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タイトル:公開特許公報(A)_チオジグリコール酸ジメチルの製造方法
出願番号:2007151976
年次:2008
IPC分類:C07C 319/20,C07C 323/52,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

橋爪 知弘 大野 充 JP 2008303173 公開特許公報(A) 20081218 2007151976 20070607 チオジグリコール酸ジメチルの製造方法 ダイセル化学工業株式会社 000002901 鍬田 充生 100090686 橋爪 知弘 大野 充 C07C 319/20 20060101AFI20081121BHJP C07C 323/52 20060101ALI20081121BHJP C07B 61/00 20060101ALN20081121BHJP JPC07C319/20C07C323/52C07B61/00 300 4 OL 10 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC48 4H006AC63 4H006BA06 4H006BA28 4H006BA36 4H006BA37 4H006BA66 4H006BC31 4H006BC34 4H006TA04 4H006TB54 4H039CA66 4H039CD10 4H039CD30 本発明は、医薬品、農薬、化粧品、電子材料の中間体などとして有用なチオジグリコール酸ジメチルの製造方法に関する。 チオジグリコール酸ジメチルを製造する方法として、これまでにいくつかの方法が知られている。 例えば、Chem. Ber. 88:1631-1634,1955(非特許文献1)には、クロロ酢酸メチルと硫化ナトリウムとを反応させ、チオジグリコール酸ジメチルを製造する方法が開示されている。しかし、この文献の方法では、チオジグリコール酸ジメチルの収率(クロロ酢酸メチル基準の収率)は60〜70%である。また、製造過程において、予め、硫化ナトリウムを水に溶解した硫化ナトリウム水溶液にクロロ酢酸メチルを添加して反応させているが、この方法では、強塩基である硫化ナトリウムの作用でクロロ酢酸メチル(及び生成したチオジグリコール酸ジメチル)のエステル加水分解が起こるおそれがあり、非効率である。 J. Am. Chem. Soc. 86:2014-2018,1964(非特許文献2)には、クロロ酢酸メチルとナトリウムカルボメトキシメチルメルカプチドとを反応させ、チオジグリコール酸ジメチルを製造する方法が開示されている。しかし、この文献の方法では、原料であるナトリウムカルボメトキシメチルメルカプチドが入手し難いという欠点がある。具体的には、ナトリウムカルボメトキシメチルメルカプチドを調製する方法としては、例えば、チオグリコール酸メチルに塩基を作用させ、チオグリコール酸メチルのチオール基の水素原子をナトリウムに置換する方法が挙げられるが、前記チオール基の水素原子は置換され難く、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドなどの強塩基を用いても、定量的に反応が進まない場合がある。 また、Tetrahedron 60:10671-10680,2004(非特許文献3)には、チオジグリコール酸とメタノールとを反応させ、チオジグリコール酸ジメチルを製造する方法が開示されている。この文献には、触媒に硫酸を用いることが記載され、この方法では、チオジグリコール酸ジメチルは89%の収率(チオジグリコール酸基準の収率)で得られるとも記載されている。しかし、この方法では、チオジグリコール酸1モルに対し、メタノールを4.6モル当量(理論量に対して4.6倍)用いており、工業生産的に不経済である。Chem. Ber. 88:1631-1634,1955(Beschreibung der Versuche)J. Am. Chem. Soc. 86:2014-2018,1964(Experimental)Tetrahedron 60:10671-10680,2004(Experimental) 従って、本発明の目的は、入手し易い原料を使用し、原料であるメタノールの量が少量であっても、効率よくチオジグリコール酸ジメチルを製造できる方法を提供することにある。 本発明の他の目的は、簡便にかつ工業的に有利にチオジグリコール酸ジメチルを製造できる方法を提供することにある。 本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、メタノールとチオジグリコール酸とのエステル化工程において、脱水剤を用いると、必要とされるメタノールの量を低減でき、効率的にチオジグリコール酸ジメチルを製造できることを見いだし、本発明を完成した。 すなわち、本発明のチオジグリコール酸ジメチルの製造方法は、塩基の存在下、クロロ酢酸とチオグリコール酸及び/又は硫化ナトリウムとを反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を生成させる工程と、脱水剤の存在下、生成したチオジグリコール酸及びメタノールを反応させるエステル化工程とを含む。 前記製造方法において、脱水剤は、塩化カルシウムであってもよい。また、エステル化工程で、脱水剤の存在下、酸触媒を用いてエステル化してもよい。さらに本発明の製造方法では、エステル化工程において、酸触媒としての無機酸の存在下、チオジグリコール酸1モルに対して、脱水剤0.1〜5モル当量及びメタノール1〜3モル当量を用いてエステル化してもよい。 本発明の製造方法では、メタノールとチオジグリコール酸とを反応させる過程において、脱水剤を用いるため、効率よくエステル化反応が進行し、必要とされるメタノールの量を低減することができる。そのため、簡便にかつ安価で実施でき、工業的に有利にチオジグリコール酸ジメチルを製造することができる。 本発明では、脱水剤の存在下、メタノール及びチオジグリコール酸を反応させてチオジグリコール酸をエステル化し、チオジグリコール酸ジメチルを製造する。反応式(1)を以下に示す。 [チオジグリコール酸の生成工程] チオジグリコール酸は、(a)塩基の存在下、クロロ酢酸及びチオグリコール酸を反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を生成させる方法、又は(b)塩基の存在下、クロロ酢酸及び硫化ナトリウムを反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を生成させる方法により得ることができる。なお、必要により、チオグリコール酸と硫化ナトリウムとは併用してもよい。以下、各方法について詳細に説明する。 前記(a)の方法は、下記反応式(2)により示され、塩基の存在下、クロロ酢酸及びチオグリコール酸を反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を合成する方法である。 クロロ酢酸及びチオグリコール酸は、市販品を用いてもよく、慣用の方法を利用(又は応用)して合成したものであってもよい。チオグリコール酸の使用量は、クロロ酢酸1モルに対し、0.1〜10モル当量、好ましくは0.2〜5モル当量、さらに好ましくは0.5〜3モル当量(特に、0.8〜1.5モル当量程度)であってもよい。 クロロ酢酸とチオグリコール酸との反応で生成する塩化水素を捕捉するとともに、反応を円滑に進めるため、塩基が使用される。塩基は、慣用の塩基、例えば、無機塩基[例えば、金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物など);金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩など)、アンモニアなど];有機塩基{例えば、脂肪族アミン[例えば、メチルアミン、エチルアミンなどの脂肪族第1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの脂肪族第2級アミン、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミンなど)、トリシクロアルキルアミン(例えば、トリシクロヘキシルアミンなど)などの脂肪族第3級アミン]、芳香族アミン(第1乃至3級芳香族アミン、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミンなど)、複素環式アミン(第1乃至3級複素環式アミン、例えば、ピコリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1−メチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノピリジンなどの複素環式第3級アミンなど)などのアミン類;カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩など);第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウムなどのハロゲン化テトラアルキルアンモニウム;塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの塩化ベンジルトリアルキルアンモニウムなど)などが例示できる。これらの塩基は単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。使用する塩基は、無機塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)が好ましい。塩基の使用量は、クロロ酢酸及びチオグリコール酸の合計1モルに対し、1モル当量(又は理論量)であってもよいが、通常、過剰量の塩基が使用される。塩基の割合(又は使用量)は、クロロ酢酸及びチオグリコール酸の合計1モルに対し、0.5〜5モル当量、好ましくは0.7〜4.5モル当量、さらに好ましくは1〜4モル当量(例えば、1.2〜3.5モル当量程度)であってもよい。また、塩基の割合(又は使用量)は、チオグリコール酸(又はクロロ酢酸)1モルに対し、例えば、0.5〜10モル当量、好ましくは1〜7モル当量、さらに好ましくは2〜5モル当量(例えば、2.5〜4モル当量程度)であってもよい。なお、塩基の割合(又は使用量)は、クロロ酢酸に対する塩基の割合と、チオグリコール酸に対する塩基の割合との合計であってもよい。前記クロロ酢酸に対する塩基の割合は、例えば、クロロ酢酸1モルに対して、0.5〜7モル当量、好ましくは0.6〜5モル当量、さらに好ましくは0.7〜3モル当量(例えば、0.8〜2モル当量程度)であってもよい。また、前記チオグリコール酸に対する塩基の割合は、例えば、チオグリコール酸1モルに対して、例えば、0.5〜10モル当量、好ましくは0.8〜7モル当量、さらに好ましくは1〜5モル当量、特に、1.5〜4.5モル当量(例えば1.5〜3モル当量)程度であってもよい。 前記塩基の存在下、クロロ酢酸とチオグリコール酸とを反応させると、通常、塩の形態でチオジグリコール酸が生成するとともに、反応系には余剰の塩基が存在するため、次いで酸を用いて中和し、チオジグリコール酸を生成させてもよい。 酸は、慣用の酸、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)であってもよく、有機酸[例えば、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸などのモノカルボン酸;シュウ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸などのポリカルボン酸(ヒドロキシカルボン酸を含む)など);スルホン酸など]であってもよい。これらの酸は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。酸としては、通常、無機酸(例えば、硫酸)が使用される。前記酸の割合は、前記塩基1モルに対して0.5モル当量以上(例えば、0.5〜2モル当量程度)、好ましくは0.55モル当量以上(例えば、0.55〜1.8モル当量程度)、さらに好ましくは0.6モル当量以上(例えば、0.6〜1.5モル当量程度)であってもよい。 前記(b)の方法は、下記反応式(3)により示され、塩基の存在下、クロロ酢酸及び硫化ナトリウムを反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を合成する方法である。 クロロ酢酸及び硫化ナトリウムは、市販品を用いてもよく、慣用の方法を利用(又は応用)して合成したものであってもよい。硫化ナトリウムは、無水和物であってもよく、水和物であってもよく、水和物としては、九水和物である場合が多い。硫化ナトリウムの使用量は、クロロ酢酸1モルに対し、0.25〜2モル当量、好ましくは0.3〜1.8モル当量、さらに好ましくは0.4〜1.5モル当量程度であってもよい。 (b)の方法においても、反応を促進するために塩基を使用してもよく、塩基としては、(a)の方法の項で例示の塩基を使用できる。(b)の方法においても、塩基として無機塩基(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物など)が好適に使用される。前記塩基は、通常、過剰量使用されるが、例えば、塩基の割合は、クロロ酢酸1モルに対して0.5〜5モル当量、好ましくは0.6〜4モル当量、さらに好ましくは0.7〜3モル当量(特に、0.8〜1.2モル当量程度)であってもよい。 前記塩基の存在下、クロロ酢酸及び硫化ナトリウムを反応させると、チオジグリコール酸が通常、塩の形態で生成するとともに、反応系に余剰の塩基が存在するため、次いで酸を用いて中和し、チオジグリコール酸を生成させてもよい。 酸は、(a)の方法の項で例示の酸を使用できる。(b)の方法においても、酸として、無機酸(例えば、硫酸など)が好適に使用される。前記酸の割合は、前記塩基1モルに対して0.5モル当量以上(例えば、0.5〜2モル当量程度)、好ましくは0.55モル当量以上(例えば、0.55〜1.8モル当量程度)、さらに好ましくは0.6モル当量以上(例えば、0.6〜1.5モル当量程度)であってもよい。 前記(a)及び(b)の方法は、溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒の非存在下で行ってもよい。前記溶媒は、反応温度下で液体である限り、特に制限されず、慣用の溶媒、例えば、水;アルコール類[例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−10アルカンオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのC2―4アルカンジオール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール類(例えば、数平均分子量150〜1000程度);三価以上のポリオール類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタンなどの脂肪族C3−10トリオール類、ペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトール類、糖アルコール類(例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど));セロソルブ類など];エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソシラン、カルビトール類など);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど);窒素含有溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、ニトロメタンなどのニトロ類、ピリジンなどのアミン類など);硫黄含有溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホランなど);脂肪族炭化水素類[例えば、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサンなどのC5−7アルカン)、シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンなどのC5−7シクロアルカン)など];芳香族炭化水素類[例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン(o,m又はp−キシレン又はこれらの混合物)などのC6−10アレーンなど];ハロゲン化炭化水素類[例えば、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンなど);ハロゲン化脂環族炭化水素類(例えば、クロロシクロヘキサンなど);ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)など]などが例示できる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて混合溶媒として用いてもよい。これらのうち、水などが好ましい。 また、前記(a)及び(b)の方法において、反応温度(又は反応系の温度)は、0〜150℃、好ましくは5〜100℃、さらに好ましくは10〜50℃(特に15〜30℃程度)であってもよい。 前記(a)又は(b)の方法に準じて、原料を反応させると、通常、塩の形態でチオジグリコール酸が生成するため、さらに、酸を用いて中和すると、遊離のチオジグリコール酸(粗チオジグリコール酸)が生成する。前記チオジグリコール酸(粗チオジグリコール酸)は、必ずしも精製する必要はなく、溶媒(反応溶媒など)、未反応の原料などを含んでいてもよいが、慣用の方法、例えば、濾過、抽出、濃縮、蒸留、中和、沈澱などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。通常、抽出、濃縮及びこれらを組み合わせた手段により分離精製する場合が多い。前記分離精製操作は、慣用の装置を用いて行ってもよい。 前記チオジグリコール酸(粗チオジグリコール酸)を抽出(又は液液抽出)するための溶媒としては、親水性溶媒(特に、水など)に対して分液可能である限り、前記例示の溶媒が使用できるが、中でも、疎水性溶媒[例えば、アルコール類(例えば、ブタノールなどのC4以上のアルカンオールなど);エーテル類(例えば、ジエチルエーテルなど);ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど);エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど);炭化水素類(例えば、ヘキサンなどのC5−7脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどのC5−7脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどのC6−10芳香族炭化水素類など);ハロゲン化炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類など)など]が好適に使用される。特に、ケトン類(例えば、メチルエチルケトンなど)が好ましい。 [エステル化工程] メタノールとチオジグリコール酸とのエステル化反応は、酸触媒の非存在下で行ってもよいが、通常、酸触媒の存在下で行われる。前記酸触媒は、有機酸であってもよいが、通常、酸素酸(例えば、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、次亜塩素酸など)、水素酸(例えば、塩酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸など)などの無機酸(特に、硫酸など)が使用される。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。酸触媒の割合(又は使用量)は、チオジグリコール酸100重量部に対し、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1重量部程度であってもよい。 本発明の特色は、エステル化反応を促進させるため、脱水剤(又は乾燥剤)を使用する点にある。すなわち、前記脱水剤の存在下、特に酸触媒を含む反応系でエステル化すると、原料(特に、メタノール)の使用量を大きく低減しても、チオジグリコール酸ジメチルを高い収率で製造できる。例えば、脱水剤の非存在下で同様の反応を行った場合に比べ、メタノールの量を、例えば、60〜75モル%、好ましくは63〜72モル%、さらに好ましくは65〜70モル%程度低減しても同程度のチオジグリコール酸ジメチルの収率を確保することができる。より具体的には、本発明において、メタノールの使用量は、チオジグリコール酸1モルに対し、1〜3モル当量、好ましくは1.1〜2.8モル当量、さらに好ましくは1.2〜2.5モル当量(特に1.3〜2モル当量程度)であってもよい。 脱水剤は、慣用の脱水剤、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩化物又はこれらの水和物;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属硫酸塩又はこれらの水和物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;五酸化二リンなどであってもよい。これらの脱水剤(又は乾燥剤)は、単独でまたは二種以上組み合わせてもよい。好ましい脱水剤は、再生可能な脱水剤、特に、アルカリ土類金属塩化物[例えば、塩化カルシウム(無水塩化カルシウム)又はこれらの水和物など]である。水和物を形成している脱水剤を用いる場合、前記脱水剤に含まれる結晶水の含有量は、特に制限されず、前記水和物は、例えば、1〜10水和物、好ましくは1〜8水和物、さらに好ましくは2〜6水和物(例えば、塩化カルシウム二水和物など)であってもよい。脱水剤(又は乾燥剤)の割合(又は使用量)は、チオジグリコール酸1モルに対し、0.1〜5モル当量、好ましくは0.2〜2モル当量、さらに好ましくは0.3〜1モル当量、特に0.4〜0.8モル当量程度であってもよい。 なお、エステル化工程は、溶媒の存在下で行ってもよく、溶媒の非存在下で行ってもよい。前記溶媒は、反応温度下で液体である限り、チオジグリコール酸の生成工程の項で例示の溶媒を使用できるが、エーテル類(例えば、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタンなど)などが好適に使用される。エステル化工程では、溶媒として、疎水性溶媒(例えば、トルエンなどの炭化水素類)を用いる場合が多い。また、エステル化工程において、反応温度(又は反応系の温度)は、0〜150℃、好ましくは20〜120℃、さらに好ましくは25〜100℃、特に30〜80℃程度であってもよい。 前記2つの工程(チオジグリコール酸の生成工程及びエステル化工程)は、個別に行ってもよいが、工業的生産性の点から前記2つの工程を連続的に行うのが有利である。前記2つの工程を経て生成するチオジグリコール酸ジメチルの収率は、チオジグリコール酸基準で、70〜100%、好ましくは72〜97%、さらに好ましくは74〜95%、特に、75〜94%(例えば、88〜93%)程度である。 なお、得られる前記チオジグリコール酸ジメチル(遊離のチオジグリコール酸ジメチル又は粗チオジグリコール酸ジメチル)は、目的に応じ、慣用の方法、例えば、前記例示の精製分離手段やそれらを組み合わせた手段により、分離精製してもよい。 本発明の方法では、使用する原料が少量であっても、簡便に効率よくチオジグリコール酸ジメチルを製造することができるため、得られるチオジグリコール酸ジメチルは、各種用途、例えば、医薬品(例えば、安定剤など)、農薬、化粧品(例えば、コールドパーマ液など)、電子材料(例えば、除錆剤、金属表面処理剤など)などの中間体として有用である。 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 (実施例1) 攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた1Lのガラス製四つ口フラスコに、クロロ酢酸141.8g(1.5モル)、チオグリコール酸138.1g(1.5モル)、水300gを仕込み、水浴を用いて20℃に保温した。次いで40重量%の水酸化ナトリウム水溶液465g(4.65モル)を、反応液中に1時間かけて滴下し、さらに室温で3時間撹拌を行った。その後、水浴を用いて20℃に保温しながら、硫酸154g(1.58モル)を、反応液中に30分かけて滴下し、中和処理を行った。中和処理後、メチルエチルケトン900gを添加し、抽出操作を2回行い、チオジグリコール酸を有機層に集めた。集めた有機層を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸の含有量は214g(1.42モル)であった。この有機層を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、粗チオジグリコール酸235g(純度91%)を得た。 次いで、攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた1Lのガラス製四つ口フラスコに、得られた粗チオジグリコール酸を入れ、さらに、脱水剤として塩化カルシウム二水和物104g(0.71モル)、トルエン341g、硫酸1.7g、メタノール137g(4.3モル)を添加して、フラスコ内温60℃にて、8時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は228.6g(1.28モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で90%であった。 (実施例2) 攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた1Lのガラス製四つ口フラスコに、クロロ酢酸47.3g(0.5モル)、水50gを仕込み、水浴を用いて20℃に保温した。次いで40重量%の水酸化ナトリウム水溶液50g(0.5モル)を、30分かけて滴下した。反応液を、水浴を用いて20℃に保温しながら、硫化ナトリウム九水和物60g(0.25モル)を予め水90gに溶解させたものを、反応液中に30分かけて滴下した。室温で4時間撹拌した後、水浴を用いて20℃に保温しながら、硫酸25g(0.255モル)を、反応液中に30分かけて滴下し、中和処理を行った。中和処理後、メチルエチルケトン300gを添加し、抽出操作を2回行い、チオジグリコール酸を有機層に集めた。集めた有機層を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸の含有量は67.6g(0.45モル)であった。この有機層を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、粗チオジグリコール酸74.3g(純度91%)を得た。 次いで、攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた500mLのガラス製四つ口フラスコに、得られた粗チオジグリコール酸を入れ、さらに、脱水剤として塩化カルシウム二水和物34.6g(0.236モル)、トルエン114g、硫酸0.57g、メタノール45.6g(1.43モル)を添加して、フラスコ内温60℃にて、8時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は71.3g(0.40モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で89%であった。 (実施例3) チオジグリコール酸とメタノールとの反応(エステル化工程)において、トルエンを使用せず、溶媒の非存在下で反応させる以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応後の反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は221.6g(1.25モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で88%であった。 (実施例4) 攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた50mLのガラス製四つ口フラスコに、実施例1と同様の操作で得られた粗チオジグリコール酸8.8g(0.0533モル)を入れ、さらに、脱水剤として塩化カルシウム二水和物3.95g(0.0269モル)、トルエン13g、硫酸0.067g、メタノール4.1g(0.128モル)を添加して、フラスコ内温60℃にて、8時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は7.89g(0.044モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で83%であった。 (実施例5) 塩化カルシウム二水和物を5.87g(0.040モル)使用する以外は実施例4と同様の方法で行った。エステル化反応後の反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は7.25g(0.041モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で76%であった。 (比較例1) チオジグリコール酸とメタノールとの反応(エステル化工程)において、脱水剤を使用せず、溶媒の非存在下で反応させる以外は、実施例1と同様の方法で行った。すなわち、攪拌機、温度計、滴下ロートを備えた1Lのガラス製四つ口フラスコに、クロロ酢酸141.8g(1.5モル)、チオグリコール酸138.1g(1.5モル)、水300gを仕込み、水浴を用いて20℃に保温した。次いで40重量%の水酸化ナトリウム水溶液465g(4.65モル)を、反応液中に1時間かけて滴下し、さらに室温で3時間撹拌を行った。その後、水浴を用いて20℃に保温しながら、硫酸154g(1.58モル)を、反応液中に30分かけて滴下し、中和処理を行った。中和処理後、メチルエチルケトン900gを添加し、抽出操作を2回行い、チオジグリコール酸を有機層に集めた。集めた有機層を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸の含有量は214g(1.42モル)であった。この有機層を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、粗チオジグリコール酸235g(純度91%)を得た。 次いで、攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた1.5Lのガラス製四つ口フラスコに、得られた粗チオジグリコール酸を入れ、さらに、硫酸1.7g、メタノール418g(13.1モル)を添加して、フラスコ内温60℃にて、8時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は225.0g(1.26モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で89%であった。 (比較例2) 攪拌機、温度計、ジムロート冷却管を備えた50mLのガラス製四つ口フラスコに、実施例1と同様の操作で得られた粗チオジグリコール酸8.8g(0.0533モル)を入れ、さらに、トルエン13g、硫酸0.067g、メタノール5.1g(0.159モル)を添加して、フラスコ内温60℃にて、8時間撹拌した。撹拌終了後、反応液を分液し、上層(有機層)をガスクロマトグラフィーで分析したところ、チオジグリコール酸ジメチルの含有量は6.15g(0.0345モル)であり、収率は、チオジグリコール酸基準で65%であった。 実施例及び比較例の結果を表1に示す。 表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、エステル化工程において脱水剤を用いるため、チオジグリコール酸1モル当量に対するメタノールの割合(モル当量比)が小さくても、高収率でチオジグリコール酸ジメチルを製造することができる。 塩基の存在下、クロロ酢酸とチオグリコール酸及び/又は硫化ナトリウムとを反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を生成させる工程と、脱水剤の存在下、生成したチオジグリコール酸とメタノールとを反応させるエステル化工程とを含むチオジグリコール酸ジメチルの製造方法。 脱水剤が、塩化カルシウムである請求項1記載の製造方法。 エステル化工程において、脱水剤の存在下、酸触媒を用いてエステル化する請求項1又は2記載の製造方法。 エステル化工程において、酸触媒としての無機酸の存在下、チオジグリコール酸1モルに対して、脱水剤0.1〜5モル当量及びメタノール1〜3モル当量を用いてエステル化する請求項3記載の製造方法。 【課題】入手し易い原料を使用可能であって、原料であるメタノールの量が少量であっても、効率よくチオジグリコール酸ジメチルを製造できる方法を提供する。【解決手段】本発明のチオジグリコール酸ジメチルの製造方法は、塩基の存在下、クロロ酢酸とチオグリコール酸及び/又は硫化ナトリウムとを反応させ、さらに酸で中和してチオジグリコール酸を生成させる工程と、脱水剤の存在下、生成したチオジグリコール酸及びメタノールを反応させるエステル化工程とを含む。エステル化工程において、脱水剤の存在下、酸触媒を用いてエステル化してもよい。【選択図】なし


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