タイトル: | 公開特許公報(A)_血管内皮機能の改善剤および健康食品 |
出願番号: | 2007101647 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/7048,A61K 36/24,A61K 36/73,A61K 36/48,A61P 7/02,A61P 43/00,A61P 9/10,A61P 9/12,A61P 3/10,A23L 1/30 |
金澤 浩司 香川 珠実 田川 智恵 中川 誠 JP 2008255075 公開特許公報(A) 20081023 2007101647 20070409 血管内皮機能の改善剤および健康食品 ダイドードリンコ株式会社 595135774 鎌田 文二 100074206 鳥居 和久 100087538 田川 孝由 100112575 東尾 正博 100084858 金澤 浩司 香川 珠実 田川 智恵 中川 誠 A61K 31/7048 20060101AFI20080926BHJP A61K 36/24 20060101ALI20080926BHJP A61K 36/73 20060101ALI20080926BHJP A61K 36/48 20060101ALI20080926BHJP A61P 7/02 20060101ALI20080926BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080926BHJP A61P 9/10 20060101ALI20080926BHJP A61P 9/12 20060101ALI20080926BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080926BHJP A23L 1/30 20060101ALI20080926BHJP JPA61K31/7048A61K35/78 PA61K35/78 HA61K35/78 JA61P7/02A61P43/00 111A61P9/10 101A61P9/12A61P3/10A23L1/30 B 6 OL 12 4B018 4C086 4C088 4B018MD61 4B018ME04 4B018ME14 4B018MF01 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA11 4C086MA02 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA42 4C086ZA45 4C086ZA54 4C086ZC02 4C086ZC35 4C088AB31 4C088AB51 4C088AB59 4C088AC05 4C088BA09 4C088CA05 4C088MA07 4C088NA14 4C088ZA42 4C088ZA45 4C088ZA54 4C088ZC02 4C088ZC35 この発明は、所定の成分を有効成分とする血管内皮機能の改善剤および同成分を含有する健康食品に関する。 血管内皮細胞は、血管トーヌスや血管透過性を調節して抗血栓性に機能するなど、生体循環系の恒常性維持に重要な役割を果たしていると言われ、すなわち、血管内皮細胞の障害は、高血圧や動脈硬化などの心血管疾患と深く係わっていることが明らかにされてきた。血管内皮細胞は、血管の最内層に位置しており、一層の細胞層によって成り立っている。 最近、この血管内皮細胞は血管内腔と血管壁を隔離するバリアーとしての働きの他に、様々な生理活性物質を産生、分泌し、特に一酸化窒素(以下、NOと略記する。)は非常に重要であるといわれている。 NOは、上記の血管トーヌスや血管透過性の調節、血圧やインスリン感受性の維持、動脈硬化の予防等に直接影響を与える因子として考えられている。そして、高血圧症、更年期等によりNOの産生が低下した場合、血管内皮細胞機能が傷害され、動脈硬化(血管の肥厚化)、肩こり・冷え性等の更年期障害が惹起されることも知られている。 生体内で血管内皮細胞がどのような機序によって障害されるかについては十分に解明されているとは言い難いが、動脈硬化、高血圧、糖尿病の治療のために、これらの疾病の原因、若しくはこれらに起因する血管障害を阻止、治療する薬物についての提案がなされている。特に、フェノフィブラートを有効成分とする血管内皮細胞機能改善剤(特許文献1)、コーヒーの生豆や南天の葉などから抽出されるクロロゲン酸、カフェ酸またはフェルラ酸を含有する動脈硬化予防剤、NO作用増強剤または血管内皮機能改善剤(特許文献2)、アサガオカラクサ属植物のエキスからなる血管内皮増殖因子産生促進剤(特許文献3)が知られている。)特開平5−194209号公報特開2003−261444号公報特開2003−160503号公報 しかし、上記した従来技術においては、それらの提案する血管内皮細胞機能性天然成分は、未だ素材が限られたもので利用性が充分に高められたものではなく、将来、増々必要とされる可能性の高い動脈硬化(血管肥厚化)、高血圧症、糖尿病の予防や治療のために、多様な素材から多様な成分によって血管障害の面から副作用がなく安全で持続的に摂取できる薬剤や健康食品が求められる。 そこで、この発明の課題は、上記した問題を解決して、新規な素材と成分の組み合わせによって、新たな機能のあることを見出し、それによって血管障害の面から副作用がなく安全で持続的に摂取でき、NO作用増強剤、血管内皮細胞機能の保持と改善、動脈硬化、高血圧症または糖尿病の予防にも有用な血管内皮機能の改善剤および健康食品を提示することである。 本願の発明者らは、上記した現況に鑑みて鋭意研究した結果、長期的に服用または摂取が可能であるように安全性が高いものであり、NO産生の増強効果があり、また血管障害の予防および改善効果を奏し、特に動脈硬化と高血圧症または糖尿病の予防や治療を血管障害の面から達成できる成分を発見し、この発明を完成させたものである。 すなわち、上記の課題を解決するために、この発明においては、ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物を有効成分として含有する血管内皮機能の改善剤としたのである。ここでいう、血管内皮機能の改善としては、NOの産生機能の促進もしくは分泌機能の促進またはその両方が含まれ、また動脈硬化予防機能もしくは高血圧予防機能の改善が含まれる。 ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物は、羅布麻(ラフマ)、山査子(サンザシ)、セントジョーンズワートおよび槐花(カイカ)から選ばれる1種以上の植物体から抽出された成分の混合物を採用することができる。 すなわち、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンは、ラフマ、サンザシ、セントジョーンズワート等の葉などの植物体から水、アルコール等の溶媒による通常の化学工学的抽出技術によって容易に抽出分離がなされ、精製することができる。 ラフマは、中国においては古くからお茶として飲用されており、その安全性はよく知られている。すなわち、ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物が、ラフマの水性溶媒抽出物からなることは、安全性および混合成分の入手容易性において好ましいことである。 そして、サンザシ、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウとも別称される。)等の植物もそれぞれ食品や薬用素材(ハーブ)として用いられており、その安全性は問題が無いものである。 ハイペロサイド及びイソクエルシトリンの作用効果については、特に、両者が共存した場合においてのみ顕著であることを見出し、この発明を完成させたものである。 ハイペロサイド及びイソクエルシトリンを各々単独で服用乃至は摂取した場合には、この発明にみられるような作用効果は発揮されない。すなわち、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンの共存作用がこの発明の新しい知見であり必須条件である。更に、この両成分が共存した場合において、体内への吸収、代謝が持続的に緩やかに行われるため、その作用効果が長時間継続する特徴があることも見出したのである。 これらのことから、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンの混合物を含有するように調整した周知の食品とすることにより、血管機能障害予防用の健康食品とすることができる。 このように血管内皮細胞への作用は、本願の発明者らが発見したことによりこの発明は完成され、それによって高血圧症、動脈硬化症、糖尿病によって生起する血管障害、すなわち、血管内皮細胞異常に対する安全で優れた予防、治療効果を有する薬剤が提示され、また高血圧症、動脈硬化症、糖尿病等の疾病自体の予防や治療にも効果が発揮される。 この発明は、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンの混合物を有効成分として含有するので、血管障害の面から副作用がなく安全で持続的に摂取できNO作用が増強され、血管内皮細胞機能の改善作用を奏し(機能保持も含めて言う。)、それによって動脈硬化症と高血圧症または糖尿病の予防効果があり、それゆえに前記混合物を含有する食品を調製することにより、健康食品を提示できるという利点がある。 この発明に用いるハイペロサイド及びイソクエルシトリンの混合物は、所定の植物種のうち、特にラフマにおいて両成分がほぼ等量ずつ含まれているので、その植物体を採用することが好ましい。 すなわち、ラフマ葉には、ハイペロサイド、イソクエルシトリン共に0.2%〜0.5%(乾燥基準)が含まれている。それに対して、サンザシ葉では、ハイペロサイドは1%、イソクエルシトリンは0.1%(発明者ら分析例)であり、ハイペロサイドが偏在している。 カイカは、含有成分のルチンからイソクエルシトリンを合成するもので、逆にイソクエルシトリンの原料素材となる。なお、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンは、汎用分析機器の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて容易に分析が出来るものである。 最も適した原材料のラフマは、キョウチクトウ科の植物であって、学名はアポシナム ベネタム エル(Apocynum venetum L.)であり、主に中国の東北、西北部に多く自生している多年草の草本である。ラフマから抽出される有効成分は、特に植物体の部位は限定されないが、主として葉から採取されたものであってよく、それらの抽出素材を天日乾燥した後、裁断、乾燥し、所要の場合には焙煎したものを熱水抽出・精製して製造する。 そのようにして製造された抽出・精製物には、ラフマ葉と同じく、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンがほぼ等量割合で含有されており、改めてのこれら有効成分の割合調整なしに、本発明品の原材料として使用可能である。 薬剤として用いる場合には、熱水抽出・精製して得たラフマエキスを、更に通常既知の分画操作によって高度に精製し、所定量を含む薬剤とする。これに対して、日常摂取する健康食品の場合には、必ずしも高度に有効成分を精製する必要はなく、熱水抽出した茶系飲料、濃縮して製造したエキス飲料、更には濃縮・乾燥した粉体食品として用いることができる。 この発明に使用するラフマは、乾燥のみで熱水抽出原料とすることもできるが、特に、健康食品素材として、お茶・エキス飲料、粒状粉体用となす場合は、味覚や嗜好が高まるように焙煎することが好ましい。 有効成分のハイペロサイド及びイソクエルシトリンは、ラフマ原料の約10倍の熱水で抽出可能であり、抽出温度90℃〜100℃、約60分の抽出条件が好ましい。抽出された液は、例えば150メッシュの篩機で固形分を分離、グローバル濃縮機にて、温度40℃〜60℃、真空度90kpa〜99kpaの条件にて濃縮される。濃縮液は遠心分離機で固形分を除去した後、殺菌工程を経た後エキスを得る。 このエキスは、水にて還元することによって茶系飲料やエキス系飲料とされ、また高純度ハイペロサイド及びイソクエルシトリン製造の原料として使用される。更に、このエキスは噴霧乾燥装置にて乾燥し、造粒することによって粉体状乾燥品となるが、この乾燥品はエキスの場合と同様に各種の製品や薬剤の原料として使用される。 この発明の薬剤及び健康食品の有効成分であるハイペロサイド及びイソクエルシトリンの効果は、両成分がほぼ等量共存する条件下で1日当たり40mg(ラット体重1Kg換算)摂取において最も効率よく好ましい有効性が認められる。すなわち、摂取有効量は10〜100mg、好ましくは30〜50mgである。 人に及ぼす効果は、医薬品または食品に機能成分を含有せしめて摂取させた場合、ラット等の動物よりもそれらに対する感受性が高いため、その必要とする摂取量は少量になるのが一般的である。そして、その程度は通常動物実験例の50分の1乃至は100分の1であることは良く知られているところであり、薬剤では50分の1、飲食品では100分の1で換算されている。従って、上記有効成分ハイペロサイド及びイソクエルシトリンの量は、成人(体重換算60Kg)で1日当たりの摂取量が、薬剤で12mg〜120mg、好ましくは40mg〜60mg、飲食品で6mg〜60mg、好ましくは20mg〜30mgである。 この発明においては、ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物を有効成分として含有する血管内皮機能の改善剤は、公知の製剤技術によって錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、輸液、血液透析液、腹膜透析液、液剤などの任意の製剤形態をとることができ、使用目的に応じて適切な投与法を選択して使用することができる。 この発明の製剤を構成する成分例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、付湿剤、安定化剤、溶解補助剤、精製水、pH調整剤、保存剤などを挙げることができ、投与形態に応じて選択し公知の慣用される製造法により調製することができる。 さらにこの発明の血管内皮機能の改善剤は、米飯、味噌、醤油、カップ麺を含む各種の麺類、カレールー、シチュー、各種スープ類、ソーセージ、竹輪、蒲鉾、はんぺんなどの練り製品、ドレッング類、パン類、粉ミルク、ヨーグルト、乳飲料、乳酸飲料、野菜・果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの飲料、チョコレート、クッキー、チュウインガム、飴などの菓子類に添加して健康食品として使用することができる。また、前記した製剤形態の健康食品としてもよいのは勿論である。 この発明の血管内皮機能の改善剤を含む食品類においては、必要に応じて食物繊維、乳清蛋白質、乳清蛋白質加水分解物、糖類、ビタミンA、ビタミンB1 、アスコルビン酸、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン類、その他にはニコチン酸アミド、葉酸、パントテン酸カルシウム、タウリン、カゼイン、レシチン、モノグリセライド、ポリグリセライド、および葉緑素などの中から適宜に選択した補助成分を添加して使用することもできる。 また、ヒトばかりでなく、ペットなどの動物用の餌に対してこの発明の血管内皮機能の改善剤を添加し、動物用健康食品として高血圧等の血管疾患に起因する各種病態の改善にも有用である。 ところで、生活習慣病、加齢等によってNOの産生量が減少した場合、血管内皮細胞機能障害、動脈層の肥厚化・弾力性や柔軟性の欠如等の障害を生起し動脈硬化等の重篤な疾病を発生することが良く知られている。 本願の発明者らは、この疾病モデル系である高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて研究を実施し、ここに提案する発明をなしたもので、以下にその詳細を述べる。 すなわち、SHRへハイペロサイドとイソクエルシトリンの各単独、両成分の混合物及びコントロール物質としてのCMC(カルボキシメチルセルロース:食品添加物安定剤)の連続経口投与試験を行い、血圧を測定した。その結果、ハイペロサイドとイソクエルシトリンの単独経口投与では、有意な降圧作用を認めなかった。 それに対して、ハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物を経口投与した場合有意な降圧作用を認めた。そこで、有意な降圧作用が認められたハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物連続投与後のSHRについて、動脈血管中膜の厚さ(形態計測)、血管内皮NO合成酵素(eNOS)活性(免疫組織染色)、血中NO濃度(定量分析)の評価を行い、血管肥厚抑制傾向、eNOS活性の上昇及び血中NO濃度の有意な増大を認めた。 また、SHRへハイペロサイドとイソクエルシトリンの各単独及び両成分の混合物を単回経口投与し、投与直後より24時間の血中代謝物濃度の追跡を行った。その結果、ハイペロサイドは大腸で吸収されて、イソクエルシトリンは小腸で吸収されることが判明した。すなわち、両成分では体内に吸収代謝循環されるのに時間差が存在することが明らかになった。 そして、ハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物を投与した場合、まず、イソクエルシトリンが小腸で吸収され、遅れてハイペロサイドが大腸で吸収されて、血中のケルセチン代謝物濃度が維持されることが認められた。ハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物投与の場合のように、適度の濃度のケルセチン代謝物が血中に存在、長時間循環することによって、血管内皮がこれら代謝物にさらされることが重要である。 このようにこの発明の効果は、ハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物として、摂取、投与された時にのみ生起されるものであり、この発明は詳細な試験検討による特異な現象の解明によってなされたものである。[実施例1] SHR(♂、5週齢)に、1日当たり1回、CMC(対照)、ハイペロサイド[以下、HPと略記する。]40mg/Kg(体重換算)、イソクエルシトリン[以下、IQと略記する。]40mg/Kg(体重換算)、ハイペロサイド及びイソクエルシトリン混合物[以下、HP+IQと略記する。]40mg/Kg(体重換算)を7週間連続投与(胃内強制経口投与)し、血圧を測定し、その結果を表1に示した。 表1の結果からも明らかなように、対照群と比較して、[HP]、[IQ]の単独投与群においては有意な降圧作用は認められず、[HP+IQ]投与群においてのみ有意な降圧作用が認められた。[実施例2] 実施例1に示した対照群および有意な降圧作用が認められた40mg/Kg[HP+IQ]投与試験群の各々のSHR全数(N=7)、正常対照群としてのウィスターキョウトラット(WKY、N=3)について、心臓冠動脈を摘出、血管横断面切片を作製、免疫組織化学染色による血管中膜(平滑筋)の厚さの形態計測を行なった。 図1に、WKY正常対照群、図2にSHR対照群、図3に40mg/Kg[HP+IQ]投与試験群の血管横断面写真の例を示した。 図1〜3で環状(褐色)に濃色で染色されている部分が、血管中膜を示している。血圧上昇を生起しないWKYの血管中膜の厚さは、血圧上昇のあったSHR(対照群)よりも薄かった。すなわち、血圧上昇したSHRの血管中膜の厚さは有意に厚くなった。そして、血圧上昇が見られたSHR(対照群)と[HP+IQ]投与によって血圧上昇が抑制された血管中膜厚さを比較すると、後者でその血管中膜厚さは薄い傾向が認められた。 表2に、一匹のWKY・SHR血管切片の一葉につき10箇所の厚さ計測して、統計処理を行った結果を示した。 WKY正常対照群とSHR対照群では有意差が認められ、SHR対照群では経時による血圧上昇後、血管中膜の肥厚化が認められた。SHR対照群とSHR[HP+IQ]投与試験群では、バラツキが大きいため有意差は出ていないが、後者で薄くなる傾向があり、すなわち、血管中膜肥厚化の抑制の傾向が認められた。 実施例1に示した対照群および有意な降圧作用が認められた40mg/Kg[HP+IQ]投与試験群の各々のSHR全数(N=7)、正常対照群としてのWKY(N=3)について、心臓冠動脈を摘出、血管横断面切片を作製し、免疫組織化学染色による血管内皮のNO合成酵素(eNOS)活性を観察した。 その写真例を図4〜6に示した。これらの図において、eNOS活性は、血管内壁の染色部の着色(暗褐色)の濃淡で示されており、eNOS活性が高いほど着色程度が高くなり、暗褐色の色が濃くなっていた。 図4〜6からも明らかなように、WKYの内壁着色の程度は最も高く、色も最も濃い黒褐色を示した。それに比較し、SHR対照群では着色程度が弱くなっていた。そして、SHR[HP+IQ]投与試験群では着色の程度が強くなり、褐色を示していた。すなわち、経時によって血圧が上昇したSHRのeNOS活性は低下傾向を示すが、[HP+IQ]投与試験群ではeNOS低下傾向は抑制されたことがわかる。[実施例4] 実施例1に示した対照群および有意な降圧作用が認められた40mg/Kg[HP+IQ]投与試験群の各々のSHR全数(N=7)について、麻酔下採血し、グリース法にて血漿中のNO濃度([NO2+NO3]イオン濃度)を測定した。表3に示す結果からも明らかなように、両者には有意差が認められ、血圧が上昇した対照群よりも[HP+IQ]投与試験群におけるNO濃度が高く、NOの産生量が大きいことが判った。[実施例5] SHR(♂、10週齢)にCMC(対照)、20mg/Kg[HP]、20mg/Kg[IQ]、40mg/Kg[HP+IQ]を単回投与(胃内強制経口投与)して、その後、0.5、1、2、6、12、24時間毎に採血して、各々の血漿中のケルセチン及びイソラムネチン濃度をLC−MS/MS法にて分析定量した。 血漿中のケルセチン及びイソラムネチンは、ハイペロサイド及びイソクエルシトリンが腸より吸収されて血中に循環する時の代謝物、すなわち、ケルセチン代謝物に対応する物質であり、具体的な分析においては、血漿中ケルセチン代謝物を酵素分解してそのアグリコンであるケルセチン及びイソラムネチンをLC―MS/MS法にて分析定量した。 その結果を表4に示した。この試験結果で極めて特徴的なことは、HPとIQの代謝物(ケルセチン及びイソラムネチン)の血中濃度の推移であり、HPでは5〜6時間後に代謝物最高濃度(Cmax)に達し、IQでは1〜3時間にて達した。 このことは、HPは大腸で吸収されIQは小腸で吸収されることを意味し、両成分が体内に吸収・代謝されるのに時間差があることを示している。[HP+IQ]投与時では3〜6時間にCmaxに達した。 また、[HP+IQ]混合物投与時の血中代謝物濃度は、HP単独投与の場合よりも有意に高く、IQ単独投与で見られたような急激な濃度上昇は示さず、投与後6時間をかけて徐々に上昇し、その後緩やかに下降する傾向を示した。すなわち、[HP+IQ]投与時では、血中で一定濃度の代謝物が長時間維持されることが明らかになった。HP及びIQ各々単独投与時の血中代謝物濃度は、大腸での吸収と、小腸での吸収に別れるため継続的な作用とはならず、1日一回などの間欠的投与においては、血管内皮への作用も持続的なものではなく間欠的なもの(言わばパルス状)となる。WKY・CMC投与正常対照群の血管断面の顕微鏡写真SHR・CMC投与対照群の血管断面の顕微鏡写真SHR・[HP+IQ]投与試験群の血管断面の顕微鏡写真WKY・CMC投与正常対照群の血管内皮のeNOS活性を示す血管断面の顕微鏡写真SHR・CMC投与対照群の血管内皮のeNOS活性を示す血管断面の顕微鏡写真SHR・[HP+IQ]投与試験群の血管内皮のeNOS活性を示す血管断面の顕微鏡写真 ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物を有効成分として含有する血管内皮機能の改善剤。 血管内皮機能の改善が、一酸化窒素の産生・分泌機能の促進である請求項1に記載の血管内皮機能の改善剤。 血管内皮機能の改善が、動脈硬化予防機能または高血圧予防機能の改善である請求項1に記載の血管内皮機能の改善剤。 ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物が、羅布麻(ラフマ)、山査子(サンザシ)、セントジョーンズワートおよび槐花(カイカ)から選ばれる1種以上の植物体から抽出された成分の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の血管内皮機能の改善剤。 ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物が、羅布麻(ラフマ)の水性溶媒抽出物である請求項1〜3のいずれかに記載の血管内皮機能の改善剤。 ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物を含有し、血管機能障害予防用の健康食品。 【課題】血管障害の面から副作用がなく安全で持続的に摂取できNO作用増強剤、血管内皮細胞機能保持及び改善及び動脈硬化・高血圧症・糖尿病の予防及び健康食品を提示することである。【解決手段】ハイペロサイドおよびイソクエルシトリンの混合物を有効成分として含有する血管内皮機能の改善剤とする。両成分が共存した場合において、体内への吸収、代謝が持続的に緩やかに行われるため、その作用効果が長時間継続する。血管内皮機能の改善としては、一酸化窒素の産生・分泌機能の促進であり、動脈硬化予防機能や高血圧予防機能も改善される。【選択図】なし