タイトル: | 公開特許公報(A)_アクリル系モノマー、それを含む光硬化性組成物及び当該組成物を光硬化させてなるアクリル系樹脂 |
出願番号: | 2007071912 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C08F 20/58,C07C 323/52,C07C 319/18 |
孫 軍 光山 昌宏 股木 宏至 杉森 輝彦 JP 2008231222 公開特許公報(A) 20081002 2007071912 20070320 アクリル系モノマー、それを含む光硬化性組成物及び当該組成物を光硬化させてなるアクリル系樹脂 株式会社KRI 591167430 財団法人光産業技術振興協会 000173636 三枝 英二 100065215 掛樋 悠路 100076510 菱田 高弘 100148998 孫 軍 光山 昌宏 股木 宏至 杉森 輝彦 C08F 20/58 20060101AFI20080905BHJP C07C 323/52 20060101ALI20080905BHJP C07C 319/18 20060101ALI20080905BHJP JPC08F20/58C07C323/52C07C319/18 9 OL 10 4H006 4J100 4H006AA01 4H006AA02 4H006AA03 4H006AB46 4H006AC63 4H006TA04 4H006TB55 4J100AL03Q 4J100AM21P 4J100BA20P 4J100BA53P 4J100CA01 4J100CA04 4J100JA33 本発明は、アクリル系モノマー、それを含む光硬化性組成物及び当該組成物を光硬化させてなるアクリル系樹脂に関する。 アクリル樹脂は、無色透明で且つ機械的強度や成形性が高いため、レンズ等の光学部品材料として幅広く利用されている。このようなアクリル樹脂は、一般にアクリル酸、メタクリル酸又はこれらのエステルを重合又は共重合させることにより得られる。 アクリル樹脂の合成に際しては、例えば、上記モノマー成分と光重合開始剤とを含む光硬化性組成物を用意し、当該組成物に光を照射してモノマー成分をラジカル重合させる。上記重合過程では、モノマー成分が揮発し易いことがしばしば問題となる。例えば、揮発成分が周囲を漂うことによる作業環境の悪化である。また、複数のモノマー成分の割合を微妙に調整してアクリル樹脂の特性(例えば屈折率や屈折率分布)を制御する場合には、揮発によって所望の特性を制御し難いという問題がある。例えば、モノマー成分として汎用されているメタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)は、常温でも揮発性が高く、60℃程度に加熱した場合にはほぼ全量が揮発する。 アクリルモノマー成分の揮発性を低下させる方策として、例えば、モノマー成分に特定置換基を導入することによって蒸気圧を低下させることが知られている。これに関連して、例えば、特許文献1、2には、低臭気性となるように変性された(メタ)アクリレート化合物が記載されている。 しかしながら、従来知られている変性アクリルモノマーは、光学材料を作るための原料としては揮発性の低下が不十分である。また、光学材料を作るための原料としては、高屈折率であることが望ましいが、この要求を十分に満たすものは未だ得られていない。特開平6−32863号公報特開平7−97351号公報 従って、本発明の主な目的は、低揮発性の要求を満たし、更に従来品よりも高屈折率のアクリル系モノマーを提供することにある。 本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の官能基を有する変性アクリルモノマーが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、下記のアクリル系モノマー、それを含む光硬化性組成物及び当該組成物を光硬化させてなるアクリル系樹脂に関する。1. 大気下10℃/分の条件で昇温させた場合に、200℃における重量減少量が5重量%未満であるアクリル系モノマー。2. 前記アクリル系モノマーは、23℃における屈折率が1.45以上である、上記項1に記載のアクリル系モノマー。3. 前記アクリル系モノマーは、下記一般式(1)〔式中、nは1〜10の整数を示す〕で示される、上記項1又は2に記載のアクリル系モノマー。4. 上記項1〜3のいずれかに記載のアクリル系モノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物。5. アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを更に含有する、上記項4に記載の光硬化性組成物。6. メタクリル酸メチルを更に含有する、上記項4に記載の光硬化性組成物。7. 上記項4〜6のいずれかに記載の光硬化性組成物に光を照射することによって得られるアクリル系樹脂。8. 光学材料である、上記項7に記載のアクリル系樹脂。9. 2−アミノエタンチオールとメタクリル酸メチルとを反応させることによって得られる反応生成物に、アクリル酸クロリドを反応させる、上記一般式(1)で示されるアクリル系モノマーの製造方法。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明のアクリル系モノマーは、低揮発性の要求を十分に満たすものであり、具体的に、大気下10℃/分の条件で昇温させた場合に、100℃における重量減少率が1重量%未満に抑制されており、200℃における重量減少量が5重量%未満に抑制されている。 また、23℃(常温)における粘度が300mPa・s以下と比較的低粘度であるため、取扱いが容易である。 上記本発明のアクリル系モノマーは、下記一般式(1)〔式中、nは1〜10の整数を示す〕で示される。 上記一般式(1)で示されるアクリル系モノマーは、光重合させることによってアクリル系樹脂となる。上記本発明のアクリル系モノマーは、公知のアクリル系モノマーと比較して屈折率が高い。例えば、上記一般式(1)においてn=1の場合は、23℃(常温)における屈折率が1.45以上(好ましくは1.5程度)と高い。公知のアクリル系モノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)の場合には、屈折率が1.4程度であるため、MMAと比べても屈折率が高く、光学材料への適用に有利である。 なお、本発明のアクリル系モノマーは、それ単独をモノマー材料とできるだけでなく、他の重合性モノマーと混合した態様でアクリル系樹脂製造用のモノマー材料とできる。混合可能な他のモノマー成分については後述する。 上記一般式(1)で示されるアクリル系モノマーは、その製造方法は限定されないが、例えば、2−アミノエタンチオールとメタクリル酸メチルとを反応させることによって得られる反応生成物に、アクリル酸クロリドを反応させる製造方法によって、好適に製造することができる。この製造方法は、(i)2−アミノエタンチオールとメタクリル酸メチルとを反応させる第1段階反応、(ii)第1段階反応により得られる反応生成物にアクリル酸クロリドを反応させてアクリル基を導入する第2段階反応とを有する。 第1段階反応のスキームの一例(n=1の場合)を次に示す。 第1段階反応では、メタクリル酸メチルに2−アミノエタンチオールを反応させてチオールを二重結合に付加させ、末端にアミノ基を導入する。反応生成物は、アミノエタンチオールアクリル酸メチルエステルである。アミノエタンチオール基の導入によって、メタクリル酸メチルの分子間相互作用が高まるため、最終的に得られるアクリル系モノマーの揮発性(蒸気圧)を低下させることができる。上記スキームはn=1の場合であるが、メタクリル酸メチルを更に重合させてメタクリル酸メチルユニット数を増やしつつ、末端にアミノ基を導入してもよい。 第1段階反応は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系極性溶媒下で行なってもよく、また、必要に応じて、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基触媒を併用してもよい。 第2段階反応のスキームの一例を次に示す。 第2段階反応では、アミノエタンチオールアクリル酸メチルエステルにアクリル酸クロリドを反応させてアクリル基を導入する。これにより、ラジカル重合性不飽和二重結合が導入されるため光重合が可能となる。第2段階反応では、アクリル酸クロリドの代わりに、N−アクリロキシスクシンイミドを用いることもできるが、収率及び原料価格の観点から、アクリル酸クロリドを用いる方が好ましい。具体的には、N−アクリロキシスクシンイミドを用いる場合には、第2段階反応における最終生成物の収率は30%程度と低いが、アクリル酸クロリドを用いることによって最終生成物の収率を60%以上に向上させることができる。 上記アクリル系モノマーを含む光硬化性組成物を調製する際は、実質的に上記アクリル系モノマーと光重合開始剤とを混合すれば良いが、必要に応じて、他の光重合性モノマー成分や公知の添加剤を含めても良い。 他の光重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシロピルアクリレート、グリシジルアクリレートなどが例示され、メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示される。エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸が好適に用いられ、そのほか、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのジカルボン酸、又はそれらの無水物やハーフエステルも用いることができる。これらの中でも、とりわけメタクリル酸メチル(メチルアクリレート)が好ましい。 他の光重合性モノマーを添加する場合には、その添加量は全モノマー量の90重量%以下とすることが好ましく、80重量%以下とすることが好ましい。 光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1−ジクロロアセトフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。このような光重合開始剤の添加量としては、モノマー成分100重量部に対して0.1〜10重量部程度が好ましい。 なお、光硬化性組成物には、上記各成分のほかに、必要に応じて、重合禁止剤、溶剤、可塑剤、着色剤、表面張力改質剤、安定剤、消泡剤、密着性付与剤、難燃剤などの公知の添加剤を配合できる。 光硬化性組成物を硬化させるには、例えば、上記組成物を型材(例えばレンズ型)に流しいれた後、光照射(紫外線、電子線、太陽光線等)すればよい。通常は紫外線照射により行い、その際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプなどが用いられる。照射量は限定されず、目的とする硬化体の形状や大きさに応じて調整する。光照射後は、必要に応じて加熱により硬化の完全を図ることもできる。 上記硬化により得られるアクリル系樹脂は、重合時にモノマー成分の揮発が抑制されているため、屈折率分布が制御し易い。また、作業環境を悪化させることなく、所望のアクリル系樹脂が得られる点で有利である。更に、本発明のモノマーは低粘度であるため、取扱いが容易である。 本発明のアクリル系モノマーは、低揮発性であるため、光重合時に作業環境を悪化させ難く、また重合物の屈折率分布を制御し易い。しかも、本発明のアクリル系モノマーは、高屈折率であるため、レンズ等の光学材料の製造用原料として有用である。 以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴を一層明確にする。ただし、本発明の範囲は、これら実施例に限定されるものではない。 実施例1 下記化学式(2)で示されるアクリル系モノマーを調製した。このアクリル系モノマーは前記一般式(1)で示されるアクリル系モノマーのn=1のものである。(第1段階反応) 200mL丸底フラスコに撹拌子とメタクリル酸メチル(5.01g、50mmol)とトリエチルアミン(0.1mL、触媒)を入れ、氷冷しながら1時間撹拌した。 次に、2−アミノエタンチオール(4.63g、60mmol)のメタノール(75mL)溶液を添加し、室温で更に24時間撹拌した。 次に、減圧下(13.5mmHg/40℃)で濃縮し、クロロホルム/水混合液で有機相を抽出した。 次に、抽出した有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、更にろ過後、ろ液を減圧下(13.5mmHg/40℃)で濃縮した。 これにより、淡黄色透明液体(8.52g、収率96.1%)を得た。生成物は、アミノエタンチオールアクリル酸メチルエステルであった。生成物の同定は、IR測定(Nicolet社製、FT−IR Spectrometer、MAGNA−IR760)とNMR(1H、13C)測定(JEOL社製、FT−NMR Spectrometer、JNM−GSX270)とで行った。(第2段階反応) 50ml丸底フラスコに撹拌子とアミノエタンチオールアクリル酸メチルエステル(1.78g、10mmol)とトリエチルアミン(1.52g、15mmol)とクロロホルム(10mL)とを入れ、氷冷しながら1時間撹拌した。 次に、アクリル酸クロリド(1.18g、13mmol)のクロロホルム(5mL)溶液を滴下し、氷冷下で3時間撹拌した(塩化カルシウム管付)。 次に、水、10%塩酸、飽和食塩水で生成物を順に洗浄し、抽出した有機相を無水硫酸マグネシウム上で脱水し、更にろ過後、ろ液を減圧下(13.5mmHg/40℃)で濃縮した。 次に、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)により精製した。 これにより、淡黄色透明液体(1.48g、収率64%)を得た。生成物は上記化学式(2)で示されるアクリル系モノマーであった。生成物の同定手段は、上記と同じである。 比較例1 メタクリル酸メチル(MMA)をそのままアクリル系モノマーとした。 実施例2 実施例1で得たモノマーとMMAとを8/2(重量比)で混合したものを、アクリル系モノマーとした。 実施例3 実施例1で得たモノマーとMMAとを5/5(重量比)で混合したものを、アクリル系モノマーとした。 実施例4 実施例1で得たモノマーとMMAとを2/8(重量比)で混合したものを、アクリル系モノマーとした。 試験例1 実施例1と比較例1のアクリル酸モノマーについて、23℃において屈折率(nD)、アッベ数(νD)及び粘度(η:mPa・s)を測定した。屈折率及びアッベ数は、アタゴ社製「多波長アッベ屈折計 DR−M2」を使用して測定した。また、粘度はブルックフィールド社製「回転粘度計 HBDV−III(スピンドル:CP−42)」を使用して測定した。 測定結果を下記表1に示す。 試験例2 実施例1〜4及び比較例1のアクリル系モノマーを大気下10℃/分の条件で常温から500℃まで昇温させて熱重量(TG)分析を行った。熱重量分析装置としては、Rigaku社製「Thermo plus2 TG7120」を使用した。 分析結果(TG曲線)を図1に示す。 MMA(比較例1)と比べて、実施例1のアクリル系モノマーは、格段に揮発性が低下していることが分かる。また、実施例2〜4では、本発明のアクリル系モノマーを含有することによって、MMAの揮発が抑制されてTG曲線の下降割合が緩くなることが分かる。試験例2で得たTG曲線である。 大気下10℃/分の条件で昇温させた場合に、200℃における重量減少量が5重量%未満であるアクリル系モノマー。 前記アクリル系モノマーは、23℃における屈折率が1.45以上である、請求項1に記載のアクリル系モノマー。 前記アクリル系モノマーは、下記一般式(1)〔式中、nは1〜10の整数を示す〕で示される、請求項1又は2に記載のアクリル系モノマー。 請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系モノマー及び光重合開始剤を含有する光硬化性組成物。 アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを更に含有する、請求項4に記載の光硬化性組成物。 メタクリル酸メチルを更に含有する、請求項4に記載の光硬化性組成物。 請求項4〜6のいずれかに記載の光硬化性組成物に光を照射することによって得られるアクリル系樹脂。 光学材料である、請求項7に記載のアクリル系樹脂。 2−アミノエタンチオールとメタクリル酸メチルとを反応させることによって得られる反応生成物に、アクリル酸クロリドを反応させる、上記一般式(1)で示されるアクリル系モノマーの製造方法。 【課題】低揮発性の要求を満たし、更に従来品よりも高屈折率のアクリル系モノマーを提供する。【解決手段】下記一般式(1)〔式中、nは1〜10の整数を示す〕で示されるアクリル系モノマーであって、大気下10℃/分の条件で昇温させた場合に、200℃における重量減少量が5重量%未満であるアクリル系モノマー。【選択図】なし