生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アルカリプロテアーゼの安定性向上方法
出願番号:2007202962
年次:2009
IPC分類:C12N 9/54,C12N 9/96,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

奥田 光美 JP 2009034063 公開特許公報(A) 20090219 2007202962 20070803 アルカリプロテアーゼの安定性向上方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 有賀 三幸 100068700 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 奥田 光美 C12N 9/54 20060101AFI20090123BHJP C12N 9/96 20060101ALI20090123BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090123BHJP JPC12N9/54C12N9/96C12N15/00 A 2 OL 9 4B024 4B050 4B024AA03 4B024AA20 4B024BA14 4B024CA02 4B024CA20 4B024DA07 4B024EA04 4B024GA11 4B024GA19 4B024GA25 4B024HA01 4B024HA03 4B024HA06 4B024HA20 4B050CC04 4B050DD02 4B050EE01 4B050FF03E 4B050FF11E 4B050HH02 4B050LL04 本発明は、アルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定性向上方法に関する。 産業分野でのプロテアーゼ利用の歴史は古く、衣料用洗剤をはじめとする洗浄剤から繊維の改質剤、皮革処理剤、化粧料、浴剤、食品改質剤或いは医薬品としての利用まで非常に多岐にわたっている。中でも最も工業的に大量に生産されているものが洗剤用プロテアーゼであり、例えば、アルカラーゼ、サビナーゼ(登録商標;ノボザイムズ)、マクサカル(登録商標;ジェネンコア)、ブラップ(登録商標;ヘンケル)、及びKAP(花王)等が知られている。 洗剤中にプロテアーゼを配合する目的は、衣料に付着したタンパク質を主成分とする汚れを分解して低分子化し、界面活性剤による可溶化を促進することであるが、実際の汚れはタンパク質だけでなく皮脂由来の脂質や固体粒子等、有機物と無機物が入り混じった複数の成分を内包する複合汚れであり、このような複合汚れに対する洗浄性の高い洗浄剤が望まれていた。 かかる観点から本発明者は、高濃度の脂肪酸存在下でも十分なカゼイン分解活性を保持し、タンパク質だけでなく皮脂等の混在する複合汚れに対しても優れた洗浄性を有する分子量約43,000のアルカリプロテアーゼを数種見出し、先に特許出願した(特許文献1参照)。斯かるアルカリプロテアーゼ群は、その分子量、一次構造、酵素学的性質、特に非常に強い酸化剤耐性を有する点で、従来から知られているバチルス属細菌由来のセリンプロテアーゼであるズブチリシンとは異なり、新しいズブチリシンサブファミリーに分類することが提唱されている(非特許文献1)。 ところで、洗浄剤はその形態により、粉末洗剤と液体洗剤に分類することが出来る。液体洗剤は粉末洗剤に比べて、溶解性に優れ、また、汚れ部分に原液を直接塗布出来るメリットがある。液体洗剤には粉末洗剤には無い上記のような利点があるが、その反面プロテアーゼなどの酵素の安定的な配合に関しては粉末洗剤には無い技術的な困難さがあることが広く知られている。元来、液体中で常温保存すること自体が、タンパク質の変性を招きやすい上に、液体洗剤には界面活性剤、脂肪酸、溶剤等が含有され、pHも弱アルカリ性であり、酵素にとって極めて厳しい条件になっている。また、プロテアーゼはタンパク質分解酵素であるが故に自己消化の問題も有しており、液体洗剤中での安定保存を更に困難なものにしている。 このような技術的な課題に対して、カルシウムイオン、ホウ砂、ホウ酸、ホウ素化合物、ギ酸などのカルボン酸、ポリオール等の酵素安定化剤を加えることは公知である。また、プロテアーゼの活性を阻害することにより、自己消化の問題を解決すべく検討もなされており、4−置換フェニルボロン酸(特許文献2)や、ある種のペプチドアルデヒド及びホウ素組成物(特許文献3)によるプロテアーゼの可逆的阻害による安定化法が報告されている。また、デキストランで化学修飾したプロテアーゼが、界面活性剤を含む水溶液中での安定性を向上させ得ることが報告されている(非特許文献2)。 しかし、カルシウムイオン、ホウ酸などの酵素安定化剤の添加によってもプロテアーゼの安定性は十分ではなく、阻害剤も酵素種によって阻害効率が異なる上に製造コストを考慮すると液体洗剤組成物として課題を解決する方法とは言い難い。同様に酵素の化学修飾も製造コストの面で難があった。酵素安定化剤、阻害剤、化学修飾など種々の方策が検討されてきているが、コスト的にはプロテアーゼ自身の液体洗剤中での安定性を向上させることが最も望ましい。 一般的な液体洗剤組成としては界面活性剤、アルカリ剤、再汚染防止剤、溶剤、香料、蛍光染料などが挙げられるが、最も酵素の安定性を損なう物質は界面活性剤であり、通常陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤から成る場合が多い。非イオン界面活性剤は概して酵素に対しての傷害性は大きくはないが、陰イオン界面活性剤は疎水部分が酵素に侵入し、酵素の疎水性相互作用を破壊することに加え、酵素を安定化しているカルシウムイオンなどの2価金属を補足するために酵素への傷害性は非常に高いと考えられている(非特許文献3)。 従って、陰イオン界面活性剤に対しての耐性を向上させることは、液体洗剤中での安定性を向上させる上で非常に重要な因子となっている。国際公開第99/18218号パンフレット特表平11−507680号公報特表2000−506933号公報Saekiら, Biochem.Biophys.Res.Commun., 279, 313-319, 2000Cosmetics&Toiletries magazine, 111, p79-88, 1996Detergent Enzyme : A Challenge! In Handbook of Detergents part A, New York, p639-690, 1999 本発明は、アルカリプロテアーゼの液体洗剤中での安定性を向上させる方法を提供することに関する。 本発明者は、分子量約43,000のアルカリプロテアーゼKP43に特徴的なアミノ酸残基のうち、ある特定のアミノ酸残基の置換により、代表的な陰イオン界面活性剤であるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の安定性が向上することを見出した。 すなわち、本発明は、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定化方法であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の(a)133位若しくはこれに相当する位置、及び/又は(b)195位若しくはこれに相当する位置のアミノ酸残基を、下記アミノ酸残基に置換することを特徴とする前記アルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定性向上方法に係るものである。(a)位置:システイン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はプロリン残基(b)位置:ロイシン又はイソロイシン残基 本発明によれば、アルカリプロテアーゼのLAS等の陰イオン界面活性剤に対する安定性を向上させることができる。従って、本発明により得られるアルカリプロテアーゼは、界面活性剤を配合した液体洗剤中でも活性を有し、かつ比活性が高く、洗浄剤配合用酵素として有用である。 本発明の安定性向上方法の対象となるアルカリプロテアーゼは、配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼであり、本明細書においては、これらを親アルカリプロテアーゼということがある。 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼとしては、例えば、KP43〔バチルス エスピーKSM−KP43(FERM BP−6532)由来のアルカリプロテアーゼが挙げられる(国際公開第99/18218号パンフレット)。 配列番号2で示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼとしては、配列番号2で示されるアミノ酸配列とは異なるが、配列番号2で示されるアミノ酸配列と、例えば80%以上或いは90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼと同等の機能を有する蛋白質、好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは97%以上、より特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼと同等の機能を有する蛋白質を挙げることができる。 斯かるアルカリプロテアーゼとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加され、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼと同等の機能を有するものが包含される。 具体的には、例えばプロテアーゼKP9860[バチルス エスピーKSM―KP9860(FERM BP−6534)由来、WO99/18218、GenBank accession no.AB046403]、プロテアーゼE−1[バチルス No.D−6(FERM P−1592)由来、特開昭49−71191、GenBank accession no.AB046402]、プロテアーゼYa[バチルス エスピーY(FERM BP−1029)由来、特開昭61−280268、GenBank accession no.AB046404]、プロテアーゼSD521[バチルス SD521(FERM P−11162)由来、特開平3−191781、GenBank accession no.AB046405]、プロテアーゼA−1[NCIB12289由来、WO88/01293、GenBank accession no.AB046406]、プロテアーゼA−2[NCIB12513由来、WO98/56927]、プロテアーゼ9865〔バチルス エスピーKSM−9865(FERM P−18566)由来、GenBank accession no.AB084155〕や、特開2002−218989号公報、特開2002−306176号公報、特開2003−125783号公報、特開2004−000122号公報、特開2004−057195号公報に記載の変異プロテアーゼ、配列番号2で示されるアミノ酸配列の63位をセリンに置換した変異体、89位をヒスチジンに置換した変異体、120位をアルギニンに置換した変異体、63位及び187位をセリンに置換した変異体、226位をチロシンに置換した変異体、296位をバリンに置換した変異体、304位をセリンに置換した変異体(特開2004-305175号公報)、配列番号2で示されるアミノ酸配列の15位をヒスチジンに置換した変異体、16位をスレオニン又はグルタミンに置換した変異体、166位をグリシンに置換した変異体、167位をバリンに置換した変異体、346位をアルギニンに置換した変異体、405位をアスパラギン酸に置換した変異体(特開2004-305176号公報)、などが挙げられる。 このうち、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼが有する次の何れかの酵素学的性質を有するのが好ましい。1)酸化剤耐性を有し、アルカリ側(pH8以上)で作用し、かつ安定である。ここで、酸化剤耐性を有するとは、当該アルカリプロテアーゼを50mM過酸化水素(5mM塩化カルシウムを含有)溶液中(20mMグリットンロビンソン緩衝液、pH10)で、20℃20分間放置後の残存活性(合成基質法)が少なくとも50%以上を保持していることをいう。2)50℃、pH10で10分間処理したとき80%以上の残存性を示す。3)ジイソプロピルフルオルリン酸(DFP)及びフェニルメタンスルホニルフルオライド(PMSF)で阻害される。4)SDS−PAGEによる分子量が43,000±2,000である。 なお、アミノ酸配列の同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman-Pearson法;Science, 227, 1435, (1985))によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行なうことにより算出される。 本発明の方法は、上記親アルカリプロテアーゼについて、目的部位のアミノ酸変異を施すことにより行うことができる。 すなわち、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、133位のアミノ酸残基(アラニン残基)を、システイン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はプロリン残基に置換すること、195位のアミノ酸残基(チロシン残基)をロイシン又はイソロイシン残基に置換すること、また、配列番号2で示されるアミノ酸配列と95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼにおいて、配列番号2で示されるアミノ酸配列の133位に相当する位置のアミノ酸残基をシステイン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はプロリン残基に置換すること、195位に相当する位置のアミノ酸残基をロイシン又はイソロイシン残基に置換することにより、行うことができる。 尚、133位又はこれに相当する位置、195位又はこれに相当する位置のアミノ酸置換は、何れか一方でも双方を同時に行っても良い。 ここで、「相当する位置のアミノ酸残基」を特定する方法としては、例えばリップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アルカリプロテアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることにより行なうことができる。プロテアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各プロテアーゼにおける配列中の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象のプロテアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。 すなわち、上記方法でアミノ酸配列を整列させ、(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列の133位のアミノ酸残基(アラニン残基)に相当する位置のアミノ酸残基は、上記の方法を用いることにより、例えばプロテアーゼYaにおいては132位のプロリン残基というように特定することができ、(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列の195位のアミノ酸残基(チロシン残基)に相当する位置のアミノ酸残基は、例えばプロテアーゼE−1においては194位のイソロイシン残基というように特定することができる。 プロテアーゼKP43のアミノ酸配列の(a)133位、(b)195位に相当する位置及びアミノ酸残基の具体例を、上記で例示したプロテアーゼKP9860、プロテアーゼE−1、プロテアーゼYa、プロテアーゼSD521、プロテアーゼA−1、プロテアーゼA−2、プロテアーゼ9865について示す(表1)。 本発明の方法は、具体的には、例えばクローニングされた親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子(配列番号1)に対して変異を施し、得られた変異遺伝子を用いて適当な宿主を形質転換し、当該組換え宿主を培養し、培養物から採取することにより行われる。親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子のクローニングは、一般的な遺伝子組換え技術を用いればよく、例えば国際公開第99/18218号パンフレット、国際公開第98/56927号パンフレット記載の方法に従って行なえばよい。 親アルカリプロテアーゼをコードする遺伝子の変異手段としては、一般的に行われている部異特異的変異の方法がいずれも採用できる。より具体的には、例えばSite-Directed Mutagenesis System Mutan-Super Express Kmキット(タカラ)等を用いて行なうことができる。また、リコンビナントPCR(polymerase chain reaction)法(PCR protocols, Academic Press, New York, 1990)を用いることによって、遺伝子の任意の配列を、他の遺伝子の該任意の配列に相当する配列と置換することが可能である。 得られた変異遺伝子を用いたプロテアーゼの取得は、例えば当該変異遺伝子を安定に増幅できるDNAベクターに連結させ宿主菌を形質転換する、或いは当該変異遺伝子を安定に維持できる宿主菌の染色体DNA上に導入させる、等の方法が採用できる。この条件を満たす宿主としては例えばバチルス属細菌、大腸菌、カビ、酵母、放線菌などが挙げられ、これらの菌株を用い、資化性の炭素源、窒素源その他必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養すればよい。 かくして得られるアルカリプロテアーゼは、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS−PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有すると共に、親アルカリプロテアーゼに比べ、陰イオン界面活性剤等を配合した液体洗剤中でも活性を有し、かつ比活性が高いという性質を新に獲得したものである。従って、当該アルカリプロテアーゼは、各種洗剤組成物配合用酵素として有用である。 以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。実施例1 バチルス エスピー KSM-KP43株由来のアルカリプロテアーゼ構造遺伝子の終止コドンまでを含む約2.0kb(配列番号1)に対して成熟酵素領域の(1)195位、(2)133位に部位特異的変異を導入するプライマーをそれぞれデザインした。(1)195位にロイシンを導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー3(配列番号5)及びプライマー4(配列番号6)とプライマー2(配列番号4)を、195位にイソロイシンを導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー3(配列番号5)及びプライマー5(配列番号7)とプライマー2(配列番号4)を、(2)133位にシステインを導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー6(配列番号8)及びプライマー7(配列番号9)とプライマー2(配列番号4)を、133位にグリシンを導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー6(配列番号8)及びプライマー8(配列番号10)とプライマー2(配列番号4)を、133位にアスパラギン酸を導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー6(配列番号8)及びプライマー9(配列番号11)とプライマー2(配列番号4)を、133位にグルタミン酸を導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー6(配列番号8)及びプライマー10(配列番号12)とプライマー2(配列番号4)を、133位にプロリンを導入するにはプライマー1(配列番号3)とプライマー6(配列番号8)及びプライマー11(配列番号13)とプライマー2(配列番号4)を、それぞれ用いPCRを行った。 プライマー1にはセンス鎖の5’末端側にBamHIリンカーを、プライマー2にはアンチセンス鎖の5’末端側にXbaIリンカーを付与し、プライマー3とプライマー4及びプライマー5、更にプライマー6とプライマー7、プライマー8、プライマー9、プライマー10及びプライマー11はそれぞれの5’末端から10〜15bpの長さで互いに相補するようにデザインした。PCRのDNAポリメラーゼとして、Pyrobest (タカラ)を用い、PCRの条件は94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間を1サイクルとし30サイクル反応させた。増幅したDNA断片をPCR product purification kit(ロッシュ)にて精製後、それぞれ対応する増幅断片のみで、94℃で2分間DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間を1サイクルとし30サイクル反応させ、リコンビナントPCRを行なった。得られた増幅断片に対し、プライマー1とプライマー4によりPCRを行なった。94℃で2分間鋳型DNAを変性させた後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間を1サイクルとし30サイクル反応させ、変異が導入された全長遺伝子を得た。増幅断片を精製後、末端に付与されている制限酵素リンカーを、BamHI、XbaI(ロッシュ)により切断した。増幅DNA断片を予めBamHI、XbaIで処理したプラスミドpHA64(特許第349293号:プロモーター64の下流にBamHI、XbaI切断部位を有する)と混合した後、Ligation High(東洋紡)により、リガーゼ反応を行った。反応液からエタノール沈殿により回収したプラスミドを用い宿主菌であるバチルス エスピー KSM9865株(FERM P-18566)を形質転換した。 9865株の形質転換体をスキムミルク含有アルカリ寒天培地[スキムミルク(ディフコ)1%(w/v)、バクトトリプトン(ディフコ)1%、酵母エキス(ディフコ)0.5%、塩化ナトリウム1%、寒天1.5%、炭酸ナトリウム0.05%、テトラサイクリン15ppm]に生育させ、ハローの形成状況により、変異プロテアーゼ遺伝子導入の有無を判定した。形質転換体は、5mlの種母培地[6.0%(w/v)ポリペプトンS、0.05%酵母エキス、1.0%マルトース、0.02%硫酸マグネシウム7水和物、0.1%リン酸2水素カリウム、0.25%炭酸ナトリウム、30ppmテトラサイクリン]に植菌し、30℃で16時間振盪培養を行った。次いで30mlの主培地[8%ポリペプトンS、0.3%酵母エキス、10%マルトース、0.04%硫酸マグネシウム7水和物、0.2%リン酸2水素カリウム、1.5%無水炭酸ナトリウム、30ppmテトラサイクリン]に種母培養液を1%(v/v)植菌し、30℃で3日間振盪培養を行った。 得られた培養液を遠心分離し、培養上清を得た後に、2mM塩化カルシウムを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)で平衡化したDEAE−トヨパール(東ソー)カラムにかけ、非吸着画分を回収することにより、ほぼ均一なプロテアーゼを得た。タンパク質量はプロテインアッセイキット(和光純薬)を用いて測定した。 終濃度50mM トリス塩酸緩衝液(pH8)、終濃度5% LAS、終濃度0.05% 塩化カルシウムを含有する水溶液に、得られたプロテアーゼを500μgタンパク質量加え、計1mlとし安定性評価用サンプルとした。調製した安定性評価用サンプルをただちに適宜希釈した後、プロテアーゼ活性を測定し、初発の活性とした。 安定性評価用サンプルを30℃にて保持した後、経時的にプロテアーゼ活性を測定し、初発の活性に対する保存後の活性の割合を残存活性(%)とした。 野生型酵素遺伝子を有する形質転換体を同条件で培養した場合の培養上清のLAS耐性値と比較することにより、変異プロテアーゼのLAS耐性を評価した(表2、表3)。 上記の本発明アルカリプロテアーゼ変異体はLAS耐性を向上させる以外は親アルカリプロテアーゼの特性、すなわち、酸化剤耐性を有し、高濃度の脂肪酸によるカゼイン分解活性の阻害を受けず、SDS-PAGEにより認められる分子量が43,000±2,000であり、アルカリ性域で活性を有する性質を保持していることを確認した。<プロテアーゼ活性測定法> 100mM AAPL(タンパク研究所;Glt-Ala-Ala-Pro-Leu-pNAジメチルスルホキシドに溶解:終濃度3mMとして使用)及び200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5:終濃度50mMとして使用)及び適宜希釈した安定性評価用サンプル50μlを加え、100μlに調製後、マイクロプレートリーダー(Versa Max:Molecular Devices社製)にて30℃、15分間振盪しながら414nmの吸光度を経時的に測定し、単位時間当たりの吸光度の変化(OD414/min)を求めた。得られた傾きに酵素の希釈率を乗じた値をプロテアーゼの力価とした。 配列番号2で示されるアミノ酸配列又はこれと80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定化方法であって、配列番号2で示されるアミノ酸配列の(a)133位若しくはこれに相当する位置、及び/又は(b)195位若しくはこれに相当する位置のアミノ酸残基を、下記アミノ酸残基に置換することを特徴とする前記アルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定性向上方法。(a)位置:システイン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はプロリン残基(b)位置:ロイシン又はイソロイシン残基 界面活性剤が直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである請求項1記載の方法。 【課題】アルカリプロテアーゼの液体洗剤中での安定性を向上させる方法の提供。【解決手段】特定のBacillus sp.由来の特定のアミノ酸配列からなるアルカリプロテアーゼの界面活性剤に対する安定化方法であって、(特に強力な界面活性化作用を持つ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムに対して)、特定な位置のアミノ酸残基を特定の限定される数種のアミノ酸に置換することによって上記界面活性剤に対する安定性向上方法。【選択図】なし配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る