生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_アルコール生産方法
出願番号:2007095733
年次:2008
IPC分類:C12P 7/10


特許情報キャッシュ

遠山 正幸 片桐 学 高岡 一栄 JP 2008253153 公開特許公報(A) 20081023 2007095733 20070330 アルコール生産方法 三井造船株式会社 000005902 丸山 英一 100101340 遠山 正幸 片桐 学 高岡 一栄 C12P 7/10 20060101AFI20080926BHJP JPC12P7/10 2 OL 7 4B064 4B064AC03 4B064CA06 4B064CA21 4B064CB07 4B064CC03 4B064CC08 4B064CD19 4B064CD22 4B064DA10 4B064DA16 4B064DA20 本発明はセルロースからアルコールを生産する方法に関し、詳しくはセルロースの糖化とアルコール生産を同時に効率よく行うアルコール生産方法に関する。 廃建材など、木質系バイオマスからアルコールを生産する場合、まず硫酸などで酸処理を行ってヘミセルロースを加水分解してキシロース、グルコースなどの糖を得る。 加水分解後の残渣には、セルロースを主とした成分が残留しているので、これを酸または酵素で加水分解すれば、さらにグルコースを得ることができるのであるが、セルロースはヘミセルロースに比べ分解されにくいため、酸で加水分解しようとすると、ヘミセルロースを分解するときよりも高温の厳しい条件にする必要があり、そのような条件下では、セルロースの分解とほぼ同じ速度で、生成物である糖の過分解も起こるため糖の回収率が悪くなる。 そのため、セルロースの加水分解には酵素を用いることが一般的であるが、酵素により、セルロースを加水分解(糖化)する場合では、糖化生成物であるグルコースが蓄積することによって酵素の活性が阻害される現象(フィードバック阻害)がおこり、糖化が抑制されるという問題があった。 このため特許文献1では、セルロースを酵素(セルラーゼ)によって糖化する工程において、限外ろ過膜装置を用い、グルコースを除くことでセルラーゼの活性を維持し、糖化効率を向上させることが開示されている。 酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時進行するという、日本酒の発酵方法として知られる並行複発酵も、このフィードバック阻害を防ぐ上では有効である。 糖化生成物が蓄積して酵素の活性を阻害する前に、酵母が糖を消費してアルコールにしてしまうので酵素は分解活性を高く保つことができるからである。 一般に並行複発酵は、糖化と発酵をそれぞれ行う単発酵による発酵法に比べ、高濃度のアルコールが得られることが知られている。これを応用して木質系の原料からアルコールを生産する場合にも、1つの反応槽内でセルラーゼによるセルロースの糖化と、酵母によるアルコール発酵を行う方法が開示されている(例えば、特許文献2)。 この方法は、糖化と発酵の工程をひとつの槽で並行して行っているので、全体のアルコール生産にかかる時間が短縮できるほか、設備コストを低減することができるという利点もある。 セルラーゼは、セルロース分解菌を培養することで生成させて得ることもできるし、アスペルギルス属、トリコデルマ属などに属するセルロース分解菌を工業的に培養して精製し、セルロース製剤として販売されている(非特許文献1、2)。特開2006−88136号公報特開2005−58055号公報天野エンザイム株式会社、“セルラーゼAアマノ”、“セルラーゼTアマノ”、「食品工業用酵素」カタログ、 [online]、[平成19年3月6日検索]、インターネット、<URL:http://www.amano-enzyme.co.jp/jp/productinfo/medical04.html>ヤクルト薬品工業株式会社、“セルラーゼオノズカR10、RS”、 ホームページ「学術研究用酵素」、[online]、[平成19年3月6日検索]、インターネット、<URL:http://www.yakult.co.jp/ypi/jp/product.html> 特許文献1では、フィードバック阻害を防ぐという点では効果があるが、新たに限外ろ過膜装置を設ける必要があるなど、アルコール生産系を複雑にしなければならないので、コストがかかる。 その点から言うと、特許文献2のような、ひとつの反応槽で並行複発酵を行う方法は簡便でかつフィードバック阻害を防ぐことができるので有効である。 しかし、セルロースを用いる工業的なアルコール生産において、並行複発酵を行うには課題があることを本発明者らは見出した。 すなわち、一般的に、酵母の至適温度は25〜35℃であり、それ以上になると発酵能力が落ち、40℃ではほとんど活動ができなくなってしまう。 一方で、非特許文献1、非特許文献2に示されるように、セルラーゼ製剤の至適温度は一般に40〜55℃であり、35℃の条件下では、セルラーゼの活性は、至適温度における活性に対して60〜80%程度に落ちてしまい、糖化の効率が低くなる。 特許文献2のように、セルロースと酵母を用いて1つの反応槽内で並行複発酵を行う発明においては、酵母の至適温度にあわせて35℃前後で糖化反応を行っており、酵素の能力を十分に生かすことができていなかった。 本発明者らは、セルラーゼの活性を生かし、効率的にアルコール生産を行う方法はないかと鋭意研究を行った結果、本発明に至った。 本発明の課題は酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵とをひとつの反応槽で効率的に行うアルコール生産方法を提供することにある。 本発明の他の課題は以下の記載によって明らかとなる。 上記課題は以下の発明によって解決される。 (請求項1) 木質系バイオマス由来のセルロースを酵素反応によってグルコースに糖化し、 前記グルコースをサッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株からなる酵母に供給してアルコール発酵を行いアルコールを生産する、アルコール生産方法において、 酵素による前記セルロースを糖化する糖化反応と、前記AM12菌株からなる酵母によるアルコール発酵を、ひとつの反応槽内で同時に行う際に、該反応槽内の温度を40〜45℃に調整することを特徴とするアルコール生産方法。 (請求項2) 前記反応槽内の温度を40〜42℃に調整することを特徴とする請求項1記載のアルコール生産方法。 本発明によれば、酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵とをひとつの反応槽で効率的に行うアルコール生産方法を提供することができる。 以下、本発明の実施の形態を説明する。 本発明において、糖化原料として用いるセルロースは、廃建材、古紙、ダンボール、植物系食品廃棄物などの木質系バイオマスに由来し、あらかじめヘミセルロースなどが除かれ、セルロース純度が高いものが好ましい。 本発明に用いるセルラーゼとしては、微生物を培養して抽出して得たものの他、市販のセルラーゼ製剤を使用することができる。市販のセルラーゼ製剤として、セルラーゼAアマノ、セルラーゼTアマノ(天野エンザイム社)、セルラーゼオノズカRS(ヤクルト薬品工業株式会社)、などが挙げられる。 本発明に用いる酵母は、サッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株(以下、AM12菌と称する)であり、工業技術院微生物工業技術研究所に、微工研受託番号第6749号として寄託されている。詳しくは特開昭59−135896号公報を参照できる。 本発明の好ましい形態としては、反応槽内を十分に混合できる機能を持った攪拌装置と、温度、pH、溶存酸素濃度を調節できる装置を備えた反応槽に、セルロース、セルラーゼ、酵母、緩衝液を入れ、アルコールを生産する。 反応槽内の温度を調整するための手段としては、反応槽内の温度検出器に連動させたヒーターのON、OFFによる他、アルコール発酵に伴う発酵熱をそのまま利用または後段の蒸留工程で用いる熱を併用することが挙げられ、過熱の場合に冷却する装置を設けることも好ましい。 反応槽に備えるpH、溶存酸素濃度を維持する装置は、設定されたpH、溶存酸素濃度を維持することができれば特に限定されない。 アルコール生産には、連続生産式、バッチ式などを採用することができるが、反応槽内の反応が単発酵に比べ複雑であるので、バッチ式で行う方が好ましい。 本発明に用いるAM12菌は45℃であってもアルコール生産能力が維持されるので、セルラーゼの至適温度に近い温度で糖化を行うことができる。 反応槽内の温度は40〜45℃、好ましくは40〜42℃であり、pHは3〜7、好ましくは3.5〜5、さらに好ましくは4〜5であり、溶存酸素濃度は0.1〜3ppmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1ppmである。 1回の糖化反応に供するセルロースは、セルロースが完全に糖に分解され、完全にアルコールに変換された場合に得られるアルコール量を計算し、アルコール培養液中の理論エタノール濃度が10〜30%、好ましくは15〜25%となるようにする。 AM12菌は耐アルコール性があり、エタノール濃度が20%以上であってもアルコール生産能力が阻害されないため、通常酵母であれば不可能なアルコール濃度まで生産を行うことができる。 反応終了後のアルコール培養液のアルコール濃度は、原料(セルロース)の量のほか、原料投入時に添加する緩衝液の量で調節することもできる。 セルロースに対してセルラーゼは10〜30FPU/g−drymatter、好ましくは10〜20FPU/g−drymatter添加する。 発酵槽内における菌体濃度は1.2〜2.4×107cells/ml、好ましくは1.8〜2.4×107cells/mlである。 緩衝液としては、滅菌水を用いても良いが、酵母エキス、ポリペプトン、コーンスティープリカーなどの微生物培養用の培地となる成分を1%程度含んだものが好ましい。 本発明のアルコール生産方法によると、セルラーゼの糖化効率がよく、高濃度のエタノールを生産できるので、短時間で多くのアルコールを生産することができる。 以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。 実施例1 あらかじめ酵母菌体の量が2.0×107cells/mlとなるように予備培養を行った5L容量の反応槽内(液量3L)に、60g/Lのセルロース(酸処理残渣)、20FPU/d−matterのセルラーゼを添加し、反応槽内の温度を42℃、pHを4.5、溶存酸素濃度を0.2ppmに設定して反応を行った。 1日後、反応を終了し、アルコール濃度を測定した結果50g/Lであった。残留セルロースは20g/Lで、残糖はなく、セルラーゼによって加水分解された糖はすべてアルコールに変換することができた。 実施例1における、反応槽内のセルロース量、反応槽内に存在するグルコース、セルロースが加水分解されて生成したグルコース、およびエタノールの濃度を図1に示す。 比較例1 従来酵母(Saccharomyces cerevisiae(JCM7255)標準菌株)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。 セルラーゼによる糖化は進行したが、42℃では酵母菌が生育できなかったためエタノールが生産されなかった。酵母によって糖が消費されず、フィードバック阻害によってセルラーゼによる糖化も阻害され、残留セルロースも確認された。実施例1における反応槽内の濃度変化を示すグラフ 木質系バイオマス由来のセルロースを酵素反応によってグルコースに糖化し、 前記グルコースをサッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株からなる酵母に供給してアルコール発酵を行いアルコールを生産する、アルコール生産方法において、 酵素による前記セルロースを糖化する糖化反応と、前記AM12菌株からなる酵母によるアルコール発酵を、ひとつの反応槽内で同時に行う際に、該反応槽内の温度を40〜45℃に調整することを特徴とするアルコール生産方法。 前記反応槽内の温度を40〜42℃に調整することを特徴とする請求項1記載のアルコール生産方法。 【課題】酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵とをひとつの反応槽で効率的に行うアルコール生産方法を提供すること。【解決手段】 木質系バイオマス由来のセルロースを酵素反応によってグルコースに糖化し、前記グルコースをサッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株からなる酵母に供給してアルコール発酵を行いアルコールを生産する、アルコール生産方法において、酵素による前記セルロースを糖化する糖化反応と、前記AM12菌株からなる酵母によるアルコール発酵を、ひとつの反応槽内で同時に行う際に、該反応槽内の温度を40〜45℃に調整することを特徴とするアルコール生産方法。【選択図】 なし


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特許公報(B2)_アルコール生産方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_アルコール生産方法
出願番号:2007095733
年次:2012
IPC分類:C12P 7/10


特許情報キャッシュ

遠山 正幸 片桐 学 高岡 一栄 JP 5091523 特許公報(B2) 20120921 2007095733 20070330 アルコール生産方法 三井造船株式会社 000005902 丸山 英一 100101340 遠山 正幸 片桐 学 高岡 一栄 20121205 C12P 7/10 20060101AFI20121115BHJP JPC12P7/10 C12P 7/00−7/66 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭63−042690(JP,A) 特開昭59−135896(JP,A) 特開昭60−244294(JP,A) 4 IPOD FERM BP-798 2008253153 20081023 7 20090310 三原 健治 本発明はセルロースからアルコールを生産する方法に関し、詳しくはセルロースの糖化とアルコール生産を同時に効率よく行うアルコール生産方法に関する。 廃建材など、木質系バイオマスからアルコールを生産する場合、まず硫酸などで酸処理を行ってヘミセルロースを加水分解してキシロース、グルコースなどの糖を得る。 加水分解後の残渣には、セルロースを主とした成分が残留しているので、これを酸または酵素で加水分解すれば、さらにグルコースを得ることができるのであるが、セルロースはヘミセルロースに比べ分解されにくいため、酸で加水分解しようとすると、ヘミセルロースを分解するときよりも高温の厳しい条件にする必要があり、そのような条件下では、セルロースの分解とほぼ同じ速度で、生成物である糖の過分解も起こるため糖の回収率が悪くなる。 そのため、セルロースの加水分解には酵素を用いることが一般的であるが、酵素により、セルロースを加水分解(糖化)する場合では、糖化生成物であるグルコースが蓄積することによって酵素の活性が阻害される現象(フィードバック阻害)がおこり、糖化が抑制されるという問題があった。 このため特許文献1では、セルロースを酵素(セルラーゼ)によって糖化する工程において、限外ろ過膜装置を用い、グルコースを除くことでセルラーゼの活性を維持し、糖化効率を向上させることが開示されている。 酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時進行するという、日本酒の発酵方法として知られる並行複発酵も、このフィードバック阻害を防ぐ上では有効である。 糖化生成物が蓄積して酵素の活性を阻害する前に、酵母が糖を消費してアルコールにしてしまうので酵素は分解活性を高く保つことができるからである。 一般に並行複発酵は、糖化と発酵をそれぞれ行う単発酵による発酵法に比べ、高濃度のアルコールが得られることが知られている。これを応用して木質系の原料からアルコールを生産する場合にも、1つの反応槽内でセルラーゼによるセルロースの糖化と、酵母によるアルコール発酵を行う方法が開示されている(例えば、特許文献2)。 この方法は、糖化と発酵の工程をひとつの槽で並行して行っているので、全体のアルコール生産にかかる時間が短縮できるほか、設備コストを低減することができるという利点もある。 セルラーゼは、セルロース分解菌を培養することで生成させて得ることもできるし、アスペルギルス属、トリコデルマ属などに属するセルロース分解菌を工業的に培養して精製し、セルロース製剤として販売されている(非特許文献1、2)。特開2006−88136号公報特開2005−58055号公報天野エンザイム株式会社、“セルラーゼAアマノ”、“セルラーゼTアマノ”、「食品工業用酵素」カタログ、 [online]、[平成19年3月6日検索]、インターネット、<URL:http://www.amano-enzyme.co.jp/jp/productinfo/medical04.html>ヤクルト薬品工業株式会社、“セルラーゼオノズカR10、RS”、 ホームページ「学術研究用酵素」、[online]、[平成19年3月6日検索]、インターネット、<URL:http://www.yakult.co.jp/ypi/jp/product.html> 特許文献1では、フィードバック阻害を防ぐという点では効果があるが、新たに限外ろ過膜装置を設ける必要があるなど、アルコール生産系を複雑にしなければならないので、コストがかかる。 その点から言うと、特許文献2のような、ひとつの反応槽で並行複発酵を行う方法は簡便でかつフィードバック阻害を防ぐことができるので有効である。 しかし、セルロースを用いる工業的なアルコール生産において、並行複発酵を行うには課題があることを本発明者らは見出した。 すなわち、一般的に、酵母の至適温度は25〜35℃であり、それ以上になると発酵能力が落ち、40℃ではほとんど活動ができなくなってしまう。 一方で、非特許文献1、非特許文献2に示されるように、セルラーゼ製剤の至適温度は一般に40〜55℃であり、35℃の条件下では、セルラーゼの活性は、至適温度における活性に対して60〜80%程度に落ちてしまい、糖化の効率が低くなる。 特許文献2のように、セルロースと酵母を用いて1つの反応槽内で並行複発酵を行う発明においては、酵母の至適温度にあわせて35℃前後で糖化反応を行っており、酵素の能力を十分に生かすことができていなかった。 本発明者らは、セルラーゼの活性を生かし、効率的にアルコール生産を行う方法はないかと鋭意研究を行った結果、本発明に至った。 本発明の課題は酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵とをひとつの反応槽で効率的に行うアルコール生産方法を提供することにある。 本発明の他の課題は以下の記載によって明らかとなる。 上記課題は以下の発明によって解決される。(請求項1) 木質系バイオマス由来のセルロースをセルラーゼによる酵素反応によってグルコースに糖化する糖化反応と、前記グルコースを酵母に供給してアルコールを生産するアルコール発酵を、ひとつの反応槽内で同時に行うアルコール生産方法であって、 前記酵母としてサッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株(受託番号:FERM BP−798)を用い、前記反応槽内の温度を40〜45℃に調整して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とするアルコール生産方法。(請求項2) 少なくとも発酵開始からエタノール濃度が50g/Lに達するまで継続して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とする請求項1記載のアルコール生産方法。(請求項3) 前記アルコール発酵の反応終了時まで継続して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のアルコール生産方法。(請求項4) バッチ式で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルコール生産方法。 本発明によれば、酵素による糖化と、酵母によるアルコール発酵とをひとつの反応槽で効率的に行うアルコール生産方法を提供することができる。 以下、本発明の実施の形態を説明する。 本発明において、糖化原料として用いるセルロースは、廃建材、古紙、ダンボール、植物系食品廃棄物などの木質系バイオマスに由来し、あらかじめヘミセルロースなどが除かれ、セルロース純度が高いものが好ましい。 本発明に用いるセルラーゼとしては、微生物を培養して抽出して得たものの他、市販のセルラーゼ製剤を使用することができる。市販のセルラーゼ製剤として、セルラーゼAアマノ、セルラーゼTアマノ(天野エンザイム社)、セルラーゼオノズカRS(ヤクルト薬品工業株式会社)、などが挙げられる。 本発明に用いる酵母は、サッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株(以下、AM12菌と称する)であり、工業技術院微生物工業技術研究所に、微工研受託番号第6749号として寄託されている。詳しくは特開昭59−135896号公報を参照できる。 本発明の好ましい形態としては、反応槽内を十分に混合できる機能を持った攪拌装置と、温度、pH、溶存酸素濃度を調節できる装置を備えた反応槽に、セルロース、セルラーゼ、酵母、緩衝液を入れ、アルコールを生産する。 反応槽内の温度を調整するための手段としては、反応槽内の温度検出器に連動させたヒーターのON、OFFによる他、アルコール発酵に伴う発酵熱をそのまま利用または後段の蒸留工程で用いる熱を併用することが挙げられ、過熱の場合に冷却する装置を設けることも好ましい。 反応槽に備えるpH、溶存酸素濃度を維持する装置は、設定されたpH、溶存酸素濃度を維持することができれば特に限定されない。 アルコール生産には、連続生産式、バッチ式などを採用することができるが、反応槽内の反応が単発酵に比べ複雑であるので、バッチ式で行う方が好ましい。 本発明に用いるAM12菌は45℃であってもアルコール生産能力が維持されるので、セルラーゼの至適温度に近い温度で糖化を行うことができる。 反応槽内の温度は40〜45℃、好ましくは40〜42℃であり、pHは3〜7、好ましくは3.5〜5、さらに好ましくは4〜5であり、溶存酸素濃度は0.1〜3ppmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1ppmである。 1回の糖化反応に供するセルロースは、セルロースが完全に糖に分解され、完全にアルコールに変換された場合に得られるアルコール量を計算し、アルコール培養液中の理論エタノール濃度が10〜30%、好ましくは15〜25%となるようにする。 AM12菌は耐アルコール性があり、エタノール濃度が20%以上であってもアルコール生産能力が阻害されないため、通常酵母であれば不可能なアルコール濃度まで生産を行うことができる。 反応終了後のアルコール培養液のアルコール濃度は、原料(セルロース)の量のほか、原料投入時に添加する緩衝液の量で調節することもできる。 セルロースに対してセルラーゼは10〜30FPU/g−drymatter、好ましくは10〜20FPU/g−drymatter添加する。 発酵槽内における菌体濃度は1.2〜2.4×107cells/ml、好ましくは1.8〜2.4×107cells/mlである。 緩衝液としては、滅菌水を用いても良いが、酵母エキス、ポリペプトン、コーンスティープリカーなどの微生物培養用の培地となる成分を1%程度含んだものが好ましい。 本発明のアルコール生産方法によると、セルラーゼの糖化効率がよく、高濃度のエタノールを生産できるので、短時間で多くのアルコールを生産することができる。 以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。 実施例1 あらかじめ酵母菌体の量が2.0×107cells/mlとなるように予備培養を行った5L容量の反応槽内(液量3L)に、60g/Lのセルロース(酸処理残渣)、20FPU/d−matterのセルラーゼを添加し、反応槽内の温度を42℃、pHを4.5、溶存酸素濃度を0.2ppmに設定して反応を行った。 1日後、反応を終了し、アルコール濃度を測定した結果50g/Lであった。残留セルロースは20g/Lで、残糖はなく、セルラーゼによって加水分解された糖はすべてアルコールに変換することができた。 実施例1における、反応槽内のセルロース量、反応槽内に存在するグルコース、セルロースが加水分解されて生成したグルコース、およびエタノールの濃度を図1に示す。 比較例1 従来酵母(Saccharomyces cerevisiae(JCM7255)標準菌株)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。 セルラーゼによる糖化は進行したが、42℃では酵母菌が生育できなかったためエタノールが生産されなかった。酵母によって糖が消費されず、フィードバック阻害によってセルラーゼによる糖化も阻害され、残留セルロースも確認された。実施例1における反応槽内の濃度変化を示すグラフ 木質系バイオマス由来のセルロースをセルラーゼによる酵素反応によってグルコースに糖化する糖化反応と、前記グルコースを酵母に供給してアルコールを生産するアルコール発酵を、ひとつの反応槽内で同時に行うアルコール生産方法であって、 前記酵母としてサッカロマイセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AM12菌株(受託番号:FERM BP−798)を用い、前記反応槽内の温度を40〜45℃に調整して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とするアルコール生産方法。 少なくとも発酵開始からエタノール濃度が50g/Lに達するまで継続して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とする請求項1記載のアルコール生産方法。 前記アルコール発酵の反応終了時まで継続して、前記グルコースの残糖を生成することなく前記アルコール発酵を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のアルコール生産方法。 バッチ式で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルコール生産方法。


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