タイトル: | 公開特許公報(A)_ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤 |
出願番号: | 2007125886 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/7032,A61P 43/00,A61P 3/10,C07H 13/08 |
松川 泰治 來住 明宣 森 耕平 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 JP 2008280291 公開特許公報(A) 20081120 2007125886 20070510 ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤 ユーハ味覚糖株式会社 390020189 柳野 隆生 100074561 森岡 則夫 100124925 関口 久由 100141874 松川 泰治 來住 明宣 森 耕平 松居 雄毅 山田 泰正 山田 一郎 A61K 31/7032 20060101AFI20081024BHJP A61P 43/00 20060101ALI20081024BHJP A61P 3/10 20060101ALI20081024BHJP C07H 13/08 20060101ALI20081024BHJP JPA61K31/7032A61P43/00 111A61P3/10C07H13/08 3 OL 15 4C057 4C086 4C057BB02 4C057DD03 4C057HH04 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA07 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZC02 4C086ZC35 本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤に関する。より詳しくは、本発明は、糖尿病等のジペプチジルペプチダーゼIV阻害薬対象疾患の予防及び治療において使用され得る新規なジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤に関する。 ジペプチジルペプチダーゼIV(以下、DPP4と略する)は、各種臓器及び組織に見られるポスト-プロリン/アラニン開裂セリンプロテアーゼである。DPP4はグルカゴン様ポリペプチド(GLP-1)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、グルカゴン様ポリペプチド(GLP-2)、ガストリン放出ポリペプチド(GRP)を初めとする多種類のペプチドホルモンに作用し、その活性を調節すると考えられている。 DPP4を阻害することによって改善される疾患(DPP4阻害薬対象疾患)に、高血糖、インスリン抵抗性、肥満、脂質障害、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、炎症性疾患等があると考えられることから、開発しようとするDPP4阻害剤には有意な臨床効果が期待される。 その中でも特に、インスリン分泌能低下とインスリン抵抗性を原因とする糖尿病については、その効果も確認されてきている。 糖尿病は高血糖が続くことによって血管が徐々に障害を受けた結果、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症に代表される合併症を誘発し、さらには動脈硬化症発症のリスクを上昇させる。近年、激増する糖尿病はII型に分類されるものであり、本来持っていた「インスリン分泌能」と「インスリン感受性」がストレス、肥満、運動不足によって、いずれか又はいずれもが損なわれるという、いわば「生活習慣病」である。 II型糖尿病の特徴としてインスリン抵抗性を発現することに加えて、それを補正するほどのインスリン分泌が出来ない相対的な不足状態や絶対的な欠乏が無いことが挙げられる。そのためII型糖尿病患者を中心に、インスリン分泌促進薬やインスリン抵抗性改善薬が経口糖尿病薬として開発されてきた。 インスリン分泌薬はその即効性の差からスルホニルウレア薬とメグリチニド薬があるが、これらはいずれもインスリン分泌細胞であるβ細胞に作用し、血糖非依存的にインスリンを分泌させる。一方、インスリン感受性低下(抵抗性)改善薬としては、ビグアナイド薬とチアゾリジン誘導体がある。どちらも詳細な作用機構は分かっていないが、ビグアナイド薬の血糖降下作用は肝からのブドウ糖放出抑制と肝糖新生抑制によって主にもたらされる。チアゾリジン誘導体の血糖降下作用は、筋肉、脂肪組織に作用し、ブドウ糖の取り込みを促進することによる。またその他の薬剤として軽症の糖尿病患者を対象に、食後のインスリン遅延過大分泌に合わせる様に食後高血糖を遅延させるα-グルコシダーゼ阻害薬がある。これは、糖質分解酵素(主にα-アミラーゼとα-グルコシダーゼ)の阻害剤である。 以上の薬剤は食後高血糖を始め、糖化ヘモグロビン値、空腹時血糖値等、糖尿病の指標となる血中パラメーターに改善が見られ、効果的なものとされている(例えば非特許文献1,2,3,4,5)。 しかしながら、これまでに開発された経口糖尿病薬は、高血糖状態が引き起こすとされる合併症へ進展しないように、高血糖状態をいかにして抑えるかということを目的としたものであり、根本的な原因の一つである「インスリン分泌能」の改善には全く寄与しないと考えられる。インスリン分泌促進薬では、長期にわたる分泌細胞の刺激によって、分泌細胞の疲弊やアポトーシスの可能性があり、分泌能の減少を早めているとも考えられている。また、血糖非依存的な降下を示すことに由来する低血糖の問題がある。また、どれにも共通して、胃腸・肝・腎・消化器障害等の副作用があり、その使用には注意を要する。 また、糖尿病予防としての機能性素材に、グァバ茶、クワの葉、難消化性デキストリン等がある。糖質分解酵素阻害や糖輸送体阻害による食後血糖上昇抑制が主な効果であるが、糖尿病予防に有効な報告例は特にない。 一方これまでの経口糖尿病薬に対し、近年、新しい経口糖尿病薬が開発されつつある(例えば特許文献1,2)。摂食後のインスリン分泌は、GLP-1やGIPの消化管ホルモン「インクレチン」によってその50〜70%が誘導される。インクレチンはグルコース依存的なインスリン分泌を促進するため、高濃度になっても低血糖が起こる確率は、非常に低いとされる。さらにインクレチンはインスリン分泌刺激以外に、グルカゴンの分泌抑制、胃排泄の抑制、膵β細胞の保護や増殖作用、摂食抑制作用を持つ多機能性ホルモンであり、糖尿病治療から見て優れた性質を持っている。しかしインクレチンは半減期が数分であり、分泌されたほとんどのインクレチンは分解されるため、インクレチンの機能は正常人でさえも、そのほんの一部でインスリン分泌を担っていると考えられる。 そこで、インクレチンの安定性を向上させる目的で「DPP4阻害剤」が注目されつつある。例えば、人及びモデル動物で確認されたDPP4阻害剤の薬理効果には、空腹時及び食後血糖値の減少、糖化ヘモグロビン値の減少、グルカゴンの分泌抑制があり(例えば非特許文献6,7,8,9)、さらに糖尿病発症マウスでは、β細胞組織の肥大化、インスリン分泌量の増大やグルコースに対する応答性の改善等、β細胞の保護や増殖を示す知見も得られている(例えば非特許文献10)。また、DPP4阻害活性を有するチーズ由来のペプチドの報告がある(例えば特許文献3)。しかしながら、公知の阻害剤であるディプロチンAに比べるといずれのDPP4阻害剤も阻害活性は有意に低いという問題があるため、所望の効果を奏するには大量のDPP4阻害剤を投与しなければならないという問題が考えられる。特開2006−273873号公報特表2005−526811号公報特開2007−39424号公報小坂樹徳ほか;薬理と臨床7;669頁(1997)Chiasson JL et al(1998);Diabetes Care 21;1720-1725Chiasson JL et al(2002);Lancet 359;2072-2077Hoffmann J,Spengler M(1994);Diabetes Care. 17(6);561-566Lebovitz HE et al(2001);J. Clin. Endocrinol. Metab. 86(1);280-288.Aschner P, Kipnes MS et al(2006);Diabetes Care Dec;29(12):2632-2637Herman GA, Bergman A et al(2006);J Clin Endocrinol Metab. Nov;91(11):4612-4619.Ristic S, Byiers S et al(2005);Diabetes Obes Metab. Nov;7(6):692-698.Mari A, Sallas WM et al J(2005);Clin Endocrinol Metab. Aug;90(8):4888-4894.Mu J, Woods J et al(2006) Diabetes Jun;55(6):1695-1704 従って、本発明の目的は、インスリン分泌能を改善する可能性があり、しかも安全性が高く日常摂取可能なDPP4阻害剤を提供することにある。 本発明者らは安全性と日常摂取の観点から、食品素材からのエキスを題材に、DPP4の阻害活性をスクリーニングした結果、その代表的なものとしてローズレッドペタル(Rosa gallica)に活性物質があることを見出し、各種クロマトグラフィによる活性物質を単離精製し、同定することで、本発明を完成させた。 即ち、本発明の要旨は、(1) 加水分解型タンニンを含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、(2) 加水分解型タンニンがバロネオイル基を有する、前記(1)記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、(3) 加水分解型タンニンが式(1):で表されるルゴシンA又は式(2):で表されるイウゲニフロリンD2、或いはこれらの薬理学的に許容され得る塩、水和物、又は半水和物である、前記(2)記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤に関する。 糖尿病発症の原因であるインスリン分泌能低下とインスリン抵抗性のいずれか、あるいは両方を改善することが、真の意味のII型糖尿病の治療であるといえる。また糖尿病は「生活習慣病」と称されるように、誰もがかかりうる可能性があるため、治療と同時に予防が今後の社会において重要であると考えられる。 これに対して、本発明のDPP4阻害剤は、公知の阻害剤と同程度の高い阻害活性を示す上に安全性についても優れているため、本発明のDPP4阻害剤を用いることで、インクレチンのβ細胞保護や増殖作用を促進して、哺乳動物における糖尿病等のDPP4阻害薬対象疾患の予防・治療に、特に予防剤として顕著な効果が奏される。 本発明は、加水分解型タンニンを含有するDPP4阻害剤に関する。 前記加水分解型タンニンとは、ポリアルコールとフェノールカルボン酸とがエステル結合したもので、酸又はアルカリ、そして酵素によって加水分解されるものである。加水分解型タンニンとしては、例えば、式(1):で表されるルゴシンA(Rugosin A)、式(2):で表されるイウゲニフロリンD2(Eugeniflorin D2)、1,4,6−トリ−O−ガロイル−β−D−グルコース(1,2,4,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucose)、1,2,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(1,2,4,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucose)、2,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(2,3,4,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucose)、1,2,3,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(1,2,3,6-tetra-O-galloyl-β-D-glucose)、1,2,3,4,6−ペンタ−O−ガロイル−β−D−グルコース(1,2,3,4,6-penta-O-galloyl-β-D-glucose)、ステノフィラニンA(Stenophyllanin A)、ステノフィラニンB(Stenophyllanin B)等が挙げられる。中でも、阻害活性が顕著である点から、バロネオイル基(valoneoyl group)を有する加水分解型タンニンが好ましく、ルゴシンA及びイウゲニフロリンD2がより好ましい。前記バロネオイル基は、1個以上であればよく、特に限定はない。 また、前記化合物の薬理学的に許容され得る塩、水和物、又は半水和物等も加水分解型タンニンに含まれる。 前記加水分解型タンニンは、化学合成したり、加水分解型タンニン類を含有する植物体から単離精製することで得ることができるが、経済性に優れるという観点から、植物体から単離精製することが好ましい。 前記植物体としては、ローズレッドペタル、アレチニシキソウ(学名Euphorbia prostrate Ait)、コニシキソウ(学名Euphorbia supina)、タチバナアデク(学名Eugenia uniflora L)、パプリカ、キャッツクロー、クルミ類、グレイガム(Grey Gum, 学名Eucalyptus cypellocarpa)等が挙げられる。中でも、抽出し易い観点から、ルゴシンAの単離には、ローズレッドペタルの他にアレチニシキソウ、コニシキソウ、イウゲニフロリンD2の単離には、タチバナアデクを用いることが好ましい。なお、他の加水分解型タンニンも、前記植物体に含まれている。前記植物体からの加水分解型タンニンの抽出方法としては、例えば、Chen L, Chen R et al(1992):Zhongguo Zhong Yao Za Zhi. Apr;17(4) 225-226, 255-256、Yamasaki T, Sato M et al(2002): J Nat Toxins. Aug;11(3) 165-171、Lee MH, Chiou JF et al(2000): Cancer Lett. Jun 30;154(2) 131-136等に記載の公知の方法を用いればよい。 例えば、連続式、還流式、バッチ式、浸漬式、超音波処理等の方法で常法により任意の温度・時間で植物体からの抽出処理を行うことができる。具体的には、前記植物体をミキサー等で破砕処理し、抽出溶媒に室温で1〜3日間の浸漬、抽出溶媒の煮沸温度で1〜5時間還流しながら、あるいは抽出溶媒中での短時間の超音波処理をして、抽出を行う。その後、抽出液から破砕残渣を取り除き、減圧又は限外濾過により抽出液を濃縮する。さらに必要に応じて溶媒を完全に除去して乾固するか凍結乾燥を行ってもよい。また、破砕残渣は取り除かずに濃縮等の処理を行ってもよい。 抽出に用いる植物体の部位としては、種子、葉、根、茎等いずれも使用することができる。 抽出に用いる溶媒としては、水及び/又は有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を混合して用いてもよく、またこれらと水の混合溶媒としてもよい。中でもDPP4阻害作用を有する抽出物を効率よく得ることができるという観点から、エタノールで抽出処理することが好ましい。 このようにして得られた抽出物からDPP4阻害作用を有する画分を精製するために、分画を行う。 前記分画物を得るためには、前記抽出物から所望のDPP4阻害作用の少ない画分を効率よく除去できる方法を用いればよく、例えば、液液抽出法、分配クロマトグラフィ法、吸着クロマトグラフィ法、分子排斥クロマトグラフィ法、イオン交換クロマトグラフィ法等が挙げられるが、中でも、精製物を得るためには、上記抽出物を吸着分配型充填担体、ゲル濾過担体等を充填したカラムクロマトグラフィ等で分画する方法を用いることが好ましい。 例えば、ローズレッドペタルからルゴシンAを単離精製する場合には、植物体を粉砕した後、DPP4阻害活性の強いエキスとしてエタノール抽出をし、酢酸エチルと水によって層分配を行い、阻害活性のある酢酸エチル層を得る。酢酸エチル層を順相及び逆相オープンカラム法、C18カラム、C30カラム、フェニルカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィによって単離精製することができる。 前記のようにして単離精製された分画物は加水分解型タンニンを含むものであるが、抽出に用いた溶媒を乾燥させて乾固した固体状物としてもよい。また、本発明のDPP4阻害剤としては、所望の阻害活性を有するのであれば、前記のように植物体からの抽出物(混合物)をそのまま用いてもよいし、前記分画物どうしを混合したものを用いてもよい。 前記のように得られる加水分解型タンニンは、DPP4阻害活性を有する。中でもルゴシンA、イウゲニフロリンD2は、DPP4阻害活性が強力なことで知られるディプロチンAと比べても遜色ない阻害活性効果を示す。 また、前記加水分解型タンニンは、キャッツクロー、パプリカ等の古くから食用又は薬用に使用されている植物等に含有されているものであるため、これらの加水分解型タンニンを含有する本発明のDPP4阻害剤は安全性の点でも優れたものである。 本発明のDPP4阻害剤は、製剤学的に許容される錠剤、丸剤、カプセル剤、細粒剤等の固体組成物として、また乳濁剤、溶液剤、懸濁剤等の液体組成物として経口摂取が可能である。また、非経口摂取についても製薬学的に許容されるものであれば、投与することが可能である。 以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 (実施例1) DPP4阻害剤の調製 スクリーニングに用いた11種類の加水分解型タンニン類を表1に示す。 これらの加水分解型タンニン類は、以下のようにして得た。 ルゴシンA(T11)は、ローズレッドペタルを粉砕した後、DPP4阻害活性の強いエキスとしてエタノール抽出をし、酢酸エチルと水によって層分配を行い、阻害活性のある酢酸エチル層を得る。酢酸エチル層を順相及び逆相オープンカラム法、C18カラム、C30カラム、フェニルカラムを用いた逆相高速液体クロマトグラフィによって単離精製した。 テリマグランディンI(T1)、ペヂュンクラジン(T2)、ステノフィラニンA、B(T9、T10)はクルミ種子のエタノール抽出液から、酢酸エチルと水によって層分配を行い、酢酸エチル層をHPLCによって単離精製した。なお、HPLCに用いたカラムは、「ダイアイオンHP−20(Diaion HP-20)」(三菱化成社製)オープンカラム法、C18カラム、C30カラム、フェニルカラムをこの順番に用いた。 1,4,6−トリ−O−ガロイル−β−D−グルコース(T3)、1,2,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(T4)、2,3,4,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(T5)、1,2,3,6−テトラ−O−ガロイル−β−D−グルコース(T6)、1,2,3,4,6−ペンタ−O−ガロイル−β−D−グルコース(T7)、イウゲニフロリンD2(T8)は、グレイガム葉のエタノールエキスから酢酸エチルと水によって層分配を行い、さらに、水層を1−ブタノールと層分配を行った。得られた酢酸エチル層と1−ブタノール層を「ダイアイオンHP−20」オープンカラム法、C18カラム、C30カラム、フェニルカラムを用いたHPLCによって単離精製した。 なお、各加水分解型タンニンの同定は、NMR、MS等を用いて各種物質のスペクトルデータとの比較を行い、さらに加水分解等の化学的手法を用いて行った。 表1に示す11種類の加水分解型タンニン類の100μM溶液を、メタノールにて調製した。25mM トリス-塩酸緩衝液を15μl、緩衝液で希釈したヒト由来のDPP4溶液2ng/μl(R&D システムズ社)を5μl、100μMタンニン類又はメタノールを5μl加え、室温5分放置した。25mMトリス−塩酸緩衝液で調製した40μMグリシルプロリン-4-メチルクマリル-7-アミド(ペプチド研究所)を25μl加えて、反応を開始した。検出は、DPP4によって遊離される7-アミノ-4-メチルクマリンを、96ウェルプレート対応蛍光検出器(フルオロスキャンアセント:サーモエレクトロン社)で測定した。なお、励起波長は390nm、測定波長は460nmで行った。 活性は5分間の反応後に測定された蛍光値から、基質のみを含む場合に示す蛍光値を差し引いたものとした。阻害率の計算は、それぞれのタンニン類を含む場合の活性値とタンニン類を含まない場合の活性値の比を計算し、その値を1から引いたものに100をかけた。 その結果。10μMでイウゲニフロリンD2は50.9%、ルゴシンAは54.9%の阻害率を示した。 これらの結果を表2に示す。またスクリーニング結果を図1に示す。 なお、本発明において、阻害実験は他に見られる阻害実験と同様であるが、生成物が蛍光発色性のため、蛍光値を求め、阻害率で評価した。 (実施例2) 実施例1で活性の見られたイウゲニフロリンD2とルゴシンAについてIC50(50%阻害濃度)を求め、DPP4阻害物質として公知であるディプロチンAと比較した。IC50測定の実験方法は実施例1とほぼ同じであるが、ルゴシンAは終濃度40、10、1μM、イウゲニフロリンD2は終濃度50、10、2.5μM、ディプロチンAは終濃度10、4、1μMの阻害率を求め、数値計算により求めた。その結果、阻害効果はディプロチンA>ルゴシンA>イウゲニフロリンD2の順で強かったが、ルゴシンAはディプロチンAに比類する阻害効果を持っていることが分かった。IC50を計算した結果、ディプロチンA:4.5μM、ルゴシンA:6.3μM、イウゲニフロリンD2:13.3μMであった。これらの結果を表2に示す。 本発明は、前記DPP4阻害剤を含有する糖尿病等のDPP4阻害薬対象疾患用予防及び/又は治療剤として好適に使用することができる。また、DPP4阻害薬対象疾患としては、糖尿病以外にも、高血糖、インスリン抵抗性、肥満、脂質障害、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、炎症性疾患等が挙げられる。 また、本発明のDPP4阻害剤は、食品・医薬品等の組成物に、公知の技術を用いて好適に配合することができる。図1は、実施例1で用いた11種類の加水分解型タンニン類の化合物のDPP4阻害活性を示すグラフである。各バーに示される百分率は、阻害率を示す。図2は、ディプロチンA、ルゴシンA、イウゲニフロリンD2のそれぞれの濃度での阻害率を示すグラフである。濃度片対数表示によって直線プロットを記す。 加水分解型タンニンを含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。 加水分解型タンニンがバロネオイル基を有する、請求項1記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。 加水分解型タンニンが式(1):で表されるルゴシンA又は式(2):で表されるイウゲニフロリンD2である、請求項2記載のジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。 【課題】インスリン分泌能を改善する可能性があり、しかも安全性が高く日常摂取可能なDPP4阻害剤を提供すること。【解決手段】加水分解型タンニンを含有するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤であって、加水分解型タンニンがバロネオイル基を有する前記ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、並びに加水分解型タンニンが、特定の構造のルゴシンA又は特定の構造のイウゲニフロリンD2である前記ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤。【効果】該DPP4阻害剤は、公知の阻害剤と同程度の高い阻害活性を示す上に安全性についても優れているため、これを用いることで、インクレチンのβ細胞保護や増殖作用を促進して、哺乳動物における糖尿病等のDPP4阻害薬対象疾患の予防・治療に、特に予防剤として顕著な効果が奏される。【選択図】なし