タイトル: | 公開特許公報(A)_アイオノマー樹脂の中和度測定方法 |
出願番号: | 2007145372 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 21/35,G01N 33/44,G01N 21/77,G01N 21/78 |
飯田 益大 JP 2008298601 公開特許公報(A) 20081211 2007145372 20070531 アイオノマー樹脂の中和度測定方法 住友電気工業株式会社 000002130 上代 哲司 100078813 神野 直美 100094477 飯田 益大 G01N 21/35 20060101AFI20081114BHJP G01N 33/44 20060101ALI20081114BHJP G01N 21/77 20060101ALI20081114BHJP G01N 21/78 20060101ALI20081114BHJP JPG01N21/35 ZG01N33/44G01N21/77 CG01N21/78 Z 2 OL 7 2G054 2G059 2G054AA04 2G054AB10 2G054BB01 2G054BB20 2G054CD01 2G054EA04 2G054EB01 2G054EB02 2G054GA01 2G054GB01 2G054JA01 2G059AA01 2G059BB08 2G059CC13 2G059EE01 2G059EE12 2G059FF05 2G059HH01 2G059KK01 本発明は、エチレン等と不飽和カルボン酸との共重合体を、ナトリウムや亜鉛等の金属イオンにより分子間架橋してなるアイオノマー樹脂の中和度測定方法に関する。 エチレン等と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸との共重合体に、ナトリウム(Na)や亜鉛(Zn)等の金属イオンを作用させて分子間架橋してなるアイオノマー樹脂は、強度と溶融加工性の両立が可能なポリマーとして知られており、包装材料、ゴルフボール、自動車部品、靴材料、工具、建材、電線等の成形品材料として使用されている。 一般に、共有結合で架橋したポリマーは、熱可塑性プラスチックとしての成形が不可能である。しかし、イオン結合による分子間架橋は加熱すると剪断力で切れるので、アイオノマー樹脂は、加熱により流動性を示す。その結果、通常の熱可塑性プラスチックと同様な成形が可能となる。一方、常温に冷却すると再び元の分子間架橋を生じ、架橋された樹脂としての優れた特性が得られる。 アイオノマー樹脂では、不飽和カルボン酸に由来するカルボキシル基間が、当該カルボキシル基にイオン結合した金属イオンにより架橋される。そして、アイオノマー樹脂の特性、すなわち、耐摩耗性、高反撥弾性、透明性や接着性等は、金属イオンと結合したカルボキシル基の割合、すなわち中和度により大きく影響されることが知られている。従って、中和度は、アイオノマー樹脂の材料特性を評価する上で不可欠なパラメーターであり、中和度の測定が、材料としての受け入れ検査や製品としての品質管理において行われている。 アイオノマー樹脂の中和度を測定する方法としては、アイオノマー樹脂の赤外吸収スペクトル測定による方法が、特許文献1等に開示されており、中和度を迅速、簡易に測定できる方法として知られている。この方法は、赤外吸収スペクトルにおける、C=O伸縮に相当する1700cm−1の吸収は、カルボキシル基のイオン化(金属イオンとのイオン結合)の割合に応じて減少することを利用したものであり、具体的には、以下に示す手順で行われる。 アイオノマー樹脂の試料の赤外吸収スペクトルの測定を行い、1700cm−1の吸収のピーク高さを求める(ピーク高さをaとする。)。又、アイオノマー樹脂の試料を、塩酸と接触させてアイオノマー樹脂中の金属イオンを除去し(脱メタル化)、イオン結合(分子内架橋)がされていない酸共重合体を得る。この酸共重合体の試料の赤外吸収スペクトルの測定を行い、1700cm−1の吸収のピーク高さを求める(ピーク高さをbとする。)。 ピーク高さをaは、アイオノマー樹脂中のイオン結合がされていないカルボキシル基の数に対応し、ピーク高さをbは、アイオノマー樹脂中の全てのカルボキシル基の数に対応するので、下記の式により、中和度(%)を得ることができる。 中和度(%)=100−100×a/b特開2000−63593号公報 しかし、特許文献1等に開示されている方法では、赤外吸収スペクトルのばらつきが大きく、正確なデータが得られないとの問題があった。例えば、図2は、特許文献1に開示されている方法に準じて行われた比較例で得られたアイオノマー樹脂の脱メタル後の赤外吸収スペクトルであり、3回行った測定のそれぞれのスペクトルを示すが、スペクトル間に、大きなばらつきがあることが確認できる。 本発明は、赤外吸収スペクトルの測定により、アイオノマー樹脂の中和度を求める方法であって、赤外吸収スペクトルのばらつきが小さく、アイオノマー樹脂の中和度の正確な測定を可能にする方法を提供することを課題とする。 本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、前記の特許文献1等に開示されている方法において、塩酸に換えて、アルコールを含有する塩酸(アルコール性塩酸)を用いることにより、赤外吸収スペクトルのばらつきが小さくなり、アイオノマー樹脂の中和度の正確な測定が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、アイオノマー樹脂の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さA及び2915cm−1のピーク高さBを求めると共に、 前記アイオノマー樹脂の試料を、アルコールを含有する塩酸と接触させて、前記アイオノマー樹脂中の金属イオンを除去した後に赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さC及び2915cm−1のピーク高さDを求め、式:100−100×(A/B)/(C/D)による計算値を中和度(%)とすることを特徴とする、アイオノマー樹脂の中和度測定方法を提供するものである(請求項1)。 本発明の中和度測定方法の対象となるアイオノマー樹脂とは、前記のように、エチレン等と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸との共重合体に、NaやZn等の金属イオンを作用させて分子間架橋してなる樹脂であるが、このようなエチレン系アイオノマーの他に、ウレタン系、スチレン系やフッ素系高分子を使用したアイオノマー樹脂も本発明の中和度測定方法の対象となる。又、金属イオンとしては、NaやZn以外にもマグネシウム、カルシウム等を挙げることができる。 本発明の中和度測定方法では、試料となるアイオノマー樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さA及び2915cm−1のピーク高さBを求める。ここで、2915cm−1の吸収はCH2伸縮による吸収である。赤外吸収スペクトル測定をATR法で実施する場合、試料の形状や測定時のATR結晶の接触圧等が誤差要因となる可能性があるが、A/Bを求めて1700cm−1の吸収の値Aを規格化することにより、これらの誤差要因の影響を除去することができる。 さらに、前記の赤外吸収スペクトルの測定とともに、アイオノマー樹脂の試料を、アルコール性塩酸と接触させて、前記アイオノマー樹脂中の金属イオンを除去した後に赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さC及び2915cm−1のピーク高さDを求める。 アイオノマー樹脂の試料とアルコール性塩酸と接触は、試料をアルコール性塩酸中に分散し、一定時間、共に振り混ぜる又は撹拌して行うことができる。接触時間は、アイオノマー樹脂中の金属イオンの除去が充分行われるために必要な時間であるが、金属イオンの除去は迅速に行われるので、通常、5〜10分程度である。 そして、前記と同様に、C/Dを求めることにより、1700cm−1の吸収の値Cを規格化する。このようにして求めた、A、B、C及びDの値に基づき、式:100−100×(A/B)/(C/D)により中和度(%)を求めることができる。 本発明は、アイオノマー樹脂を脱メタル処理するために、アルコール性塩酸を用いることを特徴とする。前記の従来の方法においては、アイオノマー樹脂を脱メタル処理するために、アルコールを含有しない一般的な塩酸が用いられていた。しかし、一般的な塩酸では、樹脂との親和性が悪く、塩酸が樹脂の内部まで浸透しにくいため、完全に脱メタル化できず、そのため測定値にばらつきが生じたと考えられる。 一方、本発明においては、脱メタル処理にアルコール性塩酸を用いている。アルコール性塩酸は、一般的な塩酸より樹脂との親和性が良く、樹脂の内部まで塩酸が浸透し易いと考えられる。その結果、迅速、確実に脱メタル処理が行われるようになり、測定値のばらつきがなくなり、高精度かつ迅速な測定が達成された。 アルコールとしては、エタノールや2−プロパノール等の炭素数4以下のアルコール、すなわち低級アルコールを用いることが好ましい(請求項2)。低級アルコールを用いることにより、樹脂との親和性がより改善され、脱メタル処理がより確実に行われるようになる。 塩酸中のアルコールの含有量は、特に限定されないが、アルコールの含有割合が大きい程、アイオノマー樹脂と塩酸との親和性が向上する。一方、アルコールの含有割合が大きすぎると、塩酸が相溶しにくくなると考えられるので、これらを考慮することが好ましい。 脱メタル処理にアルコール性塩酸を用いる点以外は、本発明の測定方法は、特許文献1に記載されているような、アイオノマー樹脂の赤外吸収スペクトルを利用した従来の測定方法と同様な条件で行われる。例えば、アルコール性塩酸の塩酸濃度としては、0.1N程度が好ましい。塩酸濃度が高すぎる場合は、樹脂が酸化して正確な測定値が得られない場合があるので、高濃度の塩酸による脱メタル処理は好ましくない。 アイオノマー樹脂の脱メタル処理は、塩酸以外の強酸によっても可能であるが、例えば、硫酸のみからなる強酸を用いた場合には、硫酸の脱水作用により樹脂が炭化されてしまう問題があり、また硝酸のみからなる強酸を用いた場合には、樹脂が硝酸の酸化作用を受ける問題があり、硫酸や硝酸のみからなる強酸、又は硫酸や硝酸を主体とする強酸は好ましくない。 本発明の方法により、アイオノマー樹脂の中和度を、迅速かつ正確に測定することができる。 次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例の範囲に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。実施例1〜3(アイオノマー樹脂試料の作成) EMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体、三井・デュポンケミカル社製、商品名:ニュクレルN0903HC)100重量部と、水酸化マグネシウム5重量部、老化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製、商品名:イルガノックス1010)0.5重量部を二軸混合機にて混練りして、実施例1のアイオノマー樹脂試料(Mg系アイオノマー)を作成した。又、三井・デュポンケミカル社製の商品名ハイミラン1706(Zn系アイオノマー)、ハイミラン1707(Na系アイオノマー)を、それぞれ実施例2、実施例3のアイオノマー樹脂試料とした。[C/Dの測定](赤外吸収スペクトル測定用試料の作成) 前記のアイオノマー樹脂試料のそれぞれを凍結粉砕して約0.1g秤量し、バイアル瓶に入れる。試料を入れたバイアル瓶に、0.1Nアルコール性塩酸(試薬:関東化学社製、エタノール含有)10mlを加えて、蓋をする。その後、このバイアル瓶を振とう機にセットして、室温にて1時間振り混ぜ、脱メタル処理(亜鉛イオン等の樹脂中の金属イオンの除去)を行う。その後、試料とアルコール性塩酸を濾紙で分離し、分離した試料は、純水で十分に洗浄して、酸分を完全に除去する。洗浄後の試料を、60℃で3時間ほど真空乾燥して、赤外吸収スペクトル測定用試料を得た。(赤外吸収スペクトル測定) このようにして得られた赤外吸収スペクトル測定用試料について、Magna560(Nicolet社製赤外吸収スペクトル測定装置)を用いて、以下に示す条件で、赤外吸収スペクトルを測定した。 アクセサリ:1回反射ATRアクセサリ(Dura Scope:SensIR社製) 測定法 :ATR法 分解能 :4cm−1 積算回数 :16回(測定結果) この赤外吸収スペクトル測定用試料の作成及び赤外吸収スペクトル測定を、それぞれの試料について計3回行い、各回のC/D(Cは1700cm−1のピーク高さ、Dは2915cm−1のピーク高さ)の平均値をそれぞれの試料についてのC/Dの値とした。なお、図1は、実施例1における赤外吸収スペクトルを示す。図1では、3回の測定データを縦方向に位置をずらして表示している。 いずれの試料のいずれの測定についても、3回とも、1585cm−1のピークは見られなかった。1585cm−1のピークは、カルボキシルイオン:−COO−の吸収、即ちアイオノマーのイオン架橋形成を示すピークであり、このピークが消失したことから、いずれの場合も金属イオンが全部除去されたことが示されている。その結果C/Dのばらつきは殆ど無かった。[A/Bの測定] 実施例1、2及び3のアイオノマー樹脂試料について、0.1Nアルコール性塩酸による処理を行わない以外は、前記と同じ条件にて、赤外吸収スペクトルを測定し、A/B(Aは1700cm−1のピーク高さ、Bは2915cm−1のピーク高さ)を求めた。 以上のようにして求めたA/B及びC/Dと、式:100−100×(A/B)/(C/D)により中和度(%)を求めた。A、B、A/B、C、D、C/D及び中和度(%)の値を表1に示す。比較例 実施例1と同じ試料を用い、0.1Nアルコール性塩酸の代わりに、アルコールを含有しない0.1N塩酸(試薬:関東化学社製)を用いた以外は、実施例と同条件で赤外吸収スペクトル測定用試料の作成を行い、赤外吸収スペクトルを測定した。この赤外吸収スペクトル測定用試料の作成及び赤外吸収スペクトル測定を、計3回行った。得られた赤外吸収スペクトルを図2に示す。なお、図2では、3回の測定データを縦方向に位置をずらして表示している。 図2より明らかなように、1585cm−1のピーク(図中の矢印で示す部分。アイオノマーのイオン架橋形成を示すピーク。)が消失している場合と消失していない場合があり、脱メタル後のスペクトルに大きなばらつきがある。即ち、金属イオンの除去が充分に行われない場合があり、その結果、C/Dの値がばらつき、正確な測定値は得られない。 なお、以下の表2に塩酸の液性の種類とアイオノマー樹脂との親和性(親和性良を○、親和性低を×で表す。)、及び測定の精度(○:精度高、×:精度低)の関係を示す。実施例1で得られた赤外吸収スペクトルである。比較例で得られた赤外吸収スペクトルである。 アイオノマー樹脂の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さA及び2915cm−1のピーク高さBを求めると共に、 前記アイオノマー樹脂の試料を、アルコールを含有する塩酸と接触させて、前記アイオノマー樹脂中の金属イオンを除去した後に赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さC及び2915cm−1のピーク高さDを求め、式:100−100×(A/B)/(C/D)による計算値を中和度(%)とすることを特徴とする、アイオノマー樹脂の中和度測定方法。 アルコールが炭素数4以下の低級アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のアイオノマー樹脂の中和度測定方法。 【課題】赤外吸収スペクトルの測定により、アイオノマー樹脂の中和度を求める方法であって、赤外吸収スペクトルのばらつきが小さく、アイオノマー樹脂の中和度の正確な測定を可能にする方法を提供する。【解決手段】アイオノマー樹脂の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さA及び2915cm−1のピーク高さBを求めると共に、前記アイオノマー樹脂の試料を、アルコールを含有する塩酸と接触させて、前記アイオノマー樹脂中の金属イオンを除去した後に赤外吸収スペクトルを測定し、その1700cm−1のピーク高さC及び2915cm−1のピーク高さDを求め、式:100−100×(A/B)/(C/D)による計算値を中和度(%)とすることを特徴とする、アイオノマー樹脂の中和度測定方法。【選択図】 なし