生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ヒトデエキスを有効成分とする物質
出願番号:2007117059
年次:2008
IPC分類:A61K 35/56,A61K 45/00,A61P 3/04,A61P 3/06


特許情報キャッシュ

高橋 龍男 JP 2008273856 公開特許公報(A) 20081113 2007117059 20070426 ヒトデエキスを有効成分とする物質 株式会社龍栄総研 592154248 柏原 三枝子 100096024 高橋 龍男 A61K 35/56 20060101AFI20081017BHJP A61K 45/00 20060101ALI20081017BHJP A61P 3/04 20060101ALI20081017BHJP A61P 3/06 20060101ALI20081017BHJP JPA61K35/56A61K45/00A61P3/04A61P3/06 5 OL 23 4C084 4C087 4C084AA19 4C084MA02 4C084NA14 4C084ZA702 4C084ZC332 4C087AA01 4C087AA02 4C087BB26 4C087CA06 4C087NA14 4C087ZA70 4C087ZC33 本発明は、ヒトデエキスを有効成分とする物質に関するものである。 日本では、ヒトデを常食にしているという例はどこにも見られない。天草地方で、キヒトデの卵巣を食する習慣があるが、これは初夏の一時期に限定されている。中国では、古くからイトマキヒトデを薬用に供してきたが、これは中国医学でいうところの腎虚に対応するもの、つまり、精力増強や、足腰の冷えや痛みの改善が主たる利用目的であった。 しかしながら、中国でもヒトデの長期の摂取は薦めていない。なぜなら、ヒトデには魚類に溶血毒性を示すステロイドサポニンが含まれているので、ヒトデを摂取することにより、このステロイドサポニンが哺乳動物にも悪影響を及ぼすのではないかとの危惧があるためである。このことが、これまでヒトデの食品としての利用を妨げてきた理由である。 このように、ヒトデはこれまでほとんど利用されてきておらず、むしろ、養殖ホタテを食い荒らすといった問題があり、漁業関係者に与える被害は甚大であった。ヒトデは、捕獲してもその用途は一部が肥料に使われる程度で、ほとんど廃棄処分されているのが現状であり、捕獲と処分にかかる手間とコストは多大である。従ってヒトデの食品への転用が可能になれば、多くの漁業関係者にとって大きな福音となる。 近年は、未病医学といわれる中医学および西洋医学を併用した治療が広く取り上げられるようになってきた。これは、正常者と病者の中間の境界域にいる半健康人を対象とする医療であり、特に、肥満、糖尿病、高血圧などの症状に対し、種々の漢方薬、飲茶などを用いて、半健康人の健康を現状維持/増進し、あるいは回復を図ろうとするものである。 現在、日本における糖尿病患者数は顕著に増大しつつあり、その数は200万人あるいは未受療者を加えると数百万人と言われている。周知のとおり、糖尿病は動脈硬化、網膜症、腎症などの血管障害あるいは神経障害など、さまざまな合併症を惹起する。したがって、病状の予防、回復、維持は糖尿病患者にとって重要な課題の一つである。糖尿病は、血糖のコントロールによって合併症への移行が遅延し、また、発病を予防することが可能である。 漢方薬を用いた血糖下降効果に関する知見を見ると、牛車腎気丸エキスの研究など多数の報告が見られる。牛車腎気丸は、中国医学でいうところの腎虚の改善を目的にした漢方薬である。腎虚とは老化からくる自律神経系や内分泌系の機能不全である。本発明者は、古くから腎虚に用いられている動物性生薬であるヒトデにも同様の作用があるのではないかと考えた。特許第3245138号公報 本発明者は、ヒトデの毒性について研究を重ね、ヒトデの中にも毒性が少ないものがあることを発見した。この毒性の低いヒトデのエキスには急性毒性も、亜急性毒性も認められず、ヒトデエキスの安全性が高いものであることを確認した。さらに、ヒトデから抽出したエキスには抗肥満作用や、抗高脂作用があることを突き止めた。 本発明は、このようなヒトデエキスから抽出して得られるエキスを有効成分とする抗肥満物質、および、抗高脂血物質である。また、このヒトデエキスを抽出する原料のヒトデに含まれるカドミウムの量は、ヒトデ一体当たり20ppm以下、砒素の量は、ヒトデ一体当たり20ppm以下であることが好ましい。 アルコール(エタノール)抽出法を用いて、キヒトデのエキスを抽出した。以下の実験は、この方法で抽出したヒトデエキスを用いて行った。アルコール抽出を用いることによって、ヒトデに含有される、カドミウムや砒素などの有害物質である重金属を除去することができる。抽出を行うヒトデには、ヒトデ一体あたりの重金属の含有量が20ppm以下、特にカドミウムと砒素の含有量が20ppm以下のものを用いた。カドミウムや、砒素などの重金属が、これ以上含有されていると、アルコール抽出を行っても重金属を食品衛生法で規定されている安全値まで除去しきれないおそれがあるからである。このようなヒトデは、例えば、北海道根室産のヒトデが該当する。このように、一体あたりのカドミウム含有量が20ppm以下、砒素含有量が20ppm以下のヒトデをアルコール抽出したヒトデエキスは、カドミウムの含有量を食品衛生法で規定されている0.8ppm以下に、好ましくは0.2ppm以下に、また、砒素の含有量を食品衛生法で規定されている15ppm以下に、好ましくは5ppm以下に抑えることができる。 エキスの抽出は、例えば、特許第3245138号に記載されているような、イオン交換樹脂を使用して行うこともできる。ただし、この方法は高価であり、手間がかかるため、食品加工に応用するには不向きである。実験1−ヒトデエキスの急性毒性 本発明者は、上述したようにアルコール抽出法によって抽出したヒトデエキスの急性毒性を、ラットを用いて実験を行って確かめた。すなわち、ヒトの常用量の100倍に相当するヒトデエキスを10日間ラットに与えて、血液生化学値や、血液凝固機能に及ぼす影響について調査を行った。また、肝組織及び腎組織の変化を観察した。実験方法 生後4週のウイスター系雄ラットを3週間予備飼育して、体重を80g前後として実験を行った。これらのラットに、アルコール抽出したヒトデエキス10000ppmを含有する飼料(表1に組成を示す)を10日間自由に摂食させたのち、ネンブタール麻酔下で採血をおこない、臓器を摘出した。心臓から直接採血した血液から血漿を分離し、肝機能の指標となるALT、AST、γ−GTPを測定し、血液凝固指標のPT時間、トロンボテスト、更にT4(ティロキシン)の測定を行った。摘出した肝臓並びに腎臓は、中性ホルマリン溶液で固定して標本を作製し、組織診を行った。実験結果 ヒトの常用量(エキス400mg/day/50kg)の100倍量に相当する200mg/day/250gのヒトデエキスをラットに与えたが、飼料摂取量、飲水量(表2)共に、コントロール群との差異は特に認められなかった。また、ヒトデエキスは、ラットの体重(表3)、生化学検査値や血液凝固機能(表4)に影響を与えることはなかった。更に肝臓、腎臓の重量に有意差は認められず(表5)、肝組織にも、腎組織にも異常所見は見つからなかった。以上の実験結果から、ヒトデエキスの安全性は高いと考えられる。 ヒトデエキスにはステロイドサポニンが含まれることから、血液学的所見について観察したが、トロンボテスト、PTにも影響は観察されず、肝機能の指標となるGOT(ALT)、GPT(AST)、γ−GTPにも変化は認められなかった。これらの結果から、ヒトデエキスの短期の摂取に関して生体に有害な影響を与えないことが明らかになった。実験2−ヒトデエキスの亜急性毒性 本発明者は、更に、ヒトデエキスの亜急性毒性を、ラットを用いた実験により確かめた。ヒトの常用量の100倍に相当するヒトデエキスを、ラットに4週間与え、肝機能、血液凝固機能、血液生化学値を測定すると共に、肝組織や腎組織に及ぼす影響を観察した。実験方法 離乳直後のウイスター系雄ラットを3週間予備飼育して、体重を80g前後として実験を行った。これらのラットに、アルコール抽出したヒトデエキス10000ppmを含有する飼料(表1に組成を示す)を4週間自由に摂食させたのち、ネンブタール麻酔下で採血をおこない、臓器を摘出した。心臓から直接採血した血液から血漿を分離し、肝機能の指標となるALT、AST、γ−GTPを測定し、血液凝固指標のPT時間、トロンボテスト、更にT4の測定を行った。摘出した肝臓並びに腎臓は、中性ホルマリン溶液で固定して標本を作製し、組織診を行った。実験結果 ラットの飼料摂取量は、表6のとおりであった。ヒトデエキスを摂取したラットの多くに体重増加抑制傾向が見られた(表7)が、コントロール群との間に有意差は認められなかった。また、腎臓と肝臓の臓器重量に関しても差異は見られなかった(表8)。ヒトデエキスは、ラットの血液生化学検査値、血液凝固機能にも影響を与えることはなかった(表9)。更に、肝組織にも、腎組織にも異常所見は見つからなかった。以上の実験結果から、亜急性毒性についてもヒトデエキスの安全性は高いと考えられるなお、体重増加抑制傾向については、T4(ティロキシン)値に変化が見られなかったことから、T4を介した代謝亢進によるものではないと推察される。 長期(4週間)にわたるヒトデエキスの摂取では、体重増加の抑制傾向が見られたが、飼料摂取量には実験群とコントロール群との間に差異が認められないことから、ラットの代謝活性の上昇が推測された。実験3−ヒトデエキスの肥満抑制作用 実験1および実験2で、ヒトデエキスのラットに対する急性毒性および亜急性毒性は認められず、ヒトデエキスの安全性が高いものであることを確認した。また、亜急性毒性の実験において、ヒトデエキスに肥満抑制傾向があることが示唆されている。本実験では、高カロリー飼料にヒトデエキスを加えたものをシロネズミに与え、体重、T−CHO、T−G、β−リポタンパク値などの血清脂質に及ぼす影響を調べて、ヒトデエキスの抗高脂血作用や、抗肥満作用をラットを用いて確かめた。実験方法(1) 実験動物 6週齢、体重110g前後のウイスター系シロネズミを用いた。(2) 飼料組成 対照群(A群)に対しては、ガゼイン20%をタンパク質源とし、繊維5.0%、大豆油15%の高カロリー飼料を与えた。実験群(B群)に対しては、繊維5%を4.9%にして、ヒトデエキスを0.1%加え、カロリー的には対照群(A群)に与えた飼料と変わらないように調整した高カロリー飼料を与えた。詳しい飼料組成を表10に示す。(3) 飼育方法、期間 シロネズミに、表10に記載の飼料を、水と共に自由に摂食させた。飼育期間は30日間とした。飼育室の室温を21℃、湿度を50%前後に保ち、個別のケージで飼育した。体重および採食量を毎日測定した。(4) 採血法 心臓穿刺によりシロネズミから採血し、生化学検査用の試料とした。実験結果(1) 体重増加 実験当初平均116g前後の体重であったシロネズミが、30日間の飼育により300gを超えるほどに成長した。両群の30日目の体重増加量は、表11のとおりである。予想通り、B群の体重増加量が有意に低下する傾向が観察された。(2) 飼料の摂取量 両群間の体重差の要因を調べるため、飼料摂取量を測定した。表12に明らかなとおり、両群の飼料摂取量に明らかな差異はなく、体重差の出現は飼料摂取量に関係しないことがわかった。(3) 内臓重量 屠殺の際に、シロネズミの肝臓と腎臓を摘出してそれぞれの重量を測定した。結果は、表13に示すとおりであり、両群に有意差はなかった。(4) 血清中の生化学検査値 シロネズミの血清中の生化学検査値を、表14、表15、表16に示す。B群は、A群に比べて、総コレステロール、中性脂肪、βリポタンパクタンパク質の値が低い。考察 実験群(B)と対照群(A)を比較すると、実験群Bの体重増加が有意に抑制されていることがわかる。総コレステロール、中性脂肪、βリポタンパクタンパク質も、実験群(B)の法が低値を示しており、ヒトデエキスの抗肥満作用は明らかである。亜急性毒性についての実験(実験2)で、抗肥満作用がT4を介したものではないことが判明しているので、ヒトデエキス中のステロイドサポニンが脂質代謝に影響を及ぼすものと考えられる。実験4−ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病シロネズミの血糖下降作用に及ぼすヒトデエキスの影響 ヒトデエキスの血糖下降効果を確認するために、キヒトデからアルコール抽出した粉末ヒトデエキスをシロネズミに投与して、抗糖尿病効果を調査した。スレプトゾトシンは膵臓のランゲハンス島のインスリン分泌機能を低下させて高血糖を誘発することが知られており、ストレプトゾトシン糖尿病シロネズミにヒトデエキスを投与することによって、糖負荷時の血糖値がどのように抑制されるかを観察する実験を行った。実験方法(1) 実験動物 10週令、体重約260g前後の、ウイスター系、雄のシロネズミを使用した。(2) 飼料組成 AINの組成に準じて調製した飼料を用いた。すなわち、カゼイン(20%)をタンパク質源として、繊維を配合した飼料を調製した。ただし、コントロール(B群とC群)の繊維配合量は5.0%とし、ヒトデエキス実験群(A群)の繊維配合量を4.9%にして、ヒトデエキス0.1%を加えた。表17に飼料組成の詳細を示す。(3) 飼育方法、期間 表17に記載した飼料を、各群のシロネズミに、水と共に自由に摂食させた。飼育期間は15日とした。C群には、ストレプトゾトシン(以下、STZ)を投与せず、15日間飼育した。A群とB群には、1日目にSTZを腹腔注射した。投与量は、新薬開発研究所の文献値を採用した。すなわち。0.05mol/1クエン酸緩衝液(pH4.5)に溶解させたSTZ50mg/kgという投与量を、シロネズミの体重を考慮して、10mg/1頭として投与した。STZ投与後、5日目に新ウリエースGaを用いて、シロネズミの尿を検査して、血糖値の上昇を検討した。その後、6日目よりA群には、ヒトデエキスを配合した飼料を与え、B群には、C群と同じ飼料、すなわち、ヒトデエキスを含まない飼料を与えた。飼育室の室温は21℃に、湿度は50%前後に保ち、個別のゲージで飼育した。シロネズミの体重および採食量は毎日測定した。実験の経緯を表18に示す。(4) 糖負荷試験および採血法 ブドウ糖の負荷量は、ヒトの場合と同じように75g/60kg程度とした。すなわち、シロネズミの体重は人の1/200程度であるので、750mg/ml/1頭のブドウ糖を、駒込ピペットでシロネズミに投与した。心臓穿刺により、シロネズミから採血し、生化学検査を行った。実験結果(1) 体重変化 実験当初平気250g前後のシロネズミの体重が、表19に見られるような結果となった。STZ腹腔注射により、A群およびB群は、最初少し体重が低下する傾向となったが、A群は6日目より回復し、15日間の飼育でC群と同様の成長を示した。一方、B群は栄養障害を起こし、成長が鈍化して、糖尿病の末期症状を示した。(2) 飼料摂取量 屠殺前の5日間の飼料摂取量を表20に示す。各群に明確な差異は観察されなかった。(3)内臓重量 屠殺の際に、シロネズミの肝臓、腎臓を摘出してそれぞれの重量を測定した。結果は、表21に示すとおりであり、各群にほとんど相違が認められなかった。(3) 負荷試験の結果 0時間(空腹時)のブドウ糖負荷後、1時間の値で血糖値を比較した。その結果を表22に示す。ヒトデエキスの投与により、血糖下降効果が観察された。(4) 考察 上述したように、STZ誘発糖尿病シロネズミの糖負荷試験を試みたところ、ヒトデエキス添加飼料を与えた実験群に血糖降下が観察され、しかも、STZを投与しない群と同様の成長曲線が得られた。STZによる糖尿病の発症機序は、膵臓ランゲルハンス島B細胞のDNA鎖が切断されることによって、インスリン分泌が低下し、血糖値が情報するためと考えられている。この結果、尿糖が増加すると、体重が減少するというのは、進行した糖尿病患者に頻繁に見られる現象である。今回の実験によって、ヒトデエキスがランゲハンス島の修復機能を示しているような知見が得られた。実験5−ヒトデエキスの糖尿病患者に対する血糖値の改善、および肥満の改善についての臨床実験 上述したように、ヒトデからエタノールで抽出したエキスに、抗肥満作用や、抗高脂作用があることが判明し、また、ヒトデエキスの経口投与における安全性も確認された。そこで、北海道根室近海で捕獲されたヒトデをアルコール(エタノール)抽出して得られたエキスを試験剤として、成人性糖尿病患者にこれを投与して、空腹時血糖値の推移、血清中性脂肪の増減、および体重の変化を調べた。試験方法(1) 被験者 空腹時血糖値が180mg/dl前後ないし240mg/dl前後の成人性(非インシュリン依存型)投入病患者5名を被験者とした。被験者全員が高脂血症を併発している肥満体であった。被験者の内訳は38歳〜55歳の男性3名、女性2名である。(2) 試験剤、投与方法 アルコール抽出したパウダー状のヒトデエキス(乾燥原料:エキス=5:1)を試験剤とした。1日3回、朝昼夕食後1gずつ、1日計2g服用させた。服用期間は60日間とした。(3) 併用薬剤 被験者が従来用いていた薬剤はそのまま供用させて、今までどおりの生活を続けてもらうようにした。ただし、新たに薬剤を追加服用することは禁じた。(4) 試験概要 60日間にわたって、試験剤を毎日服用するとともに、その間、被験者の都合により前後するものの、約15日おきに空腹時の血糖値と、中性脂肪値の測定を行った。また、体重を1ヶ月おきに測定した。(5) 判定方法 試験剤投与前の空腹時血糖値と、中性脂肪と、試験剤投与後60日目の空腹時の血糖値と、中性脂肪とを比較して、試験剤の抗糖尿病効果、抗高脂血症効果の有無を判断した。なお、誤差を考慮して試験剤服用前の血糖値や中性脂肪に比べて20%未満の上昇、低下を不変とし、20%以上の上昇、低下を有効あるいは悪化の判断基準とした。体重についても、2kg未満の増減を不燃とし、2kg以上の増減を有効あるいは悪化の判断基準とした。(6) 副作用の測定 臨床的に予期せざる症状が認められた場合、これを副作用とみなし、本試験剤との関連性について考察した。試験結果 表23に示すように、5例中、5例の血糖値が低下したが、20%以上の差を持って血糖値が低下した有効例は3名だった。20%以上の差をもって血糖値が上昇した悪化例は1名、低下も上昇も20%未満の不変例は1名であった。従って、有効例は60%であった。ただし、悪化したものは職場のストレスのため、飲酒量が増え、試験剤服用前に比べて明らかに摂取カロリー量が大幅に増加していた。表24に示すように、中性脂肪値が低下した有効例は、5例中、4例であった。体重に関しては、表25に示すように、5例中4例に有効例がみられた。副作用については、特記すべきことはなかったが、3名の被験者から大便がゆるくなったという報告があった。ただし、ヒトデエキスの服用を続行するうちに、暫時軽減し、1週間ほどで普通便に戻ったとの報告を受けた。考察 症例数は少ないが、薬剤に反応しない難治性の糖尿病患者の血糖値が改善したということは、ヒトデエキスに抗糖尿病効果があると推測される。体重も、中性脂肪の減少している例が多かったので、抗肥満効果もあると推測される。なお、被験者のうちの3例が、最高血圧が150mmHg以上であったが、その全員が、エキス服用後は血圧が130mmHg前後という正常範囲内に下がっていたので、ヒトデエキスが抗糖尿病、抗高脂血症、抗肥満、抗高血圧症といった作用を複合的に有することが考えられる。したがって、これらの効果は、単にステロイドサポニンの影響だけとは考えにくい。ヒトデは、貝類を主食としているのでタウリンが多量に含まれている可能性がある。 上述した実験にはヒトデエキスは、北海道根室産のキヒトデをアルコール抽出したエキスを用いたが、1体あたりのカドミウムの含有量が20ppm以下、砒素の含有量が20ppm以下のヒトデであれば、その産地は問わない。ヒトデの種類については、キヒトデを用いることが最も好ましい。 更に、オタネ人参や、ユッカなどの生薬に含まれているステロイドサポニンにも血清脂質を低下させ、肥満を抑制する作用があると考えられており、これらの生薬をヒトデエキスに混合して使用しても良い。このような生薬には、トウガン、カキオドシ、クワ葉、ニラ、オランダビュー、シナモン、サンシュユ、ヤマ芋、オオバコ、ケツメイシ、スイカズラ、黄精、ウコン、トウガラシ(カプサイシン)、およびアマドコロが考えられる。 上述したとおり、本発明に係るヒトデエキスを有効成分として含む物質は、抗肥満作用、抗高脂血症、抗糖尿病作用、抗高血圧作用を有する。ヒトデから抽出して得られるエキスを有効成分とすることを特徴とする抗肥満物質。ヒトデから抽出して得られるエキスを有効成分とすることを特徴とする抗高脂血物質。請求項1に記載の抗肥満物質が更に、トウガン、カキオドシ、クワ葉、ニラ、オランダビュー、シナモン、サンシュユ、ヤマ芋、オオバコ、ケツメイシ、スイカズラ、黄精、ウコン、トウガラシ(カプサイシン)、およびアマドコロからなる群から選択した材料から抽出して得られる少なくとも一のエキスを具えることを特徴とする抗肥満物質。請求項2に記載の抗高脂血物質が更に、トウガン、カキオドシ、クワ葉、ニラ、オランダビュー、シナモン、サンシュユ、ヤマ芋、オオバコ、ケツメイシ、スイカズラ、黄精、ウコン、トウガラシ(カプサイシン)、およびアマドコロからなる群から選択した材料から抽出して得られる少なくとも一のエキスを具えることを特徴とする抗高脂血物質。請求項1ないし4のいずれか1項に記載の物質において、前記ヒトデに含まれるカドミウムの量がヒトデ一体当たり20ppm以下、砒素の量がヒトデ一体当たり20ppm以下であることを特徴とする物質。 【課題】 これまで利用価値の低かったヒトデからエキスを抽出して、抗肥満物質、抗高脂血物質として利用する。 【解決手段】 ヒトデエキスから抽出して得られるエキスを有効成分とする抗肥満物質、および、抗高脂血物質を提供する。このヒトデエキスを抽出する原料のヒトデに含まれるカドミウムの量は、ヒトデ一体当たり20ppm以下、砒素の量は、ヒトデ一体当たり20ppm以下であることが好ましい。【選択図】 なし


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