにより得られる(図3のS20、S21、S23)。第1回目、第2回目のDSC測定におけるDSC炉内の温度プロファイルは同一である。 基礎データ作成工程において、第1、第2回目のDSC測定における炉内の上限温度は、少なくとも食品に混入していたプラスチック片が受けたであろう「可能性としての加熱温度」よりも高い温度に設定する必要がある。この「可能性としての加熱温度」は、当該食品の製造工程を調査又はヒヤリングし且つ当該プラスチック片が混入していた食品を消費者が喫食するときに湯煎する又はレンジ加熱する食品であれば、レンジ加熱によって食品の温度まで上昇するかを想定する必要がある。この「可能性としての加熱温度」よりも高い温度までDSC測定を行うことにより、第1回目のDSC測定でプラスチック片がDSC炉内で受けた加熱によって、食品に混入していたプラスチック片の熱履歴(食品製造過程での加熱、湯煎又はレンジ加熱による熱履歴)を消失させることができる。勿論、DSC測定における炉内の上限設定温度まで昇温速度を一定にするのがよいが、上限設定温度になったら例えば2分間、この上限設定温度を維持するというように、上限設定温度で所定時間保持するようにするのがよい。 DSCの炉内上限温度として、食品メーカ及び一般家庭で日常的に目にする樹脂材料の軟化点又は融点を越える温度を設定してもよいし、また、一律に例えば200℃というように多くの樹脂材料が大きな構造変化を生じる温度に設定してもよい。勿論、この場合にあっても、DSC測定における炉内の上限設定温度まで昇温速度を一定にするのがよい。 このように、少なくとも上記「可能性としての加熱温度」よりも高い温度までDSCの炉内温度を上昇させることにより、多くの樹脂材料において、第1試料は第1回目のDSC測定が完了した時点で、食品に混入していたプラスチック片の熱履歴(食品製造過程での加熱、湯煎又はレンジ加熱による熱履歴)を消失させることができる。 図5の左側に示す上下2つのDSC曲線は基礎データ作成工程で得られたDSC曲線であり、上のDSC曲線は第1回目の測定、下のDSC曲線は第2回目の測定によるものである。なお、図5のDSC曲線は、このDSC曲線を得るためのDSC測定における上限炉内温度を、例えば200℃というように、多くの樹脂材料の溶融点又は軟化点を超える温度に設定したものとして示してある。第1回目のDSC曲線と第2回目のDSC曲線とを対比すると第1回目にみられるピークXが第2回目では消失していることが分かる。なお、第1、第2回目のDSC曲線に共通に見られる高温域の高いピークYは第1試料の軟化又は融点として描いてある。 第1、第2回目のDSC曲線を対比したときに、第1回目に存在しているにも関わらず第2回目で消失したピークXを特定できた場合には、このピークXは、第1試料に施した加熱処理に由来していると考えることができる(図3のS24)。 推定工程(図1、図4、図5): この推定工程は、加熱処理無し第2試料を使って行われる。すなわち、第2試料のDSC測定を行う(図4のS30、S32)。この推定工程でのDSC測定におけるDSC炉内の温度プロファイルは、少なくとも昇温速度については上述した基礎データ作成工程の場合と同じであるが、当該推定工程でのDSC測定における炉内の上限温度は、レトルト殺菌処理温度よりも高い温度であれば基礎データ作成工程の場合よりも低い温度に設定してもよい。 加熱処理無し第2試料のDSC測定の結果、図5の右上のDSC曲線のようにピークXが見られたときには(S33で「YES」のとき)、当該第2試料つまりレトルト食品に混入していたプラスチック片はレトルト殺菌処理を受けた痕跡があるとして、当該プラスチック片は、レトルト食品の製造工程におけるレトルト殺菌処理工程よりも「前」に混入したと推定することができる(図4のS34)。 他方、加熱処理無し第2試料のDSC測定の結果、図5の右下のDSC曲線のようにピークXが見られないときには(S33で「NO」のとき)、当該第2試料つまりレトルト食品に混入していたプラスチック片はレトルト殺菌処理を受けた痕跡が無いとして、当該プラスチック片は、レトルト食品の製造工程におけるレトルト殺菌処理工程よりも「後」に混入したと推定することができる(図4のS35)。 この推定工程において、特に、DSC曲線にピークXが見られたときには、これがレトルト殺菌処理に由来したピークであることを確認するために、第2回目のDSC測定を行い、第2回目のDSC測定においてピークXが消失することを確認するのがよい(図6)。そして、この確認工程を推定工程に加えるのであれば、前述した基礎データ作成工程におけるDSC測定と同じ温度プロファイルで、推定工程における第1回目、第2回目の炉内温度を制御するのがよい。 以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明するが、各実施例は、図1、図3を参照して前述した基礎データ作成工程においてDSC曲線にピークXが発現するか否か、及びこれに基づいて推定が可能であるか否かを検証した例を示すものである。 DSCの制御において、その制御条件を以下に列挙する。この制御条件は、基礎データ作成工程及び推定工程において共通である。(1)測定開始温度:0℃(0℃よりも低い温度または室温でも問題ないが、好ましくは35℃以下に設定するのがよい。);(2)第1回目のDSC測定における昇温速度:20℃/分(10〜20℃/分であるのがよいが、5〜25℃/分であってもよい。);(3)第1回目の上限設定温度:200℃(1分間保持)(混入プラスチック片が共重合体であると予想できるときには、想定する樹脂材料の融点よりも20〜40℃高い温度に上限温度を設定してもよく、また、上限温度を一律に300℃に設定してもよい。);(4)第1回目のDSC測定後の冷却速度:100℃/分(DSCシステムに含まれる冷却装置が実際の温度を追従できる温度範囲を設定すれば特に制限はない。);(5)冷却完了から第2回目のDSC測定までの保持時間:0℃で1分(保持温度は開始温度と同じにする。保持時間は1分よりも長くてもよいが所定の保持時間を設定するのがよい。);(6)第2回目のDSC測定における昇温速度:第1回目のDSC測定と同じ(20℃/分);(7)第2回目の上限設定温度:第1回目のDSC測定のときの上限設定温度と同じ。 第1実施例(ポリプロピレン): ポリプロピレンのシートを用いて、ポリプロピレンに上述したピークXが出現するか否かの検証を行った。試験片は厚さ53〜71μm、重量2.3mgのポリプロピレンシートであり、このポリプロピレンシートをハサミで2分割して第1、第2の2つの試料を作った。第1の試料を透明パウチに入った野菜スープに入れ、110℃で20分の加熱殺菌処理を施した。他方、第2の試料は加熱処理を行わなかった。 加熱処理済み第1試料を透明パウチから取り出して、その表面を水で洗浄した後に、図1、前述した基礎データ作成工程(図3)で説明した2回のDSC測定を行った。図7が加熱処理済み第1試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。 図7の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第1回目では120.5℃に吸熱ピークXが見られるのに対して、第2回目では吸熱ピークXが消失しているのが分かる。したがって、この吸熱ピークXが加熱殺菌処理に由来していると推定できる。 図8は加熱処理無し第2試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。 図8の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第2試料の場合には、第1、第2回目のDSC曲線に、共に、120.5℃の吸熱ピークXが見られない。このことは、加熱処理無し第2試料は前述したとおり加熱処理を行っていないのであるから予想通りである。 如上の結果から、ポリプロピレンに対して、本発明を適用することで、殺菌処理した食品中の異物がポリプロピレン片であれば、この異物が加熱殺菌工程の「前」に混入したのか、加熱殺菌工程の「後」に混入したのかの推定が可能であることが分かる。 第2実施例(ポリプロピレン): この第2実施例は、上述した第1実施例と同様にポリプロピレンに関するものであるが、このポリプロピレン片がどの段階でレトルト食品に混入したのかを明らかにせずに実験者に委ねてテストした。なお、このポリプロピレン片は、レトルト食品の加熱殺菌処理の前に混入したものである。 レトルト食品から取り出したポリプロピレン片は、大きさが2.8×6.0mmであり、厚さが0.4〜0.6mmであり、重量が2.9mgであった。 このポリプロピレン片をカッターで2分割して2つの第1、第2の試料を作成した。第1の試料を透明パウチに入ったソース(レトルト食品と同じソース)に入れ、当該食品のレトルト殺菌処理と同じ条件である121℃で15分間加熱処理した。他方、第2の試料は加熱処理を行わなかった。 基礎データ作成工程(図3)でのDSC測定によって、加熱処理済み第1試料から図9に示すDSC曲線を得た。図9に示す1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。この第1、第2回目のDSC曲線を対比することでピークX(129.5℃にピークを持つ130〜140℃にわたる吸熱ピーク)を特定することができることが分かるであろう。 推定工程(図4)に従って、加熱処理無しの第2試料に対して、図6を参照して説明した2回のDSC測定を行った。図10が第2試料に関するDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。第1回目のDSC曲線を見ると、この曲線にもピークXが現れており、そして、第2回目のDSC曲線ではピークXが消失している。このことから、実験者は、ポリプロピレン片はレトルト食品の加熱殺菌処理の前に混入したものであると推定した。この推定は事実と同じであり、ポリプロピレンに関して本発明が有効であることが実証できた。 第3実施例(エチレン-酢酸ビニル共重合体): エチレン-酢酸ビニル共重合体に上述したピークXが出現するか否かの検証を行った。エチレン-酢酸ビニル共重合体の材料を2分割して第1、第2の2つの試料を作った。第1の試料を透明パウチに入ったソースに入れ、98℃で75分間の加熱殺菌処理を施した。他方、第2の試料は加熱処理を行わなかった。 加熱処理済み第1試料を透明パウチから取り出して、その表面を水で洗浄した後に、前述した基礎データ作成工程(図3)で説明した2回のDSC測定を行った。DSC計測は160℃を越える温度まで行った。 図11が加熱処理済み第1試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図11の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第1回目では102.4℃に吸熱ピークXが見られるのに対して、第2回目では吸熱ピークXが消失しているのが分かる。したがって、この吸熱ピークXが加熱殺菌処理に由来していると推定できる。 図12は加熱処理無し第2試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図12の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第2試料の場合には、第1、第2回目のDSC曲線に、共に、吸熱ピークXが見られない。このことは、加熱処理無し第2試料は前述したとおり加熱処理を行っていないのであるから予想通りである。 如上の結果から、エチレン-酢酸ビニル共重合体に対して、本発明を適用することで、食品中の異物がエチレン-酢酸ビニル共重合体であれば、この異物が加熱殺菌工程の「前」に混入したのか、加熱殺菌工程の「後」に混入したのかの推定が可能であることが分かる。 第4実施例(ポリ塩化ビニル): ポリ塩化ビニル片を混入したシチュー入りパウチを100℃で5分の加熱処理を行い、このパウチからポリ塩化ビニル片を取り出して洗浄した後に、2分割して第1、第2の2つの試料を作った。第1の試料をシチュー入りパウチの中に入れて、上記加熱処理と同じ条件(100℃で5分)で加熱した。この加熱処理の条件は、喫食前の湯煎を意図したものである。勿論、喫食前の加熱としてレンジ加熱を想定するのであれば、レンジ加熱と同じ条件で加熱処理すればよい。他方、第2の試料は加熱処理を行わなかった。 加熱処理済み第1試料をパウチから取り出して、その表面を水で洗浄した後に、前述した基礎データ作成工程(図3)で説明した2回のDSC測定を行った。DSC計測は200℃まで行った。 図13が加熱処理済み第1試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図13の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第1回目では112.4℃に吸熱ピークXが見られるのに対して、第2回目では吸熱ピークXが消失しているのが分かる。したがって、この吸熱ピークXが、第1試料に施した加熱処理に由来していると推定できる。 図14は加熱処理無し第2試料のDSC曲線であり、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図14の第1、第2回目のDSC曲線を見ると分かるように、第2試料の場合でも第1回目のDSC曲線に吸熱ピークXが見られ、第2回目のDSC曲線では、この吸熱ピークXが消失していた。このことは、異物としてポリ塩化ビニル片を混入したシチュー入りパウチを湯煎した事実から、第2試料の第1回目のDSC曲線にピークXが現れたことにより、本発明がポリ塩化ビニルに対しても適用可能であることが分かった。 第5実施例(ポリメチルペンテン): ポリメチルペンテンに対しても本発明が適用可能であるかを検証するために、食品製造過程で加熱処理が3段階で行われると想定して、この場合にもDSC曲線にピークXが出現するか否かを検証した。食品の加熱処理として、(1)80℃で10分、(2)120℃で22分、(3)150℃で5秒の3つの場合を想定した。 ポリメチルペンテン片を4分割して第1〜第4試料を作成し、第1試料に対して上述した第1条件の加熱処理と同じ条件で加熱処理(80℃で10分)を施し、第2試料に対して上述した第2条件の加熱処理と同じ条件の加熱処理(120℃で22分)を施し、第3試料に対して上述した第3条件の加熱処理と同じ条件で加熱処理(150℃で5秒)を施した。他方、第4試料には加熱処理を施さなかった。 第1〜第3条件と同じ条件で夫々処理した第1〜第3の試料に対して、夫々、前述した基礎データ作成工程(図3)で説明した2回のDSC測定を行った。図15は加熱処理済み第1試料(80℃で10分)に関するDSC曲線であり、図16は加熱処理済み第2試料(120℃で22分)に関するDSC曲線であり、図17は加熱処理済み第3試料(150℃で5秒)に関するDSC曲線である。 図15〜図17に示す1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図15〜図17から、加熱処理済みの第1〜第3の試料のいずれにも吸熱ピークXを特定することができることが分かるであろう。 加熱処理無しの第4試料に関して推定工程(図6の確認工程)として2回のDSC測定を行って入手したDSC曲線を図18に示す。図18において、1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味するが、そのいずれにも吸熱ピークXが出現していない。このことは、第4試料には前述したように加熱処理を施していないのであるから予想の通りであり、したがって、ポリメチルペンテンを混入した食品に関する上記(1)〜(3)のいずれの加熱処理であっても本発明を効果的に適用できることが分かった。 第6実施例(ポリプロピレン−ポリエチレン重合体): ポリプロピレン−ポリエチレン重合体に対しても本発明が適用可能であるかを検証するために、ポリプロピレン−ポリエチレン重合体の片を3分割して第1〜第3の試料を作り、そのうち、第1の試料には第1加熱条件としての加熱処理(115℃で5分)を施し、第2の試料には第2加熱条件としての加熱処理(140℃で5分)を施し、第3の試料には第3加熱条件としての加熱処理(180℃で5分)を施した。 そして、第1〜第3の試料に対して、夫々、前述した基礎データ作成工程(図3)で説明した2回のDSC測定を行った。図19は第1試料(第1加熱条件:115℃で5分)に関するDSC曲線であり、図20は第2試料(第2加熱条件:140℃で5分)に関するDSC曲線であり、図21は第3試料(第3加熱条件:180℃で5分)に関するDSC曲線である。なお、DSC測定における炉内の上限温度は200℃に設定した。 図19〜図21に示す1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図19(第1試料)及び図20(第2試料)には、第2回目のDSC測定で消失するピークX(吸熱ピーク)が第1回目のDSC曲線に存在していることが分かるであろう。これにより、ポリプロピレン−ポリエチレン重合体に関しても本発明を適用できることが分かった。 しかし、180℃で5分の加熱処理を施した第3試料に関しては、図21から分かるように第2回目のDSC測定で消失するピークXは見られない。これは、第3試料に施した加熱処理の温度180℃がポリエチレンモノマーの融点(約105〜130℃)よりも高い温度であり、ポリプロピレンモノマーの融点(約150〜160℃)よりも高い温度であることに由来すると考えられる。したがって、ポリプロピレン−ポリエチレン重合体のうち、相対的に融点が高いポリプロピレンモノマーの融点よりも低い温度で加熱処理されたプラスチック片が混入物である場合に限り、本発明が有効であることが分かった。このことは、ポリプロピレン−ポリエチレン積層体に対しても同様である。 第7実施例(図22〜図26): この実施例は、レトルト食品にプラスチック片が混入していた場合に、この混入が、(1)レトルト殺菌処理の「前」、(2)レトルト殺菌処理の「後」、(3)消費者が喫食のために湯煎する「前」、(4)湯煎の「後」のどの段階で生じたかの推定に本発明が適用できるかについて検証してみた。 異物の混入が上記(1)レトルト殺菌処理の「前」の段階ということは、内容物を充填したレトルト容器を密封する前に異物が混入したということであるから、食品成分の調合の前後、食品を調理する段階、調理した食品をレトルト容器に充填する段階などで異物であるプラスチック片が混入したと推定できることになる。 異物の混入が(2)レトルト殺菌処理の「後」の段階ということは、レトルト食品を購入した消費者がレトルト容器(パウチ)を加温(湯煎)し、そして、開封したパウチから食品を食器に移して食する、という消費者が行う一連の工程のいずれかの段階でプラスチック片が混入したと推定できることになる。 異物の混入が(3)消費者が喫食のために湯煎する「前」の段階ということは、上記(2)レトルト殺菌処理の「後」という判定を加味することで、消費者がレトルト容器を開封し、そして、これを加温する前にプラスチック片が混入したと推定できることになる。 異物の混入が(4)湯煎の「後」の段階ということは、消費者がレトルト食品を喫食するため、レトルト容器から食品を皿に移し替えて喫食する過程(喫食過程)でプラスチック片が混入したと推定できることになる。 これら混入時期を推定できるかを検証するために、喫食過程での混入の検証にポリエチレン(PE)シート片を用い、それ以外の時期の混入の検証にポリプロピレン(PP)シート片を用いた。 レトルト食品としてはレトルトパウチに入った210gのレトルトカレーを用いた。このレトルトカレーの殺菌処理は120℃で15分に設定し、湯煎処理は100℃で5分に設定した。また、喫食過程で混入の検証では、湯煎後に陶器製の平皿に移し替えたカレーにポリエチレン(PE)シート片を3分間浸漬した。 (1)無処理のポリプロピレンシート片(図22): レトルトパウチに入れることなく、無処理の状態のポリプロピレンシート片について、前述した基礎データ作成工程(図3)での2回のDSC測定を行った。その結果が図22のDSC曲線である。図22の1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。第1回目のDSC曲線で106.1℃付近見られる吸熱ピークは、第2回目のDSC曲線では消失している。この106.1℃付近見られる吸熱ピークは、当該試料片が無処理であることから、シート成型過程における加熱の痕跡であると推定できる。 (2)レトルト加熱処理を施したポリプロピレンシート片(図23): カレー入りレトルトパウチを密封する直前にポリプロピレンシート片をレトルトパウチの中に挿入し、そしてレトルトパウチを密封して加熱殺菌処理を行った。この加熱殺菌処理は、前述したように120℃で15分であった。 加熱殺菌処理したレトルトパウチを開封して、レトルトパウチの中からポリプロピレンシート片を取り出して、このポリプロピレン片に対して基礎データ作成工程(図3)での2回のDSC測定を行った。その結果が図23のDSC曲線である。図23の1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図23を参照して、第1回目のDSC曲線には122.5℃付近に吸熱ピークXが見られ、第2回目のDSC曲線では消失していることが分かる。したがって、このピークXは加熱殺菌処理に起因するピークであると特定できる。 (3)レトルト加熱処理と湯煎を施したポリプロピレンシート片(図24): カレー入りレトルトパウチを密封する直前にポリプロピレンシート片をレトルトパウチの中に挿入し、そしてレトルトパウチを密封して加熱殺菌処理を行い、十分に冷却した後に湯煎した。加熱殺菌処理は、前述したように120℃で15分であった。また、湯煎処理は、先述したように100℃で5分であった。 加熱殺菌処理及び湯煎したレトルトパウチを開封して、レトルトパウチの中からポリプロピレンシート片を取り出して、このポリプロピレン片に対して基礎データ作成工程(図3)での2回のDSC測定を行った。その結果が図24のDSC曲線である。図24の1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図24を参照して、第1回目のDSC曲線には121.5℃付近に吸熱ピークの他に、102.1℃付近にも吸熱ピークが見られ、この2つのピークが第2回目のDSC曲線では消失していることが分かる。したがって、121.5℃付近の吸熱ピークは加熱殺菌処理に由来するピークであると推定でき、102.1℃付近の吸熱ピークは湯煎に由来するピークであると推定できることから、これら2つの区別可能なピークは、推定工程(図1、図4、図5)において、どの段階でポリプロピレンシート片が混入したかの推定に利用できるピークXであると特定できる。 (4)レトルト加熱処理と湯煎との間に混入させたポリプロピレンシート片(図25): レトルトパウチを開封した後であって湯煎をする前に、ポリプロピレンシート片をレトルトパウチに挿入して100℃で10分の湯煎を施した。 湯煎したレトルトパウチの中からポリプロピレンシート片を取り出して、このポリプロピレン片に対して基礎データ作成工程(図3)での2回のDSC測定を行った。その結果が図25のDSC曲線である。図25の1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。図25を参照して、第1回目のDSC曲線には101.8℃付近に吸熱ピークが見られ、このピークが第2回目のDSC曲線では消失していることが分かる。 なお、図22を参照して説明した無処理の状態のポリプロピレンシート片で見られた106.1℃付近の吸熱ピーク(図22の1stStepのDSC曲線)は、湯煎したポリプロピレンシート片では見られない(図25)。この無処理のポリプロピレンのピーク(図22の106.1℃付近の吸熱ピーク)は、前述したように、シート成型時の痕跡と推定できることは前述の通りであるが、この106.1℃よりも低温の100℃での湯煎の痕跡が101.8℃付近の吸熱ピークであると見ることができ、また、この湯煎によって、106.1℃のシート成型時の痕跡が消失したと考えることができる。いずれにせよ、図25の第1回目のDSC曲線の吸熱ピーク(101.8℃付近)が第2回目では消失していることから、この吸熱ピーク(101.8℃付近)は、推定工程(図1、図4、図5)において、湯煎により生じたピークXであると特定できる。 (5)湯煎後に陶器製の平皿に移し替えたカレーに浸漬したポリエチレンシート片(図26): 平皿に移し替えたカレーに3分間浸漬したポリエチレンシート片に対して基礎データ作成工程(図3)での2回のDSC測定を行った。その結果が図26のDSC曲線である。図26の1stStepは第1回目のDSC測定を意味し、2ndStepは第2回目のDSC測定を意味する。 図26を参照して、第1回目のDSC曲線には71.2℃付近と44.0℃付近に吸熱ピークが見られ、この2つのピークが第2回目のDSC曲線では消失していることが分かる。また、この2つの吸熱ピークは、前述した殺菌加熱や湯煎のときの吸熱ピークとは明らかに区別することができる。したがって、この2つの吸熱ピークは、平皿に移したカレーの温度が徐々に低下する過程で形成された吸熱ピークXであると特定できる。 上述した(1)〜(5)の基礎データを作成することで、図1、図4、図5を参照して前述した推定工程におけるDSC曲線において、例えば、図23や図24のピークXが見られたときには、レトルト殺菌処理前にプラスチック片が混入したと推定できる。 他の例として、図25のピークXが見られたときには、湯煎前にプラスチック片が混入したと推定できる。そして、例えば図23のピークXが見られないが、図25のピークXが見られたときには、殺菌処理後であって湯煎前にプラスチック片が混入したと推定できる。また、他の例として、図26のピークXが見られたときには、湯煎後の喫食時にプラスチック片が混入したと推定できる。 このように複数の基礎データを作成することで、食品の調合から喫食に至る過程で混入したプラスチック片に関して、食品の調合から喫食に至る過程での加熱処理を境に、どの段階でプラスチック片が混入したかを的確に推定できる。本発明の原理を説明するための図である。本発明に含まれる準備工程の手順を説明するためのフローチャートである。本発明に含まれる基礎データ作成工程の手順を説明するためのフローチャートである。本発明に含まれる推定の手順を説明するためのフローチャートである。本発明に含まれる推定工程における異物混入時期の推定方法を説明するための図である。本発明に含まれる推定工程に含めるのが好ましい確認工程を説明するための図である。ポリプロピレン片の混入に対して本発明が効果的に適用可能であるかを検証するための基礎データでピークXを特定できるか確認するために求めたDSC曲線図である。図7に関連して事実と同じか否かを検証するために求めたDSC曲線図である。レトルト殺菌する前にポリプロピレン片を意図的に混入して本発明の適用による推定の真偽をテストするための基礎データを構成するDSC曲線図である。図9に関連して、レトルト食品から取り出したポリプロピレン片のDSC曲線図である。エチレン−酢酸ビニル共重合体に特定のピークが出現するかを検証するために求めたDSC曲線図である。図11に関連して、加熱処理無しのエチレン−酢酸ビニル共重合体の片のDSC曲線図である。意図的にシチュー入りパウチにポリ塩化ビニルの片を混入して加熱し、その後、取り出したポリ塩化ビニルの片から基礎データを得るためにDSC測定したDSC曲線図である。図13に関連して、意図的にシチュー入りパウチにポリ塩化ビニルの片を混入して加熱した事実がDSC曲線に出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。3つの条件で加熱処理される食品を想定して、第1条件での加熱処理に関してポリメチルペンテンで特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。第2条件での加熱処理に関してポリメチルペンテンの片で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。第3条件での加熱処理に関してポリメチルペンテンの片で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。図15〜図17に関連して、比較対象として加熱処理無しのポリメチルペンテンの片で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。ポリプロピレン−ポリエチレン重合体に対して115℃で5分の加熱条件で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。ポリプロピレン−ポリエチレン重合体に対して140℃で5分の加熱条件で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。ポリプロピレン−ポリエチレン重合体に対して180℃で5分の加熱条件で特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。熱処理を何も加えない無処理のポリプロピレン片に関して特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。120℃で15分の熱処理を施したポリプロピレン片に関して特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。レトルト食品に混入させて120℃で15分のレトルト殺菌処理の後に100℃で10分の湯煎を施したポリプロピレン片に関して特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。レトルト食品の湯煎を想定して100℃で10分の熱処理を施したポリプロピレン片に関して特定のピークが出現するかを検証するためにDSC測定したDSC曲線図である。レトルト食品を湯煎した後に喫食する過程で混入した場合を想定して湯煎したパウチから取り出したカレーに3分間浸漬したポリエチレンシートの片のDSC曲線図である。符号の説明 X 基礎データ作成工程で得たDSC曲線によって特定したピーク 食品に混入していたプラスチック片の混入時期を示差走査熱量計を用いて推定する方法であって、 食品に混入していたプラスチック片を第1、第2の試料に分け、前記プラスチック片が食品中で受けたであろう加熱処理と同じ条件で前記第1試料を加熱処理する準備工程と、 該準備工程で加熱処理した前記第1試料を前記示差走査熱量計で2回同じ条件で計測して第1回目のDSC曲線と第2回目のDSC曲線を求め、第1回目のDSC曲線に存在して第2回目のDSC曲線では消失しているピークを特定する基礎データ作成工程と、 前記第2試料を前記示差走査熱量計で計測して推定用のDSC曲線を求め、該推定用のDSC曲線に前記特定のピークが存在しているか否かによって前記食品中で受けた加熱処理の前に前記プラスチック片が混入したか、前記食品中で受けた加熱処理の後に前記プラスチック片が混入したかを推定する推定工程とを有することを特徴とする混入時期推定方法。 前記推定工程において、該推定工程で求めた前記DSC曲線に前記特定のピークが存在しているときに、前記第2試料を前記示差走査熱量計で第2回目の計測を行う確認工程を更に有し、 該推定工程での第2回目の計測によるDSC曲線に前記特定のピークが消失していることを確認する、請求項1に記載の混入時期推定方法。 前記食品がレトルト食品であり、 前記プラスチック片が食品中で受けたであろう加熱処理が、前記レトルト食品の加熱殺菌処理である、請求項1又は2に記載の混入時期推定方法。 前記プラスチック片が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル積層体のうち、いずれかのプラスチックの片からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の混入時期推定方法。 【課題】食品の一連の製造工程及び消費者が喫食する過程で行われる加熱工程を境にどの段階でプラスチック片が混入したかを示差走査熱測定計を使って推定する。【解決手段】レトルト食品に混入していたプラスチック片を2分割して第1、第2の試料を作り、第1試料にレトルト殺菌処理と同じ加熱条件で加熱処理する。第1試料に対してDSC測定を2回行い、第1回目のDSC曲線に存在し、第2回目のDSC曲線では消失したピークXを特定する。無処理の第2試料に対してDSC測定を行い、これにより得たDSC曲線にピークXが出現しているときには、レトルト殺菌前にプラスチック片が混入したと推定する。【選択図】図1