生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_断面薄片試料の作成方法
出願番号:2007245265
年次:2009
IPC分類:G01N 1/28


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山川 郁子 JP 2009074984 公開特許公報(A) 20090409 2007245265 20070921 断面薄片試料の作成方法 凸版印刷株式会社 000003193 山川 郁子 G01N 1/28 20060101AFI20090313BHJP JPG01N1/28 GG01N1/28 F 3 2 OL 6 2G052 2G052AD32 2G052EC03 2G052FA01 2G052GA32 2G052GA33 2G052JA07 本発明は、例えば、光学顕微鏡、電子顕微鏡での分析に用いるサンプル包埋体の作製技術に関する。 従来、透過型電子顕微鏡は、試料から透過した電子線をもとに結像するため、電子線の通過に可能な厚みになるまで薄片化する前処理が必要になる。 ウルトラミクロトームは、光学顕微鏡や電子顕微鏡等で観察するための試料の前処理作業である樹脂包埋された試料ブロックの断面出しや薄片作成装置として用いられてきた(例えば非特許文献1参照)。樹脂包埋は、試料が柔らかい、または非常に薄膜である場合などに、切削の衝撃により破損、変形するのを防ぐために、試料を固定する操作である。包埋された樹脂は、内部に埋め込まれた試料面が露出するまで削られ、最終的には、削り跡が目立たなくなるまで、平滑になるように、ガラスナイフやダイヤモンドナイフで仕上げられる。 ウルトラミクロトームは、上下に動くアーム、微量移動が可能なナイフ用台座、実体顕微鏡を有する。削る際には、試料ブロックを試料ホルダーに固定し、アームに試料ホルダーを挿入固定し、試料近傍までナイフ用台座を近づけ、アームが上下することにより、切削される。ナイフ用台座を微量動かすことにより、超薄切片を作製する。 薄片採取の方法としては、不溶性で常温切削可能である場合、水を用いたウェット切削法が用いられることが多い。ウェット切削法では、ダイヤモンドナイフのナイフボート内に水が張られ、薄片が切削により作られるたびに薄片は連なり、ナイフボート上の水面上に浮かぶ。その薄片群をメッシュで採取することにより、電子顕微鏡用試料として用いる。朝倉健太郎、広畑泰久共編,「電子顕微鏡研究者のためのウルトラミクロトーム技法Q&A」,第1版,アグネ承風社,1999年9月30日,p.3−80 しかしながら、従来一般でおこなわれてきた前記記載の包埋樹脂をウルトラミクロトームにて切削する方法は、手間と時間がかかる。巻き取り式の原反など大型製品の形態検査をおこなう場合などに、より確実なデータを求めるために、検体数を上げることがあるが、検体数が増加すると更に時間が倍増するという問題があった。また、試料を樹脂で包埋したのち、薄片化する過程では、試料や切削時の強さや刃のふりおろしスピード、水位などの切削条件により、包埋で固定した試料と樹脂の間に剥離が生じ、樹脂との剥離の衝撃で試料が変形することもある。 そこで、本発明は、透過型電子顕微鏡用薄片試料の作製時間を効率よく短縮し、また、作製した試料が包埋樹脂と剥離を起こし難く、観察可能個所を増やすことを課題とする。 上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、 高分子薄膜試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察するための断面薄片試料の作成方法であって、 前記高分子薄膜試料を複数枚重ねる工程と、複数枚重ねた状態で前記試料を切断する工程と、前記高分子薄膜試料をモールドに入れ、樹脂に包埋する工程と、前記包埋された樹脂を硬化させる工程と、前記試料が包埋された硬化後の樹脂ブロックをウルトラミクロトームで薄片化する工程とを含むことを特徴とする断面薄片試料の作成方法である。 また請求項2に係る発明は、 前記高分子薄膜試料の厚みが5〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の断面薄片試料の作成方法である。 また請求項3に係る発明は、 前記試料を複数枚重ねる工程にて、多層構造からなる高分子薄膜試料の表裏を揃えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の断面薄片試料の作成方法である。 請求項1に記載の発明は、複数の試料をひとつのモールドに埋め込み、試料と試料の間に樹脂が入り込むので、透過型電子顕微鏡用薄片試料の作製時間を効率よく短縮し、また、作製した試料が包埋樹脂と剥離を起こし難く、観察可能個所を増やせるという効果がある。 請求項2に記載の発明は、観察用試料を4〜40枚程度重ね合わせることが可能なので、上記効果が、より一層高くなるという効果がある。 請求項3に記載の発明は、多層構造からなる高分子薄膜試料が反る場合でも、反る方向と角度が同様になるため、複数の試料を重ね合わせることが可能となり、上記効果が得られるという効果がある。 まず、本発明方法により断面薄片試料にされる高分子薄膜試料について説明する。 高分子薄膜試料としては、公知の高分子フィルムを用いることができる。高分子フィルムとしては、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、三酢酸セルロース(TAC)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルム、ナイロン(Ny)フィルム、ポリエーテルスルフォン(PES)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム等が例示される。なお、高分子フィルムは単層構造であっても、積層構造であってもかまわない。 また、高分子薄膜試料は、プラスチックフィルム上の少なくとも一方の面若しくは両面に単層若しくは複数の機能層を備えていても良い。また、機能層はパターン上に形成されていても良い。例えば、導電性フィルムにあっては、プラスチックフィルム上に導電性物質からなる導電層が機能層として形成されており、これを高分子薄膜試料とすることができる。また、バリア性フィルムにあっては、プラスチックフィルム上に金属酸化物等からなるバリア層が機能層として形成されており、これを高分子薄膜試料とすることができる。なお、高分子薄膜試料は、これらに限定されるものではない。 また、高分子薄膜試料は、厚さが5〜50μmのものを用いることができる。 また、複数枚重ねあわされた高分子薄膜試料は、静電気力により付着し合い、1枚の高分子薄膜試料のように扱うことができる。 以下に、本発明に係る断面薄片試料の作成方法について、その最良の一実施形態を説明する。 まず、前記高分子薄膜試料を、望ましくは10〜20μm厚みの高分子試料を、2〜5枚重ね合わせる。このとき、多層構造からなる高分子薄膜試料の場合、それらの表裏を揃えることが好ましい。 次に、複数枚重ねた状態で前記試料を切断する。前記試料端が動かぬように片面や両面のセロハンテープで固定した状態でくさび形に切断することが望ましい。固定したテープごと切断し、観察断面のさまたげになる場合は、後工程でのトリミング時にテープをトリミング除去してもよい。 次に、前記高分子薄膜試料を包埋用モールドに入れ、樹脂に包埋する。前記高分子薄膜試料の包埋樹脂ブロックを作製する包埋用モールドは、図1に示すように複数の凹みがあり、シリコン材でつくられており、柔らかいため、硬化後に容易に包埋樹脂ブロックを取り出すことができる。 望ましくは、前記薄膜試料が静電気などで1枚ずつの分離が困難な程度に付着している状態、またはテープで固定された状態で、熱硬化樹脂、または光硬化樹脂が流し込まれたモールドに、くさび形試料の細い側をモールドの末端に近くなるような位置に針やピンセットなどの突起物で沈め、底に押し付けるようにする。高分子薄膜試料同士が静電気により付着している場合においても、わずかな隙間まで樹脂が入り込むため、試料周囲は少なくとも3方向は樹脂で囲まれる。 次に、前記包埋された樹脂を硬化させる。熱硬化樹脂の場合は、加熱、光硬化樹脂の場合は光照射をおこない、樹脂硬化させる。 次に、前記試料が包埋された硬化後の樹脂ブロックをウルトラミクロトームで薄片化する。 ここで、試料を薄片化するウルトラミクロトームについて述べる。ウルトラミクロトームは、図4に示したように、断面切削対象の試料を保持する試料ホルダー9、試料ホルダー9の角度調整をおこなうセグメントアーク10、上下に振れるアーム11、ナイフ8を前進させる台座12、実体顕微鏡13、などを有する。試料ブロックを試料ホルダー9で固定し、試料ホルダー9をセグメントアーク10に固定し、ナイフ8をナイフホルダー14に固定し、ナイフ8の台座12が前後することで試料の切削をおこなう。 また、ダイヤモンドナイフでウェット切削を行う場合、ナイフボート上に水を注入し、水位調整機にて水位調整をおこなう。切削の様子は、実体顕微鏡で確認をおこない、薄片化するための前処理である鏡面の確認も、実体顕微鏡でおこなう。 試料ブロックは図2の(a)に示すように直方体になっており、複数の試料断面が露出するまで樹脂の先端を細く削り、図2(b)に示すようにトリミングする。断面切削を行うにあたり、試料周囲に樹脂が少なくとも3方向に存在することが望ましく、更には、試料に沿って樹脂の残量が少ないほうが望ましく、薄片となる断面が0.2〜0.4mm四方程度の大きさになることが望ましい。複数の試料面が露出し、鏡面状態になるまでガラスナイフ等でトリミングする。試料面は可能な限り試料が密集している個所が出るように可能な限り小面積にトリミングすることが望ましい。 トリミング後、ガラスナイフをダイヤモンドナイフに置き換える。試料を薄片化するダイヤモンドナイフは図3に示すように、水を用いたウェットでの切削が可能なタイプであり、最上部のナイフボート6の端に刃先5がある構造になっている。試料面とナイフの刃先の角度が平行になるように、実体顕微鏡で確認しながらセグメントアークやナイフホルダーで角度調整をおこなう。ウェットでの切削をおこなう場合は、ダイヤモンドナイフ上のナイフボートに水を注入する。水位を調整したのち、試料面とナイフの距離を縮めていき、自動切削モードで薄切する。ウルトラミクロトームで切削を進めると、刃先を起点として順次薄片が連なり、水面上に短冊状に連なっていく状態(図3に示す薄片化された連続切片試料7参照)になるが、この短冊状の状態において金属メッシュでのサンプル採取を行うことが望ましい。 以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。 10μm厚み程度の高分子基材上に金属酸化膜が蒸着されたフィルムが4枚重なった試料の端をセロハンテープで固定し、くさび形に切断した。フィルムが4枚付着している状態において、アクリル系光硬化樹脂が流しこまれたモールド内に試料を入れ、モールド底に針で軽く押し込んだのち、60秒間光照射し、硬化した樹脂ブロックを取り出した。 前記試料を包埋した試料ブロックにおいて、4枚の試料面が露出するように断面出しをおこない、面が約0.2mm四方になるようにトリミングをし、試料面とその側面近傍が平滑になるようにガラスナイフで鏡面化させた。鏡面化の後、ダイヤモンドナイフにて膜厚設定0.10μmに薄片化をおこなった。ウェット式で薄片をすくい上げ、支持膜付き銅メッシュ上に採取した。 採取後、観察したところ、試料と試料の間の厚み約15μmに入り込んだ包埋樹脂と、金属蒸着膜が成膜されている1、2、3枚目の試料界面は剥離することなく、良好に検体の観察をおこなうことが出来た。試料と試料の隙間に入り込んだ樹脂は試料に擬似的に挟まれている状態であり、剥離しにくくなると考えられる。4枚目は端にあるためか、剥離した。また、試料を1枚ずつ包埋していく場合の4検体分の薄膜化をおこなう時間の約4分の1の時間で試料作製をおこなうことができた。また、電子顕微鏡内の出し入れが一度で済むため、真空引き等の出し入れに要する時間も削減することができ、従来の方法より短時間で試料作製、観察をおこなうことが可能であった。シリコン製包埋用モールドの斜視図。(a)は試料が包埋樹脂に埋め込まれた試料ブロックの斜視図、(b)は試料が包埋樹脂に埋め込まれた試料の断面が出ている試料ブロックの斜視図。ダイヤモンドナイフの斜視図。ウルトラミクロトームの側面図。符号の説明1…包埋用モールド2…包埋樹脂3…試料4…ダイヤモンドナイフ5…ダイヤモンドの刃先6…ナイフボート7…薄片化された連続切片試料8…ナイフ9…試料ホルダー10…セグメントアーク11…アーム12…台座13…実体顕微鏡14…ナイフホルダー 高分子薄膜試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察するための断面薄片試料の作成方法であって、 前記高分子薄膜試料を複数枚重ねる工程と、複数枚重ねた状態で前記試料を切断する工程と、前記高分子薄膜試料をモールドに入れ、樹脂に包埋する工程と、前記包埋された樹脂を硬化させる工程と、前記試料が包埋された硬化後の樹脂ブロックをウルトラミクロトームで薄片化する工程とを含むことを特徴とする断面薄片試料の作成方法。 前記高分子薄膜試料の厚みが5〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の断面薄片試料の作成方法。 前記試料を複数枚重ねる工程にて、多層構造からなる高分子薄膜試料の表裏を揃えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の断面薄片試料の作成方法。 【課題】透過型電子顕微鏡用薄片試料の作製時間を効率よく短縮し、また、作製した試料が包埋樹脂と剥離を起こし難く、観察可能個所を増やすこと。【解決手段】高分子薄膜試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察するための断面薄片試料の作成方法であって、 前記高分子薄膜試料を複数枚重ねる工程と、複数枚重ねた状態で前記試料を切断する工程と、前記高分子薄膜試料をモールドに入れ、樹脂に包埋する工程と、前記包埋された樹脂を硬化させる工程と、前記試料が包埋された硬化後の樹脂ブロックをウルトラミクロトームで薄片化する工程とを含むことを特徴とする断面薄片試料の作成方法。【選択図】図2


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