タイトル: | 公開特許公報(A)_コドン最適化ロイヤリシン遺伝子 |
出願番号: | 2007268020 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 1/19,C12P 21/02,C12R 1/84 |
佐藤 良也 島袋 勲 山口 喜久二 塚本 真由 JP 2009095264 公開特許公報(A) 20090507 2007268020 20071015 コドン最適化ロイヤリシン遺伝子 国立大学法人 琉球大学 504145308 山口 喜久二 507123992 津国 肇 100078662 束田 幸四郎 100113653 齋藤 房幸 100116919 佐藤 良也 島袋 勲 山口 喜久二 塚本 真由 C12N 15/09 20060101AFI20090410BHJP C12N 1/19 20060101ALI20090410BHJP C12P 21/02 20060101ALI20090410BHJP C12R 1/84 20060101ALN20090410BHJP JPC12N15/00 AC12N1/19C12P21/02 CC12P21/02 CC12R1:84 4 OL 8 4B024 4B064 4B065 4B024AA03 4B024BA80 4B024CA05 4B024DA12 4B024EA04 4B064AG01 4B064CA06 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA01 4B064DA10 4B065AA77X 4B065AA90Y 4B065AB01 4B065AC14 4B065BA02 4B065CA24 4B065CA41 4B065CA44 本発明は、コドン最適化ロイヤリシン遺伝子、該ロイヤリシン遺伝子を含む発現ベクター、該発現ベクターを含む酵母宿主及び該宿主を用いるロイヤリシンの製造方法に関する。 ローヤルゼリーは、乳黄白色のゼリー状液体であり、ミツバチの働蜂が羽化後3日から10日後の間に主として花粉を食べ、これが心臓管という器官で代謝され、頭部の咽頭腺と大顎腺から分泌される。ローヤルゼリーは、ミツバチ社会では女王蜂のための特別食として与えられる。ローヤルゼリーを給餌された女王蜂は、ほかの働蜂の2倍の大きさに成長し、その寿命においても働蜂の平均35−40日に比べて3−5年という長い生存期間を維持することができるようになる。この間、女王蜂は1日に2、000−3、000個もの卵を産卵し、ミツバチの高度な社会性が維持される。 また、このローヤルゼリーには、タンパク質、必須アミノ酸をはじめ、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、酵素など、ヒトの健康維持にも不可欠な40種類以上の栄養素がバランスよく含まれているといわれ、古くから健康補助食品として利用されてきた。 近年、ローヤルゼリーに含まれる種々の生理活性物質の解析が進められつつあるが、その中のひとつに抗菌ペプチドがある。ローヤルゼリーに含まれる抗菌性ペプチドには、何種類かが知られているが、そのひとつにロイヤリシン(royalisin)がある。 ロイヤリシンは、51個のアミノ酸で構成される分子量約5,500の塩基性ペプチドである。また、そのアミノ酸配列にはシステイン(C)が6個存在し、それが3対のジスルホイド結合に関与している(非特許文献1)。 このロイヤリシンは一般にグラム陰性の大腸菌やサルモネラ菌には抗菌活性を示さないが、ブドウ球菌のようなグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を示す。ブドウ球菌は感染性食中毒の原因になるほか、ほとんどの抗生物質が効かない耐性菌MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)として病院などで深刻な問題になっている。このため、ローヤルゼリーを服用することにより食中毒の予防になる可能性があり、MRSAの治療薬としての応用などにも期待がもてる。また、グラム陽性菌には、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌などもあり、ロイヤリシンはこれら医学的に重要な菌にも抗菌活性を示すことが期待されている。 ところが、天然のローヤルゼリーに含まれるロイヤリシンの量は、ごく僅かであり、かつローヤルゼリーにはロイヤリシン以外の各種の活性物質も含まれることから、安価かつ安定してロイヤリシンを製造する方法が求められていた。Fujiwara et al., J Biol・Chem., 256(19): 11333-11337, 1990 本発明の課題は、コドン最適化ロイヤリシン遺伝子、該ロイヤリシン遺伝子を含む発現ベクター、該発現ベクターを含む酵母宿主及び該宿主を用いるロイヤリシンの製造方法を提供することである。 本発明者らは、鋭意研究したところ、配列番号1で示されるコドン最適化ロイヤリシン遺伝子が、酵母宿主における発現量が格別に優れていることを見出し、本発明を完成させた。 したがって、本発明は、下記: 1.配列番号1で示されるコドン最適化ロイヤリシン遺伝子、 2.上記1の遺伝子を含む発現ベクター、 3.上記2の発現ベクターを含む酵母宿主、 4.上記3の宿主を用いる、ロイヤリシンの製造方法、である。 本発明は、ミツバチ(Apis mellifera)のタンパク質であるロイヤリシンを、酵母宿主において高レベルで発現されるコドン最適化ロイヤリシン遺伝子を提供する。 本発明のコドン最適化ロイヤリシン遺伝子は、ネイティブのミツバチロイヤリシン遺伝子の塩基配列を改変する(特定部位における塩基を他の塩基と置換する)ことによって、作成することができる。ミツバチロイヤリシン遺伝子は、常法に従ってゲノムDNAライブラリーを調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の適当なプローブ等を用いて所望クローンを選択することにより製造することができる。該遺伝子をゲノムDNAライブラリーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通常の各種方法に従うことができる。例えば、目的の核酸配列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法などを挙げることができる。 また、上記改変のための手段としては、部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した市販の変異導入用キットを用いることができる。 本発明のベクターとしては、特に限定されないが、例えばpPIC9K、pPIC3.5K、pAO815を利用することができる。また、本発明の宿主酵母としては、特に限定されないが、例えばPichia pastoris GS115、Pichia pastoris KM71、Pichia pastoris SMD1168を利用することができる。 このように得られたベクターを用いて宿主酵母を形質転換するには、プロトプラスト法、コンピテントセル法、エレクトロポレーション法等を用いることができる。得られた形質転換体は、適切な条件下で培養すればよい。得られた培養液から一般的な方法によって、タンパク質の採取、精製を行うことができる。 以下に、具体的な実験例をあげて本発明をさらに詳しく説明する。 ミツバチのロイヤリシン遺伝子の塩基配列及びロイヤリシンのアミノ酸配列を、それぞれ配列番号2及び3に示した。なお、ロイヤリシンのアミノ酸配列については、その第50位のアミノ酸でRとYの変異が報告されており(Klaudiny et al., Insect Biochem. Molecular Biol., 35: 11-22, 2005)、ここではGenebank U1955の配列に基づき前者のRを選択した。 本発明は、上記ロヤリシン遺伝子を酵母菌で大量に発現させることを目指したものであり、そのためのコドン最適化を行った。図1の酵母菌でのコドン使用頻度表をもとに、ロヤリシン遺伝子全51コドンのうち21コドン(41.2%)において塩基の入れ換え(コドン化)を行った。 ロイヤリシン遺伝子の最適化について、塩基の入れ替えを行った結果と入れ替え前後におけるコドン使用頻度の比較を図2にまとめて示した。この際、Anjali Yadava et al.、 Infection and Immunity 2003の文献をもとに、3コドン(caa→cag;aac→aat;gat→gac)の入れ換えは、使用頻度2番目のコドンを採用した。 このようにしてコドンを最適化したロイヤリシン塩基配列(codon・optimized sequence)を配列番号1に示した。最終的に得られたコドン最適化ロイヤリシン遺伝子(酵母菌での発現が期待される遺伝子配列)は、天然ロイヤリシンの全153塩基の19.6%にあたる30塩基で入れ替え、またアミノ酸の配列を決定するコドンのうち21コドン(41.2%)で塩基の入れ替えをおこなったことになる。また、天然のロイヤリシンでは、13番目のアミノ酸がAsn(N)であるが、P. pastorisではここに糖鎖(マンノース)の修飾が起こることが知られていることから、Asn(N)を構造上の変化を起こさないと予想されるGln(Q)に置き換えるコドン入れ換え(aac→caa)を行った。 目的遺伝子配列のクローニングおよびプラスミドベクターの構築 デザインされたコドン最適化遺伝子配列を基に、目的遺伝子を調製するために6種類のDNAオリゴマーを以下のように合成した。Fwd1:tgtagaaaaacttcttttaaagacttgtgggacaaaagatttcatcatcaccatcatcattaa(配列番号4)Fwd2:gtctttgggtaaagctggtggtcattgtgagaaagttggttgtatttgtagaaaaacttcttttaaag(配列番号5)Fwd3:gcggaattcgttacttgtgacttgttgtcatttaaaggtcaggttcaagactctgcttgtgctg(配列番号6)Rev1:caagtctttaaaagaagtttttctacaaatacaaccaactttctcacaatgaccaccagctttacccaa(配列番号7)Rev2:gcgaattcttaatgatgatggtgatgatgaaatcttttgtccc(配列番号8)Rev3:cacaatgaccaccagctttacccaaagacaaacaattagcagcacaagcagagtcttgaacctgacc(配列番号9) これらのDNAオリゴマーを以下のような順序に組み合わせてクレノウ酵素を用いて2本鎖DNAを作製した。5’−Fwd3(EcoRI-ロイヤリシン1−64)+Rev3(ロイヤリシン103−37)+Fwd2(ロイヤリシン75−142)+Rev1(ロイヤリシン147−78)+Fwd1(ロイヤリシン121−153+ヒスチジンタグ)+Rev2(ヒスチジンタグ+EcoRI)−3’ PCR法により増幅した目的遺伝子をT/Aベクター(pGEM−T、Promega)に挿入してクローニングを行った。クローニングされたT/Aベクターの目的遺伝子の塩基配列を確認のうえ、ここから酵素処理(EcoRI)によって両端を酵素処理した最適化ロイヤリシン遺伝子を得た。次にこれを酵母菌発現ベクターであるプラスミド(pPIC9K)に挿入し、発現ベクターを構築した(図3)。 酵母株(GS115株)への組換え、および発現 完成したプラスミドベクターを酵母菌株(GS115、Invitrogen)へ組み換えるために、制限酵素SalIでプラスミドベクターをリニア化し、これをエレクトロポレーション法(1.5KV)によってPichia pastoris(GS115)へ挿入した。 組換え酵母菌の大量培養とペプチド発現量の比較今回使用したベクター(pPIC9K)は発現タンパク質を細胞外へ移送するシステムと同時に酵母内に多数の目的遺伝子が挿入された時のマーカーも内包している。 多数の目的遺伝子が挿入された組換え酵母菌を選別するために、先ずMD培地(Minimal Dextrose Medium:1.34% YNB、4×10−5%ビオチン、2%ブドウ糖、2%アガロース)で組換え酵母菌を選別し、次いで高濃度ジェネテシン(G418;3、0mg/ml)を含むYPD培地(Yeast extract Peptone Dextrose Medium:1%酵母エキストラクト、2%ペプトン、2%ブドウ糖)でさらに培養し、生育してきた組換え酵母菌を選別した。 選別された組換え酵母菌をBMGY培地(Buffered Glycerol-complex Medium:1%酵母エキストラクト、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム pH6.0、1.34%YNB、4×10−5%ビオチン、1%グリセリン)で、28−30℃、200−250rpm、1晩振とう培養して増殖させ、次いでBMMY培地(Buffered Methanol-complex Medium:1%酵母エキストラクト、2%ペプトン、100mMリン酸カリウム pH6.0、1.34%YNB、4×10−5%ビオチン、0.5%メタノール)へ置換して、さらに28−30℃、200−250rpmで振とう培養した。この間、24時間おきにメタノール(100%)を容量の0.5%加え、同時に24、48、72、96、120時間ごとに1mlずつ培養液を採取し、それらをニッケルコートされたプレートを使いELISAで発現量を検討した。発現量の測定には1次抗体として抗ヒスチジンタグ抗体(ウサギ)と、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識抗ウサギ抗体(ヤギ)用いた。p−NPPで発色後、その吸光度(OD405nm)を測定し、タンパク質発現量を比較した。 組換え酵母菌株を大量培養して得た発現ロヤリシンペプチド量は、コドン最適化を行わなかった塩基配列をそのまま酵母菌に組換えた場合にくらべて、その発現量は約2倍に達し、コドン最適化による組換えペプチド発現量の著明な増加が確認された(図4)。 また、必要に応じ、コドン適正化遺伝子の組換えにあたり、そのC末側に6個のヒスチジンからなるヒスチジンタグを挿入し、ニッケルカラムによる発現ペプチドの分離・精製を同時に可能とした。 各種の新興・再興感染症の流行が地球規模で社会問題化するなか、その問題点のひとつに薬剤耐性菌の問題がある。特に多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は院内感染の主要な起因菌として重要であり、その対策は医学的重要度が高い。ロヤリシンは、このMRSAを含むグラム陽性菌に対して抗菌効果を発揮することが明らかになっており、かつ抗菌ペプチドは病原細菌の細胞壁に直接作用するために薬剤耐性が獲得され難いと考えられている。当該発明は、MRSAによる院内感染対策に有効な抗菌剤としての応用、産業化が期待できる。特に、MRSAのようなブドウ球菌類は、皮膚常在菌として一般的なものであることから、ロヤリシンを含む軟膏などを開発することによって、MRSAの院内感染を予防する手軽な手段として医療現場において役立つものである。酵母(Pichia pastoris)におけるコドン使用頻度を示す。変換前後のコドン及びコドン使用頻度を示す。発現ベクターpPIC9Kの構成を示す。コドン最適化ロイヤリシンとネイティブなロイヤリシンとの酵母における組換えペプチドの発現量の比較を示す。黒いバーがコドン最適化ロイヤリシンを表し、白いバーがネイティブなロイヤリシンを表す。 配列番号1で示されるコドン最適化ロイヤリシン遺伝子。 請求項1の遺伝子を含む発現ベクター。 請求項2の発現ベクターを含む酵母宿主。 請求項3の宿主を用いる、ロイヤリシンの製造方法。 【課題】ミツバチ(Apis mellifera)のタンパク質であるロイヤリシンを酵母宿主において高レベルに発現されるコドン最適化遺伝子を提供する。【解決手段】酵母菌でのコドン使用頻度表をもとに、ミツバチのロイヤリシン遺伝子の全51コドンのうち21コドンにおいて塩基の入れ換えを行い最適化したロイヤリシン遺伝子、この遺伝子を含む発現ベクター、この発現ベクターを含む酵母宿主、この宿主を用いるロイヤリシンの製造方法。【選択図】なし配列表