タイトル: | 公開特許公報(A)_スルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法 |
出願番号: | 2007077540 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 315/02,C07C 317/14,C07B 61/00 |
桐原 正之 山本 純也 野口 拓也 JP 2008239490 公開特許公報(A) 20081009 2007077540 20070323 スルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法 財団法人浜松科学技術研究振興会 802000020 朝日奈 宗太 100065226 桐原 正之 山本 純也 野口 拓也 C07C 315/02 20060101AFI20080912BHJP C07C 317/14 20060101ALI20080912BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080912BHJP JPC07C315/02C07C317/14C07B61/00 300 3 OL 13 特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年11月20日 社団法人 日本薬学会化学系薬学部会発行の「第32回 反応と合成の進歩シンポジウム 講演要旨集」に発表 4H006 4H039 4H006AA02 4H006AC62 4H006BA12 4H006BA37 4H006BB14 4H006BB17 4H006BB21 4H006BE32 4H006TA01 4H006TA02 4H039CA80 4H039CC60 本発明は、タンタル化合物を触媒とし、過酸化水素を酸化剤として、スルフィド化合物よりスルホキシド化合物またはスルホン化合物を高収率で製造する方法に関する。 スルホキシド化合物またはスルホン化合物は、化学的または生物学的に活性な化合物およびその合成中間体等として重要な化合物である。その製造法として、スルフィド化合物を酸化する方法が知られているが、スルフィド化合物からスルホキシド化合物への選択的酸化反応は必ずしも容易ではなく、また、スルフィド化合物からスルホン化合物への酸化反応には強い酸化条件を用いなければならないという問題があった。該酸化に用いられる酸化剤としては、例えば過酸化水素(非特許文献1参照)が知られている。過酸化水素は安全に貯蔵することができ、安価に入手することができる。さらに過酸化水素は水や種々の有機溶媒への溶解性がよく、反応後は水となることから、環境に優しい酸化剤として注目されている(例えば非特許文献1参照)。 しかし、過酸化水素は酸化力が弱く、スルフィド化合物を効率よく酸化することが困難であるため、スルフィド化合物を過酸化水素と反応させてスルホキシド化合物を製造する方法としては、金属化合物触媒を用いる方法が知られている。該金属触媒に用いられる金属としては、バナジウム、レニウム、チタン、モリブデン、テルル、タングステン、セレン、鉄、ニオブなどが挙げられる(例えば非特許文献2、特許文献1〜3参照)。スルフィド化合物を過酸化水素と反応させてスルホン化合物を製造する方法としては、タングステン化合物またはモリブデン化合物の存在下に行なう方法が知られている(特許文献2参照)。 しかしながらこれらの方法には、スルフィド化合物を、選択的にスルホキシド化合物またはスルフィド化合物とする酸化反応が必ずしも十分に進行しないという問題があった。また、用いる金属触媒によっては強い人体毒性が認められるものもあり、実用的な観点からは必ずしも満足できるものではなかった。特開2002−308845号公報特開2003−300950号公報特開2004−323445号公報Chemical Communications、(16)1977(2003)Tetrahedron、61,8315(2005) 本発明は上記事情に鑑み、スルフィド化合物を過酸化水素と反応させてスルホキシド化合物またはスルホン化合物を製造する方法において、毒性のないタンタル化合物を酸化反応触媒として用いることにより、高い選択性でスルホキシド化合物またはスルホン化合物を得る、安全で効率的な製造方法を提供することを目的とする。 請求項1の発明は前記目的を達成するために、下記の反応式(1)に従い、スルフィド化合物(a)を過酸化水素により酸化して、スルホキシド化合物(b)またはスルホン化合物(c)を製造する方法であって、タンタル化合物を酸化触媒として使用することを特徴とするスルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法を提供する。(上記式(a)、(b)および(c)において、R1およびR2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルケニル基を表す。また、R1とR2が結合して環構造の一部を形成していてもよい。) 請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、タンタル化合物が五塩化タンタルであることを特徴とする。 請求項3の発明は、請求項1または2記載の発明において、過酸化水素によるスルフィド化合物の酸化を、アセトニトリル中またはメタノール中で行なうことを特徴とする。 本発明のスルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法によれば、過酸化水素によるスルフィド化合物の酸化反応において、毒性のないタンタル化合物を酸化反応の触媒として使用することにより、スルホキシド化合物またはスルホン化合物を容易に得ることができる。また、酸化反応に用いる溶媒を選択することにより、高い選択性でスルホキシド化合物またはスルホン化合物を得ることができる。 本発明に使用されるスルフィド化合物(a)としては、式(a)中、R1およびR2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルケニル基を有するスルフィド化合物が挙げられる。また、R1とR2が結合して環構造の一部を形成しているスルフィド化合物が挙げられる。前記アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基の炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜24である。 置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、ラウリル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。 置換基を有してもよいアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。 置換基を有してもよいアリール基において、上記R1とR2が結合して環構造の一部を形成してなるスルフィド化合物として、置換基を有していてもよいジベンゾチオフェン等が挙げられる。 置換基を有してもよいアラルキル基としては、例えば前記置換基を有してもよいアリール基と前記置換基を有してもよいアルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルブチル基等が挙げられる。 置換基を有してもよいアルケニル基としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルケニル基が挙げられる。 前記置換基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基であって、炭素数1〜14であり、好ましくは炭素数1〜12である。ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、イオウ原子等が挙げられる。さらに前記置換基はハロゲン原子を含んでもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。 本発明では、酸化反応の触媒としてタンタル化合物を使用する。タンタル化合物としては、五塩化タンタル、酸化タンタルなどが挙げられるが、五塩化タンタルが好ましい。 タンタル化合物の使用量は特に制限されないが、酸化反応に供されるスルフィド化合物1モルに対してタンタル化合物を0.001〜1モルを使用することが好ましい。 本発明に使用される過酸化水素としては、過酸化水素水溶液を用いることができる。過酸化水素水溶液の過酸化水素濃度は、特に制限されないが、市販品である30重量%のものでよい。必要に応じて希釈して用いてもよい。 過酸化水素の使用量は、スルフィド化合物に対して1モル倍以上であり、その上限は特に制限されないが、4〜24モル倍が好ましい。 反応温度は、反応速度が十分に得られること、また、副生物の生成が抑制されることを満たせば特に制限されないが、実用的な観点からは0〜60℃が好ましい。 スルフィド化合物の酸化反応を行なう反応溶媒は、有機溶媒または有機溶媒と水との混合溶媒でよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオンニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶媒が挙げられる。 反応溶媒の中でも、スルホキシド化合物を高収率で得るためにはアセトニトリルが好ましく、また、スルホン化合物を高収率で得るためにはメタノールまたは酢酸エチルが好ましい。 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例1 スルフィド化合物として、メチルフェニルスルフィド124.2mg(1.0mmol)を酢酸エチル2.0mLに溶解し、0.5Mメチルフェニルスルフィド溶液とした。このメチルフェニルスルフィド−酢酸エチル溶液に、五塩化タンタル35.8mg(五塩化タンタル0.1mmol)と30重量%過酸化水素水溶液2.0mL(過酸化水素20mmol)を順に加え、30℃で2.75時間撹拌し、反応させた。反応終了後、得られた反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液5mLを加え、反応液中に残存する過酸化水素を分解し反応を不活性化した後、酢酸エチル15mLで3回抽出した。この抽出液は飽和食塩液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、反応生成物(142.6mg)を得た。 この反応生成物は1H−NMRスペクトル、質量スペクトルおよび赤外線吸収スペクトルで分析した結果、スペクトルデータはメチルフェニルスルホン標品のものと完全に一致した。単離収率は91.0%であった。 なお単離収率は、出発物質のスルフィド化合物を基準として算出した。実施例2 反応を室温で3時間行なった以外は、実施例1と同様の方法で、反応および分析を行った。 その結果、単離収率は、スルホキシド化合物(メチルフェニルスルホキシド)が14.5%であり、スルホン化合物(メチルフェニルスルホン)が85.5%であった。実施例3 スルフィド化合物として、メチルフェニルスルフィド124.2mg(1.0mmol)をアセトニトリル2.0mLに溶解し、0.5Mメチルフェニルスルフィド溶液とした。このメチルフェニルスルフィド−アセトニトリル溶液に、五塩化タンタル3.6mg(五塩化タンタル0.01mmol)と30重量%過酸化水素水溶液0.43mL(過酸化水素4.2mmol)を順に加え、室温で2時間撹拌し、反応させた。反応終了後、得られた反応液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液5mLを加え、反応液中に残存する過酸化水素を分解し反応を不活性化した後、酢酸エチル15mLで3回抽出した。この抽出液は飽和食塩液で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、反応生成物(114.2mg)を得た。 この反応生成物を、実施例1と同様の方法で分析した結果、スペクトルデータはメチルフェニルスルホキシド標品のものと完全に一致した。単離収率は81.0%であった。実施例4 五塩化タンタルの使用量を0.1mmolとし、過酸化水素の使用量を20mmolとして、反応時間を3時間とした以外は、実施例3と同様の方法で、反応および分析を行った。その結果、単離収率は、スルホキシド化合物(メチルフェニルスルホキシド)が63.8%であり、スルホン化合物(メチルフェニルスルホン)が36.2%であった。実施例5 メチルフェニルスルフィドをメタノールに溶解し、反応を室温で3時間行なった以外は、実施例1と同様の方法で反応および分析を行った。その結果、スルホン化合物(メチルフェニルスルホン)の単離収率が100%であった。 上記実施例1〜5の反応条件および分析結果を表1に示す。表1によれば、スルフィド化合物よりスルホキシド化合物を得るためにはアセトニトリルが好ましく、スルフィド化合物よりスルホン化合物を得るためには酢酸エチルまたはメタノールが好ましいことがわかる。実施例6〜11 スルフィド化合物としてジフェニルスルフィドを使用し、表1に記載した反応条件で酸化反応を行なった以外は、実施例1と同様の方法で反応および分析を行った。分析結果を表2に示す。 表2によれば、スルフィド化合物よりスルホキシド化合物を得るためにはアセトニトリルが好ましく、スルフィド化合物よりスルホン化合物を得るためにはメタノールが好ましいことがわかる。実施例12〜19 スルフィド化合物の溶媒をアセトニトリルとし、反応に用いるスルフィド化合物、反応時間および反応温度を変更して酸化反応を行なった以外は、実施例1と同様の方法で反応および分析を行った。反応条件およびスルホキシド化合物の分析結果を表3に示す。 表3によれば、溶媒としてアセトニトリルを用いると、高収率でスルホキシド化合物を得ることができる。実施例20〜27 スルフィド化合物の溶媒をメタノールとし、反応に用いるスルフィド化合物、反応時間および反応温度を変更して酸化反応を行なった以外は、実施例1と同様の方法で反応および分析を行った。反応条件およびスルホン化合物の分析結果を表4に示す。 表4によれば、溶媒としてメタノールを用いると、高収率でスルホン化合物を得ることができる。下記の反応式(1)に従い、スルフィド化合物(a)を過酸化水素により酸化して、スルホキシド化合物(b)またはスルホン化合物(c)を製造する方法であって、タンタル化合物を酸化触媒として使用することを特徴とするスルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法。(上記式(a)、(b)および(c)において、R1およびR2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルケニル基を表す。また、R1とR2が結合して環構造の一部を形成していてもよい。)タンタル化合物が五塩化タンタルである請求項1記載の製造方法。前記酸化を、アセトニトリル、メタノールおよび酢酸エチルからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶媒中で行なうことを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。 【課題】スルフィド化合物を過酸化水素により酸化し、スルホキシド化合物またはスルホン化合物を高収率で製造する方法を提供する。【解決手段】スルフィド化合物を過酸化水素により酸化して、スルホキシド化合物またはスルホン化合物を製造する方法において、タンタル化合物を酸化触媒として用いることを特徴とするスルホキシド化合物またはスルホン化合物の製造方法である。タンタル化合物としては五塩化タンタルが好ましい。反応溶媒としては、アセトニトリル、メタノールまたは酢酸エチルが好ましい。【選択図】なし