生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_(−)−アンブロキサンの製造方法
出願番号:2007228877
年次:2009
IPC分類:C12P 17/18,C12N 15/09


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早瀬 温子 五十嵐 一暁 JP 2009060799 公開特許公報(A) 20090326 2007228877 20070904 (−)−アンブロキサンの製造方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 早瀬 温子 五十嵐 一暁 C12P 17/18 20060101AFI20090227BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090227BHJP JPC12P17/18 DC12N15/00 A 3 OL 8 4B024 4B064 4B024AA03 4B024AA05 4B024BA07 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA01 4B024HA11 4B064AC14 4B064AE41 4B064AE45 4B064CA02 4B064CB30 4B064CC24 4B064DA20 本発明は、(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フランの製造方法に関する。 3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フラン(「アンブロキサン(登録商標)」とも称する)は、香気特性と残香性に優れたアンバー系調合香料に欠かせない化合物である。 また、光学異性体を比較すると、(−)−アンブロキサンは典型的なアンバー香気を有し、(+)−アンブロキサンは弱い木様香気を有するため、香料としての有用性の点から、高い光学純度で(−)−体を得る必要性が高く、(−)−アンブロキサンの不斉合成方法について、現在研究開発が盛んに行われている。 例えば、下記に示すように、天然植物クラリーセージの抽出物である(−)−スクラレオールを出発原料とし、(+)−スクラレオライドを経由する製造方法が、(−)−アンブロキサンの好適な工業的製法として知られている(非特許文献1)。 しかしながら、この方法においては、天然原料を用いるために、多段階反応であり操作が迂遠である、供給量と供給安定性が満足のいくものではない、(−)−スクラレオールの酸化分解工程においてクロム酸や過マンガン塩などの酸化剤を用いており環境負荷が大きい、という問題があった。 一方、下記に示すように、スクアレン−ホペン環化酵素(Squalene-Hopene cyclase;以下SHCともいう)はスクアレンを基質とし、ホペン、ホパノールといった環状化合物を生成する環化酵素であり、Alicyclobacillus acidocaldarius由来、Zymomonas mobilis由来、Bradyrhizobium japonicum由来、 Methylococcus capsulatus由来、Frankiana由来、Acetobacter pasteurianum由来、Tetrahymena pyriformis由来等のものが知られている。中でもAlicyclobacillus acidocaldarius由来酵素は遺伝子配列が解明されており、大腸菌によって組換え酵素を発現させ、安定に機能させる方法が知られている(非特許文献2)。 近年、この酵素を用いて、種々の基質に対する反応性が検討されている。例えば、ファルネソールを基質とした場合、変換率64%で下記の化合物(a),(b),(c),(d)が7:3:45:9の割合で生成することが報告されている(非特許文献3及び4)。 また、ホモファルネソールを基質とした場合、アンブロキサンが生成することが報告されている(非特許文献5)が、変換率は3%と極めて低く、また、(−)−体の光学純度については言及されていないことから、当該文献は、(−)−アンブロキサンの製造方法をなんら開示するものではない。島田明美, 香料最新技術の特許分析, p.114(1988),シーエムシー出版Sato T. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 407-411, 1998Hoshino T. et al., Org. Biomol. Chem., 2, 2650-2657, 2004米村ら, TEAC要旨集, 238-240, 2005Neuman S. et al., Biol. Chem. Hoppe-Sayler, 367, 723-729, 1986 本発明は、スクアレン-ホペン環化酵素を用いた、ホモファルネソールからの(−)−アンブロキサンの製造方法を提供することに関する。 本発明者らは、酵素法によるアンブロキサンの製造法を検討したところ、安価に得られるホモファルネソールを基質とし、pH5.2〜6.6の溶媒中でスクアレン-ホペン環化酵素を作用させることにより、(−)−アンブロキサンが容易に、しかも効率よく製造できることを見出した。 すなわち、本発明は、下記に示すとおり、pH5.2〜6.6の溶媒中で、ホモファルネソール(化合物(1))に、スクアレン−ホペン環化酵素を作用させることを特徴とする(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フラン(化合物(2))の製造方法に係るものである。 本発明の製造方法によれば、安価な出発原料から容易な方法により、(−)−アンブロキサンを、工業的に有利に得ることができる。 スクアレン−ホペン環化酵素は、スクアレンを基質とし、ホペン、ホパノールといった環状化合物を生成する環化酵素であり、Alicyclobacillus acidocaldarius由来、Zymomonas mobilis由来、Bradyrhizobium japonicum由来、 Methylococcus capsulatus由来、Frankiana由来、Acetobacter pasteurianum由来、Tetrahymena pyriformis由来等のものが知られている。本発明においては、これらの何れのものも使用できるが、中でもAlicyclobacillus acidocaldarius由来のSHCは、遺伝子配列が解明されており、大腸菌によって組換え酵素を発現させ、安定に機能させる方法が知られていることから(前記非特許文献2)、これを使用するのが好ましい。 ホモファルネソールに、SHCを作用させるに当たっては、SHCであるタンパク質を当該基質に直接的に作用させてもよいし、SHCを含有する微生物又は当該微生物の処理物、例えば、死菌化細胞、抽出物、粗精製物等の形態で当該基質に作用させてもよい。 SHCの基質への接触は、SHCを適当な溶媒、例えば水性溶媒や緩衝液に溶解又は分散させて行うのが好ましく、円滑な反応、操作の容易性などの点から、緩衝液を用いて行うのがさらに好ましい。また、これに有機溶媒を共存させて接触させることもできる。 本発明の反応は、反応収率の点から、溶媒のpHを5.2〜6.6として行うのが好ましく、5.2〜6.0として行うのがより好ましい。好適な溶媒としては、pH調整の点から、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の塩を添加した水溶液や、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、燐酸緩衝液等の緩衝液が挙げられ、クエン酸緩衝液がより好ましい。 また、有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。 当該基質の濃度は特に限定されないが、0.01〜3%が好ましく、0.01〜1%がより好ましい。また、ホモファルネソールは、反応系に一括又は連続的に加えることができる。 尚、ホモファルネソールは、ネロリドールを臭素化し、シアノ化し、加水分解することによりホモファルネシル酸とし、さらに還元することにより得ることができる。 反応は、通常30〜70℃、好ましくは50〜60℃で、通常0.5〜100時間程度、好ましくは8〜48時間程度、振とう、撹拌することで行うことができる。 反応系からの化合物(2)の分離回収は、例えば、化合物(2)を含有する反応系に有機溶剤(例えば、n-ヘキサンなど脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、クロロホルムなど非水溶性の有機溶剤、2−プロパノールなどアルコール類等)を一つもしくは複数添加して十分に攪拌した後、水層と有機層に分液させ、化合物(2)を有機層に移行させ、有機層を水層から分離した後に、有機層の溶剤を留去するか、または蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより処理して、化合物(2)を単離精製する方法等が挙げられる。 以下、実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。参考例1 SHC蛋白質の大腸菌での発現(1)SHC発現ベクターの作製 Alicyclobacillus acidocaldarius NBRC15652株を復元培地(NBRC864培地)にて60℃で培養し、MO BIO Laboratories,Inc製UltraCleanTMMicrobial DNA Isolation KitにてゲノムDNAを回収した。回収したゲノムDNAを鋳型とし、Pyrobestポリメラーゼおよびプライマー(プライマー1:5'-GGGGAGGCATATGGCTGAGCAGTTGGTGGAA-3'(配列番号1)、プライマー2:5'-AACGAATTCTCGTCGCCGAGATCGCCACG-3'(配列番号2))を用いてPCR反応(98℃10秒〜55℃5秒〜72℃2分 30サイクル)によってSHC遺伝子断片(1.9kb)を増幅した。 SHC遺伝子断片及びpET3aベクターをそれぞれTakara Bio社製制限酵素NdeI、BamHIによって切断し、両者をTOYOBO社製Ligation Highキットを用いて連結させ、プラスミドpET3a−SHCを作製した。 pET3a−SHCを大腸菌HB101株に形質転換し、その形質転換体からRoche社製High Pure PCR Product Purification KitにてpET3a−SHCを抽出、精製した。 *864培地:Solution A(Yeast Extract 1g,(NH4)2SO4・7H2O 0.5g,CaCl2・2H2O 0.25g,KH2PO4 0.6g, Distilled water 500mL,pH2.5−3.0), Solution B(Glucose 1g, Agar(if need) 20g, Distilled water 500mL,pH5.5−6.0)、Solution AとSolution Bは個々に滅菌処理した後混合した。(2)大腸菌におけるSHCの発現およびSHCの抽出 pET3a−SHCを大腸菌BL21StarTM(DE3)株に形質転換し、その形質転換体をLB−Amp培地(Bacto Trypton 1%,Bact Yeast Extract 0.5%, NaCl 1%, Agar(if need) 0.15%,アンピシリン100μg/mL(滅菌処理後添加))にて30℃で振とう培養した。菌体濁度(OD600)が0.4程度まで増加したところで終濃度100μg/mLになるようにイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、SHCの発現を誘導した。IPTG添加後6〜8時間培養した後、培養液から菌体を遠心分離し、1%TritonX−100を添加した300mMクエン酸バッファー(pH6.0)に再懸濁して超音波処理にて細胞破砕液を調製した。得られた細胞破砕液は遠心分離によって不溶性画分を除去しSHC抽出液を得た。実施例1 SHCによるホモファルネソールの変換反応 下記表に示すpHになるように100mMクエン酸緩衝液、0.2%TritonX−100、0.1%ホモファルネソール、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて14時間反応させた。ホモファルネソールは、3Z,7Z-体、3E,7Z-体、3Z,7E-体、3E,7E-体の4つの異性体混合物である。反応液は5分間氷上に静置して反応を停止させ、酢酸エチルを用いて反応物を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、生成物として(-)-アンブロキサン及び9-エピアンブロキサンが検出された。(-)-アンブロキサンは3E,7E-ホモファルネソールから生成したものである。結果を表1に示す。 ホモファルネソールの変換反応について、非特許文献5のpH5.0における反応(3.0%)と比較して、飛躍的に高収率でアンブロキサンを得ることができた。また、本反応では、(-)-アンブロキサンを不斉的に得ることができた。実施例2 SHCによるホモファルネソールの変換反応2 pH5.6になるように80mMクエン酸緩衝液、0.2%TritonX−100、0.2%ホモファルネソール、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて64時間反応させた。実施例1と同様に反応物を分析したところ、生成物として(-)-アンブロキサン及び9-エピアンブロキサンが検出された。3E,7E-ホモファルネソールから生成した(-)-アンブロキサンの変換率は63%であった。参考例2 SHCによるスクアレンの変換反応 100mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、0.2%TritonX−100、0.1%スクアレン、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて24時間反応させた。反応液は5分間氷上に静置して反応を停止させ、酢酸エチルを用いて反応物を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、生成物としてホペン及びホパノールが検出され、その変換率は100%であった。 非特許文献5でのTLC分析結果と同様に、高選択的にホペン及びホパノールを得ることができた。 pH5.2〜6.6の溶媒中で、ホモファルネソールに、スクアレン−ホペン環化酵素を作用させることを特徴とする(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フランの製造方法。 pHが5.2〜6.0である請求項1記載の製造方法。 スクアレン−ホペン環化酵素がAlicyclobacillus acidocaldarius由来の酵素である請求項1又は2の何れか1項記載の製造方法。 【課題】スクアレン−ホペン環化酵素を用いたホモファルネソールからの(−)−アンブロキサンの製造方法の提供【解決手段】pH5.2〜6.6の溶媒中で、ホモファルネソールに、スクアレン−ホペン環化酵素を作用させることを特徴とする(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フランの製造方法。【選択図】なし配列表


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特許公報(B2)_(−)−アンブロキサンの製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_(−)−アンブロキサンの製造方法
出願番号:2007228877
年次:2013
IPC分類:C12P 17/18,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

早瀬 温子 五十嵐 一暁 JP 5236233 特許公報(B2) 20130405 2007228877 20070904 (−)−アンブロキサンの製造方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 早瀬 温子 五十嵐 一暁 20130717 C12P 17/18 20060101AFI20130627BHJP C12N 15/09 20060101ALI20130627BHJP JPC12P17/18 DC12N15/00 A C12P 17/00 C12N 15/09 CA/REGISTRY(STN) BIOSIS(DIALOG) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) Biol. Chem. Hoppe-Seyler,1986年,vol.367,p.723-9 Biosci. Biotechnol. Biochem.,1998年,vol.62,p.407-11 Protein Science,1997年,vol.6,p.722-4 5 2009060799 20090326 8 20100610 松田 芳子 本発明は、(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フランの製造方法に関する。 3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フラン(「アンブロキサン(登録商標)」とも称する)は、香気特性と残香性に優れたアンバー系調合香料に欠かせない化合物である。 また、光学異性体を比較すると、(−)−アンブロキサンは典型的なアンバー香気を有し、(+)−アンブロキサンは弱い木様香気を有するため、香料としての有用性の点から、高い光学純度で(−)−体を得る必要性が高く、(−)−アンブロキサンの不斉合成方法について、現在研究開発が盛んに行われている。 例えば、下記に示すように、天然植物クラリーセージの抽出物である(−)−スクラレオールを出発原料とし、(+)−スクラレオライドを経由する製造方法が、(−)−アンブロキサンの好適な工業的製法として知られている(非特許文献1)。 しかしながら、この方法においては、天然原料を用いるために、多段階反応であり操作が迂遠である、供給量と供給安定性が満足のいくものではない、(−)−スクラレオールの酸化分解工程においてクロム酸や過マンガン塩などの酸化剤を用いており環境負荷が大きい、という問題があった。 一方、下記に示すように、スクアレン−ホペン環化酵素(Squalene-Hopene cyclase;以下SHCともいう)はスクアレンを基質とし、ホペン、ホパノールといった環状化合物を生成する環化酵素であり、Alicyclobacillus acidocaldarius由来、Zymomonas mobilis由来、Bradyrhizobium japonicum由来、 Methylococcus capsulatus由来、Frankiana由来、Acetobacter pasteurianum由来、Tetrahymena pyriformis由来等のものが知られている。中でもAlicyclobacillus acidocaldarius由来酵素は遺伝子配列が解明されており、大腸菌によって組換え酵素を発現させ、安定に機能させる方法が知られている(非特許文献2)。 近年、この酵素を用いて、種々の基質に対する反応性が検討されている。例えば、ファルネソールを基質とした場合、変換率64%で下記の化合物(a),(b),(c),(d)が7:3:45:9の割合で生成することが報告されている(非特許文献3及び4)。 また、ホモファルネソールを基質とした場合、アンブロキサンが生成することが報告されている(非特許文献5)が、変換率は3%と極めて低く、また、(−)−体の光学純度については言及されていないことから、当該文献は、(−)−アンブロキサンの製造方法をなんら開示するものではない。島田明美, 香料最新技術の特許分析, p.114(1988),シーエムシー出版Sato T. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 62(2), 407-411, 1998Hoshino T. et al., Org. Biomol. Chem., 2, 2650-2657, 2004米村ら, TEAC要旨集, 238-240, 2005Neuman S. et al., Biol. Chem. Hoppe-Sayler, 367, 723-729, 1986 本発明は、スクアレン-ホペン環化酵素を用いた、ホモファルネソールからの(−)−アンブロキサンの製造方法を提供することに関する。 本発明者らは、酵素法によるアンブロキサンの製造法を検討したところ、安価に得られるホモファルネソールを基質とし、pH5.2〜6.6の溶媒中でスクアレン-ホペン環化酵素を作用させることにより、(−)−アンブロキサンが容易に、しかも効率よく製造できることを見出した。 すなわち、本発明は、下記に示すとおり、pH5.2〜6.6の溶媒中で、ホモファルネソール(化合物(1))に、スクアレン−ホペン環化酵素を作用させることを特徴とする(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フラン(化合物(2))の製造方法に係るものである。 本発明の製造方法によれば、安価な出発原料から容易な方法により、(−)−アンブロキサンを、工業的に有利に得ることができる。 スクアレン−ホペン環化酵素は、スクアレンを基質とし、ホペン、ホパノールといった環状化合物を生成する環化酵素であり、Alicyclobacillus acidocaldarius由来、Zymomonas mobilis由来、Bradyrhizobium japonicum由来、 Methylococcus capsulatus由来、Frankiana由来、Acetobacter pasteurianum由来、Tetrahymena pyriformis由来等のものが知られている。本発明においては、これらの何れのものも使用できるが、中でもAlicyclobacillus acidocaldarius由来のSHCは、遺伝子配列が解明されており、大腸菌によって組換え酵素を発現させ、安定に機能させる方法が知られていることから(前記非特許文献2)、これを使用するのが好ましい。 ホモファルネソールに、SHCを作用させるに当たっては、SHCであるタンパク質を当該基質に直接的に作用させてもよいし、SHCを含有する微生物又は当該微生物の処理物、例えば、死菌化細胞、抽出物、粗精製物等の形態で当該基質に作用させてもよい。 SHCの基質への接触は、SHCを適当な溶媒、例えば水性溶媒や緩衝液に溶解又は分散させて行うのが好ましく、円滑な反応、操作の容易性などの点から、緩衝液を用いて行うのがさらに好ましい。また、これに有機溶媒を共存させて接触させることもできる。 本発明の反応は、反応収率の点から、溶媒のpHを5.2〜6.6として行うのが好ましく、5.2〜6.0として行うのがより好ましい。好適な溶媒としては、pH調整の点から、例えば、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の塩を添加した水溶液や、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、燐酸緩衝液等の緩衝液が挙げられ、クエン酸緩衝液がより好ましい。 また、有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、イソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、デカン等の炭化水素類、t−ブタノール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、ジメチルスルホキサイドなどのスルホキサイド類、アセトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類及びこれらの混合物が挙げられる。 当該基質の濃度は特に限定されないが、0.01〜3%が好ましく、0.01〜1%がより好ましい。また、ホモファルネソールは、反応系に一括又は連続的に加えることができる。 尚、ホモファルネソールは、ネロリドールを臭素化し、シアノ化し、加水分解することによりホモファルネシル酸とし、さらに還元することにより得ることができる。 反応は、通常30〜70℃、好ましくは50〜60℃で、通常0.5〜100時間程度、好ましくは8〜48時間程度、振とう、撹拌することで行うことができる。 反応系からの化合物(2)の分離回収は、例えば、化合物(2)を含有する反応系に有機溶剤(例えば、n-ヘキサンなど脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、クロロホルムなど非水溶性の有機溶剤、2−プロパノールなどアルコール類等)を一つもしくは複数添加して十分に攪拌した後、水層と有機層に分液させ、化合物(2)を有機層に移行させ、有機層を水層から分離した後に、有機層の溶剤を留去するか、または蒸留、カラムクロマトグラフィーなどにより処理して、化合物(2)を単離精製する方法等が挙げられる。 以下、実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。参考例1 SHC蛋白質の大腸菌での発現(1)SHC発現ベクターの作製 Alicyclobacillus acidocaldarius NBRC15652株を復元培地(NBRC864培地)にて60℃で培養し、MO BIO Laboratories,Inc製UltraCleanTMMicrobial DNA Isolation KitにてゲノムDNAを回収した。回収したゲノムDNAを鋳型とし、Pyrobestポリメラーゼおよびプライマー(プライマー1:5'-GGGGAGGCATATGGCTGAGCAGTTGGTGGAA-3'(配列番号1)、プライマー2:5'-AACGAATTCTCGTCGCCGAGATCGCCACG-3'(配列番号2))を用いてPCR反応(98℃10秒〜55℃5秒〜72℃2分 30サイクル)によってSHC遺伝子断片(1.9kb)を増幅した。 SHC遺伝子断片及びpET3aベクターをそれぞれTakara Bio社製制限酵素NdeI、BamHIによって切断し、両者をTOYOBO社製Ligation Highキットを用いて連結させ、プラスミドpET3a−SHCを作製した。 pET3a−SHCを大腸菌HB101株に形質転換し、その形質転換体からRoche社製High Pure PCR Product Purification KitにてpET3a−SHCを抽出、精製した。 *864培地:Solution A(Yeast Extract 1g,(NH4)2SO4・7H2O 0.5g,CaCl2・2H2O 0.25g,KH2PO4 0.6g, Distilled water 500mL,pH2.5−3.0), Solution B(Glucose 1g, Agar(if need) 20g, Distilled water 500mL,pH5.5−6.0)、Solution AとSolution Bは個々に滅菌処理した後混合した。(2)大腸菌におけるSHCの発現およびSHCの抽出 pET3a−SHCを大腸菌BL21StarTM(DE3)株に形質転換し、その形質転換体をLB−Amp培地(Bacto Trypton 1%,Bact Yeast Extract 0.5%, NaCl 1%, Agar(if need) 0.15%,アンピシリン100μg/mL(滅菌処理後添加))にて30℃で振とう培養した。菌体濁度(OD600)が0.4程度まで増加したところで終濃度100μg/mLになるようにイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、SHCの発現を誘導した。IPTG添加後6〜8時間培養した後、培養液から菌体を遠心分離し、1%TritonX−100を添加した300mMクエン酸バッファー(pH6.0)に再懸濁して超音波処理にて細胞破砕液を調製した。得られた細胞破砕液は遠心分離によって不溶性画分を除去しSHC抽出液を得た。実施例1 SHCによるホモファルネソールの変換反応 下記表に示すpHになるように100mMクエン酸緩衝液、0.2%TritonX−100、0.1%ホモファルネソール、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて14時間反応させた。ホモファルネソールは、3Z,7Z-体、3E,7Z-体、3Z,7E-体、3E,7E-体の4つの異性体混合物である。反応液は5分間氷上に静置して反応を停止させ、酢酸エチルを用いて反応物を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、生成物として(-)-アンブロキサン及び9-エピアンブロキサンが検出された。(-)-アンブロキサンは3E,7E-ホモファルネソールから生成したものである。結果を表1に示す。 ホモファルネソールの変換反応について、非特許文献5のpH5.0における反応(3.0%)と比較して、飛躍的に高収率でアンブロキサンを得ることができた。また、本反応では、(-)-アンブロキサンを不斉的に得ることができた。実施例2 SHCによるホモファルネソールの変換反応2 pH5.6になるように80mMクエン酸緩衝液、0.2%TritonX−100、0.2%ホモファルネソール、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて64時間反応させた。実施例1と同様に反応物を分析したところ、生成物として(-)-アンブロキサン及び9-エピアンブロキサンが検出された。3E,7E-ホモファルネソールから生成した(-)-アンブロキサンの変換率は63%であった。参考例2 SHCによるスクアレンの変換反応 100mMクエン酸緩衝液(pH6.0)、0.2%TritonX−100、0.1%スクアレン、及びSHC抽出液(蛋白質量5mg)を混合し、60℃にて24時間反応させた。反応液は5分間氷上に静置して反応を停止させ、酢酸エチルを用いて反応物を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果、生成物としてホペン及びホパノールが検出され、その変換率は100%であった。 非特許文献5でのTLC分析結果と同様に、高選択的にホペン及びホパノールを得ることができた。 クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び燐酸緩衝液から選ばれるpH5.2〜6.6の溶媒中で、ホモファルネソールに、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)由来のスクアレン−ホペン環化酵素を作用させることを特徴とする(−)−3a、6、6、9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2、1−b]フランの製造方法。 溶媒がpH5.2〜6.6のクエン酸緩衝液である請求項1記載の製造方法。 ホモファルネソールの濃度が0.01〜3%である請求項1又は2記載の製造方法。 Triton X−100(登録商標)を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。 pHが5.2〜6.0である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。配列表


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