生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_グリセリン誘導体の製造方法
出願番号:2007187639
年次:2009
IPC分類:C07D 317/36


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福田 行正 山本 祥史 JP 2009023930 公開特許公報(A) 20090205 2007187639 20070718 グリセリン誘導体の製造方法 宇部興産株式会社 000000206 福田 行正 山本 祥史 C07D 317/36 20060101AFI20090109BHJP JPC07D317/36 3 OL 7 本発明は、グリセリンからポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリマー原料、活性剤、潤滑油等、化粧料組成物、工業用有機合成原料として有用なグリセリン誘導体の製造方法に関する。 近年、植物油や動物油等の再生産可能な原料(バイオマス)を用いた燃料が開発されている。例えば、バイオマスを用いた燃料の代表的なものであるバイオディーゼル燃料は、化石燃料の使用量を大幅に削減することができると期待されている。このようなバイオディーゼル燃料を得る方法としては、通常、合成油、植物油および動物油等に含まれるトリグリセリドとメタノールをアルカリ触媒存在下において反応させる方法などが挙げられる(特許文献1)。しかし、トリグリセリドとメタノールのエステル交換反応によって、脂肪酸アルキルエステルを製造する方法は、副生成物として大量のグリセリンが生成される。そこで、副生されるグリセリンの有効活用が待望されている。 グリセリンを有効活用するための変換技術としては、例えば非特許文献1にはジメチルカーボネートとグリセリンとのエステル交換反応が示されている。しかし、生成したメタノールを蒸留で除去するには大型の蒸留設備が必要であり、大量の熱エネルギーを消費するため効率の良い方法とはいえない。また、メタノールとジメチルカーボネートは共沸混合物を形成するため、メタノールを蒸留により反応系外へ留去しようとすると、メタノールと共に原料であるジメチルカーボネートも反応系外へ留去される。その結果、生成物の収率が低下する。特開昭56−120799号公報Green Chemistry 2005、7、529−539 本発明は、前記のかかる問題を解決し、エネルギー消費量を抑えた高収率なグリセリン誘導体の製造方法を提供することを課題とする。 本発明は、グリセリンとジアルキルカーボネートとを、副生するアルコールを分離膜を用いて抜き出しながら反応させることを特徴とするグリセリン誘導体の製造方法である。前記分離膜はゼオライト膜であることが好ましい。さらに、前記ゼオライト膜がY型ゼオライト膜であることが好ましい。 本発明によれば、経済的、且つエネルギー消費量を抑えてグリセリン誘導体を高収率で製造することができる。これにより、グリセリン誘導体をポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリマー原料、活性剤、潤滑油等、化粧料組成物、工業用有機合成原料として使用することができる。 本発明は、グリセリンとジアルキルカーボネートとを、副生するアルコールを分離膜を用いて抜き出しながらエステル交換反応させることを特徴とする。本発明で用いられるグリセリンの純度に特に制限はない。グリセリンは、市販のものを使用することができる。また、パーム油などの植物油に含まれるトリグリセリドとメタノールをアルカリ触媒存在下において反応させ、静置分離した後のグリセリンも使用することができる。 本発明で用いられるジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートが挙げられ、この中でジメチルカーボネートが好適に使用される。ジアルキルカーボネートの純度も特に制限はない。ジアルキルカーボネートは、限定されるものではないがグリセリンの転化率と経済性を考慮し、グリセリン1モルに対して3から20モル、好ましくは5から10である。 本発明におけるエステル交換反応においては、触媒が使用される。触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物など、通常のエステル交換反応に使用される触媒が好適に使用される。具体的には、前記のアルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属のアルコラート(リチウムメチラート、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)が挙げられる。前記のアルカリ土類金属化合物としては、例えば、アルカリ土類金属のアルコラート(マグネシウムメチラート等)、アルカリ土類金属の炭酸塩(炭酸マグネシウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム等)が挙げられる。これらの触媒は、グリセリン1モルに対して0.1から0.0001、好ましくは0.05から0.001モル使用される。 本エステル交換反応の反応温度は、30から200℃、好ましくは50から120℃である。また、反応圧力は大気圧から1MPaG(Gはゲージ圧を示す)の範囲で反応温度に対応して設定されることが好ましく、反応時の雰囲気は窒素等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。なお、反応時間(連続式で反応を行う場合は滞留時間に相当する)は、反応温度や触媒量によって異なるが、1〜24時間の範囲とすることが好ましい。 本発明では、副生するアルコールを分離膜を用いて反応系外に抜き出しながらエステル交換反応させる。アルコールを抜き出す方法としては、アルコールを含む混合溶液からアルコール蒸気として混合溶液からアルコールを選択的に透過させて除去するパーベーパレーション法、または、アルコール蒸気と混合溶液を形成する成分の蒸気からアルコール蒸気を選択的に取り込み、アルコールを選択的に除去するベーパーパーミエーション法が挙げられるが、好ましくはベーパーパーミエーション法である。本発明において、膜の非透過側に残留した高濃度のジアルキルカーボネート蒸気は、好ましくは冷却して凝縮させ反応混合液へ戻される。これにより、ジアルキルカーボネートを新たに追加することなく、反応を進行させることができ転化率を向上させることができる。 また、反応系を加圧系にして分離膜と接触するアルコール蒸気の分圧を高めたり、分離膜の透過側を減圧にして、分離膜を挟んだ両側のアルコール蒸気の分圧差を大きくすること、また、分離膜の透過側にアルコール以外の気体(例えば空気、窒素ガスなど)を掃引ガスとして流し、透過したアルコール蒸気を分離膜の透過側から強制的に掃引することもできる。分離膜は、分離方法に適した任意の場所に取り付けることができ、例えば、反応器に直接取り付けても、反応液を循環させるラインに組み込んでも良い。さらに、蒸留塔を備えた反応器などを用いて反応し、混合蒸気を蒸留塔で共沸組成にまで蒸留してから分離膜と接触させることもできる。これにより、分離効率をさらに高めることができる。さらに、本発明においては混合蒸気を分離膜と接触させる前に、2〜3℃程度以上好ましくは5℃以上スーパーヒートすることが、分離膜の分離効率を維持するうえで好適である。 本発明において用いられる分離膜は、ジアルキルカーボネートに対してアルコールを選択的に透過するものであれば特に限定されない。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの高分子膜、それらの高分子膜を加熱処理して不溶化した膜、高分子膜を加熱処理した部分炭素化膜又は炭素膜、セラミックス膜、ゼオライト膜などを好適に用いることができる。この中で、耐熱性、耐溶媒性、分離性能の観点からゼオライト膜が好ましい。ここで、ゼオライト膜とは、ゼオライトを多孔質支持体上に膜状に形成させたものを指す。ゼオライトの種類(構造)としては、A型(LTA構造)、X、Y型(FAU構造)、T型(ERI,OFF構造)、モルデナイト型(MOR構造)、ZSM−5型(MFI構造)が挙げられ、メタノールを選択的に透過するものとしてはY型のゼオライトを多孔質支持体上に膜状に形成させたY型ゼオライト膜が好ましい。 なおゼオライトの構造とは、非特許文献2に掲載されているゼオライト構造である。ゼオライトには陽イオンを交換させるサイトがあるが、ここに交換されている陽イオンには特に制限がなく、例えば、H+、Li+、Na+、K+、Ca+、Cs+、NH4+、遷移金属陽イオンなどが挙げられ、これらの陽イオンが混合しても構わない。ゼオライト膜を形成する支持体は、アルミナ、ステンレス、ジルコニア、ムライト、シリカ、チッ化珪素、炭化珪素、有機高分子などの多孔質支持体が用いられる。[非特許文献2]Atlas of Zeolite Structure types(W.M.Meier,D.H.Olson,Ch.Baerlocher,Zeolites,17(1/2),1996) これらの膜は、均一膜でも、非対称膜や複合化膜であっても構わない。さらに膜の形態も平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型などいずれでも構わない。 上記ゼオライト膜の調製は、Siを含むコロイダルシリカ、ケイ酸ナトリウム、アルコキシシラン(テトラエトキシシランなど)などのケイ素源、Alを含むアルミニウム、アルミホイルなどの金属アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、イソプロポキシアルミニウムなどのアルミニウム源、M+(MはNa、K)を含む水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一価の陽イオン源及び水を、Si/Al=10〜60、Na/Si=0.2〜2、水/M+=50〜300の組成比で調製されたゲル溶液中に上記支持体を入れて加熱する方法、或いは、同様な組成比のケイ素源、アルミニウム源、一価の陽イオン源および水を含む混合溶液中に、予め表面に支持体上に形成させるゼオライト膜と同じ結晶構造を有するゼオライトの結晶をラビング、ディップコーティング、ろ過などの方法で均一に塗布した支持体を浸漬し、温度80〜120℃、好ましくは95〜110℃で、3〜10時間、好ましくは4〜7時間加熱する方法によって行われる。 本発明におけるグリセリン誘導体の製造装置の一例を説明する。加熱手段と撹拌手段を備えた反応槽に、原料のグリセリン、ジアルキルカーボネート、触媒、及び必要に応じて溶媒を加え、所定温度に加熱しながら撹拌する。反応混合液から副生したアルコールとジアルキルカーボネートとを含む混合蒸気が発生し、分離膜装置へ導入される。分離装置の分離膜の透過側は真空ポンプによって減圧にされる。分離膜装置において、前記混合蒸気は分離膜と接触し、アルコール蒸気が膜を選択的に透過する。膜の透過側はアルコール蒸気が高濃度化し、冷却装置によって凝縮されて冷却手段を備えた回収容器に回収される。膜の非透過側を流れた混合蒸気はジアルキルカーボネートが高濃度化されており、反応槽へ戻される。 本発明における反応は、バッチ式又は連続式いずれにおいても行うことができる。また、前記エステル交換反応において溶媒は特に必要とされないが、反応系で不活性なものであれば使用することに問題はない。溶媒が低沸点でアルコールと共に蒸気化して混合蒸気中に含まれる場合には、ジアルキルカーボネート蒸気よりもさらに分離膜を透過し難いものが好適である。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドフラン、tert−ブチルメチルエーテルなどを使用することができる。 本発明で得られるグリセリン誘導体は、式(1)で示されるグリセリンカーボネートや式(2)で得られる(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル アルキルカーボネート、その他のグリセリン誘導体の混合物をいい、環状カーボネート類を含み得る。例えば、グリセリン誘導体中のグリセリンカーボネートと(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル アルキルカーボネートの総重量の割合は、35から100である。この中で、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル アルキルカーボネートを主成分とするグリセリン誘導体は、副生するアルコールを連続的に系外へ留去しなければ生成できないことから、選択的にアルコールを留去できる本発明は(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル アルキルカーボネートを高収率で生成する方法として有用である。(式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基を示す) 以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 [グリセリン誘導体の収率] 内部標準法(内部標準にビフェニルを使用)により、反応液の一部を抜き取り、ガスクロマトグラフィーを用いて分析し、グリセリン基準で算出した。[Y型ゼオライト膜の透過性能] パーベーパレーション法により50℃に加熱したメタノール/tert−ブチルメチルエーテル(10/90 wt/wt)混合液からメタノールを選択的に透過させる分離を行うことで評価を行った。なお、分離係数は次式によって算出した。 ここで、PMは、透過液中のメタノールの重量%、PEは透過液中のtert−ブチルメチルエーテルの重量%であり、FMは、混合溶液中のメタノールの重量%、FEは混合溶液中のtert−ブチルメチルエーテルの重量%を表わす。[参考例1]Y型ゼオライト膜の製造 ケイ酸ナトリウム水溶液、アルミン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムそして水をSiO2/Al2O3=26、Na2O/SiO2=0.89、H2O/Na2O=78の組成になるように混合した。混合溶液中にあらかじめY型ゼオライトの結晶(東ソー製、HSZ−320NAA)を表面にラビングによって塗布したムライトチューブ(ニッカトー製、細孔径約1.5ミクロン、外径12mm、内径9mm、長さ100mm)を浸漬し、100℃で6時間加熱を行った。反応終了後、蒸留水を用いて洗浄し、80℃で20時間乾燥を行った。得られたY型ゼオライト膜の分離係数は470であった。[実施例1] 反応装置を図1に示す。300mlのフラスコ3に炭酸カリウム0.4g(0.003mol)、グリセリン9.2g(0.1mol)、ジメチルカーボネート90.1g(1.0mol)を加えた。フラスコ上部に一端がガラス栓8で閉じられ、もう片方を真空ポンプ13に繋がれた上記で得られたY型ゼオライト膜1を取り付けた。予め95℃に加熱したオイルバス4に移し、大気圧下、4時間30分加熱還流を行った。反応中はゼオライト膜1の周辺を外部からリボンヒーター2で90℃に加熱した。反応によって発生したメタノールはY型ゼオライト膜1によって系外へ取り除き、液体窒素12で冷却したトラップ11に捕集した。反応後、オイルバス4から容器を取り出して室温まで冷却した。反応液の一部を抜き取り、内部標準のビフェニルを加えた後アセトンで希釈してガスクロマトグラフィーによって(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートおよびグリセリンカーボネートの定量を行った。その結果、グリセリンは検出されず、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートの収率は80.2%、グリセリンカーボネートの収率は3.8%であった。トラップ11内には9.20gの液体が捕集されていた。液体の一部を抜き取りガスクロマトグラフィーで定量したところメタノールが83.1wt%、ジメチルカーボネートが16.9wt%含まれていた。この結果、熱エネルギーの消費量を大幅に抑えつつグリセリンを変換し、化学原料の出発物質として有用なグリセリン誘導体を高収率で製造ことができることが明らかとなった。[実施例2] ジメチルカーボネートの使用量を31.6g(0.35mol)に変更した以外は,実施例1と同様の操作で行った。反応液の一部を抜き取り、内部標準のビフェニルを加えた後アセトンで希釈してガスクロマトグラフィーによって(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートおよびグリセリンカーボネートの定量を行ったところ、グリセリンは検出されず、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートの収率は23.9%、グリセリンカーボネートの収率は4.3%であった。トラップ11内には8.62gの液体が捕集されていた。液体の一部を抜き取りガスクロマトグラフィーで定量したところメタノールが98.4wt%、ジメチルカーボネートが1.6wt%含まれていた。[比較例1] 図1に示す反応装置において、Y型ゼオライト膜1、リボンヒーター2、トラップ11および真空ポンプ13を使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応液の一部を抜き取り、内部標準のビフェニルを加えた後アセトンで希釈してガスクロマトグラフィーによって(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートおよびグリセリンカーボネートの定量を行った。その結果、Y型ゼオライト膜を用いなかった場合、グリセリンおよび(2−オキソ−1,3−ジオキソラン)メチル メチルカーボネートは検出されず、グリセリンカーボネートの収率は37.5%であった。本発明を実施するための反応装置の概略図である。符号の説明1 ゼオライト膜2 リボンヒーター3 フラスコ4 オイルバス5 攪拌子6 反応液7 ガラス管8 ガラス栓9 冷却管10 窒素11 トラップ12 液体窒素13 真空ポンプグリセリンとジアルキルカーボネートとを、副生するアルコールを分離膜を用いて抜き出しながら反応させることを特徴とするグリセリン誘導体の製造方法。前記分離膜がゼオライト膜である請求項1記載のグリセリン誘導体の製造方法。前記ゼオライト膜がY型ゼオライト膜であることを特徴とする請求項2記載のグリセリン誘導体の製造方法。 【課題】ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリマー原料、活性剤、潤滑油等、化粧料組成物、工業用有機合成原料として有用であり、エネルギー消費量を抑えた高収率なグリセリン誘導体の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、グリセリンとジアルキルカーボネートとを、副生するメタノールを分離膜を用いて抜き出しながら反応させる。前記分離膜はゼオライト膜であることが好ましい。また、前記ゼオライト膜がY型であることが好ましい。【選択図】なし


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