生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_LPA受容体アゴニスト
出願番号:2007147257
年次:2008
IPC分類:A61K 31/4375,A61K 31/55,C07D 455/00,A61P 43/00,A61P 13/00,A61P 13/02,A61P 25/00,A61P 25/02,A61P 25/28,A61P 13/08,C12N 15/09,G01N 33/15,G01N 33/50,C07D 471/14


特許情報キャッシュ

河南 英次 近藤 裕 宍倉 淳一 高橋 正泰 坂本 一志 曽我 孝利 折田 正弥 JP 2008297278 公開特許公報(A) 20081211 2007147257 20070601 LPA受容体アゴニスト アステラス製薬株式会社 000006677 森田 拓 100098501 矢野 恵美子 100109357 鈴木 ▲頼▼子 100117846 濱井 康丞 100137464 河南 英次 近藤 裕 宍倉 淳一 高橋 正泰 坂本 一志 曽我 孝利 折田 正弥 A61K 31/4375 20060101AFI20081114BHJP A61K 31/55 20060101ALI20081114BHJP C07D 455/00 20060101ALI20081114BHJP A61P 43/00 20060101ALI20081114BHJP A61P 13/00 20060101ALI20081114BHJP A61P 13/02 20060101ALI20081114BHJP A61P 25/00 20060101ALI20081114BHJP A61P 25/02 20060101ALI20081114BHJP A61P 25/28 20060101ALI20081114BHJP A61P 13/08 20060101ALI20081114BHJP C12N 15/09 20060101ALI20081114BHJP G01N 33/15 20060101ALI20081114BHJP G01N 33/50 20060101ALI20081114BHJP C07D 471/14 20060101ALN20081114BHJP JPA61K31/4375A61K31/55C07D455/00A61P43/00 111A61P13/00A61P13/02A61P25/00A61P25/02A61P25/28A61P13/08A61P43/00 105C12N15/00 AG01N33/15 ZG01N33/50 ZC07D471/14 101 15 OL 15 2G045 4B024 4C064 4C065 4C086 2G045AA40 2G045BB20 2G045CB01 2G045FB03 4B024AA11 4B024BA63 4B024CA03 4B024CA04 4B024DA02 4B024EA04 4B024GA11 4C064AA11 4C064CC01 4C064DD02 4C064EE01 4C064FF01 4C064FF02 4C064GG03 4C065AA03 4C065AA18 4C065BB04 4C065CC07 4C065DD02 4C065EE03 4C065HH02 4C065JJ01 4C065KK02 4C065KK09 4C065LL01 4C065PP03 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086CB11 4C086CB18 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA02 4C086ZA15 4C086ZA20 4C086ZA81 4C086ZB21 4C086ZC19 本発明は、インドロキノリジン誘導体又はその塩のリゾホスファチジン酸(Lysophosphatidic acid;以下、LPAと略記する。)受容体アゴニストとしての用途に関するもので、該誘導体を有効成分とするLPA受容体に起因する疾患の予防若しくは治療剤に関する。さらに本発明は、LPA受容体アゴニストとして有用な新規化合物12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン又はその塩及び該化合物を有効成分とする医薬に関する。 リゾホスファチジン酸(LPA)は、例えば以下の化学式で示されるようなリン脂質で、グリセロール骨格の1位又は2位に脂肪酸を持ち、3位にリン酸基が結合した単純な構造であり、1−アシルLPA、1−アルキルLPA、1−アルケニルLPA、2−アシルLPAなどが含まれる。また、脂肪酸の種類によって多様性があり、炭素鎖の長さと不飽和度により、18:1−LPA、18:3−LPA、16:0−LPAなどがある。 LPAは生体内の随所に存在し、下部尿路では精液に存在するが、細胞表面に存在するGタンパク共役型受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達し、様々な生理作用を示すことが知られている。LPAが惹起する生理作用としては、平滑筋収縮、血小板凝集、血圧調節、神経因性疼痛、癌細胞増殖、癌転移、創傷治癒促進作用などがある。 LPAをリガンドとする受容体サブタイプとしては、LPA1〜LPA5の5種があるが、その中でもLPA1、LPA2及びLPA3の3種の受容体は、それぞれEDG(Endothelial differentiation gene)−2、EDG−4及びEDG−7とも呼ばれている。LPA受容体サブタイプは生体内の随所に分布するが、サブタイプによって局在組織が異なり、各種受容体サブタイプが組織によってそれぞれの生体機能に関与していると考えられている。 特にLPA1は、ミエリン形成期のオリゴデンドロサイト及びシュワン細胞に多く発現し、ミエリン形成の時期に一致して発現する。また、脱髄モデルマウスでは、LPA1のmRNA量が約40%減少することも知られている。一方、LPAはシュワン細胞、オリゴデンドロサイトの細胞死を抑制し、ミエリン形成への関与が示唆されている。 特許文献1にはLPA投与によるミエリン産生細胞の生存促進方法について、特許文献2にはLPA受容体アゴニストを投与して神経障害の症状を改善する方法が開示されている。また、特許文献3には、LPAがLPA1を介して尿道の収縮に関与し、LPA受容体アゴニストは尿道収縮作用を有することから尿失禁の治療に有用であることが開示されている。 これらの知見から、LPA1のアゴニストは中枢神経系の疾患、末梢神経系の疾患及び泌尿器系疾患などの予防若しくは治療薬となり得ることが示唆される。上記のようなアゴニスト作用を示す化合物としては、18:1−LPA、18:3−LPAなどのLPAアナログ(特許文献3)の他、フォスファチジン誘導体(非特許文献1)およびチオリン酸誘導体(非特許文献2)等がこれまでに知られているが、本発明化合物のようにリン酸基を有しない低分子化合物のアゴニストは知られていない。 一方、インドロキノリジン誘導体は多様な生理作用を有するインドールアルカロイド骨格を内包しているため、医薬用途に関する知見として例えば、アリールキノリジン誘導体がα2−アドレノセプター拮抗作用を有し、α2C−アドレノセプターが関与する中枢神経系疾患の治療剤(抗うつ剤)として有用であること(特許文献4)、インドール縮合ヘテロ環誘導体が利尿剤として有用であること(特許文献5)、オクタヒドロ-インドロ-キノリジン誘導体が鎮静剤及び降圧剤として有用であること(特許文献6)など多くの薬理作用が知られている。しかしながら、これまでの文献にはインドロキノリジン誘導体およびLPA受容体を関連付ける記載は一切ない。 また、12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジンに近い構造の化合物としては、非特許文献3に12−ベンジル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロ−インドロ[2,3-a]キノリジンが記載され、非特許文献4に12−ベンジル−3,12b−ジメチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジンが記載されているが、本化合物は知られていない。Bioorg Med. Chem. Lett. 2006, 16, 451-456.Bioorg Med. Chem. Lett. 2004, 14, 3473-3476.Chemische Berichte 1969, 102, 3959-62Khimiko-Farmatsevticheskii Zhurnal 1982, 16, 556-60国際特許公開パンフレットWO00/09139号国際特許公開パンフレットWO03/94965号国際特許公開パンフレットWO02/062389号国際特許公開パンフレットWO03/082866号米国特許3,943,148号(1972年出願)米国特許2,908,686号(1957年出願) 上述のように、LPA受容体アゴニストとしての低分子化合物は現在までになく、LPA受容体に起因する各種疾患の予防若しくは治療薬として有効な低分子のLPA受容体アゴニストを提供することが本発明の課題である。さらに、LPA受容体の生理機能を解明する上で有用な試験ツール化合物として低分子のLPA受容体アゴニストを提供することである。 本発明者らは、LPA受容体LPA1の低分子アゴニストを多くの化合物群からスクリーニングした結果、インドロキノリジン誘導体、特に新規な化合物12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジンが、強力なLPA受容体アゴニスト作用を有することを確認し、泌尿器系又は中枢神経系の各種疾患に対する予防若しくは治療薬となりうることを見出して本発明を完成した。 即ち、本発明は、下記一般式(I)で示されるインドロキノリジン誘導体又はその塩のLPA受容体アゴニストとしての用途に関するもので、該誘導体を有効成分とするLPA受容体に起因する疾患の予防若しくは治療剤に関する。さらに本発明は、LPA受容体アゴニストとして有用な新規化合物12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン又はその塩及び該化合物を有効成分とする医薬に関する。[式中の記号は以下の意味を有する。X:メチレン又はエチレン、R1:−H 又は置換されてもよい低級アルキル、R2、R3:それぞれ独立して−H 又は低級アルキル。] 本発明は低分子のLPA受容体アゴニスト及びLPA受容体に起因する各種疾患の治療剤を提供するものとして有用である。 以下、本発明を詳細に説明する。 本明細書中の定義において、 「アゴニスト」は作動薬又は刺激薬と同義である。 「低級アルキル」として好ましくは直鎖又は分岐状の、炭素数が1から6のアルキル、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等である。より好ましくは炭素数が1から4のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。 「置換されてもよい低級アルキル」とは、「無置換の低級アルキル」あるいは「置換基を1個有している低級アルキル」を示す。「置換されてもよい」の語の許容される置換基としては、低級アルキルの置換基として通常用いられる置換基であればいずれでもよく、好ましい置換基としてはフェニルである。 一般式(I)に示されるインドロキノリジン誘導体における好ましい態様としては、Xがメチレン又はエチレン、R1が−H、メチル又はベンジル、R2及びR3がそれぞれ独立して−H 又はメチルである、化合物又はその塩からなるLPA受容体アゴニストである。 より好ましくは、一般式(I)が以下の(I−A)である化合物又はその塩からなるLPA受容体アゴニストである。[式中の記号は以下の意味を有する。R1:−H 又はベンジル、R2及びR3:それぞれ独立して−H 又はメチル。] 特に好ましくは、12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン又はその塩からなるLPA受容体アゴニストである。 本発明で用いられる化合物は、置換基の種類によっては他の互変異性体や幾何異性体が存在する場合もある。本明細書中、それら異性体の一形態のみで記載することがあるが、本発明にはこれらの異性体も包含し、異性体の分離したもの、あるいは混合物も包含する。 また、化合物(I)は不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく(R)体、(S)体などの光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。 更に、本発明には、化合物(I)の薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で本発明のアミノ基、OH、CO2H等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。 また、本発明化合物は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。 更に、本発明は、本発明化合物及びその製薬学的に許容される塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質をも包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。(製造法)上述のように、本発明で用いられる化合物であるインドロキノリジン誘導体はインドールアルカロイド骨格を内包しており、種々のアルカロイド合成の重要中間体として、古くよりその製造方法が知られている(The Chemistry of Heterocyclic Compounds 1984 Vol.25, Indole Part 4)。化合物(I)の製造法の一例として、トリプタミンのようなインドールアミン体(SM)を出発原料とした場合では、ケトカルボン酸(RG-1)もしくはラクトン(RG-2)との反応により生じたケトアミド中間体(IM-1)を経由し、Pictet-Spengler縮合による環化体IM-3の生成、続く還元反応により合成することが知られている(Tetrahedron, 2000, 56, 1165-1180)。中間体IM-1については、イミド体IM-2を経由して調製することも可能である(Tetrahedron Lett. 2003, 44, 8445-8448)。また、環化体IM-3については、インドールアミン体(SM)およびケトカルボン酸(RG-1)もしくはラクトン(RG-2)との連続した付加環化反応により、直接製造することも可能である(Tetrahedron Lett. 2003, 44, 8445-8448)。 本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。 また、化合物(I)のプロドラッグは上記保護基と同様、原料乃至中間体の段階で特定の基を導入、あるいは得られた化合物(I)を用い反応を行うことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者により公知の方法を適用することにより行うことができる。 以下、本発明化合物の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。 本発明化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。本発明化合物(I)の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。 単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。 各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより製造でき、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化やキラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により、立体化学的に純粋な異性体に導くことができる。また、適当な光学活性な原料化合物より製造することもできる。 以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。実施例1.12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン塩酸塩(以下、化合物Aと表記する。)の製造例1.原料化合物12−ベンジル−12b−メチル−2,3,6,7,12,12b−ヘキサヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン−4[1H]−オンの製造Allinらの方法(Tetrahedron Lett. 2003, 44, 2335-2337)に従い、公知化合物である1−ベンジルトリプタミン(Tetrahedron, 2000, 56, 1165-1180) 33gを含むトルエン溶液400ml中に、市販化合物の3,4−ジヒドロ−6−メチル−2H―ピラン−2−オン14.75gを添加し、約3日間加熱還流した。反応液を2M水酸化ナトリウム水溶液および1M塩酸水で順次洗浄、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥させた後、溶媒を減圧留去して生じた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、酢酸エチル−石油エーテル(7:3)溶出部から表題化合物18gを得た。以下に、表題化合物の質量分析測定値とNMRデータを示した。FAB-MS: 345 (M++1)1H-NMR (CDCl3δ): 1.68 (3H, s), 1.66-1.84 (4H, m), 2.30-2.56 (3H, m), 2.76-3.02 (3H, m), 5.43 (2H, s), 6.89 (2H, d, J = 6 Hz), 7.02-7.06 (1H, m), 7.10-7.14 (2H, m), 7.20-7.29 (3H, m), 7.52-7.57 (1H, m).2.化合物A(12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン塩酸塩)の製造上記1.で製造した原料化合物18gを含むテトラヒドロフラン溶液260ml中に水素化リチウムアルミニウム6.54gを徐々に添加した後、50℃にて約12時間加熱した。反応液を氷浴中で約0℃まで冷却し、適量の2M水酸化ナトリウムを徐々に添加した。生じた白色沈殿物を適量のジエチルエーテルで洗浄しながらろ去し、得られたろ液を飽和食塩水で洗浄、続いて硫酸ナトリウムにて乾燥させた。溶媒を減圧留去して生じた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:8%メタノール/ジクロロメタン)にて精製し、所望の単離物をジクロロエタン100ml中に溶解させ、これに1M塩酸ージエチルエーテル溶液100mlを注いで生成した結晶をろ取することにより、化合物A8.0gを得た。以下に、化合物Aの質量分析測定値とNMRデータを示した。FAB-MS: 331 (M++1),1H-NMR (DMSO-d6δ): 1.74 (3H, s), 1.69-1.80 (1H, m), 1.88-2.03 (1H, m), 2.32-2.42 (1H, s), 2.92-3.47 (7H, m), 3.58-3.72 (2H, m), 5.49-5.64 (2H, m), 6.91 (2H, dd, J = 8, 20 Hz), 7.07-7.48 (6H, m), 7.56 (1H, t, J = 20 Hz). 実施例2.インドロキノリジン誘導体のLPA受容体LPA1アゴニスト活性1.ヒトLPA1のクローニング 以下に示す手順に従って、ヒト脳cDNA(Clontech社製)を鋳型として、PCR法により、LPA1の全長配列を取得した。配列番号1で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号2で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いた。なお、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーの各々の5’末端には、制限酵素SpeI認識部位を含む塩基配列が付加されている。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(Ex Taq DNA polymerase;タカラバイオ社製)を用いて、5%ジメチルスルホキシド(DMSO)存在下で、94℃(15秒間)/60℃(30秒間)/72℃(1分間)からなるサイクルを30回繰り返した。その結果、約1.1 kbpのDNA断片が増幅された。このDNA断片をSpeIで消化した後、プラスミドpEF-BOS-dhfr(Nucleic Acids Research, 18, 5322, 1990)のXbaI部位に挿入することにより、プラスミドpEF-BOS-dhfr-LPA1を得た。 プラスミドpEF-BOS-dhfr-LPA1におけるLPA1遺伝子の塩基配列は、DNAシークエンサー(ABI377 DNA Sequencer; Applied Biosystems社製)を用いてジデオキシターミネーター法により決定した。取得したLPA1の塩基配列は配列番号3で表され、1095塩基のオープンリーディングフレーム(ORF)を有していた。このORFから予測されるアミノ酸配列(364アミノ酸)は、配列番号4で表されるとおりであった。既報のヒトLPA1遺伝子(Genbanck accession No. BC030615)とは204番目と832番目の塩基配列が異なっていたが、いずれもポリペプチドのアミノ酸置換には結びつかないものであり、ポリペプチドの配列は100%一致していた。2.LPA1安定発現細胞の取得 LPA1ポリペプチドを発現させる細胞としてCHO dhfr-細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子欠失のCHO細胞)を使用した。また、LPA1ポリペプチドを発現させるための発現プラスミドとして、前記1.で得られたプラスミドpEF-BOS-dhfr-LPA1を用いた。10cm culture dish(旭テクノグラス社製)に、CHO dhfr-細胞を、80-90%コンフルエントとなるように、10%牛胎児血清(FCS)を含むαMEM培地中で播種して一晩培養後、10 μgのプラスミドpEF-BOS-dhfr-LPA1を、トランスフェクション試薬(Lipofectamine2000; Invitrogen社製)を用いて遺伝子導入した。遺伝子導入から24時間培養した後、細胞を希釈して播種し直した。その際、10% FCSを含むαMEM培地から、dhfr遺伝子の競合的阻害剤であるメトトレキセート(和光純薬社製)を100 nmol/L及び、10% FCSを含むが、核酸を含まないαMEM培地に変更した。2週間培養したのち、形成された細胞のコロニーを個別に回収して培養してLPA1を安定に発現するCHO細胞を取得した。この中からLPAに反応性の高い細胞を選択した。3.薬物 表1に構造を示した化合物A、B、C、Dをインドロキノリジン誘導体の被検化合物として使用した。化合物Aは実施例1に示した方法で製造した。化合物B及びDはInterBioScreening (IBS)社(ロシア)から、化合物CはSpecs社(オランダ)から購入した。4.LPA1アゴニスト活性測定 前記2.で取得したヒトLPA1発現CHO細胞を、96ウェルプレート(96well Black/clear bottom plate;BECTON DICKINSON社製)に1ウェル当り1.5×104個で撒き、24時間培養後に培地を廃棄し、4μM Fluo-3,AM (Invitrogen社製)、0.004% pluronic acid、2.5 mM probenecid(Sigma社製)及び0.05% BSAと20mM HEPESを含むHanks' Balanced Salt Solution(Invitrogen社製)を1ウェル当り100μL添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、細胞を2.5 mM probenecid及び0.05% BSAと20mM HEPESを含むHanks' Balanced Salt Solution(Invitrogen社製)で洗浄したのち、上記と同じ溶液に溶解した被検化合物を添加して反応を開始し、細胞内カルシウム濃度の変動をFLIPR(登録商標、モレキュラーデバイス社製)で測定した。測定1分間の最大蛍光強度を用いて用量反応曲線を作成し、被検化合物のEC50値を算出した。5.結果試験結果を表1に示す。実施例3.ラットオリゴデンドロサイトにおける化合物Aの細胞死保護作用血清除去による細胞死誘導をLPAが保護することが報告されているラットオリゴデンドロサイト細胞株、OLP6細胞(Neuroscience 2005, 136, 115-21)を用いて、化合物Aのオリゴデンドロサイトでの細胞死保護作用を検討した。1.実験方法コラーゲン-I コートの96ウェルプレートに、1ウェル当り2×104細胞となるように、5%FBS、0.5 mMグルタミン、B27サプリメント(Invitrogen社製)、20 ng/mL 上皮細胞成長因子(Epidermal Growth Factor;Roche Diagnostics社製)、及び20 ng/mL 塩基性線維芽細胞成長因子(Basic Fibroblast Growth Factor;Roche Diagnostics社製)を添加した培地(Basal Medium for Neuronal Cells ;invtrogen社製)で播種し、CO2インキュベーター内で、33℃で一日、その後39℃で四日間培養した。その後、培地を0.1% BSAのみを含んだ培地に置換した。その際、化合物A、及び陽性コントロールとしてLPA(最終濃度=1×10-8〜1×10-5 mol/L)をそれぞれ添加し、また陰性コントロールとしては5% FBSを添加し、39℃のCO2インキュベーター内で24時間培養した。細胞死の程度の測定は、LDH release assay (LDH cytotoxic test;和光純薬社製)を用いて、添付プロトコールに従って行った。2.結果LPAは用量依存的に細胞死を抑制した。一方、化合物AはLPAと同様に、1×10-7 mol/L以上で5%FBS添加のコントロールと同程度まで保護作用を示した。OLP6細胞はLPA受容体のうちLPA1以外はほとんど発現がないこと(Neuroscience 2005, 136, 115-21)から、この作用はLPA1を介した作用と考えられた。実施例4.両側総頸動脈閉塞ラットにおける化合物Aの脱髄保護作用1.実験方法雄性Wistarラット (日本チャールズリバー,12週齡) をペントバルビタール麻酔下にて両側総頸動脈を永久閉塞した。閉塞後、化合物A 20 mg/kgを1日2回、18日間の経口投与を行った。非薬物処置群には同じ用量の蒸留水のみを投与した。最終投与後、脳を灌流固定し摘出した。スライス切片を作成し、脱髄を検出する抗体(Am. J. Pathol. 1997, 150, 1253-1266)を用いた免疫組織染色を行い、視索において抗体陽性像の定量解析を行った。抗体陽性像の数及び占有面積を画像解析し、薬物処置群と非薬物処置群に分けて測定した。結果は薬物処置群10例と非薬物処置群11例の平均値および標準誤差で示した。2.結果化合物A処置群において脱髄保護作用による抗体陽性細胞数の有意な減少及び占有面積の有意な縮小効果が認められた。脳虚血由来の脱髄傷害に対して化合物Aは保護作用を有することが示された。実施例5.ラット摘出尿道における化合物Aの収縮作用1.実験方法雄性Wistarラット (日本チャールズリバー,9週齡) を断頭放血致死させた後開腹し,前立腺部および近位部尿道を膀胱頚部から恥骨下にかけて摘出後速やかにKrebs-Henseleit液 (118.4 mM NaCl, 4.7 mM KCl, 2.5 mM CaCl2, 1.2 mM KH2PO4, 1.2 mM MgSO4) に浸した。摘出した尿道組織から幅約3-4 mm,長さ約4-5 mmの短冊状標本を尿道の輪走方向に作成した。標本は95 % O2, 5 % CO2混合ガスを通気したKrebs-Henseleit液を満たしたマグヌス管 (容量10 mL,37 ℃に加温) 内に懸垂し,0.5 gの静止張力を負荷した。標本は約20分毎に3回液交換および静止張力の再負荷を行い安定化させた。続いて標本に60 mM KClを処置し標本を収縮させ, 収縮が最大に達した後洗浄した。この操作を約30分おきに数回繰り返した。引き続き各種薬物を処置し標本の収縮反応を検討した。2.薬物以下の薬物を使用した。フェニレフリン (Sigma製、終濃度:1,3,10 μmol/L)化合物A(終濃度 1,3,10 μmoL/L)3.評価項目薬物処置により惹起される収縮作用の最大値を測定した。薬物は累積的に処置し,反応の用量依存性を検討した。4.結果ラット尿道標本においてフェニレフリン (1,3,10 μmol/L) は用量依存的な収縮を惹起した。一方、化合物A(1,3,10 μmol/L) もまた用量依存的な収縮を惹起した。 上記の各試験の結果、本発明のインドロキノリジン誘導体はLPA受容体アゴニスト作用を有することが確認された。また、尿道に対し強力な収縮作用を有することが確認され、このことから、本発明のインドロキノリジン誘導体は、尿失禁(尿道機能の衰え等に起因する腹圧性尿失禁、中枢神経疾患に伴う尿失禁、過活動膀胱等における切迫性尿失禁、溢流性尿失禁及びこれらの混合型尿失禁)の治療剤として有用であることは明らかである。 本発明のインドロキノリジン誘導体は、オリゴデンドロサイトでの細胞死保護作用及び脱髄保護作用を有することが確認され、このことから、認知症(痴呆)(アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型痴呆など)、軽度認知障害(mild cognitive impairment)、痴呆に随伴する症状(周辺症状)としての種々の精神症状と行動障害である行動心理学的症候(behavioral and psychological symptoms of dementia)及び多発性硬化症などの中枢神経疾患の予防又は治療剤、末梢性糖尿病神経障害などの末梢神経疾患の予防又は治療剤、さらに、中枢神経疾患(脳卒中、脳外傷、脊髄損傷、神経変性疾患など)の発症後の機能障害(運動機能障害、感覚機能障害、言語機能障害など)回復促進剤として有用であることは明らかである。 また、LPAが創傷治癒促進作用を有することから、本発明のインドロキノリジン誘導体は粘膜欠損や褥創を始めとする皮膚潰瘍並びに皮膚欠損などにおける創傷治癒促進剤として有用である。 本発明で用いられる化合物(I)又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。 投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。 本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。 経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。 非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。 通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり0.001乃至100 mg/kg程度であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001乃至10 mg/kgが適当で、1日1回乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001乃至100 mg/kgを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。 本発明で用いられる化合物は、前述の本発明で用いられる化合物が有効と考えられる疾患の種々の治療又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続してもしくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。 以下の配列表の数字見出し<223>には、Sequenceの説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号1で表される塩基配列は、人工的に合成したフォワードプライマー配列であり、配列番号2で表される塩基配列は、人工的に合成したリバースプライマー配列である。配列番号3の配列で表される塩基配列は、ヒトLPA1の塩基配列である。配列番号4の配列で表されるアミノ酸配列は、前記ヒトLPA1塩基配列のオープンリーディングフレームから予測されるヒトLPA1のアミノ酸配列である。一般式(I)で示される化合物又はその塩からなるLPA受容体アゴニスト。[式中の記号は以下の意味を有する。X:メチレン又はエチレン、R1:−H 又は置換されてもよい低級アルキル、R2、R3:それぞれ独立して−H 又は低級アルキル。]R1、R2及びR3が以下の意味を有する請求項1に記載のLPA受容体アゴニスト。R1:−H 又はベンジル、R2、R3:それぞれ独立して−H 又はメチル。12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン又はその塩。請求項3記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン又はその塩からなるLPA受容体アゴニスト。LPA受容体がLPA1、LPA2又はLPA3である請求項1に記載のLPA受容体アゴニスト。LPA受容体がLPA1である請求項6に記載のLPA受容体アゴニスト。請求項1に記載のLPA受容体アゴニストを有効成分とするLPA受容体に起因する疾患の予防若しくは治療剤。LPA受容体に起因する疾患が泌尿器系疾患である請求項8に記載の予防若しくは治療剤。泌尿器系疾患が尿失禁症である請求項9に記載の予防若しくは治療剤。LPA受容体に起因する疾患が中枢神経系疾患又は末梢神経系疾患である請求項8に記載の予防若しくは治療剤。中枢神経系疾患又は末梢神経系疾患が虚血性脳疾患、中枢神経系脱髄疾患又は末梢神経系脱髄疾患である請求項11に記載の予防若しくは治療剤。LPA受容体アゴニストが12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジンである請求項8に記載の予防若しくは治療剤。請求項1に記載のLPA受容体アゴニストを有効成分とする尿道収縮剤、前立腺収縮剤、細胞死抑制剤又は組織保護剤。請求項1に記載のLPA受容体アゴニストを使用することによりLPA受容体への作用を評価する方法。 【課題】低分子のリゾホスファチジン酸(LPA)受容体アゴニスト及び該アゴニストを有効成分とするLPA受容体に起因する各種疾患の予防若しくは治療剤の提供。【解決手段】下式で示されるインドロキノリジン誘導体からなるLPA受容体アゴニスト、及び該アゴニストを有効成分とする予防若しくは治療剤。(Xは、メチレン又はエチレン、R1は、水素原子、置換されてもよい低級アルキル基またはベンジル基、R2、R3は、それぞれ独立して水素原子又は低級アルキルである。)特に、新規な化合物である12−ベンジル−12b−メチル−1,2,3,4,6,7,12,12b−オクタヒドロインドロ[2,3-a]キノリジン(X:メチレン、R1:ベンジル基、R2:メチル基、R3:水素原子)が、強力なLPA受容体アゴニスト作用を示す。LPA受容体に起因する疾患として、特に、泌尿器系疾患、中枢神経系疾患又は末梢神経系疾患の治療に効果がある。【選択図】なし配列表20080612A16330配列表3配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る