生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_重原子化によるタンパク質の耐熱化方法
出願番号:2007118805
年次:2008
IPC分類:C12N 9/00,C07K 1/113


特許情報キャッシュ

菅原 道泰 浅田 征彦 国島 直樹 高 秀幸 JP 2008271848 公開特許公報(A) 20081113 2007118805 20070427 重原子化によるタンパク質の耐熱化方法 独立行政法人理化学研究所 503359821 日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 000233055 田中 光雄 100081422 山崎 宏 100084146 元山 忠行 100116311 冨田 憲史 100122301 菅原 道泰 浅田 征彦 国島 直樹 高 秀幸 C12N 9/00 20060101AFI20081017BHJP C07K 1/113 20060101ALI20081017BHJP JPC12N9/00C07K1/113 4 OL 11 (出願人による申告)平成18年度、文部科学省、タンパク3000委託研究「タンパク質基本構造の網羅的解析プログラム」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願 4B050 4H045 4B050CC02 4B050GG01 4H045AA10 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045BA50 4H045EA65 4H045FA50 本発明は、タンパク質を重原子試薬にて処理することを特徴とする、タンパク質の耐熱化方法、ならびに該方法により得られる耐熱化タンパク質に関する。 工業的に使用されている代表的な酵素として、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、DNAポリメラーゼ等が知られている。それら有用酵素を用いる際、酵素の耐熱性(熱安定性)を高くすることで広い温度範囲での長期間使用が可能になる。したがって、有用酵素を用いる産業でのタンパク質耐熱化技術の利用は期待できる。現在用いられているタンパク質の耐熱化に関する手法は主に以下の4つである。 1.好熱菌由来のタンパク質を用いる方法(特許文献1等参照) 多くの熱安定酵素は好熱菌から得ることができる。しかしながら、好熱菌は実用的に必要とされるすべての酵素を有しているとは限らない。常温生物しか保有していない酵素を用いる場合には、それらの酵素を耐熱化させる必要がある。また好熱菌由来酵素の場合、さらなる安定な酵素の獲得は生物種の生育温度に大きく依存するために限界がある。 2.高次構造予測に基づくタンパク質の人為的改変(タンパク質工学)による安定化(非特許文献1等参照) タンパク質の耐熱性増大に関しては、いまだに普遍的法則性が見出されていないため、タンパク質の耐熱性の増大という点では目覚ましい成果は得られていない。多くの場合、好熱菌をモデルとした耐熱性変異体を作成するが、現状の技術ではまだ耐熱化は困難である。 3.ランダムな変異操作後にスクリーニングする方法(非特許文献2等参照) タンパク質の耐熱化については、常温生物の酵素にランダムな変異を加え、その中から耐熱性に変化したものを選択することが最も現実的と考えられている。しかしながらその手法は、手間と時間が掛かる上、容易ではなく、実用化にはまだ時間が掛かる。 4.タンパク質にイオンを取り込ませる方法(非特許文献3〜5等参照) いくつかのタンパク質はイオンを取り込むことで、そのタンパク質の耐熱性が向上しているものがある。代表的なイオンとして、カルシウムがある。多くの場合、そのカルシウムイオンはEFハンドモチーフと呼ばれるタンパク質内のカルシウムイオン結合サイトに取り込まれる。そのモチーフ内にカルシウムを取り込むことで、タンパク質の変性温度が約10℃上昇する。しかしながら、カルシウムによる耐熱化はタンパク質内にEHハンドモチーフが必要であり、全てのタンパク質には使えない。また、人為的にEFハンドモチーフをタンパク質に導入してもタンパク質は立体構造、および機能を保つことができない場合が多い。 いずれにせよ、従来から用いられているタンパク質の耐熱化方法は一長一短であり、より簡便かつ効果的なタンパク質の耐熱化方法の開発が望まれている。特開平7−143894号公報Mirror image mutations reveal the significance of an intersubunit ion cluster in the stability of 3-isopropylmalate dehydrogenase,Attila Nemeth, Adam Svingor, Marta Pocsik, Jozsef Dobo, Csaba Magyar, Andras Szilagyi, Peter Gal and Peter Zavodszky, FEBS Letters, 468, pp. 48-52, (2000).Directed evolution of a thermostable esterase,L. Giver, A. Gershenson, P. O. Freskgard and F. H. Arnold, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 95, pp. 1280912813, (1998).Design and Creation of a Ca2+ Binding Site in Human Lysozyme to Enhance Structural Stability,Ryota Kuroki, Yoshio Taniyama, Chisako Seko, Haruki Nakamura, Masakazu Kikuchi, and Morio Ikehara, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86, pp. 6903-6907, (1989).Entropic Stabilization of a Mutant Human Lysozyme Induced by Calcium Binding, R. Kuroki, S. Kawakita, H. Nakamura, and K. Yutani, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 89, 6803-6807, (1992).Fine tuning the N-terminus of a calcium binding protein: α-lactalbumin, Dmitry B. Veprintsev, Mahesh Narayan, Serge E. Permyakov, Vladimir N. Uversky, Charles L. Brooks, Alexandra M. Cherskaya, Eugene A. Permyakov and Lawrence J. Berliner, Proteins, 37, pp. 65-72, (1999). 従来法よりも簡便かつ効果的なタンパク質の耐熱化方法を提供することが本発明の課題であった。 本発明者らは上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、タンパク質を重原子試薬にて処理することにより、簡便かつ効果的にタンパク質を耐熱化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 従来、X線結晶構造解析におけるタンパク質の重原子化処理は主に位相決定のための手法の一つとして用いられてきた。しかしながら、タンパク質の重原子化処理によりタンパク質の耐熱化を行うことは全く行われていなかった。 すなわち、本発明は、 (1)タンパク質を重原子試薬にて処理することを特徴とする、タンパク質の耐熱化方法; (2)処理が溶液状態の反応系にて行われる(1)記載の方法; (3)重原子試薬が重原子検索プログラムHATODASを用いることにより選択される、(1)または(2)記載の方法;ならびに (4)(1)〜(3)のいずれかに記載の方法により得られる耐熱化タンパク質を提供するものである。 本発明によれば、簡便かつ効果的にタンパク質を耐熱化できる。 本発明は、1の態様において、タンパク質を重原子試薬にて処理することを特徴とする、タンパク質の耐熱化方法を提供するものである。本発明の方法により耐熱化することのできるタンパク質はいずれのタンパク質であってもよい。例えば、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、DNAポリメラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、グリコシダーゼ、プロテインホスファターゼ2A型酵素、キシログルカン分解酵素、イソクエン酸脱水素酵素などの有用酵素に本発明の方法を適用すれば、さらに利用価値の高いタンパク質を得ることができる。本明細書において「耐熱化」とは、重原子化されたタンパク質の耐熱性が無処理の同じタンパク質の耐熱性よりも高くなることを意味する。耐熱性が高くなるとは熱安定性が高くなることを意味する。タンパク質の熱安定性は当該分野において広く認識されている用語である。また、「耐熱化」には、重原子化されたタンパク質の活性の至適温度が無処理のタンパク質の活性の至適温度よりも高くなることも包含される。タンパク質の活性の至適温度は当該分野において広く認識されている用語である。 本発明の方法に用いる重原子試薬は、白金、金、水銀、タリウム、鉛、銀、カドミウム、イリジウム、オスミウム、タングステン、サマリウム、ランタン、ユウロビウム、ガドリニウム、ルテチウム、イッテルビウム、ジスプロシウム、プラセオジム、ネオジム、ホルミウム、レニウム、ウラン、エルビウム、パラジウム、コバルト、臭素、キセノン、クリプトンなどの重原子を含むものであればいずれの試薬であってもよく、本発明の方法において、重原子試薬として例えば重原子を含む塩類、例えば、Pt塩:K2PtCl4、(NH4)2PtCl4、K2PtCl6、K2Pt(NO2)4、K2Pt(CN)4、PtCl2(H2NCH2CH2CH2NH2)、Pt(NO2)2(NH3)2、K2PtBr4、K2PtBr6、K2PtI6、K2Pt(SCN)6、[Pt2I2(H2NCH2CH2NH2)2](NO3)2Au塩:KAu(CN)2、KAuCl4、NaAuCl4、AuCl3、HAuCl4、KAuBr4、KAuCH3、KAuI4Hg塩:HOHgCH2CH(OCH3)CH2NHCOC6H4OCH2CO2H、(C2H5HgO)HPO2、HgCl2、Hg(CH3COO)2、C8H8HgO2、K2(HgI4)、C7H5ClHgO2、C2H5HgCl、(CH3CO)OHgCH2CHOCH3CHOCH3CH2HgO(COCH3)、HgBr2、HgI2、Hg(CN)2、C(HgOOCH3)4、CH3HgBr、CH3HgCl、Hg(NH3)2、K2Hg(SCN)4、KHgI3Tl塩:TICl3、TICl、TI(O2C2H3)3、TlF、TlNO3Pb塩:Pb(CH3COO)2、Pb(NO3)2、PbCl2、PbBr2Ag塩:AgNO3Cd塩:CdCl2、CdI2Ir塩:K2IrCl6、IrCl3、Na3IrCl6、(NH4)3IrCl6、K3Ir(NO2)6Os塩:K2OsCl4、(NH4)2OsBr6、K2OsCl6、OsCl3W塩:Na2WO4、(NH4)2WS4Sm塩:SmCl3、Sm(O2C2H3)3、Sm(NO3)3La塩:La(NO3)3Eu塩:Eu(NO3)3、EuCl3Gd塩:GdCl3Lu塩:LuCl3、Lu(O2C2H3)2Yb塩:YbCl3Dy塩:DyCl3Pr塩:PrCl3Nd塩:NdCl3Ho塩:HoCl3Re塩:K2ReCl6、KReO4U塩:K3UO2F5、UO2(CH3COO)3、UO2(NO3)2Er塩:ErCl3Pd塩:K2PdBr4、K2PdCl4、K2PdI4、PdCl2Co塩:CoCl2Br塩:KBr、LiBr、NaBrのほか、XeガスやKrガスなどが好ましく用いられる。 本発明の方法におけるタンパク質の重原子化は、X線結晶構造解析におけるタンパク質の重原子化処理と同様に行うことができる。重原子は様々なタンパク質に結合する。したがって、一般に、X線結晶構造解析におけるタンパク質の重原子化方法は溶液状態の反応系にて行われる。タンパク質、好ましくはタンパク質結晶を重原子溶液に浸すことで、タンパク質内にある重原子と結合しやすいアミノ酸に重原子を結合させることができる。かかる方法を本発明に適用して、タンパク質を重原子化処理することができる。 すなわち、重原子試薬でのタンパク質の処理は、重原子試薬とタンパク質を接触させて、重原子をタンパク質に結合あるいは抱合させることにより行うことができる。このような結合や抱合は共有結合、イオン結合、配位結合、物理的吸着などの様式によるものであってよい。重原子試薬にてタンパク質を処理する方法は特に限定されず、当業者はタンパク質および重原子試薬の種類や特性に応じて、適切な処理方法を選択して本発明を実施することができる。例えば、タンパク質の溶液に重原子試薬を添加することによって、重原子試薬にてタンパク質を処理することができる。 重原子試薬として重原子を含む塩類を用いる場合の適切な反応液組成は以下のものが例示される。水溶液タンパク質約0.1〜1.0mg/mL、好ましくは0.4〜0.8mg/mL、重原子を含む塩約0.5〜5mM、好ましくは約1〜3mMである。反応時間は一般に約24時間程度で十分であるが、数日かけたほうがよい場合もある、反応温度は室温付近であってよく、例えば、約15〜25℃であってもよい。また、上記反応は水溶液中で行われうるが、水のみを溶媒として用いてもよく、pH緩衝成分を添加した緩衝液を溶媒として用いてもよい。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ACES: N-(2-Acetamido)-2-aminoethanesulfonic acid、ADA: N-(2-Acetamido)iminodiacetic acid、BES: N,N-Bis(2-hydroxyethyl)-2-aminoethanesulfonic acid、Bicine: N,N-Bis(2-hydroxyethyl)glycine、Bis-Tris: Bis(2-hydroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane、CAPS: N-Cyclohexyl-3-aminopropanesulfonic acid、CAPSO: N-Cyclohexyl-2-hydroxy-3-aminopropanesulfonic acid、CHES: N-Cyclohexyl-2-aminoethanesulfonic acid、DIPSO: 3-[N,N-Bis(2-hydroxyethyl)amino]-2-hydroxypropanesulfonic acid、EPPS: 3-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]propanesulfonic acid、HEPES: 2-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid、HEPES-Na: Sodium2-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonate、HEPPSO: 2-Hydroxy-3-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]propanesulfonic acid,monohydrate、MES: 2-Morpholinoethanesulfonic acid,monohydrate、MOPS: 3-Morpholinopropanesulfonic acid、MOPSO: 2-Hydroxy-3-morpholinopropanesulfonic acid、PIPES: Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)、POPSO: Piperazine-1,4-bis(2-hydroxy-3-propanesulfonic acid), dehydrate、TAPS: N-Tris(hydroxymethyl)methyl-3-aminopropanesulfonic acid、TAPSO: 2-Hydroxy-N-Tris(hydroxymethyl)methyl-3-aminopropanesulfonic acid、TES: N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid、Tricine: N-[Tris(hydroxymethyl)methyl]glycine、TRIS: 2-Amino-2-hydroxymethyl-1,3-propanediol、TRIS-HCl: Tris(hydroxymethyl)aminomethane hydrochloride、TRIS-Maleate: Tris(hydroxymethyl)aminomethane maleateなどが例示される。反応液組成、ならびに反応時間、反応温度、緩衝液の種類、pHなどの反応条件は上記組成ならびに条件に限定されず、タンパク質や重原子試薬の種類、および重原子試薬でのタンパク質の処理方法などに応じて変化させることができる。 耐熱化しようとするタンパク質の種類や性質に応じて、ターゲットタンパク質に好ましい重原子試薬を選択する。多くの場合、様々な種類の重原子試薬を試せば、幾つかの重原子はタンパク質と結合する。しかしながら、重原子化ターゲットとなるタンパク質がどのような重原子と結合するかは、実際に試してみないと分からないことが多く、ターゲットタンパク質と結合する重原子試薬の選定は容易でないこともある。 本発明者らはすでに、X線結晶構造解析におけるタンパク質の重原子化処理のために重原子検索プログラムHATODAS(Heavy-atom Database System)を開発している(特願第2005−104514号、およびHeavy-atom Database System: a tool for the preparation of heavy-atom derivatives of protein crystals based on amino-acid sequence and crystallization conditions. Michihiro Sugahara, Yukuhiko Asada, Haruhiko Ayama, Hisashi Ukawa, Hideyuki Taka and Naoki Kunishima, Acta Crystallogr. D61, pp. 1302-1305, (2005)参照)。このプログラムはターゲットタンパク質のアミノ酸配列と結晶が析出した条件(緩衝剤、pH)と、既知の重原子結合タンパク質データを参照することでタンパク質に結合する重原子試薬を推定するものである。このHATODASによって、ターゲットタンパク質に結合しやすい重原子の予測が可能となり、タンパク質の重原子化処理は容易に行えるようになった。このX線結晶構造解の位相決定用として開発した重原子検索プログラムHATODASを溶液状態におけるタンパク質の耐熱化のための重原子化試薬の選択に用いることができる。HATODASを本発明にそのまま適用してもよく、実施例に記載したようにHATADASを改良して本発明に適用してもよい。 HATODASを用いて耐熱化させたいタンパク質に結合すると思われる重原子試薬を予測し、タンパク質の重原子化を行うことができる。最初に耐熱化させたいターゲットタンパク質のアミノ酸配列と溶液条件(緩衝剤、pH)を重原子検索プログラムHATODASに入力し、重原子化に最適な重原子試薬を選ぶ。次に、その重原子試薬をタンパク質溶液に混ぜ、重原子化を行う。このように、本発明では簡単なHATODASの操作および単純なタンパク質の重原子化工程を用いることができるので、本発明の方法は、従来のタンパク質工学等を用いた安定化方法と比べて手間が掛からなく、その耐熱化操作も容易である。 また、本発明の方法に用いる重原子の種類は1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。複数の種類の重原子を組み合わせてタンパク質の重原子化を行うことで耐熱温度のさらなる上昇が期待できる。 本発明は、もう1つの態様において、上記の本発明の方法により得られた耐熱化タンパク質を提供する。本発明によれば、簡便かつ効果的にタンパク質を耐熱化できるので、タンパク質、特にアミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、DNAポリメラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、グリコシダーゼ、プロテインホスファターゼ2A型酵素、キシログルカン分解酵素、イソクエン酸脱水素酵素などの有用酵素に本発明の方法を適用して、これまで以上に有用なタンパク質を大量に得ることができる。 以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。重原子検索プログラムHATODASの改良 HATODASを本発明に適用するに際して以下の改良を行った。 1)スコア付機能の追加 ヒットした同一重原子試薬の数、およびターゲットタンパク質が有する重原子結合アミノ酸の数から重原子試薬の優先順位を決める機能である。具体的には、ヒットした同一重原子試薬の総数を表示し、その数が多い順に重原子試薬を表示する機能を新たに追加した。加えて、ターゲットタンパク質が有する重原子結合残基数の数を考慮したスコア表示機能を追加した。例として、メチオニンに結合する重原子試薬がヒットした場合、ターゲットタンパク質が有するメチオニンの数が多いほど、その重原子試薬のスコアは高くなる。 2)二次構造予測表示機能の追加 Pole Bio-Informatique Lyonnaisの二次構造予測プログラム(http://npsa-pbil.ibcp.fr/cgi-bin/npsa_automat.pl?page=/NPSA/npsa_seccons.html)によりHATODAS出力画面にターゲットタンパク質の予測二次構造を表示する機能である。具体的には、入力されたターゲットタンパク質の一文字表記アミノ酸配列は二次構造予測プログラムEMBOSSに自動投入される。その二次構造予測結果はHATODAS画面上に表示される(図1)。ここでhはヘッリクス、eはβストランド、cはループ、?は不明を意味する。この予測二次構造の表示により、アルファへリックス、ベータシートを形成していないN、C末端部、およびループ部分を避け、重原子結合アミノ酸を考慮し、そのアミノ酸に対応する重原子試薬を選ぶことで、重原子化の成功率を上げる機能である。3)三次元予測モデルからの分子表面検出機能の追加 ターゲットタンパク質の予測三次元モデルがある場合、その座標ファイルを入力し、分子表面のアミノ酸を表示することで重原子結合アミノ酸を推定する機能である。具体的には、予測三次元モデルの座標データ(pdbファイル)をHATODASに入力する。その際、CCP4プログラムのsurface(Collaborative Computational Project, Number 4 (1994). Acta Cryst. D50, 760-763.)に自動で座標データが投げられ、得られた結果はHATODAS画面上に表示される(図2)。表示はアミノ酸シーケンスである。アミノ酸を構成する原子のcontact areaの合計が10Å2を超えるアミノ酸は、ライトブルーで表示される(図2の配列で薄い文字の部分)。その他は黒字で表示される。contact areaは、surface実行時に指定したプローブ球(タンパク質原子の表面上を移動させる球)と原子のファン・デル・ワールス表面との接触する箇所である。その分子表面にある重原子化に適したアミノ酸を選び、そのアミノ酸に対応する重原子試薬を選ぶことで、重原子化の成功率を上げる機能である。タンパク質の重原子化処理およびその効果 Thermus thermophilus HB8由来タンパク質TTHB049を用いて耐熱化実験を行った。TTHB049タンパク質のアミノ酸残基数は177であり、そのアミノ酸配列を以下に記す。MELWLVRHGE TLWNREGRLL GWTDLPLTAE GEAQARRLKG ALPSLPAFSS DLLRARRTAE LAGFSPRLYP ELREIHFGAL EGALWETLDP RYKEALLRFQ GFHPPGGESL SAFQERVFRF LEGLKAPAVL FTHGGVVRAV LRALGEDGLV PPGSAVAVDW PRRVLVRLAL DGEEATG 上記アミノ酸配列を重原子検索プログラムHATODASに入力した。0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.5)の条件下で検索した結果、K2PtCl4がヒットした。次に、そのK2PtCl4重原子をタンパク質溶液に加えた。溶液組成は、タンパク質濃度0.6mg/mL、0.1Mクエン酸緩衝液、2mM K2PtCl4,pH6.5であった。その溶液を22℃の温度条件化で31時間放置した。その溶液状態におけるタンパク質の変性温度はDSCによって昇温速度200K/時で決定した(図3)。結果として、タンパク質の変性温度は重原子が無い場合79.2℃(図3曲線A)であったが、重原子処理後では95.6℃(図3曲線B)に上がった。そのタンパク質の変性温度が重原子化によって16.4℃上昇したことになる。すなわち、この変性温度の上昇は重原子化処理されたタンパク質の耐熱性の上昇を示すものである。 このように、本発明の方法を用いれば、簡便かつ効果的にタンパク質を耐熱化できることがわかった。 本発明は、簡便かつ効果的にタンパク質を耐熱化する方法、ならびにその方法により得られるタンパク質を提供するものなので、蛋白質工学の分野、有用酵素の製造分野、それらの利用分野、例えば、医薬品、食品、各種試薬類などの製造において有用である。図1はターゲットタンパク質の二次構造予測結果を示すHATODAS画面である。図2は重原子結合アミノ酸を推定した結果を示すHATODAS画面である。図3はタンパク質TTHB049の変性温度を示すDSC曲線である。曲線Aは重原子が無い場合のタンパク質TTHB049の変性温度を示すDSC曲線である。曲線Bは重原子処理後のタンパク質TTHB049の変性温度を示すDSC曲線である。 タンパク質を重原子試薬にて処理することを特徴とする、タンパク質の耐熱化方法。 処理が溶液状態の反応系にて行われる請求項1記載の方法。 重原子試薬が重原子検索プログラムHATODASを用いることにより選択される、請求項1または2記載の方法。 請求項1〜3のいずれか1項記載の方法により得られる耐熱化タンパク質。 【課題】簡便かつ効果的なタンパク質の耐熱化方法の提供。【解決手段】X線結晶構造解析におけるタンパク質の重原子化処理は主に位相決定のための手法の一つとして用いられてきたタンパク質の重原子試薬にて処理すること、処理が溶液状態の反応系にて行われること、ならびに、重原子試薬が重原子検索プログラムHATODASを用いることを特徴とする、タンパク質の耐熱化方法、ならびに、該方法により得られる耐熱化タンパク質。【選択図】なし配列表


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