生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_バリア機能回復促進剤
出願番号:2007179046
年次:2009
IPC分類:A61K 8/73,A61Q 19/00,A61K 31/737,A61P 17/16


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土肥 孝彰 JP 2009013134 公開特許公報(A) 20090122 2007179046 20070706 バリア機能回復促進剤 マルホ株式会社 000113908 土肥 孝彰 A61K 8/73 20060101AFI20081219BHJP A61Q 19/00 20060101ALI20081219BHJP A61K 31/737 20060101ALI20081219BHJP A61P 17/16 20060101ALI20081219BHJP JPA61K8/73A61Q19/00A61K31/737A61P17/16 2 3 OL 6 特許法第30条第1項適用申請有り 日本皮膚科学会西部支部、西日本皮膚科、69巻1号、2007年2月 〔刊行物等2〕 日本小児皮膚科学会、第31回日本小児皮膚科学会 −学術大会プログラム・抄録集−、2007年6月 4C083 4C086 4C083AC242 4C083AC542 4C083AD341 4C083AD342 4C083AD492 4C083CC02 4C083DD45 4C083EE12 4C086AA01 4C086EA26 4C086EA27 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA24 4C086MA32 4C086NA14 4C086ZA89 本発明は多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分とするバリア機能回復促進剤に関する。 角層は表皮の最外層に位置し、水分保持機能だけでなく、外部からの様々な刺激や化学物質、抗原の侵入に対する生体防御、あるいは水分蒸散を防止し、バリア機能の役割を果たしている。 バリア機能の主体を担っているのは角層細胞間脂質であり、これは疎水層と親水層を繰り返すラメラ構造を形成していることが特徴である。 ラメラ構造とは、脂質と水分がシート状に重なり合った構造のことで、もともと混じりにくい水と油が互いに重なり合うための特殊な構造である。角層では、表皮細胞由来の脂質成分(角質細胞間脂質)と、天然保湿因子(NMF)と呼ばれる皮膚本来が持つ天然の保湿成分が、水に溶けた状態で何層も重なり合ってラメラ構造を作っている。 しかし、皮膚において炎症等が発生するとラメラ構造が崩壊して、角層のバリア機能が低下する。そのため、刺激因子、アレルゲンや病原微生物が皮膚に容易に侵入するだけでなく、温熱、発汗、衣服などに対して、過敏に反応する。この易刺激性(敏感肌)が掻痒、掻破を誘発し、皮膚炎の再発を助長している。そのため、角層のバリア機能を向上させることは非常に重要である。 バリア機能の低下は角質細胞間脂質の減少が原因であるといわれている。角質細胞間脂質の成分の約半数はセラミドであり、セラミドの減少がバリア機能の低下の原因である。このことから、セラミドを補充すればバリア機能が回復すると考えられる。しかし、セラミドは非常に高価であり、バリア機能回復に有効な量を用いることは困難である。 一方、多硫酸化コンドロイチン硫酸(ヘパリン類似物質)は、血液凝固抑制作用、末梢血液循環促進作用、繊維芽細胞増殖抑制作用を有することが知られている。また、多硫酸化コンドロイチン硫酸は、保湿能を有している皮脂欠乏症の治療薬として用いられているが、バリア機能には影響を与えない旨の報告がある(非特許文献1)。 バリア機能とは、体内の水分の蒸散を防ぎ、外界から体内への異物の侵入を防ぐ機能のことである。一方、保湿能とは、低湿度環境でも蒸発してしまわない水分を角層に抱える力のことであり、バリア機能と保湿能の概念は本質的に異なる。日本臨床皮膚科医学会雑誌, 56:87-96, 1998 本発明者らは、多硫酸化コンドロイチン硫酸に着目して、その新たな用途を提供することを目的とする。 本発明者は、多硫酸化コンドロイチン硫酸の作用メカニズムについて鋭意研究した結果、多硫酸化コンドロイチン硫酸が角層ラメラ構造の回復を促進させ、バリア機能を向上させる作用があることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は多硫酸化コンドロイチン硫酸を含有するバリア機能回復促進剤を提供するものである。好ましい態様として、多硫酸化コンドロイチン硫酸がヘパリン類似物質であるバリア機能回復促進剤を提供する。 本発明に用いることができる多硫酸化コンドロイチン硫酸とは、N−アセチル−D−ガラクトサミンとD−グルクロン酸の二糖の繰り返し単位を有する長鎖多糖類に、硫酸基が繰り返し単位当たり平均1.5から4分子、好ましくは平均1.5〜3分子を含有するものを意味する。 また、多硫酸化コンドロイチン硫酸は塩の形態で存在していてもよく、塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられ、さらにこれらの複数の塩であってもよい。 本発明の多硫酸化コンドロイチン硫酸またはその塩の平均分子量は、1,000〜10,000,000程度であることが望ましく、好ましくは5,000〜1,000,000程度、より好ましくは10,000〜100,000程度であることが望ましい。 多硫酸化コンドロイチン硫酸の原料であるコンドロイチン硫酸は天然に存在し、特に動物組織中に存在する。硫酸基の結合位置により、コンドロイチン硫酸A(コンドロイチン-4-硫酸)、コンドロイチン硫酸C(コンドロイチン-6-硫酸)およびコンドロイチン硫酸E(コンドロイチン-4,6-硫酸)に分類されるが、いずれのコンドロイチン硫酸を用いることができる。 これらのコンドロイチン硫酸を人為的に多硫酸化したものが本発明に使用することができる多硫酸化コンドロイチン硫酸である。このうち、日本薬局方外規格に収載しているヘパリン類似物質が好ましい。 コンドロイチン硫酸は、試薬として入手することができ、このコンドロイチン硫酸を多硫酸化する方法としては、特開昭62-27402、特開平11-166001、WO03/020735などに記載した方法を用いることができる。 本発明のバリア機能回復促進剤は、多硫酸化コンドロイチン硫酸を含有することを特徴とするものであり、本発明の効果を損なわない限り、通常使用しうる生理学的または薬学的に許容されうる添加剤、つまり、炭化水素油、液体油脂、固体油脂、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、溶解補助剤、緩衝剤、増粘剤、保存剤、防腐剤、安定化剤等を配合することもできる。 また、本発明のバリア機能回復促進剤は、外用剤が好ましく、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、懸濁剤、硬膏剤等の形態を治療目的に応じて選択できる。これらの製剤は公知の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。 本発明のバリア機能回復促進剤は、皮膚のバリア機能が低下した疾患、例えばアトピックドライスキンの予防・治療剤として適している。また、肌荒れ防止・改善剤として使用することもできる。 本発明のバリア機能回復促進剤の投与量は、患者の年齢、性別、疾病の種類、疾病の程度、剤形および投与形式により、適宜決定されるが、例えば、軟膏剤等の外用剤であるときは、適量を1日1〜数回塗布することができる。 また、外用剤における多硫酸化コンドロイチン硫酸の濃度は、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜5.0重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜1.0重量%である。 本発明により、多硫酸化コンドロイチン硫酸を有効成分とするバリア機能回復促進剤が提供される。 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。[実施例1] ヘパリン類似物質添加角層細胞間脂質由来リポソーム1)脂質フィルムの作製 鈴木らの方法(J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn., 27(3), 193-205, 1993)を用いて、角層細胞間脂質の主要な構成成分を混合することにより人工的な細胞間脂質のフィルムを作製した。 すなわち、Ceramide II(高砂香料工業株式会社製:N-ステアロイルジヒドロスフィンゴシン)、Ceramide III(コスモファーム社製:N-ステアロイルフィトスフィンゴシン)、Ceramide IV(コスモファーム社製:N-2-ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシン)、コレステロール(和光純薬工業株式会社製)、ステアリン酸(和光純薬工業株式会社製)および硫酸コレステロールナトリム(Shigma社製:Cholesterol-3-sulfate Sodium Salt)を2:2:2:4:4:1(重量%比)となるように秤量し、各々をクロロホルム/メタノール=2:1(容量比)混液に溶解させておき,ナス型フラスコに入れて混合する。ロータリーエバポレーターによってクロロホルム/メタノールを留去後、真空下にて乾燥させて脂質フィルムを作製した。2)ヘパリン類似物質含有角層細胞間脂質由来リポソームの作成 リポソームの作製法はBanghamらの方法(J. Mol. Biol., 13(1), 238-252, 1965)及びPhilipらの方法(J. Invest. Dermatol., 87, 582-584, 1986)を参考にして行った。 すなわち、脂質フィルム(30重量%)にヘパリン類似物質(被験物質)の最終濃度が1重量%になるように調製した注射用水(70重量%)を加えて相転移以上(約80℃)にて振盪してフィルムを剥がした後、約10℃で水浴型超音波照射器にて10分間処理して、ヘパリン類似物質含有角層細胞間脂質由来リポソームを作製した。[比較例1] 尿素配合角層細胞間脂質由来リポソーム ヘパリン類似物質(被験物質)を尿素に変更した以外は、実施例1と同様に操作して尿素添加角層細胞間脂質由来リポソームを作成した。[比較例2] 被験物質未添加(コントロール)の角層細胞間脂質由来リポソーム ヘパリン類似物質(被験物質)を除外した以外は、実施例1と同様に操作して被験物質未添加細胞間脂質由来リポソームを作成した。[試験例1] ラメラ液晶構造の形成促進作用の評価(1) 実施例1、比較例1および比較例2の角層細胞間脂質由来リポソームのラメラ液晶構造の形成を偏光顕微鏡(600倍)下で観察されるマルターゼクロス(Maltese Cross)像の形成状態を評価した。 偏光顕微鏡観察画像の全領域に対して無作為抽出領域を1視野あたり3部位(1部位は50μm×50μm)設定し、画像解析(ソフト名:Image Pro、Media Cybernetics社製)により算定されたマルターゼクロス形成部分の総面積を、全体に対する占有率として算出した。被験物質毎に10視野で占有率を算出し、その結果を図1に示した。 また、実施例1、比較例1および比較例2の角層細胞間脂質由来リポソームの偏光顕微鏡写真を図2に示した。 図1に示したグラフから尿素を添加した角層細胞間脂質由来リポソームはコントロールとラメラ液晶占有率に差がほとんどないのに対し、ヘパリン類似物質を添加した角層細胞間脂質由来リポソームのラメラ液晶占有率は明らかに高い結果であった。[試験例2] ラメラ液晶構造の形成促進作用の評価(2) 実施例1および比較例2で作成した角層細胞間脂質由来リポソームを37℃の恒温槽で1週間保存した後のラメラ液晶構造の形成を試験例1と同様に偏光顕微鏡下で観察した。偏光顕微鏡写真を図3に示した。 ヘパリン類似物質を添加した角層細胞間脂質由来リポソームは規則正しくラメラ構造を構築した。 このことから、ヘパリン類似物質はラメラ構造の回復促進作用があることがわかる。ラメラ構造形成能をラメラ液晶占有率で示したグラフである。実施例1、比較例1および比較例2で作成した角層細胞間脂質由来リポソームの偏光顕微鏡写真である。実施例1および比較例2で作成した角層細胞間脂質由来リポソームを37℃で1週間保存した後の偏光顕微鏡写真である。多硫酸化コンドロイチン硫酸を含有するバリア機能回復促進剤。多硫酸化コンドロイチン硫酸がヘパリン類似物質である請求項1記載のバリア機能回復促進剤。 【課題】 多硫酸化コンドロイチン硫酸の新たな用途を提供することである。【解決手段】 角層細胞間脂質の主要な構成成分を混合することにより得られる人工的な細胞間脂質のフィルムを作製した後に、被験物質を含有した注射用水を添加して、被験物質を含有した角層細胞間脂質由来リポソームを作製した。 偏光顕微鏡でマルターゼクロス像を評価することにより、被験物質として多硫酸化コンドロイチン硫酸を用いたとき、規則正しくラメラ構造を構築した。【選択図】図3


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