タイトル: | 公開特許公報(A)_2,5−フランジカルボン酸の製造方法 |
出願番号: | 2007196595 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 307/68,C07B 61/00 |
柿沼 宏和 三浦 俊成 JP 2009029751 公開特許公報(A) 20090212 2007196595 20070727 2,5−フランジカルボン酸の製造方法 キヤノン株式会社 000001007 渡辺 徳廣 100069017 柿沼 宏和 三浦 俊成 C07D 307/68 20060101AFI20090116BHJP C07B 61/00 20060101ALN20090116BHJP JPC07D307/68C07B61/00 300 6 OL 8 4C037 4H039 4C037MA01 4H039CA65 4H039CC30 本発明は、2,5−フランジカルボン酸(以下、FDCAとも略記する)の製造方法に関するものである。FDCAは特に、植物由来のプラスチック原料として用いられる。 5−ヒドロキシメチルフルフラール(以下、5−HMFとも略記する)は、フルクトースやグルコースなどの六炭糖を脱水して得ることができ、界面活性剤、プラスチック及び樹脂類等の中間体として利用することのできる有用な化合物である。 5−HMFは種々の酸化剤や触媒により酸化され、2,5−ジホルミルフラン(以下、DFFとも略記する)や、2−カルボキシ−5−ホルミルフラン(以下、CFFとも略記する)、FDCAが製造されている。例えば、触媒を用いたFDCAの製造法として、特許文献1では、白金担持カーボン触媒もしくはパラジウム担持カーボン触媒を用いて5−HMFを空気酸化することにより、CFFおよびFDCAを製造している。 また、酸化剤を用いたFDCAの製造法として、非特許文献1では5−HMFを100℃の高温下で16時間から64時間硝酸と共存させる方法や、室温で5−HMF水溶液に対して過マンガン酸カリウムのピリジン溶液を滴下することで5−HMFを酸化する方法により、FDCAを合成している。特開平2−88569号公報TONI EL HAJJ,ANTOINE MASROUA,JEAN−CLAUDE MARTIN,GERARD DESCOTES, BULLETIN DE LA SOCIETE CHIMIQUE DE FRANCE.1987,No.5,p.855から860 特許文献1では、白金触媒およびパラジウム触媒を用いて5−HMFを酸化する際、アルカリの連続添加によるpH調整をおこなわなければ、中間体であるCFFおよびDFFが多量に残留する。pH調整をおこなった場合でも、可溶化剤を添加しない水溶液中で反応をおこなうとFDCA収率は91%となり、約10%の不純物を含むために、回収後のFDCAの純度が低下する恐れがある。 また、非特許文献1では、硝酸や過マンガン酸カリウムで5−HMFを酸化しFDCAを合成しているが、得られるFDCA収率はそれぞれ24%、70%と低く、高純度のFDCAを得られるとは言い難い。 したがって、反応溶液中の不純物が少ない、高純度かつ高生成率のFDCAを得る方法の構築が望まれていた。 本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、高純度でかつ高生成率で2,5−フランジカルボン酸を製造する方法を提供するものである。 上記の課題を解決する2,5−フランジカルボン酸の製造方法は、5−ヒドロキシメチルフルフラールから2,5−フランジカルボン酸を製造する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール1molに対して1.0mol以上10mol以下の苛性アルカリを含有するアルカリ性を示す水溶液中で、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化して、2,5−フランジカルボン酸とその中間体を生成する工程と、前記酸化後の水溶液中に塩素系酸化剤を、水溶液中に残存する中間体1molに対して0.5mol以上10.0mol以下添加し、前記中間体を酸化して2,5−フランジカルボン酸を生成する工程とを有することを特徴とする。 本発明は、5−HMFを酸化してFDCAを製造する方法において、酸化反応後に残留する中間体および副生物に対し塩素系酸化剤を用いてFDCAまで酸化することにより、高純度でかつ高生成率でFDCAを製造することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明者らは、反応後に残留する中間体に対して塩素系酸化剤を用いてFDCAまで酸化することで、高純度かつ高生成率のFDCAを製造できることを見出した。 本発明に係る2,5−フランジカルボン酸の製造方法は、5−ヒドロキシメチルフルフラールから2,5−フランジカルボン酸を製造する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール1molに対して1.0mol以上10mol以下の苛性アルカリを含有するアルカリ性を示す水溶液中で、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化して、2,5−フランジカルボン酸とその中間体を生成する工程と、前記酸化後の水溶液中に塩素系酸化剤を、水溶液中に残存する中間体1molに対して0.5mol以上10.0mol以下添加し、前記中間体を酸化して2,5−フランジカルボン酸を生成する工程とを有することを特徴とする。 前記苛性アルカリが水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一つを含むことが好ましい。 前記中間体が、2−カルボキシ−5−ホルミルフラン(以下、CFFとも略記する)、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸(以下、HMFAとも略記する)のうち一つ以上の化合物であることが好ましい。 前記塩素系酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムであることが好ましい。 前記5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化する方法が、貴金属触媒による空気酸化であることが好ましい。 前記貴金属触媒が白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムからなる群のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。 本発明の高純度FDCAの製造方法によれば、水溶液中、アルカリ性環境下において5−HMF酸化反応後の溶液中に含まれるDFF、CFF、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸(以下、HMFAとも略記する)HMFA等の中間体、および溶液の着色原因となる不定形の副生物に対して、塩素系酸化剤を用いて酸化し、FDCA収率および生成率を高めることができる。 酸化反応に用いる触媒としては、水溶液中でカルボン酸を合成することのできる触媒であればよい。本発明ではパラジウム担持カーボン触媒を使用した例を記載しているが、その他にも、白金担持カーボン触媒、過酸化水素、過マンガン酸カリウム等を挙げることができる。その中でも、反応後に廃棄物が発生せず、また、反応条件中で安定であり再利用が可能なために安価に反応をおこなうことができるパラジウム担持活性炭が好ましい。また、本発明ではパラジウムを活性炭に担持した触媒を用いているが、触媒の形態は特に限定されるものではない。本発明では、パラジウム担持カーボン触媒を使用しているが、本発明はこれに限ることなく、他にも上述した触媒を使用することができる。また、触媒の添加方法はどのような方法であっても良い。 さらに、苛性アルカリは水溶液として添加しているが、本発明はこれに限ることなく、溶液で添加しても固体で添加してもよい。触媒、アルカリ、原料の5−HMFの添加方法、順序についても同様に、以下に記載の方法、順序に限ることなく、どのような順序、方法であっても良い。 まず、反応容器に触媒、水、苛性アルカリを加えて攪拌し、触媒を懸濁させる。このとき、苛性アルカリは水溶液の状態で添加することが望ましい。また、添加するアルカリの量は5−HMF1molに対して1.0mol以上10mol以下であることが好ましく、2.0mol以上5.0mol以下であることがより好ましい。アルカリの量が1.0mol未満で少なすぎると、系が酸化に必要な程度のアルカリ性環境にならず、5−HMFの酸化が充分に進行しない場合がある。アルカリの量が10molを越えて多すぎると5−HMFに対して縮合反応などの望ましくない副反応が起こるためにFDCA収率が低下するためである。 その後、バブリングをおこないながら5−HMFを加えて酸化させる。このとき、5−HMFは水溶液の状態で加えるのが望ましい。酸化反応に用いる酸化剤としては特に制限されるものではないが、酸素及び空気などの酸素を含んだ気体であることが好ましく、この場合はバブリングによって酸化反応を進めることができる。 水溶液中の5−HMF濃度は、特に制限されるものではないが、効率化の観点から、溶媒である水に対して0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、1.0重量%以上5.0重量%以下がより好ましい。 水溶液中の苛性アルカリ濃度は、溶媒である水に対して0.03重量%以上31.72重量%以下が好ましく、0.06重量%以上15.86%以下がより好ましい。 水溶液中の触媒濃度は、溶媒である水に対して0.01重量%以上30.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上5重量%以下がより好ましい。 反応後、触媒を濾別し、濾液を少量採取し高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略す)により生成物の定量をおこない、FDCA生成率と中間体の残存率を算出する。 次に、濾液を攪拌しながら塩素系酸化剤を添加し、残留する中間体および副生物を酸化する工程を行う。このとき、加える塩素系酸化剤の量は残留する中間体1molに対して0.5mol以上10.0mol以下であることが好ましく、5.0mol以上10.0mol以下であることが特に好ましい。塩素系酸化剤の量が少なすぎると、残留する中間体および副生物を全て酸化することができず、FDCA純度および生成率が低下する。塩素系酸化剤の量が多すぎるとFDCA自体を過酸化してしまい、FDCA純度および生成率が低下する。 反応温度は水溶液中で触媒による空気酸化で5−HMFを酸化することができ、かつ塩素系酸化剤で残留する中間体および副生物を酸化することのできる温度条件であれば特に限定されない。これらの反応は例えば10℃から80℃の範囲でおこなうことができ、必要に応じて加熱することができるが、室温(25℃前後)でおこなうことがエネルギー消費量の低減のために好ましい。 以下に本発明を実施例、比較例と参考例により詳細に説明する。ただし、実施例、比較例、参考例は本発明を限定するものではなく、本発明は下記の実施例と参考例で用いた実験条件に限定されるものではない。 まず、参考例として塩素系酸化剤を添加せず、触媒による酸化反応のみで5−HMFからFDCAを製造した例を示す。 参考例1 300mL入り三つ口フラスコに5%パラジウム担持カーボン触媒4.0g、10mol/L水酸化ナトリウム(7.6g、0.19mol)水溶液19.0mLおよび水81.0mLを加えて触媒懸濁水溶液を調製する。このとき、水酸化ナトリウムは5−HMFに対して3.0mol倍となる。この溶液を流量2.0L/minでエアーバブリングしながら、別に調製した5−HMF8.1g(64.2mmol)を溶解させた水溶液100mLを滴下することにより、酸化反応をおこなった。このとき、5−HMF濃度は3.4重量%となるように純水の量を235mLに調整した。反応は25℃の室温でおこなった。 23時間の反応後、反応溶液について、1H−NMRによる同定およびHPLC(日本分光株式会社製 カラム:SHODEX SUGAR SH−1011、移動相:3mM過塩素酸水溶液、流速:0.8mL/min(0から20min)、1.4mL/min(20から35min)、検出器:PDA,R.I.)による生成物の定量をおこなった。 1H−NMRによる分析結果は、FDCA(DMSO−d6、20℃)ではδ:3.4(s、2H、−OH)、δ:7.2(s、2H、フラン環)、CFF(CDCl3、20℃)では、δ:9.6(s、1H、−CHO)、δ:7.4(s、1H、フラン環)、δ:7.1(s、1H、フラン環)、HMFA(DMSO−d6、20℃)ではδ:7.1(s、1H、フラン環)、δ:6.4(s、1H、フラン環)、δ:4.4(s、2H、−CH2−)となった。 HPLCでは、FDCA、CFF、HMFAについて、各化合物について標準物質を用いて検量線を作成し、この検量線を基に各化合物の生成率を算出した。FDCAの生成率は91.9%であり、CFF生成率は6.6%、HMFA生成率は1.4%であった。 以下、参考例1で得られた反応溶液に対し、塩素系酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(以下、NaClOと略す)を添加することにより中間体の酸化検討をおこなった例を実施例と比較例を用いて説明する。 実施例1 参考例1で得られた水溶液を10mL採取した。この水溶液中にはFDCAが0.39g(2.48mmol)、CFFが2.49×10-2g(0.18mmol)、HMFAが5.36×10-3g(0.04mmol)含まれている。上記水溶液に対し、5%NaClO水溶液を0.14mL(7.0mg、0.09mmol)添加し、水溶液を攪拌することにより酸化反応をおこなった。このとき、添加した次亜塩素酸ナトリウムは水溶液中のCFFとHMFAの合計0.19mmolに対して約0.5mol倍となるように添加した。反応は25℃の室温でおこなった。 6時間の反応後、反応溶液について 1H−NMRによる同定およびHPLCによる生成物の定量をおこなったところ、FDCA含有量は0.39g、CFF含有量は2.27×10-2g、HMFA含有量は2.30×10-3gとなり、各化合物の生成率を算出すると、FDCA生成率は93.4%、CFF生成率は6.0%、HMFA生成率は0.6%となった。 実施例2 実施例1と同様に、参考例1で得られた水溶液を10mL採取し、5%NaClO水溶液を0.31mL(15.5mg、0.21mmol)滴下して反応をおこなった。このとき、NaClOは水溶液中のCFFとHMFAの合計モル量に対して約1.1mol倍となるように添加した。この他の操作は実施例1と同様の操作で反応をおこなった。 6時間の反応後、反応溶液について 1H−NMRによる同定およびHPLCによる生成物の定量をおこなったところ、FDCA生成率は93.6%、CFF生成率は5.6%、HMFA生成率は0.8%であった。 実施例3 実施例1と同様に、参考例1で得られた水溶液を10mL採取し、5%NaClO水溶液を1.39mL(69.5mg、0.93mmol)滴下して反応をおこなった。このとき、NaClOは水溶液中のCFFとHMFAの合計モル量に対して約5.0mol倍となるように添加した。この他の操作は実施例1と同様の操作で反応をおこなった。 6時間の反応後、反応溶液について 1H−NMRによる同定およびHPLCによる生成物の定量をおこなったところ、FDCA生成率は93.9%、CFF生成率は5.2%、HMFA生成率は0.9%であった。 実施例4 実施例1と同様に、参考例1で得られた水溶液を10mL採取し、5%NaClO水溶液を2.78mL(239.0mg、1.87mmol)滴下して反応をおこなった。このとき、NaClOは水溶液中のCFFとHMFAの合計モル量に対して約10.0mol倍となるように添加した。この他の操作は実施例1と同様の操作で反応をおこなった。 6時間の反応後、反応溶液について 1H−NMRによる同定およびHPLCによる生成物の定量をおこなったところ、FDCA生成率は92.6%、CFF生成率は3.6%、HMFA生成率は1.1%であった。 次に比較例1として、参考例1で得られた反応溶液中のCFFとHMFAの合計量に対し、NaClOを20.0mol倍添加して酸化検討をおこなった例を示す。 比較例1 実施例1と同様に、参考例1で得られた水溶液を10mL採取し、5%NaClO水溶液を5.57mL(278.5mg、3.78mmol)滴下して反応をおこなった。このとき、NaClOは水溶液中のCFFとHMFAの合計モル量に対して約20.0mol倍となるように添加した。この他の操作は実施例1と同様の操作で反応をおこなった。 6時間の反応後、反応溶液について 1H−NMRによる同定およびHPLCによる生成物の定量をおこなったところ、FDCA生成率は60.8%、CFF生成率は0.8%、HMFA生成率は1.0%であった。 以上の結果を表1に示す。(注)FDCA:2,5−フランジカルボン酸CFF:2−カルボキシ−5−ホルミルフランHMFA;5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸 本発明は、5−HMFを酸化してFDCAを製造する方法において、酸化反応後に残留する中間体および副生物に対し塩素系酸化剤を用いてFDCAまで酸化することにより、高純度でかつ高生成率でFDCAを製造することができるので、目的物質の精製に用いられるエネルギー消費の低減に利用することができる。 5−ヒドロキシメチルフルフラールから2,5−フランジカルボン酸を製造する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール1molに対して1.0mol以上10mol以下の苛性アルカリを含有するアルカリ性を示す水溶液中で、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化して、2,5−フランジカルボン酸とその中間体を生成する工程と、前記酸化後の水溶液中に塩素系酸化剤を、水溶液中に残存する中間体1molに対して0.5mol以上10.0mol以下添加し、前記中間体を酸化して2,5−フランジカルボン酸を生成する工程とを有することを特徴とする2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 前記苛性アルカリが水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 前記中間体が、2−カルボキシ−5−ホルミルフラン、5−ヒドロキシメチル−2−フランカルボン酸のうち一つ以上の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 前記塩素系酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 前記5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化する方法が、貴金属触媒による空気酸化であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 前記貴金属触媒が白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウムからなる群のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の2,5−フランジカルボン酸の製造方法。 【課題】高純度でかつ高生成率で2,5−フランジカルボン酸を製造する方法を提供する。【解決手段】5−ヒドロキシメチルフルフラールから2,5−フランジカルボン酸を製造する方法であって、5−ヒドロキシメチルフルフラール1molに対して1.0mol以上10mol以下の苛性アルカリを含有するアルカリ性を示す水溶液中で、5−ヒドロキシメチルフルフラールを酸化して、2,5−フランジカルボン酸とその中間体を生成する工程と、前記酸化後の水溶液中に塩素系酸化剤を、水溶液中に残存する中間体1molに対して0.5mol以上10.0mol以下添加し、前記中間体を酸化して2,5−フランジカルボン酸を生成する工程とを有する2,5−フランジカルボン酸の製造方法。【選択図】なし