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タイトル:公開特許公報(A)_有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物
出願番号:2007138745
年次:2008
IPC分類:A61K 35/74,A61P 31/16,A23L 1/28


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工月 達郎 JP 2008013543 公開特許公報(A) 20080124 2007138745 20070525 有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物 第一三共ヘルスケア株式会社 306014736 石橋 公樹 100146581 矢口 敏昭 100115750 越後 友希 100125025 工月 達郎 JP 2006158115 20060607 A61K 35/74 20060101AFI20071221BHJP A61P 31/16 20060101ALI20071221BHJP A23L 1/28 20060101ALI20071221BHJP JPA61K35/74 AA61P31/16A23L1/28 Z 7 1 OL 10 4B018 4C087 4B018MD86 4B018ME09 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC64 4C087CA09 4C087MA52 4C087NA14 4C087ZA59 4C087ZB33 本発明は、有胞子性乳酸菌を含有する含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物に関する。 便秘や軟便の改善目的で乳酸菌を投与することは広く実用に供されている技術であり、この整腸効果は基本的にはどの乳酸菌種・菌株でも発現するものである。 上記以外の機能として、血圧降下、血糖低下、抗アレルギー、免疫増強、抗癌、抗ヘリコバクター・ピロリ菌、抗ウイルス等、特異的な薬理作用を有する乳酸菌種又は菌株も発見されつつあり、一部は実用に供されてきている。 また、乳酸菌の抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス作用については、これまでに以下の報告がある。(1)フェカリス菌、アシドフィルス菌及びビフィズス菌の菌体成分に抗インフルエンザウイルス作用を有することがin vitro試験で明らかとなっている(特許文献1)。(2)ストレプトコッカス属乳酸菌の菌体中に含まれる、単純ヘルペスウイルスによって発現するプラーク形成の阻害成分に、アデノウイルス感染防御剤作用を有することが報告されている(特許文献2)。(3)エル・カゼイ菌の経口摂取がインフルエンザウイルス抗原に対するT細胞及びCD3+の増殖能の増加をもたらすことが判っている(特許文献3)。 一方、1949年に中山らはBacillus coagulansの一種で胞子を形成する乳酸菌(以下、有胞子性乳酸菌という)を緑麦芽から分離した(非特許文献1)。有胞子性乳酸菌は文字通り胞子の形をした乳酸菌であることからLactobacillus sporogenesと呼ばれることもあるが、分類学的にBacillus coagulansと改名されている(例えば、非特許文献2)。すなわち、嫌気性条件化では乳酸菌の顔を持ち、好気性条件化ではBacillus属の顔を持つ非常にユニークな菌である(非特許文献3)。 さらに、有胞子性乳酸菌製剤は耐熱性、好気性、耐酸性という特徴を有するため胃酸や胆汁に強く、今日まで、整腸、腹部膨満感、軟便及び便秘等の効能をもつ医薬品整腸剤や、乳酸菌含有食品等に広く配合されている。上記効能以外にも有胞子性乳酸菌が、腸炎、大腸炎など下痢を主徴とする疾患、抗生物質投与による下痢に有効であること(例えば、非特許文献4)や、皮膚質改善効果(例えば、非特許文献3)、高脂血症やアフタ性口内炎(例えば、非特許文献5)等に有効であることが報告されている。更にまた、有胞子性乳酸菌を経口投与したマウスにサイトメガウイルスを感染させた場合に、生存率が改善することが報告されている(非特許文献6)。 しかし、これまでに、有胞子性乳酸菌の経口投与において抗感冒ウイルス作用又は抗インフルエンザ作用が発現するかどうかは知られていない。特開昭50-76295号公報特開昭53-52611号公報特表2003-534284号公報日本農芸化学会誌 Vol.23 No.12 (1949) p.513-517Nutrition Research Vol.22 (2002) p.71-84生物工学 Vol.80 No.12 (2002) p.581-583三共文献集 (1965) p.7-11Altern Med Rev, Vol.7 No.4 (2002) p.340-342プロバイオティクスシンポジウム ‘05予講集 (2005) p.6 本発明者らは、経口投与における有胞子性乳酸菌の新たな用途を発見すべく鋭意研究した。その結果、有胞子性乳酸菌が感冒関連ウイルス及びインフルエンザ関連ウイルスに対する優れた抗ウイルス効果が発現することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、(1)有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患の予防又は治療用組成物であり、好適には、(2)有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状の予防又は治療用組成物、(3)有胞子性乳酸菌がBacillus coagulansである(1)又は(2)に記載の組成物、(4)有胞子性乳酸菌がBacillus coagulans SANK70258である(1)又は(2)に記載の組成物、(5)感冒ウイルスが、コロナウイルス、ライノウイルス又はアデノウイルスである(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の組成物、(6)インフルエンザウイルスがインフルエンザウイルスA又はインフルエンザウイルスBである(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の組成物及び(7)食品又は医薬として用いるための(1)乃至(6)から選択されるいずれか1項に記載の組成物である。 本発明において、「有胞子性乳酸菌」とは、一般に、胞子を形成する乳酸菌を示すが、好適には、Bacillus coagulansの乾燥した胞子及び生菌菌体である。通常、有胞子性乳酸菌に乳糖、白糖、デキストリン、デンプンなど適当な賦形剤もしくはそれらの混合物を混合して製造した乳酸菌原末を用いる。 本発明において、「感冒ウイルス」とは、一般に、感冒の原因となるウイルスを示すが、好適には、コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス等であり、更に好適には、コロナウイルス、ライノウイルス又はアデノウイルスである。 本発明において、「インフルエンザウイルス」とは、一般にインフルエンザの原因となるウイルスを示すが、好適には、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB又はインフルエンザウイルスCであり、更に好適には、インフルエンザウイルスA又はインフルエンザウイルスBである。 本発明において、「感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患」とは、一般に、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルスに感染した結果として発病する疾患である。 本発明において、「感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状」とは、一般に、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状であれば、特に限定はないが、例えば、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、たん、くしゃみ、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み又は筋肉の痛みである。 本発明において「治療」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善若しくは緩和させること或いは症状を抑制させることを意味し、「予防」とは、病気又は症状の発現の未然に防ぐことを意味する。 有胞子性乳酸菌の経口投与により、感冒関連ウイルス又はインフルエンザ関連ウイルスの感染により引き起こされる症状の予防又は治療に効果があるため有用である。 有胞子性乳酸菌は、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。 本発明の有胞子性乳酸菌は内服製剤又は食品の形態で投与することができる。 有胞子性乳酸菌原末は通常1g中に有胞子性乳酸菌を5×109乃至1×1012個含む。 有胞子性乳酸菌の1日投与量は、適応症又は目的により異なるが、通常、1×105個乃至1×1013個であり、好適には、1×106個乃至1×1012個であり、これを1日に1乃至3回に分けて投与する。 本発明の組成物が固形製剤の場合において含有される有胞子性乳酸菌原末の含有量は、通常、10mg乃至1000mgであり、好適には、20mg乃至500mgである。 本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて抗インフルエンザ薬、感冒薬、漢方製剤、生薬又はハーブ類、ビタミン類等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。 これらの具体的な形態としては、例えば、医薬品では錠剤、咀嚼錠剤、細粒剤(顆粒・散剤を含む)、カプセル剤等、食品ではゼリー剤、クッキー、ガム、チョコレート、キャンデー、ドロップ、マーマレード、マヨネーズ、ドレッシング、パン、プリン、打錠菓子、粉末ジュース、ふりかけ又はトッピング等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。 上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、賦形剤、安定化剤、コーテイング剤、滑沢剤、吸着剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、pH調節剤、香料、更には、砂糖、水あめ、カカオバター、バター、マーガリン、食用油脂、食塩、練乳、小麦粉、その他の食品素材及び食品添加物等を配合することができる。 以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。 (実施例1)錠剤(1)成分(表1)9錠中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−有胞子性乳酸菌原末 45白糖 140タルク 30ステアリン酸マグネシウム 10ヒドロキシプロピルセルロース 5結晶セルロース 150乳糖 適量香料 微量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。 (実施例2)顆粒剤(1)成分(表2)1乃至3包中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―有胞子性乳酸菌原末 45白糖 110マンニトール 900酒石酸 2ヒドロキシプロピルセルロース 50乳糖 適量香料 微量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。 (実施例3)カプセル剤(1)成分(表3)1乃至2カプセル中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 45ヒドロキシプロピルセルロース 20ステアリン酸マグネシウム 10乳糖 適量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。 (実施例4)ホワイトチョコレート(1)成分(表4)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1ビターチョコレート 18カカオバター 22全脂粉乳 20レシチン 0.3バニリン 微量砂糖 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のチョコレート製造方法に準じて製造する。有胞子性乳酸菌原末を添加して再度混練後成型する。 (実施例5)キャンデー(1)成分(表5)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1水あめ 55クエン酸 適量香料 微量砂糖 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のキャンデー製造方法に準じて製造する。最終工程で80℃以下になったところで有胞子性乳酸菌原末を添加して再度混練後成型する。 (実施例6)パン(1)成分(表6)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1小麦粉 85食塩 適量ショートニング 適量イースト 3水 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のパン製造方法に準じて製造する。 (試験例)有胞子性乳酸菌の抗コロナウイルス及び抗インフルエンザウイルス効果試験(1)被験物質 有胞子性乳酸菌原末(Bacillus coagulans SANK70258)は三共ライフテック(株)製のものを使用した。 被験物質は、試験当日に局方注射用水を用いて20mg/0.2mL/匹になるように調製した。有胞子乳酸菌の投与量は、1.6×108個/匹である、対照群には同量の局方注射用水を投与した。(2)動物 BALB/c雌マウス(日本チャールス・リバー社製)3又は5週齢を購入し、温度23±℃、湿度55±10%、照明時間8時〜20時に制御されたP3施設にて、オートクレーブ滅菌したポリカーボネート製飼育ケージに5匹ずつ入れて飼育した。飼料は実験動物用特殊固形飼料(CRF−1、オリエンタル酵母工業製)および水フィルターを通した水道水をオートクレーブ滅菌したポリカーボネート製給水瓶にいれ、それぞれ自由に摂取させた。 馴化終了後、至近時の体重をもとに1群15匹に群分けして次の3つの群で行った。1群は陰性対照群(ウイルス未摂取かつ有胞子乳酸菌非投与)、2群は陽性対照群(ウイルス摂取かつ有胞子乳酸菌非投与)、3群は被験物質投与群(ウイルス摂取かつ有胞子乳酸菌投与)とした。(3)使用ウイルス 使用したウイルス種類、投与経路及び投与濃度(50% Tissue Culture Infectious Dose:TCID50/10μL)を表7に示す。ウイルスはいずれもAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。 ATCCより購入した細胞を培養し、顕微鏡下でモノレイヤー状態を確認後、ウイルスを加え、Cytopathic Effect(CPE)を顕微鏡下で確認した。培養上清を回収し−80℃以下で保存した。 (表7) ウイルスの種類 投与経路 投与濃度 接種時―――――――――――――――――――――――――――――――――――――インフルエンザウイルスA(H1N1) 経鼻 1×108 5週齢インフルエンザウイルスB(香港/5/72) 経鼻 1×108 5週齢コロナウイルス(MHV) 脳内 1×108 7週齢―――――――――――――――――――――――――――――――――――――。(4)方法 ウイルス接種の2週間前から接種後10日目まで、1日1回、計24回、被験物質を胃ゾンデと注射器を用いて強制経口投与した。 被験薬投与2週目に、予試験にて死亡例が認められた濃度のウイルスを、経鼻又は脳内に接種した。接種後10日間観察してマウスの生存率を以下の式により算出して求めた。 ウイルス感染後のマウス生存率=100×[生存マウス数/(総数:15匹)](5)試験結果 得られた生存率の結果を図1〜図3及び表8〜表10に示す。なお、各値とも1群15匹の平均値である。 表8は、コロナウイルス感染後10日目における生存率の結果である。 (表8)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 67感染 非投与 47―――――――――――――――――――――――。 表8より、有胞子乳酸菌の投与により生存率の改善が認められた。 図1は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図1より、有胞子性乳酸菌の感染前投与により生残率の改善が認められた。 表9は、インフルエンザウイルスA感染後10日目における生存率の結果である。 (表9)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 100感染 非投与 87―――――――――――――――――――――――。 表9より、有胞子性乳酸菌の非投与群では死亡例が認められたが、投与群では認められなかった。 図2は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図2より、有胞子性乳酸菌の感染前投与で生残率の改善が認められた。 表10は、インフルエンザウイルスB感染後10日目における生存率の結果である。 (表10)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 100感染 非投与 87―――――――――――――――――――――――。 表10より、有胞子性乳酸菌の非投与群では死亡例が認められたが、投与群では認められなかった。 図3は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図3より、有胞子性乳酸菌の感染前投与で生残率の改善が認められた。 有胞子性乳酸菌の経口投与により、感冒関連ウイルス又はインフルエンザ関連ウイルスの感染により引き起こされる症状の予防又は治療に効果があるため有用である。図1は、コロナウイルス感染時における生存率を示すグラフである。横軸はコロナウイルス感染からの経過日数を、縦軸は生残率(%)を示す。図2は、インフルエンザウイルスA感染時における生存率を示すグラフである。横軸はインフルエンザウイルスA感染からの経過日数を、縦軸は生存率(%)を示す。図3は、インフルエンザウイルスB感染時における生存率を示すグラフである。横軸はインフルエンザウイルスB感染からの経過日数を、縦軸は生存率(%)を示す。 有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患の予防又は治療用組成物。 有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状の予防又は治療用組成物。 有胞子性乳酸菌がBacillus coagulansである請求項1又は請求項2に記載の組成物。 有胞子性乳酸菌がBacillus coagulans SANK70258である請求項1又は請求項2に記載の組成物。 感冒ウイルスが、コロナウイルス、ライノウイルス又はアデノウイルスである請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の組成物。 インフルエンザウイルスがインフルエンザウイルスA又はインフルエンザウイルスBである請求項1乃至請求項4から選択されるいずれか1項に記載の組成物。 食品又は医薬として用いるための請求項1乃至請求項6から選択されるいずれか1項に記載の組成物。 【課題】感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患の予防又は治療用組成物を提供すること。【解決手段】有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患の予防又は治療用組成物。【選択図】図1


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特許公報(B2)_有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物

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タイトル:特許公報(B2)_有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物
出願番号:2007138745
年次:2013
IPC分類:A61K 35/74,A61P 31/16,A23L 1/28


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工月 達郎 JP 5232404 特許公報(B2) 20130329 2007138745 20070525 有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物 第一三共ヘルスケア株式会社 306014736 竹元 利泰 100161160 石橋 公樹 100146581 工月 達郎 JP 2006158115 20060607 20130710 A61K 35/74 20060101AFI20130620BHJP A61P 31/16 20060101ALI20130620BHJP A23L 1/28 20060101ALI20130620BHJP JPA61K35/74 AA61P31/16A23L1/28 Z A61K 35/74 A23L 1/28 A61P 31/16 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) New Food Industry,1999年,Vol.41,No.5,pp.28-32 化学療法の領域,2005年,Vol.21,No.11,pp.72-78 小玉 健太郎 他,日本農芸化学会誌,1984年,58(11),1127〜1129頁 1 2008013543 20080124 11 20100510 原田 隆興 本発明は、有胞子性乳酸菌を含有する含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物に関する。 便秘や軟便の改善目的で乳酸菌を投与することは広く実用に供されている技術であり、この整腸効果は基本的にはどの乳酸菌種・菌株でも発現するものである。 上記以外の機能として、血圧降下、血糖低下、抗アレルギー、免疫増強、抗癌、抗ヘリコバクター・ピロリ菌、抗ウイルス等、特異的な薬理作用を有する乳酸菌種又は菌株も発見されつつあり、一部は実用に供されてきている。 また、乳酸菌の抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス作用については、これまでに以下の報告がある。(1)フェカリス菌、アシドフィルス菌及びビフィズス菌の菌体成分に抗インフルエンザウイルス作用を有することがin vitro試験で明らかとなっている(特許文献1)。(2)ストレプトコッカス属乳酸菌の菌体中に含まれる、単純ヘルペスウイルスによって発現するプラーク形成の阻害成分に、アデノウイルス感染防御剤作用を有することが報告されている(特許文献2)。(3)エル・カゼイ菌の経口摂取がインフルエンザウイルス抗原に対するT細胞及びCD3+の増殖能の増加をもたらすことが判っている(特許文献3)。 一方、1949年に中山らはBacillus coagulansの一種で胞子を形成する乳酸菌(以下、有胞子性乳酸菌という)を緑麦芽から分離した(非特許文献1)。有胞子性乳酸菌は文字通り胞子の形をした乳酸菌であることからLactobacillus sporogenesと呼ばれることもあるが、分類学的にBacillus coagulansと改名されている(例えば、非特許文献2)。すなわち、嫌気性条件化では乳酸菌の顔を持ち、好気性条件化ではBacillus属の顔を持つ非常にユニークな菌である(非特許文献3)。 さらに、有胞子性乳酸菌製剤は耐熱性、好気性、耐酸性という特徴を有するため胃酸や胆汁に強く、今日まで、整腸、腹部膨満感、軟便及び便秘等の効能をもつ医薬品整腸剤や、乳酸菌含有食品等に広く配合されている。上記効能以外にも有胞子性乳酸菌が、腸炎、大腸炎など下痢を主徴とする疾患、抗生物質投与による下痢に有効であること(例えば、非特許文献4)や、皮膚質改善効果(例えば、非特許文献3)、高脂血症やアフタ性口内炎(例えば、非特許文献5)等に有効であることが報告されている。更にまた、有胞子性乳酸菌を経口投与したマウスにサイトメガウイルスを感染させた場合に、生存率が改善することが報告されている(非特許文献6)。 しかし、これまでに、有胞子性乳酸菌の経口投与において抗感冒ウイルス作用又は抗インフルエンザ作用が発現するかどうかは知られていない。特開昭50-76295号公報特開昭53-52611号公報特表2003-534284号公報日本農芸化学会誌 Vol.23 No.12 (1949) p.513-517Nutrition Research Vol.22 (2002) p.71-84生物工学 Vol.80 No.12 (2002) p.581-583三共文献集 (1965) p.7-11Altern Med Rev, Vol.7 No.4 (2002) p.340-342プロバイオティクスシンポジウム ‘05予講集 (2005) p.6 本発明者らは、経口投与における有胞子性乳酸菌の新たな用途を発見すべく鋭意研究した。その結果、有胞子性乳酸菌が感冒関連ウイルス及びインフルエンザ関連ウイルスに対する優れた抗ウイルス効果が発現することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、(1)有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患の予防又は治療用組成物であり、好適には、(2)有胞子性乳酸菌を含有する、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状の予防又は治療用組成物、(3)有胞子性乳酸菌がBacillus coagulansである(1)又は(2)に記載の組成物、(4)有胞子性乳酸菌がBacillus coagulans SANK70258である(1)又は(2)に記載の組成物、(5)感冒ウイルスが、コロナウイルス、ライノウイルス又はアデノウイルスである(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の組成物、(6)インフルエンザウイルスがインフルエンザウイルスA又はインフルエンザウイルスBである(1)乃至(4)から選択されるいずれか1項に記載の組成物及び(7)食品又は医薬として用いるための(1)乃至(6)から選択されるいずれか1項に記載の組成物である。 本発明において、「有胞子性乳酸菌」とは、一般に、胞子を形成する乳酸菌を示すが、好適には、Bacillus coagulansの乾燥した胞子及び生菌菌体である。通常、有胞子性乳酸菌に乳糖、白糖、デキストリン、デンプンなど適当な賦形剤もしくはそれらの混合物を混合して製造した乳酸菌原末を用いる。 本発明において、「感冒ウイルス」とは、一般に、感冒の原因となるウイルスを示すが、好適には、コロナウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス等であり、更に好適には、コロナウイルス、ライノウイルス又はアデノウイルスである。 本発明において、「インフルエンザウイルス」とは、一般にインフルエンザの原因となるウイルスを示すが、好適には、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB又はインフルエンザウイルスCであり、更に好適には、インフルエンザウイルスA又はインフルエンザウイルスBである。 本発明において、「感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染性疾患」とは、一般に、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルスに感染した結果として発病する疾患である。 本発明において、「感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状」とは、一般に、感冒ウイルス又はインフルエンザウイルス感染に伴う諸症状であれば、特に限定はないが、例えば、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せき、たん、くしゃみ、悪寒、発熱、頭痛、関節の痛み又は筋肉の痛みである。 本発明において「治療」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善若しくは緩和させること或いは症状を抑制させることを意味し、「予防」とは、病気又は症状の発現の未然に防ぐことを意味する。 有胞子性乳酸菌の経口投与により、感冒関連ウイルス又はインフルエンザ関連ウイルスの感染により引き起こされる症状の予防又は治療に効果があるため有用である。 有胞子性乳酸菌は、日本薬局方外医薬品規格2002に収載されている。 本発明の有胞子性乳酸菌は内服製剤又は食品の形態で投与することができる。 有胞子性乳酸菌原末は通常1g中に有胞子性乳酸菌を5×109乃至1×1012個含む。 有胞子性乳酸菌の1日投与量は、適応症又は目的により異なるが、通常、1×105個乃至1×1013個であり、好適には、1×106個乃至1×1012個であり、これを1日に1乃至3回に分けて投与する。 本発明の組成物が固形製剤の場合において含有される有胞子性乳酸菌原末の含有量は、通常、10mg乃至1000mgであり、好適には、20mg乃至500mgである。 本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて抗インフルエンザ薬、感冒薬、漢方製剤、生薬又はハーブ類、ビタミン類等を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。 これらの具体的な形態としては、例えば、医薬品では錠剤、咀嚼錠剤、細粒剤(顆粒・散剤を含む)、カプセル剤等、食品ではゼリー剤、クッキー、ガム、チョコレート、キャンデー、ドロップ、マーマレード、マヨネーズ、ドレッシング、パン、プリン、打錠菓子、粉末ジュース、ふりかけ又はトッピング等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。 上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、賦形剤、安定化剤、コーテイング剤、滑沢剤、吸着剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、pH調節剤、香料、更には、砂糖、水あめ、カカオバター、バター、マーガリン、食用油脂、食塩、練乳、小麦粉、その他の食品素材及び食品添加物等を配合することができる。 以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。 (実施例1)錠剤(1)成分(表1)9錠中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−有胞子性乳酸菌原末 45白糖 140タルク 30ステアリン酸マグネシウム 10ヒドロキシプロピルセルロース 5結晶セルロース 150乳糖 適量香料 微量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。 (実施例2)顆粒剤(1)成分(表2)1乃至3包中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―有胞子性乳酸菌原末 45白糖 110マンニトール 900酒石酸 2ヒドロキシプロピルセルロース 50乳糖 適量香料 微量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。 (実施例3)カプセル剤(1)成分(表3)1乃至2カプセル中 (mg)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 45ヒドロキシプロピルセルロース 20ステアリン酸マグネシウム 10乳糖 適量−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。 (実施例4)ホワイトチョコレート(1)成分(表4)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1ビターチョコレート 18カカオバター 22全脂粉乳 20レシチン 0.3バニリン 微量砂糖 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のチョコレート製造方法に準じて製造する。有胞子性乳酸菌原末を添加して再度混練後成型する。 (実施例5)キャンデー(1)成分(表5)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1水あめ 55クエン酸 適量香料 微量砂糖 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のキャンデー製造方法に準じて製造する。最終工程で80℃以下になったところで有胞子性乳酸菌原末を添加して再度混練後成型する。 (実施例6)パン(1)成分(表6)1枚100g中 (g)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−――有胞子性乳酸菌原末 1小麦粉 85食塩 適量ショートニング 適量イースト 3水 残部−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−―。(2)製法 上記成分及び分量をとり、通常のパン製造方法に準じて製造する。 (試験例)有胞子性乳酸菌の抗コロナウイルス及び抗インフルエンザウイルス効果試験(1)被験物質 有胞子性乳酸菌原末(Bacillus coagulans SANK70258)は三共ライフテック(株)製のものを使用した。 被験物質は、試験当日に局方注射用水を用いて20mg/0.2mL/匹になるように調製した。有胞子乳酸菌の投与量は、1.6×108個/匹である、対照群には同量の局方注射用水を投与した。(2)動物 BALB/c雌マウス(日本チャールス・リバー社製)3又は5週齢を購入し、温度23±℃、湿度55±10%、照明時間8時〜20時に制御されたP3施設にて、オートクレーブ滅菌したポリカーボネート製飼育ケージに5匹ずつ入れて飼育した。飼料は実験動物用特殊固形飼料(CRF−1、オリエンタル酵母工業製)および水フィルターを通した水道水をオートクレーブ滅菌したポリカーボネート製給水瓶にいれ、それぞれ自由に摂取させた。 馴化終了後、至近時の体重をもとに1群15匹に群分けして次の3つの群で行った。1群は陰性対照群(ウイルス未摂取かつ有胞子乳酸菌非投与)、2群は陽性対照群(ウイルス摂取かつ有胞子乳酸菌非投与)、3群は被験物質投与群(ウイルス摂取かつ有胞子乳酸菌投与)とした。(3)使用ウイルス 使用したウイルス種類、投与経路及び投与濃度(50% Tissue Culture Infectious Dose:TCID50/10μL)を表7に示す。ウイルスはいずれもAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。 ATCCより購入した細胞を培養し、顕微鏡下でモノレイヤー状態を確認後、ウイルスを加え、Cytopathic Effect(CPE)を顕微鏡下で確認した。培養上清を回収し−80℃以下で保存した。 (表7) ウイルスの種類 投与経路 投与濃度 接種時―――――――――――――――――――――――――――――――――――――インフルエンザウイルスA(H1N1) 経鼻 1×108 5週齢インフルエンザウイルスB(香港/5/72) 経鼻 1×108 5週齢コロナウイルス(MHV) 脳内 1×108 7週齢―――――――――――――――――――――――――――――――――――――。(4)方法 ウイルス接種の2週間前から接種後10日目まで、1日1回、計24回、被験物質を胃ゾンデと注射器を用いて強制経口投与した。 被験薬投与2週目に、予試験にて死亡例が認められた濃度のウイルスを、経鼻又は脳内に接種した。接種後10日間観察してマウスの生存率を以下の式により算出して求めた。 ウイルス感染後のマウス生存率=100×[生存マウス数/(総数:15匹)](5)試験結果 得られた生存率の結果を図1〜図3及び表8〜表10に示す。なお、各値とも1群15匹の平均値である。 表8は、コロナウイルス感染後10日目における生存率の結果である。 (表8)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 67感染 非投与 47―――――――――――――――――――――――。 表8より、有胞子乳酸菌の投与により生存率の改善が認められた。 図1は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図1より、有胞子性乳酸菌の感染前投与により生残率の改善が認められた。 表9は、インフルエンザウイルスA感染後10日目における生存率の結果である。 (表9)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 100感染 非投与 87―――――――――――――――――――――――。 表9より、有胞子性乳酸菌の非投与群では死亡例が認められたが、投与群では認められなかった。 図2は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図2より、有胞子性乳酸菌の感染前投与で生残率の改善が認められた。 表10は、インフルエンザウイルスB感染後10日目における生存率の結果である。 (表10)感染の有無 有胞子乳酸菌 生存率(%)―――――――――――――――――――――――非感染 非投与 100感染 投与 100感染 非投与 87―――――――――――――――――――――――。 表10より、有胞子性乳酸菌の非投与群では死亡例が認められたが、投与群では認められなかった。 図3は、横軸にウイルス感染からの経過日数を、縦軸に生存率(%)の推移を記したグラフである。図3より、有胞子性乳酸菌の感染前投与で生残率の改善が認められた。 有胞子性乳酸菌の経口投与により、感冒関連ウイルス又はインフルエンザ関連ウイルスの感染により引き起こされる症状の予防又は治療に効果があるため有用である。図1は、コロナウイルス感染時における生存率を示すグラフである。横軸はコロナウイルス感染からの経過日数を、縦軸は生残率(%)を示す。図2は、インフルエンザウイルスA感染時における生存率を示すグラフである。横軸はインフルエンザウイルスA感染からの経過日数を、縦軸は生存率(%)を示す。図3は、インフルエンザウイルスB感染時における生存率を示すグラフである。横軸はインフルエンザウイルスB感染からの経過日数を、縦軸は生存率(%)を示す。 Bacillus coagulans SANK70258を含有する、コロナウイルス感染症の予防又は治療用組成物。


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