タイトル: | 再公表特許(A1)_微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法及びこれを配合した化粧料 |
出願番号: | 2007072668 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C01G 9/02,A61K 8/19,A61Q 17/04 |
塩 庄一郎 中平 敦 村瀬 英昭 JP WO2008062871 20080529 JP2007072668 20071122 微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法及びこれを配合した化粧料 株式会社資生堂 000001959 岩橋 祐司 100092901 塩 庄一郎 中平 敦 村瀬 英昭 JP 2006315273 20061122 C01G 9/02 20060101AFI20100205BHJP A61K 8/19 20060101ALI20100205BHJP A61Q 17/04 20060101ALI20100205BHJP JPC01G9/02 AA61K8/19A61Q17/04 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100304 2008545452 24 4C083 4G047 4C083AA122 4C083AB172 4C083AB211 4C083AB212 4C083AB232 4C083AB242 4C083AB432 4C083AB442 4C083AC012 4C083AC022 4C083AC072 4C083AC092 4C083AC102 4C083AC122 4C083AC212 4C083AC242 4C083AC342 4C083AC352 4C083AC392 4C083AC402 4C083AC422 4C083AC442 4C083AC542 4C083AD042 4C083AD072 4C083AD152 4C083AD162 4C083AD172 4C083AD282 4C083BB23 4C083BB46 4C083CC05 4C083CC06 4C083CC11 4C083CC12 4C083DD17 4C083DD31 4C083EE07 4C083EE17 4G047AA02 4G047AB02 4G047AC03 4G047AD03関連出願 本出願は、2006年11月22日付け出願の日本国特許出願2006−315273号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。 本発明は酸化亜鉛粉体の製造方法、特に、優れた紫外線防御能や透明感などを発揮する微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法に関する。 従来、紫外線防御剤として化粧料に使用する酸化亜鉛は透明性を追求した結果、平均粒子径が100nm以下の超微粒子粉末が主流となっている。 酸化亜鉛の製造は大きく乾式法と湿式法とに分けられ、乾式法はフランス法(間接法)とアメリカ法(直接法)があり、亜鉛蒸気を空気で酸化して酸化亜鉛を製造する方法である。乾式法は、一般的な酸化亜鉛の製造では主力の方法であるが、紫外線遮蔽性のある100nm以下の超微粒子亜鉛の製造には、主として湿式法が用いられている。 湿式法は亜鉛塩水溶液をアルカリ剤により中和し、生成した亜鉛塩の沈殿物を水洗、乾燥後、焼成して酸化亜鉛を得る方法である。一般的には、アルカリ剤として炭酸ナトリウムを用い、pH調整にてハイドロジンサイトを生成した後に300〜500℃で焼成することにより脱炭酸して酸化亜鉛を得る。通常、このような製造方法で得られた酸化亜鉛を低温焼成酸化亜鉛と称する。 しかしながら、この方法ではせっかく生成した100nm以下の微粒子が焼成時に凝集して粒子径が大きくなり、透明性や紫外線遮蔽性が損なわれてしまうという問題があった。 このため、微粒子同士の焼結を抑制するため、あらかじめ、粒子形状を様々な形態にした酸化亜鉛が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、薄片状酸化亜鉛粉体が記載されている。 しかし、薄片状粉体では厚みが薄いと化粧料等の製品製造時における粉末の強度が不足し、また強度を増すために厚みを厚くすれば粉末の粒子径が大きくなり、可視光を散乱して透明性が低下するなど、実使用において問題を生じる。 特許文献3では、多孔質球状シリカの細孔内に微粒子酸化亜鉛を担持している。しかし、紫外線防御に有効な粒子径の酸化亜鉛を担持する場合には担持量が少なくなり、担持量を多くすると、紫外線防御に有効な粒子径より小さい酸化亜鉛が担持されることになり、有効な紫外線防御能を発揮できない。また、十分な大きさの酸化亜鉛を大量に担持する場合には、担体であるシリカの粒子径が大きくなり、紫外線防御の効率が悪くなるなどの問題を生じる。 その他にも様々な試みがなされているが、十分満足できるものは少ない。 また、凝集を防ぐために、炭酸亜鉛から焼成工程を行わずに微粒子酸化亜鉛を合成する方法についてはこれまで報告されていない。特開平1−230431号公報特開平6−115937号公報特開平7−291615号公報 本発明は、前記背景技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、紫外線防御能や透明性に優れる酸化亜鉛粉体の製造方法、さらにはこれを配合した化粧料を提供することにある。 前記課題を達成するために、本発明者が鋭意検討を行った結果、特定の製造方法により、焼成工程を経ずに、粒子径が揃った微粒子酸化亜鉛粉体が得られることを見出した。そして、この酸化亜鉛粉体は優れた紫外線防御能(特にUV−A防御能)と可視光透過性(透明性)とを発揮することが判明し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明にかかる微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法は、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液を、炭酸アルカリ剤によりpH調整し、焼成することなしに、熟成により微粒子酸化亜鉛粉体を得ることを特徴とする。 本発明の方法において、炭酸アルカリ剤が、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液100mLに対し、0.1〜2mol/L水溶液であることが好適である。 また、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液中、亜鉛に対してカルボン酸基が1〜5倍モルであることが好適である。 また、炭酸アルカリ剤水溶液を、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液100mLに対し、0.5〜5mL/minで滴下してpH調整することが好適である。 また、本発明の方法において、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液に対して炭酸アルカリ剤水溶液を滴下し、滴下中の反応液の経時的なpH変化において、二度目のpH低下が認められた時点で炭酸アルカリ剤水溶液の滴下を止めることによりpH調整を終了し、その後熟成することが好適である。 また、水溶性亜鉛塩が塩化亜鉛であることが好適である。 また、カルボン酸が酢酸であることが好適である。 また、水溶性カルボン酸亜鉛塩が酢酸亜鉛であることが好適である。 また、炭酸アルカリ剤が炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであることが好適である。 また、本発明にかかる化粧料は、前記何れかの方法で得られた微粒子酸化亜鉛粉体を含有することを特徴とする。 本発明の微粒子酸化亜鉛粉末の製造方法は、脱炭酸を焼成工程ではなくpH調整工程で行うことを特徴とするため、粒子の焼結による凝集が抑制され、優れた紫外線防御能(特にUV−A防御能)と可視光透過性(透明性)とを発揮する微粒子酸化亜鉛が得られる。また、焼成に関わる設備を必要としないため、コスト削減にも繋がる。本発明の一実施例にかかる微粒子酸化亜鉛粉体(試験例1)の製造工程における、炭酸ナトリウム水溶液滴下開始から熟成終了までの反応溶液のpHと反応時間との関係を示す図である。本発明の一実施例にかかる微粒子酸化亜鉛粉体(試験例1)のTEM写真である。本発明の一実施例にかかる微粒子状酸化亜鉛粉体(試験例1)及び市販超微粒子酸化亜鉛粉体の分光透過率曲線である。本発明の一実施例にかかる微粒子酸化亜鉛粉体(試験例1)の製造工程において、熟成時間を変えて得られた粉体のX線回折図である。本発明の一実施例にかかる微粒子酸化亜鉛粉体(試験例7)の製造工程において、滴下終了時点又は熟成後の粉体のX線回折図である。 本発明にかかる微粒子酸化亜鉛粉体は、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液(以下、これら水溶液を亜鉛水溶液ということがある)に、40℃以下の温度で炭酸基を有するアルカリ剤(炭酸アルカリ剤)を添加して中和し、熟成した後、水洗、乾燥することにより得ることができる。なお、水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液には、カルボン酸を追加的に使用することができる。また、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液を用いた場合の方が、水溶性カルボン酸亜鉛塩水溶液を用いた場合よりも紫外線防御能や透明性の点で優れる傾向にあるので、より好ましい。 水溶性亜鉛塩としては、通常液相法で使用されるものが挙げられ、例えば、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などがあるが、好ましくは塩化亜鉛、酢酸亜鉛であり、特に好ましくは塩化亜鉛である。なお、水溶性亜鉛塩として水溶性カルボン酸亜鉛塩を用いる場合には、カルボン酸の添加を省略することもできる。 水溶性亜鉛塩とともに用いるカルボン酸としては、水溶性カルボン酸が使用でき、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、無水マレイン酸などがあるが、好ましくは酢酸である。 水溶性カルボン酸亜鉛塩は、上記カルボン酸の水溶性亜鉛塩であり、好ましくは酢酸亜鉛である。 炭酸アルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの水溶性炭酸塩が好適に使用でき、好ましくは炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムである。 亜鉛水溶液中における水溶性亜鉛塩やカルボン酸亜鉛塩の濃度は、反応開始時において通常0.1〜5mol/Lである。 水溶性亜鉛塩とともに用いるカルボン酸は、亜鉛に対してカルボン酸基として1〜5倍モルとすることができ、好ましくは1〜3倍モルである。カルボン酸が少なすぎる、あるいはカルボン酸が多すぎる場合には熟成によるハイドロジンサイトから酸化亜鉛への脱炭酸が十分に行われない傾向がある。 酢酸の代わりに他のカルボン酸を用いても熟成により脱炭酸は起きるが、鉱酸等を用いると脱炭酸は起こらず、酸化亜鉛を得ることはできない。よって、反応工程中においてハイドロジンサイトから脱炭酸して酸化亜鉛を得るには、炭酸アルカリ剤で中和する際に、亜鉛イオンとともにカルボン酸イオンが共存することが必要であると考えられる。 なお、亜鉛水溶液を完全に溶解状態とするために、さらに鉱酸を併用してもよい。鉱酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などがあるが、好ましくは塩酸が使用できる。 上記亜鉛水溶液を炭酸アルカリ剤で中和する場合、亜鉛水溶液を攪拌しながら炭酸アルカリ剤水溶液を連続的に滴下して行うことが好適である。 炭酸アルカリ剤水溶液の濃度は、0.1〜2mol/L、さらには0.2〜0.8mol/Lとすることが好適である。 また、炭酸アルカリ剤水溶液の滴下速度は、亜鉛水溶液100mLに対して、0.5〜5mL/minとすることが好適である。 炭酸アルカリ剤濃度や滴下速度が小さすぎると反応に長時間を要してしまい非効率的であり、また、炭酸アルカリ剤濃度や滴下速度が大きすぎても脱炭酸が起きないことがあり、機能性にも影響を及ぼす恐れがある。 炭酸ナトリウムの代わりに炭酸水素ナトリウムや他の炭酸基を有するアルカリ剤を使用してもよく、同様に熟成により微粒子酸化亜鉛粉体が得られる。炭酸アルカリ剤の代わりに水酸化ナトリウム等他の炭酸基のないアルカリ剤を用いた場合には、熟成によって酸化亜鉛が得られない。よって、炭酸イオンによる中和によりハイドロジンサイトを形成することが必要と考えられる。 亜鉛水溶液に炭酸アルカリ剤水溶液を滴下すると、ある滴下量で亜鉛塩が析出し始める。塩化亜鉛と酢酸とを含む溶液を炭酸ナトリウム水溶液で中和した場合、析出開始点における反応溶液のpHは通常5.5〜6.5である。析出開始点までは滴下量の増大に伴ってpHは上昇する。析出開始後は亜鉛塩の析出に炭酸ナトリウムが消費されるために、全体的には滴下が進行してもpHの上昇は非常に緩やかであり、析出開始直後及びその後にpHが一時的に下降する点がそれぞれ認められる。本発明においては、前者を第1pH低下ポイント、後者を第2pH低下ポイントということがある。第2pH低下ポイントを過ぎて亜鉛塩の析出が終了すると、pHは急激に上昇する。 本発明においては、この第2pH低下ポイント(pHの下降現象が二度目に現れた時点)で炭酸ナトリウムの滴下を終了する。この時点の析出物は、ハイドロジンサイトである。滴下終了後は、ハイドロジンサイトが酸化亜鉛に変換するまでそのまま攪拌を続けて熟成する。攪拌時間(熟成時間)は反応時の亜鉛濃度により異なるが、通常1〜10時間であり、さらには5〜10時間が好適である。熟成時間が短いとハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換率が悪くなり、熟成時間が長すぎても、それ以上の変換は起きないことから、時間の無駄になる。 なお、第1低下ポイントで滴下を終了したり、あるいは第2低下ポイントを過ぎてから滴下を終了した場合には、焼成せずに熟成により酸化亜鉛を得ることは困難である。 上記亜鉛水溶液と炭酸アルカリ剤水溶液との反応は、40℃以下で行うことが好適である。40℃を超えると微粒子の生成が阻害され、機能性が不十分となることがある。また、温度が低すぎると析出物生成効率の低下、反応原料の析出、凍結等の問題を生じるので、通常15℃以上、好ましくは25℃以上である。また、熟成もこの温度範囲で行うことが好適である。 熟成後、得られた析出物を、必要に応じて、濾過や遠心分離などの公知の方法により固液分離し、固相を水洗した後、乾燥する。自然乾燥や減圧乾燥、凍結乾燥も可能であるが、通常は80〜120℃で1〜24時間程度行われる。 上記のようにして得られる微粒子酸化亜鉛粉体において、一次粒子の平均粒径は通常約0.01〜0.1μmである。なお、粒径は電子顕微鏡観察により計測したものである。 本発明で得られる微粒子酸化亜鉛粉体は、高い紫外線防御能(特にUV−A防御能)と可視光透過性とを発揮することができる。 すなわち、本発明の微粒子酸化亜鉛粉体は非常に微細であり、紫外線領域の透過率が低く可視光領域の透過率が高くなり、高い紫外線防御能及び可視光透過性とが発揮される。例えば、後述するように、本発明の微粒子酸化亜鉛粉体を5%含有するひまし油分散体において、360nm透過率は20%以下、さらには15%以下とすることができ、450nm透過率は85%以上、さらには90%以上とすることができる。 本発明にかかる微粒子酸化亜鉛粉体を用い、微粒子酸化亜鉛粉体を含有する化粧料を製造することができる。 化粧料中における微粒子酸化亜鉛粉体の配合量は、目的に応じて適宜決定されるが、通常化粧料中0.001質量%以上、好ましくは1質量%以上である。配合量が少なすぎると効果が発揮されない。一方、上限は特に制限されず、多量に配合しても肌上で過度に白くならず使用感も良好であるが、他の成分の配合などの点から通常は50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。 本発明の微粒子酸化亜鉛粉体については、必要に応じて公知の表面処理を行ってもよい。例えば、アルミニウムステアレートやジンクミリステートなどによる脂肪酸石鹸処理、キャンデリラロウやカルナバロウなどによるワックス処理、メチルポリシロキサン、環状シリコーンオイルなどによるシリコーン処理、パルミチン酸デキストリンなどによる脂肪酸デキストリン処理、ミリスチン酸、ステアリン酸などによる脂肪酸処理、フッ素処理などが挙げられる。 また、微粒子酸化亜鉛粉体を含有の他、化粧料中には、通常化粧料に配合されるその他の成分を配合することができる。例えば、油分、保湿剤、界面活性剤、顔料、染料、粉末、酸化防止剤、防腐剤、pH調製剤、キレート剤、香料、紫外線吸収剤、美白剤、水、各種薬剤などが挙げられる。 本発明の化粧料は、粉末状、固形状、軟膏状、液体状、乳化状、固−液分離状など、任意の剤型が可能である。 また、その製品形態も、例えば、化粧水、乳液、クリームなどの基礎化粧料;ファンデーション、化粧下地、口紅、アイシャドー、頬紅、アイライナー、ネイルエナメル、マスカラ等のメークアップ化粧料;ヘアトリートメント、ヘアクリーム、ヘアリキッド、セットローション等の毛髪化粧料などが挙げられる。特に、紫外線防御を目的とする日焼け止め化粧料において、本発明の微粒子酸化亜鉛粉体を配合することは効果的である。 なお、本発明の微粒子酸化亜鉛粉体は、化粧料以外にも、紫外線防御を目的とするその他の用途にも適用可能である。例えば、樹脂組成物、塗料、インキ、コーティング用組成物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。試験例1 微粒子酸化亜鉛粉体の製造 フラスコ中、塩化亜鉛の1mol/L水溶液100mLに、酢酸1mol/L水溶液100mLを加えて溶解した。この溶液を攪拌しながら、25℃で、0.2mol/L炭酸ナトリウム水溶液を1.5mL/minで滴下した。反応中のpHを経時的にモニターし、2度目のpH低下が認められた時点(滴下時間約270分)で滴下を終了し、そのまま攪拌を360分間続けて熟成を行った。この時の炭酸ナトリウム水溶液滴下開始から熟成終了までの経時的なpH変化を図1に示す。 その後、得られた析出物をフィルターで濾過ならびに水洗した後、乾燥(105℃12時間)して「試験例1」の粉体を得た。 得られた粉体は、X線回折の結果、酸化亜鉛であることが確認された。また、この粉体を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、図2のように、微細な粒子を形成しており、粒子径は約20nmであった。 また、「試験例1」の酸化亜鉛粉体2gをひまし油3g中、3本ローラーで十分に粉砕・分散し、得られた分散体をさらにひまし油で粉体濃度5質量%に希釈し、塗膜厚5μmで280〜560nmにおける透過率を測定した。比較として、市販の超微粒子酸化亜鉛粉体(テイカ社製MZ−500、粒子径20〜30nm)のひまし油分散体について同様に測定した。結果を図3に示す。 図3のように、「試験例1」は、従来の超微粒子酸化亜鉛粉体よりも高い可視光透過性を発揮し、可視領域(例えば450nm)で透過率90%以上、紫外領域(例えば360nm)で20%以下であった。試験例2 熟成時間の影響 熟成時間を変え、「試験例1」と同様にして粉体を得て、X線回折にて酸化亜鉛への変換を調べた(図4)。また、熟成時間と生成物との関係を下記表1に示す。 炭酸ナトリウムの滴下を止めた直後(試験例2−1、熟成なし)では、得られた粉体はハイドロジンサイトが100%であった。熟成時間が120分(試験例2−2)、240分(試験例2−3)では、ハイドロジンサイトと酸化亜鉛との混合物であった。360分熟成(試験例1)で酸化亜鉛100%の粉末が得られた。 このことから、熟成時間の経過に伴って、ハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換が進行していることが理解される。 なお、現在のところ詳細なメカニズムは不明だが、熟成によりハイドロジンサイトが脱炭酸し、酸化亜鉛が生成したと思われる。試験例3 滴下停止点(熟成開始点)の影響 「試験例1」において、炭酸ナトリウムの滴下を止める時点を変えた以外は同様にして、粉体を得、X線回折にて酸化亜鉛への変換を見た。その結果を表2に示す。 試験例1の条件で炭酸ナトリウム水溶液を滴下していくと、図1のように、時間の経過に従ってpHが上昇するが、滴下時間約170分の時に、析出物の生成と1度目のpH低下が観察される。さらに滴下すると、pHは緩やかに上昇するが、滴下時間約270分の時に2度目のpH低下が観察される。さらに滴下すると、pHは再度緩やかに上昇する。そして、滴下時間約470分を超えるとpHは急激に上昇し、滴下時間約500分でpH8となった。 一度目のpH降下が認められた時点、あるいはpHが8になるまで炭酸ナトリウムを滴下した時点で滴下を終了し、そのまま熟成(25℃、360分間)して得られた粉体は、いずれもハイドロジンサイトであった。 脱炭酸のメカニズムが不明であるので、詳しい解析はできないが、ハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換には最適なハイドロジンサイトの結晶構造が存在するのではないかと思われる。試験例4 カルボン酸量 「試験例1」において、酢酸使用量を変えた以外は同様にして粉体を得て、X線回折により酸化亜鉛への変換について調べた。結果を表3に示す。 表3のように、酢酸使用量が少なすぎても、多すぎてもハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換効率は悪かった。 これらのことから、ハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換には、カルボン酸は亜鉛に対して1〜5倍モル、好ましくは1〜3倍モルが適している。試験例5 炭酸アルカリ剤濃度 「試験例1」において、炭酸ナトリウム水溶液の濃度を変えた以外は同様にして粉体を得て、X線回折により酸化亜鉛への変換について調べた結果を表4に示す。 *炭酸ナトリウム水溶液滴下速度:1.5mL/min 表4のように、滴下速度一定で炭酸ナトリウム水溶液濃度を高くすると、ハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換の効率が悪くなる。一方、濃度を低くし過ぎると酸化亜鉛への変換が起こらない。 これらのことから、炭酸アルカリ剤水溶液濃度としては0.1〜2mol/L、さらには0.2〜0.8mol/Lとすることが好適である。試験例6 炭酸アルカリ剤滴下速度 「試験例1」において、炭酸ナトリウム水溶液の滴下速度を変えた以外は同様にして粉体を得て、X線回折により酸化亜鉛への変換について調べた結果を表5に示す。 *炭酸ナトリウム水溶液濃度:0.2mol/L 表5のように、炭酸ナトリウム水溶液の濃度一定で滴下速度を早くすると、ハイドロジンサイトから酸化亜鉛への変換効率が悪くなる。一方、滴下速度が遅すぎると反応時間が著しく長くなって効率的でない。 これらのことから、酸化亜鉛の形成ためには、炭酸アルカリ剤水溶液滴下速度としては、亜鉛水溶液100mLに対して0.5〜5mL/min、さらには0.5〜4.0mL/minとすることが好適である。試験例7 微粒子酸化亜鉛の製造 フラスコ中、塩化亜鉛の1mol/L水溶液100mLに、酢酸1mol/L水溶液100mLを加えて溶解した。この溶液を攪拌しながら、25℃で、0.2mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液を1.5mL/minで滴下した。反応中のpHを経時的にモニターし、2度目のpH低下が認められた時点(滴下時間約500分)で滴下を終了し、そのまま攪拌を360分間続けて熟成を行った。 その後、得られた析出物をフィルターで濾過ならびに水洗した後、乾燥(105℃12時間)して「試験例7」の粉体を得た。滴下終了時点及び熟成後のX線回折図を図5に示す。 図5より、滴下終了直後にも酸化亜鉛が生成しており、炭酸水素ナトリウムをアルカリ剤として使用すると、酸化亜鉛への変換が炭酸ナトリウムを使用する場合より効率的である。 上記配合例の化粧料を常法により調製した。何れの化粧料も製品の外観や安定性の問題はなかった。そして、肌に塗布した際には、白浮きすることなく高いUV防御能(特にUV−A防御能)を発揮した。 水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液を、炭酸アルカリ剤によりpH調整し、焼成することなしに、熟成により微粒子酸化亜鉛粉体を得ることを特徴とする微粒子亜鉛粉体の製造方法。 請求項1記載の方法において、炭酸アルカリ剤が、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液100mLに対し、0.1〜2mol/L水溶液であることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1又は2記載の方法において、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液中、亜鉛に対してカルボン酸基が1〜5倍モルであることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜3の何れかに記載の方法において、炭酸アルカリ剤水溶液を、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液100mLに対し、0.5〜5mL/minで滴下してpH調整することを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜4の何れかに記載の方法において、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液に対して炭酸アルカリ剤水溶液を滴下し、滴下中の反応液の経時的なpH変化において、二度目のpH低下が認められた時点で炭酸アルカリ剤水溶液の滴下を止めることによりpH調整を終了し、その後熟成することを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜5の何れかに記載の方法において、水溶性亜鉛塩が塩化亜鉛であることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜6の何れかに記載の方法において、カルボン酸が酢酸であることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜5の何れかに記載の方法において、水溶性カルボン酸亜鉛塩が酢酸亜鉛であることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜8の何れかに記載の方法において、炭酸アルカリ剤が炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする微粒子酸化亜鉛粉体の製造方法。 請求項1〜9の何れかに記載の方法で得られた微粒子酸化亜鉛粉体を含有することを特徴とする化粧料。 【課題】紫外線防御能や透明性に優れる酸化亜鉛粉体の製造方法、さらにはこれを配合した化粧料を提供する。【解決手段】 水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液、あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液を、炭酸アルカリ剤によりpH調整し、焼成することなしに、熟成により微粒子酸化亜鉛粉体を得る。炭酸アルカリ剤は、0.1〜2mol/L水溶液であることができ、亜鉛に対してカルボン酸基が1〜5倍モルであることができる。また、炭酸アルカリ剤水溶液を、水溶性亜鉛塩とカルボン酸とを含む水溶液あるいは水溶性カルボン酸亜鉛塩を含む水溶液100mLに対し、0.5〜5mL/minで滴下してpH調整することができる。