タイトル: | 公開特許公報(A)_ペプチジル転移反応中心のターゲッティングに関与するタンパク、および対応する治療薬剤並びに治療方法 |
出願番号: | 2007276434 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 45/00,C12N 15/09,C12Q 1/02,C12Q 1/48,C07K 14/395,A61P 43/00,A61P 31/04,A61P 31/12,A61P 31/18,A61K 35/76,A61K 38/00,A61K 48/00,A61K 31/513,A61K 31/40,A61K 31/7088,C07D 239/54,C07D 207/12 |
ペルツ スチュアート ダブリュー ディンマン ジョナサン ディー クイ イン JP 2008120799 公開特許公報(A) 20080529 2007276434 20071024 ペプチジル転移反応中心のターゲッティングに関与するタンパク、および対応する治療薬剤並びに治療方法 ユニヴァーシティー オブ メディシン アンド デンティストリー オブ ニュージャージー 507353131 中村 稔 100059959 大塚 文昭 100067013 宍戸 嘉一 100065189 小川 信夫 100084009 ペルツ スチュアート ダブリュー ディンマン ジョナサン ディー クイ イン US 60/005,041 19951006 A61K 45/00 20060101AFI20080502BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080502BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20080502BHJP C12Q 1/48 20060101ALI20080502BHJP C07K 14/395 20060101ALI20080502BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080502BHJP A61P 31/04 20060101ALI20080502BHJP A61P 31/12 20060101ALI20080502BHJP A61P 31/18 20060101ALI20080502BHJP A61K 35/76 20060101ALI20080502BHJP A61K 38/00 20060101ALI20080502BHJP A61K 48/00 20060101ALI20080502BHJP A61K 31/513 20060101ALI20080502BHJP A61K 31/40 20060101ALI20080502BHJP A61K 31/7088 20060101ALI20080502BHJP C07D 239/54 20060101ALN20080502BHJP C07D 207/12 20060101ALN20080502BHJP JPA61K45/00C12N15/00 AC12N15/00 AC12Q1/02C12Q1/48 ZC07K14/395A61P43/00 111A61P31/04A61P31/12A61P31/18A61K35/76A61K37/02A61K48/00A61K31/513A61K31/40A61K31/7088C07D239/54 ZC07D207/12 14 1997514502 19961004 OL 47 4B024 4B063 4C069 4C084 4C086 4C087 4H045 4B024AA01 4B024BA80 4B024CA02 4B024DA06 4B024EA03 4B024FA08 4B024HA17 4B063QA18 4B063QQ08 4B063QQ26 4B063QR06 4B063QR77 4C069AA05 4C069AA13 4C069BB08 4C069BB16 4C069BC04 4C069BC06 4C084AA02 4C084AA07 4C084AA13 4C084BA02 4C084BA20 4C084NA14 4C084ZB332 4C084ZB352 4C084ZC552 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC07 4C086BC42 4C086EA16 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZB33 4C086ZB35 4C086ZC55 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC83 4C087CA12 4C087NA13 4C087ZB33 4C087ZB35 4C087ZC55 4H045AA10 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA15 4H045EA29 4H045EA53 4H045FA74 本発明は、mRNAフレームシフトおよびナンセンスmRNA崩壊経路に関与するタンパク並びに高いインビボ安定性をもつ、RNAをコードする組み換え遺伝子の同定に関するものである。これらタンパクおよび安定化されたRNAの同定は、フレームシフト頻度を変更することにより、mRNAの機能活性に影響を与える薬剤を同定するためのインビトロアッセイ系を与える。このような薬剤は、有用な抗−ウイルスまたは抗−微生物薬物であろう。本発明のアッセイ系は、更にRNAの安定性に影響を与える薬剤の同定をももたらす。このような薬剤は、ナンセンス突然変異と関連する諸疾患の治療のために有用であろう。また、安定化されたアンチセンスRNAおよびツーハイブリッドリガンドアッセイ系において有用な、安定化されたmRNAコードペプチドをも提供する。RNA代謝回転およびリボソームフレームシフト 多くの研究が、mRNA代謝回転と翻訳の過程とが、直接的に関連していることを示している〔ペルツ(Peltz)等,Prog.Nucl.Acid Res.& Mol.Biol.,1994,47:271-298〕。翻訳とmRNA代謝回転との間の関係に関する明確な例の一つは、遺伝子におけるナンセンス突然変異が、ナンセンス−含有転写物の安定性を減じ得るという観測である〔ペルツ(Peltz)等,Prog.Nucl.Acid Res.& Mol.Biol.,1994,47:271-298〕。酵母サッカロミセスセレビシアエ(Saccharomycescerevisiae)が、ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に関与するトランス作用ファクタを同定し、かつ特徴付けするのに利用されている。UPF1、UPF2およびUPF3遺伝子における突然変異は、最も野性型の転写物に影響を与えることなしに、細胞中のナンセンス−含有mRNAの濃度を、その半減期を増大することにより高くする〔リーズ(Leeds)等,Genes & Dev.,1991,5:2303-2314;リーズ等,Mol.Cell Biol.,1992,12:2165-2177;ペルツ等,Genes & Dev.,1993,7:1737-1754;ハガン(Hagan)等,Mol.Cell Biol.,1995,15:809-823;キュー(Cui)等,Genes & Dev.,1995,9:437-454:ヒー(He)等,Genes & Dev.,1995,9:437-454]。該Upf1pは該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路において機能するだけでなく、ナンセンスおよびフレームシフト抑制の調節に関与する分離可能な機能をも有し、このことはこれらの過程が正しく関係し、かつ同様の成分を取り込む可能性のあることを示唆している。 ナンセンス転写物を安定化し、かつナンセンスおよびフレームシフト突然変異を抑制できる、翻訳機構に加えて、特定のリボソームフレームシフトシグナルに応答して、伸長リボソームの読み取り枠のシフトを誘発することによって、遺伝子発現を調節するメカニズムが発展した〔チャンドラー(Chandler)等,Mol.Microbiol.,1993,7:497-503;フラボー(Frabaugh)等,J.Biol.Chem.,1995,270:10361-10364;ハヤシ(Hayashi)等,Biochem.J.,1995,306:1-10]。フレームシフト事象は融合タンパクを生成し、そこでN-およびC-末端ドメインは、2つの別々のオーバーラップ読み取り枠によりコードされる。リボソームフレームシフトは、フレームシフト抑制とは異なる。というのは、これらの事象が、宿主遺伝子生成物中の突然変異の結果としてではなく、特異的なmRNA配列により導かれるからである。ウイルスフレームシフト リボソームフレームシフトの多くの例が、ウイルス中で同定されており、その全てがそのRNA(+)ストランドを、1)多数のタンパク生成物をコードするmRNA、2)形成されつつあるウイルス粒子中に詰め込まれるRNA種および3)該ウイルスの遺伝子物質の複製用の鋳型として使用している。多数のタンパク生成物の製造はmRNAのスプライシングまたは修正により達成できる。しかしながら、これらのメカニズムは、スプライシングまたは修正が、ゲノムRNAのパッケージングまたは複製に必要とされるRNAサイトを除去しないと、変更されたRNA(+)ストランド生成の結果を装い、変異ウイルスゲノムの生成をもたらす可能性がある。恐らくこの理由のために、(+)ssRNAおよびdsRNAウイルスは、スプライシングまたはmRNA修正を利用していることが知られておらず、またレトロウイルスは、これらがそのRNAをスプライシングする際に、そのパッケージングサイト(Ψ)を除去する〔マン(Mann)等,Cell,1983,33:153-159;ワタナベ(Watanabe & Temin),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1982,79:5986-5990]。リボソームフレームシフトおよび/または終止コドンのリードスルーを利用して、融合タンパクを作成するに際して、RNA(+)ストランドの鋳型は変更されず、また従って変異ウイルスゲノムの生成およびパッケージングは阻害される〔イチョー&ウイックナー(Icho and Wickner),J.Biol.Chem.,1989,264:6716-6723]。 例えば、酵母中のキラーウイルス系は、L-AおよびM1二本鎖RNAウイルスからなり、また適当な遺伝子発現のためにプログラム化された-1リボソームフレームシフトを利用している〔ウイックナーR.B.,J.Biol.Chem.,1993,268:3797-3800]。このdsRNAl-Aウイルスは、2つの読み取り枠をもつ。5'gagはGagタンパクをコードし、かつ3'pol遺伝子は、ウイルスRNAパッケージングに必要な多機能タンパクドメインをコードする〔ウイックナーR.B.,J.Biol.Chem.,1993,268:3797-3800]。-1リボソームフレームシフト事象は該Gag-Pol融合タンパクの製造に応答できる。M1、即ち分泌されたキラー毒素をコードするL-AのサテライトdsRNAウイルス〔ウイックナーR.B.,J.Biol.Chem.,1993,268:3797-3800]は、該L-Aウイルスにより合成された遺伝子生成物を利用して、封入され、かつ複製される。以前の結果は、該L-Aウイルスの-1リボソームフレームシフトの効率を変更する突然変異が、合成されるGag対Gag-Polの割当を変更し、かつM1サテライトウイルスの喪失を生ずる〔ディンマン(Dinman)等,J.Virol.,1992,66:3669-3676;ディンマン等,Genetics,1994,136:75-86]。フレームシフトメカニズム レトロウイルス、(+)ssRNAウイルスおよびdsRNAウイルスにおける-1方向のリボソームフレームシフトは、「不安定サイト(slippery site)」と呼ばれる特定の配列X XXX YYZ(このO-フレームはスペースにより示される)を必要とする〔ジャックス&バルムス(Jacks and Varmus),Science,1985,230:1237-1242〕。5'方向における1塩基だけの、リボソーム−結合A-およびP-サイトtRNAのズレ(slippage)は、依然として新たな読み取り枠において正確に対をなす非−ゆらぎ塩基を残す。通常はRNAシュードノット(pseudoknot)である、第二の促進エレメント〔ジャックス(Jacks)等,Cell,1988,55:447-458〕が該不安定サイトの3'に極隣接して位置している〔ブロー&ガイドシェック(Brow and Geiduschek),J.Biol.Chem.,1987,262:13953-13958;ディンマン(Dinman)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991,88:174-178;テンダム(TenDam)等,Biochemistry,1992,31:11665-11676〕。このmRNAシュードノットは、該リボソームを該不安定サイト上で休止させ、かつ5'リボソームの移動の確率を増大するものと考えられる〔ソモギー(Somogyi)等,Mol.Cell Biol.,1993,13:6931-6940;チュー(Tu)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1992,89:8636-8640]。-1リボソームフレームシフトの効率は、該リボソーム結合tRNAの、該O-フレームからの対解除能、これらtRNAの該-1フレームとの再度の対形成能、該不安定サイトからの、該RNAシュードノットの相対的位置およびその熱力学的安定性によって影響される可能性がある〔ブリーリー(Brierly)等,J.Mol.Biol.,1992,227:463-479;ブリーリー(Brierly)等,J.Mol.Biol.,1991,227:463-479;ブロー(Brow)等の上記文献(1987);ディンマン(Dinman)等の上記文献(1991);ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),J.Virology,1992,66:3669-3676;ジャックス(Jacks)等の上記文献(1988);(Morikawa and BiBishop),Virology,1992,186:389-397〕。インビトロ変異誘発を導くサイトが、該不安定サイトおよび該RNAシュードノットの研究に使用されている。該mRNAシュードノットの構造が、酵母の該L-Aウイルスにおける効果的な-1リボソームフレームシフトにとって必要とされる〔ディンマン(Dinman)等の上記文献(1991);ディンマン等の上記文献(1992)〕。 細胞中の、プログラム化された-1リボソームフレームシフト効率を増大させる突然変異についてのスクリーニングにより、mof(Maintenance Of Frame)と呼ばれる9個の染色体性変異体を同定した〔ディンマン(Dinman)等,J.Virol.,1992,66:3669-3676;ディンマン(Dinman)等,Genetics,1994,136:75-86]。元々該mof変異体の同定に使用されたこのスクリーニングでは、ある構築体を利用しており、該構築体において、lacZ遺伝子が、翻訳開始サイトに対して、該L-A-1リボソームフレームシフトシグナルの下流側および該-1読み取り枠中に挿入された。mof変異体についてのアッセイは、-1リボソームフレームシフト効率の増大の結果として、高いβ−ガラクトシダーゼ活性を有する細胞の同定に依っている。このスクリーニングにおいて使用したmRNAのレポーターは、5'読み取り枠をもつフレームからの約3.1kbのlacZmRNAを伴う、該フレームシフトサイトの短い(約100nt)タンパクコード領域5'を有する。かくして、該翻訳機構は、異常なナンセンス−含有mRNAとして、該報告された転写物を理解することを可能とする。この観点から、mof株において観察された該高いβ−ガラクトシダーゼ活性は、ナンセンス−含有転写物を安定化する突然変異によるものであり得る。従って、ここに提示する実験では、該mof変異体の該ナンセンス−媒介mRNA崩壊表現型を調査し、かつこの表現型を該キラー表現型を維持する能力と関連付ける。 本明細書におけるあらゆる参考文献の引用は、このような参考文献が本件特許出願に対する「公知文献」であることを承認したことを意味しないものと理解すべきである。 本発明の目的は、ペプチジル転移反応中心のターゲッティングに関与するタンパク、および対応する治療薬剤並びに治療方法を提供することである。 第一の局面において、本発明はmRNAフレームシフトに関与し、またナンセンスmRNA崩壊経路においてある役割を演じている可能性のある、遺伝子およびこれによりコードされるタンパクを同定することに関する。 本明細書に添付される実施例において具現される、一態様において、mof4-1対立遺伝子は、サッカロミセスセレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)のUPF1として同定され、またこのタンパクUPF1は、該mof4-1突然変異を補足することが分かっている。かくして、UPF1はmRNAフレームシフト−関連タンパクとして同定される。該mof4-1突然変異は、ウイルスmRNAの-1リボソームフレームシフトの有効性の増大と関連している。 もう一つの態様においては、mof2-1がタンパクSUI1をコードする遺伝子sui1の対立遺伝子として同定された(カスティロ−バラビシウス(Castilho-Valavicius)等,Genetics,1990,124:483-495;ヨーン&ドナヒュー(Yoon and Donahue),Mol.Cell Biol.,1992,12:248-260)。このタンパクはヒト同族体を有する〔フィールズ&アダムズ(Fields and Adams),Biochem.Biophys.Research Commun,1994,198:288-291;カスペレティス(Kasperaitis)等,FEBSLett.,1995,365:47-50]。SUI1のこのヒト同族体は、S.セレビシアエにおける該mof2-1変異を補足し、従ってウイルスmRNAのリボソームフレームシフトにおける、酵母およびヒト両者に対する役割を明らかにできることが分かっている。 もう一つの態様において、本発明はmof5-IのPRP19遺伝子(CDC40としても知られている)〔ジョーンズ(Jones)等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995;バイスマン(Vaisman)等,Mol.Gen.Genetics,247:123-136;ビジャラハバン(Vijayraghavan)等,Genes & Dev.,1989,3:1206-1216]の対立遺伝子として同定することにも関連する。 これら遺伝子の同定は、リボソームフレームシフトの効率に影響する薬剤の選別およびテストをもたらす。特定の一態様においては、ATPアーゼ活性、ヘリカーゼ活性または亜鉛フィンガーモチーフ立体配置を妨害する薬剤を、テストのために選別することを可能とする。このような薬剤は、ウイルス感染を治療するのに有用な薬物であり得る。というのは、多くのレトロウイルス、特にHIV、コロナウイルスおよびその他のRNAウイルスが、医学的および獣医学的病理と関連しているからである。フレームシフト事象を調節するタンパクを同定することにより、薬剤についての初期スクリーニングは、このようなタンパクに対する結合アッセイを含むことができる。結合薬剤のフレームシフト効率を左右する能力は、例えば本明細書に添付する実施例に記載するような、キラーアッセイ〔ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),.Virol.,1992,66:3669-3676〕を使用して、インビトロで測定できる。このアッセイを、ヒト由来の並びに酵母または他のヒト以外の起源(動物を含むがこれらに限定されない)のフレームシフト関連タンパクの活性に及ぼす、薬剤の有効性をテストするのに使用できる。 該フレームシフトを効率を増大または低下する薬剤は、ウイルス遺伝子により発現されるGag対Gag-polタンパクの比を変える。ある狭い範囲外のこの比の増加はウイルス粒子の集合過程を妨害する。というのは、多量のGa-polが利用できるからである。この比における低下はウイルス複製の抑制をもたらすが、その理由はpol発現のレベルが低過ぎるからである。何れの事象においても、最終的な結果はウイルス粒子製造の妨害である。特定の態様においては、フレームシフトを増大もしくは減少する抗生物質は、HIVに対して有効である。 本発明は、更に該ナンセンスmRNA崩壊経路と関連する遺伝子の同定にも関連する。特定の一態様において、UPF1はmRNA崩壊過程に関与していることが分かっており、またmof4-1中に見出されたUPF1の対立遺伝子はナンセンスmRNAを安定化した。 かくして、本発明は、該ナンセンスmRNA崩壊経路に関与するタンパクの機能に影響を与える薬剤の同定のためのスクリーニングアッセイを意図する。このような薬剤は、ナンセンスまたは短いmRNA転写物を安定化する能力についてテストすることができる。この経路に関与するタンパクの同定は、このような薬剤の合理的な選別を可能とする。ナンセンス−媒介崩壊に関する多くのアッセイが当分野で知られている(ツァン(Zhang)等,Mol.Cell Biol.,1995,15:2231-2244;ハガン(Hagan)等,Mol.Cell Biol.,1995,15:809-823;ペルツ(Peltz)等,Progress in Nucleic Acid Research and Molecular Biology,1994,47:271-298)。特定の一態様において、ATPアーゼ活性、ヘリカーゼ活性、または亜鉛フィンガーモチーフ立体配置を妨害する薬剤を、テストのために選別できる。 本発明の、更なる発見は、mRNA発現のための、特にフレームシフト解析のための組み換え遺伝子が、人為的な結果を生ずる可能性があることにある。これは、該フレームシフトサイトのレポーター転写物5'が短過ぎ、またその結果として分解機構により異常な転写物であると識別される可能性がある。この例において、該フレームシフトサイトにおける遺伝子の高い活性は、フレームシフト効率を増大する突然変異というよりも、ナンセンス−含有転写物を安定化する突然変異の結果であると考えられる。本発明は、この問題を最初に確認し、従って該翻訳機構により異常なナンセンス−含有mRNAとして認識される、短い転写物の急速な分解の問題を解決する方法を提供する。 この最後の結果は、多数の異なる技術に関連する、重大な関連性をもつ。例えば、該崩壊経路を阻害し、またはナンセンス転写を安定化する薬剤の同定は、アンチセンスRNA技術の成功にとって重大である可能性がある。アンチセンスRNAは、相補性の領域における特異的ターゲットRNAと対をなす、小さな拡散性の、未翻訳のかつ高度に構造化された転写物であり、従ってターゲットRNA機能または発現を調節する。しかし、アンチンスRNA技術を適用しようとの試みは、限られた成功しか得られなかった。制限因子は、細胞中で、該アンチセンスRNAの十分な濃度を達成し、該ターゲット遺伝子の発現を阻害しまたは低下させるように考えられる。十分な濃度の達成に対する一つの障害は、該ナンセンス崩壊経路であると思われる。というのは、遺伝子生成物をコードしないと考えられる、該短いアンチセンスRNA転写物が、翻訳が起こる場合には、迅速な翻訳に導き、かつ結果として該細胞内における、該アンチセンスRNAの迅速な分解および存在率の低下を招く恐れがあろう。従って、異常なmRNA転写物を安定化する本発明の薬剤もまた、アンチセンスRNAを安定化できる。 ナンセンスmRNAの安定化能力は、ナンセンス突然変異と関連する諸疾患、例えばタラセミアの治療に関する重大な暗示を与える。任意の生物学的系を使用した場合と同様に、ナンセンス突然変異の幾分かの抑制があり、完全な長さのタンパク(これは1個のアミノ酸の置換または欠失を含んでいても、また含まなくともよい)の発現を結果するであろう。天然状態において、このように少量の完全な長さのタンパクが生成され、病理状態をもたらす。しかしながら、該ナンセンスmRNAを安定化することにより、「リードスルー」転写物である可能性は大幅に増大し、またこの病理的な表現型を克服するのに十分な発現を可能とする。 短いRNA転写物を安定化する能力は、また相互作用するタンパクを遺伝学的に同定するための、ツーハイブリッド系の開発のために役立つ。例えば、タンパクターゲットと相互作用する種々のペプチドを、このようなペプチドをコードするmRNAを安定化して、翻訳が可能となる場合には、アッセイすることができる。小さなペプチドライブラリーをコードするRNAは、不安定であり、これらを安定化するある試薬の不在下では、ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路により分解されるであろう。 また、この崩壊経路を不活性化し、かつ異常なRNAを安定化する株は、ツーハイブリッド系に対する有用なスクリーニング系であり得る。というのは、このような株の自然な傾向は、mRNAを安定化するからである。 リボソームフレームシフトは、多くのレトロウイルスおよびRNAウイルスにおける、遺伝子発現の重要な特徴である。更に、mRNA分解は遺伝子発現の調節における重要な制御点であり、かつ翻訳過程と関連していることが明らかにされている。この関連の明確な例の一つは、ナンセンス突然変異がmRNAの分解を促進するという観測である。本発明は、これら活性の何れかを媒介するタンパクを最初に同定した。 リボソームが翻訳読み取り枠をどのようにして維持するかを理解することは、翻訳制御およびウイルス学の分野に関する主な課題である。過去10年間に、幾つかの真核ウイルスが、リボソーム読み取り枠のシフトを誘発して、酵素機能をもつ遺伝子生成物の発現を調節することが示された。歴史的には、多数の異なる分子生物学およびウイルス学の分野における実験が、遺伝的に順応性のある宿主細胞/ウイルス系を開拓した。本発明は、一部には一つのこのような系、即ち酵母サッカロミセスセレビシアエのL-Aウイルスにおける、リボソームフレームシフトに関する研究に基づいている。これらの研究は、1)ウイルスmRNA配列および二次構造が、-1リボソームフレームシフトの効率を調節でき、2)-1リボソームフレームシフトの該効率が、L-AウイルスのM1サテライトウイルスの増殖にとって重要であり、また3)翻訳読み取り枠の維持(Maintenance Of translational reading Frame:mof)に関与する、酵母宿主染色体遺伝子生成物の変異体を、得ることができ、その多くが興味深い二次的な表現型を有することを明らかにした。第1A図は、該翻訳延長サイクルと、-1リボソームフレームシフトを説明する通常のモデルとを総括するモデルを示す。この総括モデルの検証は、リボソームA-およびP-サイト両者が占有されている、翻訳延長中に-1リボソームフレームシフトが起こるので、この事象は、EF-1αによるアミノアシル−tRNAの該A-サイトへの放出後であって、しかもEF-2媒介トランスロケーション(転座)の前に起こる必要があり、ペプチド結合形成およびペプチジル転移反応が、これらパラメータの範囲内で生じることを明らかにした。ペプチジルトランスフェラーゼ中心の形成に関与する、該酵母リボソームタンパクL3のフラグメントの過剰発現〔フライド&ワーナー(Fried and Warner),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1981,78:238;シュルツ&フリーセン(Schultz and Friesen),J.Bacteriol.,1983,155:8;シュルツ&ニーラウス(Schultze and Nierhaus),EMBO J.,1982,5:609]は、-1リボソームフレームシフトの効率を高め、かつ野性型細胞中のM1の喪失を促進する。従って、ペプチジルトランスフェラーゼ中心に影響を与える薬剤は、-1リボソームフレームシフトの効率およびウイルス増殖妨害効率に影響を与える。第1B図は、これとは対照的に、+1リボソームフレームシフトを指向するTylが特定のP-サイトtRNAのズレを必要とするので、この過程はこのような組の薬物により影響されないはずであることを示している。寧ろ、該P-サイトのみがペプチジル-tRNAにより占有されている期間中に、翻訳パラメータを変更するように機能するであろう条件は、+1リボソームフレームシフトの効率に影響を与えるものと予想されるであろう。 -1および+1リボソームフレームシフトを説明する従来のモデルは、この翻訳延長サイクルの内容中に組み込まれている。得られる「組み込みモデル」は、薬剤の同定に関する多大な予想上の価値を有し、該薬剤は何れかの方向にリボソームフレームシフトの効率を変え、順次、正確な形態形成を保証するためのリボソームフレームシフトに依存した、広範囲のウイルスを増殖する細胞の能力を損なうことが予想される。ヒト病原体として、これらはHIVを包含する殆どのレトロウイルス、並びに多数のdsRNAおよび(+)ストランドssRNAウイルス病原体を包含するであろう。この方法は、また獣医学におけるウイルス性疾患に対する用途および農業的な重要性をもつ。 このモデルでは、ペプチジル転移反応段階を介した、EF-1によるaa-tRNAの挿入および選別後、かつEF-2媒介翻訳前に、翻訳パラメータを変化する薬剤は、-1リボソームフレームシフトの効率を変えるはずである。従って、我々は真核リボソームの、該ペプチジルトランスフェラーゼ機能を特異的に標的とする、僅か2種の抗生物質を使用してテストしたに過ぎないにも拘らず、このモデルは、同一の段階で作用する他の薬剤(例えば、トリコデルミン群のセスキテルペン抗生物質)が、同様な結果を与えるはずてあることを予測する。 特に、本発明は、一部には、L-Aウイルスフレームシフトサイトにおける該フレームシフト効率を増大し、かつL-AサテライトウイルスM1の喪失を生ずる、染色体突然変異体として単離された、酵母中のmof対立遺伝子のサブセット(ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),Genetics,1994,136:75-86)が、ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路にも影響を与えるという発見に関連する。ナンセンス−含有mRNAのレベルは、mof4-1対立遺伝子を含有する細胞内で高く、またmof2-1、mof5-1およびmof8-1対立遺伝子を含む細胞内では、これよりも低いレベルである。 本発明は、更にmof4-1が、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に関与していることが立証されている、UPF1に対して対立遺伝子的であるという発見にも関連している。更に、mof2-1は、ヒト類似体を有するSUI1に対して対立遺伝子的であることが分かっており、またmof5-1は、PRP17/CDC40に対する対立遺伝子であることが分かっている。mof4-1のクローニングは実施例以下に記載され、実施例2はmof2-1のクローニングを示し、かつこの対立遺伝子の突然変異を同定し、第6図はmof5-1のクローニングを示す。 該UPF1遺伝子の遺伝学的および生化学的研究が、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路中の、Upf1p機能のメカニズムを理解するために、着手されている。我々の解析は、Upf1pが、mRNA代謝回転およびナンセンス抑制に影響を与える可能性のある、分離可能な活性をもつ、多機能タンパクであることを示唆している。突然変異は、該mRNA崩壊機能を不活性化し、かつleu2-2およびtyr7-1ナンセンス対立遺伝子の抑制を可能としない、該Upf1pの保存されたヘリカーゼモチーフ中に同定された。特に、一つの変異は、Upf1pのATP結合および加水分解モチーフ中に位置していた。このモチーフはアスパラギン酸およびグルタミン酸をアラニン残基(DE572AA)に変更し、ATPアーゼおよびヘリカーゼ活性に欠け、かつATPの不在下でUpf1p:RNA錯体を形成した。しかしながら、驚いたことに、このUpf1p:RNA錯体は、ATP結合の結果として解離した。この結果は、加水分解とは独立に、ATP結合が、この変異タンパクに関して、Upf1p:RNA錯体形成を調節できることを示唆している。更に、該Upf1pのアミノ末端システイン/ヒスチジンリッチの領域における突然変異が同定され、かつ清浄なナンセンス−媒介mRNA崩壊活性をもつが、leu2-2およびtyr7-1ナンセンス対立遺伝子の抑制を可能とするものとして、生化学的に特徴付けされた。これら変異タンパクの生化学的特徴付けは、これらが変更されたRNA結合特性をもつことを立証した。更に、ツーハイブリッド系を使用して、我々はUpf1p-Upf2pを特徴付けし、またUpf2p-Upf3p相互作用をも立証する。該Upf1pのシステイン/ヒスチジンリッチ領域における突然変異はUpf1p-Upf2p相互作用を撤廃する。これらの結果に基づいて、ナンセンス−媒介mRNA崩壊およびナンセンス抑制における該Upf錯体の役割は、該タンパクの別のドメインにより媒介されるように思われる。このことは、一方のまたは他方のドメインが、例えば組み合わせライブラリー技術または合理的薬物デザイン技術を利用した薬物開発のターゲットとし得る点において、薬物ターゲッティングと明白な関連性をもつ。 更なる局面において、クローンを、本明細書に記載のように調製したが、これはこのような変異体の一つ、mof2-1が該酵母のSUI1遺伝子の固有の対立遺伝子であることを立証している。sui1-1変異体は幾分高い-1リボソームフレームシフトの効率を有するが、mof2-1は、M1dsRNAサテライトウイルスの喪失を促進するSUI1の、唯一の公知の対立遺伝子である点で固有のものである。更に、-1リボソームフレームシフトは、これらの変異体が、+1方向のリボソームフレームシフトに何の影響も与えないという意味で、これら変異体により特異的に影響されない。該mof2-1突然変異は、また該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に影響を与える。この点に関連して、本件出願は、該mof2-1突然変異は、該崩壊経路を活性化するためには、最低下流側に2つのエレメントを必要とする点で、中間的ナンセンス−媒介mRNA崩壊表現型を有する。his4突然変異を抑制する能力は、mof2-1変異体がSui表現型をも有することを立証している。しかしながら、sui2およびSUI3変異体とは異なり、mof2-1変異体は、該GCN4遺伝子の発現を阻止することを可能としない。この遺伝子のヒト同族体の発現は、酵母における該変異表現型を修正することを可能とする。 これらの新しいデータを基にして、本発明は、該Sui1タンパク(Sui1p)が、翻訳の全ての段階に渡り、翻訳の忠実度を追跡する上である役割を演じていることを教示する。更に、翻訳における該Sui1/Mof2タンパクの役割を扱って、本発明は、このタンパクが、開始、延長および終止を包含する翻訳の全段階の、リボソームのプルーフリーディング機能において役立つことを示す。最近、sui1変異体の逆解析が、ssu(sui1のサプレッサー)と呼ばれる、5つのサプレッサー遺伝子座を同定し、これが制限された温度にてsui1変異体の成育を改善することを示した。Ssu1はリボソームタンパクS4 RPS4をコードし、またssu4はRPS26をコードする。RPS4は、E.コリS5、即ち公知のram(ribosomal ambiguity)変異体に相当する。Ramタンパクは、翻訳延長中の、リボソームP-サイト修正に関連していた。本発明は、更にバクテリアRamタンパクの酵母等価物との相互作用において、mof2-1は酵母ram変異体として作用するという仮説に基づいているが、これに制限するつもりはない。バクテリアRamタンパクの酵母等価物は、バクテリアS5=酵母RPS4=sup44およびバクテリアS5=酵母RPS13A=sup46である。 本発明は、更に1)SUP44および/またはSUP46が総合的にmof2-1により致死的であるか否か、2)野性型sup44およびsup46の過剰発現が該mof2-1表現型を抑制するか否かの検査を可能とし、また3)野性型のSui1pがリボソームと結合するか否か、およびリボソームを結合するための、該Sui1p(Sui1-1p、Mof2-1pおよびヒトSui1p)の異なる形状間の定性的な差異があるか否かの決定を可能とする。本発明は、更に該Mof2タンパク(Mof2p)が翻訳の忠実度の一般的なレギュレータであり、ヌクレオチド三燐酸(NTP)加水分解の際の刺激因子として機能することを仮定する。Sui1pはeIF5と物理的に相互作用し、該開始段階のGTP加水分解を刺激する。更に、ssu変異体の2種、即ちssu2およびssu3はそれぞれeIF5およびeIF2γをコードする。これらG-タンパク両者におけるサプレッサー変異を、G-タンパクに対する相同体を含む領域に写像するが、このことはこれらのサプレッサー変異体が、これらの翻訳開始ファクタ中のGTP加水分解活性を変更することにより、翻訳の忠実度を変えることを示唆している。従って、本発明は、1)精製した野性型のMof2-1p、Sui1-1pおよびhlSOSUI1pの、翻訳の延長段階に関与していることが知られている精製されたG-タンパク、即ちEF-1αおよびEF-2による、GTP加水分解に及ぼす作用を研究し、2)Sui1pのこれら形態の、Upf1pおよびその変異体による、ATP加水分解に及ぼす効果を研究し、3)mof2-1の、TEF2(EF-1αをコードする)、EF-2およびUPF1の対立遺伝子による、総合的な致死性を研究することを提案する。遺伝子の用量に関する実験は、EF-1α、EF-2またはUpf1pの過剰発現が、mof2-1またはsui1-1突然変異の何れかを阻害するか否かを示している。 本発明は、更にifs1およびifs2対立遺伝子(これらは以前に、マウス乳癌ウイルス由来の、-1リボソームフレームシフトシグナルにおけるフレームシフトを増強する突然変異として同定された)が、それぞれUPF2およびUPF1遺伝子に対する対立遺伝子であるという発見に関連する。但し、両ifsはM1を維持する。 更に、TCM1/MAK8遺伝子のN-末端の100アミノ酸の発現も、-1リボソームフレームシフトの効率を増大しかつL-AのM1dsRNAウイルスの複製を妨害する。更に、特異的なウインドウ内の延長に影響を与える他の非−抗生物質性薬剤も、-1リボソームフレームシフトの効率に影響を与えるはずである。 薬物濃度の適当な範囲を決定するために、アニソマイシンおよびスパルソマイシンの細胞成長に及ぼす効果をアッセイした。我々は、0.76-38μMの範囲の濃度のアニソマイシンおよび0.52-2.6μMの範囲の濃度のスパルソマイシンが30%(データは示さず)未満で、全体としての細胞成長率を阻害することを測定した。これら範囲の薬物濃度を、更にインビボ研究のために選択した。RNA崩壊におけるリボソームフレームシフトおよびナンセンス 該mof変異体の同定において使用する方法は、多量のβ-galを発現する細胞を見出したことによっている。-1リボソームフレームシフトの高い効率は、該IacZ遺伝子がL-A-1リボソームフレームシフトシグナルの下流側で、翻訳開始サイトに対して、該-1読み取り枠中にある場合に、β-galの高い発現をもたらすであろう。しかしながら、-1リボソームフレームシフト効率に影響を与えるもの以外の染色体による突然変異の結果として、同一の結果が観測される可能性がある。例えば、該lacZ遺伝子生成物の安定性を増大する突然変異またはその転写速度を増大する突然変異も、所定の結果を与えることができた。最も興味深い可能性は、該lacZレポーターmRNAの半減期を増大する突然変異であろう。 該mof変異体の全てを、そのUpf特異的mRNA崩壊表現型(11)についてテストした。 内因性のCYH2プリカーサmRNAの半減期は、upf変異体において増大することが知られているので、該CYH2プリカーサRNAの存在率は、mof2-1、mof5-1およびmof8-1変異体中で僅かに増大し、またこれはmof4-1細胞中で大幅に増大した。mof2-1、mof4-1、mof5-1、mof7-1およびmof8-1の変異体ナンセンス−媒介mRNA崩壊表現型は、僅かに一つのDSEを含む、ミニ-PGK1レポーター構築体を使用して増大される。DSE数の増大は、特にmof2-1変異体おいて、この変異体表現型を減ずる。 相補性テストは、mof2-1、mof5-1およびmof8-1が、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路における如何なる公知の突然変異にも対応しないことを明らかにした。mof4-1は、該UPF1遺伝子の対立遺伝子として同定された。mof4-1とupf1-2細胞との交雑により得られた2倍体細胞は、該mof4-1パートナーから識別できるβ-gal活性を有しており、これら細胞中の該CYH2プリカーサの存在率は高いレベルに維持された。該UPF1遺伝子を含有する、単一のコピー動原体を主体とするプラスミドの、mof4-1細胞への導入は、両変異体表現型を修正することを可能とし、一方UPF2遺伝子を含有する類似のプラスミドまたはベクターのみの導入は、該mof4-1細胞の変異体表現型に対して何の影響も与えなかった。 -1リボソームフレームシフトレポーターmRNAの半減期はupf変異体中で増大するが、これらを翻訳するリボソームは、同一の効率でフレームシフトし続けるであろう。かくして、upf変異体はβ-galアッセイによりmof変異体から識別できないが、upf変異体は、Gag対Gag-polの比が影響されずに残されるので、M1ウイルスを維持できるはずである。しかしながら、-1リボソームフレームシフト効率に及ぼす影響によって、真のmof変異体はM1を増殖できないはずである。該Upf表現型をもつ上記4種のmof変異体中の3種、即ちmof2-1、mof4-1およびmof5-1が、M1を増殖できず、従ってこれらが真のmof変異体である。弱いUpfナンセンスmRNA崩壊変異体表現型をもつmof8-1のみがM1を維持できる。 mof4-1のクローニングおよび特徴付けは、翻訳延長過程を理解するための、および如何にして我々が、特異的にリボソームフレームシフトをターゲッティングする抗−ウイルス剤の合理的開発に向けて、我々の見識を適用できるかを理解するためのモデルである。UPF1の対立遺伝子であるmof4-1は、これがM1サテライトウイルスを維持できない唯一の、既知のUPF1に対する対立遺伝子である点で興味深い。-1リボソームフレームシフトの高い効率およびナンセンス−mRNAの高い存在率によって、UPF1の対立遺伝子であるmof4-1は、突然変異体の新しい組を規定する。このmof4-1対立遺伝子を配列決定し、かつこれがアミノ酸62、即ち推定亜鉛フィンガー中の第一のCys残基におけるシスチン(Cys)対チロシンミスセンス突然変異からなることを決定した。我々のデータは、該mofおよびupf変異体により規定される現象間に関連性があることを立証しており、このことは、mRNA安定性から該完全なタンパク生成物の合成により、該翻訳過程の連続性を解明している。mof4-1は、また翻訳阻害剤パロモマイシンに対して敏感であり、また-1リボソームフレームシフトの効率は、パロモマイシン濃度を増やすことにより高めることができる。このことは、-1リボソームフレームシフトの効率が、特定の薬物により調節可能であり、また広範な薬理的関連性を有していることを示している。 該CYH2プリカーサmRNAの蓄積に及ぼす該mof変異体の効果の研究に加えて、他のナンセンス−含有mRNAの存在率も測定した。これらのmRNAは、異なる終止コドン(UUA,UAG,UGA)、NheIサイトに挿入された停止コドンをもつHIS4遺伝子(HIS4-UGA(Nhe))および該コード領域内の異なる位置にナンセンスコドンを含む完全な長さのPGK1遺伝子(PGK1-n-UAG-AU)((25,57)および構築物については第2A〜2D図を参照)を含む、ミニ-PGK1対立遺伝子によりコードされる。これらmRNAの安定性は、以前にUpf遺伝子生成物に依存することが明らかにされた。 該mof2-1、mof5-1およびmof8-1細胞内のミニ-PGK1およびHIS4-UAG(Nhe)対立遺伝子のmRNAレベルは、殆どmof4-1およびUpf細胞と同程度であり、また停止コドンの型には無関係であった。興味あることに、PGK1遺伝子内の停止コドンの位置は、特にmof2-1の場合に、ナンセンス−媒介mRNA崩壊表現型に影響を与える。H2(3)突然変異において、該UAGターミネーターは、下流側エレメント全ての前に生じ、また僅かに2つの、H2(2)突然変異の(既知の)下流側エレメント5'のみが存在する。mof2-1細胞における、該PGK-n-UAG-AUmRNA(ここで、ナンセンスコドンは、該下流側エレメントが翻訳された後に生ずる)のレベルは、野性型の細胞にみられるものと一致する。これは興味深い発見であり、またこれら異なる効果に関するテスト可能な仮説を以下に説明する。 上記観点から、本発明がリボソームフレームシフトに影響を与える多数の経路を提供するものであることが明らかであり、該リボソームフレームシフトは抗−ウイルス療法および病理的ナンセンス突然変異の抑制と重要な関連性をもつ。より重要なことに、2種の抗生物質およびリボソーム結合タンパク,L3の約100-アミノ酸N-末端セグメントが、正常なフレームシフトおよびナンセンス崩壊経路を破壊する。かくして、本発明は抗−ウイルス性化合物として使用する薬物を提供し、またリボソームの崩壊を変更することである。 本明細書で使用する用語「薬物(drug)」とは、ペプチジルトランスフェラーゼ中心の機能に影響を与える可能性のある化合物、例えば抗生物質またはタンパクを意味するものとする。このような化合物は、-1フレームシフト効率を増減でき、何れにしろ結果は抗−ウイルス作用を結果するタンパク発現の崩壊であり、またナンセンス突然変異を抑制できる。フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする遺伝子 本発明によれば、当分野の範囲内の公知の分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術を利用できる。このような技術は文献中に十分に説明されている。例えば、サンブルック、フィッシュ&マニアティス(Sambrook,Fritsch & Maniatis)の分子クローニング:ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),第2版(1989),コールドスプリングハーバーラボラトリープレス刊、コールドスプリングハーバー,N.Y.(以下サンブルック等,1989という);DNAクローニング:実際のアプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach),Vols.I & II(D.N.グローバー(Glover),1985);オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)(M.J.ガイト(Gait)編,1984);核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)[B.D.ハマス(Hamas)& S.J.ヒギンズ(Higgins)編1985)];Animal Cell Culture[R.I.フレッシュニー(Freshney)編,(1986)];Immobilized Cells And Enzymes[IRLプレス刊,(1986)];B.ペルバル(Perbal),A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);およびF.M.オースベル(Ausubel)等編,CurrentProtocols in Molecular Biology,ジョンウイリー&サンズ社(1994)を参照のこと。 従って、本明細書に現れる以下の用語は、以下に提示する定義を有する。 「ベクター」とはレプリコン、例えばプラスミド、ファージまたはコスミドであり、これに他のDNAセグメントが結合して、該付着したセグメントを複製することができる。「レプリコン」とは、任意の遺伝的エレメント(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)であり、インビボでのDNA複製の自律単位として機能する。即ち、それ自体の制御下で複製できる。 「カセット」とは、特異的な制限サイトにおいて、ベクターに挿入することのできるDNAセグメントを意味する。DNAの該セグメントは対象とするポリペプチドをコードし、また該カセットおよび制限サイトは、転写および翻訳のための、適当な読み取り枠中への該カセットの挿入を保証するように設計されている。細胞は、外来性またはヘテロロガスDNAが該細胞内部に導入された場合には、このようなDNAにより「トランスフェクション」される。細胞は、該トランスフェクションしたDNAが表現型の変化を行う場合には、外来性またはヘテロロガスDNAによって「形質転換される」。好ましくは、該形質転換DNAは、該細胞のゲノムを構成する染色体DNA内に組み込まれる(共有結合により結合される)べきである。 「ヘテロロガス」DNAとは、細胞中または該細胞の染色体サイト中には自然には存在しない。好ましくは、該ヘテロロガスDNAは該細胞にとって外来性の遺伝子を含む。 「核酸分子」とは、一本鎖または二本鎖ヘリックス形状の何れかの、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、またはその類似の任意の燐酸エステル、例えばホスホロチオエートおよびチオエステル等のポリマー形状の、燐酸エステルを意味する。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNAまたはRNA-RNAヘリックスが可能である。該用語、核酸分子および特にDNAまたはRNA分子とは、一次または二次構造の分子のみを意味し、任意の特定の三級形状に制限されない。従って、この用語は、二本鎖DNA、特に線状または環状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミドおよび染色体に見られる二本鎖DNAを包含する。特定の二本鎖DNA分子の構造を論ずる場合、DNAの非−転写ストランド(即ち、mRNAに相同性の配列を有するストランド)に沿った、5'〜3'方向における配列のみを与える正規の約定に従って、配列を記載することができる。 「組み換えDNA分子」とは、分子生物学的処理に付されたDNA分子である。 核酸分子は、該核酸分子の一本鎖形状が、温度および溶液のイオン強度等の適当な条件の下で、他の核酸分子とアニール処理することができる場合には、該他の核酸分子、例えばcDNA、ゲノムDNAまたはRNAと「ハイブリッド化可能」である(サンブルック等の上記文献参照)。温度およびイオン強度条件は、該ハイブリッド化の「ストリンジェンシー」を決定する。相同性核酸に関する予備的なスクリーニングのために、低ストリンジェンシーハイブリッド化条件(Tm55℃に相当)を使用できる(例えば、5x SSC,0.1% SDS,0.25%ミルクおよびホルムアミドなし、または30%ホルムアミド,5xSSC,0.5% SDS)。温和なストリンジェンシーハイブリッド化条件は、より高いTm、例えば40%ホルムアミド,5xまたは6x SCCに対応する。高ストリンジェンシーハイブリッド化条件は、最高のTm、例えば50%ホルムアミド,5xまたは6x SCCに相当する。ハイブリッド化は該2種の核酸が相補配列を含むことを要請するが、該ハイブリッド化のストリンジェンシーに依存して、塩基間の不適正塩基対合が可能である。核酸のハイブリッドに対して適当なストリンジェンシーは、該核酸の長さおよび相補性の度合い、当分野で周知の変数に依存する。2種のヌクレオチド配列間の類似性の度合いまたは相同性が大きい程、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTm値は大きい。核酸ハイブリッド化の相対的安定性(より高いTmに相当)は、以下の順に低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さ100ヌクレオチドを越えるハイブリッドについては、Tmを算出するための式が誘導されている(サンブルック等の上記文献,9.50-0.51を参照)。より短い核酸、即ちオリゴヌクレオチドとのハイブリッド化については、不適正塩基対合の位置は、より重要となり、該オリゴヌクレオチドの長さはその特異性を決定する(サンブルック等の上記文献,11.7-11.8を参照)。好ましくは、ハイブリッド化可能な核酸の最少の長さは、少なくとも約10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約15ヌクレオチドおよびより好ましくは該長さは少なくとも約20ヌクレオチドである。特定の一態様においては、「標準的ハイブリッド化条件」とは、Tm55℃を意味し、かつ上記のような条件を使用する。好ましい一態様において、該Tmは60℃であり、より好ましい態様においては、Tmは65℃である。 「相同性組み換え」とは、染色体中への、ベクターの外来DNA配列の挿入を意味する。好ましくは、該ベクターは、相同性組み換えのための特定の染色体サイトを標的とする。特定の相同性組み換えに対して、該ベクターは該染色体の配列に相同な十分な長さの領域を含んでいて、相補性結合および該染色体への該ベクターの組み込みを可能とするであろう。より長い相同性領域およびより大きな配列の類似性度は、相同性組み換えの効率を増大する可能性がある。 DNA「コード配列」は、二本鎖DNA配列であり、これは適当な調節配列の制御下に置かれた場合に、インビトロまたはインビボにて、細胞内でポリペプチドに転写され、翻訳される。該コード配列の境界は、5'(アミノ)末端における開始コドンおよび3'(カルボキシル)末端における翻訳終止コドンによって決定される。 コード配列は、原核配列、真核mRNA由来のcDNA、真核(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列等を包含するが、これらに制限されない。該コード配列を真核生物細胞中で発現しようとする場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は、通常該コード配列に対して3'側に位置するであろう。 転写および翻訳制御配列は、DNA調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネータ、等であり、これらは宿主細胞内でコード配列を発現するために準備される。真核細胞中では、ポリアデニル化シグナルは制御配列である。「プロモータ配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼと結合し、しかも下流側(3'方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を規定する目的で、該プロモータ配列は、その3'末端において、該転写開始サイトと結合しており、また上流側(5'方向)に伸びて、バックグラウンド以上の検出可能なレベルにて、転写を開始するのに必要な最低数の塩基またはエレメントを含む。該プロモータ配列内には、転写開始サイト(有利には、例えばヌクレアーゼS1を使用したマッピングにより規定される)並びにRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られる。 コード配列は、RNAポリメラーゼが該コード配列をmRNA内に転写した場合に、細胞中の転写および翻訳制御配列の「制御下」にあり、これは次いでトランス-RNAスプライシングされ、かつ該コード配列によりコードされるタンパクに翻訳される。 本明細書で使用する、文法上のあらゆる形態およびスペル上の変形を含む用語「相同性」とは、「共通の進化起源」をもつ、上科(例えば、免疫グロブリン上科)および種々の種(例えば、ミオシン軽鎖等)由来の相同性タンパクを包含する、タンパク間の関係を意味する(レック(Reeck)等,Cell,1987,50:667)。このようなタンパク(およびそのコード遺伝子)は、その高い配列類似性により反映されるように、配列相同性を有する。 従って、文法上のあらゆる形態を含む用語「配列類似性」とは、核酸と、共通の進化起源をもつ、あるいはもたないタンパクのアミノ酸配列との間の同一性の度合いまたは対応性を意味する(レック等の上記文献参照)。しかしながら、共通の利用および本出願において、「相同性」とは、副詞例えば「高度に」等で修飾された場合には、配列類似度を意味し、共通の進化起源を意味しない。 特定の態様においては、2つのDNA配列は、DNA配列の規定した長さに渡り、ヌクレオチドの少なくとも50%(好ましくは少なくとも約75%および最も好ましくは少なくとも約90または95%)が一致する場合に、「実質的に相同」または「実質的に類似」である。実質的に相同である配列は、例えばある特定の系に対して規定されたような、緊縮条件下でのサザンハイブリダイゼーション実験または配列データバンクにて入手できる標準的なソフトウエアを使用して、該配列を比較することにより、同定できる。適当なハイブリダイゼーション条件を規定することは、当業者の裁量の範囲内にある。例えば、マニアティス等の上記文献;上記のDNAクローニングVols.I & II;および上記のNucleic Acid Hybridizationを参照のこと。 同様に、ある特定の態様において、2つのアミノ酸配列は、30%を越えるアミノ酸が同一であるか、あるいは約60%を越えるアミノ酸が類似する場合(機能的に同等)に、「実質的に相同性」または「実質的に類似」である。好ましくは、該類似または相同性配列は、例えばGCG(ジェネティックスコンピュータグループ,プログラムマニュアルフォーザGCGパッケージ,バージョン(Genetics Computer Group,Program Manual for the GCG Package,Version)7,ウイスコンシン州、マディソン)パイルアップ(pileup)プログラムを使用して配列することにより同定される。 用語「相当(対応)する」とは、本明細書では、正確な位置が、類似度または相同性を測定している分子と同一または異なるか否かに関する、配列の類似または相同を言及するのに使用する。核酸またはアミノ酸配列の並びは、空白を含むことができる。従って、該用語「相当(対応)する」とは、該配列の類似性を意味し、またアミノ酸残基または核酸塩基の番号付けを意味しない。 本発明は、本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする遺伝子の単離を意図する。該タンパクとは、任意の真核生物、例えば酵母、動物、特に哺乳類または鳥類、およびより好ましくはヒト、または植物起源の、完全な長さのまたは天然産のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクを包含する。本明細書で使用する用語「遺伝子」とは、ポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を意味し、またcDNAおよびゲノムDNA核酸を含む。 ゲノムDNAであれ、cDNAであれ、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする遺伝子は任意の起源、特にヒトcDNAまたはゲノムライブラリーから単離することができる。このような遺伝子を得る方法は、上記のように当分野で周知である(例えば、サンブルック等の上記文献1989を参照のこと)。このような遺伝子の単離の特定の例をここに添付する実施例に示す。 従って、任意の真核細胞は、潜在的にフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする遺伝子の分子クローニング用の核酸源となり得る。このDNAは、クローニングしたDNA(例えば、DNA「ライブラリー」)から、当分野で公知の標準的手順により、化学合成、cDNAクローニング、またはゲノムDNAまたはそのフラグメントのクローニングによって得ることができる(例えば、サンブルック等の上記文献1989;グローバー(Glover),D.M.(編),DNAクローニング:実際のアプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach),MRLプレス社刊、オックスフォード,U.K.,Vol.I and IIを参照のこと)。ゲノムDNA由来のクローンは、コード領域以外に、調節およびイントロンDNA領域を含むことができ、cDNA由来のクローンは、イントロン配列を含まないであろう。該起源の如何に拘らず、該遺伝子は、その増殖のために、適当なベクター中に分子的にクローニングされなければならない。 ゲノムDNA由来の遺伝子の分子クローニングにおいて、DNAフラグメントが発生し、その幾つかは所定の遺伝子をコードするであろう。該DNAは、種々の制限酵素を使用して、特異的サイトで開裂することができる。また、該DNAをフラグメント化するために、マンガンの存在下で、DNAseを使用することができ、あるいは該DNAは、例えば超音波処理により、物理的に剪断することも可能である。次いで、該線状DNAフラグメントを、標準的技術、例えばアガロースおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動およびカラムクロマトグラフィー(これらに制限されない)を利用して、サイズに従って分離することができる。 一旦該DNAフラグメントが発生したら、該所定の遺伝子を含有する特定のDNAフラグメントの同定を幾つかの方法で達成することができる。例えば、該遺伝子の一部またはその特定のRNA、もしくはそのフラグメントのある量を入手でき、かつ精製しまた標識することができる場合、該生成したDNAフラグメントは、該標識したプローブに対して、核酸ハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることができる(ベントン&デービス(Benton and Davis),Science,1977,196:180;グルンシュタイン&ホグネス(Grunstein and Hogness),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1975,72:3961)。例えば、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクについて得られた部分アミノ酸配列情報に対応する一組のオリゴヌクレオチドを調製して、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードするDNAに対するプローブとして使用することができる。好ましくは、フラグメント、即ち本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクに対して著しく固有のフラグメントを選別する。該プローブに対して実質的な相同性をもつこれらのDNAフラグメントをハイブリッド化する。上記のように、相同性が高い程、より緊縮なハイブリダイゼーション条件を使用できる。その上、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクが翻訳にとって基本的であることから、これらは高度に保存性、即ち酵母からヒトまでに保存されている。従って、酵母または他の真核細胞中のこのようなタンパクの同定は、ヒトまたは他の動物のcDNAライブラリーから、このようなタンパクを容易に入手することを可能とする。 更なる選別を、該遺伝子の性質に基づいて実施することができ、例えば該遺伝子が、等電点、電気泳動性、本明細書に記載するような、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクのアミノ酸組成または部分的アミノ酸配列を有するタンパク生成物をコードするか否かに基づいて選別できる。かくして、該遺伝子の存在は、その発現生成物の物理、化学または免疫学的諸特性に基づくアッセイにより検出することができる。例えば、cDNAクローンまたは適当なmRNAをハイブリッド−選別するDNAクローンを選別することができ、これらは例えば類似するまたは同一の電気泳動移動度、等電点電気泳動または非−平衡pHゲル電気泳動挙動、タンパク分解消化マップ、またはフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクについて公知の抗原特性をもつタンパクを生成する。 本発明の遺伝子は、またmRNA選別、即ちインビトロ翻訳を伴う、核酸ハイブリダイゼーションにより同定することもできる。この手順において、ヌクレオチドフラグメントは、ハイブリダイゼーションによって相補性のmRNAを単離するのに使用される。このようなDNAフラグメントは、他の種由来のDNAを含有する、入手可能な精製されたDNAであり得、あるいは部分的アミノ酸配列情報から設計された合成オリゴヌクレオチドであってもよい。該単離されたmRNAのインビトロ翻訳生成物の免疫沈降分析または機能性アッセイにより、該mRNAおよびその結果としての該所定の配列を含む相補的DNAフラグメントが同定される。更に、特異的mRNAは、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクに対して特異的な、固定化された抗体に対する、細胞から単離したポリソームの吸着により選別することができる。 放射性標識したcDNAは、鋳型として、該選別されたmRNA(該吸着されたポリソーム由来の)を使用して、合成できる。次に、該放射性標識したmRNAまたはcDNAを、プローブとして使用して、他のゲノムDNAフラグメントの中から、相同性のDNAフラグメントを同定することができる。 本発明は、また本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの類似体および派生体(これらはフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクと同一のまたは相同な機能活性を有する)をコードする遺伝子、並びに他の種由来のその同族体を含有するベクターをクローニングすることにも関連する。フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクに関連する類似体および派生体の生成および使用は、本発明の範囲内にある。特定の態様においては、該類似体または派生体は機能的に活性である。即ち、本発明の完全な長さの、野性型フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクと関連した、1以上の機能的活性を示すことができる。 フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク派生体は、機能的に等価な分子を与える、置換、付加または削除による、コード核酸配列の変更により製造できる。好ましくは、元のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクに相対的に、改良されもしくは増大された機能活性をもつ派生体を製造する。 ヌクレオチドコード配列の縮重のために、フレームシフトまたはmRNA崩壊遺伝子と実質的に同一のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施のために使用することができる。これらは対立遺伝子、他の種を由来とする相同性遺伝子、このような遺伝子の全てまたは一部を含み、該配列内で同一のアミノ酸残基をコードする種々のコドンの置換により変更され、従って沈黙変化を生成するヌクレオチド配列を包含するが、これらに限定されない。同様に、本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクは、主アミノ酸配列として、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクのアミノ酸配列の全てまたは一部を含むもの、例えば機能的に等価なアミノ酸残基を、該配列内の残基と置換して、保存性のアミノ酸置換を与えるような変更された配列を包含するが、これらに限定されない。例えば、該配列内の1またはそれ以上のアミノ酸残基を、機能的に等価なものとして作用する、同様な極性をもつ他のアミノ酸で置換(沈黙変換をもたらす)することができる。該配列内のアミノ酸の置換は、該アミノ酸の属する組の他の構成員から選択することができる。例えば、非−極性(疎水性)のアミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを包含する。極性かつ中性のアミノ酸はグリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを包含する。正に帯電した(塩基性の)アミノ酸は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを包含する。負に帯電した(酸性の)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を包含する。このような変更が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または等電点により決定したような見掛けの分子量に影響を与えるとは予想されない。 本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク派生体および類似体をコードする遺伝子は、当分野で公知の種々の方法で製造できる。該遺伝子の製造を結果する操作は、遺伝子またはタンパクレベル何れであってもよい。例えば、該クローニングしたフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク遺伝子配列は、当分野で公知の多数の方法の何れかにより、修飾することができる(サンブルック等の上記文献,1989)。この配列は、制限エンドヌクレアーゼにより、適当なサイトで開裂し、必要ならば更に酵素的に修飾し、単離し、かつインビトロで連結することができる。フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの派生体または類似体をコードする遺伝子の製造においては、該修飾された遺伝子が、該所定の活性をコードすべき該遺伝子の領域中で、翻訳停止シグナルにより妨害されることなく、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク遺伝子と同一の翻訳読み取り枠内に維持されるように、注意すべきである。 更に、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク−コード核酸配列を、インビトロまたはインビボにて変異誘発して、翻訳、開始および/または終止配列を生成および/または破壊し、あるいはコード領域に変化を形成し、および/または新たな制限エンドヌクレアーゼサイトを形成し、もしくは前に存在したサイトを破壊し、更にインビトロ修飾を簡略化することができる。好ましくは、このような突然変異は、変異したフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク遺伝子生成物の機能的活性を増強する。当分野で公知の変異誘発技術の何れも使用でき、インビトロサイト−特異的変異誘発(ハッチンソン(Hutchinson),C.等,J.Biol.Chem.,1978,253:6551;ゾラー&スミス(Zoller and Smith),DNA,1984,3:479-488;オリファント(Oliphant)等,Gene,1986,44:177;ハッチンソン等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1986,83:710)、TAB(登録商標)リンカー(ファルマーシア(Pharmacia))の使用等を包含するがこれらに制限されない。サイト−特異的変異誘発のためには、PCR技術が好ましい(ヒグチ(Higuchi),1989,“DNAの操作のためのPCRの利用:PCRテクノロジー:原理およびそのDNA増幅のための応用(Using PCR to Engineer DNA,in PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification),H.エーリッヒ(Erlich)編,ストックトンプレス刊、第6章,pp.61-70)。 次に、この同定され、かつ単離された遺伝子を、適当なクローニングベクター中に挿入することができる。当分野で公知の多数のベクター−宿主系を使用することができる。使用可能なベクターは、プラスミドまたは変性されたウイルスを含むがこれらに制限されないが、該ベクター系は使用した宿主細胞と相容性である必要がある。ベクターの例は、E.コリ、バクテリオファージ例えばλ誘導体、またはプラスミド、例えばpBR322誘導体またはpCU例えばpGEXベクター、pmal-c、pFLAG等を含むがこれらに制限されない。クローニングベクターへの挿入は、例えば該DNAフラグメントを、相補性付着末端を有するクローニングベクターに接合することにより達成できる。しかしながら、該DNAをフラグメント化するのに使用した該相補性の制限サイトが、該クローニングベクター中に存在しない場合には、該DNA分子の末端を酵素的に修飾することができる。また、任意の所定のサイトを、ヌクレオチド配列(リンカー)を該DNA末端に結合することにより製造でき、これらの接合したリンカーは、特別に化学的に合成された、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードするオリゴヌクレオチドを含むことができる。 組み換え分子を、形質転換、トランスフェクション、感染、電気穿孔法等によって、宿主細胞中に導入して、該遺伝子の多数のコピーを生成することができる。 好ましくは、該クローニング遺伝子はシャトルベクタープラスミド上に含まれ、該シャトルベクタープラスミドは、クローニング細胞例えばE.コリでの拡張をもたらし、また必要な場合には、適当な発現細胞系への後の挿入のための精製を容易にする。例えば、1種以上の型の生物中で複製し得るベクターであるシャトルベクターは、E.コリプラスミド由来の配列と、酵母2μプラスミド由来の配列とを連結することにより、E.コリおよびサッカロミセスセレビシアエ中での複製を通して調製できる。 もう一つの方法において、該所定の遺伝子は、「ショットガン」法によって、適当なクローニングベクター中に挿入した後に、同定しかつ単離することができる。例えば、サイズ分画による該所定の遺伝子の濃縮は、該クローニングベクターに挿入する前に行うことができる。フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの発現 フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク、またはキメラタンパクを包含する機能的に活性なその派生物をコードするヌクレオチド配列は、適当な発現ベクター中に、即ち該挿入されたタンパクコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクター中に挿入することができる。このようなエレメントを、本明細書では「プロモータ」と呼ぶ。かくして本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする該核酸は、本発明の発現ベクター中で、プロモータと機能可能に結合している。cDNAおよびゲノム配列両者は、このような調節配列の制御下でクローニングされ、かつ発現することができる。発現ベクターは、また好ましくは複製開始点を含む。 必要な転写および翻訳シグナルは、組み換え発現ベクター上に与えることができ、あるいはこれらはフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする本来の遺伝子および/またはそのフランキング領域により供給できる。 強力な宿主−ベクター系は、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等)で感染した哺乳動物細胞、ウイルス(例えばバクロウイルス)で感染させた昆虫細胞系、酵母ベクターを含有する酵母等の微生物、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNAで形質転換したバクテリアを包含するがこれらに制限されない。ベクターの発現エレメントは、その強度および特異性において変化する。使用した宿主−ベクター系に依存して、多数の適当な転写および翻訳エレメントの任意のものが使用できる。 本発明の組み換えフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク、またはその機能性のフラグメント、派生体、キメラ構築体または類似体は、組み換えにより該コード配列を組み込んだ後には、染色体的に発現できる。これに関連して、多数の増幅系の何れかを使用して、高レベルの安定な遺伝子発現を達成できる(サンブルック等の上記文献,1989を参照のこと)。 フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする核酸を含む組み換えベクターを組み込んだ細胞を、該細胞によって、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの発現をもたらす条件下で、適当な細胞培養培地内で培養する。 クローニングベクター内にDNAフラグメントを挿入するために、前に記載した方法の何れかを利用して、適当な転写/翻訳制御シグナルおよび該タンパクをコードする配列からなる遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。 これらの方法はインビトロ組み換えDNAおよび合成方法並びにインビボ組み換え(遺伝子組み換え)を含むことができる。 フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの発現は、当分野で公知の任意のプロモータ/エンハンサーエレメントにより調節できるが、これらの調節エレメントは、発現のために選択された宿主内で機能性である必要がある。フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク遺伝子発現を調節するのに使用できるプロモータは、SV40初期プロモータ領域(ベノア&シャンボン(Benoit and Chambon),Nature,1981,290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端リピート中に含まれるプロモータ(ヤマモト(Yamamoto)等,Cell,1980,22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモータ(ワグナー(Wagner)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1981,78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(ブリンスター(Brinster)等,Nature,1982,296:36-42)、原核細胞発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモータ(ビラ−カマロフ(Villa-Kamaroff)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1978,75:3727-3731)、またはtacプロモータ(ドゥボエ(DeBoer)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1983,80:21-25;サイエンティフィックアメリカンの「組み換えバクテリア由来の有用なタンパク(Useful proteins from recombinant bacteria) in Scientific American」,1980,242:74-94をも参照)、酵母または他の真菌類由来のプロモータエレメント、例えばGal4プロモータ、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモータ、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモータ、アルカリンホスファターゼプロモータ、および組織特異性を呈し、かつトランスジェニック動物で使用されている、動物転写制御領域、膵小胞体細胞内で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(スウィフト(Swift)等,Cell,1984,38:639-646;オルニッツ(Ornitz)等,コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)Symp.Quant.Biol.,1986,50:399-409;マクドナルド(MacDonald),Hepatology,1987,7:425-515)、膵臓β細胞内で活性な、インシュリン遺伝子制御領域(ハナハン(Hanahan),Nature,1985,315:115-122)、リンパ細胞内で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(グロスシェドル(Grosschedl)等,Cell,1984,38:647-658;アダムズ(Adames)等,Nature,1985,318:533-538;アレクサンダー(Alexander)等,Mol.Cell Biol.,1987,7:1436-1444)、精巣、胸部、リンパおよびマスト細胞内で活性なマウス乳癌ウイルス制御領域(レダー(Leder)等,Cell,1986,45:485-495)、肝臓内で活性なアルブミン遺伝子制御領域(ピンカート(Pinkert)等,Genes and Devel.,1987,1:268-276)、肝臓内で活性なα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(クラムラウフ(Krumlauf)等,Mol.Cell Biol.,1985,5:1639-1648;ハマー(Hammer)等,Science,1987,235:53-58)、肝臓で活性なαI-アンチトリプシン遺伝子制御領域(ケルセイ(Kelsey)等,Genes and Devel.,1987,1:161-171)、骨髄性細胞内で活性なβ−グロビン遺伝子制御領域(モグラム(Mogram)等,Nature,1985,315:338-340;コリアス(Kollias)等,Cell,1986,46:89-94)、脳内のオリゴデンドロサイト中で活性なミエリン塩基性タンパク遺伝子制御領域(リードヘッド(Readhead)等,Cell,1987,48:703-712)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(サニ(Sani),Nature,1985,314:283-286)、および視床下部において活性なゴナドトロピン放出ホルモン遺伝子制御領域(メイスン(Mason)等,Science,1986,234:1372-1378)を包含するが、これらに限定されない。 本発明のフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする核酸を含む発現ベクターは、4つの一般的な方法、即ち(a)所定のプラスミドDNAまたは特異的mRNAのPCR増幅、(b)核酸ハイブリダイゼーション、(c)選別マーカー遺伝子機能の存在または不在、および(d)挿入配列の発現により同定できる。該第一の方法では、該核酸をPCR法で増幅して、該増幅生成物の検出を可能とすることができる。該第二の方法においては、発現ベクター内に挿入された外来遺伝子の存在は、挿入マーカー遺伝子と相同な配列を含むプローブを使用した、核酸ハイブリダイゼーションにより検出できる。該第三の方法においては、該組み換えベクター/宿主系は、該ベクター中への外来遺伝子の挿入によって生ずる、ある「選別マーカー」遺伝子機能(例えば、β−ガラクトシダーゼ活性、チミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性、形質転換表現型、バキュロウイルス内での閉塞体の形成等)の存在または不在に基づいて同定され、かつ選別できる。もう一つの例において、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクをコードする核酸が、該ベクターの該「選別マーカー」遺伝子配列内に挿入された場合、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク挿入物を含有する組み換え体は、該フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク遺伝子機能が存在しないことによって同定できる。該第四の方法においては、組み換え発現ベクターは、該組み換え体により発現される、遺伝子生成物の活性、生化学的または免疫学的特性についてアッセイすることにより、同定できるが、該発現タンパクは機能的に活性な立体配置にあると推定される。 特定の組み換えDNA分子を同定し、かつ単離したら、当分野で公知の幾つかの方法を利用して、これを増殖することができる。適当な宿主系および成長条件が確立されると、組み換え発現ベクターを、増殖させ、大量に調製することができる。前に説明したように、使用可能な発現ベクターは以下のベクターまたはその派生体を包含するが、これらに制限されない。即ち、少数のみの名前を挙げるとすれば、ヒトまたは動物性ウイルス、例えばワクシニアウイルスまたはアデノウイルス;昆虫ウイルス、例えばバキュロウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(例えば、ラムダ);およびプラスミドおよびコスミドDNAベクターである。 好ましい態様においては、該フレームシフトタンパクは、ウイルス感染された細胞中で発現され、ウイルスによる死を阻止または排除する薬剤の能力を評価することができる。 もう一つの好ましい態様においては、該mRNA崩壊タンパクは、異常なmRNA転写物、例えばナンセンス転写物およびアンチセンス転写物または短い転写物と共に細胞内で同時発現され、薬剤の、該異常な転写物の安定性を高める能力を評価することができる。 ベクターは、当分野で公知の方法、例えばトランスフェクション、電気穿孔、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、燐酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体法によって、所定の宿主細胞内に導入される(例えば、ウー(Wu)等,J.Biol.Chem.,1992,267:963-967;ウー&ウー,J.Biol.Chem.,1988,263:14621-14624;ハートマット(Hartmut)等の1990年3月15日付け出願に関わるカナダ特許出願第2,012,311号を参照のこと)。タンパク活性に影響を与える薬剤のスクリーニング 当分野で公知の任意のスクリーニング技術を使用して、フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの機能に影響を与える薬剤について、スクリーニングすることができる。本発明は、小分子リガンドについてスクリーニングすることを意図している。 フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクの一次配列および該配列と既知の機能をもつタンパクとの類似性に関する知見は、タンパク活性に影響を与える可能性のある薬剤に関する初期の手掛かりを与えることができる。このような薬剤の同定およびスクリーニングは、該タンパクの構造上の特徴を、例えばX-線結晶学、中性子回折、核磁気共鳴スペクトル解析および構造決定用のその他の技術を利用して決定することにより、更に容易になる。これらの技術は、アゴニストおよびアンタゴニストの合理的設計または同定をもたらす。 もう一つの局面において、合成ライブラリー(ニーデルス(Needels)等,「オリゴヌクレオチドのコードした合成ペプチドライブラリーの生成およびスクリーニング(Generation and Screening of an Oligonucleotide encoded peptide library)」,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90:10700-4;ラム(Lam)等の1995年1月17日付けの米国特許第5,382,513号;ラム(Lam)等の国際公開第WO92/00252号;およびオールメイヤー(Ohlmeyer)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1993,90:10922-10926:これら各々を本発明の参考文献とする)等が、本発明の薬剤をスクリーニングするのに使用できる。 このスクリーニングは、該フレームシフトタンパクまたはmRNA崩壊タンパクを発現する組み換え細胞を使用して、あるいは精製した該タンパクを使用して実施できる。例えば、標識したタンパクの、組み合わせライブラリー中の分子に結合する能力は、上記文献に記載されているように、スクリーニングアッセイとして利用できる。アンチセンスRNAおよびリボザイム 本発明は、本明細書に提示する設計法を具体化し、もしくは該異常なmRNA崩壊経路がアンチセンスRNAまたはリボザイムの半減期を短縮して、これらを所定の目的に対して無効とする、即ち翻訳レベルで遺伝子の発現を妨害する可能性があるとの発見を利用する、アンチセンスヌクレオチドおよびリボザイムの調製にも拡張される。この方法は、アンチセンス核酸およびリボザイムを使用して、該mRNAをアンチセンス核酸によりマスキングし、あるいはこれをリボザイムで開裂することにより、特定のmRNAの翻訳を阻止する。 アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部と相補性である、DNAまたはRNA分子である(マルカス−セクラ(Marcus-Sekura),Anal.Biochem.,1988,172:298を参照のこと)。細胞内にて、これらは該mRNAとハイブリッド化して、二本鎖分子を形成する。該細胞はこの二本鎖形状にあるmRNAを翻訳しない。従って、アンチセンス核酸はmRNAのタンパクへの発現を妨害する。AUG開始コドンとハイブリッドを形成する分子および約50個のヌクレオチドを有するオリゴマーは特に有効である。というのは、これらは合成が容易であり、かつこれらを生物細胞中に導入する際に、より大きな分子よりも、少ない問題点をもたらすに過ぎないからである。アンチセンス法は、インビトロでの多くの遺伝子の発現を阻止するのに利用されている(マルカス−セクラ(Marcus-Sekura)の上記文献,1988;ハンバー(Hambor)等,J.Ex.Med.,1988,168:1237)。 リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと幾分類似した方法で、他の一本鎖RNA分子を特異的に開裂する能力をもつRNA分子である。リボザイムは、幾つかのmRNAが、その固有のイントロンを切除する能力をもつ、という観測に基づいて発見された。これらRNAの核酸配列を修飾することにより、研究者等はRNA分子内の特異的な核酸配列を認識し、これを開裂する分子を操作できた(セヒ(Cech),J.Am.Med.Assoc.,1988,260:3030)。これらは配列特異性であるので、特定の配列をもつmRNAのみが不活性化される。 研究者等は2種の型のリボザイム、即ちテトラヒメナー型および「ハンマーヘッド」−型のリボザイムを同定した。テトラヒメナー型のリボザイムは、4塩基配列を認識し、一方「ハンマーヘッド」−型のリボザイムは11〜18−塩基の配列を認識する。該認識配列が長い程、該ターゲットMRNA種内でより一層排他的に起こり易くなる。従って、ハンマーヘッド−型のリボザイムが、特異的なmRNA種を不活性化する上で、テトラヒメナー型のリボザイムよりも好ましく、18−塩基認識配列が、より短い認識配列よりも好ましい。抗−ウイルス療法 更に別の態様において、本発明は、フレームシフト効率を調節し、かくしてウイルスの複製またはウイルス粒子の集合に直接影響を与える薬剤を提供することにより、ウイルス感染を治療する手段を提供する。該天然産のL-A不安定サイト中の-1リボソームフレームシフトの効率は1.8%-2.0%である(16)。本発明の薬物または分子生物学的試薬を使用した、-1リボソームフレームシフト効率の変更は合成されるGag対Gag-polの比を変える。これは、結果としてウイルス粒子の集合およびRNAのパッケージングに影響を与え、該細胞の、ウイルスを増殖する能力に影響を与える。特に、該不安定サイト配列の変更は、-1リボソームフレームシフトの効率に影響を与える。この-1リボソームフレームシフトの効率は、また翻訳機構特にペプチジル転移反応中心と相互作用する、突然変異した細胞遺伝子生成物を導入することによっても影響される。分子生物学的および遺伝的方法両者を使用して、1.9%なるリボソームフレームシフトの効率が、構造タンパク対酵素性タンパクの最適の比を与えることを立証した。2〜3倍を越えるフレームシフト効率の変動は、ウイルスが変更された不安定サイトを含むL-A cDNAクローンによって支持されていようが、変異宿主細胞内の野性型のL-Aにより支持されていようが、該M1サテライトウイルスの喪失をもたらす。-1リボソームフレームシフト効率における僅かな変化であっても、M1コピー数を大幅に低下する。 本発明は、有利に基本的に-1リボソームフレームシフトメカニズムを利用している、ウイルスの抗−ウイルス(またはナンセンス抑制)療法において使用するための薬物およびこれを同定する方法を提供するが、該ウイルスは、4種の大きな動物ウイルス群と、3種の大きな植物ウイルス群を包含する。 例えば、殆ど全てのレトロウイルスが-1リボソームフレームシフトを利用しており、これらはレンチウイルス(免疫不全ウイルス)、例えばHIV-1、HIV-2、SIV、FIV、BIV、ビスナウイルス、関節炎−脳炎ウイルス、およびウマ伝染性貧血ウイルス、スプマウイルス(フォーミーウイルス)、例えばヒトフォーミーウイルスおよび他の哺乳動物フォーミーウイルス;T細胞リンパ栄養性(lymphotrophic)ウイルス、例えばHTLV-I、HTLV-II、STLVおよびBLV;ニワトリ白血病ウイルス、例えば市販の家禽を含む多くの鳥類の白血病および肉腫ウイルス;マウス乳癌ウイルスを含むB型レトロウイルス;およびメイソン−パイツァーサルウイルスおよびヒツジ肺腺癌ウイルスを包含するD型レトロウイルスを含む。更に、多くのコロナウイルスが-1フレームシフトを利用しており、これらウイルスはコロナヒトウイルス、例えば229-E、OC43;動物コロナウイルス、例えばウシコロナウイルス、ブタの伝染性胃腸炎ウイルス、ブタの血球凝集脳脊髄炎ウイルス、ブタの伝染性下痢症ウイルス;イヌコロナウイルス;ネコ伝染性腹膜炎ウイルスおよびネコ腸炎コロナウイルス;ニワトリ伝染性気管支炎ウイルスおよび七面鳥紫藍病ウイルス;マウスヘパティティスウイルス、ラットコロナウイルス、およびウサギコロナウイルスを包含する。同様に、トロウイルス(コロナウイルスの一種)も包含され、例えば腸および呼吸器系疾患と関連したヒトトロウイルス;子牛のブレダウイルスおよびウシ呼吸器ウイルス;ウマのベルヌ(berne)ウイルス;ブタのトロウイルス;ネコのトロウイルスを包含する。その他のコロナウイルスはアルテリウイルス(arterivirus)であって、これはサル出血熱ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス、レリスタッド(Lelystad)ウイルス(ブタ)、VR2332ウイルス(ブタ)および乳酸デヒドロゲナーゼウイルス(囓歯目)を包含する。他の動物ウイルスはパラミクソウイルスであり、例えば麻疹において報告されたヒト-1リボソームフレームシフト、およびアストロウイルス、例えばヒトアストロウイルス1〜5、およびウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、およびアヒルアストロウイルスを包含する。 -1フレームシフトメカニズムに関与している植物ウイルスは、テトラウイルス(tetraviruses)、例えばソベモウイルス(sobemoviruses)(例えば、いんげん豆南部モザイクウイルス、コックスフットモットルウイルス)、ロイテオウイルス(leuteoviruses)(例えば、オオムギ黄化萎縮ウイルス、ビート西部萎黄ウイルス、およびジャガイモ葉巻ウイルス)、エナモウイルス(enamoviruses)(例えば、エンドウモザイクウイルス)およびアンブラウイルス(umbraviruses)(例えば、ニンジンモットルウイルス)、トンバスウイルス(tombusviruses)、例えばトンバスウイルス(例えば、トマトブッシースタント(bushy stunt)ウイルス)、カルモウイルス(carmovirus)(例えば、カーネーション斑紋ウイルス)、ネクロウイルス(necrovirus)(例えば、タバコネクローシスウイルス)ジアントウイルス(dianthoviruses)(例えば、アカツメ草エソモザイクウイルス)およびマチオモウイルス(machiomovirus)(例えば、メイズクロロチックモットル(maize chlorotic mottle)ウイルス)を含む。 更に、トチウイルス(totiviruses)、例えばL-AおよびL-BC(酵母)および他の真菌ウイルス、ギラディアランブリア(giradia lamblia)ウイルス(腸内寄生体)、トリコネラバジネル(triconella vaginell)ウイルス(ヒト寄生体)、リーシュマニアブラジリエンシス(leishmania brasiliensis)ウイルス(ヒト寄生体)、および他のプロトゾアン(protozoan)ウイルスは、-1フレームシフトウイルスである。病原性ナンセンス突然変異の抑制 該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路は、突然変異原性事象を介する、後天的なナンセンスコドンを有する転写物の崩壊を調節する。従って、この経路は、明らかに遺伝子発現の調節に関与している。より重要なことに、この経路の調節は、ナンセンス突然変異による遺伝子発現の欠乏を克服できる。また、アンチセンスRNAは、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に対する基質であり得、その細胞濃度に於ける低下と、その遺伝子発現を阻止する能力の低下に導く。この経路を不活性化する突然変異または薬物は、「ナンセンス」RNAの存在率を増大し、結果としてアンチセンスRNAの遺伝子発現を阻止する効率を高める。 該mRNA崩壊経路の調節は、またある状態を治療するための大きな可能性を有している。ナンセンス突然変異は、疾患の発現をもたらす、多くの遺伝子において見られる。このような疾患(および対立遺伝子を含有するナンセンス)のリストは以下の通りである:非球状赤血球溶血性貧血(TPI)、β−タラセミア(β−GLOBIN)、高コレステロール血症(LDL RECEPTOR Lebanase対立遺伝子)、肺気腫(α-1 ANTITRYPSIN)、副腎過形成(STEROID-21 HYDROLASE(CYP21))、アポリポタンパクC-II欠乏症(APOLIPOPROTEIN C-II)、血友病B(FACTOR IXPORTLAND)、ベルナール−スリエ(Bernard-Soulier)症候群(GLYCOPROTEIN 1Bα)、フルクトース不耐性(ALDOLASE B)、インシュリン耐性(INSULIN RECEPTOR)、メープルシロップ尿疾患(α-KETOACID DEHYDROGENASE)、血栓症(PROTEIN S)、甲状腺腫および甲状腺機能低下症(THYROGLOBULIN)、慢性肉芽腫(CYTOCHROME B558)、サンドホッフ(Sandhoff)疾患(HEBX)、フォンウイルブランド(vonWillebrand)疾患タイプIII(vonWILLEBRAND FACTOR)、迂曲状萎縮症(ORNITHINEAMINOTRANSFERASE)、1,25-ジヒドロキシビタミンD3耐性くる病(VITAMIN DRECEPTOR)、球状赤血球症(ERYTHROCYTE BAND 3)、嚢胞性線維症(CFTR)および球状赤血球症(ERYTHROID ANKYRIN)。遺伝子療法およびトランスジェニックベクター 一態様において、変異リボソームフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクまたはそのポリペプチドドメインフラグメントをコードする遺伝子、あるいは野性型のリボソームフレームシフトまたはmRNA崩壊タンパクに対して特異的な、アンチセンスまたはリボザイムをコードする遺伝子を、インビボにてウイルスベクターに導入した。このようなベクターは、弱毒化したまたは欠陥のあるDNAウイルス、例えば単純疱疹ウイルス(HSV)、乳頭腫ウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ−関連ウイルス(AAV)等を包含するが、これらに制限されない。完全にあるいは殆ど完全にウイルス遺伝子を欠いた欠損ウイルスが好ましい。欠損ウイルスは細胞内に導入した後に、感染性をもたない。欠損ウイルスベクターの使用は、該ベクターが他の細胞を感染する可能性を考慮することなしに、特定の局所領域において、細胞に投与することを可能とする。従って、脂肪組織を特異的にターゲットとすることができる。特定のベクターの例は欠損ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター(カプリット(Kaplitt)等,Molec.Cell Neurosci.,1991,2:320-330)、弱毒化したアデノウイルスベクター、例えばストラットフォード−ペリコーデット(Statford-Perricaudet)等(J.Clin.Invest.,1992,90:626-630)に記載されたベクター、および欠損アデノ−関連ウイルスベクター(サムルスキー(Samulski)等,J.Virol.,1987,61:3096-3101;サムルスキー(Samulski)等,J.Virol.,1989,63:3822-3828)を包含するが、これらに限定されない。 インビボ投与については、好ましくは適当な免疫抑制治療を、ウイルスベクター例えばアデノウイルスベクターを使用して、該ウイルスベクターおよびトランスフェクションされた細胞の免疫不活化を回避する。例えば、免疫抑制サイトカイン、例えばインターロイキン-12(IL-12)、インターフェロン−γ(IFN-γ)、または抗−CD4抗体を投与して、該ウイルスベクターに対する体液性および細胞性免疫応答を遮断できる(例えば、ウイルソン(Wilson),Nature Medicine,1995を参照のこと)。更に、操作して最小数の抗原を発現するようにしたウイルスベクターを使用することが有利である。 もう一つの態様において、該遺伝子は、レトロウイルスベクター、例えばアンダーソン(Anderson)等の米国特許第5,399,346号;マン(Mann)等,Cell,1983,33:153;テミン等の米国特許第4,650,764号;テミン等の米国特許第4,980,289号;マルコービッツ(Markowitz)等,J.Virol.,1988,62:1120;テミン等の米国特許第5,124,263号;ドハティー(Dougherty)等による1995年3月16日付けで公開された国際特許公開第WO 95/07358号;およびクオ(Kuo)等,Blood,1993,82:845に記載されている米国特許第中に導入することができる。 ターゲット遺伝子放出は、1995年10月付けで公開された国際特許公開第WO 95/28494号に記載されている。 また、該米国特許第はリポフェクションによりインビボで導入することができる。過去10年間に、リポソームの、インビトロでの核酸の封入およびトランスフェクションの目的での使用は益々増えつつある。リポソーム媒介トランスフェクションに見られる困難および危険性を制限するように工夫された、合成カチオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクション用のリポソームを調製するのに使用できる(フェルグナー(Felgner)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1987,84:7413-7417;マッキー(Mackey)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1988,85:8027-8031を参照のこと)。カチオン性の脂質の使用は、負に帯電した核酸の封入を促進でき、また負に帯電した細胞膜との融合を促進する(フェルグナー&リンゴールド(Felgner and Ringold),Science,1989,337:387-388)。外因性の遺伝子を、特定の生物にインビボで導入するためのリポフェクションの利用は、幾つかの実際上の利点をもつ。特定の細胞に対するリポソームの分子ターゲッティングは、一つの有利を領域を表す。特定の細胞型に対するトランスフェクションの誘導が、細胞異質性をもつ組織、例えば膵臓、肝臓、腎臓、および脳において特に有利であろうことは明らかである。脂質は、ターゲッティングの目的で、化学的に他の分子と結合できる(マッキー(Mackey)等の上記文献を参照)。ターゲットペプチド、例えばホルモンまたは神経伝達物質およびタンパク例えば抗体または非−ペプチド分子を、化学的にリポソームと結合することができる。 また、該ベクターをインビボにて裸のDNAプラスミドとして導入することができる。遺伝子療法用の裸のDNAベクターは、当分野で公知の方法により、例えばトランスフェクション、電気穿孔、微量注入、性質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、燐酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体により、所定の宿主細胞に導入できる(例えば、ウー(Wu)等,J.Biol.Chem.,1992,267:963-967;ウー&ウー,J.Biol.Chem.,1988,263:14621-14624;ハートマット(Hartmut)等の1990年3月15日付け出願に関わるカナダ特許出願第2,012,311号を参照のこと)。 更なる態様において、本発明は、ペプチジルトランスフェラーゼ中心のモジュレータをコードする遺伝子(変異体フレームシフトまたはmRNA崩壊タンパク、またはアンチセンスRNA、あるいはこのようなタンパクをコードするmRNAに対して特異的なリボザイムに対する遺伝子を包含するが、これらに制限されない)と、無関係のアンチセンス核酸またはリボザイムに対する遺伝子両者を含む遺伝子療法発現ベクターを、協調的発現条件下で与えることにより、該特異的なDNA認識配列の制御下で、該ペプチジルトランスフェラーゼ中心における活性を調節する遺伝子生成物および治療用ヘテロロガスアンチセンスまたはリボザイム遺伝子の同時発現を提供する。一態様においては、これらのエレメントは別々のベクター上に与えられ、あるいはこれらエレメントは単一の発現ベクターに与えることができる。 本発明は、本発明の例として与えられる、以下の非−限定的実施例を参照することにより、よりよく理解することができる。実施例1:mof4-1、即ちUPF1/IFS2遺伝子の対立遺伝子は、mRNA代謝回転および- 1リボソームフレームシフト効率に影響を与える mRNAの分解は、遺伝子発現の調節における重要な制御点であり、また翻訳過程と関連性をもつことが明らかにされている。この関連性を示す明白な例の一つはナンセンス突然変異がmRNAの分解を促進するという観測結果である。本実施例では、L-Aウイルスフレームシフトサイトにおけるフレームシフト効率を増大し、かつL-AサテライトウイルスM1の喪失を生ずる、酵母中の該mof対立遺伝子(メンテナンスオブフレーム)のサブセットも、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に影響を与える。ナンセンス−含有mRNAのレベルは、該mof4-1対立遺伝子を含む細胞中で高められた。更に、mof4-1はUPF1に対して対立遺伝子的である。これは、該ナンセンス−媒介mRNA崩壊経路に関与していることが立証されている。該mof4-1対立遺伝子を含む細胞は、M1ウイルスを喪失するが、ナンセンス−媒介mRNA崩壊に関与している、その他のf対立遺伝子(即ち、upf1、upf2およびupf3)は、M1を維持している。以前マウス乳癌ウイルス由来の-1リボソームフレームシフトシグナルにおけるフレームシフトを増強する突然変異として同定された、該ifs1およびifs2対立遺伝子はそれぞれUPF2およびUPF1に対して対立遺伝子的であることが示され、また両ifs株はM1を維持した。該mof4-1株は、upf1Δ株よりもアミノグリコシドパロモマイシンに対してより高い感受性をもち、またフレームシフト効率はパロモマイシンの存在下で育成したmof4-1株内で増大する。これらの結果はUpf1pが、翻訳およびmRNA代謝回転両者における二重の機能をもつことを示している。物質および方法株および培地:使用したサッカロミセスセレビシアエの株を以下の第1表に列挙した。キラー表現型をテストするための4.7MBのプレート、YPAD、YPG、SDおよび合成完全培地は以前に報告した(ディンマン(Dinman)等,Genetics,1994,136:75-86)。第1表:本研究で使用した株遺伝学的方法およびアッセイ 酵母およびE.コリの形質転換を、前に記載されたようにして実施した〔ハガン(Hagan)等,Mol.Cell Biol.,1995,15:809-823;キュー(Cui)等,Genes & Dev.,1995,7:1737-1754;ヒー&ヤコブソン(He and Jacobson),Genes & Dev.,1995,9:437-454〕。細胞を、39℃にて、単一のコロニーについて画線培養することによりL-Aウイルスを除去し、L-Aの喪失をアガロースゲル分析により確認した。rho0細胞の生成、細胞質導入およびキラーテストを、以前に記載されたようにして実施した〔ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),J.Virol.,1992,66:3669-3676]。遺伝的交雑、胞子形成および4分子分析、β−ガラクトシダーゼアッセイおよびキラーテストを、以前に記載されたようにして実施した〔ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),Genetics,1994,136:75-86]。dsRNAを以前記載したようにして調製し〔フライド&フィンク(Fried and Fink),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1978,75:4224-4228]、また1.2%アガロースゲルを介する電気泳動により分析した。種々の株のパロモマイシン感受性についてのテストを以前記載したように実施した〔キュー等の上記文献(1995)〕。プラスミドの構築 β−ガラクトシダーゼアッセイで使用したプラスミドpJD107およびpJD108は、それぞれpF8およびpT125から誘導した〔ディンマン(Dinman)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991,88:174-178]。pJD107の構築においては、pF8由来の4.9kbのHind IIIフラグメントを、Hind IIIで消化されたpRS426〔クリスチャンソン(Christianson)等,Gene,1992,110:119-122]に接合し、これはPGK1プロモータ、翻訳開始サイトを含み、-1リボソームフレームシフトシグナルを含むL-Aの218bpcDNAフラグメントを伴う。これは、またlacZ遺伝子を伴い、これは該開始サイトに関して、-1フレーム内にある。pJD108は、pRS426のHind IIIサイトにクローニングされたpT125の4.7kbHind IIIフラグメントを含み、該lacZ遺伝子は、如何なる介在配列もなしに、該O-フレーム内にある。pYCp33UPF1およびpYCp33UPF2は前に記載されたようにして構築した(キュー(Cui)等の上記文献(1995))。該mof4-1対立遺伝子をクローニングするのに使用したプラスミドpmof4AE、pmof4ABおよびpmof4BEは、以下のようにして構築した。即ち該UPF1遺伝子を含有するpYCp33UPF1由来の1.47kbAsp718-EcoRIフラグメントまたは2.6kb Asp718-BamHIフラグメントを削除し、PCR法(以下を参照)により単離した該mof4-1対立遺伝子の対応するフラグメントで置換した。pmof4BEは、mof4-1由来の4.2kb EcoRI=BamHI DNAフラグメントを、pyCplac33に挿入することによりクローニングした。該pYCp33UPF1は、1以上のBstXIサイトを含むので、pmof4XAEおよびpmof4XBEは、2段階で構築した。pPUC-UPF1由来の978bp BstXI-Asp718 DNAフラグメントを、それぞれpmof4AEおよびpmof4BE由来のBstXI-Asp718 DNAフラグメントで置換し、pPUCmof4XAEおよびpPUCmof4XBEを形成した。これら2つのプラスミド由来の該4.2kb BamHI-EcoRIフラグメントをpYCplac33にクローニングした。mof4-1突然変異の同定 該mof4-1対立遺伝子を同定するために、PCR法を使用した。UPF1遺伝子由来のPCR DNAフラグメントについて使用したプライマは、プライマ-1: 5'-CCGGAATTCATGAACGGGAAA-3'(SEQ ID NO:8);プライマ-2: 5'-GACCGGCCGTAACGGACGTTGTAATACAT-3'(SEQ ID NO:9);プライマ-3: 5'-ATCCCCGCGGGAGTTGAAAGTTGCCATC-3'(SEQ ID NO:10);プライマ-4: 5'-GACGGATCCAAAGTATATTGGAC-3'(SEQ ID NO:11)であった。ゲノムDNA(50-100ng)を、該mof4-1株から調製し〔ローズ(Rose)等,Methods in Yeast Genetics,コールドスプリングハーバープレス刊(1990)〕、PCRにおける鋳型として使用した。それぞれ、プライマー対、プライマ-1およびプライマ-2を、該DNAフラグメントの合成に使用して、pmof4AEを構築し(第4図)、プライマ-3およびプライマ-4を使用して、DNAフラグメントを合成し、pmof4ABを構築し(第4図)、プライマ-1およびプライマ-4を使用して、pmof4BEを構築した(第4図)。2つの異なる反応からの2種のPCR生成物をクローニング反応で使用して、PCRからの人工物を最小化した。使用したPCR条件は、以下の通りであった。95℃−5分間、94℃−1分間、45または50℃−1分間、72℃−1.5分間、25サイクル。PCRからのDNAフラグメントを、1%アガロースゲルから精製し、YCplac33プラスミド上にある野性型のUPF1遺伝子の対応するDNAフラグメントと交換するのに使用した。結果 mof4-株中のCYH2前駆体及びナンセンスを含むPGK1 mRNAの蓄積。既に同定された8種のmof突然変異体[Dinman及びWickner(1994)の上記文献]を分析して、それらがナンセンス介在性mRNA崩壊経路の活性に影響するか否かを測定した。 不十分にスプライシングされたCYH2 RNA前駆体(これは5'末端付近にイントロンを含む)の存在量がこの崩壊経路の活性の良好なモニターであることが実証されていた[Haganら,(1995)の上記文献;Cuiら,(1995)の上記文献;Heら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7034-7038(1993)]。細胞中のナンセンス介在性mRNA崩壊活性の状態は、CYH2前駆体対CYH2 mRNAの存在量の比をRNAブロットで比較することにより容易に測定し得る。 CYH2前駆体及びCYH2 mRNAの存在量をupf1-、UPF1+(野生型)、及び種々のmof対立遺伝子を有する細胞中でRNAブロッティング分析によりモニターした。図2Aに示されるように、CYH2前駆体の存在量は野生型UPF1+ MOF+細胞中で低かったが、upf1-株中で少なくとも5倍増加した。mof突然変異体中のCYH2前駆体存在量の調査は、mof4-1対立遺伝子がupf突然変異体で既に観察された存在量と同様のCYH2前駆体レベルを上昇したことを実証した(図2A)。また、CYH2前駆体の存在量はmof2-1対立遺伝子、mof5-1対立遺伝子及びmof8-1対立遺伝子を有する細胞中で上昇されたが、upf株またはmof4-1株中と同じ程度ではなかった(図2A)。CYH2 mRNA存在量はこれらの細胞中で影響されなかった(図2A)。 mof4-1対立遺伝子を更に特性決定した。何となれば、それはCYH2前駆体の最大の蓄積を生じたからである。その他のナンセンスを含むmRNAがmof4-1対立遺伝子により影響されるか否かを測定するために、ナンセンスを含むmini-PGK1対立遺伝子(その存在量は細胞中のUPF1状態に感受性である[Zhangら,Mol.Cell.Biol.15:2231-2244(1995)])をmof4-1株に導入した。野生型及びナンセンスを含むPGK1 mRNAの存在量をRNAブロッティングにより測定し、その結果はナンセンスを含むPGK1転写産物がupf1-2中のレベルと同様に野生型細胞中のその存在量と較べてmof4-1株中で10倍増加することを実証した(図2B)。野生型PGK1mRNAの存在量はいずれの細胞中でも変化しなかった(図2B)。 mof4-1はUPF1遺伝子の対立遺伝子である。次に本発明者らはmof4-1が先に特性決定されたUPF遺伝子の対立遺伝子であるか否かを測定した。mof4-1株をupf1Δ株またはupf2Δ株と交配し、CYH2前駆体存在量を二倍体細胞中でモニターした。 CYH2前駆体存在量はmof4-1xupf2Δ細胞中で低かったが(データは示されていない)、mof4-1xupf1Δ細胞中で高く、その存在量は半数体upf1Δ株中で観察された存在量と等しかった(図2C)。更に、mof4-1対立遺伝子を有する株をUPF1遺伝子、UPF2遺伝子、またはベクター単独を有する動原体をベースとするプラスミドで形質転換し、CYH2前駆体の存在量をモニターした。UPF1遺伝子の単一コピーで形質転換されたmof4-1株はCYH2前駆体の濃度を野生型UPF1+細胞中で観察されたのと同じレベルに低下する(図2C、レーン1−2及び7)。UPF2遺伝子、またはベクター単独を有するプラスミドはmof4-1株中のCYH2前駆体の存在量を低下しなかった(図2C、レーン3−4及び5−6)。更に、pJD107及びpJD108により測定された-1リボソームフレームシフティング効率はmof4-1細胞及びupf1-細胞の両方中で高められ、UPF1遺伝子がmof4-1株中のフレームシフティング効率を野生型レベルに低下することができた(データは示されていない)。これらの結果は、MOF4がUPF1の対立遺伝子であることを示す。 最近、Lee及び同僚[Leeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6587(1995)]は酵母中の2種の増加フレームシフト(ifs)突然変異体を同定した。マウス乳癌ウイルスgag-pol接合部からの-1リボソームフレームシフトシグナルの下流に酵母CUP1遺伝子を含む構築物を使用して、ifs突然変異体をcup1Δ細胞中で銅感受性の損失により同定した。これらの両方が、β−ガラクトシダーゼ活性により測定して、野生型細胞よりも約2倍大きい-リボソームフレームシフティング効率を有していた。IFS1遺伝子をクローン化し、配列決定した。IFS1配列及びUPF2配列の本発明者らの比較は、それらが同一であることを実証した[Cuiら,(1995)上記文献;He及びJacobson,(1995)上記文献]。また、本発明者らは、ifs2及びmof4-1がβ−ガラクトシダーゼアッセイにより同じ補体グループに入ること及びifs2のIfs-表現型がUPF1遺伝子により修正し得ること(データは示されていない)を測定した。ifs1突然変異体株及びifs2突然変異体株の両方がM1を増殖することができ(表2、下記を参照のこと)、これらの突然変異が2倍未満で-1リボソームフレームシフティング効率に影響することを示した。表2.キラー表現型の特性決定及び薬剤感受性*L-A及びM1を細胞質導入により細胞に導入した。キラー表現型をキラープレートアッセイにより分析し、M1 dsRNAウイルスを維持する能力をRNAブロット分析によりモニターした。†株#1及び#2を-Leu液体培地で増殖させ、続いてロイシンを欠いている最小培地に塗布した。パラモマイシン1.0mgを含むディスクを細胞のローンに入れた。プレートを30℃で4日間インキュベートした後に、増殖抑制の領域の直径を測定した。株#3、#4、#5、#6及び#7はmof4-1または示されたプラスミドを有するmof4-1(UPF1::URA3[染色体からのmof4-1対立遺伝子の欠失)である。これらの細胞をウラシル及びロイシンを欠いている培地で試験した。 upfΔ対立遺伝子またはupf1-2対立遺伝子と違って、mof4-1対立遺伝子はM1ウイルスの維持に影響する。次に本発明者らはナンセンス介在性mRNA崩壊経路を不活化する突然変異がM1 dsRNAウイルスを維持することができるか否かを測定した。L-A及びM1をUPF1遺伝子のmof4-1対立遺伝子、upf1Δ対立遺伝子、upf1-2対立遺伝子、upf2Δ対立遺伝子、upf3-1対立遺伝子、upf4-1対立遺伝子、ifs1-1対立遺伝子及びifs2-1対立遺伝子を有する株に細胞質導入により導入し、これらの細胞をキラー毒素に感受性である細胞のローンにレプリカ塗布した。M1を維持する細胞はキラー毒素を分泌し、増殖抑制のリングが観察される[Dinman及びWickner,(1992)上記文献]。 これらの実験の結果が表2に要約され、mof4-1対立遺伝子を有する細胞のみがキラー表現型を維持することができなかったことを示す。キラー表現型の損失と一致して、1.8kb M1 dsRNAはmof4-1細胞中に存在せず、mof4-1突然変異体細胞がまたキラー表現型の維持(Mak)を有し、即ち、それらがM1を増殖することができないという先の観察を確かめた(表2、図3)。upf1対立遺伝子、upf2対立遺伝子、upf3対立遺伝子、upf4対立遺伝子、ifs1対立遺伝子及びifs2対立遺伝子を有する細胞はM1 dsRNAを維持した(表2)。M1を維持する上でのmof4-1対立遺伝子とupf1Δ対立遺伝子及びifs2対立遺伝子の相違は、mof4-1対立遺伝子がmRNA崩壊及び-1リボソームフレームシフティングの効率の両方を変化するUPF1遺伝子中の特定の突然変異であることを示唆する。 幾つかの結果は、Mak表現型が細胞内の二次突然変異ではなくmof4-1対立遺伝子の結果であることを実証する。動原体プラスミドでmof4-1細胞に導入された単一コピーUPF1遺伝子はM1を維持するmof4-1細胞の能力を救済し、一方、ベクター形質転換細胞は効果を有しなかった(表2、#3を#4と比較のこと)。更に、UPF1遺伝子をmof4-1対立遺伝子を有する細胞中の染色体から欠失すると、キラー表現型を回復した(表2、#5)。MOF+L-A+、M2+株とかけ合わされたmof4-1対立遺伝子を有する細胞の四分子分析はキラー+及びキラー-表現型の2:2分離を実証した(図3)。更に、これらの胞子クローンからの全核酸のRNA分析は、1.8kb M1 dsRNAバンドがMOF+胞子クローン中に存在し、mof4-1胞子クローン中に不在であることを示す(図3)。 mof4-1対立遺伝子を有する細胞はパロモマイシンに一層感受性である。翻訳中実度を低下する突然変異を有する株は、酵母中でミスリーディングの頻度を増大すると考えられる薬剤であるアミノグリコシド抗生物質パロモマイシンに高感受性であることが示されていた[Palmerら,Nature,277:148-150(1979);Singhら,Nature,277:146-148(1979)]。mof4-1対立遺伝子を含む株のパロモマイシン感受性を測定した。mof4-1株、プラスミドのUPF1遺伝子を有するmof4-1株、及び動原体プラスミドのmof4-1対立遺伝子を含み、またはそれを欠いているmof4-1株(そのUPF1遺伝子が欠失された)(mof4-1(UPF::URA3))を増殖させ、パロモマイシン感受性を薬剤を含むディスクのまわりの増殖抑制の領域を比較することによりモニターした。結果は、mof4-1対立遺伝子を有する株が野生型upf1遺伝子またはupf1Δ対立遺伝子を有する細胞よりもパロモマイシンに感受性であったことを実証する(表2、#2を#1と比較し、#4を#3または#5と比較のこと)。mof4-1株と違って、upf1Δ株は野生型UPF1+株よりもパロモマイシンに感受性ではなく、これは先に報告された結果[Leedsら,Mol.Cell.Biol.,12:2165-2177(1992);Cuiら,(1995)上記文献]と一致する。パロモマイシンに対するこれらの株の感受性はmof4-1対立遺伝子の結果であった。何となれば、UPF1をmof4-1株の染色体から欠失すると、それをパロモマイシンに対し野生型UPF1遺伝子を有するmof4-1株と同じ位に耐性にしたからである(表2、#3及び#5)。加えて、親mof4-1株から単離されたパロモマイシン耐性コロニーはM1を維持し、かつ野生型-1リボソームフレームシフティング効率を有した(データは示されていない)。これらの3種の表現型の同時復帰(co-reversion)は、それらが全てUPF1遺伝子のmof4-1対立遺伝子に連関していることを示す。 また、野生型株及びmof4-1株中のLacZ遺伝子の発現に関するパロモマイシンの効果をモニターした。細胞を異なる濃度の薬剤の存在下で液体培地中で増殖させ、β−ガラクトシダーゼ活性を測定し、アッセイに使用した細胞の数について標準化した。mof4-1株中のβ−ガラクトシダーゼ活性を測定し、結果はLacZ発現が次第に増加する濃度で着実に上昇することを実証した(表3)。野生型株または野生型UPF1遺伝子を有するmof4-1株中のβ−ガラクトシダーゼ活性はパロモマイシンの添加により影響されなかった(表3)。一緒になって、これらの結果は、パロモマイシンがmof4-1中の欠損を悪化させることを示し、パロモマイシンがmof4-1株中で-1リボソームフレームシフティングの効率に影響し得ることを示唆する。表3.mof4-1株中のLacZ遺伝子発現に関するパロモマイシン効果*細胞はpT125(0-フレーム対照)またはpF8(-1リボソームフレームシフトテスター)[Dinmanら,(1991)上記文献]を含むJD474-5Aであった。パロモマイシンを01 OD495/mlで接種した細胞に添加し、30℃で4時間増殖させた。β−ガラクトシダーゼ活性を測定し、%-1リボソームフレームシフティングを(pF8/pT125)x 100%により計算した。pT125を含む細胞及びpT125+pUPF1を含む細胞の平均β−ガラクトシダーゼ活性は夫々50.1±7.5及び48.9±であった。 mof4-1突然変異の同定。UPF1遺伝子がクローン化され、配列決定されていた[Leedsら,(1992)上記文献;Altamuraら,J.Mol.Biol.,224:575-587(1992)]。UPF1遺伝子の演繹アミノ酸配列は、それがそのアミノ末端付近の亜鉛フィンガーモチーフを有する109KDタンパク質をコードし、かつATP結合RNA/DNAヘリカーゼスーパーファミリーグループIの一員として分類されるのに適したモチーフを有することを示す[Altamuraら,(1992)上記文献;Koonin,TIBS,17:495-497(1992)]。次に本発明者らはmof4-1表現型を生じる一つ以上の突然変異を同定したいと思った。適当なプライマーを使用して、mof4-1株からのUPF1遺伝子の5'の1/3または3'の2/3に相当するPCR産物を単離し、野生型UPF1とmof4-1対立遺伝子の間のハイブリッド遺伝子を調製した(図4A)。加えて、mof4-1株からの完全UPF1遺伝子をまたPCRにより合成した。これらのプラスミドをupf1Δ株に形質転換し、CYH2前駆体存在量をこれらの株中で測定した。CYH2前駆体は、野生型UPF1遺伝子の5'セグメントがmof4-1対立遺伝子からの5'フラグメントで置換されたハイブリッド(図4、pmof4AE1-2)を含む細胞、またはプラスミドpmof4BE1-2(これはUPF1遺伝子の完全mof4-1対立遺伝子をコードする)を含む細胞中で豊富であった。 CYH2前駆体の濃度はプラスミドpmof4AB1-2(これはその遺伝子の3'の2/3がmof4-1対立遺伝子からのDNAフラグメントで置換されたハイブリッドUPF1遺伝子を含む)(図4、pmof4AB1-2)を有する細胞中で低かった。これらの結果は、mof4-1対立遺伝子中の突然変異がUPF1遺伝子の5'の1/3中に位置されることを示す。これらの知見と一致して、mof4-1対立遺伝子の5'の1/3部分を含むハイブリッドのみがパロモマイシンに感受性であった(表2、#6及び#7)。 mof4-1対立遺伝子の5'領域のDNA配列(1150nt;EcoRI-Asp718DNAフラグメント)をプラスミドpmof4AE1及びpmof4BE1の両方から決定した(図4)。この部分と野生型UPF1の比較は、システインコドンをチロシンに変える、単一G→A突然変異がシステインに富む領域中のヌクレオチド586にあることを明らかにした(図4)。また、プラスミドpmof4AE2及びpmof4BE2からの両方のmof4-1対立遺伝子が同じG→A突然変異を含んでいた(データは示されていない)。Cys→Tyr突然変異がMof4表現型をもたらしたことを確かめるために、野生型UPF1遺伝子からの900bp BstX1-Asp718DNAフラグメントをmof4-1突然変異を有するプラスミドpmof4AE1またはpmof4BE1からの類似DNAフラグメントで置換した(図4、pmof4XAE及びpmof4XBE)。ハイブリッドUPF1遺伝子を有する細胞はmof4-1株と同じ特徴を有し、上昇したCYH2前駆体存在量を有し、パロモマイシンに一層感受性であった(表2、図4)。検討 ここに示された結果は、mof2-1対立遺伝子、mof4-1対立遺伝子、mof5-1対立遺伝子、及びmof8-1対立遺伝子(これらはL-Aフレームシフト部位でプログラムされた-1リボソームフレームシフト効率を増大する突然変異と同定された[Dinman及びWickner,(1994)上記文献])がまたナンセンスを含むCYH2前駆体及びmini-PGK1 mRNAの存在量を増加することを示し、これらの突然変異がナンセンス介在性mRNA崩壊経路の活性を部分的または完全に停止することを示唆する(図2A)。mof4-1対立遺伝子を含む株はナンセンス介在性mRNA崩壊の活性に最大の影響を有し、UPF1遺伝子の対立遺伝子であることが示された(図2)。UPF1遺伝子は配列決定されており、亜鉛フィンガー、NTP加水分解及びヘリカーゼモチーフを有する[Altamuraら,(1992)上記文献]。UPF1遺伝子分断はナンセンスを含むmRNAの安定化をもたらし、ナンセンス抑制表現型をもたらす[Leedsら,Genes &Dev.,5:2303-2314(1991);Cuiら,(1995)上記文献]。 mof4-1対立遺伝子及びupf1Δ対立遺伝子を含む株の両方がナンセンスを含むmRNAの存在量を増加するが、これらの対立遺伝子を有する株はかなり異なる表現型を有する。例えば、mof4-1株はupf1Δ株よりもアミノグリコシドパロモマイシンに感受性である(表2)。更に、mof4-1株と違って、upf1Δ株はM1キラーdsRNAウイルスを支持することができる(表2)。39nm L-Aコードされたウイルス粒子は十二面体対称を有し、59Gag二量体及びGag-PolのI二量体を含む[C-hengら,J.Mol.Biol.,224:255-258(1994)]。-1リボソームフレームシフティング効率の1.9%はGag対Gag-Polタンパク質の化学量論を決定する。-1リボソームフレームシフティング効率の効率の変化は、M1を増殖する細胞の能力に影響する[Dinman及びWic-kner,(1994)上記文献]。mof4-1株中のM1の損失は、フレームシフトを含むL-A mRNAを安定化することにより説明できない。cDNAクローンからのL-A mRNAの過剰発現は酵母細胞にMak表現型の反対であるスーパーキラー(Ski)表現型を与える[Wicknerら,J.Virol.,65:151-161(1991);Ma-sisonら,Mol.Cell.Biol.,15:2763-2771(1995)]。 本発明者らの結果は、UPF1遺伝子のmof4-1対立遺伝子がプログラミングされた-1リボソームフレームシフティング効率に特異的に影響し、合成されるGag対Gag-Pol生産物の比を変化することを示唆する。重要なことに、upf1Δ対立遺伝子、upf1-2対立遺伝子、upf2Δ対立遺伝子、upf3-1対立遺伝子(これらの全てがmof4-1対立遺伝子に均等なナンセンス介在性mRNA崩壊経路を不活化する)を含む株はM1の損失を促進しない(表2)。これは、L-AmRNAの単なる安定化がM1 RNAウイルスの損失をそれ自体促進しないという概念と一致する。一緒になって、これらの結果は、mof4-1がナンセンスを含むmRNAの存在量を上昇し、誘導された-1リボソームフレームシフティングの効率を増大し、これらの細胞をパロモマイシンに感作するUPF1遺伝子の特異な対立遺伝子であることを示唆する。 UPF1遺伝子中のコドン62における単一Cys→Tyr変化はUPF1遺伝子のmof4-1対立遺伝子を説明する(図4)。この突然変異はUPF1遺伝子のアミノ末端のシステインに富む領域中にある(図4)。mRNAターンオーバー及びナンセンス抑制におけるupf1pの役割を研究したUPF1遺伝子の遺伝子分析は、UPF1遺伝子のシステインに富む領域を除去するアミノ末端欠失がその崩壊活性を翻訳終止におけるその機能から分離することを実証した。亜鉛フィンガー領域が欠失されたupf1対立遺伝子を有する細胞はナンセンスを含む転写産物を有効に分解することができたが、その翻訳終止活性を不活化し、ナンセンス対立遺伝子の抑制を可能にした。 一緒になって、これらの観察は、upf1pがmRNA崩壊に関与する活性を有するだけでなく、翻訳プロセスの幾つかの局面を調節する活性を有することを更に実証する。この損傷はナンセンス介在性mRNA崩壊活性を不活化し、プログラムされた翻訳フレームシフティングを変化するので、mof4-1対立遺伝子は特異である。 ここに記載された結果は、フレームシフトリポータースクリーンのみの使用がリボソームフレームシフティング突然変異体を同定するのに不十分であることを実証する。upf1Δ突然変異体、upf1-2突然変異体、upf2-1突然変異体、upf2Δ突然変異体、upf3-1突然変異体、ifs1突然変異体、ifs2突然変異体、及びmof8突然変異体はリポータースクリーンで陽性のスコアになるが、M1 dsRNAウイルスの維持に影響しない(表2及び示されていないデータ)。こうして、MAK表現型が本発明者らにmRNAターンオーバーのみに影響する突然変異からリボソームフレームシフティング効率に影響する突然変異を区別させる。ウイルスパッケージングは合成されるGag対Gag-Polタンパク質の適切な化学量論を必要とする。これはリボソームフレームシフティングまたはナンセンス突然変異の抑制によりしばしば達成される。mof4-1細胞中の-1リボソームフレームシフティングの効率がパロモマイシンの増加用量に応じて上昇されることは重要である。何となれば、それは薬剤がフレームシフト効率を調節し得ることを実証し、リボソームフレームシフティングが抗ウイルス化合物の潜在的な標的として利用し得るという概念を支持するからである。これらのプロセスに関与する遺伝子産物及びこのプロセスを調節する薬剤の同定及び特性決定はウイルス疾患を治療する療法をもたらすことが予想される。実施例2:遺伝子レベル及び分子レベルにおけるmof2-1及びsui1-1の分析 mof2-1は、1)それがmof突然変異体の全ての-1リボソームフレームシフティング効率の最大の増加を与え、2)それがM1サテライトウイルスを増殖することができず、3)それが温度感受性であり、古典的細胞サイクル依存停止表現型を有し、かつ4)それがまた突然変異体ナンセンス介在性mRNA崩壊(Upf)表現型を有するという点で大いに重要である。SUII遺伝子のクローンはmof2-1突然変異体の温度感受性、フレームシフティング及びUpf表現型を補完することができた。この結果に基いて、この実施例は、A)mof2-1及びsui1-1を遺伝子レベル及び分子レベルで分析し、B)酵母SU11遺伝子のヒト同族体、hISOSU11がmof2-1細胞の種々の突然変異体表現型を補完することができるか否かを測定し、C)Mof2タンパク質(Mof2p)が翻訳再開始の速度を増大する翻訳中実度の一般的な調節因子及び/またはヌクレオチドトリホスフェート(NTP)加水分解の刺激因子であるという仮説を試験することを提案する。 mof2-1の遺伝子及び分子の分析。図5Aはmof2-1表現型を補完することができた最初のクローン(p18)の地図を示す。欠失分析は、SU11遺伝子を有するp18のサブクローンが1)ts-増殖欠損、2)ナンセンス介在性mRNA欠損、及び3)mof2-1細胞のMof表現型を補完することができたことを明らかにしていた。実験の最初の組を設計してMOF2がSU11の対立遺伝子であるか否かを測定した。sui1-1突然変異体とのmof2-1の遺伝子かけ合わせから生じた胞子クローンの全てが37℃における増殖について温度感受性であり、mof2-1及びsui1-1が同じ補体グループに属することを証明した。第二の実験において、SUII遺伝子の下流にある酵母DNAフラグメント(p18からのH3〜SalIフラグメント)を使用して、ベクターを組込むURA3系酵母を構築した。これをSphIで線状にし、mof2-1/野生型二倍体株からのDNAに組込んだ。フラグメントが染色体の一つの正確な位置に組込んだことを測定するサザン分析後に、二倍体を胞子形成し、得られる胞子クローンを分析した。Ura3+表現型は常にMof2-1表現型と同時分離し、p18からのDNA配列(これはSU11と物理的に結合される)がまたmof2-1遺伝子に物理的に結合されることを示した。一緒になって、これらのデータは、mof2-1がSU11の対立遺伝子であることを判明する。また、本発明者らは、SU11遺伝子を有するプラスミドがmof2-1突然変異体にM1サテライトウイルスを増殖させることを実証することができた。 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、SU11のmof2-1対立遺伝子をクローン化し、本発明者らは全遺伝子を配列決定することができた。配列分析は、mof2-1対立遺伝子がアミノ酸残基115を高度に保存されたグリシンからアルギニンに変化する単一G→A塩基突然変異から生じることを明らかにした(図5B)。これは特異なsui1対立遺伝子に相当する。その他のsui1対立遺伝子の全てがコンテキストLQGDQR(配列番号12)内の高度に保存されたD81アミノ酸残基及びQ82アミノ酸残基でクラスターにされる[Yoon及びDonahue,Mol.Cell.Biol.,12:248-260(1992)]。また、この図はヒト(配列番号1)、ヤブカ種(蚊)(配列番号2)、米(配列番号3)、S.cerevisiae(配列番号4)、及びメタノコッカス種(配列番号5)からのSU11同族体の比較配列を示す。 酵母SU11遺伝子のヒト同族体はmof2-1細胞のMof-及びナンセンス-介在性mRNA突然変異体表現型を補完することができる。幾つかの哺乳類開始因子は酵母細胞中のカウンターパート欠損を補完することができることが示され、SU11のヒト同族体(hSU111SO1)がクローン化され、配列決定されていた。Sui1p及びhSU111SO1pは60%の同一性及び80%の類似性を共有する(31)。hSU111SO1はmof2-1突然変異体の温度感受性、-1リボソームフレームシフティングの増大された効率、ナンセンス介在性mRNA崩壊、及びM1維持表現型を補完することができる。これらの実験は同種のヒト遺伝子及び酵母遺伝子の間の機能の保存を実証し、これらの2種の生物の基本的な生物学的類似性の別の例として利用できる。これらの観察は哺乳類系中の翻訳開始、翻訳延長、及びナンセンス介在性mRNA崩壊の間の連関についての本発明者らの研究に関して大いに助けになり、また-1リボソームフレームシフティングに影響する抗ウイルス剤の合理的設計に可能な標的として利用し得るタンパク質の同定方法を助ける。 Sui1の異なる形態を使用する更に別の遺伝子研究。mof2-1がSU11の特異な対立遺伝子であり、ヒト同族体がmof2-1表現型の全てを補完することができることを示したので、本発明者らは一連の実験を行ってリボソームフレームシフティング、ウイルス維持及び翻訳開始突然変異の抑制をもたらす翻訳ミスリーディングの間の遺伝子連関を調べた。これに最善に取り組むために、同質遺伝子酵母株を構築した。低コピーURA3ベクターに野生型SU11遺伝子を有する半数体細胞をsui1/酵母組込みベクターで形質転換し、SU11遺伝子の染色体コピーを分断した。サザン分析による分断の選択及び確認後に、野生型SU11遺伝子、mof2-1対立遺伝子、sui1-1対立遺伝子、またはhSU111SO1を有する低コピーTRP1ベクターをこの株に導入した。続いて、5-フルオロオロト酸(5-FOA)を使用して、URA3系ベクターを細胞からキュアリングし、TRP1ベクターのみを細胞中に残した。更に別の遺伝子分析がmof2-1、sui1-1、及びhISOSU11のMof表現型及びSui表現型の比較を調べた(表4及び5)。表4.同質遺伝子MOF2/SU11細胞中のフレームシフティング効率の特性決定*これらの実験を夫々の株からの少なくとも3種の異なるコロニー中で行った。β−ガラクトシダーゼ活性の単位を活性/OD600/時間として表し、それらは15%以上変化しなかった。M1dsRNAウイルスの維持または損失をM2キラーアッセイ及びアガロースゲルによるRNA電気泳動の両方により測定した。表5.SU11/MOF2株中のHis4UUG抑制*これらの実験を同質遺伝子SU11/MOF2株中で行った。数値は3種の独立のコロニー中の測定の平均であった。β−ガラクトシダーゼ活性を15%以下の変化で活性/OD-1リボソームフレームシフトの「完全なモデル」である。-1リボソームフレームシフトが、どのように翻訳の延長段階と関連しているかを示している。-1リボソームフレームシフトの「完全なモデル」である。Tyl媒介+1リボソームフレームシフトが、どのように翻訳の延長に関連付けられるかを示している。mof株における、ナンセンス−含有mRNAの、mRNAの存在比の特徴付けである。A)CYH2プリカーサおよびCYH2mRNAに関するmRNAの存在率は、MOF+(WT)、UPF1+(WT)、upf1および8個の異なるmof対立遺伝子を含む株由来のRNAの、RNAブロット解析により決定した。レーン当たり20μgのRNAを含有する、該RNAブロットを、放射性標識したCYH2プローブとハイブリッド化した。該CYH2プリカーサおよびそのスプライシングした生成物の模式的な表示は、オートラジオグラムとして以下に示されている。B)野性型のPGK1転写物およびナンセンス-含有ミニ-PGK1 mRNAについてのmRNAの存在率は、MOF+(WT)、mof4-1、およびupf1-2を含む株由来のRNAの、RNAブロット解析により決定した。このRNAブロットを、該PGK1遺伝子の放射性標識したDNAフラグメントとハイブリッド化した。該ナンセンス−含有ミニ-PGK1対立遺伝子および該野性型PGK1遺伝子の模式的な表示はオートラジオグラムの右側に示されている。C)該mof4-1株は、UPF1またはUPF2遺伝子のいずれかを含むベクターを含有する動原体プラスミドで形質転換し、かつmof4-1の2倍体細胞をupf1Δ株と交雑させた。該CYH2プリカーサのmRNA存在率は(A)に記載したように、RNAブロット解析により決定した。mof4-1とのM1同時分離体の維持およびキラー表現型。4分子分析を、該キラー表現型(K+)または二本鎖M1RNA(M-1)の何れかを維持しない、mof4-1株(JD474-3D)と野性型の株(JD742-2D;M+K+)との間の交雑(交雑体JD830)により行った。両親株は、染色体に組み込まれたLacZ遺伝子フレームシフト構築物を含んでいた(leu2-1:pJD85:ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),Genetics,1994,136:75-86)。各4分子由来の胞子を、そのβ−ガラクトシダーゼ活性、そのキラー表現型およびその二本鎖M1RNAの増殖能力について、以下の物質および方法において記載するようにして、アッセイした。各組の4分子(X軸)に対する該β−ガラクトシダーゼ活性(Y軸)を示し、また該胞子各々の、キラー表現型K+/K-)または該二本鎖M1RNA(M1+M1-)の何れかを維持する能力をも示す。該mof4-1対立遺伝子の欠陥の同定および特徴付け。パネルAに模式的に示した、野性型のUPF1とmof4-1対立遺伝子との間のハイブリッド遺伝子を、構築し、upf1Δ株内で形質転換し、該CYH2プリカーサ存在率を、図1に示したようにして、RNAブロット解析法により決定した。この解析のオートラジオグラムをパネルBに示す。パネルAにおける黒い矩形は該野性型UPF1遺伝子の配列を表し、一方斜線を施した矩形は該mof4-1対立遺伝子由来の配列を表す。該UPF1遺伝子のシステインに富む領域は、該野性型UPF1遺伝子における灰色の矩形で表されている。暗色の縦方向の線は、該mof4-1対立遺伝子内の突然変異の位置を表す。このmof4-1対立遺伝子を配列決定し、かつ該配列の変化を示した。パネルAに示した各ハイブリッド対立遺伝子に対して、2つの同等の構築体を、異なるPCR反応により調製し、パネルBにおいて下付番1または2で示した。パネルAに示された制限エンドヌクレアーゼは、以下の通りである:E1(EcorR1)、Bst(BstX1)、Asp(Asp718)、B1(BamHI)mof2-1をクローニングするためのクローニング法。mof2-1対立遺伝子中の突然変異を同定するための配列分析。mof5-1をクローニングするためのクローニング法。mof2-1もsui1-1も、GCN4発現を抑制しない。pSU11、pmof2-1、psui1-1またはPHUISOSUI1で形質転換した同質遺伝子性sui1Δ株を、以下のレポータープラスミドで同時形質転換した。pGCN4=該PCN4上流側制御領域+該lacZ遺伝子と融合された該GCN4構造遺伝子の最初の10アミノコドン。pORF1のみは、初めのGCN4上流ORF(uORF)のみを含み、他のuORFのAUGは除去された。pFG-lacZにおいて、uORF1はフレーム内でGCN4-lacZ融合により融合される。細胞を選択培地内で一夜育成し、中期対数増殖期まで希釈し、更に2時間成長させた。培養物を分断し、3-アミノトリアゾールを添加し、GCN4発現を解放した。6時間後に、β−ガラクトシダーゼ活性を測定した。発現解除細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性対発現抑制細胞のβ−ガラクトシダーゼ活性の比を図示した。野性型細胞と、mof2-1、sui1-1またはHUISOSUI1細胞との間のこれらの比における有意な差異は見られない。指定した濃度でアニソマイシン(A,C)またはスパルソマイシン(B,D)を指定した濃度で含有する選択培地(H-trp)を、プラスミドpTI25(O-フレームコントロール)、pF8(-1 L-A由来のリボソームフレームシフトテスター)[ジメネッツ(Jimenez)等,Biochem.Biophys.Acta,1975,383:427]またはpJD104(+1Tyl由来のリボソームフレームシフトテスター)[バラスンダラム(Balasundaram)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1994,91:172]を含有する、0.200 JD88細胞をO.D.550まで接種し、また30℃にて5時間インキュベートし、その後−ガラクトシダーゼ(-gal)活性を測定した(A,B)。この-gal活性は、pTI25から薬物を含まないコントロールに対する%として得た(C,D)。倍数は、該薬物を含まないコントロールと比較して、-1または+1リボソーム効率において変動する(-1=1.8%;+1=5.5%)。pJD136.0またはpJD136.-1(LEU2 CENベクター、その中にO-フレームコントロールまたは-1リボソームフレームシフトインジケータフラグメントの何れかを含むpTI25またはpF8由来のHind IIIフラグメントがクローニングされた)の何れかを含む1906細胞(MATa leu2 mak8-2 K MKT+)を、指定した濃度でアニソマイシンまたはスパルソマイシンを含有するH-Leu培地中でO.D.5500.2まで接種し、30℃にて5時間インキュベートし、その後−ガラクトシダーゼ(-gal)活性を測定した(A,B)。図8Aおよび8B図(C,D)については、上記のようにした。縦軸は、実際の-1リボソームフレームシフト効率を示す。図8に示したように、JD88細胞を、指定した濃度の薬物を含有するH-trp培地中で使用し、かつ-1リボソームフレームシフト効率を、30℃にて5時間のインキュベートの後測定した。JD88細胞を、指定した濃度のアニソマイシン(A)またはスパルソマイシン(B)の何れかを含有する、リッチ培地中で培養した。24、48、72、96または120時間後、細胞アリコートを取り出し、滅菌した水で2度洗浄し、リッチ培地上で画線培養し、30℃にて単一のコロニーとなるまで育成した。次いで、これらをインジケータプレート上にレプリカプレート法で培養し、そのキラー表現型について計数した。該キラー表現型の喪失は、非−キラー(K-)コロニー数を、コロニーの全数で割ることにより測定した。各データの組は、>100全コロニーに相当する。(A)72時間のデータの組における、各薬物濃度での単一の非−キラー(K-)コロニーを、無秩序に取り出し、全核酸(TNA)を抽出した〔ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),Virology,1992,66:3669]。ほぼ等量のTNAを、1%未変性TAE-アガロースゲルを介して分離し、エチジウムブロミドで染色した。4.6kbのL-AおよびL-BC並びに1.8kbのM1dsRNAバンドが示された。(B)RNAを(A)に示されたゲル内で変性し、ニトロセルロースに転写し、[32P]CTP標識したL-AおよびM1(+)ストランドRNAプローブにより、〔ディンマン&ウイックナー(Dinman and Wickner),Genetics,1994,136:75]に記載のようにして、ハイブリッド化した。インビトロでの-1リボソームフレームシフト。ルシフェラーゼを主成分とするレポーター系を、pT7-LUC 3'UTR-A50[ガリー(Gallie)等,Mol.Gen.Genet.,1991,288:258](ここでは、pLUC0と呼ぶ)に基づいて構築した。-1リボソームフレームシフトテストプラスミド構築体(pJD120、ここではpLUC-1という)は(5'〜3')AUG開始コドン、即ちL-A-1リボソームフレームシフトシグナル(pF8由来)を含み、ルシフェラーゼcDNAを伴い、該cDNAは該開始コドンに関連して、該-1読み取り枠内にある。メチル7pppGキャップをもち、ポリアデニル化されたmRNA転写物を、Dra I.T7 RNAポリメラーゼおよびmMessage mMachineインビトロ転写キット(アンビオン(Ambion))により線形化したpLUC0およびpLUC-1を使用して作成した。翻訳競合酵母抽出物を、酵母株JD696(MAT ura3-52[L-A-oM-o L-BC-o]から、イイズカ(Iizuka)等,Mol.Cell Biol.,1994,14:7322に記載のようにして作成した。20ngのLUC0またはLUC-1 mRNA、および指定した濃度のアニソマイシンまたはスパルソマイシンを、24℃にて1時間、15 1の該酵母抽出液と共に3回インキュベートし、各サンプルのルシフェラーゼ活性を、ルミノメーター(ターナー(Turner),Designs Model 20/20)を使用して測定した(A,B)。ルシフェラーゼ活性は、薬物を含まないコントロールに対する%として、該LUC0レポーターmRNAを使用して生成した(C,D)。-1リボソームフレームシフトの効率は、LUC-1レポーターmRNA由来のルシフェラーゼ活性を、LUC0コントロールmRNAにより発生する活性で割ることによって算出した。該LUC0またはLUC-1 mRNAを使用して、翻訳および-1リボソームフレームシフトに及ぼすアニソマイシンおよびスパルソマイシンの効果を、インビトロウサギ網状赤血球翻訳系において測定するのに使用した(Retic Lysated IVTキット,アンビオン)。図13におけるように、20ngのLUC0またはLUC-1 mRNAを使用して、これらのアッセイを実施した。アニソマイシンおよびスパルソマイシンはHIVの力価を減ずる。ウイルス生産細胞(#69 HIVgpt)を、指定した濃度のアニソマイシンおよびスパルソマイシンと共に、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM中でインキュベートし、また37℃にてインキュベートした。4日後に、ウイルス含有上澄を収穫し、一連の希釈を行い、ウイルスレポーター細胞(HELA T4)を、0.3mlの希釈した上澄溶液と共に3時間インキュベートし、その後これらを吸引し、3mlのDMEM/10%ウシ胎児血清で置換した。各希釈液を2回テストした。24時間後に、成長培地を、7μg/mlgptを含有するDMEM/10%ウシ胎児血清で置換して、非−感染細胞について選別した。引き続き培地を3日毎に交換した。14日後に、各希釈液に対してコロニー数を計数し、コロニー形成単位の全数を、希釈ファクタを3.33倍することにより決定した。(A)アニソマイシン(白抜きの正方形)またはスパルソマイシン(白抜きの菱形)で処理したヒト細胞のHIV力価。(B)未処理感染細胞に対する割合として表した、HIV力価における、アニソマイシン(白抜きのバー)またはスパルソマイシン(黒塗りのバー)の効果。(A)アニソマイシンの-1リボソームフレームシフトに及ぼす効果。(B)スパルソマイシンの-1リボソームフレームシフトに及ぼす効果。野性型のmof変異細胞を、指定した量の各薬物で処理し、その相対的なリボソームフレームシフトを評価し、薬物処理しなかった細胞に対して規格化した。UPF+およびUPF-株におけるナンセンス抑制に及ぼす、5μg/mlの濃度での薬物の効果。(A)株の成長。(B)標識。 真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心の機能を調節するための薬剤の製造における真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心に影響する薬剤の使用。 薬剤が抗生物質である請求項第1項に記載の使用。 薬剤がペプチジルトランスフェラーゼ中心インヒビターである請求項第1項または第2項に記載の使用。 薬剤がスパルソマイシン及びアニソマイシンからなる群から選ばれる請求項第1項、第2項、または第3項に記載の使用。 ウイルス感染症を治療するための請求項第1項〜第4項のいずれか一項に記載の使用。 HIV感染症を治療するための請求項第1項〜第4項のいずれか一項に記載の使用。 遺伝子中のナンセンス突然変異と関連する疾患を治療するための請求項第1項〜第4項のいずれか一項に記載の使用。 リボソームフレームシフティングに関与するタンパク質をコードする突然変異体遺伝子であって、その突然変異がリボソームフレームシフティングの効率の調節をもたらすことを特徴とする突然変異体遺伝子。 リボソームフレームシフティングの効率を増大する請求項第8項に記載の突然変異体遺伝子。 ナンセンスmRNA崩壊を調節する請求項第8項または第9項に記載の突然変異体遺伝子。 mof4-1、mof2-1、及びmof5-1からなる群から選ばれた請求項第8項、第9項、または第10項に記載の突然変異体遺伝子。 実験対照配列と作用上関連する請求項第8項〜第11項のいずれか一項に記載の突然変異体遺伝子を含むことを特徴とする実験ベクター。 リボソームフレームシフティングまたはmRNA崩壊を調節するための請求項第12項に記載の実験ベクターの使用。 ウイルス感染症を治療するための請求項第13項に記載の使用。 遺伝子中のナンセンス突然変異と関連する疾患を治療するための請求項第13項に記載の使用。 プログラミングされた-1リボソームフレームシフティングに関与するタンパク質をコードするmRNAとin vivoでハイブリッドを形成することができる核酸であって、そのタンパク質をコードする遺伝子の突然変異がリボソームフレームシフティングの効率の調節をもたらすことを特徴とする核酸。 アンチセンス核酸及びリボザイムからなる群から選ばれる請求項第16項に記載の核酸。 薬剤がmof4-1、mof2-1、及びmof5-1からなる群から選ばれる請求項第16項または第17項に記載の核酸。 実験対照配列と作用上関連する請求項第16項、第17項、または第18項に記載の核酸を含むことを特徴とする発現ベクター。 リボソームフレームシフティングまたはmRNA崩壊を調節するための薬剤の製造のための請求項第19項に記載の発現ベクターの使用。 ウイルス感染症を治療するための請求項第20項に記載の使用。 遺伝子中のナンセンス突然変異と関連する疾患を治療するための請求項第20項に記載の使用。 a)細胞を候補薬剤と接触させ、そして b)ペプチジルトランスフェラーゼの調節について分析することを含む真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心中で活性な薬剤のスクリーニング方法であって、ペプチジルトランスフェラーゼを調節する薬剤が真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心中で活性であることを特徴とするスクリーニング方法。 ペプチジルトランスフェラーゼの調節が i)mof1-1、mof4-1、mof2-1、mof5-1、mof6-1、及びhis4からなる群から選ばれた突然変異と関連する表現型を同定し、 ii)ナンセンスmRNAまたは短いmRNA転写産物の増大された安定性を検出し、 iii)チロシン及びロイシン生合成不全の突然変異体細胞系をチロシン及びロイシン欠乏培地で培養し、 iv)ウイルス感染細胞中のGagタンパク質対Gag-polタンパク質の変化した比を検出し、そして v)フレームシフティングイベントを調節するタンパク質に結合することからなる群から選ばれた方法により分析される請求項第23項に記載の方法。 リボソーム結合性タンパク質L3のN末端の100アミノ酸に相当するポリペプチド。 請求項第25項に記載のポリペプチド及び医薬上許される担体を含むことを特徴とする、+1リボソームフレームシフティングではなく、-1リボソームフレームシフティングの効率を増大するための医薬組成物。 ウイルス感染症の治療用薬剤の製造のための請求項第25項に記載のポリペプチドの使用。 請求項第25項に記載のポリペプチドをコードする核酸。 実験対照配列と作用上関連する請求項第28項に記載の核酸を含むことを特徴とする発現ベクター。 リボソームフレームシフティングを調節するための請求項第29項に記載の発現ベクターの使用。 ウイルス感染症を治療するための請求項第30項に記載の使用。 請求項第20項に記載の方法に従ってmRNA崩壊を調節することを特徴とする遺伝子中のナンセンス突然変異と関連する疾患の治療方法。 a)細胞を候補薬剤と接触させ、そして b)ペプチジルトランスフェラーゼの調節について分析することを含む真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心中で活性な薬剤のスクリーニング方法であって、ペプチジルトランスフェラーゼを調節する薬剤が真核生物のペプチジルトランスフェラーゼ中心中で活性であることを特徴とするスクリーニング方法。 ペプチジルトランスフェラーゼの調節が i)mof1-1、mof4-1、mof2-1、mof5-1、mof6-1、及びhis4からなる群から選ばれた突然変異と関連する表現型を同定し、 ii)ナンセンスmRNAまたは短いmRNA転写産物の増大された安定性を検出し、 iii)チロシン及びロイシン生合成不全の突然変異体細胞系をチロシン及びロイシン欠乏培地で培養し、 iv)ウイルス感染細胞中のGagタンパク質対Gag-polタンパク質の変化した比を検出し、そして v)フレームシフティングイベントを調節するタンパク質に結合することからなる群から選ばれた方法により分析される請求項第23項に記載の方法。 リボソーム結合性タンパク質L3のN末端の100アミノ酸に相当するポリペプチド。 請求項第25項に記載のポリペプチドを細胞に導入することを特徴とする、+1リボソームフレームシフティングではなく、-1リボソームフレームシフティングの効率を増大するための方法。 請求項第26項に記載の方法に従ってリボソームフレームシフティングを調節することを特徴とするウイルス感染症の治療方法。 請求項第25項に記載のポリペプチドをコードする核酸。 実験対照配列と作用上関連する請求項第28項に記載の核酸を含むことを特徴とする発現ベクター。 請求項第29項に記載の発現ベクター細胞に導入することを特徴とするリボソームフレームシフティングの調節方法。 請求項第30項に記載の方法に従ってリボソームフレームシフティングを調節することを特徴とするウイルス感染症の治療方法。 【課題】ペプチジル転移反応中心のターゲッティングに関与するタンパク、および対応する治療薬剤並びに治療方法を提供すること。【解決手段】酵母中のmof対立遺伝子のサブセットがナンセンス介在性mRNA崩壊経路に影響する。mmof4-1対立遺伝子を有する細胞はM1ウイルスを失うが、ナンセンス介在性mRNA崩壊に関与するその他のf対立遺伝子、upf1、upf2及びupf3はM1を維持する。乳癌ウイルスからの-1リボソームフレームシフトシグナルでフレームシフティングを増進する突然変異として既に同定されたifs1対立遺伝子及びifs2対立遺伝子は夫々UPF2遺伝子及びUPF1遺伝子の対立遺伝子であり、両方のifs株がM1を維持した。mof4-1株はupf1S8(D)株よりもアミノグリコシドパロモマイシンに感受性である。【選択図】なし20071126A16333全文3(a)翻訳開始サイト、その下流に、−1リボソームフレームシフトシグナル、その下流に、該翻訳開始サイトに関連して、−1フレーム内にあるレポーター遺伝子、を含む−1フレームプラスミドを含む細胞を準備する工程;(b)該細胞を試験薬剤と接触させる工程;及び(c)該試験薬剤の存在下で該レポーター遺伝子の活性を測定する工程を含み、該レポーター遺伝子の活性が−1リボソームフレームシフトに依存していることを特徴とする抗ウイルス剤の同定方法。 −1フレームプラスミドを含む細胞について測定された活性を、試験薬剤を含まない対照と比較する請求項1記載の方法。 さらに、該測定された活性を、翻訳開始サイト、その下流に、該翻訳開始サイトに関連して、0フレーム内にあるレポーター遺伝子、を含む0フレーム対照プラスミドを含む細胞について測定された活性と比較する工程を含む、請求項1記載の方法。 0フレーム対照プラスミドを含む細胞について測定された活性を、試験薬剤を含まない対照と比較する請求項3記載の方法。 該比較工程が、−1フレームプラスミドを含む細胞について測定されたレポーター遺伝子活性を、同一の濃度の試験薬剤存在下で生育した0フレーム対照プラスミドを含む細胞について測定されたレポーター遺伝子活性で除して得られる比を決定する工程を含む、請求項3記載の方法。 決定された比が、−1プログラムされたリボソームシフトの効率に及ぼす該試験薬剤の効果の大きさである請求項5記載の方法。 該−1フレームプラスミドを含む細胞が、酵母細胞である、請求項1記載の方法。 該酵母細胞が、JD88細胞である、請求項7記載の方法。 該0フレーム対照プラスミドを含む細胞が、酵母細胞である、請求項3記載の方法。 該酵母細胞が、JD88細胞である、請求項9記載の方法。 該レポーター遺伝子が、β−ガラクトシダーゼをコードする、請求項1記載の方法。 さらに、該試験薬剤の存在下で、−1リボソームシフトを利用して、ウイルス感染細胞中のGag対Gag−pol蛋白質の変化した比を検出する工程を含む、請求項1記載の方法。 該細胞が、JD88細胞である、請求項12記載の方法。 該検出工程が、試験薬剤存在下の感染細胞に関連するキラー表現型の損失を決定する工程を含む、請求項12記載の方法。