生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アスコルビン酸エステル及びその合成方法
出願番号:2007201327
年次:2009
IPC分類:C07D 307/58,C12P 17/18


特許情報キャッシュ

常盤 豊 楽 隆生 JP 2009035509 公開特許公報(A) 20090219 2007201327 20070801 アスコルビン酸エステル及びその合成方法 グリーン・プロダクツ・ラボラトリー有限会社 507062945 三枝 英二 100065215 斎藤 健治 100099988 中野 睦子 100108084 林 雅仁 100115484 常盤 豊 楽 隆生 C07D 307/58 20060101AFI20090123BHJP C12P 17/18 20060101ALI20090123BHJP JPC07D307/58C12P17/18 D 4 OL 10 4B064 4C037 4B064AD70 4B064AE29 4B064AE30 4B064AE45 4B064BJ01 4B064BJ04 4B064BJ09 4B064CA21 4B064CB03 4B064DA03 4C037JA04 本発明はアスコルビン酸エステル及びその合成に関するものである。 L−アスコルビン酸は1920年後半に発見され、化粧品や食品添加物の分野で非常に有効な抗酸化剤である(非特許文献1)。しかしながら、アスコルビン酸自体は水溶液中での安定性が低く、非常に酸化されやすい。化粧品の分野においてアスコルビン酸の安定性を向上させるために、アスコルビン酸誘導体の研究が行われている(非特許文献2)。アスコルビン酸の誘導体はアスコルビン酸の安定性、溶解性を向上することができる。近年、アスコルビン酸リン酸エステル(特許文献1)(特許文献2)、6-O-レチノイル-L-アスコルビン酸の化学的な合成方法が報告されている(特許文献3)。また、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸(特許文献4)(特許文献5)6−O−オレオイル−L−アスコルビン酸(非特許文献3)エイコサペンタノイルアスコルビン酸、ドコサペンタノイルアスコルビン酸(非特許文献4)がキャンディダアンタークティカのリパーゼによって、合成されている。また、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸や6−O−ステアロイル−L−アスコルビン酸がシュードモナスセパシアのリパーゼによって合成されている(特許文献3)。用途としては、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸がピロリ菌に対して抗菌活性を有していることが報告されている(非特許文献5)。 一方、桂皮酸は食品香料、香水、合成インジゴ、医薬品、化粧品等に使用されている。また、フェニルアラニンはアスパルテームの原料、チロシンは輸液などの医薬用途等に使用されている。 従って、アスコルビン酸部分とアスコルビン酸、及び桂皮酸または芳香族アミノ酸部分とからなる化合物を合成することができれば、アスコルビン酸、及び桂皮酸または芳香族アミノ酸の両方の機能が期待できるため、その開発が強く望まれている。昭52−18191昭52−136160昭63−66160特開平4−335893特開平11−243986「ザ メルク インデックス ナインスエディション」(THE MERCK INDEX NINTH EDITION)「ジャーナル ファーマシューティカル バイオメディカル アナリシス」(J. Pharm. Biomed. Anal. 第15巻 p.795−801(1997)「ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス ビー エンザイマティック」(J. of Molecular Catalysis B: Enzymatic 第18巻 p.261−266(2002)「ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス ビー エンザイマティック」(J. of Molecular Catalysis B: Enzymatic 第5巻 p.19−23(1998)「エフイーエムエス マイクロバイオロジカル レター」(FEMS Microbiol. Lett. 第224巻 p.247−253(2003) 本発明は、アスコルビン酸、及び桂皮酸又は芳香族アミノ酸の両者の機能を有する化合物の提供を行うことを課題とする。本発明はまた、安定性が向上したアスコルビン酸誘導体を提供することを課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アスコルビン酸、及び桂皮酸又は芳香族アミノ酸の機能を有する下記一般式(1)で表される化合物を合成することに成功した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。 本発明は、以下の項に示される新規アスコルビン酸エステル及びその製造方法を提供する。 項1.下記一般式(1)[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。−T−は、−CH=CH−又は−CH2−CH(NH2)−を示す。但し、−CH2−CH(NH2)−を構成するCH2は、上式中のフェニル基に結合するものとする。]で表されるアスコルビン酸エステル。項2.アスコルビン酸と、下記一般式(2)[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。−T−は、−CH=CH−又は−CH2−CH(NH2)−を示す。但し、−CH2−CH(NH2)−を構成するCH2は、上式中のフェニル基に結合するものとする。R3は、低級アルケニル基、低級アルキル基又は水素を示す。]で表されるカルボン酸又はカルボン酸エステルとを反応させて、下記一般式(1)[式中、R1、R2及び−T−は、前記に同じ。]で表されるアスコルビン酸エステルを製造する方法。項3.前記反応において、反応触媒として、加水分解酵素を使用することを特徴とする、項2に記載の方法。項4.加水分解酵素がリパーゼである、項3に記載の方法。 本発明のアスコルビン酸エステルは、その分子内に、アスコルビン酸部分、及び桂皮酸又は芳香族アミノ酸部分の両方の構造を包含している。また、本発明のアスコルビン酸エステルは、アスコルビン酸部分に基づく作用、及び桂皮酸又は芳香族アミノ酸部分に基づく作用を有している。 従って、本発明のアスコルビン酸エステルは、抗酸化剤、食品香料、香水、合成インジゴ、医薬品、化粧品、抗菌剤、発色剤等の用途において有用である。 本発明のアスコルビン酸エステルは、従来のアスコルビン酸より安定性が高く、桂皮酸及び/または芳香族アミノ酸より高い水溶性を示す。 本明細書において示される各基は、具体的には次の通りである。 低級アルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基を挙げることができる。より具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、1−エチルプロポキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、1,2,2−トリメチルプロポキシ、3,3−ジメチルブトキシ、2−エチルブトキシ、イソヘキシルオキシ、3−メチルペンチルオキシ基等が含まれ、メトキシ基が好ましい。 低級アルキル基としては、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜2)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1,2,2−トリメチルプロピル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、イソヘキシル、3−メチルペンチル基等が含まれ、メチル基及びエチル基が好ましい。 低級アルケニル基としては、二重結合を1〜3個有する炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖状アルケニル基を挙げることができ、トランス体及びシス体の両者を包含する。より具体的には、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−プロペニル、2−ブテニル、1−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニル、1−ペンテニル等が含まれ、ビニル基が好ましい。 本発明において、−T−が−CH=CH−で示される場合、シス体及びトランス体の両方が含まれ、好ましくはトランス体である。 本発明の一般式(1)のアスコルビン酸エステルの製造方法について、以下に説明する。 一般式(1)のアスコルビン酸エステルは、例えば、アスコルビン酸と、下記一般式(2)[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。−T−は、−CH=CH−又は−CH2−CH(NH2)−を示す。但し、−CH2−CH(NH2)−を構成するCH2は、上式中のフェニル基に結合するものとする。R3は、低級アルケニル基、低級アルキル基又は水素を示す。]で表されるカルボン酸又はカルボン酸エステルとを反応させることにより製造することができる。 アスコルビン酸と一般式(2)で表される化合物との反応には、当該分野において通常用いられる溶媒を広く用いることができ、溶媒としては、例えば、水;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等の低級アルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル等の極性溶剤を挙げることができる。 これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。 上記反応におけるアスコルビン酸と一般式(2)の化合物との使用割合は、通常前者1重量部に対し後者を0.2〜4.0重量部、好ましくは0.4〜2.2重量部程度とすればよい。 上記反応は、通常0〜70℃、好ましくは30〜60℃の温度条件下で行われ、一般に1〜168時間程度、好ましくは24〜96時間程度にて終了する。 好ましい実施形態において、当該反応は、反応触媒として、加水分解酵素の存在下に行われる。 加水分解酵素としては、例えば、リパーゼを挙げることができる。 リパーゼとしては広い範囲の種類から適宜選択することができるが、特に、キャンディダアンタークティカ(Candida Antarctica)由来のリパーゼが好ましい。 使用するリパーゼは精製物が好ましいが、植物分泌物や動物臓器、微生物培養液などをホモジナイズした粗製物、安定剤を含む工業用酵素でもよい。 本発明の反応において出発原料として用いられる一般式(2)で表される化合物は、公知の化合物であるか、公知の方法に準じて容易に製造できる化合物である。 尚、本発明において、一般式(2)のR1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示すが、これ以外の位置に置換基を有する場合、例えば、対応するフェニル基の3〜5位の全てに置換基を有する化合物を用いた場合等には、エステル交換反応は進まない。 上記反応式において用いられる原料化合物は、好適な塩であってもよく、また上記反応で得られる目的化合物も好適な塩を形成していてもよい。それらの好適な塩としては、無機塩基の塩、及び有機塩基の塩を挙げることができる。 無機塩基の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)等を挙げることができる。 有機塩基の塩としては、例えば、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N−(低級)アルキル−モルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等を挙げることができる。 また、各反応式において示された原料及び目的化合物に溶媒和物(例えば、水和物、エタノレート等)が付加された形態の化合物も、各々の一般式に含まれる。好ましい溶媒和物としては水和物が挙げられる。 上記各反応式で得られる各々の目的化合物は、反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、反応混合物から単離精製することができる。 本発明の一般式(1)で表される化合物には、幾何異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体も当然に包含される。 例えば、本発明の一般式(1)のアスコルビン酸部分、及び原料のアスコルビン酸は、L体であっても、D体であってもよく、好ましくは、L体である。 以下に、実施例を示し、リパーゼによる桂皮酸アスコルビルやその類似物のエステル交換反応を行い、その詳細について説明する。 実施例1tert−ブタノール60mlにL−アスコルビン酸40mM、桂皮酸ビニル100mMを加え、溶解した。キャンディダアンタークティカリパーゼ(ノボザイム社製)600mgを加え、30℃で6日間、130rpmで撹拌した。反応後、酵素をろ過し、溶液を濃縮した。 薄相クロマトグラフィーによりアスコルビン酸桂皮酸のエステル生成の有無を確認し、クロロホルム:メタノール=7:1の溶離液でシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行って、6−O−シンナミル−L−アスコルビン酸を単離・精製した。 13C−NMRの分析データを標準試料のL−アスコルビン酸と共に、表1に示す。実施例2〜8tert−ブタノールにL−アスコルビン酸20mM、種々のカルボン酸誘導体50mMを加え、10mg/mlのノボザイム社製キャンディダアンタークティカリパーゼを加え、30℃で6日間、130rpmで撹拌した。反応変換率は薄相クロマトグラフィーをアマシャムバイオサイエンス社製イメージメーター2Dミレニアムで測定した。変換率を表1に示す。比較例1 カルボン酸誘導体としてシナピン酸を用い、実施例2〜8と同様にしてリパーゼ処理を行ったが、L−アスコルビン酸とシナピン酸とのエステルは検出されなかった。実施例9 カルボン酸誘導体として桂皮酸メチルを用い、実施例2〜8と同様にしてリパーゼ処理を行うことにより、アスコルビン酸と桂皮酸とのエステルを得ることができる。実施例10 カルボン酸誘導体として桂皮酸エチルを用い、実施例2〜8と同様にしてリパーゼ処理を行うことにより、L−アスコルビン酸と桂皮酸とのエステルを得ることができる。下記一般式(1)[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。−T−は、−CH=CH−又は−CH2−CH(NH2)−を示す。但し、−CH2−CH(NH2)−を構成するCH2は、上式中のフェニル基に結合するものとする。]で表されるアスコルビン酸エステル。アスコルビン酸と、下記一般式(2)[式中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。−T−は、−CH=CH−又は−CH2−CH(NH2)−を示す。但し、−CH2−CH(NH2)−を構成するCH2は、上式中のフェニル基に結合するものとする。R3は、低級アルケニル基、低級アルキル基又は水素を示す。]で表されるカルボン酸又はカルボン酸エステルとを反応させて、下記一般式(1)[式中、R1、R2及び−T−は、前記に同じ。]で表されるアスコルビン酸エステルを製造する方法。前記反応において、反応触媒として、加水分解酵素を使用することを特徴とする、請求項2に記載の方法。加水分解酵素がリパーゼである、請求項3に記載の方法。 【課題】アスコルビン酸、及び桂皮酸又は芳香族アミノ酸の両者の機能を有する化合物の提供を行うこと、及び安定性が向上したアスコルビン酸誘導体を提供すること。【解決手段】下記一般式(1)で表されるアスコルビン酸エステル及びその製造方法を提供する。【選択図】なし


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