タイトル: | 公開特許公報(A)_メントールの精製方法 |
出願番号: | 2007069210 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | C07C 29/78,C11B 9/00,C11B 9/02,C07C 35/12,C07B 57/00 |
中安 英敏 水野 康弘 本郷 英之 JP 2008230978 公開特許公報(A) 20081002 2007069210 20070316 メントールの精製方法 高砂香料工業株式会社 000169466 鐘尾 宏紀 100108350 中安 英敏 水野 康弘 本郷 英之 C07C 29/78 20060101AFI20080905BHJP C11B 9/00 20060101ALI20080905BHJP C11B 9/02 20060101ALI20080905BHJP C07C 35/12 20060101ALI20080905BHJP C07B 57/00 20060101ALN20080905BHJP JPC07C29/78C11B9/00 DC11B9/02C07C35/12C07B57/00 343 3 OL 6 4H006 4H059 4H006AA02 4H006AD15 4H006BB21 4H006FC22 4H006FE12 4H059BA14 4H059BB13 4H059BB45 4H059BB55 4H059CA06 4H059CA12 本発明は、メントールの精製方法、より詳しくは、粗メントールを晶析することにより化学純度及び光学純度の高いメントールを得るメントールの精製方法に関する。 メントール、特に(L)−メントールは、清涼な風味と爽快な皮膚感覚を有することから、香料、医薬分野などで汎用されている重要な物質である。例えば、(L)−メントールは従来からチューインガム、キャンディーなどの菓子、口中清涼剤などの食品用フレーバーとして、またたばこなどにおいて用いられているが、微量の不純物(不要な光学異性体等)の存在でもその品質に与える影響が大きく、このため精製方法について古くから検討がなされている。精製方法として種々の方法が知られており、その一つとして、メントールをエステル誘導体とした後晶析して精製する方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法においては、エステルへの誘導体化及び脱保護の工程が必要となり、工程が増え工業的に好ましくない。 また、このようなエステル等へと誘導することなく精製する方法も知られている(例えば、特許文献2および3参照)。例えば、特許文献2では、高圧条件下でラセミ体の光学分割が可能であることが報告されているが、この方法を実施するには特殊な装置が必要となる。また特許文献3では、メントール又は水との混合物を超臨界二酸化炭素に接触させ、雑味・薬品臭などを除去する方法が記載されている。しかし、この方法では超臨界二酸化炭素の発生装置が必要となる。さらに、メントールを溶剤から再結晶する方法も知られている。この再結晶法は比較的簡単な方法であるが、メントールの融点が比較的低く(42℃)、溶剤からの結晶化を低温で行う必要があるなどの制約が、工業化を困難にしている。またこの方法では、従来、高純度の(L)−メントールを得ることが難しかったという問題もある。米国特許第3943181号公報特開平4−260401号公報特開平9−217084号公報 本発明者らは、上記のごとき現状に鑑み、メントールの精製方法について種々検討を行った結果、驚くべきことに晶析する際の溶媒としてニトリル系溶媒を用いることにより、室温付近でもメントール結晶が析出し、また析出した結晶は、不要な光学異性体をはじめとした不純物が除去され、実質的に光学的並びに化学的に純粋なメントールを効率よく製造できることを見出し、本発明に至った。 すなわち、本発明は以下の内容を包含するものである。[1]粗メントールをニトリル系溶媒に溶解した後、該溶液を冷却してメントールを晶析し、実質的に光学的に純粋なメントールを得ることを特徴とするメントールの精製方法。[2]ニトリル系溶媒がアセトニトリルであることを特徴とする前項1に記載の精製方法。[3]メントールが(L)−メントールであることを特徴とする前項1又は2に記載の精製方法。 本発明によれば、粗メントール、すなわち一種類の異性体(例えば、L−体)を過剰に含む光学活性なメントールを晶析によって精製する際、粗メントールを溶解する溶媒としてニトリル系溶媒を採用することにより、晶析温度を工業的に不利な低い温度にまで低下せずとも、室温付近の温度でメントールを晶析することができ、しかもこのような室温付近での晶析によって実質的に化学的及び光学的に純粋なメントール、好ましくは(L)−メントールを得ることができる。このように、本発明により、容易かつ効率的に、また工業的に有利な条件で、粗メントールを実質的に化学的及び光学的に純粋なメントールにまで精製することができる。 なお、本発明において「実質的に光学的に純粋な」とは、エナンチオマー過剰率をさらに高めることなくそのまま香料等として使用することができる程度の約99%e.e.以上のエナンチオマー過剰率を意味する。また「実質的に化学的に純粋な」とは、化学純度をさらに高めることなくそのまま香料等として使用できる程度の約99%以上の化学純度を意味する。 前記エナンチオマー過剰率は次のようにして求められる。すなわち、過剰に存在するエナンチオマーの含有量をA、他方をBとした場合、 エナンチオマー過剰率=(A−B)÷(A+B)×100である。発明の実施の形態 以下、本発明についてさらに詳細に説明する。 本発明においては、メントールの晶析は次のようにして行われる。まず精製に供される粗メントールをニトリル系溶媒と混合し、粗メントールをニトリル系溶媒に溶解する。その後粗メントール溶解溶液の温度を下げ、析出した結晶をろ過する。これにより実質的に光学的に純粋なメントールを得ることができる。必要であれば、ろ別された結晶は更に蒸留、昇華などの付加的な精製処理に付されてもよい。前記粗メントールの溶媒への溶解温度はメントールの融点(42℃)以下の温度であればよい。例えば溶解温度を25〜40℃程度に設定すれば、結晶析出温度を室温程度(10〜20℃程度)乃至室温より幾分低い温度程度(0〜10℃程度)とできることから、前記温度程度に加温することにより粗メントールの溶解を行うことが好ましい。 本発明において、晶析による精製前に用いられる粗メントールは、いずれかの光学異性体を過剰に含むものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、粗メントールは、精油を結晶化し、遠心分離して得た天然メントールでもよいし、また反応混合物より抽出等の手段により単離された未精製のものでも、蒸留、カラムクロマトグラフィー等によりさらに精製されたものであってもよい。そのエナンチオマー過剰率(以下、「光学純度」ということもある。)は特に限定されるものではないが、エナンチオマー過剰率が高い方が晶析収率は当然高くなるので、通常、約90%e.e.程度、好ましくは約95%e.e.以上のものを用いるのが好ましい。 本発明の晶析溶媒としては、ニトリル系溶媒が用いられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、一般式:R−CN(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるニトリル系溶媒が好ましい。より好ましい溶媒としては、Rが低級アルキル基であるニトリル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等が挙げられる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリルが除去の容易さ、価格の点から最も好ましい。これらニトリル系溶媒は単独で用いられても良いし、本発明の目的が達成できる範囲で他の溶媒との混合物として用いられてもよいが、ニトリル系溶媒を単独で用いることが好ましい。ニトリル系溶媒と共に用いることができる他の溶媒としては、例えば、アセトン、酢酸メチル等が挙げられる。 用いられる溶媒の量は、メントールを溶解させることができる量以上であればよく、メントールに対して0.5〜10重量倍程度、好ましくは、1〜5重量倍程度である。また、溶解温度は20〜40℃が好ましく、さらに冷却温度は0〜20℃が好ましい。冷却速度は特に限定されないが、徐冷することが好ましく、室温下で溶解容器を放置するなどしてメントール溶解溶液の液温を下げるなど、例えば1〜5℃/分程度の温度降下としてやればよい。室温以下にまで冷却する場合は、適宜冷却手段を用いて冷却が行われるが、この場合も前記の場合と同様の温度降下速度とすればよい。 本発明の精製法で得られたメントールは、清涼感が強く、爽快で、切れのよい風味を呈し、晶析したメントールをそのままで、また必要であれば付加的な精製処理を行って、従来同様、ハッカ、ミント、冷感剤、温感剤成分などの香料成分としてあるいはそれ自体を、チューインガム、キャンディーなどの菓子、口中清涼剤、オーラルケア商品、入浴剤、化粧品、たばこ、医薬品など幅広い分野に用いることができる。 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。(実施例1) 粗メントール((L)−メントールの化学純度95%、光学純度97.3%ee)16.3gにアセトニトリル50mlを加え、30℃に加温し溶解した。この溶液を5℃に冷却し、析出した結晶をろ過、蒸留することで、11.8g(収率72%)の精製(L)−メントールを得た。(化学純度>99%、光学純度99.6%ee)。(実施例2) 粗メントール((L)−メントール含量95.7%であり、光学純度が97%ee。異性体のイソメントール2.5%、ネオイソメントール1.8%、ネオメントール微量を含む)54gを、アセトニトリル150mlに30℃で溶解し、この溶液を5℃に冷却後、ろ過することで精製(L)−メントール32gを得た。GC(ガスクロマトグラフィー)分析により、この精製(L)−メントールからは異性体(イソメントール、ネオイソメントール、ネオメントール)は検出されなかった。(比較例1) 粗メントール80g((L)−メントールの化学純度95%、光学純度97.3%ee)にアセトン20mlを加え室温で溶解した。この溶液を0℃に冷却したが、結晶の析出は認められなかった。(比較例2) 粗メントール10g((L)−メントールの化学純度95%、光学純度97%ee)にイソプロピルエーテル10mlを加え室温で溶解して、この溶液を−25℃に冷却し晶析を行った。析出した結晶の純度を測定したが、化学純度95%、光学純度97%であり、変化がなかった。(比較例3) 粗メントール100g((L)−メントールの化学純度95%、光学純度97%ee)にエタノール100mlを加えて室温で溶解した。この溶液を−20℃に冷却したが、結晶の析出は認められなかった。 粗メントールをニトリル系溶媒に溶解した後、該溶液を冷却してメントールを晶析し、実質的に光学的に純粋なメントールを得ることを特徴とするメントールの精製方法。 ニトリル系溶媒がアセトニトリルであることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。 メントールが(L)−メントールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製方法。 【課題】溶媒からメントールを晶析する際、晶析温度を低温とすることなく、また実質的に光学的に純粋なメントールを得る。【解決手段】ニトリル系溶媒に粗メントールを溶解し、冷却してメントールを晶析することにより、実質的に光学的ならびに化学的に純粋な(約99%e.e.以上のエナンチオマー過剰率、約99%以上の化学純度)メントールを得る。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルが好ましい。溶解温度はメントールの融点である42℃以下で行い、冷却温度は室温乃至室温より幾分低い温度とすることが好ましい。必要であれば、晶析後分別蒸留などのさらなる精製処理を行ってもよい。【選択図】なし