タイトル: | 公開特許公報(A)_アスタキサンチンの製造方法 |
出願番号: | 2007196776 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 15/09,A01H 5/00,C12P 23/00 |
蓮沼 誠久 三宅 親弘 三沢 典彦 JP 2009027995 公開特許公報(A) 20090212 2007196776 20070727 アスタキサンチンの製造方法 財団法人地球環境産業技術研究機構 591178012 岩谷 龍 100077012 蓮沼 誠久 三宅 親弘 三沢 典彦 C12N 15/09 20060101AFI20090116BHJP A01H 5/00 20060101ALI20090116BHJP C12P 23/00 20060101ALI20090116BHJP JPC12N15/00 AA01H5/00 AC12P23/00 12 5 OL 19 (出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 植物機能を活用した高度モノづくり基盤技術開発 植物の物質生産プロセス制御基盤技術開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願) 2B030 4B024 4B064 2B030AB03 2B030AD08 2B030CA14 2B030CB02 4B024AA05 4B024AA10 4B024BA80 4B024DA01 4B024FA02 4B024GA11 4B064AH01 4B064CA11 4B064CA19 4B064CC24 4B064DA10 4B064DA11 本発明は、栄養補助剤、食品添加剤、動物飼料添加剤などとして有用なアスタキサンチンを植物を用いて効率よく製造する方法、並びにこの方法に使用する遺伝子、プラスミド、及び形質転換体に関する。 β-カロテンを初めとするカロテノイドは微生物や動物に広く分布している。動物に含まれる代表的カロテノイドの一つであるアスタキサンチン(3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione)(構造を以下に示す)は、エビ、カニ、マダイの体表や、サケの筋肉に分布する赤色カロテノイドとして知られている。アスタキサンチンは、天然の赤色色素として、養殖魚介類の色調改善剤、又は色揚げ剤として利用されている。また、アスタキサンチンは強力な抗酸化作用(例えば、悪玉コレステロールであるLDLの酸化抑制作用)、抗炎症作用、免疫賦活作用、癌予防作用などの生理活性を有することから、栄養補助剤又は食品添加剤として利用されている。このように、アスタキサンチンは、医薬、食品、及び動物飼料の分野において重要なカロテノイドである(Carcinogenesis.15:15-19,1994;Nutr.Cancer.36,59-65,2000;J.Atheroscler.Thromb.,7:216-222,2000)。 従来、養殖飼料配合用のアスタキサンチンは化学合成により製造されてきたが、1分子のアスタキサンチンには2個の不斉中心が存在し、化学合成により得られるアスタキサンチン製品には立体異性体の副生成物の存在量が多いことが問題となっている。 また、アスタキサンチンを栄養補助剤や食品添加剤として利用するには、これらの副生成物の存在は許容されないため、生物資源由来のアスタキサンチンの供給が望まれている。天然のアスタキサンチン供給源としては、緑藻Haematococcus pluvialis、酵母Xanthophyllomyces dendrorhous (旧名:Phaffia rhodozyma)などが挙げられる。H. pluvialisは既に商業利用されているが、培養に高強度の光照射を必要とすること、生育速度が遅いことがコスト的に問題である。また、X. dendrorhousが生産するアスタキサンチンは3R,3’R型であるため、生理活性が低い。 生物系でのアスタキサンチン生産の生産力を高める一つのアプローチが遺伝子工学的手法の利用であり、適当な宿主の遺伝子組換えによる代謝改変でアスタキサンチンを生産する手法の開発が望まれている。 アスタキサンチン生合成経路を図1に示す。天然のアスタキサンチンの生合成は、β-カロテンがβ-カロテン酸化酵素とβ-カロテン水酸化酵素の作用を受けることにより合成される。β-カロテン酸化酵素をコードする遺伝子、及びβ-カロテン水酸化酵素をコードする遺伝子は既に単離されている。一方はβ-カロテンのC3位及びC3’位に水酸基を付加するβ-カロテンヒドロキシラーゼ(カロテノイド3,3’-β-ヒドロキシラーゼ)遺伝子(crtZ)であり、他方はβ-カロテンのC4位及びC4’位にケト基を付加するβ-カロテンケトラーゼ(カロテノイドβ-オキシゲナーゼ;4,4’-β-オキシゲナーゼ)遺伝子(crtW)である。 高等植物は、アドニス(Adonis)という例外植物を除いて、アスタキサンチンを生産しないことが知られている。植物は中間生成物であるゼアキサンチン(zeaxanthin)を生合成するβ-カロテンヒドロキシラーゼ(CrtZ)を有するが、β-カロテンケトラーゼ(CrtW)を持たないために、アスタキサンチンを生合成しない。しかし、植物はβ-カロテンを多量に含むため、β-カロテンからの変換酵素を植物葉緑体内で機能させることにより、アスタキサンチンを効率よく生産させることできる。 現在までに知られているcrtW遺伝子としては、海洋細菌(Paracoccus属やBrevundimonas属)、ラン藻(Nostoc属やGloeobacter属)、及び緑藻(Haematococcus属)由来の遺伝子が挙げられる。この中で、ラン藻由来のcrtW遺伝子はゼアキサンチンをアスタキサンチンに変換できないと考えられており(FEBS Lett.579:2125-2129,2005)、Paracoccus属[Agrobacterium aurantiacum(旧名)を含む]、緑藻由来のβ-カロテンケトラーゼはゼアキサンチンを、アドニキサンチンを経てアスタキサンチンに変換できることが知られているが(J.Biol.Chem.,272:6128-6135,1997)、変換効率が悪く、アドニキサンチンなどのケトカロテノイド前駆体を多量に蓄積する傾向があった(J.Bacteriol.177:6575-6584,1995)。したがって、植物内でアスタキサンチンを生産させるためには、アスタキサンチンまでの変換効率の良い酵素を選択することが重要である。 発明者らは、近年、海洋細菌Brevundimonas属SD212株から新規のcrtWおよびcrtZ遺伝子を単離した(非特許文献1、非特許文献2)。本文献には、大腸菌を用いた機能発現実験において、Brevundimonas属SD212株由来のCrtW、Paracoccus属N81106株(旧名:Agrobacterium aurantiacum)由来のCrtW、及びParacoccus属PC1株由来のCrtW、Brevundimonas属SD212株由来のCrtZ、Paracoccus属N81106株由来のCrtZ、Paracoccus属PC1株由来のCrtZ、Pantoea ananatis属細菌由来のCrtZ、Flavobacterium属P99-3株由来のCrtZ、及びCrtZと同じ触媒機能があると報告されているThermus thermophilus HB27由来のP450(CYP175A1)とを比較した結果、Brevundimonas属SD212株由来のCrtW及びCrtZが最も効率的にβ-カロテンからアスタキサンチンを生産できることが記載されている。Brevundimonas属SD212株由来のCrtWは、Paracoccus属細菌由来のCrtWと違って、アドニキサンチンからアスタキサンチンへの変換効率が高く、結果的に組換え大腸菌においてアスタキサンチン生産量が高くなったが、それ以外のケトカロテノイド前躯体に対する変換効率の優位性は見出されていない(非特許文献1)。また、Brevundimonas属SD212由来のCrtZは、他細菌由来のCrtWと比べて、アスタキサンチンへの変換効率が高く、結果的に 組換え大腸菌において最も多くのアスタキサンチンを生産したが、それでも、生産された全カロテノイド内のアスタキサンチンの比率は42%に留まった(非特許文献2)。 現在までに、高等植物にアスタキサンチンを生産させるために、精力的にバイオテクノロジー研究が行われてきた。MannらはHaematococcus属緑藻由来のβ-カロテンケトラーゼ遺伝子を、トマトのフィトエンデサチュラーゼ(Pds)遺伝子プロモーターの制御下、タバコで発現させることに成功し、密腺の色を黄色から橙色に変化させた(Nat.Biotechnol.,18:888-892,2000)。この密腺のカロテノイド分析を行ったところ、アスタキサンチンの生成を確認することができ、初めて植物でアスタキサンチンを遺伝子組換えにより生産させることが示された(Nat.Biotechnol.,18:888-892,2000)。しかしながら、この密腺内のアスタキサンチンの含有量は6.6%と僅かであり、アスタキサンチンは密腺以外の器官では殆ど合成されなかった(Nat.Biotechnol.,18:888-892,2000)。 また、Stalbergらは、Haematococcus属緑藻由来のβ-カロテンケトラーゼ遺伝子をシロイヌナズナに導入し、種子貯蔵タンパク質napA遺伝子プロモーターの制御下で発現させたところ、シロイヌナズナ種子では、4-ケト-ルテインやカンタキサンチン等のケトカロテノイドが新たに合成されたが、アスタキサンチンの合成は確認されなかった(Arabidopsis thaliana.Plant.J.36,771-779,2003)。 また、Ralleyらは、Paracoccus属N81106株(旧名:Agrobacterium aurantiacum)由来のcrtW遺伝子とcrtZ遺伝子を、全身発現用遺伝子プロモーターであるカリフラワーモザイクウィルス(CaMV)35Sプロモーターの下流に連結して、タバコならびにトマト植物体への遺伝子導入を行った。その結果、形質転換植物の葉や蜜腺(タバコ)では、4または/および4’位にケト基が導入されたカロテノイド(以後、ケトカロテノイドと言う)が生成されたが、全カロテノイドにおけるケトカロテノイドの比率は5%以下と低く、さらに、ケトカロテノイド内のアスタキサンチンの含有量(比率)はごく僅かであった(非特許文献3)。なお、トマト実ではアスタキサンチンの合成は確認できなかった(非特許文献3)。 また、Morrisらは、ジャガイモ塊茎においてHaematococcus属緑藻由来β-カロテンケトラーゼを発現させ、最大で乾燥重量あたり14 μg/gのアスタキサンチン生産を達成したが、全カロテノイドの中ではマイナー成分であった(Morris et al., 2006)。 また、鈴木らは、マメ科植物のミヤコグサにParacoccus属N81106株(旧名:Agrobacterium aurantiacum)由来のcrtW遺伝子を、CaMV35Sプロモーターの制御下で発現させると、ミヤコグサの花弁の色が黄色からオレンジ色に変わり、全カロテノイドにおける23%のケトカロテノイドが合成されることを示した(非特許文献4)。しかし、ケトカロテノイド内のアスタキサンチンの含有量(比率)はごく僅かであった(非特許文献4)。 以上述べてきたように、アスタキサンチン生産のためのバイオテクノロジー研究が精力的に行われてきたにもかかわらず、カロテノイド含量の多い葉、種子(油糧作物)、実(トマト)などの主要組織において、アスタキサンチンを主要カロテノイドとして生産させることに成功した例は皆無というのが現状であった。Mar.Biotechnol.7:515-522Appl.Microbiol.Biotechnol.72:1238-1246Plant J.39:477-486,2005Plant Cell Rep.DOI 10/1007/s00299-006-0302-7 本発明は、植物を用いてアスタキサンチンを効率よく製造する方法を提供することを主な課題とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、以下の知見を得た。(i) Brevundimonas属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZ及び/又はcrtWの塩基配列を特定の塩基配列に変換した遺伝子を用いて形質転換した植物体は、β−カロテンからアスタキサンチンを主要生産物として、極めて効率よく生合成する。(ii) 上記遺伝子を特に葉緑体ゲノムに直接組み込むことにより、植物体内でのアスタキサンチンの蓄積量が一層高くなる。 本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の遺伝子、遺伝子発現カセット、プラスミド、形質転換体、及びアスタキサンチンの製造方法を提供する。 項1. ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。規則:5’末端から順に、下表1の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを下表1の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換する。 項2. 上記の規則が、5’末端から順に、下表2の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを下表2の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換するものである項1に記載の遺伝子。 項3. 配列番号1に示される塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。 項4. ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtWの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。規則:5’末端から順に、上記表1の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを上記表1の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換する。 項5. 上記の規則が、5’末端から順に、上記表2の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを上記表2の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換するものである項4に記載の遺伝子。 項6. 配列番号2に示される塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。 項7. 植物細胞で機能するプロモーターと、それにより発現できるように連結された項1〜3のいずれかに記載の遺伝子及び/又は項4〜6のいずれかに記載の遺伝子とを含む遺伝子発現カセット。 項8. 遺伝子発現カセットが、項1〜3のいずれかに記載の遺伝子と項4〜6のいずれかに記載の遺伝子とを、上流からこの順に含むものである項7に記載の遺伝子発現カセット。 項9. 項7又は8に記載の遺伝子発現カセットが、植物ゲノムとの相同組換えのための配列間に挿入されたプラスミド。 項10. プロモーターが葉緑体で機能するプロモーターであり、植物ゲノムとの相同組換えのための配列が葉緑体ゲノムとの相同組換えのための配列である項9に記載のプラスミド。 項11. 項7又は8に記載の遺伝子発現カセット、又は項9又は10に記載のプラスミドを用いて形質転換された植物体。 項12. 項11に記載の植物体からアスタキサンチンを回収するアスタキサンチンの製造方法。 Brevundimonas属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZ及び/又はcrtWの塩基配列を、本発明の特定の塩基配列に変換した植物型遺伝子を用いて形質転換した植物体は、植物体内にcrtZタンパク質及び/又はcrtWタンパク質を高蓄積し、カロテノイド含量の多い葉などの主要組織にアスタキサンチンを大量に蓄積する。 この植物は、アスタキサンチンを効率よく生産する。詳述すれば、この植物体は、β-カロテンからアスタキサンチンの生産効率が高い。即ち、副生成物が極めて少ない。例えばタバコ葉では、368μg/g湿重量ものアスタキサンチンを生産させることができる。これは、全カロテノイド量の98%に相当する量である。 しかも、この植物体は、光合成機能が損なわれておらず、また生育が良好である。従って、植物体からアスタキサンチンが大量に得られる。また、生育が良好であるため、特別に高強度の光を照射する必要が無く、低コストでアスタキサンチンを製造できる。 植物型のcrtZ遺伝子及び/又はcrtW遺伝子を葉緑体ゲノムに直接組み込む場合は、一層アスタキサンチンの製造効率が向上する。細胞核に遺伝子導入した後、葉緑体に移行させるためには、通常トランジットペプチド配列(例えばRubiscoの小サブユニットのトランジットペプチド配列)を遺伝子の開始コドンの直前に付加する必要がある。しかし、トランジットペプチド配列の付加はタンパク質の葉緑体内での蓄積量を低下させる場合が多い。この点、葉緑体に遺伝子を直接組み込めば、効率よく植物体内にアスタキサンチンを蓄積させることができる。また、葉緑体形質転換を行うことより、花粉飛散による遺伝子の拡散が無く、環境保護上好ましい。 以下、本発明を詳細に説明する。(I)植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子 本発明の第1の植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子は、ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる遺伝子である。規則:5’末端から順に、上記の表1の左欄のアミノ酸をコードするDNAトリプレットを右欄に記載のDNAトリプレットの何れかに変換する。 表1の右欄に示すトリプレットに変換することにより、植物体内でcrtZ遺伝子を効率よく発現させることができる。中でも、上記の表2の右欄に示すトリプレットに変換することにより、植物体内でcrtZ遺伝子を一層効率よく発現させることができる。 Brevundimonas属微生物の中では、SD212株が好ましく、そのcrtZ遺伝子の塩基配列のトリプレットを表2の右欄のトリプレットに変換した植物型crtZ遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。Brevundimonas属SD212株は、非特許文献1,2に記載されている通り、(株)海洋バイオテクノロジー研究所から分譲を受けることができる。 本発明の第2の植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子は、ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtWの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる遺伝子である。規則:5’末端から順に、上記の表1の左欄のアミノ酸をコードするDNAトリプレットを右欄に記載のDNAトリプレットの何れかに変換する。 表1の右欄に示すトリプレットに変換することにより、植物体内でcrtW遺伝子を効率よく発現させることができる。中でも、上記の表2の右欄に示すトリプレットに変換することにより、植物体内でcrtW遺伝子を一層効率よく発現させることができる。 Brevundimonas属微生物の中では、SD212株が好ましく、そのcrtW遺伝子の塩基配列のトリプレットを表2の右欄のトリプレットに変換した植物型crtW遺伝子の塩基配列を配列番号2に示す。 Brevundimonas属微生物において、各アミノ酸をコードするDNAトリプレットとしては以下の表3に示すものが挙げられる。 Brevundimonas属SD212株のcrtZ遺伝子の塩基配列は非特許文献2に記載されており、crtW遺伝子の塩基配列は非特許文献1に記載されている。Brevundimonas属に属する他の株のcrtZ遺伝子及びcrtW遺伝子は、SD212株の塩基配列に基づき設計したプライマーを用いて、目的株のcDNAライブラリーを鋳型としたPCRを行うことにより得ることができる。さらに、周知の方法で塩基配列を決定すればよい。(II)遺伝子発現カセット 本発明の遺伝子発現カセットは、本発明のプラスミドは、植物細胞で機能するプロモーターと、その支配下に、即ちプロモーターにより発現可能に連結された本発明のアスタキサンチン生合成系遺伝子とを含むものである。 遺伝子発現カセットは、アスタキサンチン生合成系遺伝子として、植物型crtZ遺伝子だけが含まれたもの、crtW遺伝子だけが含まれたもの、両者が含まれたものの何れであってもよい。両者が含まれる場合の、連結順序は特に限定されないが、crtZの方が上流に位置する方が、アスタキサンチンの製造効率が高くなる。 植物細胞で機能するプロモーターは、特に限定されないが、Prrnプロモーター、psbAプロモーター、clpPプロモーター、psbDプロモーター、rbcLプロモーター、rpoC1プロモーター、psbEFLJプロモーター、psaABプロモーター、psbEプロモーター、atpIプロモーター、rpl23プロモーター、ndhBプロモーターなどが挙げられる。中でも、葉緑体における高発現プロモーターであるPrrnプロモーターが好ましい。プロモーターは、形質転換の宿主として用いる植物で機能するものであればよい。特に、宿主植物由来のプロモーターを用いることが好ましい。 遺伝子発現カセットは、この他、ターミネーターや、薬剤耐性遺伝子のようなマーカー遺伝子を含むことができる。これらの遺伝子も宿主植物内で機能するものであればよく、特に宿主植物由来の遺伝子を用いることが好ましい。(III)プラスミド 本発明のプラスミドは、上記説明した本発明の遺伝子発現カセットが、植物ゲノムとの相同組換えのための配列間に挿入されたプラスミドである。 ゲノムとの相同組換えのための配列は、核ゲノム、葉緑体ゲノム、及びミトコンドリアゲノムの何れと相同組換えできる配列であってもよいが、中でも葉緑体ゲノムと相同組換えできる配列であることが好ましい。これにより、葉緑体ゲノムにcrtZ遺伝子及び/又はcrtW遺伝子を導入することができる。 葉緑体ゲノムとの相同組換えのための配列は、特に限定されないが、例えば、rbcL遺伝子とaccD遺伝子とのセット、trnV遺伝子とrps12遺伝子とのセット、trnI遺伝子とtrnA遺伝子とのセットなどが挙げられる。中でも、導入遺伝子が安定して保持される点で、rbcL遺伝子とaccD遺伝子とのセットが好ましい。相同組換えのための配列セットを用いれば、葉緑体ゲノム上の内在性の遺伝子を分断しない位置に遺伝子挿入でき、それにより葉緑体の機能への影響を抑えることができる。 相同組換え用の配列と、遺伝子発現カセットとの間には、形質転換を妨げないものであれば、任意のヌクレオチド配列が挿入されていてもよい。相同組換え用の配列間に挿入することができるポリヌクレオチドの長さは、通常、50,000塩基以下である。(III)植物体 本発明の植物体は、上記説明した本発明の遺伝子発現カセット、又は上記説明した本発明のプラスミドを用いて形質転換された植物体である。 植物体の形質転換方法は、特に限定されず、公知の方法を制限無く使用できる。公知の形質転換方法として、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、アグロバクテリウムを使用する方法などが挙げられる。 形質転換により、crtZ遺伝子だけを導入してもよく、crtW遺伝子だけを導入してもよく、両者を導入しても良い。相同組換え用のプラスミドを用いて形質転換するときであって、crtZ遺伝子とcrtW遺伝子との双方を宿主に導入する場合は、この両遺伝子を一つの遺伝子発現カセット内に含むものを用いればよい。また、crtZ遺伝子を含みcrtW遺伝子を含まないプラスミドと、crtW遺伝子を含みcrtZ遺伝子を含まないプラスミドとの双方を用いて形質転換してもよいが、この場合は、両プラスミドの相同組換えのための配列セットを互いに異なるものとするのが好ましい。これにより、相同組換えによる、一方のcrt遺伝子のゲノムからの脱落を回避できる。 宿主植物の種類は、特に限定されないが、得られるアスタキサンチンを食品添加物として使用する場合を考慮すれば、可食植物を使用するのが好ましい。また、アスタキサンチン製造効率が良い点では、β-カロテンを多く含むトマト、にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃ、ケールのような緑黄色野菜が好ましい。 形質転換した後の植物の生育期間は、植物の種類によって異なるが、十分量の植物体が得られるまで生育させればよい。生育条件も、植物種によって最適な条件とすればよい。 植物体からのアスタキサンチンの回収は、植物体ごと回収することによって行える。また、植物体を水、又は有機溶媒(エタノール、ヘキサンなど)と水との混合溶媒中で粉砕し、約10,000〜15,000gで約5〜10分間程度遠心分離して上清を得ることにより、夾雑物質を除くこともできる。さらに、各種クロマトグラフィーにより、アスタキサンチンを精製してもよい。カロテノイドに占めるアスタキサンチンの比率が高いため、精製は比較的容易である。実施例 以下、本発明を、実施例を挙げて、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[実施例1]葉緑体遺伝子組換え用プラスミドの作製 プラスミドpLD6(Gen Bank accession no. CS165374)のBstBI-EcoRI部位にマルチクローニングサイト(5’-TTC GAA GCT TAA TTA ATC GAT ATC TCT AGA TCT AAA AGG AGA AAT TAA GCA TGC ATC GAT TCT AGA GAA TTC-3’(配列番号3):下線部はBstBI部位とEcoRI部位を示す)を挿入し、プラスミドpLD7を作製した。 鋳型としてプラスミドpLD6を用い、プライマーPrrn1(5’-CCT TAA TTA ATC TAG TTG GAT TTG CTC CCC CG-3’ (配列番号4):下線部はPacI部位を示す)ならびにPrrrn2(5’-GAA GAT CTC TCC CTA CAA CTG TAT CCA AGC GC -3’ (配列番号5):下線部はBglII部位を示す)を用いたPCR増幅により得られた遺伝子断片を制限酵素PacIとBglIIで処理し、プラスミドpLD7のPacI-BglII部位に挿入し、プラスミドpLD7-rrnPを作製した。 化学合成した遺伝子断片、5’-GAT CTC AGT CTA GAG TGG CTA GCG ACA TCG ATG GCG-3’ (配列番号6)と5’-AAT TCG CCA TCG ATG TCG CTA GCC ACT CTA GAC TGA-3’ (配列番号7)をアニーリングさせ、BglII/EcoRI処理したプラスミドpLD7-rrnPに挿入し、プラスミドpLD7-rrnP-MCSを作製した。 海洋細菌Brevundimonas sp. strain SD212由来のβ-carotene hydoroxylase遺伝子(crtZ)とβ-carotene ketolase遺伝子(crtW)(GenBank accession no. AB181388)を、ナタネ型のコード様式(codon usage)に変換した改変型crtZ遺伝子(配列番号1)ならびに改変型crtW遺伝子(配列番号2)を化学合成した。 プライマーとしてP1(5’-CGG GAT CCA AAG AGG AGA AAT TAC ATA TGG CTT GGC TTA CTT GGA TCG CTC-3’ (配列番号8):下線部はBamHI部位を示す)とP2(5’-GCT CTA GAT TAA GCT CCG CTA GAA GAA GAT CCC CTC TTT TG-3’ (配列番号9):下線部はXbaI部位を示す)を用い、鋳型として改変型crtZ遺伝子を用いたPCR増幅により得られた遺伝子断片、および、プライマーとしてP3(5’-CGG GAT CCA AAG AGG AGA AAT TAC ATA TGA CTG CTG CTG TTG CTG AGC CTA G-3’ (配列番号10):下線部はBamHI部位を示す)とP4(5’- GCT CTA GAT TAA GAC TCT CCT CTC CAA AGT CTC CAC CAA G-3’ (配列番号11):下線部はXbaI部位を示す) を用い、鋳型として改変型crtW遺伝子を用いたPCR増幅により得られた遺伝子断片を、制限酵素BamHIとXbaIで処理し、プラスミドpLD7-rrnP-MCSのBglII-XbaI部位に挿入し、プラスミドpLD-rrnP-crtZならびにプラスミドpLD7-rrnP-crtWを作製した。 プライマーとしてP5(5’-GCT CTA GAA AAG AGG AGA AAT TAC ATA TGG CTT GGC TTA CTT GGA TCG CTC-3’(配列番号12):下線部はXbaI部位を示す)とP6(5’-GGA ATT CTC AAG CTC CGC TAG AAG AAG ATC CCC TCT TTT G-3’ (配列番号13):下線部はEcoRI部位を示す)を用い、鋳型として改変型crtZ遺伝子を用いたPCR増幅により得られた遺伝子断片を、制限酵素XbaIとEcoRIで処理し、プラスミドpLD7-rrnP-crtWのXbaI-EcoRI部位に挿入し、プラスミドpLD7-rrnP-crtW-crtZとした。 プライマーとしてP7(5’-GCT CTA GAA AAG AGG AGA AAT TAC ATA TGA CTG CTG CTG TTG CTG AGC CTA G-3’ (配列番号14):下線部はXbaI部位を示す)とP8(5’-GGA ATT CTC AAG ACT CTC CTC TCC AAA GTC TCC ACC AAG-3’ (配列番号15):下線部はEcoRI部位を示す)を用い、鋳型として改変型crtWを用いたPCR増幅により得られた遺伝子断片を、制限酵素XbaIとEcoRIで処理し、プラスミドpLD7-rrnP-crtZのXbaI-EcoRI部位に挿入し、プラスミドpLD7-rrnP-crtZ-crtWとした。 プラスミドpLD7-rrnP-crtZ、pLD7-rrnP-crtW、pLD7-rrnP-crtZ-crtW、pLD7-rrnP-crtW-crtZを制限酵素NotIとSalIで処理し、プラスミドpLD200(Genbank accession no. CS165378)のNotI-SalI部位に挿入し、プラスミドpLD200Z、pLD200W、pLD200ZW、pLD200WZを作製した(図2)。これらのプラスミドは、形質転換体にスペクチノマイシン耐性を付与するaadA遺伝子の発現カセットと、相同組換えに必要なタバコ由来rbcL遺伝子とタバコ由来accD遺伝子を有する。改変型crtZならびに改変型crtWは、タバコ(Nicotiana tabacum L. cv Xanthi)由来rrnプロモーターとタバコ由来rps16ターミネーターの中間に連結された。[実施例2]葉緑体形質転換植物の作出 野性株タバコ(Nicotiana tabacum L. cv Xanthi)は0.2%ゲランガム(和光純薬製)を含むMS培地(Murashige and Skoog, 1962)上で無菌育種した。葉組織を切り出して無菌培地に並べ、実施例1で作製した各葉緑体遺伝子組換え用プラスミドを用いて、Maligaらの方法(Svab and Maliga, 1993)に従い、パーティクルボンバードメント法による遺伝子導入を行った。0.5 mg ml-1スペクチノマイシンを含むRMOP培地(Klein et al., 1988)上で生育したシュートは、0.5 mg ml-1スペクチノマイシンを含むMS培地上に移植して発根を促し、植物体を得た。植物体は、Metro-Mix 350(Sun Gro Horticulture社製)を入れた鉢(700 ml plant-1)に植え替えた後、25℃、16時間明期(8時間暗期)、300μmol m-2 s-1の光条件下で育種した。[実施例3]葉緑体形質転換植物のゲノムPCR 液体窒素にて凍結させたタバコ・リーフディスク(30-40 mg湿重量)をミキサーミル(MM 301, Retsch社製)にて破砕した。これに0.5 ml のDNA抽出バッファー(50 mM Tris-HCl (pH7.5), 0.3 M NaCl, 20 mM EDTA, 0.5% SDS, 5 M Urea, 5%(v/v) phenol)を加え、激しく撹拌した。ここに0.5 mlの混合溶媒(フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール 25:24:1 v/v/v)を加えて、撹拌後、2分間転倒混和し、遠心分離(16,000×g,5 分間)を行って水層を抽出した。これに1 ml のエタノールを加えて転倒混和し、室温で1分間放置した後、遠心分離(16,000×g 5分間)を行い、上清を捨てて70%エタノールでリンスした。得られたDNAペレットを減圧乾燥して50μLのTEに溶解し、DNA抽出液とした。 ゲノムPCRは、TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて行った。プライマーには200T(5’-GGA TTG AGC CGA ATA CAA C-3’(配列番号16))ならびに200B(5’-CAA CAC GGA ACA AAG GGG AC-3’ (配列番号17))を用いた。2μLのDNA抽出液に0.5μLのExTaq polymerase、5μLの10×ExTaq Buffer、8μLのdNTP Mixture、各1μLの100μMプライマーを加え、滅菌水で50μLとした。PCR反応液は94℃で5分間熱変性させた後、94℃(30秒)-55℃(30秒)-72℃(5分)のサイクルを30回繰り返し、その後、72℃で7分間伸長反応を促した。得られたPCR産物は1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色により検出を行った。 CrtZならびにCrtWを導入した形質転換体から抽出したDNAを鋳型にしたサンプルは3.2 kbの遺伝子断片を増幅した。図3に示す通り、形質転換に用いたプラスミドpLD200ZWを鋳型にしたサンプルと同じ位置にバンドが検出されていることから、crtZならびにcrtW遺伝子が相同組換えにより葉緑体ゲノムに挿入されたことが推測できる。PCRに用いたプライマーは、rbcL遺伝子とaccD遺伝子の部分配列をコードしているため、野性株から抽出したDNAを鋳型にしたサンプルでは、0.3 kbにバンドが検出されている。[実施例4]葉緑体形質転換植物のアスタキサンチン生産量測定 鉢植え後のタバコ植物体から採取したリーフディスク(706 mm2)を液体窒素中で凍結し、ミキサーミル(Retsch社製)にて破砕した後、0.75 mLのアセトンと10 mgの炭酸カルシウムを加えて撹拌した。遠心分離(15,000×g、5分間、4℃)後、上清を回収し、沈殿には0.5 mLのアセトンを加えた。沈殿画分を暗所にて5分静置した後、遠心分離(15,000×g、5分間、4℃)し、上清を回収して一回目の回収液と混合した(これを色素成分抽出液とした)。 色素成分抽出液は、Acquity UPLC(Ultra Performance Liquid Chromatographyシステム ウォーターズ社製)に供し、MassLynxソフトウェアを用いて定性・定量データの解析を行った。分離用カラムとしてはACQUITY BEH Shield RP18(2.1×150mm, 1.7 μm particle size ウォーターズ社製)を用いて、流速0.6 ml/min、温度40℃条件下、solvent A (methanol:water 50:50)とsolvent B (acetonitrile)からなる2溶媒系のグラジエント形成により色素成分を分離し、フォトダイオードアレイ検出器による検出を行った。抽出液を注入後のグラジエント条件としては、solvent Bの容量比率を70%として3.5分保持した後、4.5分かけて100%とし、そのまま3分間保持することとした。その後、次の注入に向けて、70%のsolvent Bを4分間流すことにより、カラム内部を平衡化した。色素成分はクロマト分離時のリテンションタイムと吸光スペクトルにより同定を行い、445 nmの吸収で確認されたピークエリアを換算することでサンプル中の濃度を決定した。換算は、和光純薬製カロテノイド標準試料とアスタキサンチン標準品(フナコシ社製)を用いて作製した検量線をもとにして行った。標準品が入手不可能なケトカロテノイドである、アドニキサンチン、アドニルビンはMisawaらの方法(Choi et al., 2006; Nishida et al., 2005)に準じて大腸菌から抽出・精製し、これを標準試料として用いた。 UPLCで検出した吸収波長445 nmにおけるクロマトグラムを図4に示す。リテンションタイム(保持時間)1.88分のピークがアスタキサンチンである。検出されたピークの大きさをもとに、色素成分の定量解析を行ったところ、CrtZならびにCrtWを導入した形質転換体では、葉組織のグラム湿重量あたりで367.9μg(葉組織のグラム乾重量換算で3,000μg)のアスタキサンチンを生産していることがわかった(図5)。形質転換体におけるアスタキサンチンの含量は、野性株中の主要カロテノイドであるネオキサンチン、ビオラキサンチン、ルテイン、β-カロテンの含量と比べて圧倒的に多く、形質転換体に含まれる最も主要なカロテノイドがアスタキサンチン(全カロテノイド量の98%)であった。また、形質転換体のトータル・カロテノイド含量は野性株と比べて1.5倍増強されていることが分かった。 本実施例4と先行技術とで比較した、植物乾燥重量当たりのアスタキサンチン生産量図7に示す。図7から明らかなように、本技術による植物でのアスタキサンチン生産法は先行技術を圧倒的に凌駕するものであった。[実施例5]葉緑体形質転換植物の生育評価 実施例2において、鉢植えから8週間後の葉緑体形質転換タバコの写真を図6に示す。アスタキサンチン生合成系遺伝子crtZならびにcrtWを導入された形質転換体は、野性株と異なる色彩を呈し、葉および茎が赤茶色、根および花弁が薄い桃色、雌しべの柱頭部分が赤色を呈した。これに対して、野生株は、花弁を除き、全体に緑色であった。 また、図6に示されるように、CrtWならびにCrtZを葉緑体内で発現させることにより、アスタキサンチンを生産する葉緑体形質転換タバコの生育は損なわれていない。形質転換体の生育度合いは、遺伝子導入に用いたベクターが、pLD200ZW, pLD200WZ, pLD200Wの順に良い。また、個体当りのアスタキサンチン生産性で見るとpLD200ZWが最も高かった。[実施例6]葉緑体形質転換植物の光吸収率測定 ライカー社製1800-12S External Integrating Sphere を用いて葉表面の光吸収率を測定した結果を図8に示す。照射光の強度を1とした時の光の吸収率は野性株で0.87であるのに対し、CrtZ導入株では0.827、CrtZならびにCrtW導入株では0.825であり、大差なかった。このことから、形質転換タバコはアスタキサンチンを生産しても野性株と同等の光吸収能を有することが分かる。β-カロテンからアスタキサンチンの生合成経路と、変換酵素CrtW及びCrtZの機能を示す図である。実施例1で構築した4つのプラスミドの構造を示す図である。遺伝子rbcL 及びaccDは相同組換えに用いたタバコ由来遺伝子、Prrnはタバコ由来rrnプロモーター、Trps16はタバコ由来rps16ターミネーター、SDは遺伝子発現を効率化させるために用いたShine-Dalgano配列を表す。実施例1で得られた形質転換体のゲノムPCRの結果を示す図である。レーン1はゲノムPCRの鋳型DNAであり、レーン2はCrtZ/CrtW導入タバコ由来DNAであり、レーン3はプラスミドpLD200ZWである。実施例1で得られた形質転換タバコ植物体の葉の色素成分抽出液についてUPLCを行った結果得られた、吸収波長445 nmにおけるクロマトグラムである。野生株と形質転換株との間で、β-カロテノイド及びクロロフィルの生産量を比較した図である。値は、平均±誤差を示す。野生株及び形質転換株の形態を比較した写真である。実施例1で得られた形質転換タバコ植物体のアスタキサンチン生産量と、先行技術によるアスタキサンチン生産量とを比較した図である。野生株と形質転換株との間で、葉表面の光吸収率を比較した図である。数値は照射光を1とした時の比率を表す。 ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。規則:5’末端から順に、下表1の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを下表1の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換する。 上記の規則が、5’末端から順に、下表2の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを下表2の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換するものである請求項1に記載の遺伝子。 配列番号1に示される塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。 ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtWの塩基配列を、下記の規則に従って変換した塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。規則:5’末端から順に、上記表1の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを上記表1の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換する。 上記の規則が、5’末端から順に、上記表2の左欄のアミノ酸をコードするトリプレットを上記表2の右欄に記載のトリプレットの何れかに変換するものである請求項4に記載の遺伝子。 配列番号2に示される塩基配列からなる植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子。 植物細胞で機能するプロモーターと、それにより発現できるように連結された請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子及び/又は請求項4〜6のいずれかに記載の遺伝子とを含む遺伝子発現カセット。 遺伝子発現カセットが、請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子と請求項4〜6のいずれかに記載の遺伝子とを、上流からこの順に含むものである請求項7に記載の遺伝子発現カセット。 請求項7又は8に記載の遺伝子発現カセットが、植物ゲノムとの相同組換えのための配列間に挿入されたプラスミド。 プロモーターが葉緑体で機能するプロモーターであり、植物ゲノムとの相同組換えのための配列が葉緑体ゲノムとの相同組換えのための配列である請求項9に記載のプラスミド。 請求項7又は8に記載の遺伝子発現カセット、又は請求項9又は10に記載のプラスミドを用いて形質転換された植物体。 請求項11に記載の植物体からアスタキサンチンを回収するアスタキサンチンの製造方法。 【課 題】植物を用いてアスタキサンチンを効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】ブレバンディモナス(Brevundimonas)属に属する海洋細菌由来のアスタキサンチン生合成系遺伝子crtZの塩基配列を特定の規則に従って変換した塩基配列からなる遺伝子、及び/又はアスタキサンチン生合成系遺伝子crtWの塩基配列を特定の規則に従って変換した塩基配列からなる遺伝子同細菌由来の植物型アスタキサンチン生合成系遺伝子で形質転換した植物体はアスタキサンチンを効率よく生産する。【選択図】図5配列表