生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_セルロース誘導体の製造方法
出願番号:2007290758
年次:2009
IPC分類:C08B 11/08,A61K 8/73,A61Q 5/02,A61Q 5/12


特許情報キャッシュ

奥津 宗尚 井原 毅 JP 2009114375 公開特許公報(A) 20090528 2007290758 20071108 セルロース誘導体の製造方法 花王株式会社 000000918 大谷 保 100078732 東平 正道 100081765 片岡 誠 100089185 平澤 賢一 100119666 奥津 宗尚 井原 毅 C08B 11/08 20060101AFI20090501BHJP A61K 8/73 20060101ALN20090501BHJP A61Q 5/02 20060101ALN20090501BHJP A61Q 5/12 20060101ALN20090501BHJP JPC08B11/08A61K8/73A61Q5/02A61Q5/12 6 OL 10 4C083 4C090 4C083AD261 4C083BB60 4C083CC33 4C083CC38 4C083CC39 4C083EE28 4C090BA28 4C090BB65 4C090BB72 4C090BB92 本発明は、セルロースにグリシドールを反応させて得られるセルロース誘導体の製造方法に関する。 親水性セルロース誘導体は、水系組成物の分散安定化剤、増粘剤、保水剤、あるいはシャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等洗浄剤組成物の配合成分等に用いられ、その用途は多岐にわたる。 ヒドロキシエチルセルロースに代表される親水性セルロース誘導体の一般的な製造方法は、セルロースにエチレンオキシドのような親水化剤(親水性エーテル化剤)を直接作用させるのではなく、始めに大量の水および大過剰の水酸化ナトリウム等アルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合して、いわゆるアルカリセルロースとする、アルセル化またはマーセル化と呼ばれる極めて煩雑なセルロースの活性化処理が必要となる。 これらアルセル化処理により得られるアルカリセルロースは、セルロース分子中の大部分の水酸基がアルコラートとなっていると考えられており、実際にセルロース分子中のグルコース単位当たり、通常3モル量程度、少なくとも1モル量以上のアルカリが含有されている。このアルセル化により活性化したセルロースへエーテル化剤を添加することでセルロースエーテルが得られるが、アルセル化の際に残存する同重量以上の水もまたエーテル化剤であるエチレンオキシドと反応(水和)するため、例えばエチレングリコール等の副生物が大量に生じることになる。また反応後にはこれらの副生物だけでなくアルセル化に用いたアルカリに由来する大量の中和塩の除去も必要である。また更にはこのエチレンオキシドが高圧ガスの規制を受けるため、工業的な観点からも設備的な制約が多い。 一方、置換基としてヒドロキシエチル基よりも高い親水性を有するグリセリル基の導入、すなわち親水性エーテル化剤としてエチレンオキシドの代わりにグリシドールを用いる液相反応も提案されている。例えば、非特許文献1には、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミドを溶媒として用い、更に塩基触媒を添加してセルロースにグリシドールを付加する均一系反応方法が開示されている。しかしながら、この方法では、セルロースの溶解に脱水等の前処理が必要であり、またグリシドールのセルロースへの反応効率が低い等、工業的な観点からは課題が多い。 また、特許文献1には、テトラブチルアンモニウムフロリドのような第4級アンモニウムハライドを含むジメチルアセトアミドを溶媒として用い、更に塩基触媒を添加してセルロースにグリシドールを付加する均一系反応方法が開示されている。しかしながら、この方法では、用いる第4級アンモニウムハライドが極めて高価であり、また前述した方法と同様、セルロースの溶解度が十分でないために多量の溶媒が必要であり、生産性といった工業的な観点からの課題も多い。 したがって、簡便でかつ効率の良いセルロースへのグリシドールの付加方法の開発は、工業的な観点からもセルロースの親水性基を付与する手段として、極めて有用な課題である。特開2007−238656号公報Makromol.Chem.,93(3),647(1992) 本発明は、工業的にも簡便でかつ効率的なセルロース誘導体の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、結晶化度を低下させた粉末状のセルロースを用いることにより、グリシドールとの触媒反応が極めて効率良く進行することを見出した。 すなわち、本発明は、低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールと反応させる、下記一般式(1)で表されるセルロース誘導体の製造方法である。(式中、Rは、水素原子又は下記一般式(2)若しくは(3)で示される置換基を示し、Rすべてが水素原子となることはない。nは100〜2000の数を示す。) 本発明によれば、工業的にも簡便でかつ効率的なセルロース誘導体の製造方法を提供することができる。 本発明は、低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールと反応させる、前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体の製造方法である。 以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。〔低結晶性の粉末セルロースの調製〕 一般にセルロースは幾つかの結晶構造が知られており、また一部に存在するアモルファス部と結晶部との割合から結晶化度として定義されるが、本発明における「結晶化度」とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を示し、粉末X線結晶回折スペクトルから求められる下記計算式(1)で表される結晶化度によって定義される。 結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 ・・・計算式(1)〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕 また、本発明における低結晶性の粉末セルロースの「低結晶性」とは、上記のセルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を示し、好ましくは上記計算式(1)から得られる結晶化度が50%以下となることが望ましい。 一般的に知られている粉末セルロースにも極めて少量のアモルファス部が存在するため、それらの結晶化度は、本発明で用いる計算式(1)によれば、概ね60〜80%の範囲に含まれる、いわゆる結晶性のセルロースであり、セルロース誘導体合成における反応性は極めて低い。 本発明で用いる低結晶性の粉末セルロースは、汎用原料として得られるシート状やロール状のセルロース純度の高いパルプから極めて簡便に調製することができる。低結晶性の粉末セルロースを調製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開昭62−236801号公報、特開2003−64184号公報、特開2004−331918号公報等に記載の調製方法を挙げることができる。 また、例えば、シート状パルプを粗粉砕して得られるチップ状パルプを、押出機で処理して、更にボールミルで処理することにより調製するような方法も挙げることができる。 この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機を用いることができ、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものであってもよい。押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。 また、ボールミルとしては、公知の振動ボールミル、媒体攪拌ミル、転動ボールミル、遊星ボールミル等を用いることができる。媒体として用いるボールの材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、効率的にセルロースを非晶化させる観点から、好ましくは0.1〜100mmである。また媒体としては、ボール以外にもロッド状のものやチューブ状のものも用いることが可能である。 ボールミルの処理時間としては、結晶化度を低下させる観点から、好ましくは5分〜72時間である。またこの処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑えるためにも、250℃以下、好ましくは5〜200℃の範囲で処理を行うことが好ましく、さらには必要に応じて、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。 前述のような方法を用いれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能であるが、好ましい重合度としては、100〜2000であり、より好ましくは100〜1000である。 本発明に用いる低結晶性の粉末セルロースの結晶化度は、好ましくは前記計算式(1)から求められる結晶化度が50%以下である。この結晶化度が50%以下であれば、グリシドールとの反応は極めて良好に進行する。この観点から、40%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。特に、本発明において、完全に非晶質化した、すなわち前記計算式から求められる結晶化度がほぼ0%となる非晶化セルロースを用いることが最も好ましい。 この低結晶性の粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性の良い状態が保てるならば特に限定されないが、本発明における一般的な反応条件においては、300μm以下が好ましく、20〜150μmがより好ましく、25〜50μmが更に好ましい。〔セルロース誘導体の製造〕 本発明において、上記で得られた低結晶性の粉末セルロースに、触媒存在下、グリシドールと反応させて、前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体(以下、単に「セルロース誘導体」ということがある)を得ることができる。 前記一般式(1)において、Rは、水素原子又は前記一般式(2)若しくは(3)で示される置換基(グリセリル基)を示し、Rすべてが水素原子となることはない。また、nは100〜2000の範囲、好ましくは100〜1000である。 前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体において、導入される一般式(2)若しくは(3)で示される置換基のセルロース中のグルコース単位当たりの置換度として、所望の置換度とすることが可能であるが、置換度としては、好ましくは0.01〜3であり、より好ましくは0.2〜2である。なお、前記の置換度は実施例に示す方法により測定される。 本発明で用いるグリシドールの使用量としては、好ましくはセルロース分子中のグルコース単位当たり0.01〜3モル倍の範囲、より好ましくは0.2〜2モル倍の範囲である。グリシドールの使用量がこの範囲であれば、グリシドールのセルロースに対する反応効率が極めて高いために、所望の置換度のセルロース誘導体を得ることができ、導入されたグリセリル基の水酸基への更なる付加も抑えることができる。 なお、グリシドールをセルロース分子中のグルコース単位当たり3モル倍より多く用いると、グリシドールがグリセリル基へ付加するため、セルロース上にポリグリセリル基を導入することも可能となる。 本発明で用いる触媒としては、特に制限はないが、塩基触媒又は酸触媒を用いることができる。塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミンやトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類が挙げられる。酸触媒としては、ランタニドトリフラート等のルイス酸触媒等が挙げられる。これら中では、塩基触媒が好ましく、特にアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが最も好ましい。これらの触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。 触媒の添加方法としては、水溶液を添加するか、希薄溶液を添加し、余分な水分量を除去してから反応させることが可能であるが、反応状態としてはスラリー状や粘度の高い状態にならずに流動性のある粉末状態を保つことが好ましく、そのため希薄水溶液で添加する際の水分量としても、セルロースに対して100重量%以下となるのが好ましい。 触媒の使用量としては、セルロースおよびグリシドールの双方に対して、触媒量で十分であり、具体的には、セルロース分子中のグルコース単位当たり0.1〜50モル%に相当する量が好ましく、更には1〜30モル%に相当する量がより好ましく、5〜25モル%に相当する量が最も好ましい。 本発明におけるセルロースとグリシドールとの反応は、前述したように粉末状態を保ちながら行うことが好ましいが、非水極性溶媒を用いた分散状態で行うことも可能である。 非水極性溶媒としては、一般にアルセル化処理の際に用いられるようなイソプロパノール、tert-ブタノール等の2級又は3級の低級アルコール;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム、トリグライム、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性極性溶媒が挙げられる。一方、一般的な低極性または非極性溶媒、例えばトルエンやベンゼン、ヘキサンや他の炭化水素油等も、本発明の効果を損なわない範囲において用いることもできる。 非水極性溶媒の使用量としては、セルロースを溶解させる必要はないため、前述した文献にあるような前処理も必要とせず、また多量に用いる必要もなくそのまま添加できるが、触媒が希釈されて反応性が低下するのを避ける等の観点から、セルロースに対して10重量倍以下とするのが好ましい。 本発明におけるグリシドールの添加方法としては、特に制限はないが、例えば(a)セルロースに触媒を添加した後にグリシドールを徐々に滴下して反応させる方法、(b)セルロースにグリシドールを一括で添加した後に触媒を加えて反応させる方法が挙げられる。この中で、グリシドール自身の重合を避ける観点から、(a)の方法がより好ましい。 いずれの方法においても、反応系内の水分含有量がセルロースに対して100重量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80重量%以下がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。 このため、触媒を水溶液で添加する場合には、例えば、方法(a)においては、グリシドールの滴下により反応を進行させながら同時に脱水を行い、反応系内の水分含有量を前述した範囲に調整することも可能である。 本発明ではグリシドールのセルロースへの反応選択率が極めて高いことから、所望の置換度に対してグリシドールを過剰に用いる必要がない。すなわちグリシドール由来の副生成物として得られるグリセリンやポリグリセリン等の水和物や重合物の副生が極めて少ない。したがって、所望の置換度でグリセリル化を行うことが可能になる。 また、通常のグリセリル化反応では、反応に用いたアルカリ等の塩基は反応終了後に中和塩として除去されるが、本発明における反応は、触媒反応であることから、その触媒に由来する中和塩の量も低減することが可能である。つまり、グリシドールや触媒に由来する副生成物や廃棄物が極めて少ないために、反応終了後の(洗浄等の)精製も容易となり、工業的な有用性も極めて高い。 本発明においては、低結晶性のセルロース、触媒及びグリシドールの混合物を流動性のある粉末状態で反応させることが好ましいが、セルロース粉末と触媒又はグリシドールを予めミキサー等の混合機や振とう機で必要に応じて均一に混合分散させた後に反応させることも可能である。 本発明で使用できる反応装置としては、低結晶性のセルロース、触媒及びグリシドールをできる限り均一に混合できるものが好ましく、前述したミキサー等の混合機の他、特開2002-114801号公報明細書段落〔0016〕で開示しているような、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機が最も好ましい。 本発明における反応温度としては、グリシドール自身の重合を避ける観点から、0〜150℃の範囲が好ましく、10〜100℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲が特に好ましい。 また、本発明における反応は、常圧下で行われることが好ましい。また、反応時の着色を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。 反応終了後は、酸またはアルカリを用いて中和し、必要に応じて、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等で洗浄等を行った後、乾燥することにより、前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体を得ることができる。 本発明において、前記一般式(2)又は(3)で表される置換基は、セルロース分子中のグルコース単位におけるいかなる位置の水酸基に結合していてもよいが、グルコース単位当たり所望の置換度に調整することが可能である。このことから、本発明で得られるセルロース誘導体は、水系組成物の分散安定化剤、増粘剤、保水剤、シャンプー、リンス、コンディショナー等の配合成分等の用途に利用することができる。(1)セルロースに対する水分含有量 セルロースに対する水分含有量の測定は、赤外線水分計として、株式会社ケット科学研究所製「FD−610」を使用し、150℃にて行った。 本発明における最適なセルロースの水分含有量を確認するため、後述する製造例1に準じた方法により得られた非晶化セルロースに所定量の水を添加した後、激しく攪拌・振とうさせ、目視によりその凝集状態を繰り返し観察した。 その結果、セルロースを流動性のある粉末状態で反応させるためには、含水量として100重量%以下とするのが好適であると判断した。結果を表1に示す。(2)結晶化度の算出 セルロースの結晶化度の算出は、株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から前記計算式に従って行った。 X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°,測定用サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製,X線のスキャンスピード:10°/min(3)粉末セルロースの重合度の測定 粉末セルロースの重合度は、ISO−4312法に記載の銅アンモニア法により測定した。(4)置換度の算出 置換度は、セルロース中のグルコース単位当たりのグリセリル基の平均導入量を示し、生成物の分析(置換度等)は、無水酢酸/ピリジンを用いた常法でのアセチル化を行い、このアセチル化体での各種NMR分析から行った。(5)粉末セルロースの平均粒径の測定 粉末セルロースの平均粒径は、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて測定した。製造例1(低結晶性粉末セルロースの製造) 木材パルプシート(ボレガード社製パルプシート、結晶化度74%)をシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけてチップ状にした。 次に、得られたチップ状パルプを二軸押出機(株式会社スエヒロEPM製、「EA−20」)に2kg/hrで投入し、せん断速度660sec-1、スクリュー回転数300rpm、外部から冷却水を流しながら、1パス処理して粉末状にした。 次に、得られた粉末セルロースを、バッチ式媒体攪拌ミル(五十嵐機械社製「サンドグラインダー」:容器容積800mL、5mmφジルコニアビーズを720g充填、充填率25%、攪拌翼径70mm)に投入した。容器ジャケットに冷却水を通しながら、攪拌回転数2000rpm、温度30〜70℃の範囲で、2.5時間粉砕処理を行い、粉末セルロース(結晶化度37%、重合度500、平均粒径40μm)を得た。この粉末セルロースの反応には更に32μm目開きの篩をかけた篩下品(投入量の90%)を使用した。 なお、各結晶化度の異なる粉末セルロースは,ボールミル処理における処理時間を変えることで調製した。実施例1 1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型)中に、前記製造例1で得られた低結晶性セルロース(結晶化度 37%、重合度500)100gおよびグリシドール37g(0.50mol)を加え、窒素雰囲気下室温で2時間攪拌した。次いで攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液5.8gを噴霧して加えて50℃に昇温し、そのまま6時間反応させた。反応中、セルロースは流動性のある粉末状態を保っていた。その後、酢酸で中和し、生成物をニーダーから取り出した後、含水イソプロパノール(含水量15%)およびアセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、セルロース誘導体を130gの白色固体として得た。セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.72、グリシドールのセルロースへの反応率は90%であった。比較例1 セルロースとして高結晶性の粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合度 500)を用いる以外は、実施例1と同様にして反応を行ったが、生成物の重量増加は全く見られず、セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.02、グリシドールのセルロースへの反応率はわずか2%であった。実施例2 溶媒としてポリエチレングリコールジメチルエーテル(メルク製試薬、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500)を400ml添加し、更に反応時間を20時間とする以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、凝集することなく極めて分散性の良好な状態を保持していた。セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.74、グリシドールのセルロースへの反応率は91%であった。比較例2 セルロースとして高結晶性の粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合度 500)を用いる以外は、実施例2と同様にして反応を行ったが、グリシドールのセルロースへの反応は全く確認されなかった。 実施例1及び2は、比較例1及び2に比べてグリシドールのセルロースへの反応率が向上し、所望の置換度を有するセルロース誘導体を効率的に得ることができる。 本発明によれば、工業的に簡便で生産性に優れた効率的な方法によって、セルロースとグリシドールとの反応によって得られるセルロース誘導体を製造することができ、得られたセルロース誘導体は、水系組成物の分散安定化剤、増粘剤、保水剤、シャンプー、リンス、コンディショナー等の用途に好適に用いられる。 低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールと反応させる、下記一般式(1)で表されるセルロース誘導体の製造方法。(式中、Rは、水素原子又は下記一般式(2)若しくは(3)で示される置換基を示し、Rすべてが水素原子となることはない。nは100〜2000の数を示す。) 触媒量の触媒の存在下で反応させる、請求項1に記載のセルロース誘導体の製造方法。 低結晶性の粉末セルロースの結晶化度が50%以下である、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体の製造方法。 低結晶性の粉末セルロースに対する水分含有量が100重量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。 低結晶性の粉末セルロースに対して10重量倍以下の非水極性溶媒を用いて反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。 触媒としてアルカリ金属水酸化物を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。 【課題】工業的にも簡便でかつ効率的なセルロース誘導体の製造方法を提供すること。【解決手段】低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールを反応させて得られるセルロース誘導体の製造方法である。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る