タイトル: | 公開特許公報(A)_パーフルオロイソブテンの除去方法 |
出願番号: | 2007118019 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 17/38,C07C 17/389,C07C 21/18,B01D 53/14 |
森本 長茂 JP 2008273863 公開特許公報(A) 20081113 2007118019 20070427 パーフルオロイソブテンの除去方法 ダイキン工業株式会社 000002853 鮫島 睦 100100158 田村 恭生 100068526 吉田 環 100132252 森本 長茂 C07C 17/38 20060101AFI20081017BHJP C07C 17/389 20060101ALI20081017BHJP C07C 21/18 20060101ALI20081017BHJP B01D 53/14 20060101ALI20081017BHJP JPC07C17/38C07C17/389C07C21/18B01D53/14 102B01D53/14 A 6 OL 8 4D020 4H006 4D020AA10 4D020BA01 4D020BB01 4D020BB03 4D020BB05 4D020DA03 4D020DB20 4H006AA02 4H006AD17 4H006AD18 4H006BC50 4H006BM10 4H006BM71 本発明は、パーフルオロイソブテン((CF3)2C=CF2:以下「PFIB」とも称する)を含むガス状物質からPFIBを除去する方法に関し、より詳細には、ヘキサフルオロプロピレン(CF3CF=CF2:以下「HFP」とも称する)とPFIBとを含む反応混合物からPFIBを除去する方法に関する。 HFPはフッ素系樹脂のモノマーとして有用な化合物である。HFPは、テトラフルオロエチレン(以下「TFE」とも称する)、オクタフルオロシクロブタン(以下「C−318」とも称する)などの熱分解によって合成されており、このようなHFP合成反応においてPFIBが副生成物として生じることが知られている。PFIBは毒性が極めて高いため、生成後速やかに除去することが望ましい。よって、HFP合成の工業プロセスでは、HFPの生成反応で得られる反応混合物からPFIBを除去する操作が実施されている。 このようなPFIBの除去操作として、アンモニアを用いる方法や、アルコールを用いる方法が提案されている(以下、本明細書においてそれぞれ「アンモニア法」および「アルコール法」という)。 アンモニア法は、HFPをPFIBと共に含むガスをアンモニア水と接触させてPFIBを除去するというものである。 アルコール法は、HFPをPFIBと共に含むガスをメチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコールに接触させてPFIBを除去するというものである(特許文献1を参照のこと)。特開昭53−73504号公報 アンモニア法においては、アンモニア(NH3)ガスを水に溶解させてアンモニア水(NH4OH濃度 例えば約10%)を予め調整し、HFPおよびPFIB含有ガスをこのアンモニア水に接触させると、以下の式に示すように、PFIBがNH3と反応してNHF4C(CN)3およびNH4Fを生じ、これら反応生成物はアンモニア水相中に含まれることとなる。このようにしてガスからPFIBが除去される。アンモニア水との接触後のガスはHFPに加えてアンモニアも含んでいるため、後工程においてアンモニアを水洗処理などで除去している。 しかしながら、このようなアンモニア法では、原料に用いるアンモニアガスは一般に高圧ガスの形態であり、取扱いが容易でない。またアンモニアには特有の臭気がある上、大量に使用する必要がある。更に、連続工程で実施する場合には、ガスに含まれるアンモニアを後工程で除去する必要がある。 また、アルコール法においては、HFPおよびPFIB含有ガスをアルコールに接触させると、PFIBがアルコールと反応してエーテルを生じ、このような反応生成物(エーテルおよびその誘導体)はアルコール相中に含まれることとなる。このようにしてガスからPFIBが除去される。 しかしながら、このようなアルコール法では、アルコールがPFIBと反応してエーテルを生じるだけでなく、更にこのエーテルからフッ化水素(HF)が脱離する。例えばアルコールとしてメタノール(CH3OH)を用いる場合、以下の式に示すように、PFIBがCH3OHと反応してオクタフルオロイソブチルメチルエーテル(OIME)を生じ、このOIMEからHFが脱離する。この結果、HFによる設備の腐食を招くという問題がある。加えて、用いるアルコール(メチルアルコール、エチルアルコールまたはプロピルアルコールなど)自体が危険物であり、取扱いが容易でない。更に、連続工程で実施する場合には、ガスに含まれるアルコールを後工程で除去する必要があるという難点もある。 本発明の目的は、PFIBを含むガス状物質からPFIBを除去することのできる方法であって、上述のような従来の問題点を解消または緩和することのできる新規な方法を提供することである。 本発明の1つの要旨によれば、パーフルオロイソブテン(PFIB)を含むガス状物質をアルカリ物質と接触させることにより、該ガス状物質からパーフルオロイソブテン(PFIB)の少なくとも一部、例えばその50体積%以上を除去する方法が提供される。 本発明の上記方法によれば、ガス状物質からPFIBを効率的に除去することができる。また、本発明の上記方法によれば、アルカリ物質を使用しており、アンモニア法のように一般に高圧ガスの形態であって臭気を有するアンモニアを大量に使用したり、アルコール法のように危険物であるアルコールを使用したりすることがないので、取扱いが容易であるという利点がある。また、連続工程で実施する場合でも、アルカリ物質は、アンモニアやアルコールのように後工程で除去する必要がない。更に、本発明の上記方法によれば、アルコール法のようにHFが脱離することがなく、設備の腐食の問題を招くことがない。 本発明の好ましい態様において、アルカリ物質と接触させるガス状物質として、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の生成反応で得られる反応混合物を用い得る。この反応混合物はHFPを目的生成物として、PFIBを副生成物として含むものであり、本発明の上記方法に付すことにより、反応混合物からPFIBを除去することができる。他方、HFPはその大部分が除去されずに反応混合物に残留するので、目的物質であるHFPと副生成物であるPFIBを効率的に分離することができる。 本発明に用いるアルカリ物質は、固体、液体またはそれらが混在する形態で用いてよい。これにより、ガス状物質(例えば上記の反応混合物)をアルカリ物質と接触させた後、任意の適当な固気分離法または気液分離法によって容易に分離することができる。 本発明において用語「アルカリ物質」は、イオン化傾向の大きい金属(例えばK、Na、Ca)の酸化物および水酸化物ならびにその水溶液を意味するものとする。本発明に用いるのに適当なアルカリ物質は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムおよび酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種、または該少なくとも1種の水溶液である。このようなアルカリ物質は市販で容易に入手でき、取扱いが極めて簡便である。 アルカリ物質が固体である場合、比較的短い接触時間、例えば約5分以下、特に約0.5〜1分程度で、ガス状物質からPFIBを効果的に除去することができる。(いずれも常温常圧下としてよい。) アルカリ物質が上記少なくとも1種の水溶液である場合、ガス状物質からPFIBを効果的に除去し得るように、接触条件として、水溶液のアルカリ物質濃度および接触時間を考慮しなければならない。例えば、一般に酸分を除去することを目的として実施されるアルカリ洗浄では、アルカリ物質濃度が極めて低く(例えば0.5重量%以下)、かつ、接触時間が極めて短い(例えば10秒以下)ので、PFIBを実質的に(例えば50体積%以上を)除去することはできない。 より詳細には、水溶液のアルカリ物質濃度は、接触前にて、例えば約0.1重量%以上、好ましくは約4重量%以上とし得る。また、ガス状物質とアルカリ物質との接触時間は、例えば約1分以上、好ましくは約5分以上とし得る。(いずれも常温常圧下としてよい。) アルカリ物質濃度と接触時間とは相関関係があり、アルカリ物質濃度が高ければ接触時間は短くてよく、アルカリ物質濃度が低ければ接触時間を長くすることで、PFIBを十分徐々することができるので、上記に例示したアルカリ物質濃度および接触時間の条件は少なくとも一方を満たしていればよい。 しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されず、接触条件は用いるアルカリ物質の種類、温度および圧力などに応じて変更され得る。 本発明によれば、PFIBを含むガス状物質からPFIBを除去することのできる新規な方法が提供される。この方法は、設備の腐食の問題を招かず、また、取扱いが容易なアルカリ物質を用いて実施できる。 本発明を種々の実施例に基づいて以下に説明する。 PFIBを含むガス状物質として、HFPの生成反応で得られる反応混合物を用いた。この反応混合物は、テトラフルオロエチレン(TFE)およびオクタフルオロシクロブタン(C−318)の混合物を反応原料として用い、これを熱分解することによりHFPを生成する反応で得られたものである。よって、用いた反応混合物は、HFPおよびPFIBの他にTFEおよびC−318も含み得る。 上記の反応混合物をガスクロマトフィーで分析したところ、HFPを約47体積%、PFIBを約6体積%含んでいた(表1、No.1-0)。 他方、アルカリ物質として粒状のソーダライム(組成:CaO 約8重量%、Na2O 約10重量%)を容積5mlの容器に充填し、この容器を密封して、上記の反応混合物をシリンジにて5ml注入した。最初に混合した後、所定時間まで静置することにより反応混合物とアルカリ物質とを接触させた後、容器内のガスを抜き出して、同様にガスクロマトフィーで分析した。分析結果より、接触時間0.2分以上で、特に0.5分以上で、PFIBのほぼ全部が除去され、他方、HFPは接触後もその殆どが気相中に存在していることが確認された(表1、No.1-1、1-2、1-3、1-4)。 アルカリ物質として粒状NaOH、粒状Ca(OH)2、および粉末Na2CO3を用いたこと、およびPFIBを含むガス状物質として用いた反応混合物の組成が若干相違することを除いて、所定の接触時間を適用して上記と同様の操作に付した。結果を表2〜表4に示す。尚、Na2CO3はアルカリ性が低く(pH9〜10)、ナトリウムの「炭酸塩」であって、本発明に言うアルカリ物質に該当しないので、これは本発明の比較例である。 粒状NaOHを用いた場合、接触時間5分および60分の双方で、PFIBのほぼ全部が除去され、他方、HFPは接触後もその殆どが気相中に存在していることが確認された(表2、No.2-1、2-2)。 粒状Ca(OH)2を用いた場合も、接触時間0.5分以上、特に1分以上で、PFIBのほぼ全部が除去され、他方、HFPは接触後もその殆どが気相中に存在していることが確認された(表2、No.2-3、表3、No.3-1、3-2、3-3、3-4)。 これに対して、比較例である粉末Na2CO3を用いた場合は、接触時間を100分としても、PFIBの大部分が気相中に残留しており(除去率 約40体積%)、PFIBを効果的に除去することはできなかった。 本発明の別の実施例として、アルカリ物質にNaOH、KOH、Ca(OH)2の水溶液を用いた。NaOHおよびKOHの水溶液は所定の濃度に調整し、Ca(OH)2は大気圧下室温にて飽和水溶液とした(理論濃度 約0.15重量%)。 このアルカリ物質水溶液を容積5mlの容器に入れ、この容器を密封して、上記の反応混合物をシリンジにて5ml注入した。所定時間振盪することにより反応混合物とアルカリ物質とを接触させた後、容器内のガスを抜き出して、同様にガスクロマトフィーで分析した。分析結果より、4重量%NaOH水溶液では、接触時間1分でPFIBの大半を除去でき(除去率 約60体積%)、このことは4重量%KOH水溶液でも同様であった(表5、No.5-1、5-2、5-3、5-8、5-9)。0.4重量%NaOH水溶液では、接触時間5分でPFIBの大部分が除去され(除去率 約80体積%)、接触時間10分でほぼ全部が除去された(表5、No.5-4、5-5、5-6)。10重量%NaOH水溶液では、接触時間わずか1分でPFIBのほぼ全部が除去された(表5、No.5-7)。また、Ca(OH)2飽和水溶液では、接触時間2分でPFIBの大半を除去でき(除去率 約60体積%)、接触時間5分でPFIBの大部分を除去できた(除去率 約80体積%)(表5、No.5-10、5-11)。いずれの場合にも、HFPは接触後もその殆どが気相中に存在していることが確認された。 パーフルオロイソブテンを含むガス状物質をアルカリ物質と接触させることにより、該ガス状物質からパーフルオロイソブテンの少なくとも一部を除去する方法。 アルカリ物質と接触させるガス状物質として、ヘキサフルオロプロピレンの生成反応で得られる反応混合物を用い、該反応混合物はヘキサフルオロプロピレンを目的生成物として、パーフルオロイソブテンを副生成物として含んでいる、請求項1に記載の方法。 アルカリ物質は、固体、液体またはそれらが混在する形態で用いられる、請求項1または2に記載の方法。 アルカリ物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウムおよび酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種、または該少なくとも1種の水溶液である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。 アルカリ物質が前記少なくとも1種の水溶液であり、水溶液のアルカリ物質濃度は、接触前にて0.1重量%以上である、請求項4に記載の方法。 アルカリ物質が前記少なくとも1種の水溶液であり、ガス状物質とアルカリ物質との接触時間が1分以上である、請求項4または5に記載の方法。 【課題】パーフルオロイソブテン(PFIB)を含むガス状物質から、PFIBを除去することのできる新規な方法を提供する。【解決手段】PFIBを含むガス状物質をアルカリ物質と接触させることにより、該ガス状物質からPFIBの少なくとも一部が除去される。ガス状物質には、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)の生成反応で得られる、HFPを目的生成物として、およびPFIBを副生成物として含む反応混合物を用いることができ、これにより、HFP含有反応混合物からPFIBを効率的に除去することができる。【選択図】なし