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タイトル:公開特許公報(A)_粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法
出願番号:2007211386
年次:2009
IPC分類:G01N 5/02


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小島 秀蔵 山上 伸一 渡邊 成章 JP 2009008644 公開特許公報(A) 20090115 2007211386 20070814 粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法 日揮株式会社 000004411 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 小島 秀蔵 山上 伸一 渡邊 成章 JP 2007143171 20070530 G01N 5/02 20060101AFI20081212BHJP JPG01N5/02 C 4 1 OL 15 本発明は粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法に関し、さらに詳しくは、少量の粉体により粉体の飛散性を定量評価し、封じ込め設備の定量的設計および性能評価を可能とする粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法に関するものである。 従来、粉体の飛散性を測定する装置としては、何らかの方法で発生させた空気中の粉体をフィルタ上に捕集し、その捕集量を化学的に定量する方法、あるいは、試料空気のレーザー回折情報などから空気中の粉体量情報を得る方法が採用されていた。 粉体の捕集量を化学的に定量する方法を採用した粉体飛散性測定装置としては、Cowherd等が開発したMRI Dustiness Testerが挙げられる。 この測定装置では、容器内でビーカーに入れた粉体を100g程度、容器内の底面に徐々に落下させることによって粉体を飛散させている(例えば、非特許文献1、2参照)。 また、Heubachは10〜200gの粉体をロータリードラムに入れて回転させることによって粉体を飛散させている(例えば、非特許文献2、3参照)。 さらに、Carlsonは、Laboratory Dust Disperserというホッパーから粉体を落とし、これに直交するエアブローにより落下中の粉体を測定用容器に導入している(例えば、非特許文献4参照)。 これらの方法では、空気中に発生した粉体の量を質量濃度として評価できるが、直接、質量を計測する場合には数10mg以上の粉体を捕集する必要がある。そのため、これらの方法では、大量の粉体試料が必要となり、毒性のある粉体の測定や、高価な粉体の測定は困難であった。 また、化学的な分析を実施する場合、数100ng程度の粉体を捕集できれば測定は可能となる。そのため、試料粉体の量を10g程度まで減らすことが可能である。しかしながら、化学的な定量が必要であるため、対象粉体の化学組成毎に異なる分析方法(前処理方法、測定器など)を選定する必要がある。 例えば、測定対象がラクトースの場合、この物質は水溶性であるため、フィルタに捕集したラクトースを10cc程度の水に全量溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより、この溶液を10ppbレベルまで分析することにより、数100ngの定量が可能になる。しかし、水に不溶な粉体の場合、適切な溶媒の選定も必要となる。また、必要な捕集量を確保するまでには、捕集を数時間以上行う必要がある。 このように、粉体の分析においては分析化学に関する高度な知見が必要であり、容易に粉体の飛散量を測定することは困難であった。特に、試料が新薬の場合、試料が少なく、高価であり、かつ、一般的な分析方法も確立されていないため、飛散量の測定は極めて困難である。 一方、粉体濃度測定として、レーザー回折を利用する方法としては、Dust ViewやSTRIKERなどが挙げられる。 Dust Viewでは、容器内で30gの粉体を一度に落下させて、粉体を飛散させている(例えば、非特許文献5参照)。 また、STRIKERでは、粉体を入れたキュベットと呼ばれる容器の底を、ばねによる打器によって数回叩くことにより、粉体を飛散させている(例えば、非特許文献6参照)。 これらの方法では、レーザーを用いて粉体を測定するので、個数濃度に関する情報を迅速に得ることができるものの、個数情報を質量情報に換算するためには、粒径情報および密度情報が必要である。さらに、粒子の形状が単純な球形であれば換算は容易であるが、現実の粉体は複雑な形状をしているため、換算は容易ではなかった。さらに、形状が粉体の種類により異なるため、異なる粉体の比較はさらに困難であった。Cowherd C.JR,M.A.Grelinger,P.J.Englehart,R.F.Kent,K.F.Wong,“An Apparatus and Methodology for Predicting the Dustiness of Materials,”,American Industrial Hygiene Association Journal, 50(3),1989,pp.123−130.Heitbrink W.A.,“Factors Affecting the Heubach and MRI Dustiness Tests”,American Industrial Hygiene Association Journal, 51(4),1990,pp.210−216.Heitbrink W.A.,T.C.Cooper,W.F.Todd,D.M.O’Brien,“Dustiness Testers as a means of evaluating the dust exposure potential of powders”,Proceedings of the Technical Program.Annual Powder & Bulk Solids Conference/Exhibition,1989,pp.539−549.Carlson K.H.,D.R.Herman,T.F.Markey,R.K.Wolff,M.A.Dorato,“A Comparison of Two Dustiness Evaluation Methods”,American Industrial Hygiene Association Journal, 53(7),1992,pp.448−454.Hamelmann F.,E.Schmidt,“Methods for Characterizing the Dustiness Estimation of Powders”,Chemical,Engineering & Technology, 27(8),2004,pp.844−847.Castor W.,A.Gray,“Evaluatingthe dustiness of powders”,Powder Handling & Processing, 2(2),1990,pp.145−148. 上記の従来の粉体飛散性評価方法には、以下のような問題があった。 暴露評価に必要な質量濃度を得る手法では、多量の粉体を用いる必要があるため、高価な薬剤あるいは活性の高い薬剤に対して、経済的あるいは安全性の観点から、飛散性評価を実施することは困難であった。また、従来の方法では、化学分析の必要性があり、多くの種類の薬剤を評価するには、多くの時間を要していた。 一方、少量の試料を用いての評価方法では、暴露評価に必要な粉体の質量への換算が困難であった。なぜならば、暴露評価では、作業者が吸入する薬剤の質量を管理する必要がある。そのため、粉体の飛散性は空気中の個数濃度や、レーザー散乱性ではなく、質量濃度としてまとめる必要がある。 また、従来の方法では、異なる薬剤同士の飛散量の比較は困難であるため、様々な種類の粉体(薬剤)について、化学分析などの特別な分析方法を用いることなく、その飛散量を測定することは困難であった。 また、粉体を飛散させる方法としては、上記のように落下法、回転法、エアブロー法、打撃法などの様々な方法が考案されているが、いずれの方法も原理的に繰り返し精度を高くすることが困難である。 ところで、粉体取扱工程における作業者の粉体吸入量(I)の予測は下記の式(1)で定義できる。 I=C×B×T×P (1) 上記の式(1)中、Iは粉体吸入量[μg]、Cは作業環境粉体濃度[μg/m3]、Bは呼吸速度[m3/h]、Tは作業時間[h]、Pは防護具の防護係数[―]を表している。 さらに、作業環境粉体濃度は下記の式(2)で予測することができる。 C=k×(1/V)×E×A×M×F (2) 上記の式(2)中、Cは作業環境粉体濃度[μg/m3]、kは比例係数[―]、Vは作業環境の換気率[1/h]、Eは機器の封じ込め性能[―]、Aは作業の飛散強度[―]、Mは単位時間当たりの取扱量[kg/h]、Fは粉体飛散性[((μg/m3)・(1/h))/(kg/h)]を表している。 しかしながら、現状、Fの粉体飛散性は、乾燥粉体に対して10、湿式粉体に対して1、固形化剤に対して0.1など定性的な値であり、乾燥粉体の定量的な飛散性を論じることはできなかった。さらに、Aの作業に依存する飛散強度およびEの機器の封じ込め性能についても定量的な評価はされていなかった。 また、試運転において、ラクトースなどの標準粉体を用いた封じ込め性能評価試験データから、実粉体取扱時の予測をすることが困難であった。 このようなことから、従来の方法により得られた粉体の飛散指標から、粉体の飛散濃度を予測することはできなかった。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、少量の試料で粉体の飛散性の評価が可能であり、暴露管理で必要な質量濃度の評価が可能であり、様々な粉体に対して化学分析などの特別な分析方法を用いることなくその質量を測定可能であり、得られた飛散指標により実粉体の飛散濃度が予測可能である粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法を提供することを目的とする。 本発明は、密閉容器内に静置した粉体に定量的に機械的振動を加えることにより、前記密閉容器内にて前記粉体を飛散させ、この飛散した粉体を石英結晶素子上またはピアゾ素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量を水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定することにより、前記密閉容器内の空気中の粉体の飛散濃度を測定する粉体の飛散性評価方法を提供する。 本発明において、前記密閉容器内に静置する粉体の質量が0.1g以上、5g以下であることが好ましい。 本発明は、模擬粉体について、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した前記飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、前記飛散指数dと前記飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、前記検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の前記飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する粉体の飛散濃度評価方法を提供する。 本発明は、本発明の粉体の飛散濃度評価方法により、実際の作業環境における目的とする実粉体の飛散性を予測し、その予測結果に基づいて、粉体の封じ込め施設を設計する粉体の封じ込め施設の設計方法を提供する。 本発明の粉体の飛散性評価方法によれば、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、高価な薬剤などの粉体の飛散性を低コストで評価することが可能となる。また、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、活性の高い粉体の飛散性を評価する際、このような粉体に人体を暴露する危険性を抑制することができる。また、作業環境雰囲気などに含まれる粉体の質量を即時に測定することができるので、粉体の飛散性指標(飛散指数)の測定時間を極めて短くすることができる。また、粉体の暴露管理に必要な粉体の質量情報により、粉体の飛散性を評価することができる。さらに、カスケードインパクターを用いることにより飛散粉体の粒径分布も求めることができる。 本発明の粉体の飛散濃度評価方法によれば、標準粉体(模擬粉体)を用いて、粉体を取り扱う実作業における、目的とする実粉体に対する封じ込め性能の評価が可能となる。 本発明の粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法の最良の形態について説明する。 なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。[粉体の飛散性評価方法] 図1は、本発明の粉体の飛散性評価方法で用いられる、粉体の飛散性評価装置を示す概略構成図である。 この粉体の飛散性評価装置10は、導管を介して順に連結された第一フィルタ11と、密閉容器12と、カスケードインパクター13と、第二フィルタ14と、エアポンプ15と、密閉容器12に振動を加える振動装置16とから概略構成されている。 第一フィルタ11としては、一般的な不織布などからなるエアフィルタなどが用いられる。この第一フィルタ11は、密閉容器12内に導入する空気中の不純物粒子(測定対象の薬剤などの粉体以外の粒子)を除去し、測定精度を上げるために設けられている。 カスケードインパクター13は、粒子の慣性衝突を利用して空気中に飛散(浮遊)している粉体の粒子を捕集する装置であり、この粒子を捕集する分級ステージが、鉛直方向に直列に多数連結されたものであり、上段の分級ステージから順に粒径の大きな粒子を捕集するようになっている。 また、カスケードインパクター13の各分級ステージ内には、石英結晶素子が備えられており、この石英結晶素子上に所定の範囲の粒径の粒子を捕集するようになっている。 さらに、カスケードインパクター13の各分級ステージ内には、水晶振動式微量質量計が備えられており、同じ分級ステージ内に備えられた石英結晶素子上に捕集された粒子を秤量するようになっている。 このようなカスケードインパクター13としては、例えば、QCMカスケードインパクター(型式;PC−2、東京ダイレック社製)が用いられる。また、カスケードインパクターの他に、粉体の粒子を捕集する方法としては、静電捕集法、例えば、ピエゾバランス式粉塵計(型式:3521、カノマックス社製)を用いた捕集法が用いられる。 このカスケードインパクター13は、数十秒という短時間に石英結晶素子上に捕集した微量の粒子の質量基準の粒径分布を測定することが可能であり、空気中の粒子量を即時に粒径別に測定することができる。 密閉容器12としては、その内部に一定量の粉体を封入し、振動装置16によって振動を加えることにより、封入した粉体をその内部にて飛散させることができるものであれば特に限定されず、いかなる容器でも用いられる。 第二フィルタ14としては、一般的な不織布などからなるエアフィルタなどが用いられる。この第二フィルタ14は、エアポンプ15に吸引される空気に含まれる粒子を除去し、エアポンプ15が粒子を吸い込んで故障するのを防止するために設けられている。 エアポンプ15は、密閉容器12内の粒子を含む空気を、一定の流量でカスケードインパクター13内に導入するために用いられる。 振動装置16としては、密閉容器12に定量的に機械的振動を加えることができるものであれば特に限定されないが、例えば、振動発生器あるいはボルテックス(商品名)が用いられる。 ここで、「定量的」とは、密閉容器12に加える機械的振動の強度を数値で表すことができるとともに、再現可能であることをいう。 次に、本発明の粉体の飛散性評価方法を説明する。 本発明の粉体の飛散性評価方法は、密閉容器12内に静置した粉体に、振動装置16によって定量的に機械的振動を加えることにより、密閉容器12内にて粉体を飛散させ、この飛散した粉体をカスケードインパクター13内に備えられた石英結晶素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量をカスケードインパクター13内に備えられた水晶振動式微量質量計により測定することにより、密閉容器12内の空気中の粉体濃度を測定する方法である。 本発明の粉体の飛散性評価方法により評価される粉体は、特に限定されず、いかなる粉体の飛散性も評価することができる。 以下、本発明の粉体の飛散性評価方法を詳細に説明する。 まず、密閉容器12内に所定量の粉体を封入し、実質的に、第一フィルタ11により不純物粒子を除去した空気を用い、密閉容器12内の空気を清浄な空気に置換する。 ここで、密閉容器12に封入する粉体の質量を0.1g以上、5g以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1g以上、3g以下である。 密閉容器12に封入する粉体の質量を0.1g以上、5g以下とすることが好ましい理由は、粉体の質量が0.1g未満では、粉体の量が少な過ぎてカスケードインパクター13による粉体の濃度測定ができず、一方、粉体の質量が5gを超えると、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、測定誤差(ばらつき)が大きくなるからである。 また、密閉容器12の容量、すなわち、粉体を飛散させる空間の容積を100ml以上、300ml以下とすることが好ましい。 密閉容器12の容量を100ml以上、300ml以下とすることが好ましい理由は、密閉容器12の容量が100ml未満では、密閉容器12の壁面に粉体の一部が付着するなどの影響により、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、再現性の高い測定を行うことができず、一方、密閉容器12の容量が300mlを超えると、少量の粉体を密閉容器12内の空気中に高濃度に飛散させることができないため、微量な粉体の濃度測定ができないからである。 次いで、振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加えることにより、密閉容器12内にて粉体を飛散(浮遊)させる。 ここで、振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間を10秒以上、15秒以下とすることが好ましい。 振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間を10秒以上、15秒以下とすることが好ましい理由は、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間が10秒未満では、密閉容器12内の空気中の粉体濃度(空気中に飛散する粉体の濃度、以下、「飛散濃度」という。)が低過ぎて、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定ができず、一方、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間が15秒を超えると、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、測定誤差(ばらつき)が大きくなるからである。 次いで、カスケードインパクター13内に密閉容器12内の粉体を含む空気(粉体が飛散している空気)を吸引(捕集)することにより、密閉容器12内の空気中に飛散した粉体を、カスケードインパクター13内に備えられた石英結晶素子上に捕集する。 また、密閉容器12内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクター13により捕集する時間(サンプリング時間)を150秒以上、200秒以下とすることが好ましい。 サンプリング時間を150秒以上、200秒以下とすることが好ましい理由は、サンプリング時間が150秒未満では、飛散濃度が高いものの、飛散濃度のばらつきが大きいからであり、一方、サンプリング時間が200秒を超えると、飛散濃度が低くなるからである。 次いで、石英結晶素子上に捕集した粉体の質量をカスケードインパクター13内に備えられた水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定する。 その後、得られた粉体の質量と、カスケードインパクター13内に捕集した空気量とから、密閉容器12内における粉体の飛散濃度を算出する。 本発明の粉体の飛散性評価方法によれば、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、高価な薬剤などの粉体の飛散性を低コストで評価することが可能となる。また、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、活性の高い粉体の飛散性を評価する際、このような粉体に人体を暴露する危険性を抑制することができる。また、粉体の濃度を即時に測定することができるので、粉体の飛散性指標(飛散指数)の測定時間を極めて短くすることができる。また、粉体の暴露管理に必要な粉体の質量情報により、粉体の飛散性を評価することができる。さらに、カスケードインパクターを用いることにより粉体の粒径分布も求めることができる。[粉体の飛散濃度評価方法] 本発明の粉体の飛散濃度評価方法は、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した模擬粉体の飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、飛散指数dと飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、検量線F(d)を用いて、飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する。 具体的には、模擬粉体について、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した飛散濃度の対数をとり、飛散指数dを算出する。 これとは別に、模擬粉体について、実際の作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定する。 そして、飛散指数dを横軸とし、実際の作業環境中の粉体の飛散濃度C´の対数を縦軸としてプロットする。 プロットした点を最小二乗法により線形回帰して、検量線F(d)を導出する。 この検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の飛散指数dから、目的とする作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する。 すなわち、検量線F(d)を引いておけば、密閉容器内における目的とする実粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度から飛散指数dを算出することにより、工業レベルの作業環境における目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測することができる。 このようにして予測される作業環境中の粉体の飛散濃度Cは、下記の式(3)で表すことができる。 C=k´×G(h,t)×(1/V)×E×A×M×F(d) (3) 但し、式(3)中、Cは作業環境粉体濃度(μg/m3)、k´は比例係数[―]、G(h,t)は湿度h、温度tに依存する係数[―]、Vは作業環境の換気率[1/h]、Eは機器の封じ込め性能[―]、Aは作業の飛散強度[―]、Mは単位時間当たりの取扱量[kg/h]、F(d)の粉体飛散性は飛散指数dを持つ粉体を1kg/hで単位換気率1/hの環境において、標準操作する際の粉体飛散濃度[((μg/m3)・(1/h))/(kg/h)]を表している。 作業の飛散強度Aは、例えば、標準操作をある手順の移し替えとすると、この移し替えでは1、ある手順の篩過では10、ある手順の小分けでは0.5である。 また、機器の封じ込め性能Eは、例えば、機器無しでは1、ある安全フードでは0.01、あるダウンフローブースでは0.001である。 本発明の粉体の飛散濃度評価方法によれば、標準粉体を用いて、粉体を取り扱う実作業における、粉体の封じ込め性能の評価が可能となる。 また、粉体の封じ込め性能の評価が必要な一例として、医薬品の製剤工場、製薬工場や農薬などの高活性な粉体を取り扱う化学薬品工場における封じ込め施設が挙げられる。このような封じ込め施設は、主に粉体の状態で取り扱われる薬品の作業者への曝露を抑制する機能と、施設周辺環境への漏洩を防ぐ機能を備えている。このような封じ込め施設の封じ込め設計に、本発明の粉体の飛散濃度評価方法を取り入れることにより、粉体の飛散し安さを考慮した施設の設計が可能となる。 以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。「実験例1」 図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、粉体の質量が粉体の飛散濃度に及ぼす影響について調査した。 この実験例1における各種の条件を下記の通りとした。 密閉容器として容量が300mlのフラスコを用いた。 密閉容器内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクターにより捕集・測定した。 粉体としては、ラクトース(DMV Farm製)を用いた。 ラクトースの質量を0.1g、0.2g、0.5g、1g、2g、3g、5g、10gと変化させ、密閉容器内におけるラクトースの飛散濃度を測定した。 なお、ラクトースの質量毎に測定を1〜3回行った。 結果を図2に示す。 図2の結果から、フラスコ内の粉体(ラクトース)の質量を1g以上にすると、フラスコ内の粉体濃度はほぼ一定、すなわち、フラスコ内に入れる粉体量が測定値に与える影響が小さく、飛散指数測定装置として望ましい条件を示すことが分かった。ただし、粉体の質量が5gを超えると、測定値のばらつきが大きくなることが確認された。なお、粉体の質量が0.1gでも測定可能であるが、粉体の質量を正確に測定する(正確に秤量する)必要がある。「実験例2」 粉体として、塩化カルシウム(和光純薬社製)、塩化カリウム(和光純薬社製)、塩化ナトリウム(和光純薬社製)、硫酸ナトリウム(和光純薬社製)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬社製)、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬社製)、酸化マグネシウム(和光純薬社製)、アセトアミノフェンPP(八代製薬社製)、アセトアミノフェンP(八代製薬社製)、グルコース(和光純薬社製)、ラクトース450M(DMV International BV製)、マンニトール(和光純薬社製)、ソルビトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、ラクトース200M(DMV International BV製)、カルピンF(矢橋工業社製)、カルシーF♯2000(矢橋工業社製)、カルシーF♯9850(矢橋工業社製)、カルシーF♯6402(矢橋工業社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定A)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定B)。 それぞれの粉体について、それぞれの操作について測定Aで得られた飛散指数と、測定Bで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図3に示す。 得られた近似曲線から、測定Aで得られた飛散指数と、測定Bで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 したがって、これまでは実設備の試運転時などにおける模擬粉体を用いた運転操作により得られた作業環境中の粉体の飛散濃度から、実粉体取り扱い時における粉体の飛散濃度を評価することはできなかったが、実粉体と、模擬粉体の飛散指数を用いることにより、実粉体取り扱い時における粉体の飛散濃度の評価が可能であることが分かった。「実験例3」 実験例2と同じ環境で、異なる作業をした際の粉体の飛散指数と飛散濃度の関係を調査した。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定C)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作、篩過操作および小分け操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定D)。 それぞれの粉体、それぞれの操作について測定Cで得られた飛散指数と、測定Dで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図4に示す。 得られた近似曲線から、異なる操作においても、測定Cで得られた飛散指数と、測定Dで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 また、本試験の条件において、篩過操作は移し替え操作と比較して約10倍の粉体の飛散が生じる作業であり、本試験の条件において、小分け操作は移し替え操作と比較して約1/2倍の粉体の飛散が生じる作業であることが確認された。「実験例4」 同じ作業を異なる封じ込め機器の中で行った際の粉体の飛散指数と飛散濃度の関係を調査した。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定E)。 また、ダウンフローブース内、安全フード内および封じ込め機器なしの場合、所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定F)。なお、この粉体の飛散濃度の測定は、作業者の呼気に相当する空気中濃度を測定した値である。 それぞれの粉体、それぞれの操作について測定Eで得られた飛散指数と、測定Fで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図5に示す。 得られた近似曲線から、封じ込め機器が異なっていても、測定Eで得られた飛散指数と、測定Fで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 また、封じ込め機器がない場合に対して、本試験で使用した安全フードを利用することにより粉体の飛散濃度を約1/100に低減することができ、本試験で使用したダウンフローブースを利用することにより粉体の飛散濃度を約1/1000に低減することができることが確認された。「実験例5」 実験例2で求めた近似曲線を検量線F(d)とした。 そして、この検量線F(d)および実験例3,4で求めたA、Eを用いて、目的とする粉体(ラクトース(和光純薬社製)、ソルビトール(和光純薬社製)、グルコース(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、水酸化カルシウム(和光純薬社製)、アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬社製)、ホウ酸(和光純薬社製))の飛散指数dから、目的とする作業環境中の粉体の飛散濃度を予測した。 得られた粉体の飛散濃度(予測値)と、実験例3、4で求めたそれぞれの粉体の飛散濃度(実測値)を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図6に示す。 今回発明した手法により、飛散濃度をFactor3程度の精度で予測できることを確認した。「実験例6」 図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、粉体の飛散濃度を測定した。 この実験例6における各種の条件を下記の通りとした。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)をそれぞれ0.1g用いた。 密閉容器として容量が300mlのフラスコを用いた。 密閉容器内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクターにより捕集・測定した。 得られた粉体の飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定G)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定H)。 それぞれの粉体について、それぞれの操作について測定Gで得られた飛散指数と、測定Hで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図7に示す。 得られた近似曲線から、測定Gで得られた飛散指数と、測定Hで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 したがって、粉体の質量を0.1gとしても、実作業における目的とする実粉体の飛散濃度を予測できることが確認された。本発明の粉体の飛散性評価方法で用いられる、粉体の飛散性評価装置を示す概略構成図である。本発明の実験例1において、粉体の質量と粉体の飛散濃度の関係を示すグラフである。本発明の実験例2において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例3において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例4において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例5において、本発明の粉体の飛散濃度評価方法により得られた飛散濃度(予測値)と、実操作における粉体の飛散濃度(実測値)との関係を示すグラフである。本発明の実験例6において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。符号の説明10・・・粉体の飛散性評価装置、11・・・第一フィルタ、12・・・密閉容器、13・・・カスケードインパクター、14・・・第二フィルタ、15・・・エアポンプ、16・・・振動装置。 密閉容器内に静置した粉体に定量的に機械的振動を加えることにより、前記密閉容器内にて前記粉体を飛散させ、この飛散した粉体を石英結晶素子上またはピアゾ素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量を水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定することにより、前記密閉容器内の空気中の粉体の飛散濃度を測定することを特徴とする粉体の飛散性評価方法。 前記密閉容器内に静置する粉体の質量が0.1g以上、5g以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉体の飛散性評価方法。 請求項1または2に記載の粉体の飛散性評価方法により、模擬粉体について測定した前記飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、前記飛散指数dと前記飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、前記検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の前記飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測することを特徴とする粉体の飛散濃度評価方法。 請求項3に記載の粉体の飛散濃度評価方法により、実際の作業環境における目的とする実粉体の飛散性を予測し、その予測結果に基づいて、粉体の封じ込め施設を設計することを特徴とする粉体の封じ込め施設の設計方法。 【課題】少量の試料で粉体の飛散性の評価が可能であり、暴露管理で必要な質量濃度の評価が可能であり、様々な粉体に対して化学分析などの特別な分析方法を用いることなくその質量を測定可能であり、得られた飛散指標により実粉体の飛散濃度が予測可能である粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法を提供する。【解決手段】本発明の粉体の飛散性評価方法は、密閉容器12内に静置した粉体に定量的に機械的振動を加えることにより、密閉容器12内にて粉体を飛散させ、この飛散した粉体を石英結晶素子上またはピアゾ素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量を水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定することにより、密閉容器12内の空気中の粉体の飛散濃度を測定する。【選択図】図1


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特許公報(B2)_粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法
出願番号:2007211386
年次:2012
IPC分類:G01N 5/02


特許情報キャッシュ

小島 秀蔵 山上 伸一 渡邊 成章 JP 4909838 特許公報(B2) 20120120 2007211386 20070814 粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法 日揮株式会社 000004411 志賀 正武 100064908 高橋 詔男 100108578 渡邊 隆 100089037 鈴木 三義 100094400 西 和哉 100107836 村山 靖彦 100108453 小島 秀蔵 山上 伸一 渡邊 成章 JP 2007143171 20070530 20120404 G01N 5/02 20060101AFI20120315BHJP JPG01N5/02 C G01N 5/00−9/36 JSTPlus(JDreamII) 実開昭58−145544(JP,U) 特開平4−191639(JP,A) 特開平2−307037(JP,A) 特開2007−101331(JP,A) 特開昭56−166448(JP,A) 4 2009008644 20090115 14 20100603 黒田 浩一 本発明は粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法に関し、さらに詳しくは、少量の粉体により粉体の飛散性を定量評価し、封じ込め設備の定量的設計および性能評価を可能とする粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法に関するものである。 従来、粉体の飛散性を測定する装置としては、何らかの方法で発生させた空気中の粉体をフィルタ上に捕集し、その捕集量を化学的に定量する方法、あるいは、試料空気のレーザー回折情報などから空気中の粉体量情報を得る方法が採用されていた。 粉体の捕集量を化学的に定量する方法を採用した粉体飛散性測定装置としては、Cowherd等が開発したMRI Dustiness Testerが挙げられる。 この測定装置では、容器内でビーカーに入れた粉体を100g程度、容器内の底面に徐々に落下させることによって粉体を飛散させている(例えば、非特許文献1、2参照)。 また、Heubachは10〜200gの粉体をロータリードラムに入れて回転させることによって粉体を飛散させている(例えば、非特許文献2、3参照)。 さらに、Carlsonは、Laboratory Dust Disperserというホッパーから粉体を落とし、これに直交するエアブローにより落下中の粉体を測定用容器に導入している(例えば、非特許文献4参照)。 これらの方法では、空気中に発生した粉体の量を質量濃度として評価できるが、直接、質量を計測する場合には数10mg以上の粉体を捕集する必要がある。そのため、これらの方法では、大量の粉体試料が必要となり、毒性のある粉体の測定や、高価な粉体の測定は困難であった。 また、化学的な分析を実施する場合、数100ng程度の粉体を捕集できれば測定は可能となる。そのため、試料粉体の量を10g程度まで減らすことが可能である。しかしながら、化学的な定量が必要であるため、対象粉体の化学組成毎に異なる分析方法(前処理方法、測定器など)を選定する必要がある。 例えば、測定対象がラクトースの場合、この物質は水溶性であるため、フィルタに捕集したラクトースを10cc程度の水に全量溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより、この溶液を10ppbレベルまで分析することにより、数100ngの定量が可能になる。しかし、水に不溶な粉体の場合、適切な溶媒の選定も必要となる。また、必要な捕集量を確保するまでには、捕集を数時間以上行う必要がある。 このように、粉体の分析においては分析化学に関する高度な知見が必要であり、容易に粉体の飛散量を測定することは困難であった。特に、試料が新薬の場合、試料が少なく、高価であり、かつ、一般的な分析方法も確立されていないため、飛散量の測定は極めて困難である。 一方、粉体濃度測定として、レーザー回折を利用する方法としては、Dust ViewやSTRIKERなどが挙げられる。 Dust Viewでは、容器内で30gの粉体を一度に落下させて、粉体を飛散させている(例えば、非特許文献5参照)。 また、STRIKERでは、粉体を入れたキュベットと呼ばれる容器の底を、ばねによる打器によって数回叩くことにより、粉体を飛散させている(例えば、非特許文献6参照)。 これらの方法では、レーザーを用いて粉体を測定するので、個数濃度に関する情報を迅速に得ることができるものの、個数情報を質量情報に換算するためには、粒径情報および密度情報が必要である。さらに、粒子の形状が単純な球形であれば換算は容易であるが、現実の粉体は複雑な形状をしているため、換算は容易ではなかった。さらに、形状が粉体の種類により異なるため、異なる粉体の比較はさらに困難であった。Cowherd C.JR,M.A.Grelinger,P.J.Englehart,R.F.Kent,K.F.Wong,“An Apparatus and Methodology for Predicting the Dustiness of Materials,”,American Industrial Hygiene Association Journal, 50(3),1989,pp.123−130.Heitbrink W.A.,“Factors Affecting the Heubach and MRI Dustiness Tests”,American Industrial Hygiene Association Journal, 51(4),1990,pp.210−216.Heitbrink W.A.,T.C.Cooper,W.F.Todd,D.M.O’Brien,“Dustiness Testers as a means of evaluating the dust exposure potential of powders”,Proceedings of the Technical Program.Annual Powder & Bulk Solids Conference/Exhibition,1989,pp.539−549.Carlson K.H.,D.R.Herman,T.F.Markey,R.K.Wolff,M.A.Dorato,“A Comparison of Two Dustiness Evaluation Methods”,American Industrial Hygiene Association Journal, 53(7),1992,pp.448−454.Hamelmann F.,E.Schmidt,“Methods for Characterizing the Dustiness Estimation of Powders”,Chemical,Engineering & Technology, 27(8),2004,pp.844−847.Castor W.,A.Gray,“Evaluatingthe dustiness of powders”,Powder Handling & Processing, 2(2),1990,pp.145−148. 上記の従来の粉体飛散性評価方法には、以下のような問題があった。 暴露評価に必要な質量濃度を得る手法では、多量の粉体を用いる必要があるため、高価な薬剤あるいは活性の高い薬剤に対して、経済的あるいは安全性の観点から、飛散性評価を実施することは困難であった。また、従来の方法では、化学分析の必要性があり、多くの種類の薬剤を評価するには、多くの時間を要していた。 一方、少量の試料を用いての評価方法では、暴露評価に必要な粉体の質量への換算が困難であった。なぜならば、暴露評価では、作業者が吸入する薬剤の質量を管理する必要がある。そのため、粉体の飛散性は空気中の個数濃度や、レーザー散乱性ではなく、質量濃度としてまとめる必要がある。 また、従来の方法では、異なる薬剤同士の飛散量の比較は困難であるため、様々な種類の粉体(薬剤)について、化学分析などの特別な分析方法を用いることなく、その飛散量を測定することは困難であった。 また、粉体を飛散させる方法としては、上記のように落下法、回転法、エアブロー法、打撃法などの様々な方法が考案されているが、いずれの方法も原理的に繰り返し精度を高くすることが困難である。 ところで、粉体取扱工程における作業者の粉体吸入量(I)の予測は下記の式(1)で定義できる。 I=C×B×T×P (1) 上記の式(1)中、Iは粉体吸入量[μg]、Cは作業環境粉体濃度[μg/m3]、Bは呼吸速度[m3/h]、Tは作業時間[h]、Pは防護具の防護係数[―]を表している。 さらに、作業環境粉体濃度は下記の式(2)で予測することができる。 C=k×(1/V)×E×A×M×F (2) 上記の式(2)中、Cは作業環境粉体濃度[μg/m3]、kは比例係数[―]、Vは作業環境の換気率[1/h]、Eは機器の封じ込め性能[―]、Aは作業の飛散強度[―]、Mは単位時間当たりの取扱量[kg/h]、Fは粉体飛散性[((μg/m3)・(1/h))/(kg/h)]を表している。 しかしながら、現状、Fの粉体飛散性は、乾燥粉体に対して10、湿式粉体に対して1、固形化剤に対して0.1など定性的な値であり、乾燥粉体の定量的な飛散性を論じることはできなかった。さらに、Aの作業に依存する飛散強度およびEの機器の封じ込め性能についても定量的な評価はされていなかった。 また、試運転において、ラクトースなどの標準粉体を用いた封じ込め性能評価試験データから、実粉体取扱時の予測をすることが困難であった。 このようなことから、従来の方法により得られた粉体の飛散指標から、粉体の飛散濃度を予測することはできなかった。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、少量の試料で粉体の飛散性の評価が可能であり、暴露管理で必要な質量濃度の評価が可能であり、様々な粉体に対して化学分析などの特別な分析方法を用いることなくその質量を測定可能であり、得られた飛散指標により実粉体の飛散濃度が予測可能である粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法、並びに、これらを用いた粉体の封じ込め施設の設計方法を提供することを目的とする。 本発明は、密閉容器内に静置した粉体に定量的に機械的振動を加えることにより、前記密閉容器内にて前記粉体を飛散させ、この飛散した粉体を石英結晶素子上またはピアゾ素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量を水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定することにより、前記密閉容器内の空気中の粉体の飛散濃度を測定する粉体の飛散性評価方法を提供する。 本発明において、前記密閉容器内に静置する粉体の質量が0.1g以上、5g以下であることが好ましい。 本発明は、模擬粉体について、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した前記飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、前記飛散指数dと前記飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、前記検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の前記飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する粉体の飛散濃度評価方法を提供する。 本発明は、本発明の粉体の飛散濃度評価方法により、実際の作業環境における目的とする実粉体の飛散性を予測し、その予測結果に基づいて、粉体の封じ込め施設を設計する粉体の封じ込め施設の設計方法を提供する。 本発明の粉体の飛散性評価方法によれば、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、高価な薬剤などの粉体の飛散性を低コストで評価することが可能となる。また、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、活性の高い粉体の飛散性を評価する際、このような粉体に人体を暴露する危険性を抑制することができる。また、作業環境雰囲気などに含まれる粉体の質量を即時に測定することができるので、粉体の飛散性指標(飛散指数)の測定時間を極めて短くすることができる。また、粉体の暴露管理に必要な粉体の質量情報により、粉体の飛散性を評価することができる。さらに、カスケードインパクターを用いることにより飛散粉体の粒径分布も求めることができる。 本発明の粉体の飛散濃度評価方法によれば、標準粉体(模擬粉体)を用いて、粉体を取り扱う実作業における、目的とする実粉体に対する封じ込め性能の評価が可能となる。 本発明の粉体の飛散性評価方法および粉体の飛散濃度評価方法の最良の形態について説明する。 なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。[粉体の飛散性評価方法] 図1は、本発明の粉体の飛散性評価方法で用いられる、粉体の飛散性評価装置を示す概略構成図である。 この粉体の飛散性評価装置10は、導管を介して順に連結された第一フィルタ11と、密閉容器12と、カスケードインパクター13と、第二フィルタ14と、エアポンプ15と、密閉容器12に振動を加える振動装置16とから概略構成されている。 第一フィルタ11としては、一般的な不織布などからなるエアフィルタなどが用いられる。この第一フィルタ11は、密閉容器12内に導入する空気中の不純物粒子(測定対象の薬剤などの粉体以外の粒子)を除去し、測定精度を上げるために設けられている。 カスケードインパクター13は、粒子の慣性衝突を利用して空気中に飛散(浮遊)している粉体の粒子を捕集する装置であり、この粒子を捕集する分級ステージが、鉛直方向に直列に多数連結されたものであり、上段の分級ステージから順に粒径の大きな粒子を捕集するようになっている。 また、カスケードインパクター13の各分級ステージ内には、石英結晶素子が備えられており、この石英結晶素子上に所定の範囲の粒径の粒子を捕集するようになっている。 さらに、カスケードインパクター13の各分級ステージ内には、水晶振動式微量質量計が備えられており、同じ分級ステージ内に備えられた石英結晶素子上に捕集された粒子を秤量するようになっている。 このようなカスケードインパクター13としては、例えば、QCMカスケードインパクター(型式;PC−2、東京ダイレック社製)が用いられる。また、カスケードインパクターの他に、粉体の粒子を捕集する方法としては、静電捕集法、例えば、ピエゾバランス式粉塵計(型式:3521、カノマックス社製)を用いた捕集法が用いられる。 このカスケードインパクター13は、数十秒という短時間に石英結晶素子上に捕集した微量の粒子の質量基準の粒径分布を測定することが可能であり、空気中の粒子量を即時に粒径別に測定することができる。 密閉容器12としては、その内部に一定量の粉体を封入し、振動装置16によって振動を加えることにより、封入した粉体をその内部にて飛散させることができるものであれば特に限定されず、いかなる容器でも用いられる。 第二フィルタ14としては、一般的な不織布などからなるエアフィルタなどが用いられる。この第二フィルタ14は、エアポンプ15に吸引される空気に含まれる粒子を除去し、エアポンプ15が粒子を吸い込んで故障するのを防止するために設けられている。 エアポンプ15は、密閉容器12内の粒子を含む空気を、一定の流量でカスケードインパクター13内に導入するために用いられる。 振動装置16としては、密閉容器12に定量的に機械的振動を加えることができるものであれば特に限定されないが、例えば、振動発生器あるいはボルテックス(商品名)が用いられる。 ここで、「定量的」とは、密閉容器12に加える機械的振動の強度を数値で表すことができるとともに、再現可能であることをいう。 次に、本発明の粉体の飛散性評価方法を説明する。 本発明の粉体の飛散性評価方法は、密閉容器12内に静置した粉体に、振動装置16によって定量的に機械的振動を加えることにより、密閉容器12内にて粉体を飛散させ、この飛散した粉体をカスケードインパクター13内に備えられた石英結晶素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量をカスケードインパクター13内に備えられた水晶振動式微量質量計により測定することにより、密閉容器12内の空気中の粉体濃度を測定する方法である。 本発明の粉体の飛散性評価方法により評価される粉体は、特に限定されず、いかなる粉体の飛散性も評価することができる。 以下、本発明の粉体の飛散性評価方法を詳細に説明する。 まず、密閉容器12内に所定量の粉体を封入し、実質的に、第一フィルタ11により不純物粒子を除去した空気を用い、密閉容器12内の空気を清浄な空気に置換する。 ここで、密閉容器12に封入する粉体の質量を0.1g以上、5g以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1g以上、3g以下である。 密閉容器12に封入する粉体の質量を0.1g以上、5g以下とすることが好ましい理由は、粉体の質量が0.1g未満では、粉体の量が少な過ぎてカスケードインパクター13による粉体の濃度測定ができず、一方、粉体の質量が5gを超えると、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、測定誤差(ばらつき)が大きくなるからである。 また、密閉容器12の容量、すなわち、粉体を飛散させる空間の容積を100ml以上、300ml以下とすることが好ましい。 密閉容器12の容量を100ml以上、300ml以下とすることが好ましい理由は、密閉容器12の容量が100ml未満では、密閉容器12の壁面に粉体の一部が付着するなどの影響により、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、再現性の高い測定を行うことができず、一方、密閉容器12の容量が300mlを超えると、少量の粉体を密閉容器12内の空気中に高濃度に飛散させることができないため、微量な粉体の濃度測定ができないからである。 次いで、振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加えることにより、密閉容器12内にて粉体を飛散(浮遊)させる。 ここで、振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間を10秒以上、15秒以下とすることが好ましい。 振動装置16によって、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間を10秒以上、15秒以下とすることが好ましい理由は、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間が10秒未満では、密閉容器12内の空気中の粉体濃度(空気中に飛散する粉体の濃度、以下、「飛散濃度」という。)が低過ぎて、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定ができず、一方、密閉容器12に定量的に機械的振動を加える時間が15秒を超えると、カスケードインパクター13による粉体の濃度測定において、測定誤差(ばらつき)が大きくなるからである。 次いで、カスケードインパクター13内に密閉容器12内の粉体を含む空気(粉体が飛散している空気)を吸引(捕集)することにより、密閉容器12内の空気中に飛散した粉体を、カスケードインパクター13内に備えられた石英結晶素子上に捕集する。 また、密閉容器12内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクター13により捕集する時間(サンプリング時間)を150秒以上、200秒以下とすることが好ましい。 サンプリング時間を150秒以上、200秒以下とすることが好ましい理由は、サンプリング時間が150秒未満では、飛散濃度が高いものの、飛散濃度のばらつきが大きいからであり、一方、サンプリング時間が200秒を超えると、飛散濃度が低くなるからである。 次いで、石英結晶素子上に捕集した粉体の質量をカスケードインパクター13内に備えられた水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定する。 その後、得られた粉体の質量と、カスケードインパクター13内に捕集した空気量とから、密閉容器12内における粉体の飛散濃度を算出する。 本発明の粉体の飛散性評価方法によれば、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、高価な薬剤などの粉体の飛散性を低コストで評価することが可能となる。また、少量の試料で粉体の飛散性を評価することができるので、活性の高い粉体の飛散性を評価する際、このような粉体に人体を暴露する危険性を抑制することができる。また、粉体の濃度を即時に測定することができるので、粉体の飛散性指標(飛散指数)の測定時間を極めて短くすることができる。また、粉体の暴露管理に必要な粉体の質量情報により、粉体の飛散性を評価することができる。さらに、カスケードインパクターを用いることにより粉体の粒径分布も求めることができる。[粉体の飛散濃度評価方法] 本発明の粉体の飛散濃度評価方法は、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した模擬粉体の飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、飛散指数dと飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、検量線F(d)を用いて、飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する。 具体的には、模擬粉体について、本発明の粉体の飛散性評価方法により測定した飛散濃度の対数をとり、飛散指数dを算出する。 これとは別に、模擬粉体について、実際の作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定する。 そして、飛散指数dを横軸とし、実際の作業環境中の粉体の飛散濃度C´の対数を縦軸としてプロットする。 プロットした点を最小二乗法により線形回帰して、検量線F(d)を導出する。 この検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の飛散指数dから、目的とする作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測する。 すなわち、検量線F(d)を引いておけば、密閉容器内における目的とする実粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度から飛散指数dを算出することにより、工業レベルの作業環境における目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測することができる。 このようにして予測される作業環境中の粉体の飛散濃度Cは、下記の式(3)で表すことができる。 C=k´×G(h,t)×(1/V)×E×A×M×F(d) (3) 但し、式(3)中、Cは作業環境粉体濃度(μg/m3)、k´は比例係数[―]、G(h,t)は湿度h、温度tに依存する係数[―]、Vは作業環境の換気率[1/h]、Eは機器の封じ込め性能[―]、Aは作業の飛散強度[―]、Mは単位時間当たりの取扱量[kg/h]、F(d)の粉体飛散性は飛散指数dを持つ粉体を1kg/hで単位換気率1/hの環境において、標準操作する際の粉体飛散濃度[((μg/m3)・(1/h))/(kg/h)]を表している。 作業の飛散強度Aは、例えば、標準操作をある手順の移し替えとすると、この移し替えでは1、ある手順の篩過では10、ある手順の小分けでは0.5である。 また、機器の封じ込め性能Eは、例えば、機器無しでは1、ある安全フードでは0.01、あるダウンフローブースでは0.001である。 本発明の粉体の飛散濃度評価方法によれば、標準粉体を用いて、粉体を取り扱う実作業における、粉体の封じ込め性能の評価が可能となる。 また、粉体の封じ込め性能の評価が必要な一例として、医薬品の製剤工場、製薬工場や農薬などの高活性な粉体を取り扱う化学薬品工場における封じ込め施設が挙げられる。このような封じ込め施設は、主に粉体の状態で取り扱われる薬品の作業者への曝露を抑制する機能と、施設周辺環境への漏洩を防ぐ機能を備えている。このような封じ込め施設の封じ込め設計に、本発明の粉体の飛散濃度評価方法を取り入れることにより、粉体の飛散し安さを考慮した施設の設計が可能となる。 以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。「実験例1」 図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、粉体の質量が粉体の飛散濃度に及ぼす影響について調査した。 この実験例1における各種の条件を下記の通りとした。 密閉容器として容量が300mlのフラスコを用いた。 密閉容器内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクターにより捕集・測定した。 粉体としては、ラクトース(DMV Farm製)を用いた。 ラクトースの質量を0.1g、0.2g、0.5g、1g、2g、3g、5g、10gと変化させ、密閉容器内におけるラクトースの飛散濃度を測定した。 なお、ラクトースの質量毎に測定を1〜3回行った。 結果を図2に示す。 図2の結果から、フラスコ内の粉体(ラクトース)の質量を1g以上にすると、フラスコ内の粉体濃度はほぼ一定、すなわち、フラスコ内に入れる粉体量が測定値に与える影響が小さく、飛散指数測定装置として望ましい条件を示すことが分かった。ただし、粉体の質量が5gを超えると、測定値のばらつきが大きくなることが確認された。なお、粉体の質量が0.1gでも測定可能であるが、粉体の質量を正確に測定する(正確に秤量する)必要がある。「実験例2」 粉体として、塩化カルシウム(和光純薬社製)、塩化カリウム(和光純薬社製)、塩化ナトリウム(和光純薬社製)、硫酸ナトリウム(和光純薬社製)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬社製)、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬社製)、酸化マグネシウム(和光純薬社製)、アセトアミノフェンPP(八代製薬社製)、アセトアミノフェンP(八代製薬社製)、グルコース(和光純薬社製)、ラクトース450M(DMV International BV製)、マンニトール(和光純薬社製)、ソルビトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、ラクトース200M(DMV International BV製)、カルピンF(矢橋工業社製)、カルシーF♯2000(矢橋工業社製)、カルシーF♯9850(矢橋工業社製)、カルシーF♯6402(矢橋工業社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定A)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定B)。 それぞれの粉体について、それぞれの操作について測定Aで得られた飛散指数と、測定Bで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図3に示す。 得られた近似曲線から、測定Aで得られた飛散指数と、測定Bで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 したがって、これまでは実設備の試運転時などにおける模擬粉体を用いた運転操作により得られた作業環境中の粉体の飛散濃度から、実粉体取り扱い時における粉体の飛散濃度を評価することはできなかったが、実粉体と、模擬粉体の飛散指数を用いることにより、実粉体取り扱い時における粉体の飛散濃度の評価が可能であることが分かった。「実験例3」 実験例2と同じ環境で、異なる作業をした際の粉体の飛散指数と飛散濃度の関係を調査した。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)、炭酸水素ナトリウム(和光純薬社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定C)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作、篩過操作および小分け操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定D)。 それぞれの粉体、それぞれの操作について測定Cで得られた飛散指数と、測定Dで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図4に示す。 得られた近似曲線から、異なる操作においても、測定Cで得られた飛散指数と、測定Dで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 また、本試験の条件において、篩過操作は移し替え操作と比較して約10倍の粉体の飛散が生じる作業であり、本試験の条件において、小分け操作は移し替え操作と比較して約1/2倍の粉体の飛散が生じる作業であることが確認された。「実験例4」 同じ作業を異なる封じ込め機器の中で行った際の粉体の飛散指数と飛散濃度の関係を調査した。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)をそれぞれ1.0g用意し、図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、密閉容器12内におけるこれらの粉体の飛散濃度を測定し、この飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定E)。 また、ダウンフローブース内、安全フード内および封じ込め機器なしの場合、所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定F)。なお、この粉体の飛散濃度の測定は、作業者の呼気に相当する空気中濃度を測定した値である。 それぞれの粉体、それぞれの操作について測定Eで得られた飛散指数と、測定Fで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図5に示す。 得られた近似曲線から、封じ込め機器が異なっていても、測定Eで得られた飛散指数と、測定Fで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 また、封じ込め機器がない場合に対して、本試験で使用した安全フードを利用することにより粉体の飛散濃度を約1/100に低減することができ、本試験で使用したダウンフローブースを利用することにより粉体の飛散濃度を約1/1000に低減することができることが確認された。「実験例5」 実験例2で求めた近似曲線を検量線F(d)とした。 そして、この検量線F(d)および実験例3,4で求めたA、Eを用いて、目的とする粉体(ラクトース(和光純薬社製)、ソルビトール(和光純薬社製)、グルコース(和光純薬社製)、マンニトール(和光純薬社製)、水酸化カルシウム(和光純薬社製)、アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬社製)、ホウ酸(和光純薬社製))の飛散指数dから、目的とする作業環境中の粉体の飛散濃度を予測した。 得られた粉体の飛散濃度(予測値)と、実験例3、4で求めたそれぞれの粉体の飛散濃度(実測値)を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図6に示す。 今回発明した手法により、飛散濃度をFactor3程度の精度で予測できることを確認した。「実験例6」 図1に示すような粉体の飛散性評価装置を用いて、粉体の飛散濃度を測定した。 この実験例6における各種の条件を下記の通りとした。 粉体として、ソルビトール(和光純薬社製)、ラクトース100M(DMV International BV製)、グルコース(和光純薬社製)をそれぞれ0.1g用いた。 密閉容器として容量が300mlのフラスコを用いた。 密閉容器内の空気中に飛散した粉体をカスケードインパクターにより捕集・測定した。 得られた粉体の飛散濃度の対数をとり、飛散指数を算出した(測定G)。 また、ダウンフローブース内の机において所定量の粉体を原容器から所定量ずつ別の容器に移し替える操作において、それぞれの粉体を取り扱ったときの作業環境中の粉体の飛散濃度C´を測定した。カセットフィルターに捕集した飛散粒子を適切な溶媒(水、アルコールなど)に溶解し、対象物に応じた化学分析(イオンクロマトグラフィー、ICP−AESなど)を実施することにより捕集した粉体量を求め、これを捕集空気量で除することにより作業中の粉体の飛散濃度を求めた(測定H)。 それぞれの粉体について、それぞれの操作について測定Gで得られた飛散指数と、測定Hで得られた飛散濃度を対応させてプロットし、このプロットした点を最小二乗法により線形回帰して、近似曲線を得た。結果を図7に示す。 得られた近似曲線から、測定Gで得られた飛散指数と、測定Hで得られた飛散濃度の対数はほぼ比例関係にあることが確認された。 したがって、粉体の質量を0.1gとしても、実作業における目的とする実粉体の飛散濃度を予測できることが確認された。本発明の粉体の飛散性評価方法で用いられる、粉体の飛散性評価装置を示す概略構成図である。本発明の実験例1において、粉体の質量と粉体の飛散濃度の関係を示すグラフである。本発明の実験例2において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例3において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例4において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。本発明の実験例5において、本発明の粉体の飛散濃度評価方法により得られた飛散濃度(予測値)と、実操作における粉体の飛散濃度(実測値)との関係を示すグラフである。本発明の実験例6において、本発明の粉体の飛散性評価方法により得られた飛散指数と、実操作における粉体の飛散濃度との関係を示すグラフである。符号の説明10・・・粉体の飛散性評価装置、11・・・第一フィルタ、12・・・密閉容器、13・・・カスケードインパクター、14・・・第二フィルタ、15・・・エアポンプ、16・・・振動装置。 密閉容器内に静置した粉体に定量的に機械的振動を加えることにより、前記密閉容器内にて前記粉体を飛散させ、この飛散した粉体を石英結晶素子上またはピアゾ素子上に捕集し、この捕集した粉体の質量を水晶振動式微量質量計またはピアゾ素子質量計により測定することにより、前記密閉容器内の空気中の粉体の飛散濃度を測定することを特徴とする粉体の飛散性評価方法。 前記密閉容器内に静置する粉体の質量が0.1g以上、5g以下であることを特徴とする請求項1に記載の粉体の飛散性評価方法。 請求項1または2に記載の粉体の飛散性評価方法により、模擬粉体について測定した前記飛散濃度の対数(飛散指数d)を導出し、これとは別に、作業環境中の模擬粉体の飛散濃度C´を測定し、前記飛散指数dと前記飛散濃度C´から、検量線F(d)を導出し、前記検量線F(d)を用いて、目的とする実粉体の前記飛散指数dから作業環境中の目的とする実粉体の飛散濃度Cを予測することを特徴とする粉体の飛散濃度評価方法。 請求項3に記載の粉体の飛散濃度評価方法により、実際の作業環境における目的とする実粉体の飛散性を予測し、その予測結果に基づいて、粉体の封じ込め施設を設計することを特徴とする粉体の封じ込め施設の設計方法。


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