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タイトル:公開特許公報(A)_ヒドロキシアミド基を有するポリイミド、その前駆体、これらを用いた感光性樹脂組成物、およびこれらの硬化物
出願番号:2007123971
年次:2008
IPC分類:C07D 307/89,G03F 7/023,H01L 21/027,C08G 73/22


特許情報キャッシュ

長谷川 匡俊 JP 2008280261 公開特許公報(A) 20081120 2007123971 20070508 ヒドロキシアミド基を有するポリイミド、その前駆体、これらを用いた感光性樹脂組成物、およびこれらの硬化物 日本化薬株式会社 000004086 長谷川 匡俊 C07D 307/89 20060101AFI20081024BHJP G03F 7/023 20060101ALI20081024BHJP H01L 21/027 20060101ALI20081024BHJP C08G 73/22 20060101ALI20081024BHJP JPC07D307/89 ZG03F7/023H01L21/30 502RC08G73/22 14 OL 25 2H025 4C037 4J043 2H025AB16 2H025AC01 2H025AD03 2H025BE01 2H025CB25 2H025FA17 2H025FA29 4C037RA11 4J043QB31 4J043RA05 4J043RA52 4J043SA06 4J043SA54 4J043SB01 4J043TA03 4J043TA22 4J043TB01 4J043UA131 4J043UA151 4J043UA152 4J043UA672 4J043UB051 4J043UB121 4J043UB122 4J043UB222 4J043UB302 4J043UB401 4J043VA041 4J043YA06 4J043ZA14 4J043ZA17 4J043ZA31 4J043ZA46 4J043ZB22 本発明は高いh線(405nm)またはg線(435nm)透過率を有するヒドロキシアミド基含有ポリイミド膜またはその前駆体膜中にジアゾナフトキノン系感光剤を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物、およびこれをパターン露光後、アルカリ現像・洗浄・加熱脱水環化反応工程を経て得られる、半導体素子の保護膜として有用なポリベンゾオキサゾールイミド膜とその微細パターンに関する。 近年電子機器における耐熱絶縁材料として、ポリイミドの重要性が益々高まっている。ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つことから、フレキシブルプリント配線回路(FPC)用基板、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、チップオンフィルム(COF)用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な用途に現在広く利用されている。 ポリイミド膜は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物をN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒中無触媒で等モル重付加反応させて溶媒可溶性の前駆体(ポリアミド酸)を重合し、この溶液(ワニス)を溶液キャスト製膜・乾燥・加熱脱水閉環反応(イミド化反応)することで容易に製造することができる。 このようにポリイミド膜は、その簡便な製造工程加え、膜純度が極めて高いことから、電気特性の低下を招く恐れのある残留ハロゲンや金属イオン等を嫌う半導体用途に適している。また入手可能な様々なモノマーを用いて物性改良を行いやすく、近年益々多様化する要求特性に対応しやすいという点においても有利である。 また、半導体チップ表面の保護コーティング材料として、エポキシ樹脂等の封止材の硬化収縮からのチップの保護、ハンダリフロー工程における熱衝撃および封止材料の急激な熱膨張ストレスからのチップの保護、チップ上に無機パッシベーション膜を形成した場合そのクラックの防止、封止材中の無機充填剤に含まれる微量なウランやトリウムからのα線遮蔽によるソフトエラー防止、多層配線回路の層間絶縁、平坦化による配線の断線防止等を目的として現在耐熱性のポリイミドが使用されている。 保護コーティング材はボンディングパッド部にプラズマエッチングやアルカリエッチングによりビアホール形成等の微細加工が施される。プラズマエッチング等の乾式法では一般に解像度に優れているが、設備面でコストがかかるため、アルカリ水溶液等を用いた湿式エッチングがより簡便である。 従来ポリイミド膜の微細加工は、ポリイミド膜上にフォトレジスト層を形成し、現像により露出した部分をヒドラジンや強アルカリでエッチングして行っていたが、ポリイミドあるいはその前駆体自身に感光性能を付与した感光性ポリイミドを用いることで、ポリイミドの微細加工工程が大幅に短縮され、半導体製造速度と歩留率を飛躍的に高めることが可能となる。 この目的のため、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸膜中にジアゾナフトキノン系感光剤を分散させたアルカリ現像可能なポジ型感光性ポリイミドが検討されている。しかしながら、ポリアミド酸中のカルボキシル基はpKa値が4〜5と低いため、半導体製造工程で現像液として通常使用されているテトラアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に対してポリアミド酸のアルカリ溶解性が元々高すぎるために露光部と未露光部との間の十分な溶解度差が得られにくく、高解像度の微細加工には適さないといった問題が指摘されている。 近年、高解像度化およびパターン形状の精密制御の観点から上記のようにアルカリ現像に不向きなポリイミド前駆体の代わりに、適度なpKa値(10程度)を有するフェノール性ヒドロキシ基含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を用いてこれとジアゾナフトキノン系感光剤(以下DNQと称する)を組み合わせたポジ型感光性ポリベンゾオキサゾールシステムが注目されている。 ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミド(以下PHAと称する)の熱閉環反応により得られるポリベンゾオキサゾール(以下PBOと称する)はポリイミドと同等な耐熱性を有するのに加え、ポリイミドより優れた低吸水性を有しているという点で、半導体保護コーティング材料として非常に優れた材料である。 しかしながら、PBO前駆体であるPHAの製造工程はポリイミド前駆体であるポリアミド酸系ほど単純ではない。ポリアミド酸系ではN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等アミド系溶媒中、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの等モル重付加反応により、無触媒・室温で極めて容易に高重合体が得られるのに対して、PHA系ではジカルボン酸をまず活性アシルとし、これをビス(o−アミノフェノール)と加熱条件で重縮合し、更にPHAの単離・生成工程を必要とするため重合工程がより煩雑である。 更にビス(o−アミノフェノール)は工業的に入手可能なものが事実上3,3’−ジヒドロキシベンジジン(HAB)か2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)に限られており、モノマーの選択範囲の広いポリイミド系とは対照的に、益々多様化する半導体用材料の要求特性に対して対応しにくいのが現状である。 また、PBO前駆体であるPHAは多くの場合、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸よりも溶媒に対する溶解性が低い。これは、ポリアミド酸が溶媒和に有利なカルボキシル基を側鎖に有し、更に重合過程で生ずる主鎖のアミド結合がパラ/メタランダム連鎖になり、溶媒に溶けやすい構造であるのに対して、PHA系では側鎖が溶媒和に不利なヒドロキシ基であり、アミド結合もランダム連鎖にはならないためである。 上記のように感光性ポリイミド系と感光性PBO系では一長一短があるが、もしポリイミド系の利点である重合工程の容易さおよび物性改善のしやすさ(入手可能なモノマーの多様さ)と、PBO系の利点である高解像度加工のしやすさを共に有する耐熱材料があれば、上記産業分野において極めて有益な材料を提供しうるが、そのような感光性耐熱材料は殆ど知られていないのが現状である。 例えば下式(8)で表されるフェノール性ヒドロキシ基含有ポリイミドとDNQを組み合わせた感光性樹脂組成物を用いることで鮮明なポジ型パターンを形成可能であることが知られている(例えば非特許文献1および特許文献1参照)。(式(8)中、Xは4価の芳香族基を表す。) 式(8)で表されるフェノール性OH基含有ポリイミドはビス(o−アミノフェノール)をジアミン成分として用い、テトラカルボン酸二無水物と等モル重付加反応してまずOH基含有ポリアミド酸を重合した後これを熱イミド化反応させて製造される。しかしながらこのフェノール性OH基含有ポリイミドは、通常のPBO前駆体と異なり、アルカリ現像によりポジ型パターン形成後これを加熱処理してもフェノール性OH基は消滅せずに残存することになる。このため例えばバッファーコート膜等の半導体用途のような、集積回路の永久保護膜として長期にわたって使用される用途においては、フェノール性OH基の存在が引き金となりイオンマイグレーション、吸水率の増加等の問題の他、予期せぬ様々な不具合を生じる恐れがある。 また、下式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いて下式(10)で表されるポリイミド前駆体を重合し、これを用いてポジ型パターンを形成する技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。(式(10)中、Rは2価の芳香族基を表す。) しかしながら、式(9)で表されるテトラカルボン酸二無水物はフェノール性OH基の部分的な酸化により着色しやすく、これを用いて得られるポリイミド前駆体およびポリイミドのキャストフィルムはしばしば著しく着色し、g線透過率の低下(即ち感度の低下)といった好ましくない結果をもたらす。 また、半導体集積回路のバッファーコート膜用途では熱硬化後のガラス転移温度が300℃以上であることが好ましいが、式(10)で表されるポリイミド前駆体を加熱硬化して得られるフィルムでは、分子間力を弱める作用を持つトリフルオロメチル基を有するため、十分高いガラス転移温度が得られない恐れがある。 もしBAHF以外のビス(o−アミノフェノール)を用いて感光性フィルムの着色を抑制することが可能で、しかも加熱硬化後のフィルムのガラス転移温度が300℃以上となるフェノール性OH基含有ポリイミド前駆体あるいはポリイミド系が得られれば上記産業分野に有益な材料を提供しうるが、そのような材料は知られていない。Journal of Applied Polymer Science,53巻,1513−1524(1994)WO01/034679号公報特開平11−100503号公報本発明はh線(405nm)またはg線(435nm)において高い透過率を有するヒドロキシアミド基含有ポリイミドまたはその前駆体およびジアゾナフトキノン系感光剤を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物、およびこれをパターン露光後、アルカリ現像・洗浄・加熱脱水環化反応工程を経て得られる、半導体素子の保護膜として有用なポリベンゾオキサゾールイミドを提供するものである。以上の問題を鑑み、鋭意研究を積み重ねた結果、下記式(3)で表されるヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体または下式(6)で表されるヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびジアゾナフトキノン系感光剤を含有する感光性樹脂組成物は優れた感光特性を示し、更にこれを加熱硬化して得られた下記式(7)で表されるポリベンゾオキサゾールイミドは300℃以上の高いガラス転移温度を有することから、半導体素子の集積回路の保護膜として有益な材料となることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明の要旨は以下に示すものである。1.下式(1)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物。2.下式(2)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物。3.下式(3): で表される反復単位を含有するヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体。(式(3)中、Aは下式(4)または(5)で表され、Bは2価の芳香族基または脂肪族基を表す。)4.固有粘度が0.4dL/g以上である、要旨3に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体。5.下式(6): で表される反復単位を含有するヒドロキシアミド基含有ポリイミド。(式(6)中、AおよびBは式(3)におけるのと同じ意味を表す。)6.固有粘度が0.4dL/g以上である、要旨5に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド。7.435nm(g線)および405nm(h線)におけるキャストフィルム(膜厚10μm)の光透過率がそれぞれ50%以上および10%以上である請求項5または6に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド。8.下式(7): で表される反復単位を含有するポリベンゾオキサゾールイミド。(式(7)中、AおよびBは式(3)におけるのと同じ意味を表す。)9.300℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とする、要旨8に記載のポリベンゾオキサゾールイミド。10.要旨3または4に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を加熱あるいは脱水環化試薬を用いてイミド化反応させることを特徴とする要旨5〜7のいずれかに記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドの製造方法。11.要旨3または4に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体あるいは、要旨5〜7のいずれかに1項に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドを加熱あるいは脱水環化試薬を用いて脱水閉環反応することを特徴とする要旨8または9に記載のポリベンゾオキサゾールイミドの製造方法。12.要旨3または4のいずれかに記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体あるいは、要旨5〜7のいずれか1項に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびジアゾナフトキノン系感光剤を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物。13.要旨12に記載の感光性樹脂組成物からなる膜をパターン露光およびアルカリ現像後、加熱あるいは脱水環化試薬で処理して得られることを特徴とするポリベンゾオキサゾールイミドの微細パターン。14.要旨8または9に記載のポリベンゾオキサゾールイミドを含有してなる半導体素子の保護膜。本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物はジアミンと高い重合反応性を示し、高重合度のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体およびポリイミドを与える。これらの樹脂およびジアゾナフトキノン系感光剤を含有する本発明の感光性樹脂組成物は高解像度のポジ型パターン形成を可能にし、これを加熱硬化(脱水環化反応)して得られるポリベンゾオキサゾールイミドは300℃以上の高ガラス転移温度を有することから、集積回路のバッファーコート膜として極めて有用である。<分子設計> まず本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびその前駆体を製造するために用いられるテトラカルボン酸二無水物モノマーについて説明する。本発明によれば、下記式(1)または(2)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を使用することで、上記要求特性を満たす感光材料を得ることができる。 上記テトラカルボン酸二無水物は、その原料であるビス(o−アミノフェノール)として従来のBAHFを用いる代わりに、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下ABPSと称する)または3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(以下ADPEと称する)を用い、トリメリット酸無水物と反応させて合成される。本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物は、これらのビス(o−アミノフェノール)を使用することで、BAHFを用いた場合よりも着色の少ないテトラカルボン酸二無水物を製造することができる。着色が少ないことで、これを用いて得られる本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびその前駆体フィルムは通常使用される照射光源である高圧水銀の輝線即ちg線(435nm)、h線(405nm)またはi線(365nm)において高い透過率を有する。透過率が低いと照射紫外線が膜中に分散された感光剤に効率的に吸収されず、パターン形成に必要な紫外線照射時間の著しい増加(感度の低下)を招く恐れがある。 本発明の特徴はヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を溶液中、温和な条件で加熱処理することで、ヒドロキシアミド基に影響を与えることなく(環化させずに)、熱イミド化のみ行ってヒドロキシアミド基含有ポリイミドを製造することができ、更にポジ型パターン形成後より高温で熱処理することでヒドロキシアミド基をベンザオキサゾール環へ完全に変換することができるという点にある。このように最終的にはフェノール性OH基を完全に消失させることができるため、半導体素子の保護膜として適用した際に、イオンマイグレーションや吸水が原因となって引き起こされる予期せぬ深刻な問題を回避することができる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドとDNQを組み合わせ、溶液キャスト法により感光性樹脂組成物膜を作製する場合、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドはDMAcやNMP等の溶媒に対して高い溶解性且つワニスの安定性(ゲル化等を引き起こさないこと)を有する必要がある。一般にポリイミドはイミド基同士の強い分子間力に由来して溶媒溶解性が乏しいが、本発明のポリイミドは、使用したビス(o−アミノフェノール)中のスルホニル基またはエーテル基の存在により高い溶媒溶解性を保持している。特にABPS中のスルホニル基の存在は溶媒溶解性の改善に加えて、加熱硬化後に得られるポリベンゾオキサゾールイミドのガラス転移温度の向上にも寄与する。またADPE中のエーテル基はフィルムの靭性を改善するのに極めて有効である。<ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法> 該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。具体的にはその原料ABPSまたはADPEとトリメリット酸無水物誘導体を用いてアミド化反応を行う。 以下にABPSを用いた場合について説明する。 この際適用できる方法として、ABPSのアミノ基とトリメリット酸無水物のカルボキシル基を高温で直接脱水反応させるか、亜燐酸トリフェニル/ピリジンやジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いてアミド化する方法、トリメリット酸無水物のカルボキシル基を酸ハライドに変換し、これとABPSとを脱酸剤(塩基)の存在下で反応させる方法(酸ハライド法)等が挙げられる。上述の方法の中でも酸ハライド法が経済性、反応性の点で好ましく適用できる。 酸ハライド法を適用する場合、トリメリット酸無水物クロリドが好適に用いられる。これとABPSを反応させる際に、反応の選択性を高める意味でシリル化剤を用いることもできる。即ちABPS中のヒドロキシル基への反応(エステル化反応)を避けるためABPS中のアミノ基およびヒドロキシル基の両方をシリル化剤を用いてシリル化することで、シリル化ヒドロキシル基は反応性を失い、アミド化反応を選択的に行うことができる。通常、−20〜0℃のような低温で反応を行うことで実質的にアミド化反応を選択的に行うことができる。 次に該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の酸ハライド法による合成方法について具体的に説明するが、該合成方法は以下の説明に特に限定されない。まずトリメリット酸無水物クロリド(Amol)を溶媒に溶解し、セプタムキャップで密栓する。この溶液を、ABPS(0.5×Amol)および適当量の脱酸剤を同一溶媒に溶解したものにシリンジまたは滴下ロートにてゆっくりと滴下する。滴下終了後、反応混合物を3時間撹拌する。合成に用いた溶媒に対する目的物の溶解度が高い場合は、反応混合物からまず生成した塩酸塩を濾別し、濾液をエバポレーターで溶媒留去し、20〜100℃で24時間真空乾燥して粉末状の粗生成物を得る。目的物の溶解度が低い場合には、目的物を濾別する。脱酸剤としてピリジンを用いた場合はピリジンの塩酸塩との混合物として析出するのでこれを大量の水で洗浄して塩酸塩のみ溶解除去する。次に一部洗浄工程で一部加水分解を受けた粗生成物を20〜100℃で真空乾燥する。このようにして得られた粗生成物を適当な溶媒で再結晶、洗浄、真空乾燥工程を経て重合に供することのできる高純度の該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物が得られる。 この反応の際、使用可能な溶媒としては、原料となるトリメリット酸無水物クロリドおよびABPSに対して不活性で且つ目的物を溶解するものであれば特に限定されないが、アセトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル等の非プロトン性溶媒、およびフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶媒が挙げられる。またこれらの溶媒を単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。反応試薬の溶解性、留去のしやすさの観点からアセトン、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンが好適に用いられる。 上記アミド化反応は、−20〜30℃で行われるが、副生成物を抑制するという観点から−20〜0℃で冷却しながら行うことが望ましい。反応温度が50℃よりも高いと一部副反応が起こり、収率が低下する恐れがあり、好ましくない。 該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を得る反応は、溶質濃度5〜50重量%の範囲で行われる。原料の溶解性、副反応の制御、沈殿の濾過工程を考慮して、好ましくは10〜40重量%の範囲で行われる。 反応に用いる脱酸剤としては、特に限定されないが、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が用いられる。反応により塩酸塩が生じず単離工程が簡略化されるという観点からプロピレンオキサイドが好適に用いられる。 反応により生成した沈殿物は、脱酸剤としてピリジンを使用した場合、水溶性のピリジン塩酸塩を含んでいる。この場合、例えば溶媒としてテトラヒドロフランを用いた場合、ピリジン塩酸塩は殆どその溶媒に溶解しないため、反応溶液を濾過するだけで、塩酸塩をほぼ完全に分離することができる。通常、目的物の溶解度が高い場合、目的物は濾液中に溶解しているので、濾液から溶媒を留去し、適当な溶媒から再結晶するだけで、高収率で十分高い純度の目的物が得られる。 例えば以上のようにABPSを使用し、本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物が得られるが、ABPSの代わりにADPEを使用すれば、上記と同様にして本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物が得られる。 一般に用いられているテトラカルボン酸二無水物は重合に使用する前に無水酢酸等の有機無水酸で処理するか加熱真空乾燥処理して、空気中の水分を吸湿してわずかに加水分解し開環した部分を完全に無水化する前処理がしばしば行われる。しかしながら本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の場合、無水酢酸で処理すると、反応条件によってはヒドロキシル基がアセチル化される恐れがあるため注意を要する。また高温で加熱するとヒドロキシアミド基のベンゾオキサゾール環への閉環反応だけでなく、ヒドロキシル基と酸無水物基との間の分子間エステル化反応等、好ましくない副反応が起こる恐れがあるため、100℃以上で加熱処理するべきではない。<ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体の製造方法> 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。具体的には以下の方法により製造される。まず1成分または他成分からなるジアミンを脱水した重合溶媒に溶解し、これに本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分を粉末まま徐々に添加し、メカニカルスターラーを用いて攪拌する。この際テトラカルボン酸二無水物の総量とジアミンの総量は実質的に等モルで仕込まれる。2種以上のテトラカルボン酸二無水物粉末を添加する際は酸二無水物粉末をあらかじめ混合した後溶液に添加しても、順次添加しても差し支えない。 以下、本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を製造する方法の好ましい具体例について述べる。まずジアミンを重合溶媒に溶解し、これに該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物成分粉末を徐々に添加し、メカニカルスターラーを用い、0〜100℃、好ましくは5〜60℃で0.5〜100時間好ましくは1〜50時間攪拌する。この際全モノマー濃度は1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%である。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体溶液を得ることができる。 ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体およびヒドロキシアミド基含有ポリイミドの製膜性および基板との接着性、これらの熱硬化(環化)物であるポリベンゾオキサゾールイミドの膜靭性の観点から、該ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体の重合度はできるだけ高いことが望ましいが、定性的に分子量の大きさを表す固有粘度値が0.4dL/g以上であれば製膜性、接着性、膜靭性に支障はない。固有粘度値がこの値を下回ると製膜性や膜靭性が急激に低下し、上記産業分野に適用不可となる重大な問題を生じる恐れがある。上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体の重合度が十分高くならず、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールイミド膜が脆弱になる恐れがあり、好ましくない。またこの範囲より高濃度で重合を行うと、モノマーや生成するポリマーの溶解が不十分となり、重合が均一に進行しなくなる恐れがある。 本発明において重合に使用する全テトラカルボン酸二無水物中、本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の含有率は、ポジ型パターン形成の観点から5〜100mol%の範囲であり、より好ましくは30〜100mol%である。更に好ましくは50〜100mol%の範囲である。5mol%以下であると、TMAH水溶液に対する溶解速度の著しい低下を招くか、または露光部と未露光部との間の溶解度差が制御不能となり、鮮明な微細パターンの形成が困難となる恐れがあり好ましくない。 ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合する際の反応性、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの溶媒溶解性、製膜性およびポリベンゾオキサゾールイミド膜の要求特性を損なわない範囲で、該ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物以外で部分的に使用可能なテトラカルボン酸二無水物として、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。共重合成分としてこれらを単独あるいは2種類以上用いてもよい。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を調製する際のジアミンとしては、芳香族ジアミンまたは脂肪族ジアミン等が挙げられる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合する際の反応性、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの溶媒溶解性、製膜性およびポリベンゾオキサゾールイミド膜の要求特性を損なわない範囲で使用可能な芳香族ジアミンとして、特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン等が例として挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合する際の反応性、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの溶媒溶解性、製膜性およびポリベンゾオキサゾールイミド膜の要求特性を損なわない範囲で使用可能な脂肪族ジアミンとして、特に限定されないが、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。 使用可能な重合溶媒としては特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−プチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、P−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルプ、プチルセロソルプ、2−メチルセロソルプアセテート、エチルセロソルプアセテート、プチルセロソルプアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジプチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソプチルケトン、ジイソプチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども前記溶媒に添加して使用できる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体は重合溶液(ワニス)をそのままあるいは適度に希釈し基板上に塗付・乾燥して得られるキャストフィルムおよびワニス中に感光剤等を添加・溶解しこれをキャスト製膜して得られる感光性樹脂組成物膜としての使用形態の他、ワニスを適度に希釈後、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し、粉末として単離することもできる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物中には感光剤の他、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、接着促進剤、湿熱安定化剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤、難燃剤等の添加物を加えることができる。<ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの製造方法> 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドは、上記の方法で得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体をヒドロキシアミド基に影響を与えず(残したまま)イミド化反応のみ行うことで製造することができる。これはヒドロキシアミド基のベンゾキサゾール環への熱環化反応に要する温度領域がイミド化反応よりも十分(100℃以上)高いためである。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドの使用形態は溶液(ワニス)、キャストフィルム、感光剤等を配合した感光性樹脂組成物膜の他、ワニスを適度に希釈後、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥して得られる粉末である。 まずヒドロキシアミド基含有ポリイミドワニスおよび粉末の製造方法について説明する。重合反応により得られた該ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体のワニスをそのままかあるいは溶媒で適度に希釈した後、これを窒素雰囲気中で加熱・還流することで、本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドワニスを容易に得ることができる。この際の還流温度は120〜220℃、還流時間は10分〜12時間であり、より好ましくは150〜190℃で1〜5時間である。この際、還流温度が120℃を下回るとイミド化を完結するために著しく長時間を要するため、生産性の点で採用されない。また220℃を越えるとイミド化だけでなく、残すべきヒドロキシアミド基までもが環化し始め、更に生成物が着色しやすくなるため好ましくない。還流温度および時間を制御して、適度にヒドロキシアミド基を環化させ、フェノール性OH基の含有率を制御することも可能である。イミド化反応の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することができる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドは、ポリイミド前駆体重合に通常使用される各種重合溶媒に対して極めて高い溶解性を有するため、上記熱イミド化反応後に沈殿することはなく、均一なワニスが得られる。 ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの製膜性および基板との接着性、これらの熱硬化(環化)物であるポリベンゾオキサゾールイミドの膜靭性の観点から、該ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの重合度はできるだけ高いことが望ましいが、固有粘度値が0.4dL/g以上であれば製膜性、接着性、膜靭性に支障はない。固有粘度値がこの値を下回ると製膜性や膜靭性が急激に低下し、上記産業分野に適用不可となる重大な問題を生じる恐れがある。 溶液中でのイミド化後、添加剤や副生成物および溶媒等を除去する目的で、上記のようにして得られたワニスを水やメタノール等の大量の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥し該ヒドロキシアミド基含有ポリイミドを粉末として単離することもできる。またこの粉末を上記の各種溶媒に再溶解して再度ワニスとすることもできる。 また上記イミド化反応は、熱的に行う代わりにヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体ワニス中にピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン触媒および無水酢酸等の有機無水酸脱水環化試薬を添加し、室温〜100℃で10分〜24時間攪拌することによって行うことも可能である。この際、上記の化学イミド化試薬の添加量等の反応条件を調節することで、イミド化率を制御することもできる。しかしながら反応条件によっては該ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体中のヒドロキシル基が無水酢酸と反応してアセチル化されるので、アセチル化を避けたい場合は化学イミド化より熱イミド化の方が好ましく採用されるが、ヒドロキシル基を部分的あるいは完全にアセチル化することを目的とする場合は、化学イミド化試薬の添加量等の反応条件調節することでアセチル化率を制御することも可能である。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドは、ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分とジアミン成分を溶媒中高温で反応(ワンポット重合)させることにより、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を単離することなく、一段階で重合することができる。重合反応温度は120〜220℃、還流時間は10分〜12時間であり、より好ましくは150〜190℃で1〜5時間である。この際、重合温度が120℃を下回ると重合を完結するために著しく長時間を要するため、生産性の点で採用されない。また220℃を越えると重合だけでなく、残すべきヒドロキシアミド基までもが環化し始め、更に生成物が着色しやすくなるため好ましくない。重合温度および時間を制御して、適度にヒドロキシアミド基を環化させ、フェノール性OH基の含有率を制御することも可能である。重合反応時の副生成物である水を共沸留去するために、トルエンやキシレン等を添加しても差し支えない。また触媒としてγ―ピコリン等の塩基を添加することもできる。 ワンポット重合に使用可能な溶媒は特に限定さないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好適な例として挙げられが、m?クレゾール等のフェノール系溶媒やNMP等のアミド系溶媒も使用可能である。ワンポット重合後、得られたワニス溶を水やメタノール等の大量の貧溶媒中に滴下・濾過しポリイミドを粉末として単離することができる。またその粉末を各種溶媒に再溶解してワニスとすることができる。 次にヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体のワニスを不溶性ポリイミドフィルム、ガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、180〜300℃、好ましくは200〜280℃で加熱することで本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルムを製造することができる。加熱条件としてイミド化の閉環反応を十分に行なうという観点から180℃以上、ヒドロキシアミド基の環化を抑えるという観点から300℃以下の温度が採用される。またイミド化は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化温度が高すぎなければ空気中で行っても差し支えない。 また上記ヒドロキシアミド基含有ポリイミドのワニスを上記基板上に流延・乾燥することで、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルムを作製することもできる。この際乾燥する温度は溶媒が完全に蒸発・除去されれば特に制限は無く、40〜300℃、好ましくは100〜280℃で乾燥される。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド膜中には感光剤の他、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、接着促進剤、湿熱安定化剤、光重合開始剤、増感剤、末端封止剤、架橋剤、難燃剤等の添加物を加えることができる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド膜は、膜厚10μmの435nm(g線)および405nm(h線)における光透過率はそれぞれ50%以上および10%以上である。<ポリベンゾオキサゾールイミドの製造方法> 次に本発明のポリベンゾオキサゾールイミドの製造方法について説明する。その使用形態はワニス、キャストフィルム、感光剤等を配合した感光性樹脂組成物膜の他、ワニスを適度に希釈後、大量の水やメタノール等の貧溶媒中に滴下・濾過・乾燥して得られる粉末である。 まずポリベンゾオキサゾールイミドフィルムの製造方法について説明する。1つの方法は本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を用いる方法である。即ちヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体ワニスを不溶性ポリイミドフィルム、ガラス、銅、アルミニウム、ステンレス、シリコン等の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体フィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、250〜400℃で、好ましくは270〜350℃で加熱することでイミド化とベンゾオキサゾール化が共に起こり本発明のポリベンゾオキサゾールイミドフィルムを製造することができる。この熱硬化(環化)工程は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、処理温度が高すぎなければ空気中で行っても差し支えない。 もう1つの方法は本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドを用いる方法である。即ちヒドロキシアミド基含有ポリイミドワニスを上記の基板上に流延し、オーブン中40〜180℃、好ましくは50〜150℃で乾燥する。得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルムを基板上で真空中、窒素等の不活性ガス中、あるいは空気中、250〜400℃で、好ましくは270〜350℃で加熱することでヒドロキシアミド基が完全にベンゾオキサゾール環へ変換され、ポリベンゾオキサゾールイミドフィルムが得られる。この熱硬化(環化)工程は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、処理温度が高すぎなければ空気中で行っても差し支えない。 また該ポリベンゾオキサゾールイミドは、該ヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびその前駆体のワニスを、180〜250℃で加熱還流することによっても得られる。その際、該ポリベンゾオキサゾールイミドがその溶媒に可溶である場合は均一なワニスとして得られ、不溶である場合は、沈殿として得られる。ポリベンゾオキサゾールイミドのワニスが得られる場合には、これを上記基板上に流延・乾燥することで、ポリベンゾオキサゾールイミドフィルムを作製することもできる。この際乾燥する温度は溶媒が完全に蒸発・除去されれば特に制限は無く、40〜400℃、好ましくは100〜350℃で乾燥される。 上記のようにして得られたポリベンゾオキサゾールイミドフィルムは集積回路のバッファーコート膜や多層基板の絶縁層として適用するためには、耐熱性の指標であるガラス転移温度が300℃以上であることが望ましい。300℃を下回ると、実装時の熱工程においてフィルムの変形、発泡、接着不良など不都合な問題を生ずる恐れがある。また、膜靭性の指標として180°折曲簡易試験により、破断が認められなければ大きな支障はないが、引っ張り試験における破断伸びが5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。 本発明のポリベンゾオキサゾールイミドからなる膜中には、必要に応じて酸化安定剤、フィラー、シランカップリング剤、接着促進剤、湿熱安定化剤、架橋剤、末端封止剤、難燃剤等の添加物を加えることができる。<ポジ型感光性樹脂組成物の製造方法> 次に本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法について説明するが、該製造方法は以下の説明に限定されない。本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドまたはその前駆体のワニスにジアゾナフトキノン(DNQ)系感光剤を添加・溶解し、これを基板上に塗布、40〜120℃、好ましくは60〜100℃で1分〜3時間温風乾燥して、膜厚0.1〜20μmのポジ型感光性樹脂組成物膜を得ることができる。 本発明のヒドロキシアミド基含有ポリイミドまたはその前駆体は、アルカリ溶解性が適度に制御されていることが特徴である。ジアゾナフトキノン(DNQ)系感光剤を分散しない場合は、アルカリ可溶性であるが、溶解抑制作用を持つDNQ系感光剤含有することで、アルカリ不溶性となる。この感光性樹脂組成物膜にフォトマスクを介して紫外線を照射すると露光部におけるDNQ系感光剤が光反応によりアルカリ可溶なインデンカルボン酸に変化するので、露光部のみがアルカリ水溶液に可溶となる。よって、ポジ型パターン形成が可能となる。 DNQ系感光剤としては、1,2-ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸の低分子ヒドロキシ化合物、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、2−および4−メチル−フェノール、4,4’−ヒドロキシープロパンのエステル等を例として挙げられる。 このポジ型感光性樹脂組成物中に分散するDNQ系感光剤の配合割合は、少なすぎる場合には、露光部と未露光部の溶解度差が小さすぎて、現像によりパターン形成不能となり、多すぎる場合には最終熱硬化物であるポリベンゾオキサゾールイミドの膜物性(ガラス転移温度、膜靭性、熱安定性等)に悪影響を及ぼす恐れがある他、加熱硬化工程時の膜減りが大きいといったな問題が生じるので、DNQ系感光剤含有量は好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%である。 上記製膜工程は120℃以下で行うことが好ましい。この温度を越えるとDNQ系感光剤が熱分解し始める恐れがある。例えば60℃で製膜した場合、塗膜中に多量の溶媒が残留している。その場合露光工程に先立ち80〜120℃で1〜30分間プリベイクして余分な溶媒を除去することは現像時の膜の膨潤や微細パターンの崩れを防止するのに有効である。また塗膜を1〜5分間水中に浸漬することによっても溶媒を抽出・除去できる。 上記感光性樹脂組成物膜にフォトマスクを介して高圧水銀灯のg線、h線、i線または混合線を室温で5秒〜1時間照射し、アルカリ水溶液で現像する。現像の際使用可能なアルカリ水溶液として、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、トリエチルアミン、エタノールアミン等の有機アルカリの他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリが挙げられる。多くの電子機器では残留金属が電気特性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、有機アルカリが好適に用いられ、半導体プロセスで通常使用されているTMAH水溶液が好適に用いられる。 この際TMAH水溶液の濃度は0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは通常使用される2.38重量%水溶液をそのまま用いて室温で10秒〜10分間現像し、更に純水でリンスすることにより鮮明なポジ型パターンを得ることができる。現 像液およびリンス液には必要に応じて、アルコール類やグリコール類等の水溶性溶媒を添加することができる。<ポリベンゾオキサゾールイミドの微細パターンの製造方法> 上記のようにして基板上に形成されたヒドロキシアミド基含有ポリイミドまたはその前駆体の微細パターンを空気中、窒素等の不活性ガス雰囲気中あるいは真空中250〜400℃、好ましくは270〜350℃で加熱することで、ポリベンゾオキサゾールイミドの鮮明なパターンが得られる。この際250℃を下回ると閉環反応が不完全となる恐れがあり好ましくなく、400℃を越えるとポリベンゾオキサゾールイミドが一部熱分解したり、溶融してパターン形状が崩れる恐れがあるため好ましくない。また加熱硬化工程は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、処理温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における物性値は、次の方法により測定した。<赤外吸収線スペクトル> フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製FT−IR5300)を用い、KBr法にてヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の赤外線吸収スペクトルを測定した。また透過法にてヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールイミド薄膜(膜厚約5μm)の赤外線吸収スペクトルを測定した。<1H−NMRスペクトル> 日本電子社製NMR分光光度計(ECP400)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中でヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトルを測定した。<固有粘度> 0.5重量%のヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびその前駆体の溶液を、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。<ガラス転移温度:Tg> ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて動的粘弾性測定により、周波数0.1Hz、昇温速度5℃/分における損失ピークからポリベンゾオキサゾールイミドフィルム(膜厚約20μm)のガラス転移温度を求めた。<線熱膨張係数:CTE> ブルカーエイエックス社製熱機械分析装置(TMA4000)を用いて、熱機械分析により、荷重0.5g/膜厚1μm、昇温速度5℃/分における試験片の伸びより、100〜200℃の範囲での平均値としてポリベンゾオキゾールイミドフィルム(膜厚約20μm)のフィルム面方向の線熱膨張係数を求めた。<5%重量減少温度:Td5> ブルカーエイエックス社製熱重量分析装置(TG−DTA2000)を用いて、窒素中または空気中、昇温速度10℃/分での昇温過程において、ポリベンゾオキサゾールイミドフィルムの初期重量が5%減少した時の温度を測定した。これらの値が高いほど、熱安定性が高いことを表す。<誘電率:εcal> アタゴ社製アッベ屈折計(アッベ屈折計4T、ナトリウムランプ使用、波長589nm)を用いて、ポリベンゾオキサゾールイミドフィルム(20μm厚)のフィルム面に平行な方向(nin)と垂直な方向即ち膜厚方向(nout)の屈折率を測定し、平均屈折率〔nav=(2nin+nout)/3〕に基づいて次式:εcal=1.1×nav2により1MHzにおけるポリベンゾオキサゾールイミドフィルムの誘電率(εcal)を算出した。<吸水率> 50℃で24時間真空乾燥したポリベンゾオキゾールイミドフィルム(膜厚20〜30μm)を24℃の水に24時間浸漬した後、余分の水分を拭き取り、重量増加分から吸水率(%)を求めた。<弾性率、破断強度および破断伸び> 東洋ボールドウィン社製引張試験機(テンシロンUTM−2)を用いて、ポリベンゾオキゾールイミドフィルム(膜厚約20μm)の試験片(3mm×30mm)について引張試験(延伸速度:8mm/分)を実施し、応力―歪曲線の初期の勾配から弾性率を、フィルムが破断した時の伸び率および応力からそれぞれ破断伸び(%)と破断強度を求めた。<光透過率(透明性)> 日本分光社製紫外可視分光光度計(V−530)を用い、ヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルム(膜厚:約10μm)の可視・紫外線透過率を200nmから800nmの範囲で測定し、h線(405nm)とg線(435nm)における光透過率を求めた。<カットオフ波長(透明性)> 日本分光社製紫外可視分光光度計(V−530)を用い、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド膜(膜厚:約10μm)の可視・紫外線透過率を200nmから900nmの間で測定し、透過率が0.5%以下となる波長(カットオフ波長)を透明性の指標とした。カットオフ波長が短い程、フィルムの透明性が良好であることを意味する。(実施例1)<ヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の合成> トリメリット酸無水物クロリド(22mmol)を脱水済みのアセトンに溶解し、セプタムキャップでフラスコを密栓した。次に別のフラスコにABPS(10mmol)をとり脱水アセトンに溶解しこれに脱酸剤としプロピレンオキシド(50mmol)を加えた。この反応の際、全溶質濃度は15重量%であった。塩化ナトリウムを溶かした氷浴中で冷却しながらABPS溶液にトリメリット酸無水物クロリド溶液をシリンジでゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応混合物を3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、トルエンおよびヘキサンで過剰量のトリメリット酸無水物クロリドを溶解・除去した。これを40℃で12時間真空乾燥して収率72%で生成物を得た。赤外吸収(FT−IR)スペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、生成物は目的とするヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物であることが確認された。図1および図2にFT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルを示す。(実施例2) ABPSの代わりにADPEを用いた以外は実施例1に記載された方法に従って式(2)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を合成した。(実施例3)<ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体の重合、熱環化およびポリベンゾオキサゾールイミドの膜特性評価> よく乾燥した攪拌機付密閉反応容器中に4,4’−オキシジアニリン(以下ODAと称する)5mmolを入れ、モレキュラーシーブス4Aで十分に脱水したNMPに溶解した後、この溶液に式(1)で表される実施例1に記載のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物粉末5mmolを徐々に加えた。重合反応は全モノマー濃度30重量%で開始した。重合反応が進行し、溶液粘度が増加して攪拌が困難になったため同一の溶媒を加えて全モノマー濃度を20重量%まで希釈した。更に室温で24時間撹拌し透明、均一で粘稠なヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体ワニスを得た。このワニスを適度に希釈した後、窒素雰囲気中、160℃で3時間還流してヒドロキシアミド基含有ポリイミドのワニスを得た。これを大量の水中に滴下して粉末として単離した生成物のFT−IRスペクトルおよび1H−NMRスペクトルより、生成物はヒドロキシアミド基が閉環されることなくイミド化のみ完結しており、目的とするヒドロキシアミド基含有ポリイミドであることが確認された。得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドの固有粘度は0.48dL/gであった。ヒドロキシアミド基含有ポリイミドのワニス(溶媒:NMP、20重量%)は室温で20日間貯蔵しても沈澱、ゲル化は起こらず、高い溶液貯蔵安定を示した。このワニスをガラス基板に塗布、60℃で2時間乾燥して得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドフィルム(膜厚約10μm)はh線およびg線に対して十分な光透過率を示した。同様にしてヒドロキシアミド基含有ポリイミド膜を基板上に製膜後、減圧下320℃で1時間ヒドロキシアミド基の閉環脱水反応熱を行い、残留応力を除去するために基板から剥がして更に300℃で1時間、熱処理を行うことで、膜厚20μmのポリベンゾオキサゾールイミド膜を得た。このフィルムは180°折曲げ試験によっても破断せず、可撓性を示した。このフィルムについて動的粘弾性測定を行った結果、323℃にガラス転移点が観測された。また線熱膨張係数は49.6ppm/Kであった。平均屈折率より見積もった誘電率は3.02、吸水率は2.8%であった。5%重量減少温度は窒素中で494℃、空気中で497℃と高い熱安定性を示した。機械的特性は、引張弾性率(ヤング率)3.12GPa、破断強度0.12GPaであり、破断伸びは10.4%と十分な膜靭性を示した。表1にこれらの物性値をまとめた。図3および図4にヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示す。(実施例4)ジアミン成分としてODAを用いる代わりに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジ)(以下TFMBと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合し、イミド化、製膜、熱環化してポリベンゾオキサゾールイミド膜を作製し、同様に物性評価した。図5および図6にヒドロキシアミド基含有ポリイミドの1H−NMRスペクトルおよびその薄膜の赤外線吸収スペクトル、図7にポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示す。物性値を表1に示す。(実施例5) ジアミン成分としてODAを用いる代わりに2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下HFBAPPと称する)を用いた以外は、実施例3に記載した方法に従って、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合し、イミド化、製膜、熱環化してポリベンゾオキサゾールイミド膜を作製し、同様に物性評価した。図8および図9にヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを示す。物性値を表1に示す。 表1中の略号は以下を表す。 ηinh:固有粘度 Tg:ガラス転移温度 CTE:線膨張係数 Td5N2:窒素中での5%重量減少温度 Td5air:空気中での5%重量減少温度 T%405:405nmにおける光透過率 T%435:435nmにおける光透過率 Cut−Off:カットオフ波長 WA:吸水率 Eb:破断伸び Modulus:引張弾性率(実施例6)<ポジ型パターン形成> ジアミン成分としてODAを単独で用いる代わりにODAとHFBAPPを共に使用(共重合モル比ODA:HFBAPP=75:25)した以外は実施例3に記載した方法に従って、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を重合し、これをイミド化してヒドロキシアミド基含有ポリイミドを得た。このワニスにジアゾナフトキノン系感光剤として2,3,4−トリス(1−オキソ−2−ジアゾナフトキノン−5−スルフォキシ)ベンゾフェノン(東洋合成製、NT−200)を、上記ヒドロキシアミド基含有ポリイミドの実量に対して30重量%になるように添加し、溶解させた。これをシランカップリング剤で表面処理したガラス基板上に塗布し、60℃で2時間、熱風乾燥器中で乾燥させて、膜厚5μmの感光性樹脂組成物フィルムを得た。これを100℃で10分間プリベイク後、フォトマスクを介し、落射式高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製トスキュア251)の3線混合線(365nmでの照射光強度=約150mW/cm2)を20秒間照射した。これを2−プロパノールを10重量%含む2.38重量%TMAH水溶液にて23℃で25秒間現像を行い、水でリンス後、60℃で数分乾燥し、線幅20μmの鮮明なレリーフパターンが得られた。また熱環化反応後もパターンの崩れはみられなかった。図10に得られたポジ型パターンの走査型電子顕微鏡写真を示す。実施例5に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドを用いた場合も同様に鮮明なポジ型パターンが得られた。(比較例1) 実施例1に記載のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の代わりに、類似化合物である3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を用い、実施例5に記載のジアミンを用いてポリイミド前駆体を得た。これを用いて実施例6に記載の方法に従って感光性フィルム作製し、パターン形成を試みたが、露光部と未露光部との間のアルカリ溶解性の差が不十分であり、パターン形成が困難であった。またこのポリイミド前駆体をイミド化したものを用いた場合アルカリ溶解速度が遅く、パターン形成は同様に困難であった。これらの結果は本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を使用しなかったためである。(比較例2)実施例1に記載のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の代わりに、類似化合物である式(9)で表される本発明外のテトラカルボン酸二無水物を用い、実施例3に記載の方法に従って本発明外のヒドロキシアミド基含有ポリイミドを重合した。固有粘度は0.27dL/gであった。これを用いて実施例3に記載の方法に従ってフィルム(膜厚約10μm)を作製した。このフィルムは極めて脆弱であった。これは固有粘度が低く、分子量が十分高くないためである。またこのフィルムのh線およびg線における光透過率はそれぞれ、1.6%、37.0%と不十分であった。これは重合の際に本発明のヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物を使用しなかったためである。実施例1で得られたヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物のFT−IRスペクトル実施例1で得られたヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物の1H−NMRスペクトル実施例3で得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドの赤外線吸収スペクトル実施例3で得られたポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトル実施例4で得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドの1H−NMRスペクトル実施例4で得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトル実施例4で得られたポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトル実施例5で得られたヒドロキシアミド基含有ポリイミドの赤外線吸収スペクトル実施例5で得られたポリベンゾオキサゾールイミド薄膜の赤外線吸収スペクトル実施例6で得られたポジ型パターンの走査型電子顕微鏡写真下式(1)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物。下式(2)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物。下式(3): で表される反復単位を含有するヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体。(式(3)中、Aは下式(4)または(5)で表され、Bは2価の芳香族基または脂肪族基を表す。)固有粘度が0.4dL/g以上である、請求項3に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体。下式(6): で表される反復単位を含有するヒドロキシアミド基含有ポリイミド。(式(6)中、AおよびBは式(3)におけるのと同じ意味を表す。)固有粘度が0.4dL/g以上である、請求項5に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド。435nm(g線)および405nm(h線)におけるキャストフィルム(膜厚10μm)の光透過率がそれぞれ50%以上および10%以上である請求項5または6に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド。下式(7): で表される反復単位を含有するポリベンゾオキサゾールイミド。(式(7)中、AおよびBは式(3)におけるのと同じ意味を表す。) 300℃以上のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項8に記載のポリベンゾオキサゾールイミド。 請求項3または4に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を加熱あるいは脱水環化試薬を用いてイミド化反応させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドの製造方法。 請求項3または4に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体あるいは、請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドを加熱あるいは脱水環化試薬を用いて脱水閉環反応することを特徴とする請求項8または9に記載のポリベンゾオキサゾールイミドの製造方法。請求項3または4に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体あるいは、請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒドロキシアミド基含有ポリイミドおよびジアゾナフトキノン系感光剤を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物。請求項12に記載の感光性樹脂組成物からなる膜をパターン露光およびアルカリ現像後、加熱あるいは脱水環化試薬で処理して得られることを特徴とする微細パターン。請求項8または9に記載のポリベンゾオキサゾールイミドを含有してなる半導体素子の保護膜。 【課題】h線(405nm)またはg線(435nm)において高い透過率を有するヒドロキシアミド基含有ポリイミドまたはその前駆体およびジアゾナフトキノン系感光剤を含有して成るポジ型感光性樹脂組成物、およびこれをパターン露光後、アルカリ現像・洗浄・加熱脱水環化反応工程を経て得られる、半導体素子の保護膜として有用なポリベンゾオキサゾールイミドの提供。【解決手段】ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体は、例えば、下記式(1)で表されるヒドロキシアミド基含有テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られる。ポリベンゾオキサゾールイミドは、ヒドロキシアミド基含有ポリイミド前駆体を原料とし、これを加熱処理して得られる。【選択図】なし


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