生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞培養容器及び細胞培養方法
出願番号:2007278367
年次:2009
IPC分類:C12M 3/00,C12N 5/06


特許情報キャッシュ

中谷 奈穂美 吉川 義洋 JP 2009106160 公開特許公報(A) 20090521 2007278367 20071026 細胞培養容器及び細胞培養方法 ニプロ株式会社 000135036 中谷 奈穂美 吉川 義洋 C12M 3/00 20060101AFI20090424BHJP C12N 5/06 20060101ALI20090424BHJP JPC12M3/00 AC12N5/00 E 9 OL 13 4B029 4B065 4B029AA03 4B029BB11 4B029CC02 4B029CC03 4B029CC08 4B029EA20 4B029GB09 4B065AA90X 4B065BC31 4B065BC50 4B065CA44 本発明は、細胞培養容器に関する。具体的には、容器の最内層が環状ポリオレフィン系樹重合体層である容器本体を備えた細胞培養容器に関する。さらに、本発明は前記細胞培養容器を用いた細胞培養方法に及ぶ。 従来、哺乳動物の細胞を生体外で行う培養は、ポリスチレン製容器の中で行われてきた。しかしながら、係る容器は容量が小さいため、大量培養には不向きであり、細胞を工業的に利用することが困難であった。また、培地を交換する際に、雑菌の混入が問題視されていた。 近年、かかる問題を解決すべく、ポリオレフィン系重合体を含む可撓性シートからなる培養バッグを用いた閉鎖培養系が確立してきている。例えば、などが開示されている(特許文献1〜3)。 しかしながら、これらの培養バッグを用いて細胞を培養した際に、しばしば培養する細胞が死滅することがある。また、細胞の増殖率の結果に大きくバラツキがあり、初期播種濃度が低くなるほどこの問題は顕著となる。特開平02−255077号公報特開平03−172169号公報特開2005−287425号公報 したがって、培養する細胞が死滅することなく、かつ安定して大量培養を可能とする細胞培養容器の開発が求められている。 本発明者らは、しばしば細胞が死滅する原因として、可撓性シートから培地中に溶出するオリゴマーが細胞にとって毒性を有する可能性があることに着目し、上記課題を解決した。 本発明は、細胞を培養するための容器であって、前記容器の最内層が環状ポリオレフィン系樹重合体層である容器本体を備えたものである。最内層の環状ポリオレフィン系樹重合体は、培地へのオリゴマーの溶出量が低く、細胞への影響がない。 本発明の細胞培養容器は、入手が困難な稀少細胞の培養に特に適しているため、稀少細胞培養用の細胞培養容器として利用できる。 本発明の細胞培養容器は、γ線滅菌処理されたものであることが好ましい。従来の細胞培養容器は、γ線滅菌をすると材料の劣化により、培地にオリゴマーが溶出しやすいという問題があったが、本発明の細胞培養容器は係る問題がない。 本発明の細胞培養容器は、好ましくは容器内に培地が予め充填されてなる。これにより、培地を細胞培養容器に注入する作業が不要であり、係る作業時におけるコンタミネーションを防止することができる。 本発明は、上記細胞培養容器を用いた細胞培養方法も含むものであり、当該方法は、細胞を容器内に播種するステップと、細胞を培養するステップとを含む。 本発明の細胞培養方法は、好ましくは初期播種濃度が、1.0×104cells/ml以下である。このような低い初期播種濃度であっても安定して細胞を培養することができる。特に、入手が困難な稀少細胞の培養に適している。 本発明の細胞培養容器は、当該容器を用いた細胞の培養の際、細胞が死滅することなく培養することができる。特に入手が困難な稀少細胞の大量培養に適している。 本発明の細胞培養容器によれば、容器の最内層が環状ポリオレフィン系重合体である容器本体を備えることを特徴とする。本発明における環状ポリオレフィン系重合体とは、分子内に脂環式炭化水素基(環状オレフィンモノマーユニット)を含む重合体の総称をいい、非晶質かつ透明性の高い重合体をいう。環状ポリオレフィン系重合体は、主に付加重合体及び開環重合体が挙げられる。ここで、オリゴマーの溶出量が少ない観点から開環重合体が好ましく、さらに水素付加された開環共重合体が好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。 環状ポリオレフィン系重合体の重量平均分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるため特に限定されるものではないが、成形体の機械的強度及び成形加工性の観点から、5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲である。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミッションクロマトグラフィー測定(PEG)により算定されたものとする。 上記脂環式炭化水素基(環状オレフィンモノマーユニット)は、分子内に脂環式構造を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。特に、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造は主鎖又は側鎖のいずれかに存在すればよいが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、機械強度、耐熱性及びフィルム成形加工性がよい観点から、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。脂環式炭化水素基を有する化合物(環状オレフィンモノマー)は、シクロペンタジエン類又はその熱分解中間体のシクロペンタジエンと、オレフィン類とをDiels-Alder反応により縮合することより合成することができる(化1)。 このような脂環式炭化水素化合物(環状オレフィンモノマー)は、例えば、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン系化合物(ノルボルネン、化2)、トリシクロ[4,3,0,12.5]−3−デセン系化合物(ジシクロペンタジエン、化3)、テトラシクロ[4,4,0,12.5,17.10]−3−ドデセン系化合物(化4)、ヘキサシクロ[6,6,1,13.6,110.13,02.7,09.14]−4−ヘプタデセン系化合物(化5)、及び、ペンタシクロ[6,6,1,13.6,02.7,09.14]−4−ヘキサデセン系化合物(化6)などが挙げられる。 上記「〜系化合物」とは、「〜」に記載された化合物を基本とし、その誘導体を含む概念をいう。例えば、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン系化合物の場合、ビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化2)の他に、6−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化7)、5,6−ジメチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化8)、1−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化9)、6−エチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化10)、6−n−ブチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化11)、6−イソブチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化12)、及び、7−メチルビシクロ[2,2,1]へプト−2−エン(化13)などが挙げられる。 上記付加重合体とは、α−オレフィンモノマーと環状オレフィンモノマーとの付加重合体をいい、環状オレフィンモノマーの橋かけ構造は維持された重合体をいう。付加重合は、主に遷移金属/アルキル金属化合物からなるチグラー触媒、又は、遷移金属錯体/アルミ系助触媒からなるメタロセン触媒を用いて重合されたものが挙げられる。付加重合体の一般式を以下に示す(化14)。 上記付加重合体に使用するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。 これら環状ポリオレフィン系付加重合体の市販品としては、例えば、三井化学社のアベル(登録商標)及びティコナ社のTopas(登録商標)などが挙げられる。 上記開環重合体とは、環状オレフィンモノマーの二重結合が開環し、環状オレフィンモノマーの橋かけ構造が開裂した重合体をいう。開環重合は、主にメタシス重合触媒を用いて重合されたものが挙げられる。開環重合体の一般式を以下に示す(化15)。 また、得られた開環重合体は、酸化安定性を向上させる観点から、二重結合に水素付加したものが好ましい。水素付加は、一般的に上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加しより達成することができる。開環重合における水素付加の一般式を以下に示す(化16)。 これら環状ポリオレフィン系開環重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン社のゼオネックス(登録商標)及びゼオノア(登録商標)、並びに、JSR社のアートン(登録商標)などが挙げられる。 また、以上に説明した環状ポリオレフィン系重合体は、共重合体であってもよい。共重合体中における環状ポリオレフィンモノマーと共重合を行うモノマーとの割合は、共重合体の物性などにより当業者が適宜設定できるため特に限定されるものではないが、例えば、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5である。 以上に説明した環状ポリオレフィン重合体は、当該環状ポリオレフィン重合体の層を最内層とした容器の形状に加工される。容器の形状は、例えば、立体成型容器及びバッグなどが挙げられる。これらの成形体は、細胞を大量に培養することができ、閉鎖系での培養が可能である。特に、容器内部に空気が存在せず、細胞の播種が容易である観点から、バッグが好ましい。 上記立体成型容器とは、内部に空気が存在する閉鎖的な容器をいい、例えば、射出成型、インフレーション成型、圧縮成型及び真空成型などにより培地を収納するための凹部を形成したものを含む容器をいう。 一方、上記バッグとは、2つ折りにした1枚のフィルム又は2枚のフィルムを重ね合わせた状態で縁部をヒートシールなどの閉鎖することにより製造されうる容器をいう。 これら容器の内容積は、培養すべき細胞の種類や、必要とする細胞数により決定されるため、特に限定されるものではないが、例えば、約5〜1000mL、好ましくは約5〜300mLである。 上記の立体成型容器及びバッグのいずれにおいても、環状ポリオレフィン重合体はフィルムを基本として製造される。フィルムは、環状ポリオレフィン単層のフィルムであってもよいが、フィルムのバリなどの観点から他の高分子フィルムとのラミネートフィルムであることが好ましい。上記他の高分子フィルムは、環状ポリオレフィン重合体と相溶性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリ酢酸エチル、ポリビニルアルコール及びポリ−1,2−ジクロロエタンなどが挙げられる。また、成形体の形状維持の観点から、さらに外層にポリエチレンテレフタレート又はポリアミドなどの高分子層を設けてもよい。これらのラミネートフィルムは、用途に応じて当業者が適宜設定できるものであり特に限定されるものではないが、材料のコスト、製造コスト及び成形加工性の観点から内層が環状ポリオレフィン重合体、中間層にポリエチレン、外層にポリエチレンテレフタレートの3層のラミネートフィルムが好ましい。 以上に説明した細胞培養容器を用いて細胞を培養すると、驚くべき効果を奏する。従来の細胞培養容器を用いた細胞培養方法は、当該従来の細胞培養容器に施される滅菌処理によって、細胞の培養結果に大きくバラツキが生じる。これは、当該従来の細胞培養容器に施される滅菌処理によって、上述したオリゴマーの培地への溶出量が増加するためであると推察される。特に、γ線滅菌を施した場合にこの現象が起こる可能性が高くなる。 しかしながら、本発明の細胞培養容器は、当該細胞培養容器に施される滅菌処理によって、当該細胞培養容器を用いた培養系に影響されることがない。本発明の細胞培養容器は、どのような滅菌処理を施しても、オリゴマーの培地への溶出がほとんどないからであると推察される。してみると、本発明の細胞培養容器は、滅菌効果が最も高いγ線滅菌を施すことが好ましい。 本発明の細胞培養容器は、好ましくは、予め培地が充填されていることが好ましい。充填される培地は、例えば、RPMI−1640培地、DMEM培地、MEM培地、α‐MEM培地及びIMDM培地等が挙げられるが、これらの培地に限定されるものではない。 また、本発明の細胞培養容器を用いた細胞培養方法は、初期播種濃度が少ない培養系に対してもその効果が顕著となる。本発明における初期播種濃度とは、培養開始時の細胞培養容器内における細胞の濃度をいう。従来の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、初期播種濃度が低い場合、上述した培地へ溶出したオリゴマーが細胞に対する影響が大きくなる。しかしながら、本発明の細胞培養容器は、内層の環状ポリオレフィン系重合体層であるため、当該環状ポリオレフィン系重合体が培地へのオリゴマーの溶出は激減される。すると、初期播種濃度の低い細胞培養系であっても、安定して細胞を培養することができようになる。本発明の培養における望ましい細胞の初期播種濃度は、1.0×104cells/ml以下である。 本発明における稀少細胞とは、主に骨髄、臍帯血、末梢血中に存在する極めて少数(数パーセント)の造血幹細胞、造血前駆細胞、NKT細胞、制御性T細胞などの血液由来細胞をいう。具体的に、造血幹細胞とは、自己複製能、多分化能を併せもった、細胞表面マーカーCD34+CD38−などを示す細胞をいう。また造血前駆細胞は、多分化能は有しているが自己複製能は失った造血幹細胞由来の細胞をいう。一方、NKT細胞や制御性T細胞はリンパ球の一種であり、NKT細胞は、NK細胞とキラーT細胞の両方の性質を持った細胞、制御性T細胞は、他のT細胞の免疫反応を抑制する機能を持った細胞をいう。 上述のとおり本発明の細胞培養容器は、初期播種濃度が低い場合に顕著な効果を示すことから、とりわけ入手の困難な稀少細胞の培養に適しているといえる。 また、本発明の細胞培養容器の容器本体を形成する環状ポリオレフィン系重合体は、従来のポリオレフィンよりも固めの材料であるため、培養作業において取り扱い性がよいとう利点もある。 以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。[実施例1] 縦65mm、横37mm四方にカットした内層が環状ポリオレフィン重合体のラミネートフィルムを2枚用意した。ここでラミネートフィルムは、内層が環状ポリオレフィン重合体(日本ゼオン社製:ゼオノア、日本ゼオン社所有商標)、中間層にポリエチレン、外層にポリエチレンテレフタレートの3層のラミネートフィルムである。この2枚のラミネートフィルムを重ね縁部約10mmをヒートシールにより溶着することで本発明の細胞培養容器を製造した。得られた細胞培養容器は、エチレンオキサイドガスにより滅菌処理を行った。[実施例2] 実施例1において、エチレンオキサイドガスによる滅菌処理の代わりに、15kGyでのγ線滅菌処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に細胞培養容器を製造した。[比較例1] 本発明の比較の対象として、エチレンオキサイドガスにより滅菌処理を行った市販のポリエチレン製の細胞培養容器を用意した。[比較例2] 比較例1において、エチレンオキサイドガスによる滅菌処理の代わりに、15kGyでのγ線滅菌処理を行ったこと以外は、比較例1と同様の細胞培養容器を用意した。[実験例1] 実施例1、2、比較例1及び2の細胞培養容器を用いて培養実験を行った。尚、用いた細胞は、リンパ球系稀少細胞の入手が困難であったため、希少細胞モデルとしてリンパ球系細胞株であるヒト白血病細胞由来のMOLT−4細胞を用いることとした。具体的には、10%の牛胎児血清を含有したRPMI−1640培地を用いて細胞濃度1.0×104cells/mLの細胞懸濁液を調製し、さらに希釈することで最終的に細胞濃度1.0×102cells/mLの細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、実施例1及び比較例1の細胞培養容器にそれぞれ5mLずつ播種した後、脱気シールを行った。これらを初期播種濃度1.0×102cells/mLの試験サンプルとし、5%CO2、37度に設定したインキュベーター内で培養を開始した。 培養開始から12日経過した際の細胞の濃度を表1に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×102cells/mlという極めて低い初期播種濃度であったにも関わらずMOLT−4細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、MOLT−4細胞は死滅した。[実験例2] 実験例1において、細胞の初期播種濃度を1.0×103cells/mlとしたこと以外は、実験例1と同様に行った。 培養開始から8日経過した際の細胞の濃度を表2に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×103cells/mlというある程度低い初期播種濃度であったにも関わらずMOLT−4細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、MOLT−4細胞は死滅した。[実験例3] 実験例1において、細胞の初期播種濃度を1.0×104cells/mlとしたこと以外は、実験例1と同様に行った。 培養開始から5日経過した際の細胞の濃度を表3に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×104cells/mlという低い初期播種濃度であったにも関わらずMOLT−4細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、MOLT−4細胞はほとんど増殖しなかった。[実験例4] 実験例1において、細胞をKG−1細胞としたこと以外は、実験例1と同様に行った。尚、ここで用いた細胞は、造血幹細胞や造血前駆細胞の入手が困難であったため、稀少細胞モデルとして細胞表面マーカーCD34を発現している骨髄系細胞株を用いることとした。 培養開始から17日経過した際の細胞の濃度を表4に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×102cells/mlという極めて低い初期播種濃度であったにも関わらずKG−1細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、KG−1細胞は死滅した。[実験例5] 実験例4において、細胞の初期播種濃度を1.0×103cells/mlとしたこと以外は、実験例4と同様に行った。 培養開始から10日経過した際の細胞の濃度を表5に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×103cells/mlというある程度低い初期播種濃度であったにも関わらずKG−1細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、KG−1細胞は死滅した。[実験例6] 実験例4において、細胞の初期播種濃度を1.0×104cells/mlとしたこと以外は、実験例4と同様に行った。 培養開始から6日経過した際の細胞の濃度を表3に示す。 実施例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、1.0×104cells/mlという低い初期播種濃度であったにも関わらずKG−1細胞は増殖した。これに対して、比較例1及び2の細胞培養容器を用いた培養系では、KG−1細胞はほとんど増殖しなかった。 また、実施例2(γ線滅菌)の結果は、実施例1(EOG滅菌)の結果よりも若干ではあるが細胞が増殖していることが伺える。これは、γ線滅菌により細胞培養容器内の無菌性が高いためと考えられる。これに対して、比較例2(γ線滅菌)の結果は、比較例1(EOG滅菌)の結果よりも細胞が増殖しなかった。これは、γ線滅菌により細胞培養容器の材料が若干劣化し、オリゴマーが培地に溶出することが、γ線滅菌の無菌性が高いことよりも強く影響していることが原因であると考えられる。この結果から、本発明の細胞培養容器は、滅菌処理に影響することなく、安定して細胞が増殖することが言える。[実験例7] 実験例1において、使用した細胞培養容器は、実施例1及び比較例1のみとし、細胞の初期播種濃度を1.0×105cells/mlとしたこと以外は、実験例1と同様に行った。 培養開始から4日経過した際の細胞の濃度を表3に示す。 表7より明らかのように、比較例1の結果よりも、実施例1の結果の方が良好であることが示された。 本発明の細胞培養容器は、当該容器を用いた細胞の培養の際、細胞が死滅することなく培養することができるため、細胞培養を工業レベルで実施することができる。特に入手が困難な稀少細胞の大量培養に適しており、近年臨床研究が進められている細胞医療、特に悪性腫瘍や難治性貧血などの細胞療法に大きく貢献するであろう。細胞を培養するための容器であって、前記容器の最内層が環状ポリオレフィン系樹重合体層である容器本体を備えた細胞培養容器。 前記細胞が、稀少細胞である請求項1に記載の細胞培養容器。 前記容器が、γ線滅菌処理されたものである請求項1に記載の細胞培養容器。 容器内に培地が予め充填されてなる請求項1に記載の細胞培養容器。 細胞を培養するための容器を用いた細胞の培養方法であって、前記容器の最内層が環状ポリオレフィン系重合体層である容器本体を備え、前記細胞を容器内に播種するステップと、前記細胞を培養するステップとを含む細胞培養方法。 前記細胞の初期播種濃度が、1.0×104cells/ml以下である請求項5に記載の細胞培養方法。 前記細胞が、稀少細胞である請求項5に記載の細胞培養方法。 前記容器が、γ線滅菌処理されたものである請求項5に記載の細胞培養方法。 容器内に培地が予め充填されてなる請求項5に記載の細胞培養方法。 【課題】培養する細胞が死滅することなく閉鎖的な大量培養を可能とする細胞培養容器および培養方法の提供。【解決手段】容器の最内層が環状ポリオレフィン系樹重合体層である容器本体を備えた細胞培養容器。好ましくは、容器内に培地が予め充填されてなる細胞培養容器。さらに、前記細胞培養容器を用い、希少細胞を容器内に播種するステップと、前記細胞を培養するステップとを含む細胞培養方法。特に細胞の初期播種濃度が、1.0×104cells/ml以下の時に顕著な効果を発揮する。【選択図】なし


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