タイトル: | 再公表特許(A1)_植物に過剰ホウ素耐性を付与したホウ素耐性植物、前記植物の作出方法及び前記作出に利用する遺伝子 |
出願番号: | 2007073705 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 15/09,A01H 5/00,A01H 1/00 |
藤原 徹 三輪 京子 JP WO2008069318 20080612 JP2007073705 20071207 植物に過剰ホウ素耐性を付与したホウ素耐性植物、前記植物の作出方法及び前記作出に利用する遺伝子 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 藤原 徹 三輪 京子 JP 2006330816 20061207 C12N 15/09 20060101AFI20100226BHJP A01H 5/00 20060101ALI20100226BHJP A01H 1/00 20060101ALI20100226BHJP JPC12N15/00 AA01H5/00 AA01H1/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100325 2008548355 21 2B030 4B024 2B030AA02 2B030AB02 2B030AD05 2B030AD08 2B030AD20 2B030CA17 2B030CB02 4B024AA08 4B024BA80 4B024CA03 4B024DA01 4B024DA05 4B024EA04 4B024GA11 本発明は、ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないBOR4タンパク質、又はホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の、過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、前記ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列を含む遺伝子を連結したDNA(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物に関する。特に、植物体で構成的な発現を誘導するカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター下流に、ホウ素過剰条件でも分解されない排出型ホウ素輸送体タンパク、すなわち、BOR4タンパク質または配列表の4以降の偶数番目に記載のタンパク質群から選択されるタンパク質をコードするBOR4遺伝子または3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子を連結させたDNAを導入したトランスジェニック植物に関する。 植物は、自然界において、それが生育する環境から種々の環境ストレスに曝されて生息している。植物は、動物のように移動によってストレスから身を守る行動をとることができないため、進化の過程で、様々なストレス耐性機構を獲得してきた。このような中で、ホウ素は植物の必須元素の中では至適濃度範囲が比較的狭いことが知られている。すなわち、欠乏症状が出るホウ素濃度と過剰症状の出るホウ素濃度の差が、他の元素に比べて小さいことが知られている(非特許文献2;根の研究(Root Research)13(2):51-55(2004))。換言すれば、過剰なホウ素濃度は植物において環境ストレスになることを意味する。 また、植物におけるホウ素の生理機能に関する最初の分子レベルの知見、例えばホウ素の輸送に関与するシロイヌナズナ遺伝子(BOR1)、およびその相同遺伝子(BOR2−7)に関する知見が発表され、特に、BOR1がホウ素トランスポーターとして関与していることについても言及している(非特許文献2)。また、特許文献2:特開2005−253430公報には、BOR1が環境中からのホウ素の取込みや生体内でのホウ素の輸送をより効率良く制御することが可能となること、BOR1およびその相同遺伝子(BOR2−4)のcDNAをGAL1プロモーター下流につないだコンストラクトを構築し、酵母に導入し、種々の濃度でホウ素を含む培地で60分間培養し、いずれもベクターコントロールと比較して菌体内水溶性ホウ素濃度の低下が見られたこと、並びにAt3g06450(BOR3)、At1g15460(BOR4)を発現させた酵母ではベクターコントロールと比べてホウ酸耐性を示し、BOR4を発現させた酵母ではBOR1を発現させた酵母よりも強い耐性を示したことに言及している。 しかしながら、前記耐性の機構は、酵母で各ホウ素トランスポーターがBOR1と同様に細胞内から細胞外へホウ素を排出する活性をもつことに基づくものであると言及しているだけであり、BOR1およびBOR4を発現させた植物、例えば、シロイヌナズナにおけるホウ酸耐性に関しては言及していないし、当然ながらBOR1およびBOR4がホウ素過剰環境における植物中においてホウ素耐性を教示する記載がない。 更に、特許文献2には、〔0028〕形質転換植物について言及しているけれども、BOR4を形質転換シロイヌナズナで発現させ、過剰ホウ素耐性シロイヌナズナを提供することを示唆する記載がない。ただ、BOR1については、緑色蛍光タンパク質(GFP)を連結したBOR1タンパクをカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター制御下で過剰発現させた形質転換シロイヌナズナを作成し、そのホウ素栄養に応じた挙動を観察したところ、環境中のホウ素濃度に応じた蓄積制御を受け、ホウ素欠乏条件では細胞膜に蓄積が見られるが、ホウ素を与えると2時間程度ですみやかに分解されること、また、分解の過程でBOR1−GFPを含むベシクル(膜で囲まれた小体)があらわれることが明らかになっている。阻害剤等を用いた実験によって、この分解の過程はエンドサイトーシスの過程であり、最終的には液胞に運ばれてBOR1タンパク質が分解されていることが確認されている(非特許文献3)。また、発明者らは、BOR1もしくはGFPを連結したBOR1タンパク質を上記カリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター制御下で過剰発現させた形質転換シロイヌナズナでは、ホウ素過剰条件ではBOR1タンパクが分解を受けるため、ホウ素過剰条件では野生型株との間に生育の差は見られず、植物にホウ素過剰耐性は付与さなかったことを記述している(非特許文献4)。 なお、BOR1に相同な遺伝子はシロイヌナズナゲノムにはBOR1を含めて7個存在しており、これらの遺伝子は既に報告されている(特許文献1、非特許文献1)。しかし、それらのホウ素過剰条件での分解についてはBOR1以外では報告されていない。特開2002−262872Nature,Vol.420,No.6913,pp.337-340,21 November 2002特開2005−253430根の研究(Root Research)13(2):51-55(2004)PNAS, Vol.102, No.34, pp.12276-12281,23 August 2005The Plant Journal, Vol.46, pp.1084-1091, 2006 本出願の発明が、解決しようとする課題は、前記したように、植物に必須元素であるホウ素は植物における至適濃度範囲が狭いこと、植物が栽培される土壌におけるホウ素の蓄積は地理条件や気候条件などにより異なるために、植物に過剰ホウ素に対する耐性を付与することは植物の安定な生産のために重要であるとの考えから、ホウ素の過剰土壌においても安定に生育可能な、植物に過剰ホウ素耐性を付与する技術を見出し、ホウ素過剰耐性植物を提供することである。しかしながら、これまで植物にホウ素過剰耐性を付与する遺伝子や分子、もしくはそれを用いた作出技術は全く知られていなかった。 前記課題を解決するには、原点に返り、BOR1に相同な遺伝子の、ホウ素過剰環境における植物中においてホウ素過剰耐性への寄与を検討することが重要であると考え、植物としてシロイヌナズナゲノムに含まれるBOR1およびBOR4について、これらの遺伝子を過剰発現した植物のホウ素過剰環境における植物中において過剰ホウ素過剰耐性を詳細に検討した。その結果、ホウ素トランスポーターのBOR1タンパク質の蓄積がホウ素過剰においてエンドサイトーシスによる分解により、植物の過剰ホウ素過剰耐性を付与できないのに対し、BOR4タンパク質の蓄積はホウ素過剰においても発現され植物の過剰ホウ素耐性が改善されることが分かり、前記課題を解決することができた。 本発明第1は、(1)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする、ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質をコードする奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列、及びを前記タンパク質の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子配列である。 本発明の第2は、(2)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないBOR4タンパク質、又はホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、前記ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列を含む遺伝子を連結したDNA配列(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物である。好ましくは、(3)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質がBOR4タンパク質であり、遺伝子が前記エンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子である前記(2)に記載の過剰ホウ素耐性植物であり、より好ましくは、(4)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子の過剰に構成的な発現を誘導するプモーターがカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター(Cauliflower mosaic virus 35S RNAプロモーター)である前記(2)又は(3)に記載の過剰ホウ素耐性植物であり、一層好ましくは、(5)DNA配列(コンストラクト)がTiPlasmidを持つアグロバクテリュウムによって形質転換されたものであることを特徴とする前記(2)、(3)又は(4)に記載の過剰ホウ素耐性植物である。本発明で使用するアグロバクテリウムはTiPlasmidを持つアグロバクテリウムである。アグロバクテリウムは植物に感染し、Ti−Plasmid上のT−DNAを植物の染色体ゲノムに挿入し、遺伝子を組み換えることを利用して、T−DNA内に目的のコンストラクトを挿入する。アグロバクテリウムを植物に感染させることで、目的のコンストラクトを持つ遺伝子組み換え植物を得ることができる。 本発明の第3は、(6)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないBOR4タンパク質、又はホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、前記ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列を含む遺伝子を連結したDNA配列(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物の作出方法である。好ましくは、(7)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質がBOR4タンパク質であり、遺伝子が前記エンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子である前記(6)に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法であり、より好ましくは、(8)ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子の過剰に構成的な発現を誘導するプモーターがカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター(Cauliflower mosaic virus 35S RNAプロモーター)である前記(6)又は(7)に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法であり、一層好ましくは、(9)DNA配列(コンストラクト)がTiPlasmidを持つアグロバクテリュウムによって形質転換されたものであることを特徴とする前記(6)、(7)又は(8)に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法である。 本出願に係る発明の効果は、植物体でホウ素過剰条件でも分解されないホウ素輸送体BOR4タンパク(配列番号2)を発現させるため、構成的な遺伝子発現を誘導するプロモーターの下流に、前記BOR4遺伝子(BOR4遺伝子「At1g15460遺伝子」(配列番号1)はRIKENより供与を受けた。)を結合し)たDNAを導入することにより、ホウ素過剰耐性が付与されたトランスジェニック植物を提供することが可能になったことである。特に、AtBOR4は植物において過剰ホウ素耐性をもつホウ素を排出する活性をもつことを見いだしたことである。また、BOR4タンパク質に代えて偶数の配列番号のタンパク質、および前記BOR4遺伝子に代えて奇数の配列番号の遺伝子を使用することによっても前記ホウ素過剰耐性が付与されたトランスジェニック植物を提供すること可能である。なお、前記偶数の配列番号のタンパク質および奇数の配列番号の遺伝子はBOR1タンパクおよびBOR1遺伝子に存在しない配列である。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2006-330816号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。シロイヌナズナゲノムにおけるBOR1を含めた7この遺伝子BOR4プロテインの蓄積の実験結果;SDS−PAGE測定、BOR4−GFPの検出にはAnti−GFP抗体(マウス)を用いた。トランスジェニックシロイヌナズナ(35S−BOR4−GFP)におけるホウ素耐性(Wild type Col−0との比較)トランスジェニックシロイヌナズナ(35S−BOR4−GFP)の正常ホウ素濃度下での成長(Wild typeとの比較) 本発明において行われる形質転換工程は組み換え発現ベクターを植物個体に導入して、ホウ素過剰条件でも分解されないホウ素輸送体タンパクが発現させるようになっていればよい。 本発明において行われる発現ベクター構築工程は、植物体内でホウ素過剰環境で分解されないホウ素輸送体タンパクをコードする遺伝子とプロモーター、ターミネーターとを含む組換え発現ベクターを構築する工程であれば特に限定されるものではない、上記組み換え発現ベクターの母体となるベクターとしては、従来公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いることができ、導入される植物個体や植物細胞、導入方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、pBR322,pUC19,pBluescript、pBI系のベクター等をあげることができる。特に、植物体へのベクターの導入方法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系のバイナリーベクターを用いることが好ましい。pBI系のバイナリーベクターとしては、具体的にはpBIN19、pBI121,pBI221等を挙げることができる。 上記プロモーターは植物体内で構成的に遺伝子を発現させる、特に根で強い発現を誘導させることが可能なプロモーターであれば特に限定されるものではなく、公知のプロモーターを適宜用いることができる。具体的には、例えばカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーター、PR1a遺伝子プロモーター、リブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニットプロモーター等を挙げることができる。この中でもカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーターはより好ましく用いることができる。上記の各プロモーターを用いることで、得られる組み換え発現ベクターでは、細胞内に導入されたときに強く発現させることが可能となる。上記プロモーターは排出型ホウ素輸送体をコードする遺伝子が発現しうるように連結され、ベクター内に導入されていればよく、組み換え発現ベクターとしての具体的な構造は特に限定されるものではない。 上記組み換え発現ベクターは、上記プロモーターおよび上記ホウ素輸送体遺伝子に加えて、さらに他のDNAセグメントを含んでいてもよい。当該他のDNAセグメントは特に限定されるものではないが、ターミネーター、選抜マーカー、エンハンサー、等を挙げることができる。 ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的にはノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウィルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることができる。上記選抜マーカーとしては、例えば薬剤耐性遺伝子を用いることができる。具体的には、例えば、ハイグロマイシン、カナマイシン、等に対する薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。これにより、上記抗生物質を含む倍地中で生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体を容易に選別することができる。 発現ベクターとしては、前記Tiプラスミド(Tumor inducing plasmid)の他に、pSPORT1、pT7Blue−Tベクター、pIG121−Hm〔Plant Cell Report, 15, 809-814(1995)〕、pBI121〔EMBO J. 6, 3901-3907(1987)〕などのプラスミド、あるいはタバコモザイクウイルス、カリフラワーモザイクウイルス、ジェミニウイルスなどの植物ウイルスベクター等を例示することができる。 形質転換工程本発明において行われる形質転換工程は前記組み換え発現ベクターを植物個体に導入して、ホウ素過剰条件でも分解されないホウ素輸送体タンパクが発現させる工程である。植物の形質転換には、転換する植物の種類等に応じて、アグロバクテリウム法、リーフディスク共存培養法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等の公知の方法を適宜用いて行うことができる。アグロバクテリウム法を好ましいものとして挙げることができる。その他、物理的または化学的に植物細胞の透過性を高めて本発明の組換えベクターを受容体細胞内に直接取り入れて形質転換植物を作製する方法を採用することもできる。 形質転換後の適切な形質転換体を選抜する方法は特に特に限定されるものではなく、例えばハイグロマイシン耐性等の薬剤耐性を基準とすることも可能であるし、またはホウ素過剰培地での生育改善を指標として選抜することも可能である。 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。[実施例1](1)植物形質転換用組み換え発現ベクターの構築 シロイヌナズナBOR4の完全長cDNAはRIKENによって単離され、クローンRAFL09−10−J20が供与された。上流は5’UTR領域を含まず、下流は終止コドンを含まないORF(open reading frame)の領域を増幅するPCRを行った。この際、用いたプライマーでは上流側ではKpnIサイト、下流側ではNcoIサイトを含み、終止コドンに相当する部分にGGA GGA GGA GGS GCC (Gly Gly Gly Gly Ala)とリンカー領域を付加した。増幅したBOR4のORF領域を該当の制限酵素で切断し、上流をカリフラワーモザイクウィルス35Sプロモーター(35S)、下流をGFPコードする遺伝子とNosターミネーター(tNOS)とを連結した。 35S−BOR4−GFP−tNOSのDNAを5’にCACCの配列を持つプライマーで増幅し、インビトロジェン社(Invitrogen社、USA)のpENTR−TOPOに組み込んだ。これをGateway vector pMDC99(Curtis, M.D., Grossniklaus, U. (2003). A gateway cloning vector set for high-throughput functional analysis of genes in planta. Plant Physiol. 133, 462-469.)に組み換え、組み換え発現用ベクターとした。なお、pMDC99はT−DNA領域にハイグロマイシン耐性遺伝子を持っている。(2)減圧湿潤法による植物の形質転換前記(1)で構築した発現ベクターを土壌細菌Agrobacterium tumefaciens strain GV3101 (C58C1Rifr) pMP90 (Gmr)(koncz and Schell 1986)株(アグロバクテリウム)にヒートショック法で導入した。シロイヌナズナ植物への形質転換は減圧湿潤法を用いた(Floral dip法を用いた)(Clough, S.J. and Bent, A.F. (1998) Floral dip: a simplified method for Agrobacterium)-mediated transformation of Arabidopsis thaliana. Plant J., 16, 735-743参照)。 具体的には、発現ベクターを導入したアグロバクテリウムを、抗生物質(カナマイシン 50μg/ml、リファンピシン 5μg/ml)を含む200mlのYEP培地(Bacto−pepton 10g、Bacto yeast extract 10g、NaCl 5g/1L pHは7〜7.2)に培養した。ついで、培養液から菌体を回収し、400mlの感染用培地(5%スクロース、MgCl少々、0.05% Tween20)に懸濁した。ロックウールバーミキュライト耕で生育さえ、花芽を数多くつけた播種後約1ヶ月後のシロイヌナズナを2分間浸し、感染させた後、再び生育させて結実させた。回収した種子を殺菌した後、ハイグロマイシン選択培地(MS培地、50μg/mlハイグロマイシン、pH5.7、0.2%ゲランガム)に播種し、ハイグロマイシン耐性植物(T1)を選抜した。 上記ハイグロマイシン耐性植物(T1)から次世代の種子(T2)を採取し、これを同様のハイグロマイシン選抜培地に播種し、ハイグロマイシン耐性:感受性が3:1となるラインを選抜した。このラインで耐性を示した植物個体(T2)から次世代の種子(T3)を採取し、ハイグロマイシン選抜培地に播種し、全ての個体がハイグロマイシン耐性となる株をT−DNA挿入が一コピーであり、T−DNA挿入をホモザイガスに持つ株として得た。(3)形質転換体におけるBOR4タンパクの蓄積上記で得られたT−DNAをホモザイガスに持つ形質転換体の3ライン(ライン(line)番号1,4,5)のT3種子を100μM のホウ酸を含む固形培地に播種し、24日間栽培した。なお、固形培地はMGRL(Fujiwara et al., Plant Physiol. 99, 263-268.1992)溶液にスクロース2%、ゲランガム0.2%を加えたものである。その後、植物個体をMGRL溶液(スクロース、ゲランガムを含まない)に移植し、6日間生育させた。ついで、植物体を、(A)ホウ素欠処理(0.1μMホウ酸を含むMGRL溶液)、(B)ホウ素通常処理(100μM ホウ酸を含むMGRL溶液)、(C)ホウ素過剰処理(3mMホウ酸を含むMGRL溶液)にそれぞれ移植し、6日間培養した。その後、膜成分を含むマイクロソーマル画分を根と地上部に分けて単離し、ウェスタン解析を行った。5μgに相当するタンパク質をSDS−PAGEに供試し、マウス抗GFP抗体(1ST antibody)でBOR4−GFP抗体を検出した。形質転換ライン4ではホウ素欠乏処理(−)、通常処理(+)、過剰処理(++)に関わらず、BOR4−GFPに相当するバンドが強く検出された(図2)。このことから、BOR4タンパクはホウ素過剰条件で分解を受けて蓄積しないBOR1とは異なり、ホウ素過剰条件でも分解を受けず、蓄積するタンパクであることが明らかになった。(4)形質転換体のホウ素過剰耐性の検定上記で得られた、T−DNAをホモザイガスにもつ独立な7ラインの形質転換体種子(T3)を用いて、MGRL固形培地でホウ素過剰耐性の検定を行った。MGRL(Fujiwara et al., Plant Physiol. 99, 263-268.1992)溶液に2%スクロース、1.5%ゲランガム、0.03、3、6、10mMホウ酸を含む固形培地を作成した。表面殺菌をした形質転換体種子(35S-BOR4-GFP transgenic)と野生型種子(Col-0)をそれぞれ播種し、17日間後に生育を観察した。ホウ素の欠乏症や過剰症状が見られない通常条件の0.03mMのホウ酸を含む培地では野生型株といずれの形質転換体ラインでも生育に違いは見られず、正常の生育を示した(図4)。一方、3mM以上の過剰のホウ酸を含む培地では、野生型株が根の伸長抑制、地上部ロゼット葉の展開抑制・クロロシスのホウ素過剰症状を示した。これに対して形質転換体ではラインによって程度の差は見られたが、根の伸長抑制が緩和され、地上部の生育量の抑制の程度の低下が見られた。特にBOR4−GFPの発現量の高いと考えられるライン(ライン5、4、12)では、野生型株が枯死する10mMホウ酸を含む培地においても、根の伸長や緑色のロゼット葉の展開が見られ、形質転換体においてホウ素過剰耐性が付与されたことが明らかになった(図3)。 BOR4タンパク質のホウ素過剰条件での分解には配列番号20で示すアミノ酸配列の6番目から11番目(配列番号2のタンパク質の407番目から412番目に対応する)までのアミノ酸が関与していることを示す所見を得ており、この配列やこの配列と同等の効果を持つ配列を持つBOR4タンパク質以外のタンパク質によってもホウ酸耐性能を付与することができる可能性を示す結果を得ている。 本発明により、植物で構成的な遺伝子発現を誘導するプロモーターの下流に、ホウ素過剰条件でも分解しない排出型ホウ素輸送体タンパクBOR4などのタンパク質をコードするDNAが連結された遺伝子を含む、過剰ホウ素に対する耐性が向上したトランスジェニック植物が提供される。本発明により、構成的な発現を誘導するプロモーター下流にBOR4などのタンパク質をコードする遺伝子が連結されたDNAを含む、過剰ホウ素に対する耐性が向上したトランスジェニック植物が提供される。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする、ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質をコードする奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列、及びを前記タンパク質の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子配列。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないBOR4タンパク質、又はホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、前記ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列を含む遺伝子を連結したDNA配列(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質がBOR4タンパク質であり、遺伝子が前記エンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子である請求項2に記載の過剰ホウ素耐性植物。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子の過剰に構成的な発現を誘導するプモーターがカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター(Cauliflower mosaic virus 35S RNAプロモーター)である請求項2又は3に記載の過剰ホウ素耐性植物。 DNA配列(コンストラクト)がTiPlasmidを持つアグロバクテリュウムによって形質転換されたものであることを特徴とする前記請求項2、3又は4に記載の過剰ホウ素耐性植物。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないBOR4タンパク質、又はホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されない4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、前記ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子配列を含む遺伝子を連結したDNA配列(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物の作出方法。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質がBOR4タンパク質であり、遺伝子が前記エンドサイトーシスにより分解されないタンパクをコードするBOR4遺伝子である請求項6に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法。 ホウ素過剰条件でエンドサイトーシスにより分解されないタンパク質をコードする遺伝子の過剰に構成的な発現を誘導するプモーターがカリフラワーモザイクウィルス35S RNAプロモーター(Cauliflower mosaic virus 35S RNAプロモーター)である請求項6又は7に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法。 DNA配列(コンストラクト)がTiPlasmidを持つアグロバクテリュウムによって形質転換されたものであることを特徴とする前記請求項6、7又は8に記載の過剰ホウ素耐性植物の作出方法。 過剰ホウ素耐性植物、その作成方法及び作成方法に用いる遺伝子を提供する BOR4タンパク質、又は4以降の偶数の配列番号の群から選択されるタンパク質の過剰に構成的な発現を誘導するプロモーターの下流に、BOR4遺伝子又は3以降の奇数の配列番号の遺伝子群から選択される遺伝子を連結したDNA配列(コンストラクト)を導入した過剰ホウ素耐性植物配列表