タイトル: | 公開特許公報(A)_重合性ホスホン酸誘導体およびそれを含有する接着性組成物 |
出願番号: | 2007210984 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07F 9/38,A61K 6/00,C09J 4/00,C08F 30/02 |
池村 邦夫 上月 礼亨 伊藤 聡 JP 2009046397 公開特許公報(A) 20090305 2007210984 20070813 重合性ホスホン酸誘導体およびそれを含有する接着性組成物 株式会社松風 390011143 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 矢野 正樹 100106231 池村 邦夫 上月 礼亨 伊藤 聡 C07F 9/38 20060101AFI20090206BHJP A61K 6/00 20060101ALI20090206BHJP C09J 4/00 20060101ALI20090206BHJP C08F 30/02 20060101ALI20090206BHJP JPC07F9/38 CA61K6/00 AC09J4/00C08F30/02 10 OL 20 4C089 4H050 4J040 4J100 4C089AA10 4C089BD10 4C089CA03 4H050AA01 4H050AA03 4H050AB46 4H050AB99 4J040FA011 4J040FA091 4J040FA211 4J040GA07 4J040GA25 4J040GA28 4J040LA07 4J040MA14 4J040NA03 4J100AB07Q 4J100AJ02Q 4J100AL08Q 4J100AL62R 4J100AL65Q 4J100AL65R 4J100AL67R 4J100AL69R 4J100AM21P 4J100AM21Q 4J100BA02R 4J100BA15Q 4J100BA16Q 4J100BA34P 4J100BA38R 4J100BA56Q 4J100BA64P 4J100BA64Q 4J100BA65Q 4J100BC43P 4J100BC43Q 4J100BC43R 4J100BC45R 4J100BC55Q 4J100CA01 4J100CA05 4J100DA47 4J100JA03 4J100JA52 本発明は、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体に関する。さらに、本発明は、前記重合性ホスホン酸誘導体を含有し、歯質と歯科用修復材との接着において、強力な接着性を発現しうる接着剤またはプライマーのごとき接着性組成物に関する。 歯科臨床では、歯牙のう蝕部を除去して窩洞形成し、窩洞の歯科用接着剤処理後、コンポジットレジンを充填するう蝕治療がなされている。しかし、これらの材料の歯質接着性が不十分な場合、歯髄刺激や二次う蝕やコンポジットの脱落などが問題となっている。 歯科用接着剤では、従来、分子内に酸性基を有する(メタ)アクリレート系モノマーなどの接着性モノマーを必須として含む1液性のセルフエッチングプライマーや1液性の1ステップボンディング材などが提案され製品化されているが、強い酸性溶液中で(メタ)アクリレート系モノマーなどのエステル結合が加水分解することや接着剤と歯質との接着界面での加水分解などにより接着性が低下するといった問題がある。 最近、接着性に対する不安要素を解決するため、酸性基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに関する技術が多く開示されている。 マクロモレキュール・ケミストリー・フィジックス 200巻、1062−1067頁(1999年)には、エステル結合を有さないホスホン酸基含有モノマーが加水分解による接着劣化を防ぎ製品の棚寿命を改善するという報告がある。 特開2003−89613号公報およびジャーナル・オブ・デンタル・リサーチ、83巻、特別号、演題No.#2661には、N−メタクリロイル−ω−アミノアルキルホスホン酸およびN−メタクリロイルグリシンを含むセルフエッチングプライマーが、加水分解による接着性能の劣化を改善することが報告されている。 しかし、N−メタクリロイル−ω−アミノアルキルホスホン酸の例えばN−メタクリロイルアミノエチルホスホン酸は水系プライマーでの加水分解安定性に優れるものの疎水系レジンに溶解しない欠点がある。 最近、いわゆる加水分解安定性を標榜する接着性モノマーが数多く報告されている。そのような接着性モノマーは、特開2006−176511号公報、特開2006−176522号公報、特開2006−199695号公報、特開2006−514114号公報、および特開2006−520344号公報などにより報告されている。 この中で、特開2006−176511号公報、特開2006−176522号公報および特開2006−520344号公報で開示されている化合物は分子内にリン酸エステル基を有するため、そのC−O−P結合が加水分解されるリスクがある。 特開2006−199695号公報および特開2006−514114号公報で開示されている化合物は、加水分解安定性が期待できるが、水や疎水系レジンへの溶解性に疑問が残る。 このように、従来、水系のセルフエッチングプライマーや1液性の歯科用1ステップボンディング材における加水分解による製品棚寿命の悪化によって接着性能が低下する問題を解決するため種々の接着性モノマーが提案されているが、十分とはいえない。特開2003−89613号公報特開2006−176511号公報特開2006−176522号公報特開2006−199695号公報特開2006−514114号公報特開2006−520344号公報マクロモレキュール・ ケミストリー・フィジックス 200巻、1062−1067頁(1999年)ジャーナル・オブ・デンタル・リサーチ、83巻、特別号、演題No.#2661 従来、強い酸性溶液中で、分子内に酸性基を有する(メタ)アクリレート系モノマーなどの接着性モノマーのエステル結合が加水分解されることや接着剤と歯質との接着界面での加水分解などの接着性に対する不安要素を解決するため、酸性基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに関する接着性モノマーが種々提案されているが、上記のような問題を解決するのに十分とはいえない。 本発明者らは、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を新たに提供すること、さらに前記重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物が、歯質と歯科用修復材との接着において、強力な接着性を発現し、酸性の組成物においても加水分解安定性を発揮しうることを確認して、本発明を完成させた。 以上説明したように、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体、および前記重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物は、従来の課題を解決し、接着性組成物の棚寿命を維持し接着性能を維持し、患者のう蝕の治療や歯の保存をより確実なものとするため、歯科医療に大きく貢献できる価値の高いものである。 本発明の分子内に1つのN−(メタ)アクリロイル基を有するアミノホスホン酸誘導体を含む接着性組成物は、接着性組成物の棚寿命を維持し接着性能を維持するため、歯科分野に限らず、整形外科や一般産業分野の接着剤、塗料、ラッカー等の分野で使用できる。 すなわち、本発明は、一般式[1]:[式中、 Rは重合性基を示し; Aは酸素原子または硫黄原子を示し; 各Xqは、それぞれ互いに独立して、酸素原子または硫黄原子を示し; 各Yqは、それぞれ互いに独立して、同一であってもまたは異なっていてもよい有機基を示し; 各Zqは、それぞれ互いに独立して、同一であってもまたは異なっていてもよく、さらに任意に選ばれる一部のZqまたは全てのZqは、重合性基およびホスホン酸基以外の有機基である置換基を1以上有する有機基を示し; pは1から10の整数であり; qは1からpまでの整数であり; ここに、pが1であるとき、qは1であって、 X1は酸素原子または硫黄原子を示し; Y1は有機基を示し; Z1は酸性基および重合性基以外の有機基である置換基を1以上有する有機基を示す。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 さらに、本発明は、一般式[1]においてとりわけ下記の一般式[2]: [式中、 Rは重合性基を示し; Aは酸素原子または硫黄原子を示し; Xは酸素原子または硫黄原子を示し; Yは水素原子または有機基を示し; Zは重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を1以上有する有機基を示し; ここに、 YおよびZは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環状有機基を形成してもよい。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 さらに、本発明は、一般式[1]または[2]において、特に下記の一般式[3]: [式中、 Rは重合性基を示し; X2およびX3は、それぞれ互いに独立して、酸素原子または硫黄原子を示し; Y2およびY3は、それぞれ互いに独立して、水素原子または有機基を示し; Z2およびZ3のいずれかまたは両方に重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を1以上有する有機基を示し; ここに、 Y2およびY3、Z2、Z3は、それぞれの置換基が複数で環状有機基を形成してもよく、 rは0または1を示す。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 さらに、本発明は、一般式[1]〜[3]において、特に下記の一般式[4]: [式中、 R1は水素原子またはメチル基を示し; R2は重合性基およびホスホン酸基以外の有機基を示し; Y4は水素原子または有機基を示す。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 さらに、本発明は、一般式[1]〜[3]において、特に下記の一般式[5]: [式中、 R3は水素原子またはメチル基を示し; R4は酸性基および重合性基以外の置換基を有してもよい有機基を示し; Y5およびY6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または有機基を示し; Z4は重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を有してもよい有機基を示し; ここに、 Y5およびY6、Z4はそれぞれの置換基が複数で環状有機基を形成してもよい。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 さらに、本発明は、一般式[1]〜[5]の化合物の塩が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ZnおよびCdよりなる群から選ばれる金属原子との塩、またはアミン塩であることを特徴とする重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 本発明は、一般式[1]〜[5]の重合性ホスホン酸誘導体が、下記の一般式[6]:[式中、 R5は水素原子またはメチル基を示し; R6は重合性基およびホスホン酸基以外の有機基を示す。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物または、そのホスホン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアミン塩である重合性ホスホン酸誘導体、および前記重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物を提供する。 本発明化合物の一般式[1]〜[6]で表される重合性ホスホン酸誘導体の合成はいかなる合成方法を用いてもよい。 例えば、本発明化合物の特に分子内にN−(メタ)アクリロイル基を有するアミノホスホン酸誘導体は、一般式[6]の本発明化合物の合成は、Oleksyszyn反応またはKabachnik-Fields反応により、一般式[7]:[ここで、R6は一般式[6]の定義と同じである。]で表されるアミノホスホン酸(中間体A)を合成し、さらにSchotten-Baumann反応により(メタ)アクリル酸クロリドを反応させて目的物の本発明化合物を合成できる。 中間体Aのアミノホスホン酸は、アルデヒドと三塩化リンとベンジルカルバメートを一括反応させるOleksyszyn反応により合成できる。 本発明化合物の重合性ホスホン酸誘導体の特に分子内にN−(メタ)アクリロイル基を有するアミノホスホン酸誘導体は、上記のアミノホスホン酸に(メタ)アクリル酸クロリドを反応(Schotten-Baumann反応)させることにより合成できる。 本発明化合物の分子内にN−(メタ)アクリロイル基を有するアミノホスホン酸誘導体は、Kabachnik-Fields反応とSchotten-Baumann反応を用いても合成が可能である。 例えば、ジエチルホスファイトと置換アルデヒドと酢酸アンモニウムとを3Åモレキュラーシーブを含んでワンポット反応させるKabachnik-Fields反応によりアミノホスホン酸ジエチルエステルを合成し、このものを加水分解して中間体であるアミノホスホン酸を合成する。さらに、この化合物に(メタ)アクリル酸クロリドを反応させることにより本発明化合物(1)であるN−(メタ)アクリロイルアミノホスホン酸を合成できる。 本発明化合物の分子内にN−(メタ)アクリロイル基を有するアミノホスホン酸誘導体として、例えば、ジエチルホスファイトと置換アルデヒドと酢酸アンモニウムとを3Åモレキュラーシーブを含んでワンポット反応させるKabachnik-Fields反応によりアミノホスホン酸ジエチルエステルを合成し、さらに、Schotten-Baumann反応により(メタ)アクリル酸クロリドを反応させてN−(メタ)アクリロイルアミノホスホン酸ジエチルエステルを合成し、このものを加水分解して本発明化合物(1)であるN−(メタ)アクリロイルアミノホスホン酸を合成できる。 さらに、本発明は、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を提供する。 本発明は、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩であるラジカル重合性ホスホン酸誘導体、および前記ラジカル重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物を提供する。 一般式[8]:[式中、 R7は、水素原子、メチル基、アルキル基または芳香族基を示し; R8は、酸性基や重合性基以外の有機基であって、アルキル基、アルコキシ基、または芳香族基を示し; Z5は、置換基を有してもよいアルキル基、または炭素数1〜13のメチレン基もしくはアルキル基、または芳香族基を示す。]で表される化合物または、そのホスホン酸基のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアミン塩はいかなる合成法で製造してもかまわない。 本発明の重合性ホスホン酸誘導体の一般式において、「有機基」なる用語は、脂肪族基、環状基、または脂肪族と環状基との組合せ(例えば、アルカリールおよびアラルキル基)として分類される炭化水素基(炭素と水素以外に、任意の元素、例えば、酸素、窒素、硫黄、リンまたはケイ素が含有されていてもよい。)を意味する。本発明において、この有機基は、硬組織表面のためのエッチング剤が生成するのを妨害しないものである。 「環状基」なる用語は、閉環した炭化水素基を意味し、それらは、脂環式基、芳香族基、または複素環式基に分類される。その重合性の基が、エチレン性不飽和基であるのが好ましい。このエチレン性不飽和基が、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基またはビニル基であることがより好ましい。 一般式[8]で表される本発明化合物の合成法の一例として、例えば、一般式[8]と同様にOleksyszyn反応またはKabachnik-Fields反応で中間体(A)として、アミノホスホン酸を合成する。 さらに、(メタ)アクリル酸クロリドとアミノアルキルカルボン酸を反応させて、N−(メタ)アクリロイルアミノアルキルカルボン酸(中間体B)を合成する。 一般式[8]で表される本発明化合物は、アミノホスホン酸(中間体A)とN−(メタ)アクリロイルアミノアルキルカルボン酸(中間体B)のアミド化反応により合成できる。 本発明において、(メタ)アクリロイルは、メタクリロイルおよびアクリロイルの双方を意味しており、例えば、N−(メタ)アクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸は、N−メタクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸およびN−アクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸を意味している。 以上のように、本発明化合物のN−(メタ)アクリロイルアミノホスホン酸は、アミノホスホン酸誘導体と(メタ)アクリル酸クロリドとの反応で合成される化合物はすべて含まれる。 このような化合物は、例えば、N−(メタ)アクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸(N−メタクリロイル1−フェニル−1−アミノホスホン酸)、N−メタクリロイル1−トルイル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−メチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−エチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−ブチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−イソブチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−プロピル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−イソプロピル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−ペンチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−イソペンチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−ヘキシル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−デシル−1−アミノホスホン酸、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もしくはアミン塩である。 本発明の分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体は、N−(メタ)アクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸、N−メタクリロイル1−メチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−エチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−ブチル−1−アミノホスホン酸、5−(N−メタクリロイル)ペンチル−1−アミノメチルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−1−アミノメチルホスホン酸、10−(N−メタクリロイル)デシル−1−アミノメチルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−1−アミノプロピルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−2−アミノプロピルホスホン酸、10−(N−メタクリロイル)デシル−2−アミノプロピルホスホン酸、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩またはアミン塩が特に好ましい。 本発明は、本発明化合物の一般式[1]〜[6]および[8]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物に関する。 ここで、本発明の接着性組成物は、接着性を発揮する組成物である接着剤および接着剤の接着性を促進する組成物であるプライマーを含む。 本発明の「接着剤」とは、歯科用コンポジットレジンとエナメル質や象牙質への接着性を促進しうる歯科用ボンディング剤、金属接着性を向上させるレジンセメントやボンディング剤、アルミナやジルコニアなどの歯科用セラミックス材料や歯科用陶材への接着性を促進させるレジンセメントやボンディング剤、およびフィラーを含有する自己接着性コンポジットレジンなどを示す。 本発明の「プライマー」とは、歯科用コンポジットレジンと歯科用ボンディング剤を用いてエナメル質や象牙質への接着性を促進しうるセルフエッチングプライマー、金属接着性を向上させる金属接着プライマー、アルミナやジルコニアなどの歯科用セラミックス材料や歯科用陶材への接着性を促進させるセラミックスプライマーなどを示す。 本発明は、一般式[1]〜[6]および[8]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体以外の重合性モノマーをさらに含む接着性組成物を提供する。 本発明は、さらに、(a)一般式[1]〜[6]および[8]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体、(b)一般式[1]〜[6]および[8]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体以外の酸性基を有する重合性モノマー、(c)酸性基を含有しない重合性モノマー、(d)重合開始剤、および(e)水を含む接着性組成物を提供する。 本発明の一般式[1]〜[6]および[8]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体以外の酸性基を有する重合性モノマーは、従来から歯科用接着性モノマーとして使用されているモノマーの中で、特に分子内にリン酸エステル基、ホスホン酸基、ピロリン酸基などのリン酸基、カルボキシル基およびカルボキシル基の酸無水物基、スルホン酸基などを1以上有し、(メタ)アクリロイル基およびN−(メタ)アクリロイルアミド基などの重合性基を含むラジカル重合性モノマー、およびこれら酸性基を有するラジカル重合性モノマーのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアミン塩から選択して使用できる。 本発明において、例えば、メチル(メタ)アクリレートはメチルメタクリレートおよびメチルアクリレートの双方を意味する。 ホスホン酸基含有ラジカル重合性モノマーとして、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピル−3−ホスホノプロピオネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルホスホノアセテート、4−(メタ)アクリロキシブチル−3−ホスホノプロピオネート、4−(メタ)アクリロキシブチルホスホノアセテート、5−(メタ)アクリロキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、5−(メタ)アクリロキシペンチルホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロキシヘキシルホスホノアセテート、ビス[2−(メタ)アクリロキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、N−(メタ)アクリロイル−ω−アミノプロピルホスホン酸、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩またはアミン塩等が挙げられる。 本発明の分子内にカルボキシル基およびカルボキシル基の酸無水物基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸、およびこれらの酸無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1、1−ヘキサンジカルボン酸、7−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘプタンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1、1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、N−(メタ)アクリロイルアラニン、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸などのN−(メタ)アクリロイルアミノ酸類、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩またはアミン塩等が挙げられる。 本発明の分子内にスルホン酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、6−スルホヘキシル(メタ)アクリレート、10−スルホデシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩またはアミン塩等が挙げられる。 これらの分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマーは、単独または、適宜組み合わせて使用されるが、中でも6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、6−(メタ)アクリロキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロキシデシルハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物などが好ましい。 これらの分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマーは1以上任意に選択して使用できる。これらの分子内に酸性基を有するラジカル重合性モノマーの配合量は、本発明の接着性組成物の総量に対して、1重量%〜80重量%であり、好適には3重量%〜60重量%であり、特に好適には5重量%〜30重量%である。1重量%未満および80重量%を超えると接着性が低下する。 本発明に加えてもよい酸性基を含有しない重合性モノマーが、脂肪族および芳香族の単官能または多官能のラジカル重合性モノマーであり、歯科分野および一般工業界で使用されているラジカル重合性不飽和二重結合を有する、モノマー、オリゴマーおよびプレポリマーから選択して使用できる。また、イオウ原子を分子内に有する重合性モノマー、フルオロアルキル基を分子内に有する重合性モノマー、フッ素イオン放出能を有する官能基を含む化合物も使用できる。これらの酸性基を含有しない重合性モノマーから任意に1以上選択して加えることができる。 これらの酸性基を含有しない重合性モノマーの具体的例示としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス{4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル}プロパン;ビスフェノールA−ジグリシジル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチル−2,2,2−トリメチルヘキサメチレンジウレタンである。 本発明の水は、医療用に許容できる水であり、精製水や蒸留水やイオン交換水が好ましい。 本発明の重合開始剤は、例えば、過酸化物類、α−ジケトン類、(ビス)アシルホスホンオキサイド類、クマリン化合物、およびチオキサントン誘導体などから任意に1以上選択して使用できる。さらに重合促進剤加えて使用してもよい。市販の歯科用光重合器に用いられているハロゲンランプ、LED、キセノンランプなどの光源を選ぶことなく、優れた硬化特性を得るため、これらの重合開始剤と重合促進剤を複数選択して使用してよい。 過酸化物類が、ベンゾイルパーオキサイド、4,4'−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッドの中からから任意に1以上選択してなることが好ましい。α−ジケトン類が、DL−カンファーキノンまたはベンジルであることが好ましい。(ビス)アシルホスフィンオキサイド類が、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)アシルホスフィンオキサイドであることが好ましい。クマリン化合物が3,3'−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)および3,3'−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)であることが好ましい。チオキサントン誘導体が2−クロルチオキサンセン−9−オンが好ましい。 その他光重合開始剤として、水溶性光重合開始剤である、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド・ナトリウムおよび2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロライドを用いることもできる。 本発明に加えてもよい重合促進剤が、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどのアミン類、5−ブチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸などのバルビツール酸類、およびジ−n−オクチル錫ジラウレートおよびジ−n−ブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、および2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメチル基置換−1,3,5−トリアジン化合物であることが好ましい。 本発明に有機溶剤加えてもよく、なかでもアセトンおよびエタノールが好ましい。 本発明にフィラーを加えてもよい。フィラーとして超微粒子フィラー、フッ素徐放性フィラー、ポリマーおよびシリカフィラーであることが好ましい。 本発明の接着性組成物の機械的強度、操作性、塗布性、流動性の調整のため、適宜フィラーを配合してもよい。歯科で一般的に用いることができるフィラーであれば用いることができる。超微粒子フィラー、およびフッ素徐放性フィラー、ポリマーおよびシリカフィラーが特に好適である。 本発明の接着性組成物のゲル化を防止して棚寿命の安定化のために含まれる重合防止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ブチル化ヒドロキシトルエン等が挙げられるが、ハイドロキノンモノメチルエーテルおよびブチル化ヒドロキシトルエンが適している。 以上説明したように、本発明は、成分(a)本発明の重合性ホスホン酸誘導体、成分(b)本発明の重合性ホスホン酸誘導体以外の重合性モノマー、成分(c)酸性基を含有しない重合性モノマー、成分(d)重合開始剤、および成分(e)水を含む接着性組成物を提供するものであり、ここで、各成分の配合量は、成分(a)〜(d)の総量を100重量%としたとき、成分(a):0.01〜70重量%、成分(b):0.01〜70重量%、成分(c):0.01〜60重量%、および成分(d):0.01〜30重量%であり、好ましくは、成分(a):0.1〜40重量%、成分(b)0.1〜40重量%、成分(c):0.1〜40重量%および成分(d):0.1〜10重量%であって、さらに好ましくは、成分(a):0.1〜30重量%、成分(b):0.1〜30重量%、成分(c):0.1〜30重量%および成分(d):0.1〜5重量%である。さらに、成分(e)水の配合量は、本発明の接着性組成物の総量に対して、0.1〜99.5重量%であり、好ましくは5〜80重量%であり、さらに好ましくは10〜60重量%である。 すなわち、本発明の接着性組成物は、必要に応じて非水溶性の酸性基含有ラジカル重合性モノマー、分子内に酸性基を含有しないラジカル重合性モノマー、重合開始剤、フィラー、有機溶剤、変性剤、増粘剤、染料、顔料から適宜選択して加えることができる。これら剤は歯科分野および一般工業界で使用されている物を用いることができる。 本発明の接着性組成物は、実施する態様として、1液性セルエッチングプライマー、1液性1ステップ型のボンディング材として使用して、歯科用コンポジットレジン、低粘度コンポジットレン、レジンセメント、レジンモディファイドグラスアイオノマーセメント、フィッシャーシーラント、歯列矯正用接着剤、歯面コーテイング材、オペーク材などとセットにして使用することができる。 次に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例11−[(N−メタクリロイル)アミノベンジル]−ホスホン酸(MABP)の合成(1A)1−(アミノベンジル)−ホスホン酸(ABP)の合成 ベンジルカルバメート(27.5 g, 182 mmol)、三塩化リン(25.0 g, 182 mmol)及び氷酢酸(55 g)の混合溶液に、新鮮に蒸留したベンズアルデヒド(29.0 g, 273 mmol)を室温で20分かけて滴下した。同混合液を2時間還流し反応させた。4規定塩酸(50 ml)で滴下し、還流するまで昇温後一晩熟成した。室温まで冷却し、有機層を分液ロートにて除去後、水層に活性炭を加えて還流状態で30分間熟成した。活性炭を濾別後、濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えてスラリーとし、4〜10℃に冷却しながらプロピレンオキシドを滴下して中和した。精製した固形物を水/メタノール混合溶媒で再結晶して白色結晶の1−(アミノベンジル)−ホスホン酸(ABP)を25.5 g (136 mmol)得た。鏡像体が存在するためアルデヒド由来のメチンプロトンが2種類認められるものと思われる。収率:75 %融点:280-282℃核磁気共鳴スペクトル (1H NMR) (300 MHz, D2O, ppm):δ 7.36-7.30 (m, 5H, Ph-H)、 4.33、 4.28 (s × 2, NH2-C-H).(1B)1−[(N−メタクリロイル)アミノベンジル]−ホスホン酸(MABP)の合成 蒸留水(100 ml)に水酸化ナトリウム(14.1 g, 353 mmol)を加え、これに1−(アミノベンジル)−ホスホン酸(ABP)(20.0 g, 107 mmol)を溶解した後、新鮮に蒸留したメタクリル酸クロリド(13.4 g, 128 mmol) を内温14〜16℃で20分かけて滴下した。同混合液を18〜21℃室温で2時間反応させた後、塩酸を加えて酸性にし、析出した塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮した。この操作を塩が析出しなくなるまで数回繰り返した。濃縮後35℃で減圧乾燥して白色結晶の1−[(N−メタクリロイル)アミノベンジル]−ホスホン酸(MABP)を15.4 g (60 mmol)得た。鏡像体が存在するためアミドおよびアルデヒド由来のメチンプロトンが2種類認められるものと思われる。収率57 %1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, ppm):δ 8.23-8.19 (d × 2, 1H, N-H)、 7.51-7.19 (m, 5H, Ph-H)、 5.79 (s, 1H, CH=C-)、 5.39 (s, 1H, CH=C-)、 5.30-5.19 (d × 2, 1H, Ph-C-H)、 1.87 (s, 3H, CH3-).核磁気共鳴スペクトル13C NMR (75 MHz, DMSO-d6, ppm):δ 167.6-167.5 (d, C=O)、 139.5 (s, CH2=C)、 137.9-127.0 (m, C6H5)、 120.3 (s, CH2=C)、 52.9-51.0 [d, NH-CH(C6H5)-P]、 18.9 (s, CH3-). 以上の分析結果から、生成物はMABPと確認された。実施例21−[(N−メタクリロイル)アミノエチル]−ホスホン酸(MAEP)の合成(2A)1−(アミノエチル)−ホスホン酸(AEP)の合成 ベンジルカルバメート(18.5 g, 123 mmol)、三塩化リン(18.5 g, 182 mmol)及び氷酢酸(37 g)の混合溶液に、新鮮に蒸留したアセトアルデヒド(8.1 g, 184 mmol)を室温で20分かけて滴下した。同混合液を2時間還流し反応させた。4規定塩酸(50 ml)で滴下し、還流するまで昇温後一晩熟成した。室温まで冷却し、有機層を分液ロートにて除去後、水層に活性炭を加えて還流状態で30分間熟成した。活性炭を濾別後、濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えてスラリーとし、4〜10℃に冷却しながらプロピレンオキシドを滴下して中和した。精製した固形物を水/メタノール混合溶媒で再結晶して白色結晶の1−(アミノエチル)−ホスホン酸(ABP)を11.2 g (90 mmol)得た。収率73 %融点271-273℃1H NMR [300 MHz, D2O, ppm]:δ 3.28-3.16 (t × 2, 1H, NH2-C-H)、 1.33-1.24 (d × 2, 3H, CH3).(2B)1−[(N−メタクリロイル)アミノエチル]−ホスホン酸(MAEP)の合成 蒸留水(80 ml)に水酸化ナトリウム(10.6 g、 264 mmol)を加え、これに1−(アミノエチル)−ホスホン酸(10.0g, 80 mmol)を溶解した後、新鮮に蒸留したメタクリル酸クロリド(10.0 g, 96 mmol) を内温14〜16℃で20分かけて滴下した。同混合液を18〜21℃室温で2時間反応させた後、塩酸を加えて酸性にし、析出した塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮した。この操作を塩が析出しなくなるまで数回繰り返した。濃縮後35℃で減圧乾燥して白色結晶の1−[(N−メタクリロイル)アミノエチル]−ホスホン酸(MAEP)を12.0 g (10.1 mmol)得た。鏡像体が存在するためアミドおよびアルデヒド由来のメチンプロトンが2種類認められるものと思われる。収率:78 %1H NMR (500 MHz, DMSO-d6, ppm):δ 7.62-7.59 (d, 1H, N-H)、 5.64 (s, 1H, CH=C-)、 5.32 (s, 1H, CH=C-)、 4.20-4.05 (m × 2, 1H, C-H)、 1.84 (s, 3H, CH3-)、 1.28-1.17 (d × 2, 3H, CH3).13C NMR (75 MHz, DMSO-d6, ppm):δ 167.1-167.0 (d, C=O)、 139.8 (s, CH2=C)、 119.6 (s, CH2=C)、 43.3-41.3 [d, NH-CH(CH3)-P]、 18.8 (s, CH2=C-CH3)、 15.7 [d, NH-CH(CH3)-P]. 以上の分析結果から、生成物はMAEPと確認された。実施例31−[(N−メタクリロイル)アミノブチル]−ホスホン酸(MABuP)の合成(3A)1−(アミノブチル)−ホスホン酸(ABuP)の合成 ベンジルカルバメート(27.5 g, 182 mmol)、三塩化リン(25.0 g, 182 mmol)及び氷酢酸(55 g)の混合溶液に、新鮮に蒸留したブチルアルデヒド (8.1 g, 184 mmol)を室温で20分かけて滴下した。同混合液を2時間還流し反応させた。4規定塩酸(50 ml)で滴下し、還流するまで昇温後一晩熟成した。室温まで冷却し、有機層を分液ロートにて除去後、水層に活性炭を加えて還流状態で30分間熟成した。活性炭を濾別後、濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えてスラリーとし、4〜10℃に冷却しながらプロピレンオキシドを滴下して中和した。精製した固形物を水/メタノール混合溶媒で再結晶して白色結晶の1−(アミノブチル)−ホスホン酸(ABuP)18.0 g (118 mmol)を得た。収率:65 %融点:280-282℃1H NMR [400 MHz, D2O, ppm]:δ 3.11-3.04 (t × 2, 1H, NH2-C-H)、 1.76-1.21 (m, 4H, CH-CH2-CH2-CH3)、 0.79-0.75 (t, 3H, -CH3).(3B)1−[(N−メタクリロイル)アミノブチル]−ホスホン酸(MABuP)の合成 蒸留水(100 ml)に水酸化ナトリウム(12.9 g, 323 mmol)を加え、これに1−(アミノブチル)−ホスホン酸 (15.0g, 98 mmol)を溶解した後、新鮮に蒸留したメタクリル酸クロリド(12.3 g, 118 mmol) を内温14〜16℃で20分かけて滴下した。同混合液を18〜21℃室温で2時間反応させた後、塩酸を加えて酸性にし、析出した塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮した。この操作を塩が析出しなくなるまで数回繰り返した。濃縮後35℃で減圧乾燥して白色結晶の1−[(N−メタクリロイル)アミノブチル]−ホスホン酸(MABuP) 10.1 g (46 mmol)を得た。鏡像体が存在するためアミドおよびアルデヒド由来のメチンプロトンが2種類認められるものと思われる。収率:47 %1H NMR [400 MHz, DMSO-d6, ppm]:δ 7.66-7.64 (d, 1H, N-H)、 5.70 (s, 1H, CH=C-)、 5.30 (s, 1H, CH=C-)、 4.15-4.05 (m × 2, 1H, C-H)、 1.84 (s, 3H, -CH3)、 1.82-0.99 (m, 4H, CH-CH2-CH2-CH3)、 0.87-0.80 (t, 3H, -CH3). 以上の分析結果から、生成物はMABuPと確認された。実施例41−[(N−メタクリロイル)アミノペプチル]−ホスホン酸(MHEP)の合成(4A)1−(アミノペプチル)−ホスホン酸(AHP)の合成 ベンジルカルバメート(27.5 g、 182 mmol)、三塩化リン(25.0 g, 182 mmol)及び氷酢酸(55 g)の混合溶液に、新鮮に蒸留したヘプタアルデヒド (31.2 g, 273 mmol)を室温で30分かけて滴下した。同混合液を2時間還流し反応させた。4規定塩酸(50 ml)で滴下し、還流するまで昇温後一晩熟成した。室温まで冷却し、有機層を分液ロートにて除去後、水層に活性炭を加えて還流状態で30分間熟成した。活性炭を濾別後、濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えてスラリーとし、4〜10℃に冷却しながらプロピレンオキシドを滴下して中和した。精製した固形物を水/メタノール混合溶媒で再結晶して白色結晶の1−(アミノヘプチル)−ホスホン酸16.6 g (85 mmol)を得た。収率:47 %1H NMR [400 MHz, D2O, ppm]:δ 3.21-3.01 (t × 2, 1H, NH2-C-H)、 1.81-1.16 (m, 10H、 CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、 0.76-0.71 (t, 3H, -CH3).(4B)[1−(N−メタクリロイル)アミノヘプチル]−ホスホン酸(MHEP)の合成 蒸留水(100 ml)に水酸化ナトリウム(10.1 g, 254 mmol)を加え、これに1−(アミノペプチル)−ホスホン酸 (15.0 g, 77 mmol)を溶解した後、新鮮に蒸留したメタクリル酸クロリド(9.6 g, 92 mmol) を内温20〜25℃で20分かけて滴下した。同混合液を18〜21℃室温で2時間反応させた後、塩酸を加えて酸性にし、析出した塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮した。この操作を塩が析出しなくなるまで数回繰り返した。濃縮後35℃で減圧乾燥して白色結晶の1−[(N−メタクリロイル)アミノヘプチル]ホスホン酸(MAHP) 9.7 g (37 mmol)を得た。鏡像体が存在するためアミドおよびアルデヒド由来のメチンプロトンが2種類認められるものと思われる。収率:48 %1H NMR [400 MHz, DMSO-d6, ppm]:δ 7.63-7.60 (d, 1H, N-H)、 5.69 (s, 1H, CH=C-)、 5.31 (s, 1H, CH=C-)、 4.11-4.01 (m × 2, 1H, C-H)、 1.84 (s, 3H, -CH3)、 1.73-1.00 (m, 10H, CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、 0.87-0.81 (t, 3H, -CH3). 以上の分析結果から、生成物はMHEPと確認された。実施例5接着強度の測定 本発明化合物を含むプライマーを歯科用セルフエッチングプライマーの態様で実施するにあたり、本発明化合物(MABP)(15重量部)、蒸留水(50重量部)、アセトン(35重量部)を混合してプライマーAを調製した。 本発明化合物(MABP)(20重量部)、蒸留水(50重量部)、アセトン(30重量部)を混合してプライマーBを調製した。 本発明化合物(MABP) (15重量部)、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸(4-MET) (5重量部)、蒸留水(50重量部)、アセトン(30重量部)を混合してプライマーCを調製した。 本発明化合物(MABP)(15重量部)、蒸留水(50重量部)、アセトン(35重量部)、D、L−カンファーキノン(0.1重量部)、N、N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(0.1重量部)を混合してプライマーDを調製した。 調製されたプライマーを使用して歯牙のエナメル質とコンポジットレジンの剪断接着試験を実施した。 歯質は人歯に換えて新鮮抜去牛前歯を用いその歯根部を削除して歯髄除去後、エポキシ樹脂包埋して用いた。同牛歯の唇面エナメル質を耐水研磨紙600番で注水下研磨した。研磨した歯面を油分のない圧搾エアーで乾燥し、直径4mmの穴あき両面テープを貼りつけ接着面を規定した。次にプライマーを目皿に滴下し、マイクロブラシで接着規定面に塗布し、10秒間こするように処理した後、油分のない弱い圧搾エアーを5秒間ブローして揮発成分を蒸発させた。その表面に光重合型ボンディング剤「フルオロボンドII」(株式会社 松風製)をマイクロブラシで塗布し歯面上に薄く広げた。続いて松風グリップライトII(株式会社 松風製)で10秒間光照射した。その後、直径4mm、高さ2mmのプラスチックモールドを接着規定面枠に固定し、モールド内に光重合型コンポジットレジン「ビューティフィルII」(株式会社 松風社製)を填入し、松風グリップライトIIで20秒間光照射しコンポジットレジンを光硬化後、モールドを除去して接着試験体を作製した。 接着試験体を37℃蒸留水中24時間浸漬後、同試験体を剪断接着強さ用冶具にセットし、インストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社)を用い、クロスヘッドスピード1mm/分にて剪断接着強さを測定して、n=8の平均値を求めた。 各プライマーを使用した場合の歯牙のエナメル質とコンポジットレジンの剪断接着強さは、プライマーA:20.3 MPa、プライマーB:24.7 MPa、プライマーC:22.5 MPa、プライマーD:23.4 MPa、など優れた値を示した。 以上の結果より、本発明の接着性組成物はエナメル質接着が特に要求される歯科矯正用接着剤のセルフエッチングプライマーとして応用可能である。実施例6 本発明化合物を含む接着性組成物である1液性1ステップ歯科用ボンディング剤の態様で実施するにあたり,本発明化合物(MABP)(20重量部), 4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸(4-MET) (12.2重量部),ビスフェノール−A−ジグリシジルメタクリレート(Bis-GMA) (12.8重量部),トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA) (8.5重量部),蒸留水(24.0重量部) ,アセトン(14.3重量部),D,L−カンファーキノン(0.6重量部),N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル(0.4重量部),微粒子フィラーR−972(0.16ミクロン:DEGUSSA, ドイツ)(1.2重量部)およびメトキシハイドロキノン(MeHQ) (2000 ppm)を混合して歯科用ボンディング剤を調製した。 実施例6のボンディング剤5gをいれたプラスチック製黒色容器を50℃にて4週間放置してエージング試験を行った。エージング有無のボンディング剤を用いてエナメル質および象牙質への剪断接着強さをクロスヘッドスピード:1mm/minで測定した。測定したサンプル数:n = 10の平均値(標準偏差)を表1に示す。比較例1 実施例6の本発明化合物(MABP)(20重量部)に置き換えて,従来の,ホスホン酸基を含むメタクリル酸エステル誘導体である,6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート(6-MHPA)を配合する以外はすべて実施例6に準じて各成分を混合して比較例1のボンディング剤を調製した。調製されたボンディング剤を使用して歯牙のエナメル質とコンポジットレジンの剪断接着試験を実施するにあたり,実施例5の接着処理操作において,「該ボンディング剤を目皿に滴下し,マイクロブラシで接着規定面に塗布し,20秒間こするように処理した後,脂分の無い弱い圧搾エアーを5分間ブローして揮発成分を蒸発させた。その面を10秒間光重合した。」以外はすべて実施例5の接着試験方法と同様に行った。 比較例1のボンディング剤5gをいれたプラスチック製黒色容器を50℃で4週間放置してエージング試験を行った。エージング有無のボンディング剤を用いてエナメル質および象牙質への剪断接着強さをクロスヘッドスピード:1mm/minで測定した。測定したサンプル数:n = 10の平均値(標準偏差)を表1に示す。 水を含むボンディング剤のエージング試験を行った。表1の結果から明らかなように,調製直後の接着性能では,本発明化合物(MABP)を含む組成物と従来の接着性モノマー6-MHPA含む組成物とでは、接着強さにおいて、有意差(危険率0.05%)は認められなかったが,50℃4週間放置後の接着強さの値では,きわめて有意な差が認められた(p<0.05)。以上の結果より,本発明化合物(MABP)を含む組成物は加水分解に由来する棚寿命の低下を改善し,高い歯質への接着強さを維持した。 一般式[1]:[式中、 Rは重合性基を示し; Aは酸素原子または硫黄原子を示し; 各Xqは、それぞれ互いに独立して、酸素原子または硫黄原子を示し; 各Yqは、それぞれ互いに独立して、同一であってもまたは異なっていてもよい有機基を示し; 各Zqは、それぞれ互いに独立して、同一であってもまたは異なっていてもよく、さらに任意に選ばれる一部のZqまたは全てのZqは、重合性基およびホスホン酸基以外の有機基である置換基を1以上有する有機基を示し; pは1から10の整数であり; qは1からpまでの整数であり; ここに、pが1であるとき、qは1であって、 X1は酸素原子または硫黄原子を示し; Y1は有機基を示し; Z1は酸性基および重合性基以外の有機基である置換基を1以上有する有機基を示す。]で表される化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体。 一般式[2]:[式中、 Rは重合性基を示し; Aは酸素原子または硫黄原子を示し; Xは酸素原子または硫黄原子を示し; Yは水素原子または有機基を示し; Zは重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を1以上有する有機基を示し; ここに、 YおよびZは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、環状有機基を形成してもよい。]で表される化合物またはその塩である請求項1に記載の重合性ホスホン酸誘導体。 一般式[3]:[式中、 Rは重合性基を示し; X2およびX3は、それぞれ互いに独立して、酸素原子または硫黄原子を示し; Y2およびY3は、それぞれ互いに独立して、水素原子または有機基を示し; Z2およびZ3のいずれかまたは両方に重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を1以上有する有機基を示し; ここに、 Y2およびY3、Z2、Z3は、それぞれの置換基が複数で環状有機基を形成してもよく、 rは0または1を示す。]で表される化合物またはその塩である請求項1または2に記載の重合性ホスホン酸誘導体。 一般式[4]:[式中、 R1は水素原子またはメチル基を示し; R2は重合性基およびホスホン酸基以外の有機基を示し; Y4は水素原子または有機基を示す。]で表される化合物またはその塩である請求項1から3いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体。 一般式[5]:[式中、 R3は水素原子またはメチル基を示し; R4は酸性基および重合性基以外の置換基を有してもよい有機基を示し; Y5およびY6は、それぞれ互いに独立して、水素原子または有機基を示し; Z4は重合性基およびホスホン酸基以外の置換基を有してもよい有機基を示し; ここに、 Y5およびY6、Z4はそれぞれの置換基が複数で環状有機基を形成してもよい。]で表される化合物またはその塩である請求項1から3いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体。 アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ZnおよびCdよりなる群から選ばれる金属原子との塩、またはアミン塩であることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体。 N−(メタ)アクリロイル1−アミノ−1−ベンジルホスホン酸、N−メタクリロイル1−メチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−エチル−1−アミノホスホン酸、N−メタクリロイル1−ブチル−1−アミノホスホン酸、5−(N−メタクリロイル)ペンチル−1−アミノメチルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−1−アミノメチルホスホン酸、10−(N−メタクリロイル)デシル−1−アミノメチルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−1−アミノプロピルホスホン酸、6−(N−メタクリロイル)ヘキシル−2−アミノプロピルホスホン酸、10−(N−メタクリロイル)デシル−2−アミノプロピルホスホン酸、またはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もしくはアミン塩である請求項1から6いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体。 請求項1から7いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物。 請求項1から7いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体以外の重合性モノマーをさらに含む請求項8に記載の接着性組成物。 (a)請求項1から7いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体、(b)請求項1から7いずれかに記載の重合性ホスホン酸誘導体以外の酸性基を有する重合性モノマー、(c)酸性基を含有しない重合性モノマー、(d)重合開始剤、および(e)水を含む請求項8または9に記載の接着性組成物。 【課題】歯科治療において、分子内に酸性基を有する(メタ)アクリレート系モノマーおよび水を必須として含む接着性組成物の棚寿命および接着性能を向上させた組成物の提供。【解決手段】一般式[1]:[式中、Rは重合性基を示し;Aは酸素原子または硫黄原子を示し;各Xqは酸素原子または硫黄原子を示し;各Yqは有機基を示し;各Zqは有機基を示し;pは1から10の整数であり;qは1からpまでの整数を示す。]で表される、分子内に重合性基とホスホン酸基を有する化合物またはその塩である重合性ホスホン酸誘導体を含む接着性組成物の提供。【選択図】なし