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タイトル:公開特許公報(A)_薄片状含水酸化チタン及びその製造方法並びに薄片状酸化チタン
出願番号:2007193329
年次:2009
IPC分類:C01G 23/053,A61K 8/29,A61Q 17/04


特許情報キャッシュ

前島 邦明 石栗 裕子 徳永 隆章 JP 2009029645 公開特許公報(A) 20090212 2007193329 20070725 薄片状含水酸化チタン及びその製造方法並びに薄片状酸化チタン 日本化学工業株式会社 000230593 羽鳥 修 100076532 松嶋 善之 100101292 前島 邦明 石栗 裕子 徳永 隆章 C01G 23/053 20060101AFI20090116BHJP A61K 8/29 20060101ALI20090116BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20090116BHJP JPC01G23/053A61K8/29A61Q17/04 7 4 OL 21 4C083 4G047 4C083AB241 4C083AB242 4C083AC122 4C083BB46 4C083EE03 4C083EE07 4C083FF01 4G047CA02 4G047CB05 4G047CC01 4G047CC03 4G047CD04 本発明は、薄片状含水酸化チタン及びその製造方法に関する。また本発明は、この含水酸化チタンから得られる薄片状酸化チタンに関する。本発明の薄片状含水酸化チタン及び薄片状酸化チタンは、例えば化粧料、顔料、塗料、コーティング剤及び樹脂などへの添加剤、紫外線遮蔽材料並びに光触媒機能性材料として有用である。 薄片状酸化チタンを製造する方法として、特許文献1には、無機酸化物又は含水無機酸化物あるいはこの両者のコロイド溶液を凍結し、コロイド溶液の溶媒の結晶面と結晶面の間隙に無機酸化物粒子又は含水無機酸化物粒子あるいはこの両者を析出させた後、凍結物が解凍しない温度に保持しながら溶媒を除去して鱗片状の無機酸化物又は含水無機酸化物を製造する方法が記載されている。この透明鱗片状酸化チタンの厚みは0.05〜5μmであると同文献には記載されている。特許文献2には、この透明鱗片状酸化チタンを用いた化粧料が記載されている。 特許文献3には、組成式 HXTi2-X/4O4・nH2O(ただし、xは0.60〜0.75、nは0〜2)で示される斜方晶の層状構造を有するチタン酸化合物が記載されている。この化合物は、酸化セシウム(Cs2O)又は加熱により酸化セシウムに分解される化合物と、二酸化チタン(TiO2)又は加熱により二酸化チタンを生ずる化合物とを、モル比で1/4から1/7の割合に混合し、これを700℃以上の温度で焼成してチタン酸セシウムを得、このチタン酸セシウムと酸水溶液とを接触させることにより、層間のCsイオンをすべて溶出させることで製造される。 特許文献4には、形状異方性の薄片粒子が懸濁されてなるチタニアゾルが記載されている。このチタニアゾルは、酸化セシウム又は加熱により酸化セシウムとなる化合物と二酸化チタンとを混合し、この混合物を焼成して得られるチタン酸セシウムを酸水溶液と接触させて層間のセシウムイオンを水素イオン(存在形態はヒドロニウムイオン)で置換し、生成した層状構造のチタン酸粉末をアンモニウム化合物またはアミン化合物の水溶液と混合攪拌し、結晶を剥離分散させることで得られる。この薄片粒子は厚さが1nm前後であると同文献には記載されている。このチタニアゾルを真空凍結などの方法で乾燥させた後に更に加熱して、厚みがナノメーターレベルの薄片状の酸化チタンを得る方法が特許文献5に記載されている。 特許文献6には、薄片状チタニアゾルを噴霧乾燥して得られる、酸化チタン殻を有する中空状微粉末を粉砕してなる薄片状酸化チタン微粉末が記載されている。この酸化チタン微粉末はその厚さが1〜100nmであると同文献には記載されている。更に同文献の明細書14〜16ページには、新規層状チタン酸化合物に関して組成式とX線回折パターンが記載されており、新規な結晶構造であることが記載されている。特開昭62−3003号公報 請求項3と2及び実施例特開昭62−4212号公報特開平6−122518号公報 請求項1と2及び実施例特開平9−25123号公報 請求項1と2特開平9−67124号公報 請求項及び実施例再公表特許WO99/11574号公報 請求項1〜4、16〜18 特許文献1及び2に記載のチタニアゾルを凍結乾燥する方法は、大量の水を一旦凍結してから真空乾燥するために、これに費やすエネルギーは莫大であり、経済性に問題がある。また、特許文献1の実施例に記載されているように、厚さがサブミクロンの鱗片状酸化チタンを得るためには秒単位で溶液を凍結させねばならず、工業的規模での実施は実質的に困難である。 特許文献3、4及び5に記載のチタン酸セシウム塩を用いる方法は、セシウム化合物が非常に高価であることに加えて、チタン酸セシウムと酸水溶液との反応性が低く、セシウムイオンを水素イオンで置換するのに長時間(3日以上)を要する(特許文献3及び5の実施例参照)。このため、工業的に生産するには非常に効率が悪く生産コストがかかる。また、得られる薄片粒子は、一層の厚さが1nm前後であっても、積層して絡み合った構造であるため数十nmの粒子となっており(特許文献5の実施例参照)、透明性が高くない。 特許文献6に記載されている、噴霧乾燥して得られる酸化チタンは、その厚さをサブミクロンにすることはできないので、透明性の高いものとはならない。また、同文献中の新規層状チタン酸化合物のX線回折パターンは本発明と異なる。 本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る含水酸化チタン及びその製造方法並びに酸化チタンを提供することにある。 本発明は、X線回折パターンにおいて2ないし4nmのd面間隔に相当するピークを少なくとも1つ有し、層状構造を有することを特徴とする薄片状含水酸化チタンを提供するものである。 また本発明は、前記の薄片状含水酸化チタンを熱処理して得られた薄片状酸化チタンを提供するものである。 更に本発明は、前記の薄片状含水酸化チタンの製造方法であって、 含水酸化チタンのコロイドが生成しない条件下に酸性チタン塩溶液を加水分解した後、溶液全体を凍結させて含水酸化チタンの結晶を析出させ、次いで解凍後に該結晶をろ過し水洗乾燥する工程を含む薄片状含水酸化チタンの製造方法を提供するものである。 本発明の薄片状含水酸化チタン及び薄片状酸化チタンは、紫外線透過率が低く、且つ可視光線の透過率が高いものである。したがって本発明の薄片状含水酸化チタン及び薄片状酸化チタンは、化粧料、顔料、塗料、コーティング剤及び樹脂などへの添加材として特に有用である。また、紫外線遮蔽効果及び光触媒機能効果が高い。このように本発明の薄片状含水酸化チタン及び薄片状酸化チタンは、従来の酸化チタンの欠点を大幅に改善できるので、その用途は格段に広いものとなる。更に本発明の薄片状含水酸化チタンの製造方法は、工程が簡単であり、薄片状含水酸化チタンを安価に製造できる。 含水酸化チタンは、一般に硫酸チタン(Ti(SO4)2・nH2O)溶液を熱加水分解して得られる白色沈澱であり、TiO2・H2O又はTiO(OH)2で表される。この物質はメタチタン酸又はβチタン酸とも呼ばれる。メタチタン酸はアナターゼ型の微結晶の集合体であり、X線回折パターンでもアナターゼ型を示す。 別の含水酸化チタンとして一般的に知られるものとして、四塩化チタン又は硫酸チタニル(TiOSO4・nH2O)の水溶液を室温でアルカリ中和して得られる水和物白色沈澱が挙げられる。この物質はTiO2・2H2O又はTi(OH)4で表され、オルソチタン酸(或いはαチタン酸)又は水酸化チタンとも呼ばれる。一般的に知られているオルソチタン酸はX線回折法による測定では無定形である。 酸化チタン(TiO2)は、上述の含水酸化チタンを熱処理することで得られる。粒子径が0.1μmよりも大きい酸化チタンは可視光線を散乱して白色を呈する。粒子径が0.1μmよりも小さい酸化チタンは光散乱能力が低下し透明に近くなる。ただし、微細な粒子は凝集しやすく、粉の状態では白色を呈する。 上述のメタチタン酸のアナターゼ型微結晶は、結晶子の大きさが一般に6〜8nmであって、この粒子径であれば粒子は可視光を透過し透明であるが、結晶子は0.3μmほどの粒子を形成し、この粒子は更に凝集して1μmほどの塊状粒子を形成しているため白色の粒子となっている。従来知られている上述の何れの含水酸化チタンも白色であり、透明性の層状構造ではない。 本発明の含水酸化チタンは、X線回折パターンにおいて2ないし4nmのd面間隔に相当するピークを少なくとも1つ有する。X線回折パターンにおけるその他のピークは、アナターゼ型含水酸化チタンのピークである。 X線回折パターンにおいて2ないし4nmのd面間隔に相当するピークを有することに加え、本発明の含水酸化チタンは層状構造である。具体的には、X線回折データが示すように、薄いシート状の結晶が緻密に積層した層状構造となっている。メタチタン酸の平面方向の1枚の層の厚さはほぼ0.4nmである。後述する実施例では、X線回折パターンにおいて約3nmのピークが観察されているので、含水酸化チタンのシートは約8層の積層構造体である。ただし、X線回折ピークはブロードであるから、含水酸化チタンのシートは4層ないし12層の積層構造体である。 本発明の含水酸化チタンが層状構造を有することは透過型電子顕微鏡観察によって直接確認できる。層状構造を有する本発明の含水酸化チタンは、水等の溶媒中ではその積層がほぐれてシート状に分散する。分散したシートの1枚の厚さは2ないし4nmである。この厚さは可視光線の波長以下である。したがってこのシートは可視光に対して透明となる。また、例えば分散が不十分でシートが数枚重なっていても、その厚さは可視光線の波長に対して充分に薄いので透明となる。また、水等の溶媒中にひとたび分散したシートは、これを乾燥させて粉末に戻しても元の層状構造に戻らず、シートが不規則に絡んだ凝集体になる。そのため、この粉末を熱処理して水を除去することで薄片状の酸化チタンを得ることができる。 後述する好適な製造方法に従い生成させた直後の溶媒中での含水酸化チタンのシートの面の大きさは0.1〜3mm程度であって目視で観察することができる。大きなシートになっているが厚さが薄いために、溶媒から取り出した後で乾燥粉末にするまでの取り扱いの間に大きさが1mm程度にまで小さくなる。本発明の含水酸化チタンは容易に粉砕できるので、50nm以上1000nm以下の微粉末とすることもできる。このような微粉末のシートの大きさは透過型電子顕微鏡観察により測定することができる。 本発明の含水酸化チタンは好適には以下に述べる方法で製造される。即ち、含水酸化チタンのコロイドが生成しない条件下に酸性チタン塩溶液を加水分解した後、溶液全体を凍結させて含水酸化チタンの結晶を析出させ、次いで解凍後に該結晶をろ過し水洗乾燥することで目的とする含水酸化チタンが得られる。 酸性チタン塩溶液としては、市販の酸性チタン塩水溶液を使用することができる。例えば硫酸チタン(Ti(SO4)2・nH2O)の水溶液、四塩化チタンの水溶液、及び硫酸チタニル(TiOSO4・nH2O)の水溶液が使用できる。酸性チタン塩溶液を加水分解する方法としては、所定濃度に希釈して煮沸する方法や水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する方法などが挙げられる。加水分解によって含水酸化チタンが生成し、時間の経過と共に含水酸化チタンの重合が進行する。加水分解によって得られた水溶液は、加水分解に低濃度のアルカリを用いた場合には透明液である。しかし、高濃度のアルカリ、例えば20重量%のNaOHなどを用いると白濁することがある。何れの場合も溶液全体の凍結後には同一の含水酸化チタンが生成物として得られるので不都合はない。 加水分解において肝要なことは、ナノメーターのコロイドサイズの大きな粒子が生成するまでは加水分解を行わず、オリゴマー又はプレポリマーと呼ばれる重合度の低い分子サイズの物質が生成する程度にまでしか加水分解を行わないことである。つまり、含水酸化チタンのコロイドが生成しない条件下に加水分解を行うことが重要である。この理由は以下のとおりである。 加水分解の程度を低くして得られた低重合度の含水酸化チタン水溶液を凍結させると、該含水酸化チタンが氷の結晶界面で更に重合して、薄片状の含水酸化チタンのゲルが生成する。このゲルは氷を解凍しても元の低重合度の含水酸化チタンには戻らず、ゲルのまま沈澱する。この沈殿をろ過することで固体の含水酸化チタンを得ることができる。一方、加水分解の程度を高くして得られた高重合度、即ちコロイドサイズの含水酸化チタン水溶液を凍結させると、その後の氷の解凍操作によって含水酸化チタンは元の重合度のコロイドに戻ってしまい、固体を得ることができない。しかし、氷を解凍させずにこれを除去すれば固体の含水酸化チタンを得ることができる。上述の特許文献1の特許請求の範囲第3項に「凍結物が解凍しない温度に保持しながら溶媒を除去することを特徴とする」と記載されている理由はこのためである。このような凍結乾燥法は経済性の観点から有利でない。 より好ましい加水分解方法は、酸性チタン塩溶液を所定濃度に希釈した後、アルカリを加えてpH(25℃)が2〜7付近となるまで中和し、次いで10〜30℃の常温又は30〜50℃の加熱下に重合を進める熟成工程を行う方法である。数時間から数日の常温熟成がより好ましい。酸性チタン塩溶液の希釈は、含水酸化チタンの濃度がTiO2に換算して好ましくは1〜5重量%、更に好ましくは2〜4重量%となるような程度とする。加水分解に用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物や水酸化アンモニウムが好ましい。アルカリの濃度は0.5〜5mol/Lの範囲が好ましい。加水分解液のpH(25℃)は2〜7の範囲で任意に決めることができる。pH(25℃)が5〜7の範囲では結晶性の低い含水酸化チタン(オルソチタン酸)が生成する。pH(25℃)が2〜4の範囲では含水酸化チタン(メタチタン酸)が生成する。オルソチタン酸にはブルカイト結晶が随伴して生成することがある。pH(25℃)が4〜5ではメタチタン酸とオルソチタン酸の混合物が生成する。より好ましいpH(25℃)は2〜4の範囲である。 加水分解によって含水酸化チタンが十分に生成したら、溶液全体を凍結させる。凍結によって生じた氷の結晶界面で含水酸化チタンの重合が進行して、目的とする含水酸化チタンが析出する。凍結温度は水の凝固点である0℃以下であればよいが、速やかに凍結させることを目的としてマイナス10℃以下で凍結させることが好ましい。凍結状態は、一般に1〜24時間、特に5〜24時間維持することが好ましい。 所定の凍結時間の経過後、凍結によって生じた氷を解凍させる。解凍は一般に10〜30℃の常温で行うことができる。短時間で解凍する場合には加熱することもできる。凍結によって析出した含水酸化チタンは、氷の解凍によって沈殿する。この沈殿をろ過し、更に水洗して乾燥させる。これによって固体の含水酸化チタンが得られる。乾燥は一般に60〜150℃で行うことが好ましい。上述の加水分解をpH2〜4の範囲で行い、且つ加熱による乾燥を行った場合には、含水酸化チタン(メタチタン酸)は塊状の硬い結晶になる。この結晶はザラメ砂糖に似ている。この結晶のX線回折パターンには、少なくとも1つのピークが2ないし4nmのd面間隔位置に現れる。結晶性の高いものでは、その2分の1、2倍及び3倍の面間隔に相当するピークも現れる。また、その他のピークはブロードではあるがアナターゼの位置に現れる。上述の加水分解をpH2〜4の範囲で行い、且つ室温で乾燥(風乾)した場合には、ザラメ状の硬い結晶にはならず、白色の粉末になる。この粉末のX線回折パターンは、ザラメ状の硬い結晶と同一である。 このようにして得られた含水酸化チタンを水(例えば10〜100℃)に投入すると、速やかに薄片状の結晶に解膠して分散する。温度が高いほど解膠した結晶が細かくなる。これを再度ろ過し乾燥させることで薄片状の粉体からなる含水酸化チタンを得ることができる。 この薄片状含水酸化チタンを熱処理して薄片状酸化チタンとすることができる。アナターゼ型の薄片状酸化チタンを得るには、100〜400℃の熱処理が好ましい。温度が高いほど層間が閉塞し、薄片状から塊状に変化する傾向にある。したがって、薄片状の酸化チタンを得るためには、比較的低温である100〜200℃の熱処理を行うことが一層好ましい。アナターゼ型の薄片状酸化チタンの形状は厚さ1ないし5μmで、面方向の長さが100ないし300μmである。 ルチル型の薄片状酸化チタンを得るには、650〜900℃の熱処理が好ましい。本発明の含水酸化チタンを用いると、通常のアナターゼ/ルチルの転移温度より低い温度でルチルが得られる。より好ましい熱処理温度は700〜850℃である。ルチル型の薄片状酸化チタンの形状は厚さ1ないし5μmで、面方向の長さが100ないし300μmである。 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。〔実施例1〕 <含水酸化チタン結晶の合成> TiCl4水溶液(15.45%TiO2)64.72gと純水300gを混合後、この液に20℃で20%NaOHを添加してpHを2に調整し、一晩加水分解を行った。加水分解液は透明であり、コロイド粒子の生成は観察されなかった。加水分解液をフリーザー中にてマイナス20℃で24時間静置し、凍結させた。凍結した液をフリーザーから取り出して室温で解凍して、鱗片状の沈澱を得た。沈澱をろ過水洗し、得られたケーキを110℃で24時間乾燥したところ、ザラメ状の硬い結晶が得られた。この結晶を乳鉢で粗粉砕してメタチタン酸を得た。これをサンプルAとした。0.5gのサンプルAを乳鉢で磨り潰した後、5mlの水(20℃)に投入し5分ほど攪拌すると結晶が崩れて、0.1mm程度の薄片状の結晶に分散した。これをろ過して110℃で1時間乾燥し、0.1mm程度の薄片状のメタチタン酸の結晶粉末を得た。これをサンプルBとした。 <構造解析結果> X線回折で分析した結果、サンプルAは低結晶度のアナターゼ型結晶構造を有していた。また2θ=3°(d=2.9nm)と2θ=5.5°(d=1.6nm)にブロードピークがあるので、面間隔約3.0nmの層状結晶となっていると推定された。サンプルAのX線回折パターンを図1中の(a)に示した。図2にサンプルAのSEM写真を示した。図3にサンプルBのX線回折パターンを示した。サンプルBは低結晶度のアナターゼ型結晶構造を有していた。また2θ=3°(d=2.9nm)から2θ=6°(d=1.47nm)に複数のピークをもつブロードな回折があるので面間隔約3.0nmの層状結晶となっていると推定された。また、サンプルBをTEM観察したところ薄片状の結晶であることが確認された。薄片のシートは非常に薄く1〜10nm程度であり、面方向は200〜500nm程度の広がりを有していた。図4にサンプルBのTEM写真を示した。 <酸化チタン結晶の合成> 大気下にサンプルBを850℃で1時間焼成して酸化チタンを得た。これをサンプルCとした。X線回折で分析した結果、サンプルCはルチル型結晶構造を有していた。サンプルCのX線回折パターンを図1中の(b)に示した。〔実施例2〕 <含水酸化チタン結晶の合成> TiCl4水溶液(15.45%TiO2)647gと純水3000gを混合後、この液に20℃で20%NaOHによりpHを2に調整し、一晩加水分解を行った。加水分解液はNaOH添加直後に白色のコロイド粒子の液となった。加水分解液をフリーザー中にてマイナス20℃で24時間静置し、凍結させた。凍結した液をフリーザーから取り出して室温で解凍して、鱗片状の沈澱を得た。沈澱をろ過水洗し、得られたケーキを110℃で24時間乾燥したところ、ザラメ状の硬いメタチタン酸の結晶が得られた。これをサンプルA2とした。0.5gのサンプルA2を粉砕することなく、5mlの水(20℃)に投入し5分ほど攪拌すると結晶が崩れて、0.1〜1mm程度の薄片状の結晶に分散した。これをろ過して110℃で1時間乾燥して、0.1〜1mm程度の薄片状のメタチタン酸の結晶粉末を得た。これをサンプルB2とした。 <構造解析結果> 図5にサンプルA2のX線回折パターンを示した。X線回折の結果、サンプルA2は低結晶度のアナターゼ型結晶構造を有していた。また2θ=3.2°(d=2.76nm)のブロードなピーク、2θ=5.3°(d=1.67nm)のショルダーピーク、2θ=8.0°(d=1.10nm)のブロードなピークがあるので面間隔約2.7nmの層状結晶となっていると推定された。図6にサンプルA2のSEM写真を示した。図7にサンプルB2のX線回折パターンを示した。サンプルB2はサンプルA2とよく似た低結晶度のアナターゼ型結晶構造を有していた。またサンプルA2と同じ2θ=3.2°、2θ=5.3°、2θ=8.0°のほかに2θ=10.0°(d=0.88nm)のピークがあるので面間隔約2.7nmの層状結晶となっていると推定された。図8にサンプルB2のTEM写真を示した。TEM観察では薄片状の結晶であることが確認された。薄片のシートは非常に薄く1〜10nm程度であり、面方向は200〜500nm程度の広がりを有していた。 <UV光線透過率> サンプルB2と市販品のUV光線透過率を測定した。結果を図9に示した。測定には分光光度計(日立U−3400、積分球使用)を用いた。市販品として、石原産業(株)製の超微粉針状酸化チタンTTO−V3グレード(ルチル、短軸5〜15nm、長軸30〜90nm、化粧料用)を使用した。図9に示す結果から明らかなように、サンプルBは結晶性が低いにもかかわらず市販品と同程度の低いUV透過率を有し、且つ可視光域では高い透過率を示し透明に近づいていることが判る。この結果から、粒子を超微粒化しなくても、厚さだけを薄くすることで透明性を得ることができることが判る。〔実施例3〕 <酸化チタン結晶の合成> 大気下にサンプルB2を850℃で1時間焼成して酸化チタンを得た。これをサンプルC2とした。X線回折で分析した結果、サンプルC2はルチル型結晶構造を有していた。図10に示すTEM写真から明らかなように、サンプルC2はその厚さが1ないし5ミクロンで、面方向が100ないし300ミクロンの薄片状の結晶となっている。〔実施例4〕 <模擬化粧料の調製及び評価> グリセリン4.95gに、サンプルB2、市販品(TTO−V3)及び試薬の酸化チタンを各々0.05g混合し、乳鉢で磨り潰して分散させて3種類の模擬化粧料を調製した。各模擬化粧料を石英セルに入れ、分光光度計(日立U−3400)を用いて可視光線透過率を測定した。その結果を図11に示した。サンプルB2を用いた模擬化粧料は、格段と高い透過率を示し透明であることが実証された。このように粒子を超微粒化しなくても、厚さだけを薄くすることで透明性を得ることができることが判った。〔比較例1〕 実施例2において、加水分解を行わず希釈しただけのTiCl4水溶液を凍結させた。しかし結晶は得られなかった。〔比較例2〕 <凍結乾燥法> 特許文献1に記載のチタニアゾルを凍結乾燥する方法を行った。すなわち、TiO2換算で2%の四塩化チタン水溶液をpH7となるようにアンモニアで中和して水酸化チタンゲルを得た。これをろ過し水洗を行った。この水酸化チタンゲルの水分散液に35%の過酸化水素水を加えてゲルを溶解し、次いで80℃に加熱して淡黄色半透明のゾル液を得た。ゾル液を煮詰めて酸化チタン濃度を1%とした。冷却後このゾル液15mLを100mLのガラス製フラスコに入れて、フリーザー中にてマイナス20℃で24時間静置し、凍結させた。フリーザーから取り出して速やかに解凍乾燥機(EYELA社製フリーズドライヤー FD−1型)に取り付けて凍結真空乾燥を行った。乾燥には18時間を要した。得られた結晶は大別して大小2種類の混合物であった。大きな結晶は0.5〜1mmの大きさで無色透明であった。顕微鏡観察ではガラスの破片に似た形状であって、薄片状にはなっていなかった。小さな結晶は0.01〜0.1mmの大きさで黄色を呈していた。顕微鏡観察では薄片状の微細結晶の凝集体となっていた。何れの結晶も、X線回折パターンにおいて2ないし4nmのd面間隔に相当するピークは観察されなかった。実施例1で得られたサンプルAの含水酸化チタン及びサンプルCの酸化チタンのX線回折パターンを示す図である。実施例1で得られたサンプルAのSEM写真である。実施例1で得られたサンプルBのX線回折パターンを示す図である。実施例1で得られたサンプルBのTEM写真である。実施例2で得られたサンプルA2のX線回折パターンを示す図である。実施例2で得られたサンプルA2のSEM写真である。実施例2で得られたサンプルB2のX線回折パターンを示す図である。実施例2で得られたサンプルB2のTEM写真である。実施例2で得られたサンプルB2及び市販品の酸化チタンのUV光線透過率を示すグラフである。実施例3で得られたサンプルC2のTEM写真である。各種模擬化粧料の可視光線透過率を示すグラフである。 X線回折パターンにおいて2ないし4nmのd面間隔に相当するピークを少なくとも1つ有し、層状構造を有することを特徴とする薄片状含水酸化チタン。 TiO2・H2Oで表され、アナターゼ型である請求項1記載の薄片状含水酸化チタン。 水中でシート状に分散可能なものである請求項1又は2の何れかに記載の薄片状含水酸化チタン。 請求項1ないし3の何れかに記載の含水酸化チタンを熱処理して得られた薄片状酸化チタン。 請求項1記載の薄片状含水酸化チタンの製造方法であって、 含水酸化チタンのコロイドが生成しない条件下に酸性チタン塩溶液を加水分解した後、溶液全体を凍結させて含水酸化チタンの結晶を析出させ、次いで解凍後に該結晶をろ過し水洗乾燥する工程を含む薄片状含水酸化チタンの製造方法。 前記の水洗乾燥により得られた含水酸化チタンを水に分散させ、再度ろ過し水洗乾燥する工程を更に含む請求項5記載の薄片状含水酸化チタンの製造方法。 請求項1ないし3の何れかに記載の薄片状含水酸化チタン又は請求項4記載の薄片状酸化チタンを配合してなる化粧料。 【課題】紫外線透過率が低く、且つ可視光線の透過率が高い含水酸化チタン及び酸化チタンを提供すること。【解決手段】X線回折パターンの少なくともひとつのピークが2ないし4nmのd面間隔を示す層状構造を有することを特徴とする薄片状含水酸化チタンを開示する。この含水酸化チタンはTiO2・H2Oで表され、アナターゼ型のものであることが好ましい。この含水酸化チタンを熱処理することで薄片状酸化チタンが得られる。この含水酸化チタンは、含水酸化チタンのコロイドが生成しない条件下に酸性チタン塩溶液を加水分解した後、溶液全体を凍結させて含水酸化チタンの結晶を析出させ、次いで解凍後に該結晶をろ過し水洗乾燥することで得られる。【選択図】図4


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