タイトル: | 公開特許公報(A)_エピクロロヒドリンの製造方法 |
出願番号: | 2007267253 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 303/08,C07D 301/26,C07B 61/00 |
北村 徹 三木 康史 石原 利幸 JP 2009096727 公開特許公報(A) 20090507 2007267253 20071012 エピクロロヒドリンの製造方法 ダイソー株式会社 000108993 北村 徹 三木 康史 石原 利幸 C07D 303/08 20060101AFI20090410BHJP C07D 301/26 20060101ALI20090410BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090410BHJP JPC07D303/08C07D301/26C07B61/00 300 3 OL 8 4C048 4H039 4C048AA01 4C048BB03 4C048CC01 4C048UU10 4C048XX02 4H039CA50 4H039CD30 本発明は、グリセリンを触媒存在下で塩素化することによりジクロロヒドリンを生成し、生成したジクロロヒドリンを脱塩化水素化するエピクロロヒドリンの製造方法に関する。 エピクロロヒドリンの製造に用いられるジクロロヒドリンは、アリルクロライドをクロロヒドリン化することにより一般的に製造される。しかし一般的な製造方法は以前より副生成物であるトリクロロプロパン等の塩素化物が生成するという問題及び排水が多量に生じるという問題があり、新しい製造方法が望まれている。 ジクロロヒドリンの他の製造方法として、ギ酸や酢酸等の触媒存在下、グリセリンと塩化水素ガスを反応させてジクロロヒドリンを製造する方法(例えば特許文献1〜3参照)が知られている。この方法はトリクロロプロパン等の塩素化物を副生することなく、ジクロロヒドリンが製造できる点で好ましい。 更に、この製造方法で使用される原料のグリセリンは、植物油や動物油を原料とする反応又はバイオディーゼルの製造により生成する低コストの再生可能資源であることから、経済的又は環境的観点から見ても望ましい原料であると考えられる(例えば、特許文献4参照)。 上記理由によりグリセリンを原料とするクロロヒドリンの製造方法に関し、反応に有効な触媒の探索、反応条件及び製造工程について、近年活発に研究されている(例えば、特許文献5〜8参照)。現在は触媒としてカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸構造を有した化合物が使用されている。ところで上述のグリセリンと塩化水素ガスを反応させるクロロヒドリンの製造方法は、一般に前記カルボン酸系触媒存在下、下記式(1)で示される。 触媒存在下においてグリセリンと塩化水素を反応させた場合、その反応混合物には、塩化水素、水、ジクロロヒドリン、モノクロロヒドリン、ジグリセリン等の高沸点物や触媒など種々の化合物が含まれている。特にカルボン酸を触媒に用いた場合には、カルボン酸およびカルボン酸エステルなどの化合物も含まれる。この反応混合物から目的とするジクロロヒドリンを蒸留操作などの分離操作の後、塩基との脱塩化水素化によりエピクロロヒドリンを製造する。この分離操作時の反応混合物にはほとんどの場合において反応により消費されずに残る塩化水素が含まれており、分離装置の腐食を防止するため、耐蝕性材料で製作された、またはコーティングされた装置を使用するか、反応混合物に含まれる塩化水素を塩基で中和することが必要となる。耐蝕性材料で製作された、またはコーティングされた装置はコスト的に好ましくない。また反応混合物に含まれる塩化水素を塩基で中和する場合には、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基と塩化水素との中和反応により塩化ナトリウムなどの塩が生成する。その結果として配管のつまり、反応系での塩の蓄積などが生じ、触媒の回収が困難となるのみならず、中和によって生じた水及び中和に使用する塩基に同伴する水により、排水量が増大するため好ましくない。DE197308DE238341US2144612GB14767WO2005/021476WO2005/054167WO2006/020234WO2006/110810 本発明は、グリセリンを原料とするジクロロヒドリンの製造によって生じた反応混合物に含まれる塩化水素を、塩基で中和することなく反応混合物から消失させることにより、特別な装置を使用せずにジクロロヒドリンを蒸留等で回収し、回収したジクロロヒドリンの脱塩化水素化するエピクロロヒドリンの製造方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、ジクロロヒドリンの製造によって生じた反応混合物に含まれる塩化水素を反応の目的物であるエピクロロヒドリンとの反応により消失させることで、上記課題を解決することが出来ることを見出し、本発明の完成に至った。 ジクロロヒドリンの製造によって生じた反応混合物に含まれる塩化水素を反応の目的物であるエピクロロヒドリンとの反応により消失させることで、特別な装置を使用せず、塩や排水などその後の工程でデメリットとなる問題を生じさせずにジクロロヒドリンを蒸留等で回収することを可能にする。 以下本発明を詳細に説明する。 出発原料であるグリセリンは、グリセリンモノアセテート等のグリセリンエステル、水、有機溶媒、塩、有機化合物を含んだものであっても良い。そのような出発原料として、例えば水やナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを含んだ粗製グリセリンなどが挙げられる。また粗製グリセリンを精製し、精製後のグリセリンを用いてもよい。グリセリンの純度については、50〜99.9重量%であることが好ましく、80〜99重量%であることがより好ましい。 本発明に係る「塩素化剤」として、塩化水素ガス、及び塩化水素ガスと不活性ガス(窒素ガス、アルゴン、ヘリウム等)を混合したガスを使用することができる。 グリセリンと「塩素化剤」とを反応させる際に、適宜触媒を使用することができる。「触媒」は、グリセリンからジクロロヒドリン製造することができる触媒であれば特に限定されることは無く、そのような触媒としては例えば、カルボン酸、カルボン酸誘導体、ラクトン、ラクタム、固体触媒及びこれらの組み合わせを例示することもできる。 「カルボン酸」として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ステアリン酸、コハク酸、フタル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マロン酸、アジピン酸などを例示することが出来る。 「カルボン酸誘導体」として、例えば、上記カルボン酸の塩化物、無水物及びエステル等を例示することができる。 「ラクトン」として、例えば、カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等を例示することができる。 「ラクタム」として、例えば、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等を例示することができる。 「固体触媒」としては、例えば、無機酸化物、無機ハロゲン化物及び強酸性有機化合物及びそれらの組み合わせを例示することができる。 「無機酸化物」として、例えば、金属酸化物、複合酸化物、オキシ酸及びオキシ酸塩が好ましい。「金属酸化物」として、例えばSiO2、Al2O3、TiO2、Fe2O3、ZrO2、SnO2、Ga2O3、La2O3、CeO2、MoO3等を例示することができる。 「複合酸化物」として、例えば、SiO2- Al2O3、SiO2- TiO2、TiO2-ZrO2、SiO2- ZrO2、MoO3-ZrO3等、ゼオライト、ヘテロポリ酸(例えばP、Mo、V、W、Siなどの元素を含有するポリ酸など)、ヘテロポリ酸塩等を例示することができる。 「オキシ酸」及び「オキシ酸塩」として、例えば、BPO4、AlPO4、ポリリン酸、酸性リン酸塩、H3BO3、酸性ホウ酸塩、ニオブ酸(Nb2O5・nH2O)等を例示することができる。 「無機ハロゲン化物」としては、例えば、金属ハロゲン化物が好ましい。金属ハロゲン化物としては遷移金属、例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドなどの周期表3A族元素、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの周期表4A族元素、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期表5A族元素、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金などの周期表8族元素、亜鉛などの周期表2B族元素など)、アルミニウム、ガリウムなど周期表3B族金属、ゲルマニウム、スズなど周期表4B族金属等の金属のフッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物等を例示できる。 強酸性有機化合物として、例えば、有機スルホン酸化合物が好ましい。有機スルホン酸化合物として、例えば、スルホン酸基含有イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂及び炭素縮合環を含むスルホン酸化合物(CiHjOkSm)等を例示することができる。 触媒の濃度は塩素化剤と反応させる出発原料のグリセリンを100重量部として0.01〜90重量部であることが好ましく、0.1〜40重量部であることがより好ましく、0.3〜20重量部であることが更に好ましい。また固体触媒を使用する場合には、触媒を適当な大きさに成型して管型反応器に充填した固定床流通式の反応装置を使用することもできる。 出発原料のグリセリンを、例えば、槽型反応器、管型反応器等の適する反応器に入れて、場合により触媒を使用し、塩素化剤を導入して反応させる。 反応温度は、20℃〜300℃であることが好ましく、50℃〜200℃であることがより好ましく、90℃〜150℃であることが更に好ましい。 反応時の圧力は反応を効率的に進める点で加圧条件が望ましいが、常圧または減圧条件であっても問題は無い。反応は0.01MPaA〜10MPaA、より好ましくは0.01MPaA〜2MPaA、さらには0.1MPaA〜0.6MPaAで行うのが好ましい。 出発原料であるグリセリンと塩素化剤との反応により生成するジクロロヒドリンは、1,3-ジクロロ-2-プロパノールと2,3-ジクロロ-1-プロパノールの混合物であるが、1 ,3-ジクロロ-2-プロパノールが主生成分として生成する。その割合はモル比で1,3-ジクロロ-2-プロパノール:2,3-ジクロロ-1-プロパノール=80:20〜100:0である。本発明においては1,3-ジクロロ-2-プロパノール、2,3-ジクロロ-1-プロパノール及びこれらの混合物を総称して「ジクロロヒドリン」ともいう。尚、本発明においては3-クロロ-1,2-プロパンジオールと2-クロロ-1,3-プロパンジオール及びこれらの混合物を総称して「モノクロロヒドリン」ともいう。 該反応により生成するジクロロヒドリンを含む反応混合物には、塩化水素、水、反応中間体であるモノクロロヒドリン、未反応のグリセリン、グリセリンに由来する不純物、ジグリセリン等の副生成物が含まれ、更には触媒としてカルボン酸を使用した場合には、使用したカルボン酸、カルボン酸とグリセリンのエステル、カルボン酸とモノクロロヒドリンやジクロロヒドリンとのエステルが含まれうる。 上記ジクロロヒドリンを含んだ反応混合物中に存在する反応により消費されなかった塩化水素をエピクロロヒドリンと反応させ、反応混合物中の塩化水素を消失させる。エピクロロヒドリンは塩化水素との反応により、若干の2,3-ジクロロ-1-プロパノールが生成するものの、高選択的に1,3-ジクロロ-2-プロパノールが生成する。生成した1,3-ジクロロ-2-プロパノールは反応混合物中のジクロロヒドリンとともに、その後の工程でエピクロロヒドリン製造のために、他の物質を蒸留により分離され、塩基により脱塩化水素化される。 ジクロロヒドリンを含んだ反応混合物中に存在する反応により消費されなかった塩化水素を消失させるために添加するエピクロロヒドリンは、塩化水素とエピクロロヒドリンはほぼ定量的に反応するため、残存する塩化水素に対して当量または当量より若干過剰に加える程度が好ましい。尚、本発明の塩化水素濃度に制限はないが、残存する塩化水素が多量にある場合には、加えるエピクロロヒドリンの量も多量に必要になるため、反応混合物から塩化水素を回収してから行うことが好ましく、エピクロロヒドリンで消失させる塩化水素の量は反応混合物の5重量%以下であることが好ましい。 上記のような塩化水素を5重量%以下含有する反応混合物の例としては、グリセリンと塩化水素をバッチ反応させた場合の未反応の塩化水素が残存する反応混合物やグリセリンと塩化水素するとともに、水とジクロロヒドリンとの共沸により留出させた際に得られる二層分離する凝縮液の油層を例示することができるが、これに限定されるものではない。 エピクロロヒドリンと塩化水素との反応は、非常に速やかに行われ、室温でも数分で完結することから、添加するエピクロロヒドリンの温度は室温程度の低温であってもよいし、90℃近くの高温であっても問題はない。 エピクロロヒドリンの添加は、ジクロロヒドリンを含んだ反応混合物中に存在する、反応により消費されなかった塩化水素を有効的に消失できる方法であれば特に限定されることはない。例えば反応混合物を抜き出す配管又は精留塔へのフィードを行う配管でのラインミキサー等による添加でもよく、あるいは中間タンクにおいての添加等を例示することができる。 エピクロロヒドリンにより塩化水素を消失させた場合には、反応混合物から蒸留によりジクロロヒドリンを回収した後に残存する蒸留残渣には塩が析出する、又は蓄積することがないので、蒸留残渣は塩を分離するための処理をすることなく、グリセリンを塩素化している反応器にリサイクルすることが可能である。すなわち、非揮発性の触媒を使用した場合、触媒のリサイクルを蒸留残渣から、塩を分離する操作を行うことなく、可能にする。 以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例、比較例に限定されるものではない。参考例1 温度計、攪拌機及び塩化水素ガス導入管を有する反応器に、グリセリン720g(7.82mol)およびコハク酸30g(0.254mol)の混合物に塩化水素ガスで0.3MPaAの圧力を加え、110℃で反応した。反応により発生する水の大部分と一部のジクロロヒドリンを未反応の塩化水素ガスによるストリッピングで留出した。留出させた水とジクロロヒドリン、ストリッピングした塩化水素の一部を凝縮器により凝縮し、留出液として得た。反応時間6時間後、留出液は912g得て、そして反応残液として、少量の塩化水素(2.4wt%)、少量の水(2.4wt%)、ジクロロヒドリン(47.7wt%)、およびモノクロロヒドリン(20.3wt%)等を含む反応残液(607g)を得た。含まれるジクロロヒドリンの1,3-ジクロロ-2-プロパノールと2,3-ジクロロ-1-プロパノールの組成比は96.7:3.3であった。実施例1 上記反応残液142.15g(1,3-ジクロロ-2-プロパノール65.58gと2,3-ジクロロ-1-プロパノール2.24gを含む)に8.88gのエピクロロヒドリンを加え、高さ20cmのカラム(ガラス製ラシヒリング充填)を備えたガラス製蒸留容器において減圧下で精留し、61.86gの留出液を得て、また蒸留残渣として81.72gを得た。フェノールフタレイン溶液を指示薬として用い、留出液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより塩化水素を定量したが、検出されなかった。また、蒸留残渣は透明で固形物は析出していなかった。また留出液と蒸留残渣を合わせた1,3-ジクロロ-2-プロパノールは71.56gと2,3-ジクロロ-1-プロパノール3.23gであった。比較例1 上記反応残液145.32g(1,3-ジクロロ-2-プロパノール67.04gと2,3-ジクロロ-1-プロパノール2.29gを含む)に20%水酸化トリウム19.39g加え中和し、高さ20cmのカラム(ガラス製ラシヒリング充填)を備えたガラス製蒸留容器において減圧下で精留し、78.51gの留出液を得て、また蒸留残渣として80.05gを得た。フェノールフタレイン溶液を指示薬として用い、留出液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより塩化水素を定量したが、検出されなかった(0.1wt%以下)。留出液中にエピクロロヒドリン0.52gを確認した。また、反応残渣に微細な沈降物が多量に析出していた。比較例2 上記反応残液123.96g(1,3-ジクロロ-2-プロパノール57.19gと2,3-ジクロロ-1-プロパノール1.95gを含む)を中和処理することなしに、高さ20cmのカラム(ガラス製ラシヒリング充填)を備えたガラス製蒸留容器において減圧下で精留し、52.83gの留出液を得て、また蒸留残渣として63.13gを得た。フェノールフタレイン溶液を指示薬として用い、留出液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより塩化水素を定量すると、0.95g(1.8wt%)の塩化水素が検出された。また、反応残渣は透明で固形物は析出していなかった。 以下に実施例1、比較例1,2においてのジクロロヒドリン、塩化水素、水についての組成の変化を表1に示す。尚、下記表において1,3-ジクロロ-2-プロパノールは1,3−DCHに、2,3-ジクロロ-1-プロパノールは2,3−DCHに、塩化水素はHClに、水はH2Oと省略する。 実施例1と比較例1,2を比較すると、実施例1ではエピクロロヒドリンにより塩化水素を消失させることにより塩化水素はほとんど消失し、エピクロロヒドリンは塩化水素との反応により主に1,3-ジクロロ-2-プロパノールに変換されたことが分かる。その後反応混合物からジクロロヒドリンを分離した後、ジクロロヒドリンを塩基により脱塩化水素化してエピクロロヒドリンを生成する。なおジクロロヒドリンを塩基により脱塩化水素化する場合には、1,3-ジクロロ-2-プロパノールと2,3-ジクロロ-1-プロパノールの脱塩化水素化を比較すると、両者の脱塩化水素化の反応速度は大きく異なり、1,3-ジクロロ-2-プロパノールは2,3-ジクロロ-1-プロパノールより脱塩化水素化の反応速度が速い。脱塩化水素化の速度が大きく異なる1,3-ジクロロ-2-プロパノールと2,3-ジクロロ-1-プロパノールがある一定の割合以上で混在したジクロロヒドリンの効率的な脱塩化水素化の条件を見つけるのは容易ではない。なぜなら製造したエピクロロヒドリンは塩基条件下ではモノクロロヒドリンに変換し、そのモノクロロヒドリンは更に塩基と反応し、グリシドールを生成する分解反応が起こるからである。しかし上記のようなジクロロヒドリンとして1,3-ジクロロ-2-プロパノールが選択的に存在下している場合には1,3-ジクロロ-2-プロパノールの脱塩化水素化に適した条件を設定することが出来るので、分解反応を抑制することが可能である。 一方、比較例1では、反応混合物に含まれる塩化水素を水酸化ナトリウムで中和することにより処理することが可能なことが分かったが、蒸留残渣に多量に微細な沈降物として塩化ナトリウムが沈降するとともに、留出液として多量の水が留出し、さらにエピクロロヒドリンが生成し、留出していることが確認された。エピクロロヒドリンは、今後のジクロロヒドリンの脱塩化水素工程で塩基と接触した場合、上述の分解反応が起こり得る。エピクロロヒドリンの分解反応はエピクロロヒドリンの直接の収率の低下を招くために好ましくない。 さらに比較例2では、処理することなく1,3-ジクロロ-2-プロパノールを含む反応混合物を蒸留した場合であるが、処理しなかった塩化水素が留出する結果となり好ましくない。 ジクロロヒドリンを含んだ反応混合物中に存在する反応により消費されなかった塩化水素を完全に除去する事は、加熱による減圧蒸留などの操作でも困難であるため、取り扱う装置の材質を耐酸性にする必要を考慮すると、特に上記の実施例、比較例に示されるような反応混合物に対して5重量%以下の低濃度の塩化水素をエピクロロヒドリンで消失させることは特に好ましいといえる。 グリセリンを塩素化することにより製造されたジクロロヒドリンを含んだ反応混合物中の塩化水素をエピクロロヒドリンにより処理することにより、特別な装置を使用せず、塩や排水などその後の工程でデメリットとなる問題を生じさせずにジクロロヒドリンを蒸留等で回収することを可能にする。ジクロロヒドリンはエピクロロヒドリンの製造のために用いられる。 グリセリンと塩素化剤を反応させ、生成したジクロロヒドリンを脱塩化水素化するエピクロロヒドリンの製造において、生成したジクロロヒドリンを含む反応混合物中に存在する塩化水素をエピクロロヒドリンにより消失させることを特徴とするエピクロロヒドリンの製造方法。 エピクロロヒドリンにより消失させる塩化水素の量が生成したジクロロヒドリンを含む反応混合物の5重量%以下である請求項1記載の製造方法。 ジクロロヒドリンを含んだ組成が、グリセリンと塩素化剤との反応により生成する水とジクロロヒドリンを塩化水素によるストリッピングで留出させた場合の反応残液である請求項1又は2記載の製造方法。 【課題】グリセリンを原料とするジクロロヒドリンの製造によって生じた反応混合物に含まれる塩化水素を、塩基で中和することなく反応混合物から消失させることにより、特別な装置を使用せずにジクロロヒドリンを蒸留等で回収し、回収したジクロロヒドリンの脱塩化水素化するエピクロロヒドリンの製造方法を提供することにある。【解決手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねたところ、ジクロロヒドリンの製造によって生じた反応混合物に含まれる塩化水素を反応の目的物であるエピクロロヒドリンとの反応により消失させることで、上記課題を解決することが出来ることを見出した。【選択図】 なし